JP5659539B2 - インキ組成物及びこれを用いた加飾シート - Google Patents
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Description
射出成形同時転写加飾法においては、射出成形同時転写加飾用の加飾シートの転写層側を金型内に向けて転写層側から熱盤によって加熱し、該加飾シートが金型内形状に沿うように成形して金型内面に密着させて型締した後、キャビティ内に溶融した射出樹脂を射出して該加飾シートと射出樹脂とを一体化し、次いで加飾成形品を冷却して金型から取り出した後、基材フィルムを剥離することにより転写層を転写した加飾成形品を得ることができる。
2.前記ポリマーの配合量が、ポリマーとモノマーとの合計に対して40〜70質量%である上記1に記載のインキ組成物。
3.異形無機粒子が、シリカ粒子が平均連結数2〜40個の連結凝集したシリカ粒子群からなるものである上記1又は2に記載のインキ組成物。
4.前記電離放射線硬化性官能基を有するポリマーが、アクリル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、及びポリエーテル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種からなるポリマーである上記1〜3のいずれかに記載のインキ組成物。
5.前記電離放射線硬化性官能基を有するモノマーが、該官能基を2個以上有するウレタン(メタ)アクリレートである上記1〜4のいずれかに記載のインキ組成物。
6.基材フィルムの片面に少なくとも離型層とハードコート層形成層とを順に有する加飾シートであって、該ハードコート層形成層が上記1〜5のいずれかに記載のインキ組成物を用いてなるものである加飾シート。
7.下記の工程(1)〜工程(5)を有する加飾成形品の製造方法。
工程(1)射出成型金型内に上記6に記載の加飾シートを配する工程
工程(2)キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形体と加飾シートとを積層一体化させる射出工程
工程(3)樹脂成形体と加飾シートとが一体化した成形体を金型から取り出す工程
工程(4)成形体から加飾シートの基材フィルムを剥離する工程
工程(5)前記成形体上に設けられたハードコート層形成層を硬化させるハードコート層形成工程
8.工程(5)における硬化が、酸素濃度2%以下の雰囲気下で電離放射線を照射して行われることを特徴とする上記7に記載の製造方法。
9.上記7又は8に記載の製造方法により得られる加飾成形品。
本発明のインキ組成物は、電離放射線硬化性官能基としてビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも一種を有するポリマー及びモノマーと、異形無機粒子の表面に反応性官能基を有する反応性異形無機粒子とを含むインキ組成物であって、該ポリマーの配合量が該ポリマーと該モノマーとの合計に対して5〜75質量%であり、該インキ組成物中の該反応性異形無機粒子の含有量が20〜60質量%であるインキ組成物である。
電離放射線硬化性とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などの照射により励起して、重合反応を生じることにより架橋、硬化する性能のことである。また、電離放射線硬化性官能基とは、上記電離放射線硬化性を発現しうる官能基のことであり、本発明においてはビニル基、(メタ)アクリロイル基及びアリル基といったエチレン性不飽和結合を有する官能基及びエポキシ基のことである。
また、優れた高硬度性及び耐スクラッチ性を得る観点から、ポリマーの二重結合当量は、50〜1000、好ましくは100〜1000、より好ましくは100〜500である。ここで、二重結合当量は、電離放射線硬化性官能基1個あたりの分子量を意味する。
本発明で用いられる電離放射線硬化性官能基を有するモノマーは、電離放射線硬化性官能基としてビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも一種を有するモノマーであれば特に制限はなく、1分子中に2つ以上の官能基を有する多官能(メタ)アクリレートが好ましく挙げられ、より具体的には、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、及びポリエーテル(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
本発明で用いられるモノマーの重量平均分子量は、好ましくは100〜10000程度であり、より好ましくは1000〜5000の範囲内である。モノマーの重量平均分子量が上記範囲内であれば、優れた高硬度性が得られる。ここで、重量平均分子量は、上記と同じく測定された値である。
本発明のインキ組成物は、反応性異形無機粒子を含有する。本発明において、反応性異形無機粒子は異形無機粒子の表面に反応性官能基を有するものである。反応性官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、及びアリル基といったエチレン性不飽和結合や、エポキシ基、シラノール基などが好ましく挙げられ、高硬度性及び耐スクラッチ性の向上の観点から、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、及びアリル基がより好ましい。
無機粒子の平均粒径は、0.005〜0.2μmであることが好ましく、0.01〜0.05μmであることがより好ましい。また、異形無機粒子の平均粒子径としては、インキ組成物により形成する層の厚さにより適宜選択しうるが、通常0.005〜0.5μmが好ましく、0.01〜0.1μmがより好ましい。平均粒子径は、溶液中の該粒子を動的光散乱方法で測定し、粒子径分布を累積分布で表したときの50%粒子径(d50:メジアン径)であり、Microtrac粒度分析計(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
本発明のインキ組成物は、粘度を調整する目的で溶媒を含有してもよい。溶媒としては、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、メチルグリコール、メチルグリコールアセテート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ニトロメタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロルエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンなどのその他の物;またはこれらの混合物が好ましく挙げられる。より好ましい溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
インキ組成物中の溶媒の量は、該組成物の粘度に応じて適宜選定すればよいが、前記ポリマー、モノマーの固形分、反応性無機粒子及びその他後述する光重合開始剤などを合わせた固形分の含有量が通常10〜50質量%程度、好ましくは20〜40質量%となるような量である。
本発明のインキ組成物は、光重合開始剤を配合することができる。
光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ケトン系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、ケタール系、アントラキノン系、ジスルフィド系、チオキサントン系、チウラム系、フルオロアミン系などの光重合開始剤が挙げられる。なかでも、アセトフェノン系、ケトン系、ベンゾフェノン系が好ましく挙げられる。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で使用することができ、また複数を組み合わせて使用することもできる。
光重合開始剤の含有量は、ポリマーとモノマーとの合計量100質量部に対して、0.5〜10質量部程度とすることが好ましく、より好ましくは1〜8質量部、さらに好ましくは3〜8質量部であり、該ポリマー及びモノマーは固形分を基準としたものである。
本発明のインキ組成物は、得られる所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、チキソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤などが挙げられる。
本発明のインキ組成物のポリマーの配合量は、該ポリマーとモノマーとの合計に対して5〜75質量%であることを要し、好ましくは5〜70質量%であり、より好ましくは10〜70質量%である。ここで、ポリマーの配合量は、ポリマー及びモノマーの固形分を基準としたものである。ポリマーの配合量が上記範囲内であれば、該インキ組成物により層を形成する際に白化などが生じることがなく、優れた高硬度性及び耐スクラッチ性と優れた成形性が得られる。また、本発明のインキ組成物を用いて作製した加飾シートを用いて加飾成形品を作製する際、該加飾シートを電離放射線などを用いた硬化処理(プレキュア)を行うことなく、必要に応じて熱乾燥するだけで、成型した際に成型前後の加飾シートの面積比が130%以上となるような深絞りであっても、最大延伸部に塗膜割れや白化が生じることなく、良好に型の形状に追従できるハードコート層がシワや裂けの発生を抑えて巻き取ること(タックフリー性)、さらにブロッキング(裏移り)することなく加飾シートを巻き取りして保存しておくことが可能であり、取り扱いが容易となる。すなわち、タックフリー性、耐ブロッキング性を向上させて、加飾シートの巻取り容易性を向上させることが可能となる。これと同様の観点から、ポリマーの配合量として40〜70質量%が特に好ましい。
本発明の加飾シートは、基材フィルムの片面に少なくとも離型層とハードコート層形成層とを順に有しており、該ハードコート層形成層が本発明のインキ組成物を用いてなるものである。以下、本発明の加飾シートを、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の加飾シートの好ましい一態様についての断面を示す模式図である。図2は、本発明の加飾成形品の好ましい一態様についての断面を示す模式図である。
図1に示される本発明の加飾シート10は、ポリエステルフィルムからなる基材フィルム11の一方の表面に、離型層12、ハードコート層形成層13、アンカー層14、絵柄層15及び接着層16を順に積層してなるものである。また、図2に示される本発明の加飾成形品20は、樹脂成形体21の表面に、接着層16、絵柄層15、アンカー層14及びハードコート層形成層13が硬化してなるハードコート層22が順に積層したものである。
基材フィルム11としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチルなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、三酢酸セルロース、セロファン、ポリカーボネート、ポリウレタン系などのエラストマー系樹脂などによるものが利用される。これらのうち、成形性及び剥離性が良好である点から、ポリエステル系樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という。)が好ましい。
基材フィルム11の厚さとしては、成形性や形状追従性、取り扱いが容易であるとの観点から、25〜150μmの範囲が好ましく、さらに50〜100μmの範囲がより好ましい。
離型層12は、好ましくはハードコート層形成層13、アンカー層14、絵柄層15及び接着層16が順に積層してなる転写層17が基材シート11からの剥離を容易に行われるために設けられる層である。該離型層12を有することで、本発明の加飾シートから転写層17を確実に、かつ容易に被転写体へ転写させ、基材フィルム11及び離型層12からなる剥離層18を確実に剥離することができる。
離型層12の形成は、上記のような離型剤に必要な添加剤を加えたものを適当な溶剤に溶解または分散して調製したインキを、基材シート11上に公知の手段により塗布・乾燥させて行うことができ、厚みは0.1〜5μm程度が好ましい。
ハードコート層形成層13は、本発明のインキ組成物を用いてなる層であり、硬化することにより加飾成形品20におけるハードコート層22を形成する層である。該ハードコート層22は、加飾成形品の最外層となり、摩耗や光、薬品などから成形品や絵柄層を保護するための層である。よって、ハードコート層形成層13は、硬化することで、優れた高硬度性と耐スクラッチ性はもちろんのこと、耐薬品性や耐汚染性などの表面物性に優れるという性能を有する層であること要する。本発明においては、ハードコート層形成層13の形成に本発明のインキ組成物を用いることにより、ハードコート層22に上記のような性能を付与することを可能としている。
ハードコート層形成層13の厚さは、0.5〜30μmの範囲が好ましく、より好ましくは3〜15μmである。厚さが上記範囲内であると、優れた高硬度性と耐スクラッチ性はもちろんのこと、耐薬品性や耐汚染性などの表面物性が得られると同時に、優れた成形性や形状追従性を得ることができる。また、経済的にも有利である。
アンカー層14は、ハードコート層形成層13と接着層16との密着性を向上させるために、所望により設けられる層である。
アンカー層14は、2液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂などを使用し、例えば上記のように形成したハードコート層形成層13の上に、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などにより塗工して形成することができる。
アンカー層14の厚さは、通常0.1〜5μm程度であり、好ましくは1〜5μm程度である。
絵柄層15は、加飾成形品に所望の意匠性を付与するための層であり、所望により設けられる層である。絵柄層15の絵柄は任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字などからなる絵柄を挙げることができる。また、絵柄層15は、上記絵柄を表現する柄パターン層及び全面ベタ層を単独で又は組み合わせて設けることができ、全面ベタ層は、通常、隠蔽層、着色層、着色隠蔽層などとして用いられる。
絵柄層15の厚みは、意匠性の観点から5〜40μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。
接着層16は、転写層17を接着性よく樹脂成形体に転写するために形成される層である。この接着層16には、樹脂成形体の素材に適した感熱性又は感圧性の樹脂を適宜使用する。例えば、樹脂成形体の材質がアクリル系樹脂の場合は、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂成形体の材質がポリフェニレンオキサイド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用することが好ましい。さらに、樹脂成形体の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂を使用することが好ましい。
接着層16の厚さは、通常0.1〜5μm程度が好ましい。
本発明の加飾シートは、加飾成形品に優れた高硬度性及び耐スクラッチ性を付与し、またより形状が複雑な成形品が得られるという優れた成形性を有する。また、本発明の加飾シートを用いて加飾成形品を作製する場合、加飾シートをそのまま用いることもできるし、耐ブロッキング性に優れることからロール状に巻き取ってから使用することもできるので、巻取り容易性に優れており、使い勝手の点でも優れている。これらのことから、家庭用電化製品、自動車内装品などの分野や、パソコンの分野、とりわけパソコンの筐体など、幅広い分野において使用することができる。
本発明の加飾成形品の製造方法は、工程(1)射出成型金型内に本発明の加飾シートを配する工程;工程(2)キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形体と加飾シートとを積層一体化させる射出工程;工程(3)樹脂成形体と加飾シートとが一体化した成形体を金型から取り出す工程;工程(4)成形体から加飾シートの基材フィルムを剥離する工程;及び工程(5)前記成形体上に設けられたハードコート層形成層を硬化させるハードコート層形成工程を有するものである。
工程(1)は、本発明の加飾シートを成形金型内に配し、挟み込む工程である。具体的には、加飾シートを、可動型と固定型とからなる成形用金型内に転写層17を内側にして、つまり、基材フィルム11が固定型側となるように加飾シートを送り込む。この際、枚葉の加飾シートを1枚ずつ送り込んでもよいし、長尺の加飾シートの必要部分を間欠的に送り込んでもよい。
工程(2)は、キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形体と加飾シートとを積層一体化させる射出工程である。射出樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融によって流動状態にして、また、射出樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の液状組成物を適宜加熱して流動状態で射出して、冷却して固化させる。これによって、加飾シートが、形成された樹脂成形体と一体化して貼り付き、加飾成形品となる。射出樹脂の加熱温度は、射出樹脂によるが、一般に180〜270℃程度である。
加飾成形品に用いられる射出樹脂としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂あるいは、熱硬化性樹脂(2液硬化性樹脂を含む)であればよく、様々な樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂材料としては、例えばポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂(耐熱ABS樹脂を含む)、AS樹脂、AN樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、2液反応硬化型のポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独でもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
工程(3)は、加飾シートと樹脂成形体とが一体化した成形体を金型から取り出す工程であり、工程(4)は、該成形体から加飾シートの基材フィルムを剥離する工程である。基材フィルム11は、離型層12を有しているので、該離型層12とハードコート層形成層13との境界面で、基材フィルム11と離型層12を含む剥離層18を加飾成形品20から容易に剥離することができる。このようにして、樹脂成形体20の表面に、接着層16、絵柄層15、アンカー層14及びハードコート層形成層13が順に積層する成形品が得られる。
工程(5)は、工程(4)で得られた成形品におけるハードコート層形成層13を硬化させて、ハードコート層を形成する工程である。工程(5)の硬化においては、酸素濃度2%以下の雰囲気下で電離放射線を照射して行うことが好ましい。このように硬化を行うことで、加飾シートの形状追従性や成形性を維持しつつ、優れた高硬度性及び耐スクラッチ性が得られるという、相反する性能をさらに高い基準で達成することが可能となる。
電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いるポリマーやモノマーの種類、あるいはハードコート層形成層13の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度が好ましい。照射線量は、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。また、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射し、その照射線量は500〜1500mJ程度である。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
本発明の加飾成形品は、これらの優れた特性をいかして、家庭用電化製品、自動車内装品などの分野や、パソコンの分野、とりわけパソコンの筐体など、幅広い分野において好適に使用することができる。
1.試験サンプルの作製
各実施例及び比較例で用いられるインキ組成物を、PETフィルム(「F99(品番)」,厚さ:50μm,東レ株式会社製)上にバーコーターで塗工し、100℃のオーブン内で60秒間乾燥し、試験サンプルを得た。得られた試験サンプルのインキ塗工量は6g/m2(インキ塗工層の厚さは5μm)であった。
2.シート巻取り容易性の評価
試験サンプルのインキ塗工層面に、試験サンプルの作製に用いたPETフィルムを重ね合わせて、インキブロッキングテスター(「DG−BT(型番)」,大和グラビヤ株式会社製)を用いて、1kg/cm2の荷重を加えながら、下記の四通りの方法で処理を行った。
(i)40℃のオーブン内で12時間放置
(ii)50℃のオーブン内で12時間放置
(iii)照射線量:15mJで硬化処理した後、40℃オーブン内で12時間放置
(iv)照射線量:15mJで硬化処理した後、50℃オーブン内で12時間放置
ここで、硬化処理には、出力可変型UVランプシステム(「DRS−10/12QN(型番)」,フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を用いた。その後、試験サンプルを取り出して、重ね合わせたPETフィルムを剥離した。剥離したPETフィルムへのインキ塗工層の取られ(裏移り)を、下記の基準で評価した。
A :(i)又は(ii)の処理を行ったところ、裏移りは全くなかった
B :(i)又は(ii)の処理を行ったところ、裏移りは若干あるものの、実用上問題なかった
C :(iii)又は(iv)の処理を行ったところ、裏移りは全くなかった
D :(iii)又は(iv)の処理を行ったところ、裏移りは若干あるものの、実用上問題なかった
E :(i)〜(iv)のいずれの処理を行っても、裏移りが著しかった
3.高硬度性及び耐クラッキング性の評価
試験サンプルを、第1表〜第3表に示される各実施例及び比較例における硬化方法により硬化させた後、JIS K5600−5−4に準拠して、鉛筆引掻き塗膜硬さ試験機(「D−NP(型番)」,株式会社東洋精機製作所製)、及び鉛筆引掻き値試験用鉛筆(三菱鉛筆株式会社製)を用いて鉛筆硬度を測定した。
各硬度の鉛筆でインキ塗工層を引掻く試験を5回行い、3回以上傷跡が生じなかった鉛筆の硬度を、試験サンプルの鉛筆硬度とした。
(1)ポリマーの製造
冷却器、滴下ロート及び温度計付きの2リットルの四つ口フラスコに、トルエン40g及びメチルエチルケトン(MEK)40gをアゾ系の開始剤とともに仕込み、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)38g、メチルメタクリレート(MMA)30g、メタクリル酸(MAA)7g、イソボニルメタクリレート(IBM)7g、トルエン30g及びMEK20gの混合液を、滴下ロートを経て約2時間かけて滴下させながら100〜110℃の温度下で8時間反応させた後、室温まで冷却した。これに、2−イソシアネートエチルメタクリレート(「カレンズMOI(商品名)」,昭和電工株式会社製)46g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20g及びMEK20gの混合液を加えて、ラウリン酸ジブチル錫を触媒として付加反応させた。反応生成物のIR分析により2200cm-1の吸収ピークの消失を確認し反応を終了した。
(2)加飾シートの製造
基材フィルム(「F99(品番)」,厚さ:50μm,東レ株式会社製)上に、アクリル系樹脂をバインダー樹脂として、シリコーン系樹脂を離型剤とする塗工液を塗工量4g/m2でグラビア印刷して離型層を形成し、下記に示されるインキ組成物を塗工量8g/m2でグラビア印刷してハードコート層形成層を形成した。次いで、セルロースエステル系樹脂を主成分とする塗料を塗工量4g/m2でグラビア印刷してアンカー層を形成し、次いでアクリル系印刷インキを塗工量8g/m2で、木目模様をグラビア印刷して絵柄層を形成し、さらにアクリル系塗工液を厚さ4μmで塗布して接着層を形成し、実施例1の加飾シートを得た。
(インキ組成物)
(1)で製造したポリマー2.3質量部(固形分1質量部)
アクリルアクリレートモノマー5質量部(固形分5質量部):ウレタンアクリレート(「紫光UV1700B(品番)」,日本合成化学工業株式会社,分子量:2000,官能基数:6以上)
反応性異形無機粒子4質量部:(「ELCOM V−8803(品番)」,日揮触媒化成株式会社製,反応性異形シリカ粒子,平均連結数:規則的に2〜10個,異形無機粒子の平均粒子径;25μm)
光重合開始剤0.4質量部:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(ケトン系,「IRGACURE 184(品番)」,チバ・ジャパン株式会社製)
溶媒22.3:トルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤(配合比50:50)
(3)加飾成形品の製造
上記(2)で得られた加飾シートを、熱盤温度70℃で加熱して加飾シートを軟化して、空気吸引を行い射出成型の金型内形状に沿うように成形して、金型内面に密着させた。金型は、80mm角の大きさで、立ち上がり10mm、コーナー部が3Rのトレー状である深絞り度の高い形状のものを用いた。
一方、射出樹脂としてABS樹脂(「クラスチックMTH−2(品番)」,日本エイアンドエル株式会社製)を用いて、これを230℃にて溶融状態にしてから、キャビティ内に射出した。冷却して金型から取り出した後、基材フィルムを剥離して、樹脂成形品の表面に接着層、印刷層、アンカー層及びハードコート層形成層を順に有する成形品を得た。さらに、窒素気流を用いた酸素濃度1%の雰囲気下において、出力可変型UVランプシステム(「DRS−10/12QN(型番)」,フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を用い、照射線量:1000mJで、該成形品に紫外線を照射して、ハードコート層形成層を硬化させて、ハードコート層とした実施例1の樹脂成形品を得た。
得られた樹脂成形品について、その外観(成形性)を下記の基準で評価した。
○ :ハードコート層(及びその形成層)に塗装割れや白化が全く確認できず、良好に金型の形状に追従した
△ :ハードコート層(及びその形成層)に微細な塗装割れや軽微な白化が確認されたが、実用上問題ない
× :ハードコート層(及びその形成層)に著しい塗装割れや白化が確認された
実施例1において、インキ組成物及び硬化条件を第1表に示される以外は実施例1と同様にして、加飾シート及び加飾成形品を得た。得られた加飾成形品について、上記の外観評価を行った。その結果を第1表に示す。
*2,ポリマー固形分、モノマー固形分及び反応性異形無機粒子の合計に対する反応性異形無機粒子の含有量(質量%)である。
*3,ポリマー、モノマー、反応性異形無機粒子、光重合開始剤及び溶剤の合計に対するポリマー固形分、モノマー固形分、反応性異形無機粒子及び光重合開始剤の合計の含有量(質量%)である。
*4,電離放射線(紫外線及び電子線)の照射条件は以下の通りである。
紫外線照射条件
出力可変型UVランプシステム(「DRS−10/12QN(型番)」,フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)
照射線量:1000mJ
電子線照射条件
電子線照射装置(「LB1023(型番)」,株式会社アイ・エレクトロンビーム製)
加速電圧:165kV,照射線量:30KGy
*5,酸素濃度は、ポケッタブル酸素モニターOC−95(理研計器株式会社製)を用いて測定した値である。
実施例1において、インキ組成物を下記に示されるインキ組成物とした以外は実施例1と同様にして、加飾シート及び加飾成形品を得た。得られた加飾成形品について、上記の外観評価を行った。その結果を第2表に示す。
(インキ組成物)
実施例1の(1)で製造したポリマー2.3質量部(固形分1質量部)
アクリルアクリレートモノマー5質量部(固形分5質量部):ウレタンアクリレート(「紫光UV1700B(品番)」,日本合成化学工業株式会社,分子量:2000,官能基数:6以上)
無機粒子4質量部:未反応性コロイダルシリカ粒子(「MEK−ST−L(品番)」,日産化学工業株式会社製,平均粒子径d50:44nm)
光重合開始剤0.4質量部:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(ケトン系,「IRGACURE 184(品番)」,チバ・ジャパン株式会社製)
溶媒22.3質量部:トルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤(配合比50:50)
比較例2において、インキ組成物及び硬化条件を第1表に示される以外は比較例2と同様にして、加飾シート及び加飾成形品を得た。得られた加飾成形品について、上記の外観評価を行った。その結果を第3表に示す。
また、シート巻取り容易性の観点からは、熱乾燥の後に電離放射線で硬化処理を行えば全ての実施例において優れたシート巻取り容易性が得られ、熱乾燥の処理だけで裏移りしない実施例3〜5のインキ組成物が優れ、使い勝手の点で優れていることが確認された。
11 基材フィルム
12 離型層
13 ハードコート層形成層
14 アンカー層
15 絵柄層
16 接着層
17 転写層
18 剥離層
20 加飾成形体
21 樹脂成形体
22 ハードコート層
Claims (9)
- 電離放射線硬化性官能基としてビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも一種を有する重量平均分子量が20000〜150000であるポリマー及び電離放射線硬化性官能基としてビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも一種を有する重量平均分子量が100〜10000であるモノマーと、異形無機粒子の表面にビニル基、(メタ)アクリロイル基、及びアリル基から選ばれる少なくとも一種の反応性官能基を有する反応性異形無機粒子とを含むインキ組成物であって、該ポリマーの配合量が該ポリマーと該モノマーとの合計に対して5〜75質量%であり、該インキ組成物中の該反応性異形無機粒子の含有量が20〜60質量%であるインキ組成物。
- 前記ポリマーの配合量が、ポリマーとモノマーとの合計に対して40〜70質量%である請求項1に記載のインキ組成物。
- 異形無機粒子が、シリカ粒子が平均連結数2〜40個の連結凝集したシリカ粒子群からなるものである請求項1又は2に記載のインキ組成物。
- 前記電離放射線硬化性官能基を有するポリマーが、アクリル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、及びポリエーテル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種からなるポリマーである請求項1〜3のいずれかに記載のインキ組成物。
- 前記電離放射線硬化性官能基を有するモノマーが、該官能基を2個以上有するウレタン(メタ)アクリレートである請求項1〜4のいずれかに記載のインキ組成物。
- 基材フィルムの片面に少なくとも離型層とハードコート層形成層とを順に有する加飾シートであって、該ハードコート層形成層が請求項1〜5のいずれかに記載のインキ組成物を用いてなるものである加飾シート。
- 下記の工程(1)〜工程(5)を有する加飾成形品の製造方法。
工程(1)射出成型金型内に請求項6に記載の加飾シートを配する工程
工程(2)キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形体と加飾シートとを積層一体化させる射出工程
工程(3)樹脂成形体と加飾シートとが一体化した成形体を金型から取り出す工程
工程(4)成形体から加飾シートの基材フィルムを剥離する工程
工程(5)前記成形体上に設けられたハードコート層形成層を硬化させるハードコート層形成工程 - 工程(5)における硬化が、酸素濃度2%以下の雰囲気下で電離放射線を照射して行われることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
- 請求項7又は8に記載の製造方法により得られる加飾成形品。
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