JP5667881B2 - ソフトビットスケーリングのための技法 - Google Patents

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Description

本発明は一般に信号処理に関する。詳細には、本発明は、フェージングチャネル環境においてソフトビット量子化のためのスケーリングファクタを判定するための技法を対象とする。
第三世代パートナシッププロジェクト(3GPP)は、目下、次世代通信システムに関して作業中であり、そのシステムは、3GPP用語ではロング・ターム・エヴォリューション(LTE)システムと呼ばれている。LTEシステムの重要な機能として、100Mbps以上という高速のピークデータレートが挙げられよう。高速のピークデータレートは、数ある技術の中でも、リンクアダプテーションと、ハイブリッド・自動再送要求(ハイブリッドARQ)スキームとを実装することによって達成される。
簡単に言えば、リンクアダプテーションは、基地局が現在のチャネル品質に基づいて変調パラメータと符号化パラメータとをユーザ端末毎に個別に選択することを可能にする。他方、ハイブリッドARQスキームは、従来のARQスキームの確認応答、再送信、およびタイムアウト機能を、(例えばターボ符号を用いた)前方誤り訂正符号化を使って、かつ、(例えば巡回冗長検査ビットのような)誤り検出情報の送信を使って、強化する。
ハイブリッドARQスキームは、以前の誤った送信試行を介して受信した情報を(廃棄するのではなく)現在の送信試行に伴って受信した情報と組み合わせることによって、システムのスループットを向上させる。このため、ハイブリッドARQスキームは、誤った送信試行を介して受信した情報を一時的に記憶するためのメモリ資源を必要とする。記憶される必要がある情報には、受信したデータビット並びに関連の信頼性情報(いわゆるソフトビット)が含まれる。
ソフトビットは、受信信号の中の各データビットについてデコーダ・フロントエンドによって生成されるものであり、データビットが0または1である可能性がどの程度あるかの尺度とみなすことができる。従って、従来型のデコーダ・フロントエンドならば、受信したアナログ情報が0か1かを識別するために、内部アナログ電圧レベルが所与の閾値電圧レベルより上か下を単純に決定するであろうが、例えばターボ符号デコーダのフロントエンドならば、内部アナログ電圧が閾値電圧レベルからどの程度離れているかという整数による尺度(ソフトビット)を提供するであろう。
従来の「ハード」な決定技法(硬判定)と、向上した「ソフト」な決定技法(軟判定)とを、それぞれ図1Aおよび図1Bに図示する。図1Aおよび図1Bはいずれも、確率密度pを、アナログ電圧レベルx(T)=m+nの関数として示し、ここでmは信号成分を表し、nは、受信信号の中の雑音成分を表す。電圧レベルx(T)は、1が送信される場合には平均値mを有し、0が送信される場合には平均値mを有する。
図1Aに示す硬判定のシナリオでは、1または0が送信されたかどうかを決定するために、x(T)のレベルが、所与の閾値電圧レベルと単純に比較される。他方、図1Bに示す例示的な軟判定シナリオでは、x(T)のレベルが閾値レベルからどのくらい離れているかを示す、(3ビットの分解能に相当する)8個のソフトビット量子化範囲が定義される。例えばワード111は、高い信頼性を伴って1という決定を示し、他方、ワード100は、低い信頼性を伴って1という決定を示すであろう。軟判定シナリオにおいて生成された、この追加の信頼性情報の結果として、硬判定シナリオに較べてビット誤り率が低減されるかまたは、同じビット誤り率を達成するのに必要なSNRが低減される。
ソフトビット量子化の分解能を(ある程度まで)高めると、ビット誤り率を低減するのに役立つ。しかし、上記で概説したようにソフトビットは一時的に記憶されなければならないことから、分解能が高くなると、結果としてハイブリッドARQのバッファのためのメモリ要件も増大することになる。従って、特にLTEおよび類似のシステムでは、ピークデータレートが本質的に高いことに起因して、ハイブリッドARQスキームについてのメモリ要件が非常に厳しくなることがある。従って、符号化性能を高レベルに維持すると同時に分解能を低減させるために、優れた方法が提案されるようになってきた。
例えば、1999年オランダのアムステルダムにおけるG.JeongおよびD.Hsiaによる「Optimal Quantization for Soft−Decision Turbo Decoder」、(VTC Fall ’99)に記述された、そのような最適化の方法は、典型的には、有効コードレートと、利用される変調方式との知識を必要とする。しかし、リンクアダプテーションとハイブリッドARQが起因の再送信との組み合わせによって、有効コードレートを予測するのがかなり難しくなる。この難しさの主な原因は、軟判定が行われるべき時点では、リンクアダプテーションメカニズムによって選択されたコードレートは、判定メカニズムに(まだ)知られていない可能性があり、かつ、判定メカニズムも、(さらなる)再送信が必要か否かを知らないという事実にある。
ここで詳細に説明することになるが、現在のSNRに依存して信頼性情報が事実上失われることがあるという事実の結果として、さらなる問題がもたらされる。量子化されていないソフトビットの大きさの平均値並びにその分散は、基本的に現在のSNRに比例する。これを、四相位相変調方式(QPSK)の例について、そしてSNR値が0dBと6dBの例について、図2Aおよび図2Bのソフトビットのヒストグラムにそれぞれ図示する。
SNR値が0dBの場合(図2A)、平均値は非常に小さいため、両端からの曲線が中心付近で強く重なる。従って、量子化されていないソフトビットの大きさは、ゼロに近いため、量子化されたソフトビットは、ほとんどの場合、0または1のいずれかである。他方、SNR値が6dBの場合(図2B)、量子化されていないソフトビットの大きさは、許容された整数範囲のほとんど外側であり、最大許容整数値を想定したソフトビットのクリッピングと量子化との後で、そのような結果となる。いずれの場合でも、利用可能なソフトビットの分解能は、効率的に利用されていない。
ソフトビット量子化プロセスに与えるSNRの影響を補正するため、WO2007/092744 A2では、量子化ステップに先立って、(アナログ)ソフトビットの大きさをスケールすることが提案されている。スケーリングのステップは、量子化されたソフトビットが、利用可能な整数値の範囲をより良く使用することを保証するのに役立つ。スケーリングの間に適用されるスケーリングファクタは、一般に、SNRの測定値に反比例するように選択される。
国際公開第2007/092744号
フェージングチャネル環境では、チャネル利得は、従って、SNRは、迅速に変化している。これは、1つのコードワードの間でさえ、SNRが変化することを意味する。従って、直交周波数分割多重(OFDM)に依存するLTEシステムでは、SNRは、1つのコードワードの間でさえ変化することがある。そのような状況では、1つのコードワード全体について平均をとった平均SNR値に基づいてスケーリングファクタを導出することが考えられてもよいだろう。しかし、単純に平均をとった場合、低SNR値に対応するソフトビットか、高SNR値に対応するソフトビットかのいずれか一方の精度が、(図2Aおよび2Bに図示したシナリオと同様に)最適とはいえなくなるであろうという問題が一般に生じることが分かっている。
従って、利用可能なソフトビット分解能を効率的に利用できるように、ソフトビット量子化のためのスケーリングファクタの判定を可能にする技法が必要である。
第1の態様によって、フェージングチャネル環境においてソフトビット量子化のためのスケーリングファクタを判定する方法を提供する。方法は、フェージングチャネルについてのSNR値を繰り返し判定することと、極値的なSNR値の寄与が減衰されるようにSNR値の重み付けが行われることを特徴として、複数のSNR値に基づいて加重平均を算出することと、そして、加重平均に依存してソフトビット量子化のためのスケーリングファクタを判定することとを含む。本書では、「SNR」という用語は、例えば信号対干渉プラス雑音比(SINR)のように、信号と雑音のレベルを関連付ける関連のパラメータをも包含する。
加重の手法は、チャネル条件の変化の結果として、少なくとも部分的には非線形の平均化がもたらされてもよい。暗示的な結果として、チャネル条件の変化に応じた符号化メカニズムおよび/または変調メカニズムの動作ポイントの変化が、算出される平均に反映されてもよい。
一実装では、各SNR値が、SNR値に関連する達成可能なチャネルスループットに従って、大まかに重み付けされる。そのような重み付けは、極値的なSNR値の寄与が減衰されるように重み付けが行われるという事実の暗示的または明示的な結果であってもよい。減衰は、非常に高いSNR値および/または非常に低いSNR値が、中間のSNR値より低く加重されるという点で達成されてもよい。本書では、極値的なSNR値は、(相対的または絶対的)最小値および/または最大値に限定されない。そうではなく、例えばSNR値が一定の閾値条件を満たす場合には(例えば、それらが一定の閾値を上回るか下回る場合には)、それらは極値的であるとみなされてもよい。
加重平均は、例えば、K.Brueninghaus他による「Link Performance Models for System Level Simulations of Broadband Radio Access Systems」、2005 IEEE 16th International Symposium on Personal,Indoor and Mobile Radio Communications、p.2306−2311に一般的に記述されているように、Effective SNR Metrics(ESM)技法を用いて算出されてもよい。本平均化という文脈に使用することができそうな見込まれるESM技法には、Capacity ESM(CESM)と、Exponential ESM(EESM)と、Mutual Information ESM(MIESM)とが含まれる。
平均化プロセスより、変換ステップが先行してもよい。具体的には、各SNR値は、それをコードパラメータ領域または変調パラメータ領域へと変換することによって加重されてもよい。一構成では、加重は、関連のコードレート値を求めるために、各SNR値をコードレート領域へと変換することによって行われる。このようにして得られたコードレート値が、次いで、少なくともSNR領域の観点から加重されることになる平均を求めるため、コードレート領域で平均されてもよい。結果としての加重平均が、次のステップで、ソフトビット量子化のためのスケーリングファクタを判定する基礎を成してもよい。
各SNR値を関連のコードレート値にマッピングするかまたは他の方法で変換するような変換が選択される場合、結果としてのコードレート値は、関連のSNR値についての達成可能なコードレートを示してもよい。達成可能なコードレートは、関連のSNR値に関連付けられた達成可能なチャネルスループットを表す。コードレート値は、例えば、このSNR値に関連するカットオフレートを示してもよい。
平均化は、一連の連続するSNR値全体に対して行われてもよい。一例では、平均化は、所定数の変調シンボルを含む1つのコードブロック全体(例えばターボコードエンコーダによって生成された1つのコードブロック全体)に対して行われる。ここで留意すべきだが、平均化は、コードブロックに含まれる各変調シンボルについてのSNR値を考慮に入れる必要はない。そうではなく、平均化は、コードブロックに含まれる変調シンボルの部分集合(例えば、2つに1つのまたは5つに1つの変調シンボル)についてのSNR値に限定されてもよい。
加重平均に基づくスケーリングファクタの判定は、さまざまなやり方で行われてもよい。一実装では、個別の加重平均値(あるいは、加重平均値の個々の範囲)を個別のスケーリングファクタに関連付ける関係を提供する。この関係は、計測値(または個別の範囲)とスケーリングファクタとの間のマッピングの形で、あるいは、機能的関連付けの形で、実現されてもよい。
基盤をなす通信システムが複数の変調方式をサポートする場合には、個別の変調方式の各々について、加重平均値(または範囲)とスケーリングファクタとを関連付ける個別の関係が、定義されてもよい。そのようなシナリオでは、スケーリングファクタを判定するステップは、さらに、現在適用されている変調方式を判定することと、この変調方式に関連する関係を選択することとを含んでもよい。
本書で記述するスケーリングファクタの判定は、リンクアダプテーションスキームとハイブリッドARQとのうち少なくとも1つと組み合わせて(または、それとの文脈で)行われてもよい。
さらに、コンピュータプログラムがコンピュータデバイス(例えば移動端末または基地局)上で実行される時には本書で論じるステップを行うためのプログラムコード部分を含むようなコンピュータプログラムを、提供する。コンピュータプログラムは、例えばコンピュータデバイスの中に位置するかまたはコンピュータデバイスに関連して位置するパーマネントメモリまたは書換可能メモリのような、コンピュータ可読記録媒体に記憶されてもよい。それに加えて、または、その代わりに、コンピュータプログラムが、コンピュータデバイスへのダウンロード用に、例えばインターネットのようなデータネットワークを介して、または、例えば電話回線やワイヤレスリンクのような通信回線を介して、提供されてもよい。
別の態様によって、フェージングチャネル環境においてソフトビット量子化のためのスケーリングファクタを判定するように構成されたデコーダステージを提供する。デコーダステージは、フェージングチャネルについてのSNR値を繰り返し判定するように構成された第1のコンポーネントと、極値的なSNR値の寄与が減衰されるようにSNR値の加重が行われることを特徴として、複数のSNR値に基づいて加重平均を算出するように構成されたプロセッサと、プロセッサによって算出された加重平均に依存してソフトビット量子化のためのスケーリングファクタを判定するように構成された第2のコンポーネントとを備える。
プロセッサは、さらに、関連のシステムパラメータ値(例えばコードレート値)を求めるために、各SNR値をシステムパラメータ領域(例えばコードレート領域)に変換することによって、加重を行うように構成されてもよい。また、プロセッサは、加重平均を求めるために、結果としてのシステムパラメータ値を平均するように構成されてもよい。別の選択肢として、または追加として、プロセッサは、例えばCESM、MIESM、EESMのようなESM技法を用いて加重平均を算出するように構成されてもよい。
第2のコンポーネントは、個別の加重平均値(または範囲)を個別のスケーリングファクタに関連付けるマッピングテーブルを含んでもよい。マッピングテーブルは、ルックアップテーブルの形式で実現されてもよい。
デコーダステージは、受信器コンポーネントまたはトランシーバコンポーネントとして実装されてもよい。受信器コンポーネントまたはトランシーバコンポーネントは、移動端末(例えば、移動電話、ネットワークカードまたはデータカード、携帯情報端末など)の一部、または、基地局(例えばNodeBまたはevolved NodeB)の一部を成してもよい。
以下に、本発明について、図の中に示す例示的な実施形態を参照しながら詳細に記述しよう。
硬判定技法を略示する図である。 軟判定技法を略示する図である。 異なる雑音シナリオについてのソフトビットのヒストグラムを略示する図である。 異なる雑音シナリオについてのソフトビットのヒストグラムを略示する図である。 変調器/デコーダステージの実施形態とその機能コンポーネントとをブロック図の形で略示する図である。 変調器/デコーダステージの実施形態とその機能コンポーネントとをブロック図の形で略示する図である。 方法の実施形態を略示するフロー図である。 SNR領域とコードレート領域との間の変換を略示する図である。
下記の記述では、限定ではなく説明の目的で、本書で提示する技術の十分な理解を提供することを目的として、例えば特定の変換シナリオのような特定の詳細について述べる。当業者には明らかであろうが、本発明は、これらの特定の態様から逸脱した他の実施形態として実施されることがある。例えば、熟練した技術者であれば、本発明が他の変換領域と組み合わせて、あるいは他の通信標準と組み合わせて実施されうることを理解するであろう。
さらに、当業者には明らかであろうが、本書で説明した機能は、個別のハードウェア回路構成を用いて、プログラムされたマイクロプロセッサまたは汎用コンピュータと関連して機能するソフトウェアを用いて、特定用途向け集積回路(ASIC)を用いて、および/または、1つ以上のデジタル信号処理回路(DSP)を用いて、実装されうる。また、理解されるであろうが、以下の実施形態は、主に方法と装置として記述されることになるが、一方で、実施形態は、コンピュータのプロセッサおよびプロセッサに連結されたメモリとして実施されてもよく、その場合、メモリは、プロセッサによって実行された時に本書で論じるステップを行う、1つ以上のプログラムを使って符号化される。
図3Aは、ソフトビット量子化のためのスケーリングファクタを決定するように構成された復調器/デコーダステージ(復号処理段)300の一実施形態を略示する。復調器/デコーダステージ300は、例えばLTEに準拠したユーザ装置(例えば移動端末)または基地局のような、LTEシステムのコンポーネントの中に組み込まれてもよい。LTE復調器/デコーダステージ300は、リンクアダプテーションおよびハイブリッドARQスキームをサポートするシステム環境で動作する。
周知のとおり、LTEシステムは、基地局からユーザ装置へのダウンリンクではOFDMを使用し、ユーザ装置から基地局へのアップリンクでは、単一キャリヤ周波数分割多元接続(SC−FDMA)を使用する。SC−FDMAは、OFDMの変異形であるとみなすことができる。OFDMは、(ガードインターバルとして)巡回プレフィックスの挿入と周波数領域内での変調および符号化の適用とによって、異なる経路遅延での複製信号(信号レプリカ)の重ね合わせの構築を可能にする。マルチパス利得を実現することを目的として、マルチパス伝播の結果として生じる、弱いOFDM副搬送波と強いOFDM副搬送波上のデータが、1つのコードワードの中で保護されるように、符号化変調が周波数全体にわたって適用される必要がある。チャネル符号化の観点からは、このシナリオは、フェージングチャネル全体にわたる符号化された送信の状況を反映する。これは、チャネル利得が、従って、SNRが、1つのコードワード内で変化することを意味する。SNRの変化が復号の性能に与える影響を補正するため、図3Aの復調器/デコーダステージ300は、ソフトビットスケーリングメカニズムを備えている。
図3Aに示すように、復調器/デコーダステージ300は、フェージングチャネル上でデータ信号を受信するための入力インタフェース(図示せず)で復調器302を備える。復調器302は、量子化のために利用可能な整数値の範囲を効率よく利用できるようにするために必要な復調器302の出力をスケールするように構成されたソフトビットスケーラ304に連結される。量子化器306は、スケーラ304の下流に位置しており、スケーラ304によって出力されたスケールされたソフトビットの大きさを量子化するように構成される。量子化器306によって行われる量子化の分解能は、所望の精度に依存する。例えば所望の精度が5ビットである場合、量子化器306は、スケーラ304によって出力されるソフトビットの大きさを、当分野では周知であるように−16から+15までの範囲の可能な整数値にマッピングする(そして、3ビットの精度について図1Bに一般的に示す)。ソフトビットは、こうして量子化器306によって生成され、デコーダ308へと出力される。デコーダ308は、例えば、ソフトビット入力に関して動作するターボデコーダとして構成されてもよい。
図3Aに示すように、スケーラ304は、スケーリングファクタ情報を受信するための入力を有する。スケーリングファクタ情報は、SNR決定コンポーネント312に連結されたスケーリングファクタ決定コンポーネント310から受信される。SNR決定コンポーネント312は、現在の雑音レベルと信号レベルとを測定するか、推定するか、あるいは他のやり方で決定し、そして、このようにして決定されたSNR値をスケーリングファクタ決定コンポーネント310に提供するように構成される。スケーリングファクタ決定コンポーネント310は、このようにして得られたSNR値を、スケーリングファクタ情報を決定する目的で利用するように構成される。
ここで、図3Bの概略ブロック図を参照しながら、スケーリングファクタ決定コンポーネント310の構成について詳細に記述しよう。図3Bに示すように、スケーリングファクタ決定コンポーネント310は、変換コンポーネント320と、平均化コンポーネント322と、マッピングコンポーネント324とを備える。ここで、図3Bに示す個々のコンポーネントの構造と動作とについて、図4のフローチャート400を参照しながら詳細に記述しよう。
スケーリングファクタ決定コンポーネント310の動作は、SNR決定コンポーネント312からSNR値を常に受信することで始まる。従って、ステップ402で、SNR決定コンポーネント312は、データ信号が復調器302によって受信されるフェージングチャネルに関連するSNR値を繰り返し決定する。本実施形態では、SNR決定コンポーネント312は、SNRを決定するが、他の実施形態では、SINRまたは同様のパラメータが代わりに決定されてもよいだろう。
図3Bに示すように、スケーリングファクタ決定コンポーネント310は、雑音判定コンポーネント312から個別のSNR値であるSNRを常に受信する。連続して受信されるSNR値は、当初、変換コンポーネント320に入力される。変換コンポーネント320は、関連のコードレート値Rを求めるために、各SNR値をコードレート領域に変換するように構成される。この変換によって、LTEシステムで適用される符号化変調方式の動作点を、スケーリングファクタ決定を目的として考慮に入れることが可能になる。この目的に達するために、各SNR値が、現在のSNR値に関してLTEシステムにおいて達成可能なスループット(または達成可能な送信レート)を示すコードレート値に変換される。
変換コンポーネント320によって適用される変換関数は、下記の平均化プロセスにおいて極値的なSNR値の寄与が低下するように選択される。これは、ゼロに近いコードレートを非常に低いSNR値に割り当て、そして現在使用されている符号化変調方式の最大レートに近いコードレートを非常に高いSNR値に割り当てることによって行われてもよい。
対応するレート変換関数f(SNR)は、所望の減衰効果が実現できるように人為的に作成されてもよい。代わりの実装によれば、レート変換関数f(SNR)が、現在使用されている変調方式ModのカットオフレートR0,Mod(SNR)を表すかまたはそれに近似しているとして選択される。
図5は、SNRの関数として、複数の変調方式(QPSK、16QAMおよび64QAM)についてのカットオフレートを図示する。図5から明らかなように、カットオフレートは、非常に低いSNR値についてはゼロに近く、非常に高いSNR値については最大値に近づくという、所望の特性を有する。言い換えると、カットオフレートは、SNR領域内で所望の減衰(または加重)効果を与えるコードレート領域内のパラメータとみなしうる。
任意の方策として、図5の関数が、図3Aに示すデコーダ308の実際の実装に適合されてもよい。具体的には、デコーダ308が、図5に図示する理論的な関数より幾分勝るかまたは劣る特性を有してもよい。このため、図5の適用可能な関数は、実際のデコーダの特性に依存して、SNR軸に沿って移動されてもよいだろう。代替のまたは追加の方策として、関数の入力SNR値は、実際のデコーダの特性に依存して、スケールされるかまたはオフセットされてもよい。
図3Bに戻るが、変換コンポーネント320によって生成される個別のコードレート値Rは、平均化コンポーネント322へ入力される。次いで、平均化コンポーネント322は、コードブロックに基づいてコードレート値Rを平均化する。
平均化は、一般に、1つのコードブロック内の(例えば1つのターボコードワード内の)すべての変調シンボルに対して行われてもよい。演算資源を節約するには、平均化プロセスの間に1つのコードブロックに含まれる変調シンボルの部分集合だけが検討されるように、変調シンボルを少なくするようにダウンサンプリングするという選択肢がある。
平均化コンポーネント322によって行われる平均化は、次式で表すことができる。
パラメータKは、1つのコードブロックの中に含まれる変調シンボルの数を示す。本実施形態では、レート変換関数は、 f(SNR)=R0,Mod(SNR)=R
である。
平均化コンポーネント322によって行われる平均化は、コードレート領域で行われる線形の平均化とみなすことができる。しかし、SNR領域の観点からは、平均化は、変換関数の具体的な特性のため、非線形のかたちで行われる。SNR領域の観点からは、上記の数式で表された平均化は、各SNR値が図5に示すカットオフレート関数によって表された関連の達成可能なチャネルスループットに従って加重された状態で、複数のSNR値に基づく加重平均の算出を表す(図4のステップ404)。
平均化コンポーネット322は、各コードブロックについて個別の平均レート値
を算出する。このように算出された平均レート値
は、図3Bに図示するようにマッピングコンポーネント324に与えられる。マッピングコンポーネント324は、各平均レート値
について、ソフトビット量子化のためのスケーリングファクタを判定する。平均レート値
は、雑音領域における加重平均を表すのだから、スケーリングファクタは、当初のSNR値の加重平均に依存してRとして効果的に判定される(図4のステップ406)。
マッピングコンポーネント324によって行われるマッピング動作は、個別の平均レート値
を個別のソフトビットスケーリングファクタQに関連付ける内部マッピングテーブルに基づいて行われる。平均化コンポーネント322から受信した特定の平均レート値
についてのテーブルエントリがテーブルに含まれない場合には、受信した平均レート値
に最も近いテーブルエントリを、スケーリングファクタの判定のために選択することができる。あるいは、テーブルが、平均レート値
の個別の範囲を個別のスケーリングファクタQに関連付けてもよいだろう。
通信システムにおいて複数の変調方式が適用されうる場合には、個別の変調方式の各々について、別個のマッピングテーブルが提供されてもよい。従って、マッピングコンポーネント324によって行われるテーブルルックアップ動作は、数学的には次式のように表されてもよい。
コードレート領域におけるSNRの非線形平均化のため、マッピングコンポーネント324によってアクセスされるルックアップテーブルは、平坦なチャネル条件について(すなわち、非フェージング環境について)提供されたものと同じであってもよい。従って、同じテーブルが、フェージング環境と非フェージング環境との両方について再利用されてもよい。
上記の例示的な実施形態では、スケーリングファクタ決定コンポーネント310が、平均化ステップより先に、SNR値をコードレート領域に変換する。ここで留意すべきだが、平均化は、例えば、ESM技法を含む加重の手法を用いてSNR領域で行われてもよいだろう。別の変形形態によれば、SNR領域における平均化には、低い方の閾値を下回るすべてのSNR値が、低い方の閾値のSNR値かまたはそれを上回るSNR値にマッピングされ、そして、高い方の閾値を上回るすべてのSNR値が、高い方の閾値のSNR値かまたはそれを下回るSNR値にマッピングされるような、SNR値のクリッピングが含まれてもよいだろう。2つの閾値の間のSNR値はいかなる値であっても、変化しないままであってもよい(すなわち、マッピングされない)。その結果、後続の平均化プロセスには、マッピングされた(すなわち加重された)SNR値とマッピングされないSNR値とが両方含まれる。
本書で述べた平均化プロセスには、スケーリングファクタを判定する時、符号化変調メカニズムの動作ポイントが考慮に入れられるという利点がある。従って、低コードレートについては、高SNR値に関連するソフトビットの分解能を維持することを保証することができる。他方、高コードレートについては、低SNR値に関連するソフトビットの分解能が維持される。この方策の結果として、ソフトビットの精度を最適化することができ、ハイブリッドARQのためのメモリ要件は減少するであろう。
一定の実装では、スケーリングファクタの最終判定は、テーブルルックアップ動作によって容易に実装することができる。有利なことだが、平坦なチャネルについての既存のテーブルと既知のコードパラメータとを再使用してもよいのだから、新たなテーブルを定義する必要はない。この再使用は、低SNR値と高SNR値との寄与を制限する非線形平均化の結果である。平均化を、レート領域で有利に行うことができ、非線形の関係は、適切な変換関数を単純に選択することによって実装されてもよい。
別の利点は、復号の性能をコードブロック毎に最適化することができるという事実である。言い換えると、個別のコードブロックの各々について、専用のスケーリングファクタを選択することができる。
本発明について、例示的な実施形態に関して記述してきたが、本書で論じた特定の詳細に限定されることは意図されていない。そうではなく、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ、限定される。

Claims (15)

  1. フェージングチャネル環境においてソフトビット量子化のためのスケーリングファクタを決定する方法であって、
    フェージングチャネルのSNR値を繰り返し検出するステップと、
    極値的なSNR値の寄与が小さくなるよう複数のSNR値の重み付けを行って、前記複数のSNR値に基づいた重み付け平均値を算出するステップと、
    前記重み付け平均値に応じてソフトビット量子化のための前記スケーリングファクタを決定するステップと
    を有し、
    前記重み付けは、検出された前記SNR値のそれぞれをコードレート領域の値に変換することで各SNR値に対応したコードレート値を生成する機能を持つ変換部によって実行されるものであり
    前記方法は、前記重み付け平均値を取得するために、前記変換部によって生成される複数のコードレート値を平均化処理するステップをさらに有することを特徴とする方法。
  2. 前記複数のSNR値のそれぞれは、達成可能なチャネルスループットにしたがって重み付けされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記重み付け平均値は、有効SNR計量法を用いて算出されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記コードレート値のそれぞれは、関連したSNR値によって達成可能なコードレートを示す値であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記コードレート値は、特定のSNR値に関連したカットオフレートを示す値であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記重み付け平均値の算出は、所定数の変調シンボルを含んだ1つのコードブロックにわたって実行されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記重み付け平均値の算出は、前記コードブロックに含まれている前記所定数のシンボルのサブセットだけを考慮して実行されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. 前記スケーリングファクタを決定するステップは、重み付け平均値の範囲または値のそれぞれとスケーリングファクタのそれぞれとを関連付ける関係を参照するステップを含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 複数の変調方式のそれぞれについて個々の前記関係が付与されており、前記スケーリングファクタを決定するステップは、現時点で適用されている変調方式に関連付けられている前記関係を選択するステップを備えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 前記方法は、リンクアダプテーション方式とハイブリッドARQ方式とのうち少なくともひとつと組み合わせて実行されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
  11. コンピュータプログラムであって、
    請求項1ないし10のいずれか1項に記載された方法をコンピュータデバイスに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
  12. コンピュータデバイスによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されていることを特徴とする請求項11に記載のコンピュータプログラム。
  13. フェージングチャネル環境においてソフトビット量子化のためのスケーリングファクタを決定するデコーダであって、
    フェージングチャネルのSNR値を繰り返し検出する第1コンポーネントと、
    極値的なSNR値の寄与が小さくなるよう複数のSNR値の重み付けを行って、前記複数のSNR値に基づいた重み付け平均値を算出するプロセッサと、
    前記重み付け平均値に応じてソフトビット量子化のための前記スケーリングファクタを決定する第2コンポーネントと
    を備え、
    前記プロセッサは、各SNR値に対応したコードレート値を生成するために、検出された前記SNR値のそれぞれをコードレート領域の値に変換することによって前記重み付けを実行するとともに、前記重み付け平均値を取得するために、前記変換により生成した複数のコードレート値を平均化処理することを特徴とするデコーダ
  14. 前記プロセッサは、有効SNR計量法を用いて前記重み付け平均値を算出することを特徴とする請求項13に記載のデコーダ
  15. 前記第2コンポーネントは、前記重み付け平均値の範囲又は値のそれぞれと複数のケーリングファクタのそれぞれとを関連付けたマッピングテーブルを備えることを特徴とする請求項13または14に記載のデコーダ
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