JP2021069320A - ユーグレナの培養方法、油脂の製造方法及び下水処理プラント - Google Patents

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【課題】ユーグレナに対する増殖促進細菌を利用したユーグレナの培養方法及び油脂の製造方法を提供する。【解決手段】ユーグレナを増殖促進細菌と共に培養する第1培養工程と、前記第1培養工程で培養した前記ユーグレナを分離する分離工程と、前記分離工程で分離した前記ユーグレナを培養する第2培養工程と、を行うことを特徴とするユーグレナの培養方法及び油脂の製造方法である。このとき、第1培養工程及び第2培養工程が、下水処理水を含有する培養液中で行われると好適である。【選択図】図8A

Description

本発明は、ユーグレナの培養方法、油脂の製造方法及び下水処理プラントに関し、特に、増殖促進細菌を利用したユーグレナの培養方法、油脂の製造方法及び下水処理プラントに関する。
微細藻類は、バイオ燃料の代替、再生可能、および持続可能な原料として広く認識されている。微細藻類培養の培地として下水処理水を使用することは、間違いなく微細藻類バイオマス生産の経済性と持続可能性を改善すると言える。下水処理水を使用した微細藻類バイオマスの生産は、施肥と灌漑のコストを削減する。微細藻類の生産と排水処理を組み合わせると、排水処理プラントがバイオリファイナリープラントに変換される。
単細胞の鞭毛状微細藻類であるユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)は、機能性食品およびバイオ燃料の微細藻類原料として最も有望な種の1つと見なされている。培養条件に応じて、E. gracilisは、ワックスエステル、パラミロン(β−1,3−グルカン)、β−カロテン、ビタミンCおよびビタミンEなどの様々な貴重な産物を合成および蓄積できる。これらの産物には多数の商業的応用がある。主にC14:0飽和脂肪酸、ミリスチン酸、C14:0飽和脂肪アルコール、ミリスチルアルコールで構成されるワックスエステルは、高価値のバイオ燃料と考えられている。E. gracilisのこれらのワックスエステルは、バイオディーゼルの原料に適している。
E. gracilisバイオマスの生産性の向上は、高効率のバイオ燃料生産システムを構築し、バイオ燃料の価格を下げるために重要である(非特許文献1)。E. gracilisによるバイオマスと油脂の生産を高めるために、遺伝子組換え、選択的育種、増殖条件の最適化、および栄養素および植物ホルモンを含む添加物の補充が検討されてきた。しかし、高度に効率的なE. gracilisのバイオ燃料生産システムを実現するには、E. gracilisの増殖をさらに強化するための相乗技術の開発が必要である。
自然の水生環境と微細藻類培養の両方で、特定の細菌は、例えば、栄養素、ビタミン、植物ホルモン、キレート剤、または揮発性有機化合物を供給することによって、好ましい微細環境を作り出すことで微細藻類の成長を促進することがわかっている(例えば、非特許文献2)。これらの細菌は、微細藻類の増殖促進細菌(以下、「MGPB」ともいう)として分類されている。MGPBはさまざまな微細藻類について報告されている。たとえば、Chlorella vulgarisに対するAzospirillum brasilense、Botryococcus brauniiに対するRhizobium sp.、Tetraselmis striataに対するPelagibaca bacilliformisおよびStappia sp.、Chlamydomonas reinhardtii、C.vulgaris、Scenedesmus sp.、およびB. brauniiに対するRhizobium sp.が報告されている。
Suzuki K. Large-scale cultivation of Euglena. In: Schwartzhach SD, Shigeoka S, editors. Euglena: Biochemistry, Cell and Molecular Biology. Springer International Publishing; 2017 p. 285-293. Amin SA, Parker MS, Armbrust EV. Interactions between diatoms and bacteria. Microbiol Mol Biol Rev. 2012; 76:667-84.
微細藻類との共培養における接種剤としてのMGPBの使用は、微細藻類バイオマス生産を効果的に強化するための代替的で有望な戦略を提供するかもしれない。しかし、本発明者の知る限り、ユーグレナの増殖を促進するMGPBは特定されていない。さらに、固有細菌が存在する非滅菌培養条件下での下水処理水においてMGPBが微細藻類バイオマスの生産を促進することを示した事例はない。したがって、下水処理水中のユーグレナによるバイオマス/油脂生産を増強することができる新規のMGPBを得ることが求められていた。
したがって、(i)ユーグレナに対して有効なMGPBを分離および特性評価すること、および(ii)分離されたMGPBが下水処理水培養システムでユーグレナによるバイオマスおよび油脂の生産を実際に高めることを実証することが課題となっていた。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ユーグレナに対する増殖促進細菌を利用したユーグレナの培養方法、油脂の製造方法及び下水処理プラントを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、下水処理水を用いた場合にもユーグレナに対する増殖促進作用を発揮することが可能な増殖促進細菌を利用したユーグレナの培養方法、油脂の製造方法及び下水処理プラントを提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究した結果、Emticicia sp. EG3株を見出し、EG3株が下水を用いた培養において著しくユーグレナの増殖を促進すること及び油脂の生産速度を向上させることを見出した。
したがって、前記課題は、本発明のユーグレナの培養方法によれば、ユーグレナを増殖促進細菌と共に培養する第1培養工程と、前記第1培養工程で培養した前記ユーグレナを分離する分離工程と、前記分離工程で分離した前記ユーグレナを培養する第2培養工程と、を行うこと、により解決される。
このとき、前記第1培養工程及び前記第2培養工程が、下水処理水を含有する培養液中で行われるとよい。
このとき、前記増殖促進細菌は、Emticicia sp. EG3株(受領番号:NITE AP−03055)であるとよい。
また、前記課題は、本発明の油脂の製造方法によれば、ユーグレナを増殖促進細菌と共に培養する第1培養工程と、前記第1培養工程で培養した前記ユーグレナを分離する分離工程と、前記分離工程で分離した前記ユーグレナを培養する第2培養工程と、前記第2培養工程で得られる培養物から油脂を回収する油脂回収工程と、を行うこと、により解決される。
このとき、前記第1培養工程及び前記第2培養工程が、下水処理水を含有する培養液中で行われるとよい。
このとき、前記増殖促進細菌は、Emticicia sp. EG3株(受領番号:NITE AP−03055)であるとよい。
また、前記課題は、本発明の下水処理プラントによれば、ユーグレナを増殖促進細菌と共に培養する第1培養タンクと、前記第1培養タンクで培養した前記ユーグレナを培養する第2培養タンクと、を備え、前記第1培養タンク及び前記第2培養タンクには、下水処理水を含有する培養液が充填されること、により解決される。
本発明によれば、ユーグレナに対する増殖促進細菌を利用したユーグレナの培養方法、油脂の製造方法及び下水処理プラントを提供することができる。
また、本発明によれば、下水処理水を用いた場合にもユーグレナに対する増殖促進作用を発揮することが可能な増殖促進細菌を利用したユーグレナの培養方法、油脂の製造方法及び下水処理プラントを提供することができる。
本発明のユーグレナの培養方法、油脂の製造方法及び下水処理プラントの要点は、2段階培養である。大規模な培養タンクに増殖促進細菌を直接添加して、ユーグレナを培養することは、(1)増殖促進細菌を大量に生産しなければならず、そのコストが高くなってしまい、(2)増殖促進細菌が培養系の外部に流出する可能性もある。
これに対して、本発明の特徴である2段階培養では、まず1段階目の第1培養工程を、例えば、比較的小型で密閉度の高い培養タンク(第1培養タンク)で共培養することで行う。そして、活性の高まったユーグレナを分離して、2段階目の第2培養工程を、例えば、大型の開放系の培養タンク(第2培養タンク)に移して大量生産を行うことができる。
本実施形態に係るユーグレナの培養方法及び油脂の製造方法の手順を示すフロー図である。 2ステップの強化されたE. gracilisのバイオマス/油脂生産システムの概略設計。 土着の生細菌あり(非滅菌排水、○)、土着の生細菌なし(オートクレーブ熱殺菌された排水、●)のE. gracilis−下水処理水培養液中のクロロフィルa+b含有量の変化。値は平均値±標準偏差(n=3)。 増殖促進細菌としてEmticicia sp.EG3株を用いた場合の2ステップのE. gracilis培養システムの2回目の培養におけるE. gracilisの乾燥重量。 増殖促進細菌としてHerbaspirillum sp. EG8株を用いた場合の2ステップのE. gracilis培養システムの2回目の培養におけるE. gracilisの乾燥重量。 増殖促進細菌としてSphingomonas sp. EG9株を用いた場合の2ステップのE. gracilis培養システムの2回目の培養におけるE. gracilisの乾燥重量。 様々な初期細胞密度(0(コントロール)、2×10、8×10、および4×10CFU/mL)のEG3株にて、熱滅菌した下水処理水で7日間共培養したE. gracilisの増殖に対するEG3株の影響。EG3株と共培養したE. gracilisのクロロフィルa+b含有量の変化(初期細胞密度0(対照、▲)、2×10CFU/mL(◇)、8×10CFU/mL(□)、4×10CFU/mL(○))。 初期細胞密度0(コントロール)、2×10、8×10、及び4×10CFU/mLのEG3株との7日間の共培養におけるE. gracilisのバイオマス生産速度。値は平均値±標準偏差(n=3)。*コントロールとの有意差(p<0.05)。 加熱滅菌および非滅菌の下水処理水で7日間、初期EG3がOD600=0.1で共培養されたE. gracilisの増殖に対するEG3株の影響。加熱滅菌された排水中でEG3株なし(■)およびEG3株(□)で培養されたE. gracilisのクロロフィルa+b含有量の変化。非滅菌排水でEG3株なし(●)およびEG3株あり(○)で培養されたE. gracilisのクロロフィルa+b含有量の変化。 7日間の加熱滅菌または非滅菌排水でEG3株を使用または非使用で培養したE. gracilisのバイオマス生産速度。値は平均値±標準偏差(n=3)。*コントロールとの有意差(p<0.05)。 2ステップのE. gracilis培養システムの2回目の培養におけるE. gracilisのクロロフィルa+b含有量とバイオマス(乾燥重量)濃度の経時変化。7日間の非滅菌排水におけるE. gracilisのコントロール培養のクロロフィルa+b含有量の変化。EG3株との共培養なし(●)およびEG3株との共培養あり(○)。 7日間の非滅菌排水におけるE. gracilisのコントロール培養のバイオマス濃度の変化。EG3株との共培養なし(●)およびEG3株との共培養あり(○)。値は平均値±標準偏差(n=3)。 2ステップのE. gracilisバイオマス/油脂生産システムの最初の培養でのE. gracilisとEG3株の共培養の効果。第1ステップでEG3株と共培養あり及び共培養なし(コントロール)で共培養した後のE. gracilisの2ステップ培養でのE. gracilisの2回目の培養におけるバイオマス生産速度。値は平均値±標準偏差(n=3)。*コントロールとの有意差(p<0.05)。 EG3株およびコントロールの共培養後の2ステップE. gracilis培養システムの2回目の培養におけるE. gracilisの油脂含有率。値は平均値±標準偏差(n=3)。*コントロールとの有意差(p<0.05)。 EG3株およびコントロールの共培養後の2ステップE. gracilis培養システムの2回目の培養におけるE. gracilisの油脂生産速度。値は平均値±標準偏差(n=3)。*コントロールとの有意差(p<0.05)。 E. gracilis培養と排水処理のカップリング。増殖促進細菌EG3株を使用した2ステップE. gracilis培養システムによるバイオマスおよび油脂生産の強化。
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)について、図1乃至図9を参照しながら説明する。本実施形態は、ユーグレナの培養方法及び油脂の製造方法に関するものである。
(略語)
本明細書における略語は、以下の通りである。
・MGPB:微細藻類の増殖促進細菌(microalgae growth-promoting bacteria)
・TOC:総有機炭素(total organic carbon)
・NH−N:アンモニウム態窒素
・NO−N:亜硝酸態窒素
・NO−N:硝酸態窒素
・PO−P:リン酸態リン
・CFU:コロニー形成単位(colony forming units)
・OD:光学密度(optical density)
・rRNA:リボソームRNA(ribosomal ribonucleic acid)
・PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)
・NCBI:国立生物工学情報センター(national center for biotechnology information)
・BLAST:基本的な局所配列検索ツール(basic local alignment search tool)
・DDBJ:日本のDNAデータバンク(DNA data bank of Japan)
・EMBL:欧州分子生物学研究所(European molecular biology laboratory)
・SD:標準偏差(standard deviation)
<ユーグレナ>
本実施形態において、「ユーグレナ」とは、分類学上、ユーグレナ属(Euglena)に分類される微生物、その変種、その変異種及びユーグレナ科(Euglenaceae)の近縁種を含む。ここで、ユーグレナ属(Euglena)とは、真核生物のうち、エクスカバータ、ユーグレノゾア門、ユーグレナ藻綱、ユーグレナ目、ユーグレナ科に属する生物の一群である。
ユーグレナ属に含まれる種として、具体的には、Euglena chadefaudii、Euglena deses、Euglena gracilis、Euglena granulata、Euglena mutabilis、Euglena proxima、Euglena spirogyra、Euglena viridisなどが挙げられる。
ユーグレナとして、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis),特に、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)NIES−48株、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株を用いることができるが、そのほか、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株の変異株SM−ZK株(葉緑体欠損株)や変種のE. gracilis var. bacillaris、これらの種の葉緑体の変異株等の遺伝子変異株、Astasia longa等のその他のユーグレナ類であってもよい。
ユーグレナ類は、池や沼などの淡水及び汽水、海水中に広く分布しており、これらから分離して使用しても良く、また、既に単離されている任意のユーグレナ類を使用してもよい。ユーグレナ類は、その全ての変異株を包含する。また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組換え、形質導入、形質転換等により得られたものも含有される。
<増殖促進細菌(MGPB)>
本実施形態において利用することができるユーグレナの増殖促進細菌(MGPB)は、ユーグレナの増殖を促進する細菌である。増殖促進細菌(MGPB)は、Emticicia属に属する細菌、Herbaspirillum属に属する細菌(例えば、Herbaspirillum sp. EG8株、Sphingomonas属に属する細菌(例えば、Sphingomonas sp. EG9株)を含む群より選択される一種以上の細菌であると好ましいが、これらの属の細菌に限定されるものではない。
ユーグレナの増殖促進細菌(MGPB)として、Emticicia属に属する細菌を用いることが好適であり、その中でも、Emticicia sp. EG3株(受領機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構(特許微生物寄託センター(NPMD))、受領日:2019年10月28日、受領番号:NITE AP−03055)を用いることが特に好ましい。
本実施形態における増殖促進細菌(MGPB)は、野生の増殖促進細菌(MGPB)を用いることができるが、これに限定されるものではなく、ユーグレナを効率よく増殖するように改変された増殖促進細菌(MGPB)を用いてもよい。改変は公知の方法で行うことができ、例えば、遺伝子組換えにより改変することができる。
<ユーグレナの培養方法及び油脂の製造方法>
本実施形態のユーグレナの培養方法は、ユーグレナを増殖促進細菌と共に培養する第1培養工程(ステップS1)と、前記第1培養工程で培養した前記ユーグレナを分離する分離工程(ステップS2)と、前記分離工程で分離した前記ユーグレナを培養する第2培養工程と(ステップS3)、を行うことを特徴とするユーグレナの培養方法である(図1)。
また、本実施形態の油脂の製造方法は、ユーグレナを増殖促進細菌と共に培養する第1培養工程(ステップS1)と、前記第1培養工程で培養した前記ユーグレナを分離する分離工程(ステップS2)と、前記分離工程で分離した前記ユーグレナを培養する第2培養工程(ステップS3)と、前記第2培養工程で得られる培養物から油脂を回収する油脂回収工程(ステップS4)と、を行うことを特徴とする油脂の製造方法である(図1)。
以下、各工程について詳細に説明する。
(第1培養工程)
第1培養工程では、ユーグレナを増殖促進細菌(MGPB)と共に培養する(ステップS1)。
ここで、増殖促進細菌(MGPB)を含む培地を用いてユーグレナ細胞の培養を行うことを「共培養」という。
第1培養工程は、例えば、以下に示す培養条件で行うことができるが、以下の条件に限定されるものではない。
・ユーグレナの前培養
第1培養工程で用いるユーグレナを好気条件下で前培養する。ユーグレナの前培養の条件は、従来のユーグレナの培養法において知られたものを用いることができる。培養温度は、通常20〜34℃の範囲内とするのが効率的な生育のために好ましい。また、培地には空気をバブリングすることが好ましく、特にユーグレナはCOを資化するため、1〜5%のCOを含む空気を培地中にバブリングすることがより好ましい。好気的培養は光照射下(明条件下)で行うことが好ましく、明暗サイクル、特に概日リズムに準じた明暗サイクル条件下(例えば12〜16時間明暗サイクル)で行うことがより好ましい。明条件下における光強度は、30〜200μmol m−2−1の範囲とすることが好ましい。培地のpHは3〜10の範囲とすることが好ましい。培養期間は3日間以上であり、特に5日間以上、1週間以上、さらに10日間以上とすると好ましい。
前培養では、例えば、CYP培地、C培地、Cramer−Myers培地(CM培地)、Hutner培地、およびKoren−Hutner培地、AY培地などの公知の培地の一部組成を変更した改変培地を用いることができる。
・培地の種類
第1培養工程におけるユーグレナと増殖促進細菌(MGPB)の共培養は、下水処理水を用いることが可能である。このとき、増殖促進細菌(MGPB)の初期細胞密度が2×10〜4×10CFU/mL(OD600に換算すると0.05〜0.2)、好ましくは、8×10CFU/mL以上(OD600に換算すると0.1以上)の初期細胞密度で培養液に接種するとよい。
・培地のpH
培養液のpHは、ユーグレナの増殖に適した任意のpH、例えば、pH5〜10であればよく、pH6〜9であることが好ましく、pH6〜8であることがより好ましい。pH調整には、適当な無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を使用することができる。
・培養温度
培養温度は、増殖促進細菌(MGPB)の増殖及びユーグレナの増殖に適した温度、例えば、通常15〜40℃であり、20〜34℃であることが好ましく、特に28〜30℃であることが好適である。
・培養期間
培養期間は、増殖促進細菌(MGPB)によるユーグレナの増殖促進作用が十分に発揮されるようになる期間であれば特に限定されず、例えば、2〜10日、好ましくは3〜8日、特に好ましくは5〜7日であればよい。
・培養方式及び培養装置
共培養は、太陽光を直接利用するオープンポンド方式、集光装置で集光した太陽光を光ファイバー等で送り、培養槽で照射させ光合成に利用する集光方式等により行ってもよい。
また、共培養は、例えば供給バッチ法を用いて行われ得るが、フラスコ培養や発酵槽を用いた培養、回分培養法、半回分培養法(流加培養法)、連続培養法(灌流培養法)等、いずれの液体培養法により行ってもよい。
共培養は、オープンポンド型、レースウェイ型、チューブ型等の公知の培養装置や、坂口フラスコ、三角フラスコ、試薬ビンなどの実験用の培養容器を用いて行うことができる。
共培養は、静置培養法、振盪培養法のいずれの方法によって行ってもよい。
各種培養の条件は、培養を通じて一定であってもよいが、培養期間に応じて各種培養条件を変化させることも可能である。
(分離工程)
分離工程(ステップS2)では、上記第1培養工程(ステップS1)で培養したユーグレナを分離する。具体的には、第1培養工程で得られたユーグレナの培養物を回収し、遠心分離等の公知の分離手段によりユーグレナ細胞を回収する。ユーグレナ細胞を蒸留水で洗浄し、増殖促進細菌(MGPB)の細胞を除去し、遠心分離によりユーグレナ細胞を回収する。
(第2培養工程)
第2培養工程(ステップS3)では、上記分離工程(ステップS2)で分離したユーグレナを培養する。第2ステップ培養は、ユーグレナの初期細胞密度が、例えば、50mg〜100mg乾燥重量/Lとなるように、培養液に接種して培養を行う。第2培養工程は、増殖促進細菌(MGPB)を接種しないことを除いては、上述の第1培養工程と同様の培養条件で行うことができるが、上述の条件に限定されるものではない。
第1培養工程は、例えば、比較的小型で密閉度の高い培養タンク(第1培養タンク)で共培養することで行うことが可能であるが、第1培養工程で活性の高まったユーグレナを分離して、第2培養工程を、例えば、第1培養工程における培養タンクよりも大型の開放系の培養タンク(第2培養タンク)に移して大量生産を行うことが好ましい。換言すると、第1培養工程で用いる第1培養タンクの容量は、第2培養工程で用いる第2培養タンクの容量よりも、小さいことが好ましい。このような構成によれば、容量の小さな第1培養タンクで増殖促進細菌(MGPB)によって効率よく、ユーグレナの増殖を促進しつつ、容量の大きな第2培養タンクで油脂の大量生産を行うことが可能となる。
(油脂回収工程)
油脂回収工程(ステップS4)では、上記第2培養工程(ステップS3)で得られる培養物(培養系)から油脂を回収する。
ここで、本工程における「培養物(培養系)」は、培地、ユーグレナ細胞を含む概念である。したがって、「培養物(培養系)から油脂を回収する」とは、ユーグレナ細胞を含む培地から油脂を回収すること、培養後のユーグレナ細胞から油脂を回収することを含む概念である。
回収される油脂は、ユーグレナの細胞中に含まれる油脂、具体的には、主にC14:0飽和脂肪酸、ミリスチン酸、C14:0飽和脂肪アルコール、ミリスチルアルコールで構成されるワックスエステルなどを含有する油脂である。
油脂回収工程には、適当な分離方法(例えば、遠心分離や、濾過、有機溶剤による抽出工程、高速液体クロマトグラフィーなどの組み合わせ)により油脂を分離して得る分離工程や、適切な分離カラムや再結晶によって油脂を精製する精製工程が含まれる。
<下水処理プラント>
本実施形態に係る下水処理プラントは、後述する図9に示されるように、ユーグレナを増殖促進細菌(MGPB)と共に培養する第1培養タンクと、第1培養タンクで培養したユーグレナを分離して培養する第2培養タンクと、を備え、第1培養タンク及び第2培養タンクには、下水処理水を含有する培養液が充填される。このとき、第1培養タンクを比較的小型で密閉度の高い培養タンクとし、第2培養タンクを第1培養タンクよりも大型の開放系の培養タンクとすることが好ましい。
以下、具体的実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[1.試験方法]
(1.1 E. gracilis材料およびE. gracilisの培養)
無菌のE. gracilis(NIES−48)は、筑波の国立環境研究所の微生物培養コレクションから入手した。E. gracilisは、400mg/Lの酵母エキスと600mg/Lのポリペプトンを添加したC培地、つまりCYP培地で培養した。C培地は、1L当たり、150mg Ca(NO・4HO、100mg KNO、50mg β−Naグリセロホスフェート・5HO、40mg MgSO・7HO、500mgトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、0.1μg ビタミンB12、0.1μg ビオチン、10μg チアミンHCl、および3mL PIV金属(1000mg/L NaEDTA・HO、196mg/L FeCl・6HO、36mg/L MnCl・4HO、10.4mg/L ZnCl、4mg/L CoCl・6HO、2.5mg/L NaMoO・HO)であった(表1)。NaOHを加えることによりpHを7.5に調整した。
Figure 2021069320
無菌のE. gracilis培養物を増殖チャンバー(28±1℃、蛍光灯、光合成光子束密度80μmol m−2−1、16時間の光周期)で1週間培養した。その後、毎週、新鮮なCYP培地にE. gracilis細胞を定期的に移すことにより、継代培養を開始した。E. gracilisを遠心分離(3000×g、室温、5分)により回収し、滅菌C培地で洗浄し、一定量の滅菌C培地に再懸濁した。そのようなE. gracilis細胞懸濁液を各継代培養実験の接種材料として使用した。
(1.2 下水処理水サンプル)
実験に使用した下水処理水を、日本の山梨県甲府市の下水処理場の最終沈殿池から収集した。処理水サンプルは、最初にガラスマイクロファイバーフィルター(ポアサイズ、1μm;GF/Bグレード、GE Healthcare UK Ltd、バッキンガムシャー、イギリス)を通過し、次にメンブレンフィルター(ポアサイズ、0.8μm;混合セルロースエステル膜;Merck Millipore Ltd、Cork、アイルランド)は、微細な藻類を含む細菌よりも大きな浮遊固形物と有機物を下水処理水サンプルから除去した。したがって、下水処理水濾液には土着の細菌群集が含まれていた。以下の各実験では、新鮮な下水処理水サンプルを実験当日に収集して、使用した。
以下に示す表2は、下水処理水サンプルの初期の水質特性(全有機炭素[TOC]、アンモニウム窒素[NH−N]、亜硝酸−N[NO−N]、硝酸−N[NO−N]、リン酸[PO−P])および総細菌濃度を示している。TOCは、TOC−LCSH(島津製作所、京都、日本)を使用して測定された。NH−Nには、インドフェノール法が使用された。NO−Nには、N−(1−ナフチル)エチレンジアミン法が使用された。NO−Nには、還元−N−(1−ナフチル)エチレンジアミン法とUV吸着(220および275nm)法が使用された。PO−Pには、モリブデンブルー法が使用された。R2A寒天プレート(0.5g/L ペプトン、0.5g/L 酵母エキス、0.5g/L カザミノ酸、0.5g/L グルコース、0.5g/L 可溶性デンプン、0.3g/L KHPO4、0.05g/L MgSO・7HO、0.3g/Lピルビン酸ナトリウム;pH7.0;寒天15g/L)を使用して、排水中の総培養可能細菌を定量した。一部の実験では、加熱滅菌のために滅菌排水サンプルをオートクレーブ処理(121℃、20分)して調整した。
Figure 2021069320
(1.3 下水処理水を用いたE. gracilisの培養およびE. gracilisのMGPB候補の分離)
上記の方法で調製したE. gracilisの細胞懸濁液(10mL)を、200mLガラスフラスコ内の(滅菌されていない)下水処理水サンプル100mLに加えた。フラスコをグロースチャンバー(28±1℃、80μmol photons m−2−1の蛍光灯、16時間光周期)で10日間培養した後、この培養物約10mLを新しい下水処理水サンプル100mLが入った200mLフラスコに移し、さらに10日間培養した。この培養物の移し替えと10日間のバッチ培養増殖をもう一度繰り返した。3連続バッチ増殖期間の間、フラスコを1日3回、1分間振盪して、E. gracilisを分散および通気した。各フラスコのクロロフィル濃度を毎日測定した。E. gracilisは、生きている土着細菌のない100mLのオートクレーブされた下水処理水サンプルでも培養された。この培養は、E. gracilisの増殖に対する下水処理水サンプル中の土着細菌の影響を評価するための対照実験として使用された。各培養の初期クロロフィルa+b濃度は、約0.5μg/mLに調整された。
3回目の10日間のバッチ培養増殖期間の後、非滅菌の下水処理水サンプルで培養されたE. gracilis培養液20mLを50mLチューブに移し、最大速度で3分間ボルテックスし、1分間超音波処理(40kHz)し、再度ボルテックスすることでE. gracilisと細菌細胞を分散させた。次に、サンプルをGF/Bガラスマイクロファイバーフィルターで濾過して、E. gracilis細胞を除去した。細菌を含む濾液を連続希釈し、R2A寒天プレートに広げて塗布した。次に、そのプレートを28℃でインキュベートした。この分離培養によって、合計10の細菌株が得られた。各菌株を純粋培養物し、その菌株をR2A寒天プレート上で維持した。
(1.4 MGPBのスクリーニング)
分離した10菌株のうち、6つの菌株がR2A液体培地でよく増殖した。その6菌株を28℃、24時間R2A液体培地でそれぞれ培養した。培養後に遠心分離(10,000×g、室温、5分)により細胞を回収し、50mMリン酸カリウムバッファー(pH7.5)で2回洗浄した。E. gracilisを200mLのガラスフラスコに入れた100mLのオートクレーブ済み下水処理水サンプルに接種した。上記の通りに培養、回収した分離菌株の細菌細胞懸濁液を波長600nmの吸光度(OD600)がOD600=0.05となるような細菌細胞密度(初期細胞密度)でE. gracilis培養物に加えた。そのE. gracilisと各分離株の共培養物を、増殖チャンバー(28±1℃、80μmol photons m−2−1および16時間光周期の蛍光灯)で7日間培養した。7日目に、クロロフィルa+bの濃度が測定された。E. gracilisを、細菌を接種せずにオートクレーブ処理した排水でも培養し、これを対照実験とした。分離菌株のE. gracilis増殖促進能力は、7日間の培養終了時のクロロフィルa+b濃度を対照実験と比較することによって評価された。
(1.5 EG3株の同定と特性評価)
分離された細菌株の中で、EG3株がスクリーニング試験で最高の増殖促進能力を示した。したがって、EG3株の生理学的および系統学的分析を行った。EG3株の生理学的特性評価は、製造元の指示(BioMerieuxJapan、東京、日本)に従ってAPI 20NEキットを使用して実行された。EG3株の16S rRNA遺伝子配列分析は、次のように実行された。16S rRNA遺伝子の部分配列を増幅するプライマー8F(5’−AGAGTTTGATCCTGGCTCAG−3’)(配列番号1)[Edwards U, Rogall T, Blocker H, Emde M, Bottger EC. Isolation and direct complete nucleotide determination of entire genes. Characterization of a gene coding for 16S ribosomal RNA. Nucleic Acids Res. 1989; 17:7843-7853.]および1510R(5’−GGTTACCTTGTTACGACTT−3’)(配列番号2)[Reysenbach AL, Wickham GS, Pace NR. Phylogenetic analysis of the hyperthermophilic pink filament community in Octopus Spring, Yellowstone National Park. Appl Environ Microbiol. 1994; 60:2113-2119.]を使用したPCRによって、EG3株の16S rRNA遺伝子の一部を増幅した。BLAST検索を使用し、NCBI−GenBankに登録されている標準菌株の16S rRNA遺伝子配列と、EG3株の16S rRNA遺伝子配列の類似性を評価して、EG3株の属レベルの同定を行った。EG3株の16S rRNA配列データ(1431bp)は、アクセッション番号LC441033でDDBJ/EMBL/GenBankデータベースに提出された(配列番号3)。
(1.6 EG3株の培養条件と細胞懸濁液の調製)
EG3株は、150rpmで振盪しながら、28℃で24時間、R2A液体培地で増殖させた。遠心分離(10,000×g、室温、5分)により細胞を回収し、リン酸緩衝液で2回洗浄した後、リン酸緩衝液に懸濁した。EG3株の細胞懸濁液を以下の実験に使用するため、細胞密度の指標としてOD600を調整した。なお、OD600=1.0のEG3株は、約0.45mg乾燥重量/mLに相当した。90℃で3時間乾燥した後、EG3株の細胞乾燥重量を測定した。また、0.05、0.1、0.2のOD600は、約2×10、8×10、4×10CFU/mLに相当した。EG3株をR2A寒天培地で培養し、EG3株のCFUを求めた。本実施例では、EG3株の細胞密度としてCFU/mLで表記した。
(1.7 E. gracilisとEG3株との下水処理水サンプル中のいくつかの条件下での共培養)
E. gracilisを2Lのガラス瓶に入れた1Lのオートクレーブ滅菌済み下水処理水サンプルに接種した。E. gracilisの増殖に対するEG3株の細胞密度の影響を決定するために、EG3株を2×10、8×10、および4×10CFU/mLの初期細胞密度で滅菌下水処理サンプル中のE. gracilis培養液1Lに接種した。E. gracilisとEG3株の共培養は、増殖チャンバー(28±1℃、80μmol photons m−2−1および16時間光周期の蛍光灯を使用)で7日間実施した。対照実験として、E. gracilisを上記条件下で1Lのオートクレーブ滅菌済み下水処理水サンプル中でEG3株無しで培養した。
E. gracilisの増殖を促進するEG3株の能力に対する下水処理水中に共存する土着細菌の影響を調べるために、滅菌および非滅菌下水処理水サンプルの両方を培養実験に使用した。E. gracilisは、2Lのガラス瓶で1Lの下水処理水サンプルに接種された。上記の検討でEG3株の増殖促進能力が最も高くなった接種細胞密度8×10CFU/mLで、EG3株をE. gracilis培養に接種した。E. gracilisとEG3株の共培養は、増殖チャンバー(28±1℃、蛍光灯、80μmol photons m−2−1、および16時間光周期)で7日間実施した。
共培養実験中、クロロフィルa+b濃度を毎日測定した。また、共培養7日後、E. gracilisの乾燥重量を測定した。実験は3回実施された。
(1.8 下水処理水サンプル中において、EG3株で強化されたE. gracilisによるバイオマスと油脂の生産を実証するための実験:2工程培養によるE. gracilisのバイオマス/油脂生産システム)
本実施例のこの部分では、2工程培養によるE. gracilisのバイオマス/油脂生産システムの可能性が評価された。第1培養工程は、E. gracilisの増殖を促進するためのE. gracilisとEG3株の共培養であった。この第1培養工程で増殖が促進されたE. gracilis細胞を、第2培養工程のE. gracilis接種材料として使用した。第2培養工程では、第1培養工程で増殖が促進されたE. gracilis接種材料によるバイオマスと油脂の生産を調べた(図2)。
第1培養工程でのE. gracilisとEG3株の共培養の実験方法は次のとおりだった。E. gracilisは、内径約290mm、高さ約430mmの15Lのポリカーボネート培養容器で、滅菌されていない下水処理水サンプル5Lに接種された。EG3株を8×10CFU/mLでE. gracilis培養に接種した。第1培養工程でのE. gracilisとEG3株の共培養は、増殖チャンバー(28±1℃、80μmolphotons m−2−1の蛍光灯および16時間の光周期)で7日間、0.5L/分の流量でエアポンプによって大気でバブリングされた条件で実施した。
第1培養工程の7日後、2〜4Lの培養物を回収し、低重力遠心分離(3000×g、15分)によりE. gracilisを回収した。E. gracilis細胞を蒸留水で2回洗浄してEG3株の細胞を除去し、遠心分離により回収した。収集したE. gracilisペレットには、EG3株の細胞がほとんど含まれていないことを確認した。収集されたE. gracilisペレットは、第2培養工程の培養の接種材料として使用された。E. gracilisは、上記の条件下で5Lの下水処理水サンプルにEG3株を加えずに培養し、この培養実験を対照実験として、収集したE. gracilisペレットも第2培養工程の接種材料として使用した。
第2培養工程でのバイオマスと油脂の生産は、15Lのポリカーボネート培養容器で行われた。15Lのオートクレーブされていない下水処理水サンプルを培養容器に加えた。第1培養工程においてEG3株で増殖が促進された、または第1培養工程の対照実験で培養したE. gracilisのそれぞれの接種材料は、15Lのオートクレーブされていない下水処理水サンプルに接種された。E. gracilisの初期細胞密度は約80mg乾燥重量/Lであった。第2培養工程のバイオマス/油脂生産培養は、増殖チャンバー(28±1℃、80μmol photons m−2−1および16時間光周期の蛍光灯)で、1L/分の流量で大気をバブリングされた条件で7日間実施した。この間に、培養液のクロロフィルa+bとバイオマスは毎日測定された。また、第2培養工程の開始時と終了時にE. gracilisの油脂含有量は、測定された。
(1.9 E. gracilis増殖の測定およびE. gracilis油脂の測定)
本実施例では、E. gracilisの増殖の指標としてクロロフィル濃度を測定した。クロロフィル濃度は、100%メタノールで30分間抽出した後、分光光度法で測定した。抽出物の吸光度は、分光光度計(UVmini−1240;島津製作所株式会社、京都、日本)で665nm(A665)および650nm(A650)で測定された。総クロロフィル(クロロフィルa+クロロフィルb:Chl a+b)濃度(μg/mL)は、次のように計算された。
Chl a+b(μg/mL)=4×A665+25.5×A650(式1)
E. gracilisのバイオマス(乾燥重量)は、次のように測定した。培養液50mLを収集し、30秒間ボルテックスして、細菌および微細藻類細胞を均一に懸濁した。混合物を遠心分離し(3000×g、5分)、ペレットを20mLの蒸留水で洗浄した。その後、ペレットを20mLの蒸留水に懸濁した。懸濁液中のE. gracilis細胞を、事前に秤量したGF/Bフィルター(孔径、1μm)で収集し、乾燥(90℃、3時間)してから秤量した。この方法により、共存するEG3株の細胞(乾燥重量)からの干渉がほとんどなく、E. gracilis細胞(乾燥重量)を収集できることが確認された。
E. gracilis細胞の油脂含有量は、乾燥バイオマス中の油脂の割合で定量化された。E. gracilisを遠心分離(3000×g、5分)で収穫し、蒸留水で洗浄し、乾燥させた後、粉末にした。E. gracilis粉末(20mg)をBioMasher(タカラバイオ、草津、日本)で1mLのn−ヘキサンと共に粉砕した。粉砕したE. gracilisサンプルを50mLチューブに移し、9mLのn−ヘキサンと6mLイソプロパノールをチューブに加えた。チューブを225rpmで24時間振盪した。次に、30mLの蒸留水をチューブに加えた。チューブを1分間振盪した後、遠心分離した(10,000×g、5分)。油脂を含むn−ヘキサン層を、事前に計量したアルミニウムトレイに収集し、室温で一晩乾燥させた後、90℃で3時間乾燥させた。最後に、収集した油脂の重量を測定した。
バイオマス生産速度(mg/L/日)および油脂生産速度(mg/L/日)は、次のように計算された。
バイオマス生産速度(mg/L/日)=(最終バイオマス[mg/L]−初期バイオマス[mg/L])/(培養時間[日])(式2)
油脂生産速度(mg/L/日)=([バイオマス(mg/L)×油脂含有量(%)]最終−[バイオマス(mg/L)×油脂含有量(%)]初期)/培養時間(日)(式3)
(1.10 統計分析)
実験ごとに3つのサンプル(n=3回の繰り返し)の結果を統計分析に用いた。全ての結果は、平均値±標準偏差として表された。SPSS Statistics v.22.0(IBM、ニューヨーク州アーモンク)のt検定を使用して、有意性(p<0.05)を分析した。
[2.試験結果]
(2.1 E. gracilisに対するMGPBとしてのEmticicia sp.EG3株の分離と同定)
下水処理水サンプルに含まれる細菌がE. gracilisの増殖を促進できるという仮説を検証するために、E. gracilisを、3連続バッチ培養実験において、生菌を含む(非滅菌下水処理水サンプル)または生菌なし(オートクレーブ加熱滅菌下水処理水サンプル)で培養した。各バッチ培養の2日後、クロロフィルa+b濃度は、生菌を含まない培養よりも生菌を含むE. gracilis培養液の方が高かった(p<0.05)(図3)。この結果は、下水処理水サンプル中にE. gracilisに対するMGPBが存在することを示唆した。滅菌されていない下水処理水中のE. gracilis培養から、MGPBの候補となる10の細菌株が分離された。10株のうち6株がR2A培地で十分に増殖し、E. gracilisの増殖を促進する能力を調べた。その結果、E. gracilisの増殖を促進する4つの株が見つかった。その中で、EG3株は最高の増殖促進能力を示した。また、EG3株はR2A液体培地で高いバイオマス収量を示した。図4A〜図4Cに、EG3株(図4A)を含む3つの株について、下水処理水を培養液とした2工程培養での増殖促進細菌の効果を示す。
R2A寒天上のEG3株のコロニーは、円形、滑らか、凸面、およびオレンジ色であった。EG3株は、オキシダーゼ、グルコース発酵、およびエスクリン加水分解に対して陽性を示したが、硝酸還元、インドール生成、アルギニンジヒドロラーゼ、ウレアーゼ、ゼラチナーゼおよびβ−ガラクトシダーゼ活性に対して陰性を示した。EG3株は、唯一の炭素源としてグルコース、D−マンノース、またはマルトースを利用したが、L−アラビノース、D−マンニトール、N−アセチル−D−グルコサミン、グルコン酸塩、n−カプリン酸塩、アジピン酸塩、D、L−リンゴ酸塩、クエン酸塩、またはフェニルアセテートは利用しなかった。
EG3株の16S rRNA遺伝子のほぼ完全な配列(1431bp)は、Emticicia fontis株IMCC1731(97.9%の配列類似性)、Emticicia ginsengisoli株Gsoil 085(97.6%)、Emticicia soli株ZZ−4(97.5%)、Emticicia oligotrophica株GPTSA100−15(94.4%)、Emticicia aquatica株HMF2925(93.9%)、Emticicia sediminis株JBR12(93.7%)、およびEmticicia aquatilis株THG−DN6.14T(93.7%)の類似配列と非常に類似していた。したがって、EG3株をEmticicia sp.として同定した。
(2.2 異なる細胞密度でのEG3株によるE. gracilisの増殖促進)
下水処理水サンプルでのE. gracilisの増殖を促進するために必要なEG3株の細胞密度を決定するために、EG3株をさまざまな細胞密度、0(コントロール)、2×10、8×10、および4×10CFU/mLで接種してE. gracilisと共培養した。その結果、E. gracilisのクロロフィルa+b濃度とバイオマス生産速度(mg/L/日)は、EG3株を2×10、8×10、および4×10CFU/mLの細胞密度で接種したE. gracilis培養でE. gracilis対照培養よりも有意に高かった(p<0.05)(図5A及び図5B)。EG3株の増殖促進効果は、2×10CFU/mLよりも8×10および4×10CFU/mLの細胞密度で高かった。EG3株の初期接種細胞密度は、EG3株がE. gracilisのバイオマス生産速度を大幅に高めたかどうかの重要な決定要因といえる。EG3株の初期接種8×10と4×10CFU/mL間のE. gracilisの増殖を促進する能力の差は有意ではなかったため、これ以降の実験ではEG3株の初期接種8×10CFU/mLを使用することにした。
(2.3 E. gracilisの増殖を促進するEG3株の能力に対する下水処理水中の細菌の影響)
EG3株と共存する細菌の影響を調べるために、E. gracilisとEG3株を熱殺菌または非殺菌の下水処理水サンプルで共培養した。E. gracilis−EG3株共培養のクロロフィルa+b濃度は、滅菌および非滅菌下水処理水の両方で、EG3株を含まないE. gracilis培養の濃度よりも有意に高かった(p<0.05)(図6A)。
7日間の培養実験中、EG3株と共培養されたE. gracilisのバイオマス生産速度(mg/L/日)は、EG3株なしで培養されたE. gracilisと比較して、滅菌および非滅菌下水処理水でそれぞれ3.7倍および3.1倍であった(図6B)。これらの結果は、EG3株が3.6±0.2×10CFU/mLの複雑な細菌群集が存在する実際の下水処理水でもE. gracilisの増殖を促進できることを明確に示している。
(2.4 EG3株を使用した2工程培養システムにおけるE. gracilisによるバイオマスと油脂の生産の向上)
E. gracilisによるバイオマスと油脂の生産を高めるために、EG3株を使用した2工程のE. gracilis培養システムを運用した(図2)。まず、第1培養工程において、E. gracilisはEG3株と共培養され、E. gracilisの増殖を促進した。この第1培養工程で生産されたE. gracilisは、第2培養工程の培養システムの接種材料として使用され、15Lの下水処理水中においてE. gracilisによるバイオマスと油脂の生産が調べられた。対照培養では、第1培養工程でE. gracilisをEG3株なしで増殖させ、そのE. gracilisを第2培養工程の接種材料として使用して、同様に15Lの排水中においてE. gracilisによるバイオマスと油脂の生産が調べられた。
第2培養工程において、E. gracilisのクロロフィルa+b濃度とバイオマス(乾燥重量)濃度は、第1培養工程でEG3株と共培養されたE. gracilisを接種したシステムで、対照E. gracilis培養を接種したシステムよりも有意に高かった(p<0.05)(図7A)。第1培養工程でEG3株と共培養されたE. gracilisを接種したシステムの第2培養工程では、E. gracilisのバイオマス濃度が、7日間の培養の終了時に最高レベルの702±23mg/Lに達した(図7B)。
図8A、図8B、図8Cは、第1培養工程でEG3株と共培養されたE. gracilisを接種したシステムおよび第1培養工程の対照E. gracilis培養の第2培養工程でのバイオマス生産速度、油脂含有率および油脂生産速度を比較したものである。第1培養工程でEG3株と共培養されたE. gracilisを接種したシステムのE. gracilisバイオマス生産速度(87±2.8mg/L/日)は、対照E. gracilis(27±2.7mg/L/日)の3.2倍であった(図8A)。第1培養工程でEG3株と共培養されたE. gracilisを接種したシステムのE. gracilisの油脂含有率(28.4%±0.7%)は、対照E. gracilisの油脂含有率(30.9%±0.8%)よりわずかに低いが有意に低かった(図8B)。第1培養工程でEG3株と共培養されたE. gracilisを接種したシステムのE. gracilisの油脂生産速度(25±0.8mg/L/日)は、対照E. gracilis(8.5±0.8mg/L/日)の2.9倍であった(図8C)。
[3.結果の考察]
MGPBの利用技術は、微細藻類のバイオマス生産性を向上させるものとして期待されている。例えば、「Candidatus Phycosocius bacilliformis」BOTRYCO−2とP.bermudensis KCTC 13073BPは、B.brauniiとT.striataによるバイオマス生産率をそれぞれ1.8倍と2倍増加させた結果が報告されている[Tanabe Y, Okazaki Y, Yoshida M, Matsuura H, Kai A, Shiratori T, Ishida K, Nakano S, Watanabe MM. A novel alphaproteobacterial ectosymbiont promotes the growth of the hydrocarbon-rich green alga Botryococcus braunii. Sci Rep. 2015; 5:10467、Park J, Park BS, Wang P, Patidar SK, Kim JH, Kim SH, Han MS. Phycospheric native bacteria Pelagibaca bermudensis and Stappia sp. ameliorate biomass productivity of Tetraselmis striata (KCTC1432BP) in co-cultivation system through mutualistic interaction. Front Plant Sci. 2017; 8:289]。このMGPBを利用した微細藻類のバイオマス生産性向上の戦略を成功させるには、宿主の微細藻類に適したMGPBを使用する必要がある。
したがって、E. gracilisのバイオマス/油脂生産性を高めるためには、E. gracilisのMGPBを分離し、その効果が発揮される利用技術を開発することが重要であった。申請者の研究グループのこれまでの調査から、E. gracilisの増殖を促進する細菌が一般的な下水処理水中に存在することが確認された[Toyama T, Kasuya M, Hanaoka T, Kobayashi N, Tanaka Y, Inoue D, Sei K, Morikawa M, Mori K. Growth promotion of three microalgae, Chlamydomonas reinhardtii, Chlorella vulgaris and Euglena gracilis, by in situ indigenous bacteria in wastewater effluent. Biotechnol Biofuels. 2018; 11:176]。そこで下水処理水中からMGPBの分離を試みたところ、E. gracilisに対するMGPBである、Emticicia sp.EG3株が、分離された。EG3株は、E. gracilisの最初のMGPBである。Emticicia属のメンバーは、淡水、湿地、海水、浅い河川の堆積物、土壌などのさまざまな環境から分離されている。Emticiciaの生態学的役割とその産業利用の可能性は未だ明らかではないが、その役割の1つがE. gracilisなどの微細藻類の増殖を促進する共生関係で機能することを示している。
EG3株を8×10CFU/mLの接種密度でE. gracilisと共培養すると、EG3株はE. gracilisバイオマスの生産速度を、熱滅菌および非滅菌下水処理水での培養条件において、それぞれ3.7倍および3.1倍増加させた(図6B)。E. gracilisに対するEG3株の増殖促進効果は、これまでに報告されている他の微細藻類に対するMGPBの効果と同程度であった。
これまでの他の研究論文では、MGPBの効果が他の細菌群集のない、単一MGPBおよび単一微細藻類の無菌培養条件下で研究されてきた。一方、微細藻類の大型培養を含む野外条件では、他の細菌群集との競争のためにMGPBの有益な効果が十分に発揮されないことが考えられる。したがって、EG3株が他の複雑な微生物群集が存在する非滅菌下水処理水においてE. gracilisのバイオマス生産性を著しく増加させたことは注目に値する。すわなち、EG3株のE. gracilisの成長促進機能は、E. gracilis大型培養に利用できる価値が非常に高いと言える。
一部のMGPBは、微細藻類細胞の油脂、脂肪酸、デンプン、または炭化水素の含有量を増加させる可能性がある。A. brasilense Cdは、C. vulgarisの脂肪酸と油脂の蓄積を大幅に増加させる可能性がある。ただし、本実施例では、EG3株はE. gracilisの油脂の蓄積にプラスの効果はなかった(図8B)。本実施例では、パラミロン、β−カロテン、デンプン、タンパク質などの他の細胞成分の生産、または油脂組成に対するEG3株の影響は考慮されていない。これらの効果とEG3株の増殖促進メカニズムの解明は、まだ検討されていない。
MGPBの効果的な利用技術として、微細藻類とMGPBの共固定化が提案されている。C. vulgarisはアルギン酸ビーズでA.brasilense Cdと共固定化されており、共生により、(1)固定化C. vulgaris単独と比較して合成排水中の栄養素除去が強化され、(2)バイオマス、油脂、合成培地でのデンプンの生産性が強化された研究が報告されている[Leyva LA, Bashan Y, Mendoza A, de-Bashan LE. Accumulation fatty acids of in Chlorella vulgaris under heterotrophic conditions in relation to activity of acetyl-CoA carboxylase, temperature, and co-immobilization with Azospirillum brasilense. Naturwissenschaften 2014; 101:819-830、Palacios OA, Choix FJ, Bashan Y, de-Bashan LE. Influence of tryptophan and indole-3-acetic acid on starch accumulation in the synthetic mutualistic Chlorella sorokiniana-Azospirillum brasilense system under heterotrophic conditions. Res Microbiol. 2016; 167:367-379、Palacios OA, Lopez BR, Bashan Y, de-Bashan LE. Early changes in nutritional conditions affect formation of synthetic mutualism between Chlorella sorokiniana and the bacterium Azospirillum brasilense. Microb Ecol. 2019; 77:980-992]。
本実施形態では、E. gracilisのバイオマス生産を強化するMGPBの別の利用技術として、2工程培養システムを提案した。第1培養工程では、E. gracilisの増殖を促進するために、EG3株と8×10CFU/mLで共培養し、その増殖が促進されたE. gracilisを第2培養工程の接種材料として使用した。第2培養工程では、下水処理水を用いてE. gracilisのバイオマスと油脂の大量生産を7日間実施した。
第1培養工程で増殖が促進されたE. gracilisを用いた第2培養工程では、E. gracilisは7日間にわたって高い速度で増殖した(図7A)。7日間の培養期間中のバイオマスおよび油脂生産速度は、第1培養工程でEG3株接種なしの対照E. gracilisの培養と比較して、それぞれ3.2倍および2.9倍に高まった(図8A及び図8C)。
この本実施形態は、MGPBであるEmticicia sp.EG3株を利用した2工程培養によるE. gracilisのバイオマス/油脂生産の向上を実証した最初の研究である。E. gracilisの増殖促進は、これまでに他の研究によって遺伝子工学または外因性栄養素、植物ホルモン、フェルラ酸の補充によって達成されている。小川ら[Ogawa T, Tamoi M, Kimura A, Mine A, Sakuyama H, Yoshida E, Maruta T, Suzuki K, Ishikawa T, Shigeoka S. Enhancement of photosynthetic capacity in Euglena gracilis by expression of cyanobacterial fructose-1,6-/sedoheptulose-1,7-bisphosphatase leads to increases in biomass and wax ester production. Biotechnol Biofuels. 2015; 8:80.]は、シアノバクテリアのフルクトース−1,6−/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼ遺伝子を過剰発現させることにより、高光および高CO条件下、CM培地でE. gracilisバイオマス(乾燥重量)の生産速度を2倍に高めたが、これはカルバンサイクルに関与している。トランスジェニックE. gracilisの最高バイオマス濃度は631.1±89.9mg/Lであった。
Zhuらは[Zhu J, Wakisaka M. Growth promotion of Euglena gracilis by ferulic
acid from rice bran. AMB Express. 2018; 8:16.]は、米ぬかから作られたフェルラ酸を500mg/L、E. gracilisの培地に加えることで、E. gracilisの細胞密度が2.5倍になり、E. gracilisのバイオマス(乾燥重量)の生産速度が2.2倍に上がると報告している。500mg/Lフェルラ酸を含むCM培地でのE. gracilisの最大バイオマス濃度は670±40mg/Lであった。Nobleら[Noble A, Kisiala A, Galer A, Clysdale D, Emery RJN. Euglena gracilis (Euglenophyceae) produces abscisic acid and cytokinins and responds to their exogenous application singly and in combination with other growth regulators. Eur J Phycol. 2014; 49:244-254.]は、外因性の植物ホルモンがE. gracilisの増殖を刺激すると報告している。トランスゼアチン(10−7M)とアブシジン酸(10−9M)の組み合わせは、植物ホルモンを含まないE. gracilis培養と比較して、E. gracilisの増殖に最適な条件を生成し、増殖速度を約3倍増加させた。今回開発したEG3株を利用した2工程培養によるE. gracilisのバイオマス生産速度(3.2倍)と最高のバイオマス濃度(702±23mg/L)は、これまでの研究による他の増強方法の結果と同等かそれ以上であった。
上記の他の研究では、合成培地を用いた無菌条件で検討しているのに対して、今回の実験では実際の利用条件に近い下水処理水を用いた非無菌条件である。そのため、今回の実験結果は下水処理水を用いたE. gracilisのバイオマスと油脂の大規模生産システムにとって非常に価値のあるものである。
EG3株を利用した2工程培養によるE. gracilisのバイオマス/油脂の大量培養システムを下水処理プラントに導入した概略設計を図9に示す。2工程培養システムの最適化(培養槽の容量設計や滞留時間設定など)は、このシステムの実用化の次の課題である。
[4.まとめ]
E. gracilisの増殖を促進することができるEmticicia sp. EG3株を、下水処理水から分離した。EG3株は、他の細菌群集を含む下水処理水中でも、E. gracilisのバイオマス生産性を大幅に高めた。E. gracilisのバイオマス/油脂生産性を大幅に高めることができるEG3株を利用した2工程E. gracilis培養システムを提案した。
ここで提案したEG3株を利用した2工程E. gracilis培養システムによって、EG3株を含まない培養と比較して、E. gracilisのバイオマスおよび油脂生産性がそれぞれ3.2倍および2.9倍高まった。この2工程E. gracilis培養システムは、E. gracilisのバイオマス/油脂(バイオ燃料)の生産性を高める有望な新技術である。

Claims (7)

  1. ユーグレナを増殖促進細菌と共に培養する第1培養工程と、
    前記第1培養工程で培養した前記ユーグレナを分離する分離工程と、
    前記分離工程で分離した前記ユーグレナを培養する第2培養工程と、
    を行うことを特徴とするユーグレナの培養方法。
  2. 前記第1培養工程及び前記第2培養工程が、下水処理水を含有する培養液中で行われることを特徴とする請求項1に記載のユーグレナの培養方法。
  3. 前記増殖促進細菌は、Emticicia sp. EG3株(受領番号:NITE AP−03055)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のユーグレナの培養方法。
  4. ユーグレナを増殖促進細菌と共に培養する第1培養工程と、
    前記第1培養工程で培養した前記ユーグレナを分離する分離工程と、
    前記分離工程で分離した前記ユーグレナを培養する第2培養工程と、
    前記第2培養工程で得られる培養物から油脂を回収する油脂回収工程と、
    を行うことを特徴とする油脂の製造方法。
  5. 前記第1培養工程及び前記第2培養工程が、下水処理水を含有する培養液中で行われることを特徴とする請求項4に記載の油脂の製造方法。
  6. 前記増殖促進細菌は、Emticicia sp. EG3株(受領番号:NITE AP−03055)であることを特徴とする請求項4又は5に記載の油脂の製造方法。
  7. ユーグレナを増殖促進細菌と共に培養する第1培養タンクと、
    前記第1培養タンクで培養した前記ユーグレナを培養する第2培養タンクと、を備え、
    前記第1培養タンク及び前記第2培養タンクには、下水処理水を含有する培養液が充填されることを特徴とする下水処理プラント。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN114751520A (zh) * 2022-03-14 2022-07-15 岭南师范学院 一种利用真菌微藻共生系统处理氨糖加工废水的方法

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