以下、本発明に係る導波路構造およびプリント配線板の実施の形態について、図面に基いて説明する。
なお、下記の実施の形態では、基板厚さ方向(図1における縦方向)を「厚さ方向」とする。
[第1の実施の形態]
まず、本発明に係る導波路構造の第1の実施の形態の構成について、図1、図2に基いて説明する。
図1は本実施の形態のEBG構造の断面図を示す。図2は本実施の形態の平面図である。図1は図2に示すA−A´間の断面図である。
本実施の形態のEBG構造(導波路構造)は、平行平板型導波路構造であり、図1に示すように、厚さ方向に間隔をあけて平行に配設された第1、第2の導体プレーン1,2と、後述する単位構造3と、を備えている。単位構造3は、第1の導体プレーン1及び第2の導体プレーン2と異なる層に配設された伝送線路4と、その伝送線路4の他端と第1の導体プレーン1とを電気的に接続する導体ビア5と、を有している。
詳しく説明すると、EBG構造には、第1の誘電体層6と、第1の誘電体層6の厚さ方向の一方側(上側)に積層された第2の誘電体層7と、が備えられており、第1の誘電体層6の厚さ方向の他方側(下面)に第1の導体プレーン1が配設されており、第1の誘電体層6と第2の誘電体層7との間に第2の導体プレーン2が配設されている。また、導体ビア5は、厚さ方向に延設されており、第2の導体プレーン2の一方側(上面)から第1の導体プレーン1の他方側(下面)にかけて延設されている。また、第2の誘電体層7の厚さ方向の一方側(上面)に伝送線路4が配設されている。つまり、伝送線路4は、第2の導体プレーン2に対して第1の導体プレーン1の厚さ方向の反対側に配設されている。
伝送線路4は、第2の導体プレーン2と対向する平面に配設されて、第2の導体プレーン2をリターンパスとする伝送線路であり、一端(図1における右側の端部)がオープン端となっており、伝送線路4がオープンスタブとして機能するように構成されている。伝送線路4の他端(図1における左側の端部)には、同一平面上に形成されたパッド8が電気的に接続されており、このパッド8と第1の導体プレーン1とは、厚さ方向に延設された導体ビア5を介して電気的に接続されている。第2の導体プレーン2には、導体ビア5に対応する位置にクリアランス9が設けられており、このクリアランス9によって導体ビア5と第2の導体プレーン2とが電気的に切り離されて電気的に接触していない状態となっている。
上記したEBG構造では、前記した伝送線路4、パッド8及び導体ビア5がシャント部として機能し、このシャント部と前記したクリアランス9を有する単位構造を、独立なベクトルA=(A1, A2)、およびB=(B1,B2)、で定義される、xy平面上の格子点に少なくともひとつ以上を周期的に配置させた構造をとる。本実施の形態では、最も基本的な格子点として、図2に示すA=(a,0)、B=(0,a)の正方格子の場合を例に説明する。本実施の形態では、伝送線路4がA=(a,0)、B=(0,a)と一定の角度をなしており、周囲のクリアランス9等と干渉することなく、伝送線路の長さdを長くとることが可能である。なお厳密には、図2の点線A−A´で定義される断面内には伝送線路4が含まれないが、A−A´間における断面図、図1では説明の便宜から伝送線路4を点線で図示した。また、図2は説明の便宜から第2の誘電体層7を透視して、第2の導体プレーン2を図示した。
次に上記したEBG構造の基本的な動作原理を説明する。
図3は、図2におけるx軸またはy軸に沿った方向の等価回路である。図4は、並列シャント部のアドミタンスの虚部をプロットしたものである。図5は、本実施の形態におけるEBG構造中を伝播する電磁波の挿入損失の計算結果である。
図3に示すように、本実施の形態の等価回路繰り返し単位10は、直列インピーダンス部11と並列シャント部12とで構成される。直列インピーダンス部11は、前記第1、第2の導体プレーン1,2がつくるインダクタンス13からなる。並列シャント部12は、前記第1、第2の導体プレーン1,2がつくるキャパシタンス14と、前記導体ビア5のつくるインダクタンス15と、伝送線路4とからなる。この等価回路繰り返し単位10が周期的に少なくとも1つ以上接続されることにより、本実施の形態のEBG構造の等価回路が形成される。
本実施の形態のEBG構造では、前記並列シャント部12がインダクタンス性を示す周波数帯にバンドギャップが生じる。並列シャント部12のアドミタンスは次式(1)で表される。
パッド側から見た伝送線路4の入力インピーダンスは、次式(2)で表される。
図4には、前記式(1)および式(2)から計算されるアドミタンスの虚部の周波数依存性16が示されている。計算にあたり使用したパラメータは、キャパシタンス14が0.73pF、インダクタンス15が0.22nH、伝送線路4の特性インピーダンスが20.25Ω、伝送線路4の線路長dが7.5mm、伝送線路4の実効比誘電率が 3.47である。伝送線路4はオープン端のため、伝送線路4の終端抵抗は無限大とした。アドミタンスは伝送線路4におけるインピーダンス変換効果により、キャパシタンス性( Im(Y) > 0 )とインダクタンス性( Im(Y) < 0 )が周期的に入れ替わる。図4の周波数帯域17がIm(Y) が負になり、インダクタンス性を示す周波数帯である。したがって、この周波数帯域17でバンドギャップが生じることが予想される。
本実施の形態のEBG構造では前記の等価回路繰り返し単位10に対応した物理構造を、一定の格子間隔aで定義されるxy平面の格子点上に周期的に配置させる。このため厳密には、図3の等価回路繰り返し単位10に対して周期境界条件を課すことで、構造の周期性を考慮したバンドギャップ帯域を計算する必要がある。図5は、格子間隔をa=3mmとしたとき、本実施の形態のEBG構造中を距離7×aだけ伝播する電磁波の挿入損失(S21)を計算した結果である。図5に示す点線18は、等価回路繰り返し単位10に周期境界条件を課して計算した結果を表す。回路パラメータは図4の計算と同一である。図5に示す実線19は、3次元電磁界解析による数値計算の結果を表す。電磁界解析モデルの構造寸法は、第1の誘電体層6の厚さt=400μm、第2の誘電体層7の厚さh=60μm、導体ビア5の幅b=300μm、伝送線路4の線路長d =7.5mmとした。図5をみれば等価回路計算のバンドギャップ帯域は、電磁界解析結果とほぼ一致している。
図5の厳密な計算によるバンドギャップ周波数帯は、図4で示した周波数帯域17ともほぼ一致する。このことから、本実施の形態のEBG構造のバンドギャップ周波数帯はアドミタンスの周波数特性でおおよそ説明出来ることがわかる。並列シャント部12のアドミタンスは上記した式(1)、式(2)で決定されることから、これらの式中のパラメータを適切に設計することによってバンドギャップ帯域を所望の周波数帯にもってくることができる。特に伝送線路長dは設計自由度が高いため、伝送線路長dを変化させることにより、容易にバンドギャップ帯域を制御することが可能である。バンドギャップ帯域を低周波化するには伝送線路長dを長くする必要があるが、必ずしも面積は必要としないため、本実施の形態のEBG構造を採用することによって実装面積を削減することが可能である。また、本実施の形態のEBG構造はチップ部品を必要としないため、従来技術と比べて製造コストを低減することができる。
なお、上述した第1の実施の形態では、図1に示すように、伝送線路4の上部に構造がない場合を示したが、本発明は、伝送線路4の上部に構造があってもよい。例えば、図6に示すように、伝送線路4の上部に、更なる誘電体層(第3の誘電体層20)を設けている。この第3の誘電体層20を設けることにより、伝送線路4の実効比誘電率を増加させることができる。式(2)によれば、伝送線路4の実効比誘電率が大きいほど伝送線路4におけるインピーダンス変換効果も顕著になることから、伝送線路長dを長くすることなくバンドギャップ帯域を低周波化することが可能である。したがって、バンドギャップ帯域の低周波化を目的にする場合、更なる誘電体層20として比誘電率の大きな誘電体材料を用いることが好ましい。ただし、バンドギャップ帯域の低周波化を目的とせず、更に上部に層を積層していく場合は、どのような誘電体材料を用いてもよい。
また、伝送線路4は一端がオープン端になっており、他端がパッド8に接続されていれば、どのような配置・形状でも本発明の本質的な効果に何ら影響を与えるものではない。
したがって、上述した第1の実施の形態では、図2に示すように、伝送線路4が周囲のクリアランス9等と干渉しないようにx軸、y軸と一定の角度をなすように配置した場合を示したが、クリアランス9等との干渉がなければ、当然軸と平行に配置してもよい。具体的に説明すると、上述した第1の実施の形態では、図2に示すように伝送線路4が直線形状の場合を示したが、本発明は、例えば、図7(a)に示すようなスパイラル形状や、図7(b)に示すようなミアンダ形状としてもよい。この場合、小さい実装面積で伝送線路長dを確保することが可能となる。
また、図27に示すように、パッド8に長さの異なる2つのオープン端伝送線路4Aおよび4Bが接続された構成を考えることもできる。図27の場合は前記伝送線路4A、4Bのインピーダンス変換周期が異なるため、複数のバンドギャップ帯域を別々に設計することができ、自由度の高い帯域設計が可能となる。なお、伝送線路4Bは必ずしもパッド8に直接接続する必要はなく、たとえば伝送線路4Aの途中から伝送線路4Bが枝分かれして分岐線を形成するような構成も当然考えることができる。
また、伝送線路4は、必ずしも、図2のようにすべての単位構造3で、配置・形状をそろえる必要はない。例えば、図8に示すように、表面に実装された部品Xを避けるように配線することで、高密度な実装が可能となる。
また、図2では単位構造3を周期的に配置する格子として、正方格子の例を示したが、格子形状は必ずしも正方格子に限らない。たとえば、三角格子や1次元周期配列でも、同様の効果を得ることができる。
なお、ここでは、導体ビア5と伝送線路4の接続部にパッド8を設けた構造を示しているが、これは製造上の都合によるものであり、パッド8のない構造であっても本発明の本質的な効果に何ら影響を与えるものではない。
[第2の実施の形態]
次に、本発明に係る導波路構造の第2の実施の形態の構成について、図9に基いて説明する。
図9は本実施の形態のEBG構造の断面図である。
なお、本実施の形態のEBG構造は、上述した第1の実施の形態のEBG構造の変形例であり、上述した第1の実施の形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。
本実施の形態のEBG構造は、図9に示すように、伝送線路104が、第1の導体プレーン1と第2の導体プレーン2とで挟まれた領域の内側に設けられている。詳しく説明すると、本実施の形態のEBG構造は、第1の誘電体層6の厚さ方向の他方側(下面)に第1の導体プレーン1が配設され、第2の誘電体層7の厚さ方向の一方側(上面)に第2の導体プレーン2が配設されている。第1の誘電体層6と第2の誘電体層7に挟まれた中間層には、第2の導体プレーン2と対向する平面に配設されて、第2の導体プレーン2をリターンパスとする伝送線路104が配置されている。
この伝送線路104は、第1の実施の形態における伝送線路4と同様に、その一端がオープン端となっており、オープンスタブとして機能する。伝送線路104の他端は、同一平面にあるパッド8に接続されており、パッド8と前記第1の導体プレーン1は導体ビア105を介して電気的に接続されている。また、上述した第1の実施の形態と同様に、前記伝送線路104、パッド8、および導体ビア105がシャント部として機能し、前記シャント部と第2の導体プレーン2に設けられたクリアランス9とが単位構造3となる。本実施の形態における単位構造3の配置および伝送線路104の配置・形状は、上述した第1の実施の形態と同様である。
本実施の形態のEBG構造では、伝送線路104が2つの導体プレーン1,2によって遮蔽されるため、伝送線路104から外部への不要な電磁波放射を低減することができる。
なお、上述した第2の実施の形態では、図9に示すように、導体ビア105が貫通ビアの場合を示したが、パッド8と第1の導体プレーン1とが電気的に接続されていれば、必ずしも貫通ビアである必要はない。例えば、図10に示すように、非貫通ビアの導体ビア105´が設けられていても本発明の効果に何ら影響を与えない。図10に示すEBG構造の場合は、第2の導体プレーン2にクリアランス9を設ける必要がないため、クリアランス9の部分から外部への電磁波放射を無くすことができる。
[第2の実施の形態の変形例]
次に、本発明の第2の実施の形態の変形例のEBG構造に関して説明する。図28は本第2の実施の形態の変形例のEBG構造の断面図である。
本第2の実施の形態の変形例は第2の実施の形態のEBG構造を元として、図28に示すように第2の導体プレーン2の上部に第3の誘電体層220を設け、さらにその上部にオープン端の第2の伝送線路204Bが備えられる。導体ビア105の上端はパッド8を介して表層に設けられた第2の伝送線路204Bの端部と接続されている。前記第2の伝送線路204Bの他方の端部はオープン端となっている。第2の導体プレーン2には、導体ビア105に対応した位置にクリアランス9が設けられており、前記第2の導体プレーン2と導体ビア105は電気的に接続されていない。本第2の実施の形態の変形例の構造では、前記伝送線路104と、前記第2の伝送線路204Bがそれぞれ独立したオープンスタブとして機能する。特に前記伝送線路104と前記第2の伝送線路204Bの線路長が異なるように設計すれば各々の伝送線路におけるインピーダンス変換周期が異なるため、複数のバンドギャップ帯域を別々に設計することができ、自由度の高い帯域設計が可能となる。また、伝送線路104及び第2の伝送線路204Bの配置および形状は、他の実施の形態と同様に、さまざまなパターンが考えられる。たとえばスパイラル形状やミアンダ形状としてもよい。
[第3の実施の形態]
次に、本発明に係る導波路構造の第3の実施の形態の構成について、図11に基いて説明する。
図11は本実施の形態のEBG構造の断面図である。
なお、本実施の形態のEBG構造は、上述した第2の実施の形態のEBG構造の変形例であり、上述した第2の実施の形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。
本実施の形態のEBG構造は、図11に示すように、第1の導体プレーン1と第2の導体プレーン2との間に配設された第1の伝送線路204Aと、第2の導体プレーン2に対して第1の導体プレーン1の反対側に配設された第2の伝送線路204Bと、第1の伝送線路204Aの一端(図11における左側の端部)と第1の導体プレーン1とを電気的に接続する第1の導体ビア205Aと、第1の伝送線路204Aの他端(図11における右側の端部)と第2の伝送線路204Bの他端とを電気的に接続する第2の導体ビア205Bと、を有する単位構造203を備えている。
詳しく説明すると、本実施の形態は、上述した第2の実施の形態と同様に、第1の誘電体層6の厚さ方向の他方側(下面)に第1の導体プレーン1が配設され、第2の誘電体層7の厚さ方向の一方側(上面)に第2の導体プレーン2が配設されている。また、第2の誘電体層7の厚さ方向の一方側(上面)には、第2の導体プレーン2を覆う第3の誘電体層(表層誘電体層220)が積層されている。また、上述した第2の実施の形態における伝送線路104の位置(第1の誘電体層6と第2の誘電体層7との間)に第1の伝送線路204Aが配設されており、前記した表層誘電体層220の厚さ方向の一方側(上面)に、一端がオープン端の第2の伝送線路204Bが配設されている。第1の伝送線路204Aは、第2の導体プレーン2と対向する平面に配設されて、第2の導体プレーン2をリターンパスとする伝送線路であり、第1の伝送線路204Aの両端には、同一平面状に形成されたパッド8A,8Bがそれぞれ電気的に接続されている。また、第2の伝送線路204Bは、第2の導体プレーン2と対向する平面に配設されて、第2の導体プレーン2をリターンパスとする伝送線路であり、第2の伝送線路204Bの一端は、オープン端となっており、第2の伝送線路204Bがオープンスタブとして機能するように構成されている。また、第2の伝送線路204Bの他端は、同一平面状に形成されたパッド8が電気的に接続されている。
第1の伝送線路204Aの一端に設けられたパッド8Aと第1の導体プレーン1とは、厚さ方向に延設された第1の導体ビア205Aを介して電気的に接続されている。また、第1の伝送線路204Aの他端に設けられたパッド8Bと第2の伝送線路204Bの他端に設けられたパッド8とは、厚さ方向に延設された第2の導体ビア205Bを介して電気的に接続されている。第2の導体プレーン2には、第2の導体ビア205Bに対応する位置にクリアランス9が設けられており、このクリアランス9によって第2の導体ビア205Bと第2の導体プレーン2とが電気的に切り離されて電気的に接触していない状態となっている。
本実施の形態のEBG構造では、中間層の第1の伝送線路204Aと、表層の第2の伝送線路204Bとがひとつのオープンスタブとして機能するため、小さい実装面積で十分な伝送線路長dを確保することが可能となる。
なお、第1の伝送線路204A及び第2の伝送線路204Bの配置および形状は、第1、第2の実施の形態と同様に、さまざまなパターンが考えられる。たとえばスパイラル形状やミアンダ形状としてもよい。これにより、より小さい面積で実装可能なEBG構造を提供することができる。
また、上述した第3の実施の形態では、図11に示すように、第1、第2の導体ビア205A,205Bとして非貫通ビアを用いた場合を示したが、貫通ビアを用いることも当然可能である。例えば、図12に示すように、第2の導体ビア205Bとして貫通ビアの第2の導体ビア205B´を設けることも可能である。図12に示すEBG構造では、第1の導体プレーン1の、第2の導体ビア205B´に対応した位置に、クリアランス9を設けて、前記第1の導体プレーン1と第2の導体ビア2との電気的な接続を避けている。
また、同様に第1の導体ビア205Aに貫通ビアを用いることも可能である。
[第4の実施の形態]
次に、本発明に係る導波路構造の第4の実施の形態の構成について、図13に基いて説明する。
図13は本実施の形態のEBG構造の断面図である。
なお、本実施の形態のEBG構造は、上述した第1の実施の形態のEBG構造の変形例であり、上述した第1の実施の形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。
上述した第1乃至第3の実施の形態のEBG構造では、平行平板型導波路を構成する第1、第2の導体プレーン1,2のうち、第2の導体プレーン2側にのみ伝送線路4,104,204A,204Bが設けられており、これらの伝送線路4,104,204A,204Bは第2の導体プレーン2と対向する平面に配設されて、第2の導体プレーン2をリターンパスとする構成となっているが、本実施の形態では、第1、第2の導体プレーン1,2にそれぞれ伝送線路304A,304Bが設けられている。すなわち、本実施の形態のEBG構造は、第1の実施の形態のEBG構造を上下方向に鏡面対称にした構成となっており、図13に示すように、第1、第2の導体プレーン1,2と異なる層で第1の導体プレーン1と対向する平面に配設され、第1の導体プレーン1をリターンパスとする第1の伝送線路304Aと、第1、第2の導体プレーン1,2と異なる層で第2の導体プレーン2と対向する平面に配設され、第2の導体プレーン2をリターンパスとする第2の伝送線路304Bと、第1、第2の伝送線路304A,304Bの端部同士を電気的に接続する導体ビア305と、を有する単位構造303を備えている。
詳しく説明すると、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態と同様に、第1の誘電体層6の厚さ方向の他方側(下面)に第1の導体プレーン1が配設され、第1の誘電体層6と第2の誘電体層7との間に第2の導体プレーン2が配設されている。また、第1の誘電体層6の厚さ方向の他方側(下面)には、第1の導体プレーン1を覆う第3の誘電体層(裏層誘電体層320)が積層されている。裏層誘電体層320の厚さ方向の他方側(下面)には、第1の伝送線路304Aが配設されており、表層の第2の誘電体層7の厚さ方向の一方側(上面)には、第2の伝送線路304Bが配設されている。つまり、第1の伝送線路304A及び第2の伝送線路304Bが、第1の導体プレーン1と第2の導体プレーン2とで挟まれた領域の外側にそれぞれ配設されている。
前記した第1の伝送線路304Aの一端(図13における右側の端部)及び第2の伝送線路304Bの一端は、それぞれオープン端となっており、第1、第2の伝送線路304A,304Bがそれぞれオープンスタブとして機能するように構成されている。一方、1の伝送線路304Aの他端(図13における左側の端部)及び第2の伝送線路304Bの他端には、同一平面状に形成されたパッド8がそれぞれ電気的に接続されている。伝送線路304A側のパッド8と第2の伝送線路304B側のパッド8とは、厚さ方向に延設された導体ビア305を介して電気的に接続されている。第1、第2の導体プレーン1,2には、導体ビア305に対応する位置にクリアランス9がそれぞれ設けられており、これらのクリアランス9によって導体ビア305と第1、第2の導体プレーン1,2とが電気的に切り離されて電気的に接触していない状態となっている。
図14は本実施の形態のEBG構造の等価回路である。
図14に示すように、本実施の形態の等価回路繰り返し単位310は、直列インピーダンス部311と並列シャント部312とで構成される。直列インピーダンス部311は、第1の実施の形態と同様に前記第1、第2の導体プレーン1,2がつくるインダクタンス313からなる。並列シャント部312は、前記第1、第2の導体プレーン1,2がつくるキャパシタンス314と、前記導体ビア305のつくるインダクタンス315と、第1、第2の伝送線路304A,304Bと、からなる。本実施の形態の並列シャント部312は、第1の実施の形態の並列シャント部12にさらに、第2の伝送線路304Bによるオープンスタブが直列に接続された回路となる。本実施の形態の場合も、第1の実施の形態の場合と全く同様に、並列シャント部312のアドミタンスが負となる周波数帯域にバンドギャップが生じる。
なお、上述した第4の実施の形態のEBG構造は、第1の実施の形態のEBG構造を上下方向に鏡面対称にした構成となっているが、上述した第2、第3の実施の形態のEBG構造を上下方向に鏡面対称にした構成とすることも可能である。
具体的に説明すると、図15に示すように、第2の実施の形態のEBG構造を元として、第1の導体プレーン1と第1の誘電体層6との間に第3の誘電体層120を介在させ、この第3の誘電体層120と第1の誘電体層6との間に、第1の導体プレーン1をリターンパスとする第1の伝送線路104Aが配設されており、第1の誘電体層6と第2の誘電体層7との間に、第2の導体プレーン2をリターンパスとする第2の伝送線路104Bが配設されている。これら第1、第2の伝送線路104A,104Bは、一端はそれぞれオープン端となっており、他端にはパッド8がそれぞれ電気的に接続されており、第1、第2の伝送線路104A,104Bのパッド8同士は非貫通ビアの導体ビア105´を介して電気的に接続されている。
また、図16に示すように、第3の実施の形態のEBG構造を元として、第1の導体プレーン1と第1の誘電体層6との間に第3の誘電体層320Aを介在させ、第3の誘電体層320Aの厚さ方向の他方側(下面)には、第1の導体プレーン1を覆う裏層誘電体層320Bが積層されている。そして、第1の導体プレーン1と第1の伝送線路204Aとの間、具体的には、第1の誘電体層6と第3の誘電体層320Aとの間に、第1の導体プレーン1をリターンパスとする第3の伝送線路204Cが配設されている。また、第1の導体プレーン1に対して第2の導体プレーン2の反対側、具体的には、裏層誘電体層320B”の厚さ方向の他方側(下面)に、第1の導体プレーン1をリターンパスとする第4の伝送線路204Dが配設されている。第3の伝送線路204Cの両端には、同一平面状に形成されたパッド8A,8Bがそれぞれ電気的に接続されている。第4の伝送線路204Dの一端は、オープン端となっており、第2の伝送線路204Bの他端は、同一平面状に形成されたパッド8が電気的に接続されている。
第1の伝送線路204Aの一端に設けられたパッド8Aと第3の伝送線路204Cの一端に設けられたパッド8Aとは、厚さ方向に延設された第1の導体ビア205Aを介して電気的に接続されている。また、第3の伝送線路204Cの他端に設けられたパッド8Bと第4の伝送線路204Dの他端に設けられたパッド8とは、厚さ方向に延設された第3の導体ビア205Cを介して電気的に接続されている。第1の導体プレーン1には、第3の導体ビア205Cに対応する位置にクリアランス9が設けられており、このクリアランス9によって第3の導体ビア205Cと第1の導体プレーン1とが電気的に切り離されて電気的に接触していない状態となっている。
なお、図13、図15、図16に示すように、上下方向に鏡面対称なEBG構造について説明したが、必ずしも対称構造である必要はない。例えば、第1の伝送線路304Aが直線形状であり、第2の伝送線路304Bがスパイラル形状というように、両者が全く異なる形状となる構造も考えられる。またさらに、前記第2の誘電体層7と裏層誘電体層320の厚さが異なる構造も考えられる。この場合は、第1の伝送線路304Aの実効比誘電率と、第2の伝送線路304Bの実効比誘電率とが異なる値となる点に注意が必要である。
[第5の実施の形態]
次に、本発明に係る導波路構造の第5の実施の形態の構成について、図17に基いて説明する。
図17は本実施の形態のEBG構造の断面図であり、図18は本実施の形態のEBG構造の平面図である。図17は図18に示すB−B´間の断面図である。
なお、本実施の形態のEBG構造は、上述した第4の実施の形態のEBG構造の変形例であり、上述した第4の実施の形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。
本実施の形態のEBG構造は、図13に示す上述した第4の実施の形態のEBG構造では、第1の導体プレーン1をリターンパスとする第1の伝送線路304Aの端部と、第2の導体プレーン2をリターンパスとする第2の伝送線路304Bの端部と、が導体ビア305を介して電気的に接続されているが、第5の実施の形態では、図17に示すように、第2の導体プレーン2をリターンパスとする第2の伝送線路304Bの端部が第1の導体ビア405Aを介して第1の導体プレーン1に電気的に接続されているとともに、第1の導体プレーン1をリターンパスとする第1の伝送線路304Aの端部が第2の導体ビア405Bを介して第2の導体プレーン2に電気的に接続されている。つまり、本実施の形態における単位構造403は、第1の導体プレーン1と第2の伝送線路304Bの端部とを電気的に接続する第1の導体ビア405Aと、第2の導体プレーン2と第1の伝送線路304Aの端部とを電気的に接続する第2の導体ビア405Bと、を有している。
詳しく説明すると、本実施の形態は、上述した第4の実施の形態と同様に、第1の誘電体層6の厚さ方向の他方側(下面)に裏層誘電体層320が積層され、第1の誘電体層6と裏層誘電体層320との間に第1の導体プレーン1が配設され、第1の誘電体層6と第2の誘電体層7との間に第2の導体プレーン2が配設されている。
裏層誘電体層320の厚さ方向の他方側(下面)には、第1の伝送線路304Aが配設されており、表層の第2の誘電体層7の厚さ方向の一方側(上面)には、第2の伝送線路304Bが配設されている。
第1、第2の伝送線路304A,304Bの他端(図17における左側の端部)にはパッド8がそれぞれ電気的に接続されているが、第1の伝送線路304Aのパッド8と第2の伝送線路304Bのパッド8とは、平面視において互いにずれた位置(重ならない位置)に配設されている。そして、第1の導体プレーン1と第2の伝送線路304Bのパッド8とは第1の導体ビア405Aを介して電気的に接続されているとともに、第2の導体プレーン2と第1の伝送線路304Aのパッド8とは第2の導体ビア405Bを介して電気的に接続されている。つまり、第1の伝送線路304Aとパッド8と第2の導体ビア405Bとからなる第1のシャント部と、第2の伝送線路304Bとパッド8と第1の導体ビア405Aとからなる第2のシャント部と、が備えられており、この第2のシャント部は、図18に示すように平面視において、第1のシャント部をxy平面上でA/2+B/2=(a/2,a/2)だけ平行移動させ、さらに、上下方向に反転させた位置に配設されている。
本実施の形態のEBG構造によれば、図18の平面図に示すとおり、より高密度にシャント部を配置することが可能となり、EBG構造の実装面積を低減することが可能となる。
なお、上述した第5の実施の形態のEBG構造は、図13に示すEBG構造を変形させた構成となっているが、図15に示すEBG構造を同様に変形させることも可能である。
具体的に説明すると、図19に示すように、図15に示すEBG構造を元として、第2の導体プレーン2をリターンパスとする第2の伝送線路104Bの端部が、第1の導体ビア105Aを介して第1の導体プレーン1に電気的に接続されているとともに、第1の導体プレーン1をリターンパスとする第1の伝送線路104Aの端部が、第2の導体ビア105Bを介して第2の導体プレーン2に電気的に接続されている。
さらに、第1、第2の伝送線路のうちの何れか一方を第1、第2の導体プレーン1,2の間の領域の内側に配設するとともに他方を前記領域の外側に配設した非対称構造において、第2の伝送線路の端部を第1の導体ビアを介して第1の導体プレーン1に電気的に接続するとともに、第1の伝送線路の端部を第2の導体ビアを介して第2の導体プレーン2に電気的に接続した構成であってもよい。
また、図18に示すように、本実施の形態では、第1、第2の伝送線路304A,304Bが直線形状の場合を示したが、他の実施の形態同様、どのような形状でもよい。例えば、図20に示すようにスパイラル形状としてもよい。
また、必ずしも第1、第2の伝送線路304A,304Bの形状をそろえる必要はなく、例えば、一方は直線形状、他方はスパイラル形状といった組み合わせも考えられる。
また、ここでは正方格子の場合を例に説明したが、当然一般の格子に対しても同様の構造を実現できる。
次に、本発明に係るプリント配線板の第1の実施の形態について、図21、図22に基いて説明する。
図21は本実施の形態におけるプリント配線板の平面図であり、図22は図21に示すC−C´間の断面図である。
本実施の形態におけるプリント配線板は、上記したEBG構造を内蔵したプリント基板50である。詳しく説明すると、図21、図22に示すように、プリント基板50は、少なくとも、グランドプレーン51と、電源プレーン52と、ノイズ源となるデバイス53と、ノイズの影響を受けやすいデバイス54と、それらデバイス53,54の間に配置されるEBG領域55とを備える。図22に示すように、ノイズ源となるデバイス53およびノイズの影響を受けやすいデバイス54は、いずれも前記グランドプレーン51と前記電源プレーン52に接続されている。また、グランドプレーン51と電源プレーン52は平行平板型導波路を形成している。通常のプリント基板ではノイズ源となるデバイス53から生じたノイズが、前記平行平板型導波路を伝播して、ノイズの影響を受けやすいデバイス54に入ることで、誤動作等を引き起こす。本実施の形態のプリント基板50では、図21に示すように、ノイズ伝播経路を遮断するように、EBG領域55に本発明のEBG構造を配置することで、デバイス53,54間のノイズ伝播を抑制できる。これにより、ノイズの影響を受けやすいデバイス54の誤動作を抑制することが可能となる。
なお、図22では第1の実施の形態のEBG構造を用いた例を示したが、当然、本発明の他の実施の形態のEBG構造を用いることもできる。
また、図21では、EBG領域55を帯状に設けた場合を示したが、EBG領域55はノイズ伝播経路を遮断できればどのような配置でもよい。たとえば図23に示すように、ノイズの影響を受けやすいデバイス54を囲むようにEBG領域55を設けることも可能である。
また、ここでは本発明のEBG構造をプリント基板50に搭載した場合を示したが、本発明の対象は必ずしもプリント基板50に限らない。たとえば、デバイスのパッケージ基板などに本発明のEBG構造を設けることも考えられる。
次に、本発明に係るプリント配線板の第2の実施の形態について、図24に基いて説明する。
図24は本実施の形態におけるプリント配線板の平面図である。
なお、上述した第1の実施の形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。
本実施の形態におけるプリント基板50は、オープン端の伝送線路長dが異なる複数の導波路構造が備えられ、これら複数の導波路構造のバンドギャップ帯にずれが生じている。
詳しく説明すると、図24に示すように、プリント基板50は、上述した第1の実施の形態と同様、少なくともグランドプレーン51と、電源プレーン52と、ノイズ源となるデバイス53と、ノイズの影響を受けやすいデバイス54とを備える。本実施の形態は、ノイズ伝播経路を遮断するように設けられたEBG領域55に、第1のEBG構造56および第2のEBG構造57を配置してデイバス53,54間のノイズ伝播を抑制する。第1のEBG構造56と第2のEBG構造B57とが、ノイズ伝播方向に並べて配置されている。第1のEBG構造56と第2のEBG構造57とはそれぞれオープンスタブの伝送線路長dが異なっており、バンドギャップ周波数帯も異なる。このため、第1のEBG構造56と第2のEBG構造57とのバンドギャップ帯がずれるように伝送線路長dを設計することにより、単一のEBG構造では実現できない非常に広帯域なバンドギャップを、EBG領域55全体で実現することが可能となる。
なお、図25に示すように、第1のEBG構造156と第2のEBG構造157とがノイズ伝播方向に対して交互に配置された縞状に配置されていてもよい。
また、図26に示すように、第1のEBG構造156と第2のEBG構造157とが格子状(市松模様状)に配置されていてもよい。
いずれの配置でもEBG領域55全体として、広いバンドギャップ帯域を実現することが可能である。
その他に、第1のEBG構造と第2のEBG構造とが混合して配置されていれば、他の配置を採用してもよい。また、さらに広いバンドギャップ帯域が必要な場合は、バンドギャップ帯域をずらしたEBG構造をさらに混合して配置すればよい。
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
次に、本発明を小型平面アンテナに適用した場合の実施の形態について説明する。まず、本発明に係るアンテナの実施の形態の説明に先立ち、アンテナの技術分野に本発明を適用する場合の背景技術、課題、発明の特徴等について説明する。
すなわち、本発明をアンテナに適用する場合、本発明の技術分野は、マイクロ波・ミリ波の平面アンテナに関し、特にメタマテリアル技術を用いて小型化および低周波化を可能にしたアンテナ構造に関するものとなる。また、本発明は、マイクロ波・ミリ波帯域の電磁波を送受信する無線通信機器の小型化に有益である。
次に、本発明をアンテナに適用する場合における背景技術について説明する。
[背景技術]
誘電体などの媒質を伝播する電磁波の波数(もしくは波長)と周波数の関係は、媒質の分散関係と呼ばれる。近年、導体パターンや導体構造を周期的に配列させることで、構造中を伝播する電磁波の分散関係を人工的に制御するメタマテリアル技術が提案され、さまざまな分野で工学的応用が検討されている。
このメタマテリアルを利用してアンテナを小型化する技術が提案されている。たとえば特許文献Aでは動作周波数によって右手系、左手系の性質を示す右手/左手複合(Composite Right and Left Handed: CRLH)線路を利用した小型アンテナ構造が開示されている。
特許文献Aで開示されているアンテナは、導体プレーンと、前記導体プレーンと平行に配置された導体パッチと、前記導体プレーンと前期導体パッチ間を接続する導体ビアとを含む単位セル構造を周期的に配置したCRLH線路構造をとり、前記CRLH線路の左手系周波数領域における線路長共振を利用している。通常の媒質(右手系媒質)では周波数が低いほど電磁波の波長が長くなるため、アンテナの構造が大型になる問題があったが、左手系媒質では周波数が低いほど電磁波の波長が短くなるためアンテナの小型化を実現することができる。
特許文献Aではさらに、左手系媒質として動作する周波数帯を低周波化するため、前記導体プレーン層と前記導体パッチ層の間の層に、導体エレメントを設けて隣接する前記導体パッチ間のキャパシタンスを増加させている。また同様の目的のため前記導体プレーンの導体ビア接続部付近にスリットを設けてコプレナーラインを形成し、前記導体プレーンと前記導体パッチ間のインダクタンスを増加させている。
[特許文献A]米国特許出願公開第2007/0176827A1号明細書
次に、本発明をアンテナに適用する場合における課題について説明する。
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、上記特許文献Aのように周期構造によって実現される左手系媒質は、必ずカットオフ周波数が存在し、カットオフ周波数以下の周波数帯ではアンテナとして動作しない。このため、左手系媒質を利用する特許文献Aの構造では低周波化に限界があるという問題点がある。したがって従来の技術では低周波で動作する小型アンテナを実現することが困難であった。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、メタマテリアルをもちいた小型化および低周波化が容易な平面アンテナを提供することを目的とする。
次に、本発明をアンテナに適用する場合における発明の特徴、作用及び効果について説明する。
[発明の特徴]
本発明におけるアンテナは、導体プレーンと、前記導体プレーンと平行に配置された、すくなくともひとつの導体パッチと、前記導体プレーンと前記導体パッチ間に高周波信号を入力する給電部と、前記導体パッチの上部または下部の平面すなわち前記導体パッチと対向する平面に配設され、一端がオープン端である伝送線路と、前記伝送線路のオープン端でない側の端部と前記導体プレーンを電気的に接続する導体ビアとで構成されるシャント部と、を含み、前記シャント部が前記導体パッチ領域に、一つまたは複数配列されたことを特徴とする。
[作用]
本発明におけるアンテナは、前記給電部から高周波信号を入力し、前記導体パッチと前記導体プレーン間を励振することでパッチアンテナとして動作する。パッチアンテナは、導体パッチの寸法が1/2波長となる周波数で、導体パッチに共振が生じることを利用して電磁波を放射する。このとき、波長と周波数の関係は導体パッチと導体プレーン間の媒質の分散関係で与えられるため、通常のアンテナでは媒質となる誘電体を決定すればアンテナのサイズも一意に決定されてしまう。
本発明のアンテナでは前記シャント部が周期的に配列されることで媒質の実効的な分散関係を制御することが可能となるため、通常の誘電体と比べて波長が短くなるように分散関係を設計することでアンテナのサイズを大幅に小型化することができる。また、本発明の周期構造は右手系媒質として動作し、カットオフ周波数が存在しないように構成可能であるため、カットオフ周波数が存在する特許文献Aのアンテナと比べて低周波化が容易に可能となる。
[発明の効果]
本発明によれば、小型化および低周波化が可能な平面アンテナを提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
[構造]
本発明に係るアンテナの実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図29は本発明に係るアンテナの第1の実施の形態の斜視図である。図30は本第1の実施の形態のアンテナをz軸正方向から見た平面図である。図31は導体パッチ1004を透視してz軸正方向から見た場合の平面図である。図32は導体プレーン1001を示した平面図である。図33は図30〜図31の線分A−A´における断面図である。図34は図30〜図31の線分B−B´における断面図である。
本第1の実施の形態のアンテナは、図33に示すように、導体プレーン1001と、その上部に積層された第1の誘電体層1002と、第1の誘電体層1002の上部に積層された第2の誘電体層1003と、さらに第2の誘電体層1003の上部に積層された導体パッチ1004とを含む。この導体パッチ1004は、導体プレーン1001と平行に配置されている(以下、同様)。図30に示すように、前記導体パッチ1004は前記導体プレーン1001よりも面積が小さく、全体が前記導体プレーン1001と重なるように配置される。
また、前記第1の誘電体層1002と第2の誘電体層1003に挟まれた層には、前記導体パッチ1004と対向する平面に配設され、前記導体パッチ1004をリターンパスとする伝送線路1006が配置されている。図31および図33に示すように、前記伝送線路1006は、その一方の端部を導体ビア1005を介して前記導体プレーン1001と電気的に接続し、他方の端部をオープン端とすることで、オープンスタブとして機能するように構成されている。
本第1の実施の形態では、前記の伝送線路1006および導体ビア1005がシャント部として機能する。本発明のアンテナは、前記シャント部を前記導体パッチ1004の領域に複数配置した構造をとる。本第1の実施の形態では、最も基本的な構成として格子間隔aの正方格子に配置した場合について説明する。図29は前記シャント部を4×4に配列した場合の本第1の実施の形態のアンテナである。
本発明のアンテナは、前記導体パッチ1004と前記導体プレーン1001間が電気的に励振されることでパッチアンテナとして動作する。本第1の実施の形態では、図32および図34に示すとおり、前記導体パッチ1004と前記導体プレーン1001間に信号を入力する給電部として、給電ビア1007を有する。この給電ビア1007から高周波信号が入力される。前記給電ビア1007の一端は前記導体パッチ1004と接続されており、他方の端部は導体プレーン1001に設けられた給電部クリアランス1008で導体プレーン1001と電気的に絶縁されている。前記給電ビア1007の端部と前記給電部クリアランス1008が信号の入力ポートとなっており、たとえば導体プレーン1001の裏面から同軸コネクタなどの信号入力手段を接続することで、無線回路からの信号をアンテナに入力することができる。信号入力手段としては、同軸コネクタのほかに、前記導体プレーン1001の裏面側に形成したマイクロストリップラインやストリップラインなどの給電線が考えられる。
また、一般に導体パッチ1004の外縁部は高インピーダンスとなるため、給電系とインピーダンス整合することが難しい。本第1の実施の形態では、シャント部と干渉しない範囲で前記給電ビア1007の位置を自由に設計できるため、導体パッチ1004の給電系のインピーダンスと整合する位置に前記給電ビア1007を配置することができる。なお、図29および図30〜図31では説明の便宜上、前記第1の誘電体層1002および第2の誘電体層1003を透視して内部構造を図示した。
次に本発明のアンテナ小型化の基本的な原理を説明する。
本発明のアンテナは通常のパッチアンテナと同様に、導体パッチのx軸方向に1/2波長共振が生じることを利用した一種の共振器と考えることができる。一般に共振器中の波長と周波数の関係は、共振器内部の媒質の分散関係によって決定される。比誘電率ε、比透磁率μの通常の誘電体の分散関係は(11)式で与えられる。ただしcは真空中の光速を表す。(11)式から角周波数ω(=2πf)と波数k (=2π/λ)は比例関係にあることがわかる。
一方、本発明のアンテナは、前記シャント部を導体パッチ領域に周期的に配列させることで右手系のメタマテリアルとして動作し、導体パッチ領域の実効的な分散関係を制御することができる。
図35に、図29のアンテナの導体プレーン1001と導体パッチ1004で挟まれた空間を、x軸方向に伝播する電磁波に対する等価回路を示す。図35の点線で囲まれた部分が、一辺aの正方形単位構造の等価回路である。図35のCPPW、LPPWはそれぞれ、導体
プレーン1001と導体パッチ1004からなる並行平板の単位構造あたりのキャパシタンスとインダクタンスである。Lviaは前記導体ビア1005のインダクタンスを表す。また、オープンスタブは前記伝送線路1006に対応している。
本発明のアンテナにおけるメタマテリアル構造は、(12)式に示すCPPW、LviaおよびオープンスタブからなるアドミタンスYが、容量性(Im(Y) > 0)となる周波数帯で右手系媒質として動作し、誘導性(Im(Y) < 0)となる周波数帯で電磁バンドギャップとして動作する。ただしZinはオープンスタブの入力インピーダンスであり、式(13)で表さ
れる。式(13)におけるZ0は伝送線路1006(図35におけるオープンスタブ)の特性インピーダンス、dは伝送線路1006の線路長、εeffは伝送線路1006の実効比誘電率である。
周期構造中の分散関係は、図35の単位構造の等価回路に周期境界条件を適用することで求めることができる。例として図29のアンテナの構造寸法をa=3mm、t=800μm、h=60μm、w=100μm、b=300μm、d=5.4mmとし、第1の誘電体1002および第2の誘電体1003の比誘電率をε=4.188、比透磁率μ=1 とした場合の分散関係を図36に示す。図36の横軸は波数、縦軸は周波数を表す。図36を見れば、本発明の構造の分散関係は原点を通っており、低周波側にカットオフを持たないことがわかる。また低周波側から順に第1バンド、第1バンドギャップ、第2バンド、第2バンドギャップというように、バンドとバンドギャップが交互に生じることがわかる。これは、オープンスタブにおけるインピーダンス変換効果により、アドミタンスYの容量性( Im(Y) > 0 )、誘導性( Im(Y) < 0)が周期的に入れ替わるためである。
一般に、長さLの線路長の共振器で1/2波長共振が生じる条件はnを整数として(14)式で与えられる。
本発明のアンテナ構造でシャント部の配列をN×N(Nは整数)とした場合、導体パッチ1004のx軸方向の長さLはL=N×aで与えられるため、(14)式に代入すれば本発明のアンテナ構造における共振条件(15)式を得る。
図36のグラフ中の縦線は、図29のアンテナ構造に対応してN=4、a=3mmとした場合に共振条件を満たす波数を表す。したがって、図36の縦線と分散関係の交点が1/2波長共振周波数を与える。図36をみればn=0, 1, 2, 3 に相当する共振点が、第1バンド、第2バンドそれぞれに存在することがわかる。通常パッチアンテナなどの共振器アンテナではn=1の第1共振を利用する場合が多い。本発明のアンテナでは第1共振がそれぞれのバンドごとに生じるため、本発明のアンテナをマルチバンドアンテナとして用いることが可能である。
一方、図36の原点を通る直線は、媒質が比誘電率ε=4.188の誘電体のみの場合の分散関係である。図29の構造からシャント部を取り除いた通常のパッチアンテナの共振周波数は、この誘電体分散関係と図36の縦線との交点で与えられる。図36をみれば、通常のパッチアンテナでは第1共振が6GHz付近で起こるのに対して、本発明のアンテナでは第1バンドの第1共振が3GHz付近で起こることがわかる。これは本発明のアンテナのメタマテリアル構造によって、電磁波の波長が、誘電体中の波長の約1/2に短縮されていることを示している。このことから、図29に示すアンテナは通常のパッチアンテナに比べて1/2のサイズに小型化されていると考えることができる。
メタマテリアル構造中の波長短縮効果は、図36の誘電体分散関係の直線より下側にあるすべての共振点で生じるため、たとえば第1バンドの第2共振や第3共振、第2バンドの第3共振を利用してもまったく同様に小型のアンテナを実現することができる。
逆に、誘電体分散関係の直線より上側にある共振点では、誘電体中よりも波長が長くなるため、アンテナを大型化して放射効率を高めることが可能である。図37は図29に示したアンテナ構造に対して3次元電磁界解析を行った結果である。図37の横軸は周波数、縦軸は給電部入力ポートから見たSパラメータ(S11)である。図37を見れば、図36の分散関係と比較的よく対応する周波数でディップが生じており、ほぼ計算どおりの周波数でアンテナとして動作することがわかる。
図29に示したアンテナの、第1バンドの第1共振周波数である3.42GHzにおける放射指向性の電磁界解析結果を図38に、第2バンドの第1共振周波数である8.86GHzにおける放射指向性の電磁界解析結果を図39にそれぞれ示す。図38〜図39の動径方向はアンテナの利得(dBi)を表しており、点線と実線はそれぞれxz平面の放射指向性とyz平面の放射指向性を表す。図38〜図39から、本発明のアンテナが、通常のパッチアンテナと同様にz軸正方向に良好な放射特性を有することがわかる。
本発明のアンテナにおけるメタマテリアル構造のアドミタンスYは、式(12)、式(13)で決定されることから、これらの式中のパラメータを適切に設計することによって共振周波数を所望の動作帯域にもってくることができる。特に伝送線路長dは設計自由度が高いため、伝送線路長dを変化させることにより、容易にアンテナの動作帯域を制御することが可能である。
また、本発明のアンテナにおけるメタマテリアル構造は、すべてのバンドが傾き正の右手系分散曲線となる。特に第1バンドは原点を通る右肩上がりの曲線となるため、第1バンドギャップより低周波側にカットオフが存在しない。これは、必ず低周波側にカットオフが生じてしまう特許文献Aの左手系メタマテリアルの場合と比べて明らかに低周波化が容易である。
図29ではシャント部の配列として4×4の場合を示したが、本発明のアンテナではx軸方向に生じる1/2波長共振を利用するため、必ずしもx軸方向とy軸方向で対称な配列である必要はない。たとえば図40に示すような4×2の配列や、図41に示すような4×1の配列を採用することも可能である。この場合、媒質の分散が非等方性となり、y軸方向に不要な共振が生じなくなるため、対称構造の場合と比べてより安定した動作を実現することができる。
また図42に示すように前記導体パッチ1004の領域にシャント部を1つだけ配置するような構成も考えることができる。本発明のアンテナ構造では、前記伝送線路1006における導体損失や、周囲の誘電体における誘電損失が無視できない。図40、図41、図42に示すような配置を採用した場合、シャント部の個数が減ることによって前記の導体損失および誘電損失を低減することができる。これにより、アンテナの放射効率を向上させることが可能となる。
伝送線路1006は一端が導体ビア1005に接続され、他端がオープン端になっていれば、どのような形状でも本発明の本質的な効果に何ら影響を与えるものではない。図29では伝送線路1006の形状をスパイラル形状とした例を示したが、たとえば図43のように伝送線路1006の形状として直線形状を採用することもできる。伝送線路1006の形状としてはその他にミアンダ形状なども考えることができる。
また、伝送線路1006は、必ずしも、すべての単位構造で、配置・形状をそろえる必要はない。たとえば一部分にスパイラル形状の伝送線路を配置し、他の部分には直線形状の伝送線路を配置するような構成も当然考えることができる。
また、図44に示すように、前記伝送線路1006が、長さの異なる2つのオープン端伝送線路1006Aおよび1006Bに枝分かれして分岐線を形成するような構成を考えることもできる。伝送線路が1本の場合、第1バンドもしくは第1バンドギャップの周波数帯が所望の帯域となるように伝送線路長を決定すると、式(12)、(13)に基づいて第2バンド以降の周波数帯は自動的に決定されてしまうのに対して、図44の場合は前記伝送線路1006A、1006Bのインピーダンス変換周期が異なるため、第1バンドと第2バンドの帯域を別々に設計することができ、自由度の高い帯域設計が可能となる。
なお、伝送線路1006Aおよび1006Bの枝分かれ部は必ずしも導体ビア1005の直近である必要はなく、たとえば伝送線路1006Aの途中から1006Bが枝分かれするような構成も当然考えることができる。
また、本実施の形態では導体パッチ1004が正方形の場合を示して説明したが、導体パッチ1004が他の形状でも本発明の本質的な効果に何ら影響を与えるものではない。
たとえば図45に示すように導体パッチ1004を長方形とする構成も考えられる。
また、図33では、導体ビア1005が非貫通ビアの場合を示したが、伝送線路1006と導体プレーン1001が電気的に接続されれば、必ずしも非貫通ビアである必要はない。たとえば図46のように導体ビア1005として貫通ビアを用いても本発明の効果に何ら影響を与えない。貫通ビアを用いる場合は、導体ビア1005と導体パッチ1004とを電気的に絶縁するため、導体パッチ1004の導体ビア1005に対応する位置にクリアランス1010を設ける必要がある。貫通ビアを採用することで、基板の積層工程後に一括してドリルで導体ビア1005を加工することができるため、製造コストを低減することができる。
[本発明に係るアンテナの他の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に関して説明する。図47は本第2の実施の形態のアンテナをz軸正方向から見た平面図である。図48は伝送線路1006を取り除いてz軸正方向から見た場合の平面図である。図49は導体プレーン1001を示した平面図である。図50は図47〜図49の線分A−A´における断面図である。図51は図47〜図49の線分B−B´における断面図である。
本第2の実施の形態のアンテナは、第1の実施の形態の層構成を変更したものである。
図50に示すように、導体プレーン1001と、その上部に積層された第1の誘電体層1002と、第1の誘電体層1002の上部に積層された第2の誘電体層1003を含み、前記第1の誘電体層1002と前記第2の誘電体層1003に挟まれた層に金属からなる導体パッチ1004が配置される。また、前記第2の誘電体層1003の上部には、前記導体パッチ1004と対向する平面に配設されて、前記導体パッチ1004をリターンパスとする伝送線路1006が配置されている。図47および図50に示すように、前記伝送線路1006は、その一方の端部を導体ビア1005を介して前記導体プレーン1001と電気的に接続し、他方の端部をオープン端とすることで、オープンスタブとして機能するように構成されている。図48および図50に示すように、前記導体パッチ1004の前記導体ビア1005に対応する位置にはクリアランス1009が設けられており、導体パッチ1004と導体ビア1005は電気的に絶縁されている。本第2の実施の形態では、前記伝送線路1006、導体ビア1005、およびクリアランス1009がシャント部として機能する。本第2の実施の形態のシャント部の配置および伝送線路の形状は、第1の実施の形態と同様である。また、本第2の実施の形態においても給電部として給電ビア1007を有する。図49および図51に示すとおり、前記給電ビア1007の一端は前記導体パッチ1004と接続されており、他方の端部は導体プレーン1001に設けられた給電部クリアランス1008で導体プレーン1001と電気的に絶縁されている。前記給電ビア1007の端部と前記給電クリアランス1008が信号の入力ポートとなる。
本第2の実施の形態のアンテナとしての動作原理は第1の実施の形態と全く同様である。本発明のアンテナ構造では、前記伝送線路1006の周囲の誘電体における誘電損失が無視できないが、本第2の実施の形態では、前記伝送線路1006の周囲が空気となるため、第1の実施の形態の構造に比べて誘電損失を低減することができる。これにより、アンテナの放射効率を向上させることが可能となる。
次に、本発明に係るアンテナの第3の実施の形態に関して説明する。図52は本発明に係るアンテナの第3の実施の形態のアンテナを導体ビア1005を含むxz平面で切断した場合の断面図である。
本第3の実施の形態は第1の実施の形態を元として、伝送線路1006の一端が導体ビア1005によって導体パッチ1004と接続されるように変更した、図52に示す構造をとる。本第3の実施の形態では、伝送線路1006が前記導体プレーン1001と対向する平面に配設されて、導体プレーン1001をリターンパスとするオープンスタブとして機能する。本第3の実施の形態の等価回路は図35に示したものと同一であるため、アンテナとしての動作原理は第1の実施の形態と全く同様である。層構成、シャント部の配置、伝送線路1006の形状、給電部の構造に関しては第1の実施の形態と同様である。
また、図52では、導体ビア1005が非貫通ビアの場合を示したが、第1の実施の形態の場合と同様、貫通ビアを用いてもよい。
次に、本発明に係るアンテナの第4の実施の形態に関して説明する。図53は本発明に係るアンテナの第4の実施の形態のアンテナを導体ビア1005を含むxz平面で切断した場合の断面図である。
本第4の実施の形態のアンテナは、図53に示すように、導体プレーン1001と、導体プレーン1001の下部に積層された第1の誘電体層1002と、導体プレーン1001の上部に積層された第2の誘電体層1003を含む。前記第1の誘電体層1002の下部には、前記導体プレーン1001と対向する平面に配設されて、前記導体プレーン1001をリターンパスとする伝送線路1006が配置される。また前記第2の誘電体層1003の上部には金属からなる導体パッチ1004が配置される。前記伝送線路1006は、その一方の端部を導体ビア1005を介して前記導体パッチ1004と電気的に接続し、他方の端部をオープン端とすることで、オープンスタブとして機能するように構成されている。前記導体プレーン1001の前記導体ビア1005に対応する位置にはクリアランス1011が設けられており、導体プレーン1001と導体ビア1005は電気的に絶縁されている。本第4の実施の形態では、前記伝送線路1006、導体ビア1005、およびクリアランス1011がシャント部として機能する。本第4の実施の形態のシャント部の配置、伝送線路1006の形状、給電部の構造は第1の実施の形態と同様である。
本第4の実施の形態のアンテナとしての動作原理は第1の実施の形態と全く同様である。本発明のアンテナ構造では、前記伝送線路1006の周囲の誘電体における誘電損失が無視できないが、本第4の実施の形態では、前記伝送線路1006の周囲が空気となるため、第1の実施の形態の構造に比べて誘電損失を低減することができる。これにより、アンテナの放射効率を向上させることが可能となる。
次に、本発明に係るアンテナの第5の実施の形態に関して説明する。図54は本発明に係るアンテナの第5の実施の形態のアンテナを導体ビア1005を含むxz平面で切断した場合の断面図である。
本第5の実施の形態のアンテナは図54に示すように、導体プレーン1001と、その上部に順番に積層された第1の誘電体層1002と、第2の誘電体層1003、第3の誘電体層1015を含み、前記第2の誘電体層1003と前記第3の誘電体層1015に挟まれた層に金属からなる導体パッチ1004が配置される。また、前記第1の誘電体層1002と前記第2の誘電体層1003に挟まれた層に 前記導体パッチ1004と対向する平面に配設されて、前記導体パッチ1004をリターンパスとする第1の伝送線路1006Aが配置されている。さらに前記第3の誘電体層1015の上部には同じく前記導体パッチ1004をリターンパスとし、第1の伝送線路1006Aと長さの異なる、第2の伝送線路1006Bが配置されている。前記伝送線路1006Aおよび1006Bは、その一方の端部を導体ビア1005を介して前記導体プレーン1001と電気的に接続し、他方の端部をオープン端とすることで、オープンスタブとして機能するように構成されている。図54に示すように、前記導体パッチ1004の前記導体ビア1005に対応する位置にはクリアランス1009が設けられており、導体パッチ1004と導体ビア1005は電気的に絶縁されている。本第5の実施の形態では、前記伝送線路1006A、1006B、導体ビア1005、およびクリアランス1009がシャント部として機能する。
本第5の実施の形態のシャント部の配置、伝送線路の形状、給電部の構造は第1の実施の形態と同様である。本第5の実施の形態のアンテナとしての動作原理は第1の実施の形態と全く同様である。
伝送線路が1つの場合、第1バンドもしくは第1バンドギャップの周波数帯が所望の帯域となるように伝送線路長を決定すると、式(12)、(13)に基づいて第2バンド以降の周波数帯は自動的に決定されてしまうのに対して、本第5の実施の形態では前記伝送線路1006A、1006Bのインピーダンス変換周期が異なるため、第1バンドと第2バンドの帯域を別々に設計することができ、自由度の高い帯域設計が可能となる。
次に、本発明に係るアンテナの第6の実施の形態に関して説明する。図55および図56は本発明に係るアンテナの第6の実施の形態のアンテナの斜視図である。第1の実施の形態では、給電ビア1007を導体パッチ1004への給電部とし、給電ビア1007の他端と導体プレーン1001に設けられた給電部クリアランス1008とを信号の入力ポートとする構成を示した。この構成における給電方法としては、裏面から同軸コネクタを直接接続する方法や、導体プレーン1001の裏面側に形成したマイクロストリップラインやストリップラインなどの給電線を入力ポートに接続する方法が考えられる。しかし同軸コネクタを用いる場合は構造が大型化してしまい、本発明の目的であるアンテナの小型化を実現する上で不適な場合がある。また裏面に給電線を設ける方法では層数が増加し、構造が複雑化する欠点がある。
本第6の実施の形態は図55に示すとおり、第1の実施の形態のアンテナ構造を基本とし、給電部を導体パッチ1004と同一平面に形成したマイクロストリップライン1020に変更した構造をとる。前記マイクロストリップライン1020は前記導体パッチ1004の外縁部に接続されており、無線回路からの信号をアンテナへ入力する。しかし、導体パッチ1004の外縁部は一般に高インピーダンスとなるため、給電系とインピーダンス整合することが難しい。このような場合には図56に示すように通常のパッチアンテナと同様に導体パッチ1004に長方形切り欠け部1021を設けることで、導体パッチ1004の給電系のインピーダンスと整合する外縁部に前記マイクロストリップライン1020を接続することができる。本第6の実施の形態のアンテナ構造によって、小型でありかつ簡易な構造で給電することが可能である。
次に、本発明に係るアンテナの第7の実施の形態に関して説明する。図57は本発明に係るアンテナの第7の実施の形態のアンテナの導体プレーン1001の平面図である。本第7の実施の形態は、第1の実施の形態のアンテナ構造を基本とし、給電部を給電ビア1007および導体プレーン1001に設けられたコプレナーライン1022に変更した構造をとる。前記コプレナーライン1022は前記給電ビア1007の端部に接続されており、無線回路からの信号をアンテナへ入力する。本第7の実施の形態のアンテナ構造によって、小型でありかつ簡易な構造で給電することが可能である。
次に、本発明に係るアンテナの第8の実施の形態に関して説明する。図58は本発明に係るアンテナの第8の実施の形態の構成を説明する平面図である。本第8の実施の形態は、図58に示すように本発明のアンテナをアレイ要素1030として、プリント基板1031に複数のアレイ要素1030を並べて構成したアレイアンテナである。アレイアンテナを構成することで指向性がビーム状となり、ビーム方向のアンテナ利得を増大させることができる。図58はアレイアンテナの一例として、第6の実施の形態のアンテナをアレイ要素1030として、アレイ要素を4つ並べてマイクロストリップライン1020で並列に給電する構成を示した。アレイ要素1030として本発明の他の実施の形態のアンテナを用いることも当然可能である。アレイ要素1030の数を増やすことでさらにビームを鋭くし、ビーム方向の利得を増大することができる。
以上のように、本発明のアンテナではオープンスタブおよび導体ビアからなるシャント部が周期的に配列されることで媒質の実効的な分散関係を制御することが可能となるため、通常の誘電体と比べて波長が短くなるように分散関係を設計することでアンテナのサイズを大幅に小型化することができる。また、本発明の周期構造は右手系媒質として動作し、カットオフ周波数が存在しないように構成可能であるため、低周波化が容易に可能となる。
なお、本発明の実施の形態は、上記のものに限られず、各実施の形態の構成を組み合わせたものとしたり、各実施形態における各要素の個数を増やしたりあるいは減らしたりすることが可能である。また、各実施形態の構成を有するプリント基板や各実施形態の構成やそれを用いたプリント基板あるいは各実施形態のアンテナにおける構造を少なくともひとつ備える電子装置を、本発明の一態様としてとらえることも可能である。