図1はこの発明の実施例に係る変速機用ニュートラルセンサの出力正誤判定装置を全体的に示す概略図である。
以下説明すると、符号10はエンジン(ENG)12の出力を入力して変速して車輪14に伝達する手動変速機(以下「変速機」という)を示す。変速機10は前進6速、後進(RVS)1速の変速ギヤ(速度段)、即ち、前進n速(n≧2。具体的にはn=6)の変速ギヤを有する。
エンジン12は例えばガソリンを燃料とする火花点火式の内燃機関からなり、エンジン12の駆動軸(クランク軸)12aと変速機10の間には運転者の操作に応じてエンジン12の出力を変速機10に伝達する機械式摩擦クラッチ16が介挿される。エンジン12は車輪14などで部分的に示される車両18に搭載される。
機械式摩擦クラッチ(以下「クラッチ」という)16はエンジン12の駆動軸12a、より正確には駆動軸12aに固定されたフライホイール12bに接触可能なドーナツ状のクラッチディスク(摩擦材)16aが円周上に貼り付けられたクラッチプレート16bと、その背後(フライホイール側)に配置される、クラッチディスク16aと同一形状のプレッシャプレート(摩擦材)16cと、その上に配置されるダイヤフラム状のスプリング16dを備える。
クラッチディスク16a(とプレッシャプレート16c)は、スプリング16dによってエンジン12のフライホイール12bに押圧されることで締結してエンジンの出力を変速機10に伝達する。
車両運転席の床面に運転者の操作自在に設けられるクラッチペダル20は公知のマスタシリンダ(油圧シリンダ)22とレリーズシリンダ24(油圧シリンダ)を介してクラッチ16に接続される。
クラッチペダル20はピストンロッドを介してマスタシリンダ22の内部に摺動自在に収容されたピストンに連結される。マスタシリンダ22は配管を介してレリーズシリンダ24に接続されて油圧を給排する。レリーズシリンダ24の内部にもピストンが摺動自在に収容される。
レリーズシリンダ24においてピストンはピストンロッド24aを備え、ピストンロッド24aはレリーズフォーク24bに連結される。レリーズフォーク24bは変速機ケース10dに固定されるレリーズピボット24cを介してクラッチ16のスプリング16dに連結される。
運転者がクラッチペダル20を踏む(操作する)と、その踏み力はマスタシリンダ22からレリーズシリンダ24に油圧として伝えられ、踏み量に相当する距離だけレリーズシリンダ24のピストンロッド24aはストロークしてレリーズフォーク24bを前後方向に駆動する。
図示の如く、レリーズピボット24cはレリーズフォーク24bの中央位置よりもクラッチ16に接近して配置されるので、そこを支点とするレリーズフォーク24bの移動は増力されてクラッチ16のスプリング16dに伝達され、スプリング16dを押圧してクラッチ16を開放位置に駆動する。
他方、運転者がクラッチペダル20から足を離すと、クラッチ16(のクラッチプレート16b)はスプリング16dの付勢力によってエンジン12の駆動軸12aを伝達する締結位置に移動する。
変速機10は、エンジン12の駆動軸12aに接続されてエンジン12の出力を入力する入力軸(メインシャフト)10aと、入力軸10aと平行に設けられると共に、車輪14に接続される出力軸(カウンタシャフト)10bを備える。入力軸10aと出力軸10bはベアリング10cを介して変速機ケース10dに回転自在に支承される。
入力軸10aには1速ドライブギヤ10eと2速ドライブギヤ10fとRVS(後進)ドライブギヤ10gとが回転不能に配置されると共に、出力軸10bには3速ドライブギヤ10hと4速ドライブギヤ10iと5速ドライブギヤ10jと6速ドライブギヤ10kが回転不能に配置される。
また、出力軸10bには1速ドライブギヤ10eと噛合する1速ドリブンギヤ10lと2速ドライブギヤ10fと噛合する2速ドリブンギヤ10mとが回転可能に配置されると共に、入力軸10aには3速ドライブギヤ10hと噛合する3速ドリブンギヤ10nと4速ドライブギヤ10iと噛合する4速ドリブンギヤ10oと5速ドライブギヤ10jと噛合する5速ドリブンギヤ10pと6速ドライブギヤ10kと噛合する6速ドリブンギヤ10qとが回転可能に配置される。
さらに、RVS軸10rにはRVSドライブギヤ10gと噛合可能なRVSギヤ10sがRVS軸10rに対して回転不能に配置される。出力軸10bにはギヤ10tが出力軸10bに対して回転不能に配置される。
ギヤ10tはギヤ10uを介してディファレンシャル機構10vに接続される。ディファレンシャル機構10vはドライブ軸10wを介して車輪14に接続される。
入力軸10aと出力軸10bの付近には1−2速スリーブ10xと3−4速スリーブ10yと5−6速スリーブ10zとが配置される。
他方、車両運転席には運転者の操作自在にシフトレバー26が配置される。シフトレバー26は、シフトアームやシフトピース(後述)などで規定されるシフトパターン26a内を運転者の操作に応じて移動自在に構成される。
シフトパターン26aにおいて1−2,3−4,5−6速のそれぞれの中央位置n1,n2,n3がニュートラル位置N(1速ドライブギヤ10eなどの変速ギヤのいずれも入力軸10aにも出力軸10bにも固定されない(インギヤされない)位置)を示す。
図示の如く、この明細書でシフトレバー26の前進1−6速とRのいずれかに向けての移動を「シフト」、ニュートラル位置n1,n2,n3が連続する方向に沿っての移動を「セレクト」という。
シフトレバー26はシフト機構30を介して上記したスリーブ10x,10y,10zに機械的に接続される。
図2はシフト機構30の、変速機10の入出力軸10a,10bの軸端から見た、説明側面図、図3はその拡大説明上面図である。図2、図3において図1に示したスリーブ10x,10y,10zなどの図示を省略した。
図2に示す如く、シフト機構30は、軸部材30aと、軸部材30aに固定されると共に、鉄などの磁性体からなるシフトアーム30bと、シフトフォーク30c(30c1,30c2などと示す)と、シフトアーム30bとシフトフォーク30cを連結するシフトピース30d(30d1,30d2などと示す)を備える。
シフトフォーク30cは、1−2速スリーブ10xに係合される1−2速シフトフォーク30c1と、3−4速スリーブ10yに係合される3−4速シフトフォーク30c2と、5−6速スリーブ10zに係合される5−6速シフトフォーク30c3と、RVSギヤ10sに係合されるRシフトフォーク30c4(図示せず)からなる。4個のシフトフォークを30cnで総称する。
シフトピース30dは、シフトフォーク30cを貫通してシフトフォーク30cに固定されるフォークシャフト30eに取り付けられるプレート状の部材からなり、1−2速シフトフォーク30c1に取り付けられる1−2速シフトピース30d1と、3−4速シフトフォーク30c2に取り付けられる3−4速シフトピース30d2と、5−6速シフトフォーク30c3に取り付けられる5−6速シフトピース30d3と、Rシフトフォーク30c4に取り付けられるRシフトピース30d4からなる。4個のシフトピースを30dnで総称する。
図3に示す如く、4個のシフトピース30dnの他端側はそれぞれスパナ状に形成された係合部30dn1を有し、係合部30dn1はシフトアーム30bの突起30b1と係合し、よってシフトフォーク30cnを介して対応するスリーブ10x,10y,10zを入力軸10aあるいは出力軸10bの軸方向に移動可能に構成される。
軸部材30aは長軸30a1を有し、長軸30a1は一端側でシフトレバー30(図2などで図示省略)にロッドを介して連結されるリンク30a2に係合されて軸方向に移動(セレクト)可能であると共に、シフトレバー26にワイヤで連結される係止部30a3を介して長軸30a1の軸回り方向に回転(シフト)可能に構成される。
図2に示す如く、シフトアーム30bは4個のシフトピース30dnのうちの3個と同程度の軸方向厚みを有すると共に、1個と同程度の軸方向厚みを有する突起30b1が形成される。
即ち、シフト機構30においてシフトアーム30bは運転者によって操作されるシフトレバー26の動きに応じて軸部材30aを介して軸方向に移動(セレクト)させられて4個のシフトピース30dnの1個と常に係合すると共に、軸回り方向に移動(シフト)させられて係合する1個のシフトピースを入力軸10aあるいは出力軸10bの軸方向に移動(ギヤイン)させるように構成される。
運転者によってクラッチペダル20が踏まれてクラッチ16が開放位置に操作されると共に、シフトレバー26が操作されると、それに応じてシフト機構30を介してスリーブ10x,10y,10zが図1で左右に移動させられて変速がなされる。
例えば、シフトレバー26が1速位置に操作されると、それに応じて1−2速スリーブ10xは図1で左動して1速ドリブンギヤ10lを出力軸10bに固定する。
その結果、1速段が確立され、エンジン12の出力はクラッチ16を介して入力軸10aに伝達され、1速ドライブギヤ10e、1速ドリブンギヤ10l、出力軸10b、ギヤ10t、ギヤ10u、ディファレンシャル機構10v、ドライブ軸10w、車輪14へと伝達され、車両を前進方向に走行させる。
シフトレバー26が2速位置に操作されると、1−2速スリーブ10xは図1で右動して2速ドリブンギヤ10mを出力軸10bに固定する結果、2速段が確立され、エンジン12の出力はクラッチ16、入力軸10a、2速ドライブギヤ10f、2速ドリブンギヤ10m、出力軸10b、ギヤ10tへと伝達される。
シフトレバー26が3速位置に操作されると、3−4速スリーブ10yは図1で左動して3速ドリブンギヤ10nを入力軸10aに固定する結果、3速段が確立され、エンジン12の出力はクラッチ16、入力軸10a、3速ドリブンギヤ10n、出力軸10b、3速ドライブギヤ10h、ギヤ10tへと伝達される。
シフトレバー26が4速位置に操作されると、3−4速スリーブ10yは図1で右動して4速ドリブンギヤ10oを入力軸10aに固定する結果、4速段が確立され、エンジン12の出力はクラッチ16、入力軸10a、4速ドリブンギヤ10o、4速ドライブギヤ10i、出力軸10b、ギヤ10tへと伝達される。
シフトレバー26が5速位置に操作されると、5−6速スリーブ10zは図1で左動して5速ドリブンギヤ10pを入力軸10aに固定する結果、5速段が確立され、エンジン12の出力はクラッチ16、入力軸10a、5速ドリブンギヤ10p、5速ドライブギヤ10j、出力軸10b、ギヤ10tへと伝達される。
シフトレバー26が6速位置に操作されると、5−6速スリーブ10zは図1で右動して6速ドリブンギヤ10qを入力軸10aに固定する結果、6速段が確立され、エンジン12の出力はクラッチ16、入力軸10a、6速ドリブンギヤ10q、6速ドライブギヤ10k、出力軸10b、ギヤ10tへと伝達される。
シフトレバー26がR(RVS)位置に操作されると、RVSギヤ10sは図1で左動してRVSドライブギヤ10gと噛合する結果、後進1速段が確立され、エンジン12の出力はクラッチ16、入力軸10a、RVSドライブギヤ10g、RVSギヤ10q、1−2速スリーブ10x、出力軸10b、ギヤ10t、ギヤ10u、ディファレンシャル機構10v、ドライブ軸10w、車輪14へと伝達され、車両を後進方向に走行させる。
図2と図3の説明に戻ると、シフトアーム30bにおいて、突起30b1の形成位置と反対側には4個のシフトピース30dと同程度の軸方向厚みを有する第2の突起30b2が形成される。以下、この第2の突起30b2を「ターゲット」という。
ターゲット30b2の付近には、ニュートラルセンサ32が変速機ケース10d(図示省略)に固定されて配置される。図3に良く示す如く、シフトアーム30bは長軸30a1を中心として回転可能に構成されると共に、所定角度(例えば中央位置から左右に数度程度)の間がニュートラル位置を示すように構成される。
ニュートラルセンサ32は磁界に比例したホール起電力を生じるホール素子を備え、シフトアーム30bの回転によるターゲット30b2の移動に応じた電圧を生じる。
図4にニュートラルセンサ32の出力電圧特性を示す。ニュートラルセンサ32にあっては、センサ出力電圧を適宜設定されるしきい値と比較することで変速ギヤ(ギヤ10e,10f,..)などがニュートラル位置Nにあるか、あるいはインギヤされているかを検出することができる。
図1の説明に戻ると、車両18の運転席床面に配置されるクラッチペダル20の付近にはクラッチペダルスイッチ20aが配置され、運転者によってクラッチペダル20が操作される(踏まれる)度に信号を出力する。
車両運転席床面にクラッチペダル20と並んで配設されるブレーキペダル34の付近にはブレーキスイッチ34aが配置されて運転者によってブレーキペダル34が踏まれる(ブレーキ操作される)度に信号を出力すると共に、アクセルペダル36の付近にはアクセル開度センサ36aが配置されて運転者によるアクセルペダル36の踏み込み量に応じたアクセル開度を示す出力を生じる。
変速機10の入力軸10aの付近には第1の回転数センサ40が配置されて入力軸10aの回転数NMを示す出力を生じると共に、ドライブ軸10wの付近には第2の回転数センサ42が配置されてドライブ軸10wの回転数、即ち、車速を示す出力を生じる。
エンジン12の駆動軸12aの付近にはクランク角センサ44が配置されてピストン(図示せず)の位置を通じてエンジン12の回転数NEを示す出力を生じると共に、吸気管(図示せず)には絶対圧センサ46が配置されてエンジン12の負荷を示す吸気管内絶対圧PBAを示す出力を生じる。
上記したセンサ群の出力はECU(Electronic Control Unit。電子制御ユニット)50に入力される。ECU50はCPU,ROM,RAM,I/Oなどからなるマイクロコンピュータを備える。
ECU50はクランク角センサ44、絶対圧センサ46などの出力に基づいてエンジン12の燃料供給、点火時期などの動作を制御すると共に、前記したニュートラルセンサ32の出力の正誤を判定する変速機用ニュートラルセンサの出力正誤判定装置としても機能する。
図5と図6はその正誤判定動作を示すフロー・チャートであり、うち図5は車両18などが所定の第1の状態にあるとき(停車中)のセンサ出力の正誤、図6は車両18などが所定の第2の状態にあるとき(走行中)のセンサ出力の正誤の判定を示すフロー・チャートである。図5と図6に示すプログラムは所定時間(例えば10msec)ごとに連続して実行される。図5などでSは各処理(ステップ)を示す。
先ず図5の処理を説明すると、S10においてエンジン回転数NEがエンスト判定回転数Nes(第2しきい値)以上か否か、換言すればエンジン12がストールしていず、作動中か否か判断する。エンスト判定回転数Nesはエンジン12が回転(作動)しているのを検知できる程度の低い値に設定される。
S10で否定されてエンジンストールと判断されるときはS12に進み、判定タイマ(ダウンカウンタ)に所定値(規定時間に相当する値)をセットする。
一方、S10で肯定されるときはS14に進み、クラッチペダル20が踏まれているか(クラッチ16が開放されているか)否かをクラッチペダルスイッチ20aの出力から判断する。
S14で肯定されるときはS12に進み、判定タイマに所定値をセットし直す一方、否定されるときはS16に進み、車速Vが所定車速Vref(第1しきい値)以下か否か判断する。所定車速Vrefは零あるいはその近傍の値に設定される。
S16で否定されるときはS12に進み、判定タイマに所定値をセットし直す一方、肯定されるときはクラッチ16と車両18とエンジン12が所定の第1の状態にあって判定条件が成立したと判断してS18に進み、判定タイマの値が零に達したか否か、換言すれば規定時間が経過したか否か、より具体的にはクラッチ16と車両18とエンジン12が所定の第1の状態にある判定条件が成立してから規定時間が経過したか否か判断する。これは誤判定を防止するための処理である。
S18で否定されたときは以降の処理をスキップする一方、肯定されるときはS20に進み、センサ出力がN(ニュートラル位置)を示しているか否か判断する。
S20で肯定されるときはS22に進み、ニュートラルセンサ32は正常(センサの出力は正しい)と判定する。
他方、S20で否定される(換言すればセンサ出力がインギヤを示す)ときはS24に進み、ニュートラルセンサ32は異常(センサの出力は誤まっている)と判定する。
次いで図6の処理を説明すると、S100において同様にエンジン回転数NEが前記したエンスト判定回転数Nes以上か否か、換言すればエンジン12がストールしていず、作動中か否か判断する。
S100で否定されてエンジンストールと判断されるときはS102に進み、図5フロー・チャートの処理と同様、判定タイマ(ダウンカウンタ)に所定値(規定時間に相当する値)をセットする。
一方、S100で肯定されるときはS104に進み、アクセルペダル36がオフされているか(全閉開度(第5しきい値)以下か)否かをアクセル開度センサ36aの出力から判断する。
S104で否定されるときはS102に進み、判定タイマに所定値をセットし直す一方、肯定されるときはS106に進み、クラッチペダル20が踏まれているか(クラッチ16が開放されているか)否かを同様にクラッチペダルスイッチ20aの出力から判断する。
S106で肯定されるときはS102に進み、判定タイマに所定値をセットし直す一方、否定されるときはS108に進み、車速Vがアイドル回転相当MAX車速Vim(第3しきい値)以上か否か判断する。
図7は車速Vに対するエンジン回転数NEの関係を速度段(変速ギヤ)ごとに示す説明図である。
同図に示す如く、アイドル回転相当MAX車速Vimは、最高速度段(6速)でも車両18がアイドル回転数、より具体的にはアイドル目標回転数Nidle+αのエンジン回転数である2000rpmで走行できる車速を意味し、具体的には65から70km/h程度の値に設定される。車速は速度段(ギヤ段)ごとに設けても良い。
尚、アイドル目標回転数Nidleは1500rpm付近に設定される。アイドル回転数自体は通例1000rpm以下であるが、冷間始動時などは上昇させられることから、この実施例では余裕を見て1500rpmに設定し、通常のアイドル回転数と異なることを示すためにアイドル「目標」回転数と呼ぶようにした。
S108で否定されるときはS102に進み、判定タイマに所定値をセットし直す一方、肯定されるときはS110に進み、エンジン回転数NEが前記したアイドル目標回転数Nidle+α(第4しきい値)以上か否か判断する。図7に示す如く、アイドル目標回転数Nidle+αは2000rpm程度に設定される。
S110で否定されるときはS102に進み、判定タイマに所定値をセットし直す一方、肯定されるときはインギヤ減速中と判断すると共に、クラッチ16と車両18とエンジン12が所定の第2の状態にあって判定条件が成立したと判断してS112に進み、判定タイマの値が零に達したか否か、換言すれば規定時間が経過したか否か、より具体的にはクラッチ16と車両18とエンジン12が所定の第2の状態にある判定条件が成立してから規定時間が経過したか否か判断する。これは誤判定を防止するための処理である。
S112で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、肯定されて規定時間が経過したと判断されるときはS114に進み、センサ出力がN(ニュートラル位置)を示しているか否か判断する。
S114で否定される(換言すればセンサ出力がインギヤを示す)ときはS116に進み、ニュートラルセンサ32は正常(センサの出力は正しい)と判定する。
他方、S114で肯定されるときはS118に進み、ニュートラルセンサ32は異常(センサの出力は誤まっている)と判定する。
ここでこの発明の課題を説明すると、ニュートラルセンサ32は出力電圧から図4に示す特性に従ってセンサ出力が判断されるが、ニュートラルセンサ32の製造バラツキやセンサ検出素子とシフト機構30のシフトアーム30bに形成されたターゲット30b2とのクリアランスの変化や経時変化などによってセンサ出力が異常(誤り)となることも生じ得る。この発明はそのようなニュートラルセンサ出力の正誤を、追加のセンサを必要とすることなく、既存の車両情報に基づいて精度良く判定することを課題とする。
その意図から、この実施例にあっては、クラッチ16と車両18とエンジン12が所定の第1の状態または第2の状態にあるとき、判定条件が成立したと判断し、それから規定時間が経過したと判断されるとき、ニュートラルセンサ32の出力が第1の状態または第2の状態に対応する出力であるか否か判別し、肯定されるときはニュートラルセンサ32の出力が正しいと判定する一方、肯定されないときは誤りと判定する如く構成した。
図5フロー・チャートに示す如く、第1の状態は、クラッチ16が締結され、車速Vが所定車速Vref(第1しきい値)以下で、かつエンジン回転数NEがエンスト判定回転数Nes(第2しきい値)以上の状態、即ち、停車中の状態である如く構成した。
図6フロー・チャートに示す如く、前記第2の状態はクラッチ16が締結され、車速Vがアイドル回転相当MAX車速Vim(第3しきい値)以上で、エンジン回転数NEがアイドル目標回転数Nidle+α(第4しきい値)以上かエンジンの回転数が第4しきい値以上で、かつアクセル開度が全閉開度(第5しきい値)以下の状態、即ち、走行中の状態である如く構成した。
以下、より具体的に説明する。
図8は図5フロー・チャートの処理、図9は図6フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
図8を参照して図5フロー・チャートの処理を説明すると、同図は車両18が停車していて変速機10が動作的にニュートラルであるときを所定の第1の状態とし、その状態にあるときに判定条件が成立したと判断し(時刻t1)、センサ出力がそれに対応する出力か否かを判別してセンサ出力の正誤を判定するようにした。
即ち、車両18が停止状態(車速Vが所定車速Vref以下)で、クラッチ締結でエンジン16がストールしていない(エンジン回転数NEがエンスト判定回転数Nes以上の状態(さらにはブレーキ操作がなされ、アクセル開度が全閉開度以下のとき)を所定の第1の状態とし、センサ出力がそれに対応してニュートラル位置を示す出力か否かで正誤を判定するようにした。
ただし、アイドルが不安定な領域が存在すると共に、エンジンストール時、エンジン回転数NEが零になるまではディレイがあるため、判定タイマを設けて規定時間(そのディレイに相当する)が経過する時刻t2まで、センサ出力の正誤の判定を保留するようにした。
次いで図9を参照して図6フロー・チャートの処理を説明すると、同図は車両18が走行中に変速機10が動作的にニュートラルあるいはインギヤであるときを所定の第2の状態とし、そのときに判定条件が成立したと判断し、センサ出力がそれに対応する出力か否かを判別してセンサ出力の正誤を判定するようにした。
即ち、アクセルペダル36が踏まれず(アクセル開度が全閉開度以下)、クラッチ16が締結された状態で、車速Vがアイドル回転相当MAX車速Vim以上で、エンジン回転数NEがアイドル目標回転数Nidle+α以上の状態を所定の第2の状態とし、その状態にあるとき(時刻t1)、センサ出力がそれに対応してニュートラル位置を示す出力か否かで正誤を判定するようにした。
より具体的には、図6フロー・チャートの処理においてはアクセルペダル36が踏まれず、クラッチ16が締結された状態でのエンジン回転数NEに応じてあるべきセンサ出力を以下のように設定し、それに一致するかどうかで正誤を判定するようにした。
エンジン回転数NE≧Nidle+α:非ニュートラル位置(インギヤ)
即ち、図7においてエンジン回転数NEがアイドル目標回転数Nidle+α以上で車速Vがアイドル回転相当MAX車速Vim以上の領域をインギヤ検知領域(センサ出力がニュートラル位置ではないことを示すべき領域)とした。
ただし、アクセルペダル36が全閉にされたり、クラッチ16が締結されたりした直後にエンジン回転数NEの変動が大きくなる場合もあるため、同様に判定タイマを設けて規定時間(エンジン回転数NEの変動が収束するまでの時間に相当する)が経過する時刻t2まで、センサ出力の正誤の判定を保留するようにした。
上記した如く、この実施例にあっては、車両18に搭載されるエンジン12の出力を変速して車輪14に伝達すると共に、(前進n速(n≧2。具体的にはn=6)の)変速ギヤ10e,10f,..を有する変速機10と、前記エンジン12の駆動軸12aと変速機の間に介挿され、運転者の操作に応じて前記エンジンの出力を前記変速機に伝達する機械式摩擦クラッチ16と、前記変速ギヤのニュートラル位置を示す出力を生じるニュートラルセンサ32とを備えた変速機用ニュートラルセンサの出力正誤判定装置において、前記クラッチ16と車両18とエンジン12が所定の第1の状態または第2の状態にあるとき、判定条件が成立したと判断する判定条件成立判断手段(ECU50,S10からS16,S100からS110)と、前記判定条件が成立したと判断されるとき、前記判定条件の成立から規定時間(判定タイマ値相当時間)が経過したか否か判断する時間経過判断手段(ECU50,S12,S18,S102,S112)と、前記規定時間が経過したと判断されるとき、前記ニュートラルセンサの出力が前記第1の状態または第2の状態に対応する出力であるか否か判別し、前記第1の状態または第2の状態に対応する出力であると判別されるときは前記ニュートラルセンサの出力が正しいと判定する一方、前記第1の状態または第2の状態に対応する出力であると判別されないときは前記ニュートラルセンサの出力が誤りと判定するセンサ出力判定手段(ECU50,S22,S24,S116,S118)とを備え、前記第2の状態は前記クラッチ16が締結され(S106)、前記車両18の走行速度(車速)Vが第3しきい値(Vim)以上で(S108)、前記エンジン12の回転数NEが第4しきい値(Nidle+α)以上で(S110)、かつアクセルペダルの開度(アクセル開度)が第5しきい値(全閉開度)以下の状態であると共に(S104)、前記センサ出力判定手段は、前記ニュートラルセンサ32の出力が前記変速ギヤはニュートラル位置にないことを示すとき、前記第2の状態に対応する出力であると判別する(S116)如く構成したので、機械式摩擦クラッチ16と車両18とエンジン12の状態などの既存の車両情報から総合的に判定することで、追加のセンサを必要とすることなく、センサ出力の正誤を精度良く判定することができる。
これにより、ニュートラルセンサの故障判定を行うためのセンサなどの専用部品を必要とすることなく、運転者の予期しない走行を招いたりすることがない。また、第2の状態はクラッチ16が締結され、車両18の走行速度(車速)Vが第3しきい値(Vim)以上で、エンジン12の回転数NEが第4しきい値(Nidle+α)以上で、かつアクセルペダルの開度(アクセル開度)が第5しきい値(全閉開度)以下の状態であると共に、センサ出力判定手段は、ニュートラルセンサ32の出力が変速ギヤはニュートラル位置にないことを示すとき、第2の状態に対応する出力であると判別する如く構成したので、さらに判定パラメータを詳細に設定することで、同様にセンサ出力の正誤を一層精度良く判定することができる。
また、前記規定時間は、前記エンジン12の回転数NEの変動を収束させるに足る値である如く構成したしたので、判定に際してエンジン12の回転数NEの変動を避けることで、同様にセンサ出力の正誤を一層精度良く判定することができる。
また、前記第3しきい値(Vim)は、前記変速ギヤが既定の速度段、より具体的には前記n速のうちの既定の速度段、具体的には最高速度段、より具体的には6速にあるときでも車両18がアイドル回転数、より具体的にはアイドル目標回転数Nidle+αのエンジン回転数である2000rpmで走行できる値以上に設定される如く構成したので、判定に際して低車速においてエンジン回転数NEがアイドル回転数、より具体的にはアイドル目標回転数Nidleに持ち上げられる場合を避けることで、同様にセンサ出力の正誤を一層精度良く判定することができる。また、車両18に搭載されるエンジン12の出力を変速して車輪14に伝達すると共に、(前進n速(n≧2。具体的にはn=6)の)変速ギヤ10e,10f,..を有する変速機10と、前記エンジン12の駆動軸12aと変速機の間に介挿され、運転者の操作に応じて前記エンジンの出力を前記変速機に伝達する機械式摩擦クラッチ16と、前記変速ギヤのニュートラル位置を示す出力を生じるニュートラルセンサ32とを備えた変速機用ニュートラルセンサの出力正誤判定装置において、前記クラッチ16と車両18とエンジン12が所定の第1の状態にあるとき、判定条件が成立したと判断する判定条件成立判断手段(ECU50,S10からS16,S100からS110)と、前記判定条件が成立したと判断されるとき、前記判定条件の成立から規定時間(判定タイマ値相当時間)が経過したか否か判断する時間経過判断手段(ECU50,S12,S18,S102,S112)と、前記規定時間が経過したと判断されるとき、前記ニュートラルセンサの出力が前記第1の状態に対応する出力であるか否か判別し、前記第1の状態に対応する出力であると判別されるときは前記ニュートラルセンサの出力が正しいと判定する一方、前記第1の状態に対応する出力であると判別されないときは前記ニュートラルセンサの出力が誤りと判定するセンサ出力判定手段(ECU50,S22,S24,S116,S118)とを備え、前記第1の状態は前記クラッチ16が締結され(S14)、前記車両18の走行速度(車速)Vが零あるいはその近傍に設定される第1しきい値(Vref)以下で(S16)、かつ前記エンジン12の回転数NEが第2しきい値(エンスト判定回転数Nes)以上の状態であると共に(S10)、前記センサ出力判定手段は、前記ニュートラルセンサの出力が前記変速ギヤはニュートラル位置にあることを示すとき、前記第1の状態に対応する出力であると判別する(S22)如く構成したので、判定パラメータを詳細に設定することで、センサ出力の正誤を一層精度良く判定することができる。さらに、前記規定時間は、前記エンジン12にストールが発生したか否かの判別を可能にするに足りる値に設定される如く構成したので、エンジンストールの有無を判別することで、同様にセンサ出力の正誤を一層精度良く判定することができる。
尚、この明細書において、変速機10は、機械式摩擦クラッチ16を備えれば足りることから、手動変速機に限定されるものではなく、運転者によるクラッチペダル操作に応じてアクチュエータの動作を制御して機械式摩擦クラッチ16を断接するようにしたCBW(Clutch by Wire)型などの変速機であっても良い。
また、ニュートラルセンサ32はホール効果を応用するホールセンサからなるように構成したが、それに限られるものではなく、他の磁電変換素子からなるセンサであっても良い。