JP5654978B2 - 無人走行用移動体 - Google Patents

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Description

本発明は、災害地などの障害物の多い不整地を走行することに適したクローラ式走行用移動体に関する。特に、震災などの災害地、倒壊したビルや土砂崩壊地の調査や探索活動を行う無人走行用移動体に関する。
被災直後の不安定で予測不能な状態の被災地の調査や探索を行う装置として、クローラ式走行装置が着目されている。クローラ式走行装置は、土木や建築用作業機械に用いられている。砂泥地や凸凹の多い土地の走行に伴い砂泥詰まり対策や走破性を改善した装置の開発が進められている。
例えば、特許文献1(特開平11−301534号公報)には、クローラを左右に配置し、クローラ走行装置の上部に本体部分を搭載し、傾斜地センサーを備えた傾斜地走行安定化装置(特許文献1の図1等参照)が開示されている。
特許文献2(特開2008−143354号公報)には、本体部分をクローラ走行装置の上部に搭載し、前後に延出された段差越え用の揺動できるフリッパーを設けたクローラ式走行車が開示(特許文献2の図1等参照)されている。
特許文献3(特開2007−237991号公報)には、従動クローラと三角フレームを備えたクローラを屈曲自由に連結し、三角形のクローラによって障害物を乗り越えることができる装置が開示されている。
特許文献4(特開2004−74980号公報)には、本体の下方であって前後に設けられた揺動可能なクローラを用いて段差のある起伏を走行できるクローラ式走行装置が開示されている。
特許文献5(特開2009−241246号公報)には、主推進力発生部、可動腕部、測距装置を有するクローラ型走行装置であって、測距装置を用いることで、地形に応じて可動腕を動かし、なお且つ転倒安定性を考慮に入れながら、移動体が半自律的に移動することにより、操縦者は移動体の移動方向を指示するのみで、移動体がその方向の不整地に応じた不整地移動機構の安全な動作を自律的に生成することができるクローラ型走行装置が開示されている。
特開平11−301534号公報 特開2008−143354号公報 特開2007−237991号公報 特開2004−074980号公報 特開2009−241246号公報
本発明者は、不安定で予測困難な被災地の走行に適したクローラ式走行装置の研究開発を継続して行っている。被災地の探索や調査においては、瓦礫や砂泥などによる障害や起伏の多い状態の表面であることに加え、放射能汚染、火災や都市ガスや火山性ガスなどの危険性があるので無人走行が求められる。このような被災地の環境下では、走行装置の故障や本体機器が損傷したときに、人が接近して修理することが困難であるので、故障や停止することなく走行できることが重要である。本発明は、被災地の調査に適した無人走行用の移動体を開発することを目的とする。
本発明は、走行用移動体の制御機器やセンサーの機器類を収納した部分をクローラベルトで覆い、機器類への衝撃損傷を回避して、安全な走行用移動体構成としたことに基づく発明である。
本発明は、次の構成を要旨とするものである。
1.機体と該機体を覆う走行用クローラから構成される無人走行用の移動体であって、
機体前後には、中央にセンターフレーム、両側部にサイドフレームを備えており、
センターフレームと両サイドフレームの間に、それぞれ外周にプーリを備えたホイールが、回転可能な支持軸に嵌合されて設けられており、
走行用クローラは、機体の前後に設けた前記プーリ間にクローラベルトが掛け回され、モータを駆動源とし、
クローラベルトは、2枚がセンターフレームの左右に配置され、センターフレームの幅を除き機体の全幅を覆い、
機体の前後左右のサイドフレームのそれぞれの外方には、それぞれ揺動可能な腕状のサブクローラユニットを設け、
各サブクローラユニットは、揺動軸側に配置される基端プーリと、揺動端側に配置される先端プーリと、両プーリを回転可能に支持する揺動腕と、両プーリに掛け回されるサブクローラベルトとを有することを特徴とする無人走行用移動体。
2.サブクローラユニットの先端プーリの径を基端プーリの径よりも大きくしたことを特徴とする1.に記載の無人走行用移動体。
3.基端プーリは、走行用クローラのプーリと同一の外径を有し、走行用クローラのホイールの支持軸と一体に回転することを特徴とする1.又は2.に記載の無人走行用移動体。
4.それぞれのサイドフレームには、サブクローラユニットの揺動腕を揺動させる揺動モータがそれぞれ独立して設けられ、独立して制御されることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の無人走行用移動体。
5.揺動腕は、正逆方向に回転可能であることを特徴とする4.記載の無人走行用移動体。
6.揺動腕の揺動端側には、姿勢安定用重錘が設けられていることを特徴とする1.〜5.のいずれかに記載の無人走行用移動体。
7.姿勢安定用重錘が、先端プーリの内周に収容可能に設けられ、先端プーリと一体に固定され、あるいは、先端プーリそのものであることを特徴とする6.に記載の無人走行用移動体。
8.被災地あるいは自然災害地の調査用移動体であることを特徴とする1.〜7.のいずれかに記載の無人走行用移動体。
9.調査移動速度が人間の歩行速度に設定されていることを特徴とする8.に記載の無人走行用移動体。
10.原子力発電所施設用であることを特徴とする1.〜9.のいずれかに記載の無人走行用移動体。
1.本発明の無人走行用移動体は、機器類を収納した機体の上下面及び前後がクローラベルトで覆われているので、機体や収納した機器類が直接的な損傷から保護される。センターフレームが中央部に設けられているので観測や通信用等の外部に取り付ける機器類の付設に利用でき、付設される外部機器が中央部から上部に位置して瓦礫との接触が抑制される。クローラベルトの幅が広いので、クローラベルトの脱輪が抑制される。モータ駆動であるので、不燃ガスや可燃ガス、水溜まりのある環境であっても、走行することができる。また、モータは静かであるので、音による調査にも適している。腕状のサブクローラユニットを装着することにより、不整地走行や段差昇降移動が容易となり、活動を容易にすることができる。腕状のサブクローラユニットを上方に持ちあげることで、狭い場所でも旋回することができる。
2.サブクローラベルトを駆動するためのモータを別途備える必要がない。
3.先端側プーリの径を大きくすることにより、階段状の段差面ののぼりの際に掛かりを良くすることができる。また、下り方向についても、大きな径のプーリは設置を早くすることができ、落下ショックを小さくすることができる。先端側プーリに錘を追加するなどして重量を増加することにより、さらに階段などの斜面に対して摩擦力を高めて、斜面操行性能を高めることができる。
4.前後左右の腕状のサブクローラユニットを任意の姿勢に揺動させることができ、不整地等の走破性が向上するとともに、路面の傾斜等があっても機体を任意の姿勢に保つことが可能となる。
5.腕状のサブクローラユニットを前後方向に伸ばすことで、全体の重心を下げることが可能となり、不整地走行や段差昇降移動の際の安定性が向上する。また、機体の重量を増加させることなく重心を下げることができるため、機体下面とクローラベルトとの摺動抵抗の増加を抑制することができる。
6.揺動腕は前後方向に回転させることができる。すべり易い砂地、ぬかるむ泥地、急傾斜地では、揺動腕をクロール泳ぎのように回転させることにより走破することができる。また、陥没地に落ち込んだ場合、揺動腕を回転して振回すことにより、脱出の手がかりを探すことができる。
7.サブクローラユニットの外形を大きくすることなく姿勢安定用重錘を備えることが可能となる。
8.人が立ち入ることが困難な被災地、倒壊建造物内部、原子力施設や火山などの調査、観測用の無人走行用の移動体として適している。
9.本移動体は、全体として機器の損傷を抑制でき、安定に無人で被災地を走行できる移動体である。
本発明の無人走行用移動体の例を示す図。 本発明の無人走行用移動体のクローラベルト及びサブクローラユニットを外した状態を示す図。 機体の底面及び側面の説明図。 クローラベルトの説明図。 駆動側機構の概略を示す図。 駆動側機構のサブクローラを取り付けた状態の断面図。 従動側機構のサブクローラを取り付けた状態の断面図。 支持軸とホイールの取付部の説明図。 サブクローラユニットの説明図。
本発明は、基本的には車両全体がクローラベルトに覆われた無人走行用移動体である。制御機器、駆動源や調査用機器などが装備された制御機器類等がクローラベルトで覆われていて、外部に直接露出しない構成である。
特に、市街地や山間部などで発生する地震などの大規模な被災地の屋外や損壊した建物内部など被災直後の不安定な足場と危険な環境下での探査や調査に用いられる無人操作に適した走行用移動体である。本発明は、走行用移動体全体がクローラに覆われて、制御機器等が外部に露出する部分が殆ど無く、保護されていて、低重心である。このため、制御機器類の安全性は高く、転倒し難い構造であり、転倒した場合でも、クローラは接地状態を維持して、移動可能である。
左右に設けられたクローラは、幅が広いので、クローラが脱輪する危険性は小さい。揺動可能に設けられたサブクローラユニットは、段差昇降に有効に機能するので、被災地の階段や瓦礫、段差の昇降が容易である。そして、走行用移動体が横転した場合でも、サブクローラユニットを個別に揺動制御することにより、正常姿勢に復帰することができる。
本発明の走行用移動体は、電動モータ駆動であるので静かである。このため、音を調査対象とすることができる。モータ用電源を機体の側部に設け、電源から容易に放熱でき、制御機器と分離収納しているので、収納機器を高温障害から防御している。モータ駆動は、可燃ガスや不燃ガスの影響を受けることなく活動することができる。
外部に露出する必要がある、集音マイクや、カメラのレンズ部、送受信用アンテナ等の調査機器のセンサー感知部等は中央部に設けた機器付設用のセンターフレームに取り付けることができる。感知部等はセンター部分に付設されるので、衝突などの障害リスクが小さい。
図面を参照して、本走行移動体の例を説明する。
(1)全体構造
図1〜3に示すように、走行用移動体1は、機体2と機体2の前後に設けられたプーリ7にクローラベルト53が掛け回され左右に配置された走行用クローラ5を備えている。左側のクローラL51と右側のクローラR52は、センターフレーム41によって、左右に分割されている。
図3に示すように機体2の下面側にはクローラベルト53の摺動面である摺接部材6が設けられている。一般のクローラ走行装置に用いられている中間アイドラーであるプーリは、あっても良いが本走行用移動体では用いない方が好ましい。可動部分を設けると、故障の要素となるので、少なくする。
本走行用移動体1には、前後左右の4隅にサブクローラユニット8を備えている。図示(図1)は、左側の前後に設けられているサブクローラユニット8a、8bのみを概略で表し、右側は省略している。
走行用移動体1は、従動プーリ72側を先頭側とし、駆動プーリ71を後ろ側として基本的には走行するが、被災地では障害物が多いので、前進、後進は自由に行える。左右の走行用クローラ51、52は別々に制動できる。また、4つのサブクローラユニット8は、サブクローラベルト83が回転でき、また全体が腕状に旋回揺動可能であり、かつ、個別に制動できるように構成されている。機体2の側部はサイド空間32が設けられており、電源となる電池などを収納する空間とする。サイドに配置することにより、放熱が容易であり、かつ、電池の保護と交換の利便性を確保する構成としている。
図1に開示された走行用移動体1は、主となる2つの走行用クローラ51、52と4つのサブクローラユニット8とからなる6つのクローラを個別に制御することにより、被災地の走行、昇降を行うことができる。
左右のクローラベルト53は、センターフレーム41の幅を除き機体2の全幅を覆い、機体2への外部からの干渉を抑制するとともに、センターフレーム41がクローラベルト53よりも一段低い位置に設けられることにより、センターフレーム41に直接あるいは間接的に取り付けられたセンサー等の感知部の防御性能を向上させることができる。
また、左右のクローラベルト53、53は、センターフレーム41の幅を除き機体2の全幅を覆う幅の広いベルトである。クローラベルト53の幅が広いので、幅方向に傾斜した地形や、うねった地形を走行しても、横ズレに対する抵抗が大きくなって、クローラベルト53がプーリ7から外れてしまう脱輪を防止する効果が大きい。
(2)機体構造
クローラベルト53およびサブクローラユニット8を取り外した主要構成を図2に示す。
機体2の前後には、中央に設けられたセンターフレーム41と両側部に設けられたサイドフレーム42の間に回転可能にプーリ7が取り付けられ、機体2の側面には外方に開放されているサイド収納部3を設けている。機体2は、4周の側面板24、前後面板25、26と底面板23、上面側は開閉可能かつ密封可能な上面板22によって、内側の中央収納部21が形成される。中央収納部21には、走行用移動体1の制御機器や調査用のセンサー機器などが収納される。中央収納部21は、閉鎖空間であり、前後にプーリ7が配置され、更に側面を除く周面がクローラベルト53によって覆われているので、外部からの衝撃から保護される構成である。中央収納部は、上面板を開閉して、電子機器などを配置するが、密閉性を確保するために、上面板と中央収納部21は、側面板24、前面板25、後面板26の端部に図2(e)(f)に示すような凹凸を設けて密着性を高めている。
前後に設けたセンターフレーム41にはセンターツールバーを設ける。センターツールバーはセンサーなどの機器を装着する基台となる。センターツールバーの例は、図2(c)(g)に示される。図2(c)の例は、前後に装着部27a、27aを設けた棒状体のセンターツールバー27である。図2(g)の例は、センターフレームに取り付ける装着脚部29a、29bを設け、その上にバー28を掛け渡す構造である。脚部を設けることにより、上面板22の開閉を自由に行うことができる。
機体2の内部は、さらに壁を設けて区分することもできる。壁による区分によって、強度の向上、あるいは、収納機器の防御性をコントロールできる。
前後のプーリ7は、機体2前面板25あるいは後面板26に設けたセンターフレーム41と機体の側部から延出してサイドフレーム42の間に設けた軸73に、後述するホイール74を介して装着される。
機体2の側面には、外面に開放可能なサイド収納部3を形成して、電池などの収納部とする。サイド収納部3は、側部上面板33、側部底面板34、側部前面板35、側部後面板36によって形成されている。側部上面板33は、メッシュや複数の孔、あるいは放熱フィン等を設けたサイド上面パネル31を設けて、放熱量を確保することが好ましい。移動体の作業環境条件により、側部外面に保護板やガード等を設けて内部を保護したり、側面カバー板を設けてサイド収納部3を閉鎖空間とし密閉性を高めてもよい。
本発明では、密閉された中央収納部に配置された電子機器の高温化対策を施している。中央収納部21には、制御やセンサーなどの電子機器が収納されており、水や汚染物質が侵入しないように密閉構造となっている。本願発明では、中央収納部を形成する筐体に放熱フィンなどの放熱機構を設ける。上面板22、底面板23、側面板24、前面板25、後面板26の各構成板に図2(d)に示す凹凸フィンを設けることができる。中央収納部の上下を移動するクローラベルトおよび前後で回転するプーリの動きによって、放射された熱は滞留すること無く排出されるので、密閉された中央収納部の高温化を効率的に抑制できる。さらに、サイド収納部の上面も放熱機能を持たせることにより、より放熱を向上させることができる。
(3)センターフレーム
センターフレーム41は図1、図2に示されるように機体2の前面板25および後面板26の幅方向中央部に配置され、プーリ7の支持部材として形成されるとともに、その上面が任意の機材を直接あるいは間接的に固定可能な取付基部として形成されている。該取付基部は、平坦面からなり複数の固定用ボルト穴を有しており、その左右にクローラベルト53が配置されているので、障害物に直接接触し難い。また、センターフレーム41の上面の取付基部は、クローラベルト53の表面と同程度の高さ、あるいは高低いずれも設定することができる。また、一部を低く、その他をやや高く設定することも可能である。低くした場合には、クローラベルト53による保護機能が高まる。
(4)走行用クローラ
本発明に用いられるクローラ式走行装置の基本構造は、機体2の前後に設けたプーリ7、7にクローラベルト53、53を掛け回して、駆動プーリ71を駆動することにより、クローラベルト53、53を回動させて走行する構造である。クローラベルト53、53は機体の左右に設ける。
図3に示すように、機体下部にクローラベルト53を受ける機構として、摺接部材6を設ける。摺接部材6は、クローラベルト53が直接滑り接触する摺接板61と、転がり接触する摺接ローラ62から構成されている。
摺接板61を抵抗が小さく強度の高い炭素繊維強化材料で形成することで、凹凸な接地面から受ける不規則な接地抵抗が発生してもクローラベルト53との摩擦力の変動が小さく、走破性が向上する。また、摺接板61は可動部がなく、従来の中間プーリを設けたものに比べて、故障の原因が少なくなるので好ましい。また、低重心にすることができ、車体を安定させる上でも有利である。車体機枠となる機体2はアルミ合金やカーボンファイバー強化プラスチックなど軽量素材を用いる。走行スピードは人間の歩行程度である。
また、摺接部材6を、クローラベルト53の摺動方向の中央でクローラベルト53側に凸となるように形成することで、左右のクローラベルト53を異なる速度、あるいは、異なる回転方向で駆動して、無人走行用移動体1の旋回やその場での回転動作を行う際の走行抵抗が減少し、運動性が向上する。
さらに、幅方向の両側部に、複数のローラを前後方向に中央が凸となるように配した摺接ローラ62を設けることで、クローラベルト53との摩擦係数を小さくすることができ運動性がさらに向上する。
クローラベルト53は、ゴム製あるいは金属製が用いられるが、ゴム製ベルトが好ましい。ゴム製ベルトはプーリ7へのダメージを小さくできるので適している。また、機体2の下面に設けられた摺接部材6に対する摺擦摩耗を抑えることができる。クローラベルト53の幅は広い方が適している。凸凹が激しい被災地では、クローラベルト53の部分的な接地によって機体2を支持できるようにするために幅広が適している。また、接地圧を小さくすることができ、鋭利なコンクリート破片などに接触して、アルミ合金製機体が損傷しないような機体保護機能も果たす。
また、幅の広さはクローラベルト53の脱輪防止にも有効であるとともに、図4に示すように、クローラベルト53の外周側には走行時のスリップを防止するための走行面凸条55が設けられ、内周側にはプーリ7とのスリップを防止するための内周面凸条56が設けられている。そして、クローラベルト53の内周に、摺接ローラ62が接する幅で内周面凸状56を一部省略して構成する溝部54を設けることで、摺接ローラ62がクローラベルト53の幅方向のガイドとしても機能し、より有効である。
さらに、クローラベルト53の溝部54は、摺接ローラ62の前後において溝部54に嵌合する幅の帯状部57を備えて摺接させることで、摺接面積を大きくして接地圧を小さくすることができるとともに、クローラベルト53のガイド機能がより強化される。
以上述べた左右に設けられる走行用クローラ51、52の他に、段差乗り越え用にサブクローラユニット8を設ける。このサブクローラユニット8に対して前記の車体機枠の前後に設けられたプーリ7に掛け回された走行用クローラ5を主クローラユニットと称する場合がある。
(5)走行用クローラ用プーリ
クローラベルト53を巻き掛けるプーリ7は、センターフレーム41とサイドフレーム42間に回転可能に装着される。本発明ではホイール74を介在させて、このホイール74にプーリ7を装着することが好ましい。
プーリ7は、金属製、ゴム製、これらを組み合わせた小巾プーリを用いることができる。軸着されるプーリ7は、1〜複数個である。複数個用いる場合は、金属製プーリを混用することができる。
本実施例では、図2、図3に示すように、プーリ7は、3つの小巾プーリ77a、77b、77cによって、構成されている。それぞれのプーリ77a、77b、77cはホイール74に装着されている。小巾プーリ77a、77bはゴム製プーリである。ゴム製プーリの表面には、多数の溝が形成されている。
センターフレーム41側に配置されたプーリ77cは金属製のプーリであり、センターフレーム41側にクローラベルト53をガイドするためのフランジが形成されている。金属製プーリ77cは、前後のプーリの間隔を一定に保ちクローラベルト53に適度の緊張が維持でき、クローラベルト53に駆動力を確実に伝達する機能を主に分担する。ゴム製プーリ77a、77bは、表面に多数の溝が形成されており、クローラベルト53の内面との係合及び緩衝性能の向上や、クローラベルト53とプーリ7の間に噛み込まれた砂泥の排出の機能を果たしている。小巾にすることにより、噛み込まれた砂泥の排出をスムーズに行うことができる。また、軽量化にも寄与する。
ゴム製プーリ77a、77bは、金属製ホイール74にゴム体を外挿して形成することが好ましい。金属製ホイール74でゴムを支持することができるので、ゴム体を安定させることが容易となる。また、支持軸73に装着する金属製ホイール74を太くすることによって、電動モータ9を内装するスペースを確保できる。
ゴム製プーリ77a、77bの表面には、異物除去用の溝の外、クローラベルト53の係合およびすべり防止のための凹凸を形成することができる。ゴム製プーリ77a、77bはコンクリート塊などに衝突した場合の衝撃緩和機能も果たす。段差の昇降や滑落などの衝撃などによって、機体2や電動モータ9などの機器、あるいは搭載される様々な計測機器、制御機器等が損傷することを抑制することができる。
図5、図6に示すように、駆動側のホイール74の内部にはモータ保持ケース93に収納された電動モータ9を内装し、いわゆるホイールインモータの構造が採用される。モータ保持ケース93は、センターフレーム41の左右に固定され、それぞれホイール74に内挿されて電動モータ9によりホイール74を駆動する。モータ保持ケース93の外周部には放熱フィン94が設けられ、電動モータ9の発熱を放熱する。
電動モータ9の出力軸91には衝撃吸収部材76を介して支持軸73が取り付けられてカップリング92を構成し、該支持軸73の外周に設けられた軸取付部75でホイール74を嵌合支持するとともに、軸取付部75の内周がモータ保持ケース93の外周部にサイド軸受78を介して回転可能に支持されている。
ホイール74のセンターフレーム41側の端部は金属製プーリ77cに固定され、該金属製プーリ77cの内周部がモータ保持ケース93の外周部に設けられたセンター側軸受79により回転可能に支持されている。
なお、電動モータ9の出力軸91が延長されて支持軸73を兼ねるものであっても良い。
従動側のホイール74は、図7に示すように、サイドフレーム42側は、サイドフレーム42にサイドフレーム軸受78bを介して回転可能に支持された支持軸73に、軸取付部材75を介して固定されるとともに、センターフレーム41側は金属製プーリ77cに固定されている。金属製プーリ77cは、センターフレーム41に固定されたセンター側支持軸79bにセンター側軸受79を介して回転可能に支持される。
駆動は一般に後方プーリが分担するが、前方プーリにも駆動機構を持たせて、駆動出力を大きくすること、あるいは前進後退によって使い分けることも可能である。
衝撃吸収部材76の構造を、図8に示す。衝撃吸収部材76は支持軸73に固定される(支持軸73自体であっても良い)外周部材76aと電動モータ9の出力軸91が内挿される内周部材76cと、緩衝部材76bとからなる。内周部材76cの外周および外周部材76aの内周は、ともに矩形で、外周部材76aの内周の矩形の1辺の長さが内周部材76cの外周の矩形の対角線の長さより短くなるように形成されている。そして、内周が内周部材76cの外周に密に嵌合する矩形で、外周が外周部材76aの内周に密に嵌合する矩形に形成された矩形リング状の緩衝部材76bを介在させて、外周部材76aと内周部材76cが嵌合されている。
このことで、電動モータ9の出力軸91が内挿される内周部材76cに伝わる衝撃を吸収することができるとともに、路面状況が悪くクローラベルト53の駆動力に大きな変動が発生した場合でもその回転方向の衝撃を吸収することができ、スリップや電動モータ9の加熱等を抑制することができる。
(6)サブクローラユニット
サブクローラユニット8は、図1、図9(a)乃至(e)に示すように、揺動軸側に配置される基端プーリ82と、揺動端側に配置される先端プーリ81と、両プーリ81、82を回転可能に支持する揺動腕86と、両プーリ81、82に掛け回されるサブクローラベルト83とを有しており、走行車体本体の側方に腕状に設けられる。左右前後の位置に1〜4つ設けることが可能である。サブクローラユニット8は、目的とする使用場所の起伏や段差に応じて着脱自在とする。
基端プーリ82は、図6,図7、図9に示すように、走行用クローラ5の支持軸73に取り付けられて回転するため、走行用クローラ5のプーリ7と同一の外径を有する。また、先端プーリ81の径は、基端プーリ82の径より大きく設定することによって段差等の走破性が向上する。先端側プーリの径を大きくすることにより、階段状の段差面ののぼりの際に掛かりを良くすることができる。また、下り方向についても、大きな径のプーリは着地を早くすることができ、落下ショックを小さくすることができる。先端側プーリに錘を追加するなどして重量を増加することにより、さらに階段などの斜面に対して摩擦力を高めて、斜面操行性能を高めることができる。緩傾斜地では、先端プーリ81と基端プーリ82は同径とすることができることは言うまでもない。
サブクローラユニット8は、走行用クローラ5の支持軸73を中心として揺動腕86が揺動可能に構成されており、段差の高さに応じて、揺動可能とする。揺動範囲は、360°回転可能として、車体本体側部に沿わせて、車体から前後に飛び出さない待機姿勢や、下方に傾斜させて接地した4つのサブクローラユニット8を使用して走行をすることも可能である。また、4つのサブクローラは、前後転方向に回転自由であって、軟弱地面や急傾斜面では、旋回走行することが可能である。また、凹地から脱出するときにも、ランダムに回転・揺動することにより手がかりを探る手段として有効である。
図1には左側の前後に配置された、サブクローラ8a、8bを示している。右側にも同様に配置されている。図1、図3、図6、図7に示すように、サイドフレーム42に設けられた揺動駆動プーリ84と走行用クローラ5の支持軸73に揺動プーリ軸受89を介して回転可能に支持された揺動プーリ87間に揺動駆動ベルト85が掛け回され、揺動プーリ87に揺動腕86が固定されることによって、サブクローラ8が揺動駆動されるように構成されている。揺動駆動プーリ84は、サイドフレーム42に設けられた揺動モータ(図示せず)によって駆動される。
したがって、本例では、メインの駆動用に2つの電動モータ9と、サブクローラ揺動用に4つの揺動モータの6個のモータが少なくとも駆動源として配置されている。
先端プーリ81の内周部には、姿勢安定用重錘81bが設けられており、サブクローラユニット8を前後方向に伸ばすことで、全体の重心を下げることが可能となり、不整地走行や段差昇降移動の際の安定性が向上する。また、機体2の重量を増加させることなく重心を下げることができるため、機体2下面とクローラベルト53との摺動抵抗の増加を抑制することができる。姿勢安定用重錘81bは先端プーリ81と一体に構成されていても良い。
また、図9に示すように、内側カバー86bおよび外側カバー86cを設けることで、基端プーリ82および先端プーリ81とサブクローラベルト83の間に異物等が噛み込むことが防止される。さらに、内側カバー86bと外側カバー86cの間にサブクローラベルト83の内周面に摺接するベルトガイド83bを設けることで、サブクローラベルト83のたるみが防止され、走破性が向上する。
なお、基端プーリ82と走行用クローラ5の支持軸73の接続部を、前述した支持軸73と電動モータ9の出力軸91の構造と同様にして衝撃吸収部材76を介して取り付けても良い。
(7)駆動源について
本発明の駆動源は、全て電動モータにより駆動するのが適している。可燃性ガスが流出している可能性があったり、酸欠の可能性がある状態の空間では内燃機関を使用することはできない。モータは、ホイールインモータの構造を採用することができる。水溜まりも想定されるので、ホイールインモータ構造は水密状態でも駆動できるので適している。
また、調査対象として音やガスの種類や濃度が用いられる場合は、内燃機関等が発生する騒音と排気ガスは測定の弊害となるので、不適切である。
駆動用のモータは、前述のように主クローラユニットの駆動用とサブクローラ用のものが配置され、6個以上設けられる。
(8)操縦性能
本発明のクローラ式走行装置は、被災地の探査や調査用の無人走行を想定している。操縦は、無人で遠隔操縦する。不安定な地上面走行は、一部分でもクローラが接地した状態で駆動させて、姿勢を変化させて操作・操縦して、脱出と移動を行いつつ、探査や調査を行う。
移動スピードは、人間の歩行スピードである0.5〜1.7m/秒程度に設計する。遠隔操縦によって、人間が目視しあるいはディスプレイを見て、操縦することが多くなる被災現場では、人間の歩行速度である1.2m/秒以内(時速4Km程度)で十分である。
本発明のクローラ式走行装置は、土木・建設機械などと比べて低速で使用されることを想定しているので、ゴム製プーリが衝突などの押圧を受けて、変形しても、十分な駆動推進力を得ることができる。また、低速に加えて幅広のクローラベルトを採用することにより、脱輪などの障害を回避することができる。
本発明の無人走行用移動体は、震災、洪水、地滑り、火山などの被災地や倒壊した建物内部などの調査や探査用の走行用移動体として利用できる。低重心で、クローラベルトで全体が覆われているので、障害に強く、瓦礫や段差の多い地形において、移動性に優れている。また、センサーなどの機能をセンターに集中し、外面に飛び出さないように、安定して取り付けることが可能である。
1・・・走行用移動体
2・・・機体
21・・・中央収納部
22・・・上面板
23・・・底面板
24・・・側面板
25・・・前面板
26・・・後面板
27・・・センターツールバー
27a・・・装着部
28・・・バー
29a、29b・・・装着用脚部

3・・・サイド収納部
31・・・サイド上面パネル
32・・・サイド空間
33・・・側部上面板
34・・・側部底面板
35・・・側部前面板
36・・・側部後面板

41・・・センターフレーム
42・・・サイドフレーム
43a・・・下面前方摺擦部材
43b・・・下面後方摺擦部材
44・・・下面中央摺擦部材
45・・・機材取付ベース部材
46・・・機材載置部

5・・・走行用クローラ
51・・・走行用クローラL
52・・・走行用クローラR
53・・・クローラベルト
54・・・溝部
55・・・走行面凸条
56・・・内周面凸条
57・・・帯状部

6・・・摺接部材
61・・・摺接板
62・・・摺接ローラ
63・・・帯状部

7・・・プーリ
71・・・駆動プーリ
72・・・従動プーリ
73・・・支持軸
74・・・ホイール
75・・・軸取付部
76・・・衝撃吸収部材
76a・・・外周部材
76b・・・緩衝部材
76c・・・内周部材
77・・・小巾プーリ
77a・・・小巾ゴム製プーリ
77b・・・小巾ゴム製プーリ
77c・・・小巾金属製プーリ
78・・・サイド側軸受
78b・・・サイドフレーム軸受
79・・・センター側軸受
79b・・・センター側支持軸

8・・・サブクローラユニット
8a・・・サブクローラLf
8b・・・サブクローラLb
81・・・先端プーリ
81b・・・重錘
82・・・基端プーリ
82b・・・基端プーリ軸受
83・・・サブクローラベルト
83b・・・ベルトガイド
84・・・揺動駆動プーリ
85・・・揺動駆動ベルト
86・・・揺動腕
86b・・・内側カバー
86c・・・外側カバー
87・・・揺動プーリ
87b・・・揺動プーリ軸
89・・・揺動プーリ軸受

9・・・電動モータ
91・・・出力軸
92・・・カップリング
93・・・モータ保持ケース
94・・・放熱フィン

Claims (10)

  1. 機体と該機体を覆う走行用クローラから構成される無人走行用の移動体であって、
    機体前後には、中央にセンターフレーム、両側部にサイドフレームを備えており、
    センターフレームと両サイドフレームの間に、それぞれ外周にプーリを備えたホイールが、回転可能な支持軸に嵌合されて設けられており、
    走行用クローラは、機体の前後に設けた前記プーリ間にクローラベルトが掛け回され、モータを駆動源とし、
    クローラベルトは、2枚がセンターフレームの左右に配置され、センターフレームの幅を除き機体の全幅を覆い、
    機体の前後左右のサイドフレームのそれぞれの外方には、それぞれ揺動可能な腕状のサブクローラユニットを設け、
    各サブクローラユニットは、揺動軸側に配置される基端プーリと、揺動端側に配置される先端プーリと、両プーリを回転可能に支持する揺動腕と、両プーリに掛け回されるサブクローラベルトとを有することを特徴とする無人走行用移動体。
  2. サブクローラユニットの先端プーリの径を基端プーリの径よりも大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の無人走行用移動体。
  3. 基端プーリは、走行用クローラのプーリと同一の外径を有し、走行用クローラのホイールの支持軸と一体に回転することを特徴とする請求項1又は2に記載の無人走行用移動体。
  4. それぞれのサイドフレームには、サブクローラユニットの揺動腕を揺動させる揺動モータがそれぞれ独立して設けられ、独立して制御されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無人走行用移動体。
  5. 揺動腕は、正逆方向に回転可能であることを特徴とする請求項4記載の無人走行用移動体。
  6. 揺動腕の揺動端側には、姿勢安定用重錘が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の無人走行用移動体。
  7. 姿勢安定用重錘が、先端プーリの内周に収容可能に設けられ、先端プーリと一体に固定され、あるいは、先端プーリそのものであることを特徴とする請求項6に記載の無人走行用移動体。
  8. 被災地あるいは自然災害地の調査用移動体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の無人走行用移動体。
  9. 調査移動速度が人間の歩行速度に設定されていることを特徴とする請求項8に記載の無人走行用移動体。
  10. 原子力発電所施設用であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の無人走行用移動体。
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