JP5667174B2 - 新規微生物並びにそれを用いた水素製造方法、1,3−プロパンジオール製造方法及びバイオディーゼル廃液の処理方法 - Google Patents

新規微生物並びにそれを用いた水素製造方法、1,3−プロパンジオール製造方法及びバイオディーゼル廃液の処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、新規微生物並びにそれを用いた水素製造方法、1,3−プロパンジオール製造方法及びバイオディーゼル廃液処理方法に関する。
バイオディーゼルは、植物性油脂や廃油等の油脂(トリグリセリド)を主原料として製造される脂肪酸エステルのことであり、軽油等の代替燃料として期待されている。
バイオディーゼルを製造する方法として、現在化学触媒法が広く用いられている。化学触媒法は、油脂にメタノールと触媒(アルカリ)を加えてエステル交換反応を行い、脂肪酸メチルエステル(Fatty Acid Methyl Ester;FAME)をバイオディーゼルとして得るものである。その反応は下記化学式(1)で表される。
Figure 0005667174
一方、上記化学式(1)に示されるように、副産物としてグリセロールを高濃度で含有する廃液(バイオディーゼル廃液)が生じ、その処理が問題となっている。このバイオディーゼル廃液を原料とし、これから生物学的にエネルギーや有用物質を生産する、いわゆるバイオリファイナリーが試みられている。
例えば、特許文献1及び2には、グリセロールを資化して水素及びエタノールを産生するエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)に属する菌、並びにそれらの菌を利用して、バイオディーゼル廃液に含まれるグリセロールから水素及びエタノールを製造する方法が開示されている。
特開2009−183162号公報 特開2006−180782号公報
バイオディーゼル廃液には、非常に高濃度でグリセロールが含まれている。ところが、特許文献1及び2に開示されたエンテロバクター・アエロゲネスに属する菌は、グリセロール濃度が高いとき、グリセロールを資化する能力が著しく阻害されるため、バイオディーゼル廃液のような高濃度でグリセロールを含有する試料を効率よく処理することができないという問題があった。
そこで、本発明は、高濃度のグリセロール存在下でもグリセロールを資化することができる新規な微生物を提供することを目的とする。
本発明は、エンテロバクター(Enterobacter)属に属し、グリセロールを資化して水素ガスを生成する能力及び1,3−プロパンジオールを生成する能力を有し、かつ、10質量%のグリセロール存在下でグリセロールを資化することのできる微生物を提供する。
本発明の微生物は、グリセロールを資化して水素ガスを生成する能力及び1,3−プロパンジオールを生成する能力を有する。そのため、グリセロールを原料としたバイオリファイナリーに用いることができる。さらに、本発明の新規微生物は、高濃度のグリセロール存在下でもグリセロールを資化することができるため、バイオリファイナリーの効率を高めることができる。
上記微生物は、更に15質量%のグリセロール存在下でもグリセロールを資化できることが好ましい。また、上記微生物として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(郵便番号292−0818、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番地8号)に受託番号NITE BP−901で2010年2月12日に受託されているエンテロバクター(Enterobacter)sp.PEG8株とすることができる。
上記微生物は、グリセロールを資化して水素ガスを生成することができる。上記微生物はまた、グリセロールを資化して1,3−プロパンジオールを生成することができる。そこで、本発明は、グリセロールを基質として、上記微生物に水素ガスを生成させる水素製造方法を提供する。本発明はまた、グリセロールを基質として、上記微生物に1,3−プロパンジオールを生成させる1,3−プロパンジオール製造方法も提供する。
上記水素製造方法及び1,3−プロパンジオール製造方法においては、上記グリセロールが、バイオディーゼル廃液に含まれるものであることが好ましい。上記微生物は、高濃度のグリセロール存在下でもグリセロールを資化することができるため、グリセロールが高濃度で含まれるバイオディーゼル廃液を効率よく処理することができる。
本発明はまた、上記微生物に、バイオディーゼル廃液中に含まれるグリセロールを分解させる分解工程を有するバイオディーゼル廃液の処理方法も提供する。
上記バイオディーゼル廃液の処理方法においては、上記分解工程において生成する水素ガス又は1,3−プロパンジオールを回収する回収工程を更に有するものとすることが好ましい。上記微生物はグリセロールを分解して、エネルギー又は有用物質として利用できる水素ガス及び1,3−プロパンジオールを生成できるため、これらを回収することによって効率よくバイオリファイナリーを行うことができる。
本発明はさらに、バイオディーゼル廃液を含む原料液と上記微生物とを接触させ、上記バイオディーゼル廃液中のグリセロールを分解させることで、グリセロールを予め設定した濃度まで減少させた後、グリセロールが減少した原料液の少なくとも一部を、バイオディーゼル廃液を含む他の原料液と交換する、バイオディーゼル廃液の処理方法を提供する。
上記バイオディーゼル廃液の処理方法においては、上記バイオディーゼル廃液中のグリセロールを分解させることで、グリセロールを予め設定した濃度まで減少させるとともに、生成する水素ガス又は1,3−プロパンジオールを回収した後、バイオディーゼル廃液を含む他の原料液と交換することが好ましい。
本発明の新規微生物によれば、高濃度のグリセロール存在下でもグリセロールを資化することができるため、高濃度でグリセロールが含まれるバイオディーゼル廃液等の処理を効率よく行うことができる。
また、本発明の新規微生物は、グリセロールを資化して水素ガス、エタノール及び1,3−プロパンジオールを生成することができる。そのため多種多様なエネルギー物質や有用物質を製造することができ、グリセロールを原料としたバイオリファイナリーをより効率よく行うことができる。
16S rDNA塩基配列の簡易分子系統解析結果を示す図である。 エンテロバクターsp.PEG8株を回分培養したときの水素ガスの生成量、1,3−プロパンジオールの生成量、エタノール生成量、残留グリセロール量及びOD660値の経時変化を示すグラフである。 エンテロバクターsp.PEG8株を異なるグリセロール濃度条件下で培養したときの、水素ガスの生成量を示すグラフである。 エンテロバクターsp.PEG8株を、グリセロールを含有する原料液中で、繰り返し回分培養したときの水素ガスの生成量、1,3−プロパンジオールの生成量及びエタノール生成量を示すグラフである。 エンテロバクターsp.PEG8株を、バイオディーゼル廃液を含有する原料液中で、繰り返し回分培養したときの水素ガスの生成量、1,3−プロパンジオールの生成量及びエタノール生成量を示すグラフである。 エンテロバクターsp.PEG8株を種々の炭素源を含む培地中で培養したときの水素ガスの生成量を示すグラフである。 エンテロバクターsp.PEG8株を種々の炭素源を含む培地中で培養したときの水素ガスの生成量を示すグラフである。
本発明の微生物は、エンテロバクター属に属し、グリセロールを資化して水素ガス及び1,3−プロパンジオールを生成することができ、かつ、10質量%のグリセロール存在下においてもグリセロールを資化して水素ガスを生成することのできるものである。
上記微生物は、更に15質量%のグリセロール存在下でもグリセロールを資化できることが好ましい。
本実施形態において、上記微生物は、表1の菌学的性質を示すことが好ましい。
Figure 0005667174
上記微生物は、LB寒天培地上で、30℃にて、48時間培養したときに直径2.0−3.0mmの周縁全縁の円形、表面の形状がスムーズ、レンズ状で、不透明な黄色コロニーを形成することが好ましい。
また、上記微生物は、配列番号1で特定される塩基配列に対して99.7%以上の相同率を示す16S rDNA塩基配列を有することが好ましく、99.8%以上の相同率を示す16S rDNA塩基配列を有することがより好ましく、99.9%以上の相同率を示す16S rDNA塩基配列を有することがさらに好ましい。
上記微生物として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(郵便番号292−0818、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番地8号)に受託番号NITE BP−901で2010年2月12日に受託されているエンテロバクター(Enterobacter)sp.PEG8株とすることができる。
本発明に係る微生物は、例えば、バイオディーゼル製造工場からの排水等から採取したサンプル(微生物群)を、グリセロール存在下で増殖する能力を指標としたスクリーニングを行うことにより単離することができる。さらに、グリセロール存在下で増殖する能力に加え、グリセロール存在下での水素ガス生成能力又は1,3−プロパンジオール生成能力を指標として併用してスクリーニングを行ってもよい。
具体的な方法としては、例えば、炭素源としてグリセロールのみを1〜20質量%の濃度で含む培地(例えば、ペプトン 2.5g/L、酵母エキス 2.5g/L、pH6.8)を培養フラスコに添加し、更にバイオディーゼル製造工場からの排水等から採取したサンプルを微生物源として少量添加する。これを適切な条件下(例えば、嫌気条件下、37℃、24時間、静置又は微生物が沈降しない程度に攪拌)で培養する。これにより、グリセロール資化性を有し、更にグリセロール耐性を有する微生物を優先的に増殖させることができる。
なお、グリセロール耐性とは、(高濃度)グリセロール存在下においても、生存又は増殖することができる性質をいう。(高濃度)グリセロール存在下においても、グリセロールを資化することができる性質は、グリセロール耐性の一例である。
また、培養後、培養フラスコに含まれる水素ガスを定量し、水素ガスを生成するサンプルを選定することもできる。水素ガスの定量は、例えば、培養フラスコに接続したガス捕集バックに捕集されたガス量の測定及びガスクロマトグラフィーによる捕集されたガスの組成分析により行うことができる。また、培養後、培養液に含まれる1,3−プロパンジオールを定量し、1,3−プロパンジオールを生成するサンプルを選定することもできる。1,3−プロパンジオールの定量は、例えば、液体クロマトグラフィーにより行うことができる。
培養により増殖した微生物群から、純粋分離により、本発明に係る微生物を単離することができる。純粋分離は当業者によく知られた方法で実施することが可能であり、例えば、寒天培地上に接種して培養することにより、純粋分離されたコロニーを形成させることができ、そのコロニーをピックアップすることで目的とする微生物を単離することができる。寒天培地にはグリセロールを含ませておくことが好ましい。
また、培養後に培養液の一部を、新鮮なグリセロールを含む培地を添加した培養フラスコに再度接種して、再度培養を行うこともできる。培養後のサンプルに対し、上述の純粋分離を行うこともできるし、再びこの培養サイクルを繰り返すこともできる。培養サイクルを増やすことにより、目的とする微生物を集積させることができる。
上述のようにして単離した微生物の同定、性状及び性質等の解析は、公知の種々の同定試験方法又は市販されている同定キットを用いて行うことができる。また、16S rDNA塩基配列をシークエンスし、相同性検索、分子系統解析により、微生物の同定を行うこともできる。
本発明は、一実施形態として、グリセロールを基質として、上記微生物に水素ガスを生成させる水素製造方法を包含する。
上記水素製造方法においては、上記微生物と基質となるグリセロールを含有する原料液とを接触させて、上記微生物に水素発酵を行わせる。水素発酵の方法としては、上記微生物を種培養した後、又は種培養することなく、原料液中で液体培養する方法や、上記微生物を固定化した支持体又は担体を原料液中に添加する方法等が挙げられる。
また、原料液を供給する方法によって異なる培養方法を採用することができる。具体的には、例えば、一定の速度で原料液を供給し、同時に同量の原料液を抜き取りながら連続的に培養する方法(灌流培養法)、一回毎に新たな原料液を用意し、培養中に原料液(成分)の添加や抜き取りを行わずに培養する方法(回分培養法)、培養中に原料液(成分)の添加や抜き取りを行わずに回分培養と同様にして培養を行った後、培養液の一部に新たな原料液を供給して回分培養を繰り返す方法(繰り返し回分培養法)、回分培養と原則同じ操作を行うが、培養中に原料液中の特定の成分のみを追加的に添加する培養方法(流加培養法)等が挙げられる。このうち、本実施形態における水素製造方法においては、副産物による水素ガス生成効率の低下を回避する観点から、繰り返し回分培養法が好ましい。
水素製造に用いる原料液としては、グリセロールを含有するものであれば、特に制限はなく、具体的には、石鹸製造廃液、バイオディーゼル廃液等が挙げられる。これらの中でも、バイオディーゼル廃液が好ましい。バイオディーゼル廃液は、多量にグリセロールを含んでいるうえ、含有するグリセロールに有用な用途がないことから、本実施形態における原料として好ましく利用可能である。なお、原料液に含まれるバイオディーゼル廃液の含有量は、例えば、グリセロール濃度換算で0.1〜35質量%の間で、水素製造の効率(コスト、収率等)等を勘案して適宜設定してよい。
また、原料液中には、グリセロールの他に、栄養成分(グリセロール以外の炭素源、窒素源等)、発育促進剤、抗生物質等の殺菌剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、消泡剤等を含んでいてもよい。
水素発酵の際の反応条件(培養条件)としては、例えば、反応温度(培養温度)を10〜45℃の間で設定することができ、15〜40℃の間で設定することが好ましい。また、pHは4.0〜9.0の間で設定することができ、4.5〜8.0の間で設定することが好ましい。さらに、反応時間は、例えば、6〜48時間とすることもできるし、原料液中のグリセロールの濃度をリアルタイムで計測し、グリセロールが予め設定した濃度以下となったところで反応を終了してもよい。反応液中のグリセロール濃度を定量する方法としては、例えば、液体クロマトグラフィーにより測定する方法等が挙げられる。また、「予め設定した濃度」は、水素製造の効率(コスト、収率等)等を勘案して適宜設定してよい。例えば、1.0質量%とすることや、0.5質量%とすることができる。また、0質量%(グリセロールの完全分解)としてもよい。
本明細書において、バイオディーゼル廃液とは、油脂をメチル(又はエチル)エステル化して、脂肪酸メチル(又はエチル)エステル(バイオディーゼル)を取り除いた後のグリセロールを含む廃液を意味する。
上記油脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、菜種油、パーム油、オリーブ油、ひまわり油、大豆油、コメ油、ヘンプ・オイル(大麻油)等の植物油、魚油や豚脂、牛脂などの獣脂及び廃食用油(いわゆる天ぷら油等)等が挙げられる。
また、他の実施形態として、グリセロールを基質として、上記微生物に1,3−プロパンジオールを生成させる1,3−プロパンジオール製造方法も本発明に包含される。
上記1,3−プロパンジオール製造方法においては、上記微生物と基質となるグリセロールを含有する原料液とを接触させて、上記微生物に1,3−プロパンジオール発酵を行わせる。1,3−プロパンジオール発酵の方法としては、上記微生物を種培養した後、又は種培養することなく、原料液中で液体培養する方法や、上記微生物を固定化した支持体又は担体を原料液中に添加する方法等が挙げられる。
また、原料液の供給方法としては、例えば、灌流培養法、回分培養法、繰り返し回分培養法、流加培養法等が挙げられる。このうち、本実施形態における1,3−プロパンジオール製造方法においては、副産物による1,3−プロパンジオール生成効率の低下を回避する観点から、繰り返し回分培養法が好ましい。
1,3−プロパンジオール製造に用いる原料液としては、グリセロールを含有するものであれば、特に制限はなく、具体的には、石鹸製造廃液、バイオディーゼル廃液等が挙げられる。これらの中でも、バイオディーゼル廃液が好ましい。原料液に含まれるバイオディーゼル廃液の含有量は、例えば、グリセロール濃度換算で0.1〜35質量%の間で、水素製造の効率(コスト、収率等)等を勘案して適宜設定してよい。
また、原料液中には、グリセロールの他に、栄養成分(グリセロール以外の炭素源、窒素源等)、発育促進剤、抗生物質等の殺菌剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、消泡剤等を含んでいてもよい。
1,3−プロパンジオール発酵の際の反応条件(培養条件)としては、例えば、反応温度(培養温度)を10〜45℃の間で設定することができ、15〜40℃の間で設定することが好ましい。また、pHは4.0〜9.0の間で設定することができ、4.5〜8.0の間で設定することが好ましい。さらに、反応時間は、例えば、6〜48時間とすることもできるし、原料液中のグリセロールの濃度をリアルタイムで計測し、グリセロールが予め設定した濃度以下となったところで反応を終了してもよい。反応液中のグリセロール濃度を定量する方法としては、例えば、液体クロマトグラフィーにより測定する方法等が挙げられる。また、「予め設定した濃度」は、水素製造の効率(コスト、収率等)等を勘案して適宜設定してよい。例えば、1.0質量%とすることや、0.5質量%とすることができる。また、0質量%(グリセロールの完全分解)としてもよい。
さらに、本発明は、他の実施形態として、上記微生物に、バイオディーゼル廃液中に含まれるグリセロールを分解させる分解工程を有するバイオディーゼル廃液の処理方法も包含する。本実施形態においては、グリセロールの分解に伴って生成する水素ガス又は1,3−プロパンジオールを回収する回収工程を更に有するものとすることが好ましい。
上記バイオディーゼル廃液の処理方法においては、分解工程で、上記微生物と基質となるグリセロールを含有するバイオディーゼル廃液とを接触させて、上記微生物にグリセロールの資化を行わせる。バイオディーゼル廃液は、所定のグリセロール濃度となるよう希釈して、バイオディーゼル廃液を含む原料液を調製してから上記微生物と接触させることが好ましい。所定のグリセロール濃度としては、例えば、0.1〜35質量%の間で、バイオディーゼル廃液の処理効率(コスト等)等を勘案して適宜設定してよい。
グリセロールの資化方法としては、上記微生物を種培養した後、又は種培養することなく、原料液中で液体培養する方法や、上記微生物を固定化した支持体又は担体を原料液中に添加する方法等が挙げられる。また、原料液の供給方法としては、例えば、灌流培養法、回分培養法、繰り返し回分培養法、流加培養法等が挙げられる。このうち、本実施形態における処理方法においては、副産物による処理効率の低下への影響をより小さく抑えることができるという観点から、繰り返し回分培養法が好ましい。
原料液中には、グリセロールの他に、栄養成分(グリセロール以外の炭素源、窒素源等)、発育促進剤、抗生物質等の殺菌剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、消泡剤等を含んでいてもよい。
グリセロールの資化の際の反応条件(培養条件)としては、例えば、反応温度(培養温度)を10〜45℃の間で設定することができ、15〜40℃の間で設定することが好ましい。また、pHは4.0〜9.0の間で設定することができ、4.5〜8.0の間で設定することが好ましい。さらに、反応時間は、例えば、6〜48時間とすることもできるし、原料液中のグリセロールの濃度をリアルタイムで計測し、グリセロールが予め設定した濃度以下となったところで反応を終了してもよい。反応液中のグリセロール濃度を定量する方法としては、例えば、液体クロマトグラフィーにより測定する方法等が挙げられる。また、「予め設定した濃度」は、水素製造の効率(コスト、収率等)等を勘案して適宜設定してよい。例えば、1.0質量%とすることや、0.5質量%とすることができる。また、0質量%(グリセロールの完全分解)としてもよい。
上記バイオディーゼル廃液の処理方法においては、グリセロールの分解に伴って生成する水素ガス又は1,3−プロパンジオールを回収する回収工程を更に有するものとすることが好ましい。水素ガスの回収は、反応容器(培養容器)に水素ガスを回収するための管を配置して、分解工程と並行して回収することができる。また、1,3−プロパンジオールの回収は、分解工程後の原料液を回収して、蒸留等により行うことができる。
さらに他の実施形態として、バイオディーゼル廃液を含む原料液と上記微生物とを接触させ、上記バイオディーゼル廃液中のグリセロールを分解させることで、グリセロールを予め設定した濃度まで減少させた後、グリセロールが減少した原料液の少なくとも一部を、バイオディーゼル廃液を含む他の原料液と交換する、バイオディーゼル廃液の処理方法を提供する。上記バイオディーゼル廃液の処理方法においては、グリセロールを予め設定した濃度まで減少させるとともに、生成する水素ガス又は1,3−プロパンジオールを回収した後、バイオディーゼル廃液を含む他の原料液と交換する、バイオディーゼル廃液の処理方法とすることができる。
本実施形態では、上記微生物と基質となるグリセロールを含有するバイオディーゼル廃液とを接触させて、上記微生物にグリセロールの資化を行わせる。バイオディーゼル廃液は、所定のグリセロール濃度となるよう希釈して、バイオディーゼル廃液を含む原料液を調製してから上記微生物と接触させることが好ましい。所定のグリセロール濃度としては、例えば、0.1〜35質量%の間で、バイオディーゼル廃液の処理効率(コスト等)等を勘案して適宜設定してよい。
グリセロールの資化方法としては、上記微生物を種培養した後、又は種培養することなく、原料液中で液体培養する方法や、上記微生物を固定化した支持体又は担体を原料液中に添加する方法等が挙げられる。また、本実施形態においては、回分培養を繰り返し行うこと(繰り返し回分培養法)を特徴としている。
原料液中には、グリセロールの他に、栄養成分(グリセロール以外の炭素源、窒素源等)、発育促進剤、抗生物質等の殺菌剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、消泡剤等を含んでいてもよい。
グリセロールの資化の際の反応条件(培養条件)としては、例えば、反応温度(培養温度)を10〜45℃の間で設定することができ、15〜40℃の間で設定することが好ましい。また、pHは4.0〜9.0の間で設定することができ、4.5〜8.0の間で設定することが好ましい。さらに、反応時間は、例えば、6〜48時間とすることもできるし、原料液中のグリセロールの濃度をリアルタイムで計測し、グリセロールが予め設定した濃度以下となったところで反応を終了してもよい。反応液中のグリセロール濃度を定量する方法としては、例えば、液体クロマトグラフィーにより測定する方法等が挙げられる。また、「予め設定した濃度」は、水素製造の効率(コスト、収率等)等を勘案して適宜設定してよい。例えば、1.0質量%とすることや、0.5質量%とすることができる。また、0質量%(グリセロールの完全分解)としてもよい。
本実施形態においては、グリセロールの分解に伴って生成する水素ガス又は1,3−プロパンジオールを回収することが好ましい。水素ガスの回収は、反応容器(培養容器)に水素ガスを回収するための管を配置して、グリセロールの分解と並行して回収することができる。また、1,3−プロパンジオールの回収は、反応後(培養後)の原料液を回収して、蒸留等により行うことができる。
本実施形態における繰り返し回分培養法は、バイオディーゼル廃液を含む原料液と上記微生物とを接触させる工程と、該微生物にバイオディーゼル廃液中のグリセロールを分解させることで、グリセロールを予め設定した濃度まで減少させる工程と、グリセロールが減少した原料液の少なくとも一部を、バイオディーゼル廃液を含む他の原料液と交換する工程と、を含む、バイオディーゼル廃液の処理方法ということもできる。また、グリセロールを予め設定した濃度まで減少させる工程において、生成する水素ガス又は1,3−プロパンジオールを回収することが好ましい。
(実施例1)
[グリセロール資化性水素生産菌の探索]
バイオディーゼル(FAME)製造工場の排水を微生物源として、集積培養により、グリセロール資化性水素生産菌の探索を行った。
FAME培地(組成;バイオディーゼル廃液 グリセロール濃度換算で1質量%となるように添加、ペプトン 2.5g/L、酵母エキス 2.5g/L、pH6.8)に、バイオディーゼル製造工場の排水を加え、嫌気条件下、37℃で、24時間、ガス捕集袋を取り付けたメジウムボトル内にて集積培養した。ガス捕集袋に捕集されたバイオガス量の測定及びガスクロマトグラフィー(島津社製 GC−14B)によるガス組成分析を行い、水素ガス量を決定した。ガス組成分析条件は以下のとおりである。
・検出器:TCD (60mA)
・カラム:ポラパックN,モレキュラーシーブ13X,ポラパックQ
・キャリアガス:アルゴン
・カラム温度:60℃
・インジェクション温度:60℃
・ディテクター温度:80℃
培養後の培養液50mlを新しいFAME培地200mlに添加することによって継代し、水素ガスの発生量が安定するまで、培養を繰り返した。水素ガスが安定して発生するようになったところで、培養液をグリセロール寒天培地(グリセロール 10g/L、ペプトン 2.5g/L、酵母エキス 2.5g/L、寒天15g/L、pH6.8)に播種し、37℃のインキュベーター中で、48時間嫌気培養し、コロニーを形成させた。形成されたコロニーを単離し、10mlのFAME培地を含有する20mlバイアルに播種し、密閉された状態で、嫌気条件下、37℃で、24時間培養した。培養後、バイアルの空寸部に含まれる水素ガスを上述の方法によって定量し、水素ガスを生成した菌株を選択した。
(実施例2)
[PEG8株の16S rDNA塩基配列解析による同定]
実施例1で取得した菌株のひとつであるPEG8株について、16S rDNAの塩基配列解析により菌株の同定を行った。
PEG8株からInstaGene Matrix(BioRad社製)を用いてDNAを抽出し、PrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRにより、全長16S rDNAを増幅した。得られたPCR産物を鋳型とし、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステム社製)を用いてサイクルシークエンスを実施した。サイクルシークエンスを実施したサンプルは、ABI PRISM 3130x1 Genetic Analyzer System(アプライドバイオシステム社製)装置を用いて塩基配列データを分析し、分析データをChromasPro1.4(Technelysium Pty Ltd.)ソフトウェアを用いて解析し、塩基配列を決定した(配列番号1)。各実験手順は、それぞれのキットに付属のマニュアルの記載にしたがった。
決定したPEG8株の16S rDNA塩基配列について、アポロンDB−BA ver5.0(テクノスルガ・ラボ社製)データベース又は国際塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)に対する、アポロン2.0(テクノスルガ・ラボ社製)ソフトウェアを用いた相同性検索を実施した。アポロンDB−BA ver5.0データベースを用いた検索の結果、PEG8株の16S rDNA塩基配列は、Enterobacter cloacae subsp.cloacae ATCC13047株の16S rDNA塩基配列と97.6%の相同率を示した(表2)。また、国際塩基配列データベースを用いた検索の結果、PEG8株の16S rDNA塩基配列は、エンテロバクター属に由来する16S rDNA塩基配列と高い相同性を示し、エンテロバクター・オリゼ(Enterobacter oryzae)Ola50株と99.6%の相同率を示した(表3)。
Figure 0005667174
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次に、PEG8株の16S rDNA塩基配列と、表2に示した上位20株及びエンテロバクター・オリゼOla51株の16S rDNA塩基配列を用い、簡易分子系統解析を実施した。
簡易分子系統解析の結果、PEG8株の16S rDNA塩基配列はエンテロバクター属により形成されるクラスターに含まれた(図1)。また、エンテロバクター・オリゼOla51株の16S rDNA塩基配列とクラスターを形成した(図1)。なお、図1中、系統枝の分岐に位置する数字はブートストラップ値を示す。一方、PEG8株とエンテロバクター・オリゼOla51株の16S rDNA塩基配列間には7塩基の相違点が存在する(データは示さず)。
以上の結果から、PEG8株はエンテロバクター・オリゼと近縁にはあるものの、16S rDNA塩基配列間に明確な相違点が存在することから、両者は種として異なる菌株である可能性が高いと考えられた。
(実施例3)
[PEG8株の菌学的性質の解析]
PEG8株について、光学顕微鏡(BX50F4、オリンパス社製)による形態観察、Barrowらの方法(Cowan and Steel’s Manual for the Identification of Medical Bacteria. 3rd edition. 1993年,Cambridge University Press.)に基づいた、カタラーゼ反応、オキシダーゼ反応、ブドウ糖からの酸/ガス産生、ブドウ糖の酸化/発酵(O/F)の試験を実施した。また、フェイバーG「ニッスイ」(日水製薬社製)を用いてグラム染色性解析を実施した。さらに、API20Eキット(ビオメリュー社製)を用い、表4及び5に示した各項目についての試験を実施した。各項目の判定はキットに添付のマニュアルに従った。
Figure 0005667174
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PEG8株をLB寒天培地で、30℃、48時間培養し、形態観察を行った。その結果、PEG8株は、直径2.0−3.0mmの周縁全縁の円形、表面の形状がスムーズ、レンズ状で、不透明な黄色コロニーを形成した。
PEG8株の菌学的性質の解析結果を表4及び5に示した。表4及び5に示した各種性状は、エンテロバクター・オリゼ種の性状に類似しているものの、相違点も見出された(Int. J. Syst. Evol. Microbiol.,2009年,59巻,1650−1655頁を参照)。PEG8株は、リシンデカルボキシラーゼ活性及びオルニチンデカルボキシラーゼ活性を示さず、この点でエンテロバクター・オリゼ種の性状と異なっていた。
以上、実施例2及び3の結果から、PEG8株はエンテロバクター・オリゼ種の近縁種であるが、16S rDNA塩基配列及び菌学的性質に明確な相違点があることから、新規微生物であると考えられる。よって、PEG8株をエンテロバクター属の新種であると結論した。PEG8株は、エンテロバクター(Enterobacter)sp.PEG8として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(郵便番号292−0818、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番地8号)に2010年2月12日付けで受託されている(受託番号NITE BP−901)。
(実施例4)
[回分培養によるグリセロールからの水素及び1,3−プロパンジオール生産]
5ml LB培地中、37℃で11時間振とう培養したPEG8株を、500mlの原料液(組成;酵母エキス 2.5g/L、ペプトン 2.5g/L、グリセロール 7質量%、pH6.5)を含む1L容ミニジャーに添加した。窒素ガスでミニジャー中のガスを置換し、1Lファーメンター(BMJ−01PI、ABLE&Biott社製)を用い、嫌気条件下、37℃、150rpmの振とう速度で培養を行った。13時間培養した後、培養液を約50ml残し、450mlの新しい原料液を加えて、培養を繰り返した。経時的に培養液及びガスのサンプリングを行い、水素ガスの生成量、1,3−プロパンジオールの生成量、エタノール生成量、残留グリセロール量及びOD660値の測定を行った。
1,3−プロパンジオール、エタノール、グリセロールは高速液体クロマトグラフィーにより以下の分析条件で定量した。なお、水素ガスの定量方法は実施例1に記載したとおりである。
・移動液:純水
・カラム:Shim−pack SCR−102H(島津社製)
・カラム温度:70℃
・流速:0.6ml/min
・検出器:示唆屈折計
結果を図2に示した。PEG8株の菌数(OD660)が増加するにしたがって、残留グリセロール量が減少していた。これは、PEG8株によりグリセロールが分解されたことを示している(図2)。また、グリセロールの分解に伴って、水素ガス、1,3−プロパンジオール及びエタノールが生成した(図2)。
(実施例5)
[グリセロール濃度の影響]
酵母エキスを2.5g/L、ペプトンを2.5g/L、2−Morpholinoethanesulfonic acid(MES)を53.3g/L、及びグリセロールを1.0%、2.5%、5.0%、7.5%、10.0%、15.0%、20.0%、25.0%、30.0%(いずれも質量%)含む原料液10ml(pH6.5)を20mlバイアルに入れ、PEG8株を播種して、37℃で22時間静置培養した。培養後の水素ガス生成量とOD660値を測定し、グリセロール濃度による影響を解析した。
結果を図3に示す。PEG8株はグリセロールが10質量%という高い濃度で存在した場合でも生育に問題はなく、また、水素ガスの生成量は、1.0質量%のときの約55%を維持していた(図3)。さらに、グリセロール濃度が15.0質量%、20.0質量%、25.0質量%、30.0質量%となった場合でも、それぞれ1.0質量%のときの約43%、約22%、約10%、約2.2%の水素ガスの生成量を維持していた(図3)。
特許文献1に開示されているエンテロバクター・アエロゲネス菌株では、グリセロール濃度が8質量%を超えるとほとんど水素ガスを生成しない。したがって、上述の高濃度グリセロール耐性は、従来のグリセロール分解菌には見られなかった特性である。
(実施例6)
[繰り返し回分培養による水素収率の推移]
実施例4と同じ条件でPEG8株を23〜25時間培養した。培養後50mlの培養液を残し、450mlの新しい原料液を加えて、培養を繰り返した。これを8回繰り返し、各回の培養後の水素生成量、1,3−プロパンジオールの生成量、エタノール生成量を測定した。
水素生成量が安定した3回目から8回目までの結果を図4に示した。各回とも水素生成量、1,3−プロパンジオールの生成量、エタノール生成量に大きな変化はなかった(図4)。すなわち、繰り返し回分培養を行うことで、安定してグリセロールの分解、水素の製造、1,3−プロパンジオールの製造、エタノールの製造を行えることが示された。
(実施例7)
[バイオディーゼル廃液を用いた繰り返し回分培養による水素収率の推移]
純品グリセロールに代えてバイオディーゼル廃液(グリセロール濃度 87.6質量%)を用いた以外は実施例4と同じ条件でPEG8株を23〜25時間培養した。培養後50mlの培養液を残し、450mlの新しい原料液を加えて、培養を繰り返した。これを8回繰り返し、各回の培養後の水素生成量、1,3−プロパンジオールの生成量、エタノール生成量を測定した。なお、バイオディーゼル廃液として、植物油を原料としてバイオディーゼルを製造した際の廃液を用いた。また、上記バイオディーゼル廃液は、グリセロール濃度が7.5質量%相当となるように原料液に添加した。
水素生成量が安定した3回目から8回目までの結果を図5に示した。各回とも水素生成量、1,3−プロパンジオールの生成量、エタノール生成量に大きな変化はなかった(図5)。すなわち、バイオディーゼル廃液を用いた場合においても、繰り返し回分培養を行うことで、安定してグリセロールの分解、水素の製造、1,3−プロパンジオールの製造、エタノールの製造を行えることが示された。
(実施例8)
[PEG8株のその他の特性]
PEG8株の特性を解析するため、培地pHの影響、発酵温度の影響、培地中のエタノールの影響及び各種炭素源の資化性試験を行った。
培地pHの影響は、酵母エキス 2.5g/L、ペプトン 2.5g/L、グリセロール 1質量%及び0.4M Good bufferを含む原料液10mlを20mlバイアルに入れ、PEG8株を播種して、37℃で18時間培養を行い、pH4.5〜8.0としたときの水素ガスの生成量を測定することにより解析した。なお、Good bufferとして、pH5.0、5.5、6.0、6.5及び7.0のときはMESを、pH7.5及び8.0のときは2−[4−(2−Hydroxyethyl)−1−piperazinyl]ethanesulfonic acid(HEPES)を用いた。また、pH4.5のときはGood bufferを添加しなかった。
結果を表6に示した。培地pHが酸性であった方が水素ガス生成に有利であった。
Figure 0005667174
発酵温度の影響は、酵母エキス 2.5g/L、ペプトン 2.5g/L、グリセロール 1質量%及び250mM MES(pH6.5)を含む原料液10mlを20mlバイアルに入れ、PEG8株を播種して、15℃、20℃、25℃、30℃、34℃、37℃及び40℃で22時間培養を行い、水素ガスの生成量を測定することにより解析した。
結果を表7に示した。発酵温度が34℃付近であるときに水素ガス生成量が極大となり、それよりも発酵温度が高く又は低くなるにつれ、水素ガス生成量が減少した。
Figure 0005667174
培地中のエタノールの影響は、酵母エキス 2.5g/L、ペプトン 2.5g/L、グリセロール 1質量%、250mM MES(pH6.5)及びエタノールを含む原料液中、37℃で17時間培養を行い、エタノール濃度を0、1、2、3体積%としたときの水素ガスの生成量を測定することにより解析した。
結果を表8に示した。エタノール濃度が高くなるにつれ、水素ガス生成量が減少した。
Figure 0005667174
各種炭素源の資化性試験は、酵母エキス 2.5g/L、ペプトン 2.5g/L、MES 53.3g/L、図6に示した各炭素源(グルコース、マルトース、マルトトリオース、デキストリン、セロビオース、フルクトース、スクロース、キシロース、アラビノース、マンノース) 1質量%を含む、pH6.5の原料液9.5mlにPEG8株の前培養液0.5mlを加え、37℃で18時間培養を行い、水素ガスの生成量を測定した。さらに、培養後の培養液0.5mlに上記原料液9.5mlを加え、37℃で18時間培養を行い、水素ガスの生成量を測定した。これを3回繰り返し、4回の培養結果を基に評価を行なった。
結果を図6に示した。PEG8株は、グリセロールのみならず、アラビノースを除く他の炭素源を資化して水素ガスを生成した。
(実施例9)
[PEG8株のその他の特性2]
各種炭素源(グルコース、マンニトール)の資化性試験を以下の条件で行った。酵母エキス 2.5g/L、ペプトン 2.5g/L、MES 53.3g/L、図7に示した各炭素源(グルコース、マンニトール) 2質量%を含む、pH6.5の原料液9.5mlにPEG8株の前培養液0.5mlを加え、34℃で19時間培養を行い、水素ガスの生成量を測定した。さらに、培養後の培養液0.5mlに上記原料液9.5mlを加え、34℃で19時間培養を行い、水素ガスの生成量を測定した。これを2回繰り返し、3回の培養結果を基に評価を行った。
結果を図7に示した。PEG8株は、グルコースのみならず、マンニトールをも資化して水素ガスを生成した。
本発明の新規微生物は、高濃度のグリセロール存在下でもグリセロールを資化することができるため、バイオディーゼル廃液の処理に好適に用いることができる。さらに、本発明の新規微生物はグリセロールを資化して水素ガス、1,3−プロパンジオールを生成することができる。これらはエネルギー源又は樹脂原料等として利用することができ、例えば、水素ガスは、燃料電池の燃料として用いることができ、1,3−プロパンジオールは、合成繊維原料の一種であるポリトリメチレンテレフタレート(PTT)の原料として用いることができる。

Claims (9)

  1. 独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター受託番号NITE BP−901(エンテロバクターsp.PEG8)で特定される微生物。
  2. グリセロールを基質として、請求項1に記載の微生物に水素ガスを生成させる水素製造方法。
  3. 前記グリセロールが、バイオディーゼル廃液に含まれるものである、請求項2に記載の水素製造方法。
  4. グリセロールを基質として、請求項1に記載の微生物に1,3−プロパンジオールを生成させる1,3−プロパンジオール製造方法。
  5. 前記グリセロールが、バイオディーゼル廃液に含まれるものである、請求項4に記載の1,3−プロパンジオール製造方法。
  6. 請求項1に記載の微生物に、バイオディーゼル廃液中に含まれるグリセロールを分解させる分解工程を有するバイオディーゼル廃液の処理方法。
  7. 前記分解工程において生成する水素ガス又は1,3−プロパンジオールを回収する回収工程を更に有する、請求項6に記載のバイオディーゼル廃液の処理方法。
  8. バイオディーゼル廃液を含む原料液と請求項1に記載の微生物とを接触させ、前記バイオディーゼル廃液中のグリセロールを分解させることで、グリセロールを予め設定した濃度まで減少させた後、グリセロールが減少した原料液の少なくとも一部を、バイオディーゼル廃液を含む他の原料液と交換する、バイオディーゼル廃液の処理方法。
  9. 前記バイオディーゼル廃液中のグリセロールを分解させることで、グリセロールを予め設定した濃度まで減少させるとともに、生成する水素ガス又は1,3−プロパンジオールを回収した後、グリセロールが減少した原料液の少なくとも一部を、バイオディーゼル廃液を含む他の原料液と交換する、請求項8に記載のバイオディーゼル廃液の処理方法。
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