JP5667806B2 - パンツタイプ使い捨ておむつ - Google Patents

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Description

本発明は、フィット性、薄さ及び柔軟性を兼ね備えた外装シートを有するパンツタイプ使い捨ておむつに関する。
パンツタイプ使い捨ておむつは、前身頃及び後身頃を有する外装シートと、この外装シートの内面に固定された、吸収体を含む内装体とを備え、前記外装シートの前身頃と後身頃とが両側部において接合されることにより、ウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成されているものである。
パンツタイプ使い捨ておむつにおいては、身体へのフィット性を向上させるために、外装シートに、種々の弾性部材を伸長状態で固定することが行われており(例えば特許文献1〜7参照)、中でも、ウエスト部弾性部材、腰回り弾性部材及び湾曲弾性部材を備えているもの(特許文献6記載に代表される)は、比較的に身体に対するフィット性が高いものとなっている。ここに、ウエスト部弾性部材は、ウエスト開口部の縁部に、縦方向に間隔を空けて幅方向に沿って複数本平行に配置されているものである。また、腰回り弾性部材は、ウエスト部弾性部材よりも前後方向中央部側の領域に、縦方向に間隔を空けて幅方向に沿って配置されているものである。さらに、湾曲弾性部材は、前身頃及び後身頃の少なくとも一方の両側部から、幅方向中央に向かうにつれて反対の身頃側へ向かうように湾曲しつつ延在するものである。
しかしながら、従来の一般的なパンツタイプ使い捨ておむつにおいては、普通の下着と違って股間部がモコモコするという問題点があった。そして、本発明者らの研究によれば、この問題点の原因の一つは、臀裂から股間にかけての部分において吸収体が身体から浮くこと、つまり当該部位におけるフィット性が不十分であることであった。
この問題点に対して、臀裂のフィット性を改善するものとしては、背側の湾曲弾性部材を股間横断部においてウエスト開口部側に凸状に突出する配置としたもの等、種々の形態が提案されている(例えば、特許文献8,9参照)が、おむつ内面は臀裂にフィットする形状となるものの、フィットした状態に維持され難く、臀裂から股間にかけてのフィット性が不十分となり易いという問題点があった。
特開平7−265357号公報 特開平7−299094号公報 特開平11−36103号公報 特開2001−258931号公報 特開2001−204762号公報 特開2006−043415号公報 特表2007−113978号公報 特開2007−97621号公報 特開2008−253289号公報
そこで本発明の主たる課題は、臀裂から股間にかけてのフィット性を改善し、装着時に股間部がモコモコし難い、パンツタイプ使い捨ておむつを提供することにある。
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
<請求項1記載の発明>
前身頃及び後身頃を形成する外装シートと、この外装シートの内面に固定された、吸収体を含む内装体とを備え、前記前身頃における外装シートの両側部と後身頃における外装シートの両側部とがそれぞれ接合されてサイドシール部が形成されることにより、ウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成された、パンツタイプ使い捨ておむつにおいて、
前身頃の右のサイドシール部から前身頃の右のレッグ開口部に沿って股間部における右側部に至り、股間部における右側部から更に幅方向中央側に向かいつつ後側に向かうように湾曲して後身頃の幅方向中央部に位置する臀裂対向部に至り、臀裂対向部において前側に折り返され、更に左側に向かいつつ前側に向かうように湾曲して股間部の左側部に至り、股間部における左側部から前身頃の左のレッグ開口部に沿って前身頃の左のサイドシール部に至る;細長状の腹側湾曲弾性部材が、その長手方向に所定の伸長率で伸長された状態で固定されており、
前記腹側湾曲弾性部材は、前記内装体と重なる部分のうち前記臀裂対向部に位置する部分を除いた部分では細かく切断され、前記臀裂対向部に位置する部分及び前記内装体と重ならない部分は細かく切断されずに連続部分として残されており、
この連続部分として残された腹側湾曲弾性部材によって、少なくとも後身頃の臀裂対向部及び前身頃における左右のレッグ開口部に沿う部分に収縮力が作用するように構成されている、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
(作用効果)
このような腹側湾曲弾性部材を設けると、腹側湾曲弾性部材のうち臀裂対向部に位置する部分により囲まれる略扇状の部分が峰状に隆起して臀裂に入り込む立体形状となり、さらにこの隆起部分から股間部にかけての部分は、腹側湾曲弾性部材のうち股間部から前身頃の両サイドシール部に至る左右両側の部分により鼠蹊部に沿ってウエスト側に引っ張られ、臀裂から股間にかけてフィットするようになる。よって、本発明によれば、臀裂から股間にかけて良好にフィットするとともに、装着時に股間部がモコモコし難くなる。また、もちろん、このような腹側湾曲弾性部材は鼠蹊部に対するフィット性を向上させる機能も発揮する。
<請求項2記載の発明>
後身頃の右のサイドシール部から後身頃の右のレッグ開口部に沿って前側に向かい、更に臀裂対向部を右から左へ幅方向に横切りつつ後向きに方向転換され、更に後身頃の左のレッグ開口部に沿って後身頃の左のサイドシール部に至る;細長状の背側湾曲弾性部材が、その長手方向に所定の伸長率で伸長された状態で固定されており、
この背側湾曲弾性部材によって、少なくとも後身頃の臀裂対向部及び後身頃における左右のレッグ開口部に沿う部分に収縮力が作用するように構成されている、
背側湾曲弾性部材、請求項1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
(作用効果)
このような背側湾曲弾性部材を設けることにより、前述した隆起部分の隆起形状が弾力的に維持され、本発明の股間及び臀裂のフィット作用がより弾力的になるため好ましい。もちろん、このような背側湾曲弾性部材は、臀溝に対するフィット性を向上させる機能も発揮する。
<請求項3記載の発明>
前記腹側湾曲弾性部材及び背側湾曲弾性部材は、前記内装体と重なる部分のうち前記臀裂対向部に位置する部分を除いた部分では細かく切断され、前記臀裂対向部に位置する部分及び前記内装体と重ならない部分は細かく切断されずに連続部分として残されている、請求項2記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
(作用効果)
このように、腹側湾曲弾性部材及び背側湾曲弾性部材のうち内装体と重なる部分を、臀裂対向部に位置する部分を除いて細かく切断することにより、内装体を不必要に収縮させずに、前述の本発明の作用により股間から臀裂に対するフィット性を向上させることができ、もって股間から臀裂に対するフィット性がより一層のものとなる。
<請求項4記載の発明>
前身頃における縦方向の弾性変形時引張応力が、後身頃における縦方向の弾性変形時引張応力よりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
(作用効果)
このように、前身頃における縦方向の弾性変形時の引張応力を後身頃のそれよりも大きくすると、装着状態においては、後身頃の縦方向収縮力に抗する前身頃の縦方向収縮力によって、おむつの股間部から臀裂対向部にかけての部分が前側に移動しつつ持ち上がった状態で弾力的にバランスするため、前述した隆起部分の臀裂へのフィット作用がより一層のものとなる。
<請求項5記載の発明>
前記前身頃における外装シート及び後身頃における外装シートのそれぞれにおいて、ウエスト開口部の縁部に、幅方向に沿って延在する細長状のウエスト部弾性部材が複数本縦方向に間隔を空けてそれぞれ幅方向に沿って所定の伸長率で伸長された状態で固定されるとともに、前記ウエスト部弾性部材よりも前後方向中央部側の領域に、幅方向に沿って延在する細長状の腰回り弾性部材が複数本縦方向に間隔を空けてそれぞれ幅方向に沿って所定の伸長率で伸長された状態で固定されている、請求項4記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
(作用効果)
このような幅方向に沿うウエスト部弾性部材及び腰回り弾性部材により周方向の締め付けを行う構成とすると、周方向の締め付け力を十分に確保でき、これを支えとして腹側湾曲弾性部材及び背側湾曲弾性部材の収縮作用が確実に発揮されるとともに、腹側湾曲弾性部材及び背側湾曲弾性部材のバランス作用に対してウエスト弾性部材及び腰回り弾性部材の収縮力が悪影響を及ぼし難いため好ましい。
<請求項6記載の発明>
前記外装シートは、少なくとも前記ウエスト部弾性部材、腰回り弾性部材、腹側湾曲弾性部材及び背側湾曲弾性部材を有する部分では複数枚の不織布が接着剤で張り合わせてなるとともに、それら不織布間に前記ウエスト部弾性部材、腰回り弾性部材、腹側湾曲弾性部材及び背側湾曲弾性部材が挟持固定されており、
前記外装シートの坪量は30〜75g/m2であり、
前記前身頃及び後身頃におけるウエスト部弾性部材は、それぞれ、太さ470〜1240dtex、本数が5〜10本、間隔が0〜5mm、及び固定時の伸長率が200〜350%であり、
前記前身頃及び後身頃における腰回り部弾性部材は、それぞれ、太さ470〜940dtex、本数が6〜26本、間隔が10〜40mm、及び固定時の伸長率が200〜350%であり、
前記腹側湾曲弾性部材は、太さ620〜1,240dtex、本数が3〜10本、間隔が10〜35mm、及び固定時の伸長率が230〜380%で且つ前記背側湾曲弾性部材より高い伸長率であり、かつ
前記背側湾曲弾性部材は、太さ620〜1,240dtex、本数が3〜10本、間隔が10〜35mm、及び固定時の伸長率が200〜350%である、
請求項5記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
(作用効果)
本発明は、このような構造の外装シートにおいて、このように各弾性部材を設けるのが好ましい。
以上のとおり、本発明によれば、臀裂から股間にかけてのフィット性が改善され、装着時に股間部がモコモコし難くなる、等の利点がもたらされる。
展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(内面側)である。 展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(外面側)である。 展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの要部平面図である。 図1のC−C断面図である。 図1のA−A断面図である。 図1のB−B断面図である。 接着剤塗布パターンを示す平面図である。 弾性部材の配置パターン及びカットパターンを示す平面図である。 パンツタイプ使い捨ておむつの装着状態の斜視図である。 パンツタイプ使い捨ておむつの装着状態の背面図である。 図1のD−D断面図である。 従来のパンツタイプ使い捨ておむつの装着状態の背面図である。 弾性部材の配置パターン及びカットパターンを示す平面図である。 弾性部材の配置パターンを示す平面図である。
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。
図1〜図11はパンツタイプ使い捨ておむつの実施の形態を示している。このパンツタイプ使い捨ておむつ1(以下、単におむつともいう。)は、前身頃F及び後身頃Bを形成する外装シート20と、この外装シート20の内面に固定され一体化された内装体10とを有しており、内装体10は液透過性表面シート11と液不透過性裏面側シート12との間に吸収体13が介在されてなるものである。製造に際しては、外装シート20の内面(上面)に対して内装体10の裏面がホットメルト接着剤Gなどの接合手段によって固定された後に、内装体10および外装シート20が前身頃F及び後身頃Bの境界である縦方向(前後方向)中央で折り畳まれ、その両側部が相互に熱溶着またはホットメルト接着剤などによって接合され、サイドシール部21,22が形成されることによって、ウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成されたパンツタイプ使い捨ておむつとなる。
(外装シートの構造例)
外装シート20は、図4〜図6にも示されるように、それぞれ上層不織布20A及び下層不織布20B(つまり、この形態では下層不織布が最外側不織布となる)からなる2層構造の不織布シートとされ、上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間、及び下層不織布20Bをウエスト開口縁で内面側に折り返してなる折り返し部分20Cの不織布間に各種弾性部材が伸長状態で挟持固定され、伸縮性が付与されている。平面形状は、中間両側部に夫々脚部開口を形成するために形成された凹状の脚回りライン29により、全体として擬似砂時計形状をなしている。弾性部材としては、合成ゴムや天然ゴムを糸状、紐状、網状、シート状等の任意の形態に加工したものを用いることができる。
外装シート20に設けられる弾性部材は、図1〜3及び図9〜10には収縮力作用部分のみが示され、図7及び図8には取り付け部分の全てが示されている。図示形態の外装シート20においては、前身頃F及び後身頃Bのそれぞれにおいて、ウエスト開口部近傍23に配置されたウエスト部弾性部材24,24…と、ウエスト部弾性部材24,24…よりも股間側に配置された、縦方向に間隔をおいて幅方向に沿って配置された複数の腰回り弾性部材25,25…と、腰回り弾性部材群25,25…とは別に、前身頃Fと後身頃Bとを接合する両サイドシール部21,22から各側のレッグ開口部に沿って股間部へ向かうように湾曲しつつ延在する湾曲弾性部材26…,28…と、を備えている。なお、本外装シート20では、湾曲弾性部材26…,28…により脚周りに対するフィット性が確保されるため、脚回りライン29に沿って前身頃Fから後身頃Bまで実質的に連続する脚回り弾性部材は設けられていない。
ウエスト部弾性部材24,24…は、サイドシール部21,22を有する縦方向範囲のうち、ウエスト開口縁近傍に上下方向に間隔をおいて配設された複数条の糸ゴム状弾性部材であり、身体のウエスト部回りを締め付けるように伸縮力を与えることによりおむつのウエスト開口縁を身体に装着するためのものである。このウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材を用いてもよい。また、図示形態のウエスト部弾性部材24,24…は、ウエスト部における下層不織布20Bの折り返し部分20Cの不織布間に挟持されているが、上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間に挟持しても良い。
腰回り弾性部材25,25…は、サイドシール部21,22と対応する縦方向範囲、及びそれよりも股間側の範囲のうち、概ね上部から下部までの範囲に亘り、上下方向に間隔をおいて幅方向に沿って配設された糸ゴム等の細長状弾性部材であり、前身頃F及び後身頃Bの腰回り部分に夫々幅方向の伸縮力を与え、おむつを身体に密着させるためのものである。なお、ウエスト部弾性部材24,24…と腰回り弾性部材25,25…との境界は必ずしも明確でなくてよい。例えば、前身頃F及び後身頃Bに上下方向に間隔をおいて幅方向に配置された弾性部材の内、数は特定できなくても、上部側の何本かがウエスト部弾性部材として機能し、残りの弾性部材が腰回り弾性部材として機能していればよい。
腹側湾曲弾性部材28…は、前身頃Fの右のサイドシール部21から前身頃Fの右のレッグ開口部に沿って股間部における右側部に至り、股間部における右側部から更に幅方向中央側に向かいつつ後側に向かうように湾曲して後身頃Bの幅方向中央部に位置する臀裂対向部に至り、臀裂対向部において略V字状をなすように前側に折り返され、更に左側に向かいつつ前側に向かうように湾曲して股間部の左側部に至り、股間部における左側部から前身頃Fの左のレッグ開口部に沿って前身頃Fの左のサイドシール部21に至るパターンをもって、長手方向に所定の伸長率で伸長された状態で固定されているものである。
一方、背側湾曲弾性部材26…は、後身頃Bの右のサイドシール部22から後身頃Bの右のレッグ開口部に沿って臀裂対向部の右側部に至り、臀裂対向部における右側部から左側部まで幅方向に横切りつつ後向きに方向転換され、臀裂対向部の左側部から後身頃Bの左のレッグ開口部に沿って後身頃Bの左のサイドシール部22に至るパターンをもって、長手方向に所定の伸長率で伸長された状態で固定されているものである。背側湾曲弾性部材26…は省略したり、後述する図13の例のように他の配置とすることもできる。
特に、図2と図8との対比からも分るように、本実施形態では、前身頃F及び後身頃Bに配置された腰回り弾性部材25,25…及び湾曲弾性部材26…,28…は、湾曲弾性部材26…,28…の臀裂対向部に位置する部分26d,28dを除いて、内装体10を横切る部分が細かく切断されており、弾性部材の細かな切断片(図示略)が残っているものの収縮力が作用しない非伸縮領域とされている。すなわち、図8に示すように、腰回り弾性部材25,25…及び湾曲弾性部材26…,28…を、一方側の側部接合縁22から内装体10を横切って他方(反対)側の側部接合縁22まで連続的に設けた後に、臀裂対向部を残すような所定の切断パターンCPにより内装体10を横切る部分を細かく切断し、収縮力が採用しないようにするものである。弾性部材25,26,28を内装体10と重なる部分で不連続とすることにより、内装体10(特に吸収体13)の幅方向の収縮を防止することができる。この非伸縮領域は弾性部材を全く取り付けないことにより形成することもできる。もちろん、腰回り弾性部材25,25…及び湾曲弾性部材26…,28…のうち少なくとも一部を、内装体10と重なる部分において切断せずに、内装体10を横切って連続的に配置することもできる。いずれにせよ、本発明では、腹側湾曲弾性部材28…によって、少なくとも後身頃Bの臀裂対向部及び前身頃Fにおける左右のレッグ開口部に沿う部分に収縮力が作用するように構成される。
湾曲弾性部材26,28…は、その長手方向中間に縦方向との鋭角側交差角θ(以下、縦方向交差角ともいう)が最小となる最小点を有するとともに、この最小点から幅方向両側に向かうにつれて縦方向交差角θが0度〜90度の範囲内で増加する所定の曲線であって、且つおむつを展開した状態で内装体10の両側部と重なる領域内に縦方向交差角θが60°以下となる交差部分70を有する所定の曲線に沿って配置するのが好ましい。湾曲弾性部材26…,28…は図示例のようにその全体が湾曲している形態の他、部分的に直線状の部分を有する形態も採用することができる。
湾曲弾性部材26…,28…は、一本であっても良いが複数本であるのが好ましく、特に、複数本の弾性伸縮部材を間隔を密にして実質的に一束として配置するのではなく、図示例のように、互いに交差することなく所定の伸縮ゾーンを形成するように所定の間隔を空けて複数本配置されるのが好ましい。
また、湾曲弾性部材26…,28…を、前身頃F及び後身頃Bの両方に設ける場合、図8に示すように、腹側湾曲弾性部材28…の群の一部又は全部と、背側湾曲弾性部材26…の群の一部又は全部とが股間部又はその前側若しくは後側近傍で交差する弾性部材の配置パターンの他、図13に示すように、腹側湾曲弾性部材28…の群と、背側湾曲弾性部材26…の群とは互いに交差することなく後身頃Bにおける前後方向中間部で縦方向に離間している形態が好適であり、その最小縦方向離間距離は10〜20mm程度とするのが好ましい。
上述した外装シート20は、例えば特開平4−28363号公報や、特開平11−332913号公報記載の技術により製造することができる。また、湾曲弾性部材26…,28…を内装体10上で切断し不連続化するには、特開2002−35029号公報、特開2002−178428号公報及び特開2002−273808号公報に記載される切断方法が好適に採用される。
特に腹側湾曲弾性部材28…の配置に関して、臀裂対向部における折り返し角度が図示例のように急角度(例えば40〜60度程度)であると、上述の公知の技術による製造が困難となる。すなわち、製造ラインにおいて高速移送中の外装シート20となる素材に対して腹側湾曲弾性部材28…となる細長状弾性部材を急角度に揺動して取り付けようとすると、弾性部材28…が切断する等の問題を生じ易い。そこでこれを解決するため、図14に示すように、帯状の外装シート素材20Vにおいてライン流れ方向に並ぶ個々のおむつとなる部分DPに対し、細長状弾性部材群G1(図中点線),G2(図中実線)を2系統供給し、いずれか一方が腹側湾曲弾性部材の左半分LHをなし、他方が右半分RHをなし、腹側湾曲弾性部材の左半分LHをなす細長状弾性部材群と右半分RHをなす細長状弾性部材群とが隣接する個々のおむつとなる部分DPにおいて交互に入れ替わり、かつ各細長状弾性部材群G1,G2は隣り合う臀裂対向部の折り返し位置間LRがライン流れ方向に沿って直線状をなすように、両系統の細長状弾性部材群G1,G2を相互独立に逆位相で揺動させて取り付けることも提案する。これにより、各細長状弾性部材群G1,G2の揺動を急激に行うことなく、腹側湾曲弾性部材28の臀裂対向部における折り返し角度を急角度とすることができる。また、この製造形態からも分かるように、腹側湾曲弾性部材28…(背側湾曲弾性部材26…も同様)は、単一の細長状弾性部材を取り付けて構成するだけでなく、複数の細長状弾性部材を実質的に連続する(繋がる)ように取り付けて構成することも可能である。
(屈曲フィット部)
特徴的には、図10及び図11にも示すように、腹側湾曲弾性部材28…のうち臀裂対向部に位置する部分28dにより囲まれる略扇状の部分が峰状に隆起して、臀裂に入り込む立体形状の屈曲フィット部40となり、さらにこの屈曲フィット部40から股間部にかけての部分は、腹側湾曲弾性部材28…のうち股間部から前身頃Fの両サイドシール部21,21に至る左右両側の部分により鼠蹊部に沿ってウエスト側に引っ張られ、臀裂から股間にかけて良好にフィットするようになり、装着時に股間部がモコモコし難くなる。そして、この屈曲フィット部40の屈曲形状は、腹側湾曲弾性部材28のうち臀裂対向部に位置する部分28dの収縮作用によって弾力的に維持され、さらに図示形態の場合、背側湾曲弾性部材26のうち臀裂対向部に位置する部分26dの幅方向の収縮作用によって、より一層弾力的に維持される。図11中の二点鎖線で示される部分は折れ曲った状態の屈曲フィット部40を示している。これに対して、従来の一般的なパンツタイプ使い捨ておむつでは、図12に示すように、臀裂対向部が膨出して肌から大きく離間する結果、股間部がモコモコし、普通の下着と顕著に異なる違和感が発生する。
上述の屈曲フィット部40は、吸収体13における臀裂対向部に縦方向に沿う溝41やスリットを設ける等によってその形成を補助することもでき、その場合、適切な位置を折り目として屈曲フィット部40が形成され、またその形状も維持され易くなる。
臀裂対向部における弾性部材26d,28dの収縮力作用部分(弾性部材26d,28dが切断されずに連続している領域)の寸法は適宜定めることができるが、幅は吸収体13よりも狭く、例えば40〜90mmの範囲内とするのが望ましく、前後方向長さは吸収体13の前後方向長さの1/5〜1/2程度とするのが望ましい。また、その前端は前後方向中央又はその近傍に位置しているのが好ましい。前述の切断パターンにおける非切断部分NCは、収縮力作用部分と同じ形状で、同じ又は若干大きめの寸法となる。また、前述の吸収体13に設ける溝41又はスリットの前後方向長さ及び幅は、この収縮力作用部分より短くても、長くても、同じでも良いが、幅については収縮力作用部分未満とするのが好ましい。
(縦方向の弾性変形時引張応力のバランス)
また、本発明では、前身頃Fにおける縦方向の弾性変形時引張応力が、後身頃Bにおける縦方向の弾性変形時引張応力よりも大きくなる前後収縮力バランスとするのが好ましい。弾性変形時引張応力は、おむつの両サイドシール部21,22を剥がして展開状態にした後、測定対象身頃のウエスト開口縁部と、測定対象でない反対の身頃の股間側端部とを引張試験機のチャックでそれぞれ掴み、引張試験を行うことにより計測することができる。弾性変形時引張応力の差は適宜定めることができるが、前身頃Fにおける80%伸長時の縦方向の弾性変形時引張応力が、後身頃Bにおけるそれの1.1〜1.2倍程度であるのが好ましい。なお、このことからも分かるように、弾性変形時引張応力の大小は同じ伸長率(伸長率250〜300%の範囲内とするのが好ましい)での大小を意味する。
このように前身頃Fにおける縦方向の弾性変形時の引張応力を後身頃Bのそれよりも大きくすると、図10及び図11に示すように、装着状態においては、後身頃Bの縦方向収縮力に抗する前身頃Fの縦方向収縮力によって、おむつの股間部から臀裂対向部にかけての部分が前側に移動しつつ持ち上がった状態で弾力的にバランスするため、前述した屈曲フィット部40の臀裂へのフィット作用がより一層のものとなる。
図示例では、このような前後収縮力バランスを腹側湾曲弾性部材28…及び背側湾曲弾性部材26…のみで形成しているが、これらとともに、あるいは背側湾曲弾性部材26に代えて、細長状、シート状等の弾性部材を幅方向中間部に縦方向に沿って伸長状態で固定することにより形成しても良い(図示略)。
前述の前後収縮力バランスは、各身頃F,Bにおける縦方向の弾性変形時引張応力の因子、例えば収縮力が縦方向の分力を有する弾性部材26…,28…の太さ、伸長率、本数等の少なくとも一つを前後で異ならしめることにより実現できる。弾性部材26…,28…の太さ等を調整する場合、弾性部材26…,28…の本数は、おむつのサイズや配置に応じて定めるのが好ましいため、その配置及び本数を基本として、前述の前後収縮力バランスが得られるように、太さ及び伸長率の少なくとも一方を、後身頃Bよりも前身頃Fが太く又は高くなるようにするのが好ましい。
具体的に、図示例の場合には次の範囲内で各部の仕様を定めるのが好ましい。なお、弾性部材の太さの単位をdtexに統一しているが、合成ゴムに限定するものではなく、天然ゴムを用いることもでき、天然ゴムを用いる場合の単位dtexとは、当該dtexの合成ゴムと同等のSSカーブを有する天然ゴムの太さ(例:ウエスト部弾性部材24に天然ゴムを用いる場合は0.5mm〜3.0mm)を意味するものである。
・外装シート20
素材:不織布
坪量:30〜75g/m2、特に36〜60g/m2
・前身頃F及び後身頃Bのウエスト部弾性部材24
太さ:470〜1,240dtex、特に940〜1,240dtex
本数:5〜10本、特に8〜10本(各身頃)
間隔:0〜5mm、特に3〜5mm
固定時の伸長率:200〜350%、特に250〜300%
・前身頃F及び後身頃Bの腰回り部弾性部材25
太さ:470〜1,240dtex、特に470〜620dtex
本数:6〜26本、特に8〜16本
間隔:10〜40mm、特に15〜35mm
固定時の伸長率:200〜350%、特に250〜300%
・腹側湾曲弾性部材28(臀裂対向部に位置する部分も含む)
太さ:620〜1,240dtex、特に620〜940dtex
本数:3〜10本、特に5〜10本
間隔:10〜35mm、特に16〜32mm
固定時の伸長率:230〜380%、特に300〜380%で且つ背側湾曲弾性部材26より高い伸長率
・背側湾曲弾性部材26(臀裂対向部に位置する部分も含む)
太さ:620〜1,240dtex、特に620〜940dtex
本数:3〜10本、特に5〜10本
間隔:10〜35mm、特に16〜32mm
固定時の伸長率:200〜350%、特に250〜300%
(外装シートの柔軟化に関する構成)
腰回り弾性部材25…を有する縦方向範囲と湾曲弾性部材26…,28…を有する縦方向範囲31とが一部(又は全部でも良い)重複しており、且つこの重複範囲30内に腰回り弾性部材25…が複数本(例えば5〜10本程度)含まれるとともに、そのうちの少なくとも一部の腰回り弾性部材25…の相互間隔d1が他の腰回り弾性部材25…の相互間隔d2よりも広くなっていると好ましい。また、重複範囲30外においても、湾曲弾性部材26…,28…を有する縦方向範囲31とウエスト部弾性部材24を有する縦方向範囲との間の中間範囲32に、腰回り弾性部材25…が複数本(例えば10〜16本程度)設けられていると好ましい。
このように、腰回り弾性部材25…を有する縦方向範囲と湾曲弾性部材26…,28…を有する縦方向範囲との重複範囲30をある程度許容しつつ、その範囲内に腰回り弾性部材25…の相互間隔の広い部分を設けることによって、フィット性を損ねずに、弾性部材の密集を抑制することができる。その結果、上記重複範囲30において外装シート20にプリーツが密集せず、厚みの不必要な増加、弾性部材自体及びその接着による硬質化が抑制され、もって柔軟で快適な装着感が得られるようになる。
通常の場合、上述の腰回り弾性部材25…の相互間隔d1は15〜50mm程度、他の腰回り弾性部材25…の相互間隔d2は10〜20mm程度とするのが好ましい。また、重複範囲30の縦方向長さは展開状態でのおむつの全長の15〜30%程度であるのが好ましく、重複範囲30に占める腰回り弾性部材25…の相互間隔の広い間隔部分35の割合は縦方向長さの比(すなわち、間隔d1の総和/重複範囲30の縦方向長さ)で60〜100%程度であるのが好ましい。上記重複範囲30が狭すぎると、腰回り弾性部材25…の間隔を広げる意義が薄くなり、広過ぎると腰回り弾性部材25…の間隔の広い部分35が増加することによりフィット性が低下する。また、上記重複範囲30内に占める腰回り弾性部材25…の相互間隔の広い部分35の割合が少な過ぎると柔軟性の向上は見込めるものの顕著な向上は困難となる。
具体的に、図示例の場合、重複範囲30に占める腰回り弾性部材25…の相互間隔d1の広い部分35の割合は、前身頃Fでは40%程度、後身頃Bでは100%となっている。このように、柔軟性向上に関する構成は、前身頃Fと後身頃Bとで異ならしめることができ、外装シート20における前身頃F及び後身頃Bのいずれか一方にのみ適用することも可能である(以下同じ)。
他方、ウエスト部弾性部材24、腰回り弾性部材25…及び湾曲弾性部材26…,28…は、外装シート20を構成する一対のシート層20A,20Bの間に挟まれるとともに、それらシート層20A,20Bに対して接着剤により接着固定されており、その接着剤塗布量は外装シート20の柔軟性を大きく左右する。よって、図7に示すように、その接着剤による接着部分B1,B2は、ウエスト部弾性部材24の配置部分及びその近傍、腰回り弾性部材25…の配置部分及びその近傍、湾曲弾性部材26…,28…の配置部分及びその縦横各所定距離a以内(通常の場合±25mm以内、より好ましくは±10mm以内、特に好ましくは±5mm以内)の領域のみとし、これらの接着剤以外には両シート層間に接着剤を塗布しないようにするのが好ましい。このように、接着剤塗布部分を可能な限り低減することにより、接着剤による硬質化を各段に抑制することができる。しかも、これと前述の腰回り弾性部材25…の局所的間隔増大とが組み合わさると、予想以上の柔軟性向上効果が得られる。
図7は、製造工程におけるホットメルト接着剤の塗布部位B1,B2を示しており、湾曲弾性部材26…,28…は二点鎖線で示されるように内装体10を横切る部分の切断前の状態を示している。ウエスト部弾性部材24及び腰回り弾性部材25…を両シート層20A,20Bに固定するための接着剤B1,B2は、実質的に各弾性部材24,25の配置部位及びその近傍にのみ塗布されている。このような接着剤の塗布は、外周面に接着剤を塗布した弾性部材24,25を両シート層20A,20Bで挟むことにより実現することができ、そのような弾性部材24,25の外周面への接着剤の塗布はノードソン社のシュアラップノズルにより行うことができる。
一方、湾曲弾性部材26…,28…を両シート層20A,20Bに固定するための接着剤は、矩形の接着剤塗布部分B2が湾曲弾性部材26…,28…の湾曲方向に沿って階段状に並設されることにより、湾曲弾性部材26…,28…の長手方向全体にわたり、湾曲弾性部材26…,28…の配置部分及びその縦横各所定距離a以内の領域にのみ接着剤が塗布されている。このような接着剤の塗布は、塗布工程においてシート層20A,20Bの横方向(おむつの幅方向)がラインMD方向(流れ方向)に沿う通常の形態では、ラインCD方向(MD方向と交差する方向)に複数のスロット塗布ノズルを並設し、各ノズルから独立的かつ間欠的に接着剤を塗布することにより行うことができる。
(内装体の構造例)
内装体10は、図4〜図6に示すように、不織布などからなる液透過性表面シート11と、ポリエチレン等からなる液不透過性裏面側シート12との間に、吸収体13を介在させた構造を有しており、表面シート11を透過した排泄液を吸収保持するものである。
吸収体13の表面側(肌当接面側)を覆う液透過性表面シート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。液透過性表面シート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。液透過性表面シート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在している。
吸収体13の裏面側(非肌当接面側)を覆う液不透過性裏面側シート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
吸収体13としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができ、図示例では平面形状を略方形状として成形されたものが使用され、その幅寸法は股間部への当たりによって着用者にゴワ付き感を与えない寸法幅となっている。この吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート14によって包装することができる。吸収体13の形状は、図示形態のように長方形状とする他、背側及び腹側に対して股間部の幅が狭い砂時計形状(括れ形状)とすることもできる。
内装体10の両側部には脚周りにフィットする立体ギャザーBSが形成されているのが好ましい。この立体ギャザーBSはギャザー不織布15により形成される、ギャザー不織布としては、図5及び図6に示されるように、折返しによって二重シートとした不織布が好適に用いられ、液透過性表面シート11によって巻き込まれた吸収体13の側縁部をさらにその上側から巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されている。より具体的には、ギャザー不織布15は、おむつ1の長手方向中間部では、立体ギャザーBS形成部分を残し、幅方向中間部から吸収体13の裏面側に亘る範囲がホットメルト接着剤等によって接着され、また長手方向前後端部では、幅方向中間部から一方側端縁までの区間が吸収体13の裏面側に亘る範囲で接着されるとともに、立体ギャザーBSを形成する部分を吸収体13の上面部にて折り畳むようにしながらホットメルト接着剤等により接着している。
二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布15の内部には、起立先端側部分に複数本の糸状弾性伸縮部材16、16…が配設されている。糸状弾性伸縮部材16、16…は、製品状態において図5に二点鎖線で示すように、弾性伸縮力により吸収体側縁部より突出する不織布部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
液不透過性裏面側シート12は、二重シート状のギャザー不織布15の内部まで進入し、図5に示されるように、立体ギャザーBSの下端側において防漏壁を構成するようになっている。この液不透過性裏面側シート12としては、排便や尿などの褐色が出ないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
糸状弾性伸縮部材16としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150〜350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、糸状弾性伸縮部材に代えて、ある程度の幅を有するテープ状弾性伸縮部材を用いるようにしてもよい。
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も液透過性表面シート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザー不織布15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
(内装体と外装シートとの固定)
内装体10と外装シート20との固定は特に限定されないが、図3に示すように、おむつを展開した状態で、湾曲弾性部材26…,28…と縦方向との鋭角側交差角θが60°以下となる交差部分70(図3で二点鎖線で囲まれた点模様部分)のうち80%以上の縦方向範囲(図示例では全縦方向範囲)では、外装シート20と内装体10とが非固定とされ、これ以外の部分80,81,82において外装シート20と内装体10とがホットメルト接着剤等の接合手段により固定されていると好ましい。これにより、湾曲弾性部材26…,28…の収縮力が内装体10の側部に殆ど又は全く加わらなくなり、その結果、湾曲弾性部材26…,28…と内装体10の両側部とが重なる領域においてもおむつの厚み及び硬さが周囲と同程度となり、内装体10の内面に横皺も発生し難くなる。なお、交差部分70のうち80%以上の縦方向範囲が固定部となる限り、図示例のように全体にわたり連続的に固定する形態だけでなく、交差部分のうちの一部を非固定としたり、また交差部分内で間欠的に固定したりすることも可能である。
他方、上述のように、交差部分70を含む範囲に非固定領域71を設けると、交差部分70と同じ縦方向範囲では、外装シート20と内装体10との固定領域が少なくならざるを得ない。よって、おむつを展開した状態で、縦方向の位置が交差部分70と同じ範囲では、交差部分70の幅方向中央側に、弾性部材の収縮力が作用しない非伸縮領域を設けるとともにその部分を外装シート20と内装体10との固定領域80とし、縦方向の位置が交差部分70のウエスト側の範囲では、交差部分70の幅方向中央側縁よりも幅方向外側から交差部分70の幅方向中央側にかけて、弾性部材の収縮力が作用しない非伸縮領域を設けるとともにその部分を外装シート20と内装体10との固定領域81とするのが望ましい。具体的には、図示例のように、外装シート20と内装体10との固定幅を、交差部分70と同じ縦方向範囲では幅方向両側の交差部分70間の間隔以下とし、交差部分70のウエスト側ではそれよりも広くする(図示例のように段階的に拡大しても良いし、連続的に拡大しても良い)ことを提案する。これにより、内装体10の固定がより強固となる。
また、前身頃F及び後身頃Bにそれぞれ湾曲弾性部材26…,28…を配置するとともに、前後の湾曲弾性部材26…,28…を互いに交差させずに縦方向離間範囲90を確保するとともに、この縦方向離間範囲90においても、交差部分70の幅方向中央側縁よりも幅方向外側から交差部分70の幅方向中央側にかけて、弾性部材の収縮力が作用しない非伸縮領域を設けるとともにその部分を外装シート20と内装体10との固定領域82とし、縦方向離間範囲90における固定幅を、交差部分70と同じ縦方向範囲における固定幅よりも広くすることも提案される。これにより、内装体10の固定をより一層強固にすることができる。
(前後押えシート)
図1及び図4にも示されるように、外装シート20の内面上に取り付けられた内装体10の前後端部をカバーし、且つ内装体10の前後縁からの漏れを防ぐために、前後押えシート50,60が設けられている。図示形態について更に詳細に説明すると、前押えシート50は、前身頃F内面のうちウエスト側端部の折り返し部分20Cの内面から内装体10の前端部と重なる位置まで幅方向全体にわたり延在しており、後押えシート60は、後身頃B内面のうちウエスト側端部の折り返し部分20Cの内面から内装体10の後端部と重なる位置まで幅方向全体にわたり延在している。前後押えシート50,60の股下側縁部に幅方向の全体にわたり(中央部のみでも良い)若干の非接着部分を設けると、接着剤が食み出ないだけでなく、この部分を表面シートから若干浮かせて防漏壁として機能させることができる。
図示形態のように、前後押えシート50,60を別体として取り付けると、素材選択の自由度が高くなる利点があるものの、資材や製造工程が増加する等のデメリットもある。そのため、外装シート20をおむつ1内面に折り返してなる折り返し部分20Cを、吸収パッド200と重なる部分まで延在させて、前述の押えシート50,60と同等の部分を形成することもできる。
(外装シートを構成する不織布ついて)
外装シート20を構成する不織布のうち、少なくとも最も外側に位置する不織布20Bとして、捻れ度が3.8gf・cm/cm以下のものが好適である。ここに、「捻れ度」とは、例えばKES-YN1(カトーテック(株)製)を用いて測定することができるものであり、値が小さいほど捻れに対してしなやかであることを意味する。また、外装シートが不織布一枚からなる場合、それ自体が最も外側に位置する不織布を意味する。外装シート20を構成する不織布全て、つまり最も外側に位置しない他の不織布20A、50,60についても最外側不織布20Bと同様の不織布を採用するのが望ましい(以下同じ。)。このように、捻れ度が十分に低い不織布を用いると、おむつ全体としてのしなやかさが顕著に増加し、その結果、ゴワゴワした装着感や、肌との擦れによりかゆみやかぶれ等の肌トラブルが軽減し、脱ぎ着し易くなる等の利点がもたらされる。捻れ度が十分に低くないとしなやかさの改善効果は発現しない。このような捻れ度は、例えば原料繊維の種類の選択、繊度を細くする、繊維長を短くする、目付けや厚みを減らす等により達成することができる。
また、最外側不織布20Bにおける平均表面摩擦係数と平均偏差との比MIU/MMDが20以上であるのが好ましく、特に25以上であるのがより好ましい。MIU/MMD比を十分に大きくすることにより、外装シート表面の触感が良好となることにより、しなやかさが補われ、例えば肌との擦れによりかゆみやかぶれ等の肌トラブルがより一層軽減されるようになる。このようなMIU/MMD比は、例えば、繊度を細くする、表面加工を施す等により達成することができる。
また、外装シート20としての基本機能(隠蔽機能、強度等)を損ねないよう、最外側不織布20Bは、目付けが10〜30g/m2であり、且つ圧力0.5g/cm2のときの厚みT0が0.1〜1.0mmであるのが好ましい。より好ましい目付けは13〜22g/m2、厚みT0は0.1〜0.5mmである。
さらにしなやかさを補うため、最外側不織布20BのJIS−L−1096(45度カンチレバー法)による剛軟度は45mm以下であるのが好ましく、35mm以下であるのがより好ましい。これにより、特にゴワゴワ感の軽減及び脱ぎ着のし易さがより一層好ましいものとなる。このような剛軟度は、例えば、原料繊維の種類の選択や割合の変更、エンボス圧を下げる、目付や厚みを減らす等により達成することができる。
しなやかさを向上させると強度が低下し易いため、最外側不織布20Bは、JIS−P−8113に規定される引張強度が幅方向において40〜120kgf/m、特に60〜100kgf/m、前後方向において10〜80kgf/m、特に25〜60kgf/mであり、JIS−P−8116に規定される引裂強度が前後方向において4〜30kgf/m、特に8〜25kgf/mであるのが好ましい。このような引張強度及び引裂強度は、例えば、繊維同士の絡まり度合いを増す等により達成することができる。
最外側不織布20Bの圧縮特性もしなやかさと密接に関連するものである。よって、最外側不織布20Bの圧縮特性は、圧縮硬さLCが0.3〜1.0、特に0.5〜0.9であり、且つ圧縮仕事量WCが0.01〜0.10、特に0.01〜0.07であり、圧縮レジリエンスRCが20〜90%、特に25〜70%であるのが好ましい。このような圧縮硬さLC、圧縮仕事量WC、圧縮レジリエンスRCは、例えば、原料繊維の種類の選択や割合の変更、目付や厚みを減らす等により達成することができる。
最外側不織布20Bは、原料繊維の物質、構造、製法、繊度、繊維長(短繊維、フィラメント)等については、特に限定されない。例えば、原料繊維としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等から適宜選択でき、また繊維構造としては並列型、芯鞘型等の2層型複合繊維、多層型複合繊維、非複合繊維、混合繊維、分割繊維等から適宜選択することができる。さらに、製法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等、公知の方法から適宜選択して用いることができる。繊維の繊度や繊維長についても公知の仕様を採用することができるが、繊度は0.7〜3dtex、特に1〜2.5dtexが好ましい。
本発明は、上記例のようなパンツタイプ使い捨ておむつにおいて利用できるものである。
1…パンツタイプ使い捨ておむつ、10…内装体、11…液透過性表面シート、12…液不透過性裏面側シート、13…吸収体、14…包装シート、15…ギャザー不織布、16…糸状弾性伸縮部材、20…外装シート、21,22…側部接合縁、24…ウエスト部弾性部材、25…腰回り弾性部材、26…背側湾曲弾性部材、28…腹側湾曲弾性部材、29…脚回りライン、20C…外装シート折り返し部、70…交差部分、71…非固定領域、80,81,82…固定領域、θ…縦方向交差角、F…前身頃、B…後身頃。

Claims (6)

  1. 前身頃及び後身頃を形成する外装シートと、この外装シートの内面に固定された、吸収体を含む内装体とを備え、前記前身頃における外装シートの両側部と後身頃における外装シートの両側部とがそれぞれ接合されてサイドシール部が形成されることにより、ウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成された、パンツタイプ使い捨ておむつにおいて、
    前身頃の右のサイドシール部から前身頃の右のレッグ開口部に沿って股間部における右側部に至り、股間部における右側部から更に幅方向中央側に向かいつつ後側に向かうように湾曲して後身頃の幅方向中央部に位置する臀裂対向部に至り、臀裂対向部において前側に折り返され、更に左側に向かいつつ前側に向かうように湾曲して股間部の左側部に至り、股間部における左側部から前身頃の左のレッグ開口部に沿って前身頃の左のサイドシール部に至る;細長状の腹側湾曲弾性部材が、その長手方向に所定の伸長率で伸長された状態で固定されており、
    前記腹側湾曲弾性部材は、前記内装体と重なる部分のうち前記臀裂対向部に位置する部分を除いた部分では細かく切断され、前記臀裂対向部に位置する部分及び前記内装体と重ならない部分は細かく切断されずに連続部分として残されており、
    この連続部分として残された腹側湾曲弾性部材によって、少なくとも後身頃の臀裂対向部及び前身頃における左右のレッグ開口部に沿う部分に収縮力が作用するように構成されている、
    ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
  2. 後身頃の右のサイドシール部から後身頃の右のレッグ開口部に沿って前側に向かい、更に臀裂対向部を右から左へ幅方向に横切りつつ後向きに方向転換され、更に後身頃の左のレッグ開口部に沿って後身頃の左のサイドシール部に至る;細長状の背側湾曲弾性部材が、その長手方向に所定の伸長率で伸長された状態で固定されており、
    この背側湾曲弾性部材によって、少なくとも後身頃の臀裂対向部及び後身頃における左右のレッグ開口部に沿う部分に収縮力が作用するように構成されている、
    背側湾曲弾性部材、請求項1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
  3. 前記腹側湾曲弾性部材及び背側湾曲弾性部材は、前記内装体と重なる部分のうち前記臀裂対向部に位置する部分を除いた部分では細かく切断され、前記臀裂対向部に位置する部分及び前記内装体と重ならない部分は細かく切断されずに連続部分として残されている、請求項2記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
  4. 前身頃における縦方向の弾性変形時引張応力が、後身頃における縦方向の弾性変形時引張応力よりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
  5. 前記前身頃における外装シート及び後身頃における外装シートのそれぞれにおいて、ウエスト開口部の縁部に、幅方向に沿って延在する細長状のウエスト部弾性部材が複数本縦方向に間隔を空けてそれぞれ幅方向に沿って所定の伸長率で伸長された状態で固定されるとともに、前記ウエスト部弾性部材よりも前後方向中央部側の領域に、幅方向に沿って延在する細長状の腰回り弾性部材が複数本縦方向に間隔を空けてそれぞれ幅方向に沿って所定の伸長率で伸長された状態で固定されている、請求項4記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
  6. 前記外装シートは、少なくとも前記ウエスト部弾性部材、腰回り弾性部材、腹側湾曲弾性部材及び背側湾曲弾性部材を有する部分では複数枚の不織布が接着剤で張り合わせてなるとともに、それら不織布間に前記ウエスト部弾性部材、腰回り弾性部材、腹側湾曲弾性部材及び背側湾曲弾性部材が挟持固定されており、
    前記外装シートの坪量は30〜75g/m2であり、
    前記前身頃及び後身頃におけるウエスト部弾性部材は、それぞれ、太さ470〜1240dtex、本数が5〜10本、間隔が0〜5mm、及び固定時の伸長率が200〜350%であり、
    前記前身頃及び後身頃における腰回り部弾性部材は、それぞれ、太さ470〜940dtex、本数が6〜26本、間隔が10〜40mm、及び固定時の伸長率が200〜350%であり、
    前記腹側湾曲弾性部材は、太さ620〜1,240dtex、本数が3〜10本、間隔が10〜35mm、及び固定時の伸長率が230〜380%で且つ前記背側湾曲弾性部材より高い伸長率であり、かつ
    前記背側湾曲弾性部材は、太さ620〜1,240dtex、本数が3〜10本、間隔が10〜35mm、及び固定時の伸長率が200〜350%である、
    請求項5記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
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