JP5662700B2 - 生体光計測装置及び生体光計測方法 - Google Patents
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Description
特許文献5には、発光部に対する受光部の位置を可変として、異なる深さからの情報を一つの測定装置で得ることができるようにした光学的測定装置が開示されている。
しかし、計測用のプローブと計測対象との接触状態のわずかな変化であっても計測結果に影響が出ることから、実用上問題がある。
予防医学の観点から、簡易、安価で、かつ、信頼性の高い脳血行動態変化計測装置(以下、脳計測装置と記す)の必要性が今後高まると予想される。また、脳血行動態変化(以下、脳血流と記す)等の生体光情報は、医療だけでなく、ゲームなどの分野にも応用が期待される。このような用途では装置は出来るだけ安価なもので簡便に利用可能であることが望ましい。また、安定した信号計測が出来ることが重要である。
特許文献1〜5で提案されている装置は、この要求を十分に満たすものとはなっていない。
図13は、一対の光照射部(光源)201と光検出部(検出器)202とを備えた生体光計測装置を示している。光源では光の出力の揺らぎ、検出部では、皮膚血流変化など脳組織以外の領域での血行動態変化が、各々、測定時の雑音の要因となる。すなわち、光源から生体内に照射された光は、生体内を散乱・透過し検出器まで到達する。このときの光の道筋(光路)は広がりを持ち、深部の計測対象503に到達する光路もあるが、浅部の非計測対象501、502にも多くの光路がある。この非計測対象領域を通過した光は、雑音として皮膚血流変化などの影響を含む。
しかしながら、ここでの皮膚血流変化とは図中の領域708についてのみであり、領域709での皮膚血流変化は無視されている。生体中の血管分布は不均一であるため「皮膚血流変化」は部位ごとに異なる。そのため、図14の構成のように、単に、第2の検出器702を追加しただけでは、深部の「脳信号」のみを正確に抽出することは困難である。
また、本発明の生体光計測装置において、前記演算処理部は、被検者によって実行されるタスクに応答した検出信号と、前記検出信号に含まれる雑音成分の振幅を最適化する修正係数とから、振幅の最適化された前記検出信号間の差分を算出し、該差分の信号に基づき生体情報を求めるものでよい。
また、本発明の生体光計測装置において、前記修正係数として、モデルシミュレーションにより求めた修正係数を用いるものでよい。
また、本発明の生体光計測装置において、前記演算処理部は、被検者に対して予備のタスクを提示した状態での検出信号により、または、タスクを行っていない状態での検出信号により、異なる反射率間での信号の修正係数を算出する修正係数演算部を備えるものでよい。
また、本発明の生体光計測装置において、反射体の反射率を変化させる機構が、反射体と測定対象との距離を変更する機構を備えているものでよい。
また、本発明の生体光計測装置において、反射体の反射率を変化させる機構が、電気的に制御可能な液晶フィルタを備えているものでよい。
また、本発明の生体光計測装置において、前記液晶フィルタが空間解像度のある液晶であり、反射体の任意部分の反射率を変化可能としたものでよい。
また、本発明の生体光計測装置において、複数の反射体を備え、それぞれ個別に反射体の反射率を変化させる機構を備えているものでよい。
また、本発明の生体光計測装置において、前記光照射部は複数の波長の光を被検体に照射するものであり、反射体の反射率を変化させる機構が、特定の波長の光を吸収する光学フィルタを備えているものでよい。
例えば、脳信号の計測に用いた場合、皮膚血流等による不要な情報を除去し、「脳信号」のみを精度良く抽出できる。
まず、図1は、本発明が適用される光トポグラフィ装置の全体構成を示す図である。図2は、第一の実施例のプローブの構成を示す機能ブロック図である。図3、図4は、第一の実施例のプローブの構成、及びその被検者の頭部への装着状態を説明する図である。
ここで、回転スリット機構203に光を吸収させるため、被検体側の表面は光の反射が少なく、吸収の高いような塗装などを施せば好適である。
計測のサンプリング周期と反射状態の切り替え周期とは同期を取ることが望ましいが、同期が取れていない場合でも、反射状態の切り替え周期を信号検出サンプリング周期の半分以下にすることで目的は達せられる。
このようにして得られた観測信号を図3(b)の状態での信号A’と、図3(a)の状態での信号B’とに分離し、例えば線形補間などによって連続的な2つの時系列信号A、信号Bとして生成する。
ここで、信号A’と信号B’とを分別するために、スリット位置検出部261で計測され、記憶部130に記憶された回転位置情報を利用する。
制御装置100の脳活動計測処理部114は、被検者によって実行されるタスク応答と同期した脳活動変化を、前記の信号Aと信号Bとの差分から算出する。制御装置100は、プローブ200を装着した被検者に対する予備のタスク提示により、信号A、信号Bに含まれる雑音成分の振幅を最適化する修正係数として、この被験者に固有の最適な修正係数αを算出し、この被検者によって実行されるタスク応答と同期した脳活動変化を信号A及び信号Bとして算出し、該信号Aもしくは信号Bに前記最適な修正係数αを乗算し、該修正係数αが乗算され振幅の最適化された前記信号Aと前記信号Bとの差分の信号を求め、該差分の信号に基づき脳活動変化の算出を行う。
ここで、予備タスクと正式なタスクとを区別したが、正式なタスクの中に、脳活動を引き起こさない安静状態を用い、この期間の信号を予備タスクによるものと考え前記修正係数αを算出してもよい。
被検体300の頭部(例えば、前頭部)にプローブ200を装着した状態で、制御装置100は、被検体300に間歇的なタスクを課すとともに、プローブ200の光照射部201より光を照射し、その光が被検体300を透過した光を光検出部202で検出する。この透過光は、生体中の特定色素、例えばヘモグロビンによって一部吸収され、ヘモグロビン濃度を反映した光量となる。そしてタスクを課した状態と、タスクを課していない状態とでは、脳内血流に変化を生じることに対応してヘモグロビン量が変動する。
このようなヘモグロビン量の変動に対応する光量の変動は、光検出部において電気信号に変換され、信号処理された信号は制御装置100の記憶部130に格納された後、演算処理部110においてヘモグロビン濃度に対応する信号(ヘモグロビン信号)に変換される。
このヘモグロビン濃度やヘモグロビン量の変化量については、たとえば特許文献6の式(1)〜(3)を用いて演算により求めることができる。
図5に、光検出部202で得られる検出信号の例を示す。波形301は得られた信号をヘモグロビン濃度変化量に変換した後のものであるが、光検出部202で得られる電圧変化を以降の解析でそのまま用いてもよい。
課題(タスク)期間302の時間帯では被験体300は特定のタスクを行っている。波形301は前記反射体204の反射の状態の強い状態と弱い状態とが交互に連続して計測されたものである。
これは、実際の反射率の切替えイミングを別途記録しておき、そのタイミングに基づき波形301の各データ点を反射率の異なる2つの状態のデータとして割り振ったものである。マーク303の信号は前記信号B’に相当し、マーク304の信号は前記信号A’に相当する。
信号A0は、深部組織からの信号成分dと浅部組織からの信号成分sを用いて、
A0=d+s …(式1)
と表され、信号B0は反射体の作用によって浅部組織からの信号成分がα倍に強調されているとすると、
B0=d+αs …(式2)
と表される。ここで、深部組織からの信号成分は主に脳活動によるものであり、この信号の期間では被検体300は安静にしているので脳活動はほぼゼロであると仮定すると、
A0=s …(式3)
B0=αs …(式4)
である。したがって、
αA0=B0 …(式5)
である。ここでA0、B0はベクトルなので最小二乗法などにより修正係数αを求める。
このようにして求めたαは反射状態に関する係数であるので、信号A、信号Bでも同様の意味を持つ。信号A、Bはそれぞれ
A=d+s …(式6)
B=d+αs …(式7)
と表せる。この2つから深部信号dについて
d=(αA−B)/(α−1) …(式8)
が求められる。
図7のプロット311では課題期間302中の変動が明瞭ではなく、約17秒付近から立ち上がり、22秒付近でピークを迎えている。一方、処理後の信号を示すプロット313では、14秒付近から立ち上がり、課題終了後の数秒後まで活動している様子がみられる。これは、一般的に言われている脳活動に伴う血行動態変化と良く一致するものであり、本発明による処理の有効性を示している。
このようにして「脳信号」を精度よく抽出することが可能となる。
この場合、回転スリット513が反射体512を覆うパターンは複数あるため、修正係数αも回転スリットの回転位置によって複数算出し、深部組織信号の抽出に用いる。
図10(a)は、3つの反射体602a、602b、602cのうち、602bのみ反射率が高く、602a、602cの反射率の低状態を模式的に示したものである。この状態では、実施例1と同様に、光路の領域608b、609bの影響が強調した信号を得ることができる。
図10(b)で反射体602aのみの反射率が高く、602b、602cの反射率が低い状態を模式的に示す。この状態では、光路の領域608a、609aの影響が強調された信号を得ることができる。
同様に、反射体602cのみの反射率が高い状態での信号や、すべての反射体の反射率が低い状態、さらにそれらの組み合わせによりいくつかのパターンでの信号が得られる。これらの信号からそれぞれの場合の修正係数を求め、それぞれに浅部組織の影響を低減した信号を得ることができる。
また、それぞれの状態における反射体の影響により強調される光路分布の情報を利用し、浅部組織の影響を低減することができる。
図11は、この実施例を示すもので、反射体602の被検体側に液晶フィルタ610が配置されている。液晶フィルタ610は、領域610a,610b,610cに分かれており、領域ごとに液晶に加える電圧を制御することにより、任意の部分の反射率を変更することができる。図11では、領域610bの透過率が高く、この領域の反射率が高くなっている。
図12に構成図を示す。例えば、波長R1の光761と波長R2の光762をバンドル光ファイバーなどで照射部751より照射する。反射体752の下面に吸収フィルタ760を設置する。この吸収フィルタ760は、波長R1の光は透過し、波長R2の光を吸収するものとする。すると、検出器753で得られ信号は、波長R2については主に光路領域757の状態を示す信号であり、波長R1については光路領域758、759が強調された信号となる。
もちろん、2つの波長の光を一つの検出器で検出するためには、異なる時間で片方のみを発光させるか、ロックインアンプなどを用い、特定の周波数での発光を同期させて検出する。
2つの波長が大きく異なる場合には、光路分布757に示す分布状態が異なってきてしまうため、出来るだけ近い波長帯域の光を用いることが必要である。
301…検出信号例、302・・・課題(タスク)期間、303…検出信号例、304…検出信号例、312…解析信号例、311…解析信号例、312…解析信号例、313・・・解析信号例、
400…タスク呈示部兼表示部、401…キーボード、402…モニタ画面、403…カメラ、
501…浅部組織、502…浅部組織、503…深部組織、
511・・・光路の分布形状、512…反射体、513…回転スリット、601…光照射部、602,602a,602b,602c…反射体、603…光検出部、604…浅部組織、605…浅部組織、606…深部組織、607…光路分布領域、608,608a,608b…光路分布領域、609,609a,609b…光路分布領域、610・・・液晶フィルタ、
701…光照射部、702…第2の光検出部、703…第1の光検出部、704…浅部組織、705…浅部組織、706…深部組織、707…光路分布領域、708…光路分布領域、709…光路分布領域、
751…光照射部、752…反射体、753…光検出部、754…浅部組織、755…浅部組織、756…深部組織、757…光路分布領域、758…光路分布領域、759…光路分布領域、760…吸収フィルタ、761…第1の光、762…第2の光。
Claims (15)
- 光源からの光を被検体に照射する光照射部と、当該被検体を透過した光を受光する光検出部と、前記光検出部の検出信号に基づいて生体情報を求める演算処理部とを有する生体光計測装置であって、
前記光照射部と前記光検出部は、所定距離離れた位置に配置されて検出経路を形成し、
前記検出経路に影響を及ぼす位置に反射率を変化させる機構を有する反射体を配置し、
前記反射率を変化させる機構により前記反射体の反射率を変化させ、反射体の反射率が高い状態と反射体の反射率が低い状態とで、それぞれ検出した検出信号に基づいて生体情報を求めることを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項1記載の生体光計測装置において、
反射体の反射率が高い状態と反射体の反射率が低い状態とを交互に切り替えて、それぞれ検出した検出信号により2つの連続的な時系列信号を生成し、当該時系列信号に基づいて生体情報を求めることを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項1または2に記載の生体光計測装置において、
前記演算処理部は、被検者によって実行されるタスクに応答した検出信号と、前記検出信号に含まれる雑音成分の振幅を最適化する修正係数とから、振幅の最適化された前記検出信号間の差分を算出し、該差分の信号に基づき生体情報を求めることを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項3記載の生体光計測装置において、
前記修正係数として、モデルシミュレーションにより求めた修正係数を用いることを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項3記載の生体光計測装置において、
前記演算処理部は、被検者に対して予備のタスクを提示した状態での検出信号により、または、タスクを行っていない状態での検出信号により、異なる反射率間での信号の修正係数を算出する修正係数演算部を備えることを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項1乃至5の何れか一つに記載の生体光計測装置において、
前記反射体の反射率を変化させる機構により、検出信号に含まれる皮膚血流変化の信号の程度が通常の状態と強められた状態とにおいて、光検出部によりそれぞれ信号を検出し、それらの差分から生体情報として脳信号を抽出することを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項1記載の生体光計測装置において、
前記反射体の反射率を変化させる機構が、スリットを有する回転体を備えていることを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項1記載の生体光計測装置において、
前記反射体の反射率を変化させる機構が、反射体と測定対象との距離を変更する機構を備えていることを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項1記載の生体光計測装置において、
前記反射体の反射率を変化させる機構が、電気的に制御可能な液晶フィルタを備えていることを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項9記載の生体光計測装置において、
前記液晶フィルタが空間解像度のある液晶であり、反射体の任意部分の反射率を変化可能としたことを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項1記載の生体光計測装置において、
複数の反射体を備え、それぞれ個別に反射体の反射率を変化させる機構を備えていることを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項1記載の生体光計測装置において、
前記光照射部は複数の波長の光を被検体に照射するものであり、
前記反射体の反射率を変化させる機構が、特定の波長の光を吸収する光学フィルタを備えていることを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項1記載の生体光計測装置において、
前記反射体の形状が被検体内での照射光の散乱経路を模したものであることを特徴とする生体光計測装置。 - 光源からの光を被検体に照射する光照射部と、当該被検体を透過した光を受光する光検出部と、検出経路に影響を及ぼす位置に配置された反射率を変化させる機構を有する反射体を有する生体光計測装置における生体光計測方法であって、
前記反射率を変化させる機構により反射体の反射率が高い状態と反射体の反射率が低い状態とを切り替えて、前記光検出部によりそれぞれ信号を検出し、それぞれ検出した検出信号に基づいて生体情報を求めることを特徴とする生体光計測方法。 - 請求項14記載の生体光計測方法において、
検出される信号に含まれる皮膚血流変化の信号の程度が通常の状態と強められた状態の異なる2つの状態を交互に計測し、それらの差分から脳信号を抽出することを特徴とする生体光計測方法。
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