JP5652811B2 - スルホン化ポリマー溶液の製造方法およびその利用 - Google Patents
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Description
(A)固体状のポリマーをスルホン化溶液中でスルホン化させ、固体状のスルホン化ポリマーを製造する工程、および(B)上記固体状のスルホン化ポリマーを溶媒に溶解する工程を含む、スルホン化ポリマー溶液の製造方法に関する。
本発明のスルホン化ポリマー溶液の製造方法は、(A)固体状のポリマーをスルホン化溶液中でスルホン化させ、固体状のスルホン化ポリマーを製造する工程、および、(B)前記固体状のスルホン化ポリマーを溶媒に溶解する工程を含む。
上記(A)工程は、スルホン化溶液中で、固体状のポリマーをスルホン化させ、固体状のスルホン化ポリマーを取り出し、回収するものである。
支持体を用いる場合は、固体状のポリマーを支持体に固定し、支持体と共にスルホン化溶液に分散あるいは浸漬し、支持体ごと固体状のスルホン化ポリマーを取り出す。
スルホン化溶液におけるスルホン化剤の含有量は、ポリマーに含まれるスルホン化される部位の全量を1とした場合、1当量〜50当量であることが好ましい。1当量より低いと、スルホン化の程度が不十分になり、50当量より多いとポリマーの主鎖が切断されるおそれがある。
スルホン化工程において、固体状のポリマーを支持体とともにスルホン化してもよい。ここで支持体とは、スルホン化工程における溶媒およびスルホン化剤によってほとんど化学変化を起こさないものが好ましい。
また、支持体は、スルホン化工程においてポリマーあるいはスルホン化ポリマーと密着していても密着していなくても良い。
また、スルホン酸基が導入されるブロックとして、繰り返し単位中にスルホン酸基を3個以上導入することができるものが好ましい。
スルホン酸基が導入されないブロックとしては、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリスルホン等の構造が挙げられる。
上記方法により製造したスルホン化ポリマーを、可溶性の溶媒に溶解し、スルホン化ポリマー溶液を製造する。
上記方法により製造したスルホン化ポリマー溶液を、ガラスやフィルムなどの平滑な基板上にキャストし、乾燥することで、膜を作製し、得られた膜をさらに酸性水溶液に浸し、純水に浸した後、乾燥することで高分子電解質膜を作製することができる。
本発明にかかるスルホン化ポリマー溶液の製造方法により、触媒層バインダー溶液を得ることもできる。ここで、触媒層バインダーとは、燃料電池の触媒層を作成する際に用いられるバインダーのことである。バインダーとは、触媒層を薄膜状に形成するための結着剤であり、イオノマーとも呼ばれる。
合成例で得られたポリマーの分子量、実施例で得られた高分子電解質のイオン交換容量および高分子電解質膜のプロトン伝導度は次にとおり測定した。
GPC法により分子量を測定した。条件は以下の通り。
GPC測定装置 TOSOH社製 HLC−8220
カラム SHOWA DENKO社製 SuperAW4000、SuperA
W2500の2本を直列に接続
カラム温度 40℃
移動相溶媒 NMP(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
溶媒流量 0.3mL/min
Varian社製NMR測定装置Gemini−300を用いて1H−NMR分析を行った。溶媒は重クロロホルムを用いた。
スルホン化ポリマーをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に5wt%となるように溶解し、得られたスルホン化ポリマー溶液を平滑なガラス基板上に流延し80℃で減圧乾燥することで電解質膜とし、さらに1N硫酸水溶液に浸し、純水に浸した後、減圧乾燥することで作製した。
高分子電解質膜(約100mg:十分に乾燥)を25℃の塩化ナトリウム飽和水溶液20mLに浸漬し、ウォーターバス中で60℃、3時間イオン交換反応させた。25℃まで冷却し、次いで膜をイオン交換水で充分に洗浄し、塩化ナトリウム飽和水溶液および洗浄水をすべて回収した。この回収した溶液に、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を加え、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定し、IEC(meq/g)を算出した。
プロトン伝導度測定は恒温恒湿器(ESPEC社製、SH−221)を用いて温度と湿度を一定に保ち(約3時間)、インピーダンスアナライザー(日置社製、3532−50)を用いて、電解質の抵抗を測定した。具体的にはインピーダンスアナライザーにより50kHz〜5MHzまでの周波数応答性を測定し、次式からプロトン伝導性を算出した。
プロトン伝導度(S/cm)=D/(W×T×R)
ここでDは電極間距離(cm)、Wは膜幅(cm)、Tは膜厚(cm)、Rは測定した抵抗値(Ω)である。本測定においては、D=1cm、W=1cmで行い、膜厚はそれぞれのサンプルについてマイクロメーターを用いて測定した値を用いた。温度と湿度は85℃、30%RHと85℃、95%RHとした。
下記の方法でポリマーを得た。
窒素導入口、還流管を付した100mLの三つ口フラスコに9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(4.00g、11.42mmol、東京化成工業社製)と、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン(2.58g、10.15mmol、東京化成工業社製)と、炭酸カリウム(3.16g、22.83mmol、関東化学社製)と、脱水N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc、20mL、関東化学社製)と、脱水トルエン(10mL、関東化学社製)とを加えた。三つ口フラスコにDean−Starkトラップを設置し、この混合物を窒素気流下で攪拌して、透明な均一溶液を得た。この溶液を140℃で3時間加熱した後、Dean−Starkトラップを除去し、165℃で12時間加熱した。反応終了後、DMAc(20mL)を加えてから常温まで冷却し、1000mLの純水中に反応溶液をゆっくりと滴下した。得られた沈殿物を吸引ろ過によって回収し、80℃の純水で3時間洗浄した後メタノールで洗浄し、60℃で15時間真空乾燥するとスルホン化可能な部位を含むオリゴマーを白色繊維状にて得た。
別途、窒素導入口、還流管を付した100mLの三つ口フラスコにビス(4−フルオロフェニル)スルホン(2.00g、7.86mmol、東京化成工業社製)と、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(1.63g、7.61mmol、東京化成工業社製)と、炭酸カリウム(2.17g、15.72mmol、関東化学社製)と、炭酸カルシウム(15.73g、157.20mmol)と、脱水N,N−ジメチルアセトアミド(20mL、関東化学社製)と、脱水トルエン(10mL、関東化学社製)を加えた。三つ口フラスコにDean−Starkトラップを設置し、この混合物を窒素気流下で攪拌して、透明均一溶液を得た。この溶液を140℃で1.5時間加熱した後、Dean−Starkトラップを除去し、165℃で1.5時間加熱することによって、ポリエーテルを含む溶液を得た。ここに、先に得たスルホン化可能な部位を含むオリゴマー(1.20g)を添加した後、165℃で更に3時間加熱した。反応終了後、DMAc(20mL)を加えてから常温まで冷却し、塩酸水溶液(1000mL、10mLの濃塩酸/1000mL純水)中に反応溶液をゆっくりと滴下した。この作業もう一度繰り返し、メタノールで洗浄した後に、60℃で15時間真空乾燥することによって、スルホン化可能な構造を有するポリマーを得た。
得られたポリマーの1H−NMRを測定し、p=8、n=30のスルホン化可能な構造の繰り返し単位と、スルホン酸基が実質導入されない繰り返し単位を含む高分子であることを確認した(分子量Mn=54,000、Mw=95,000)。
合成例1で得られたポリマーを、N,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、ガラス板にキャストすることでフィルム(12cm×12cm、平均厚み40μm)を作製した。
作製したフィルムを2枚のテフロン(登録商標)パンチングシート(14cm×14cm、膜厚550μm)ではさみ、室温(25℃)のスルホン化溶液(クロロスルホン酸10g/1−クロロブタン300mL)に浸した。10分後スルホン化溶液から取り出し、純水300mLに浸した。さらに2度水浸漬により膜を洗浄することで酸を除き、80℃で15時間乾燥することでスルホン化ポリマーを得た(収率99%)。スルホン化ポリマーを80℃のDMAcに溶解し、スルホン化ポリマー溶液を作製した。
電解質膜を作製し、分析を行ったところIECは1.46(meq/g)であった。
フィルムをスルホン化する工程において、テフロン(登録商標)パンチングシートにはさむことで容易にスルホン化ポリマーの回収を行うことができた。また、回収後に水浸漬するのみで酸の除去が可能であり、酸性水溶液の廃液量はおよそ900mLであった。
合成例1で得られたポリマーを、N,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、ガラス板にキャストすることでフィルム(8cm×8cm、平均厚み40μm)を作製した。
作製したフィルムを1枚のポリエチレンフィルム(12cm×12cm、膜厚550μm)に貼り付け、室温のスルホン化溶液(クロロスルホン酸6.2g/1−クロロブタン200mL)に浸した。30分後スルホン化溶液から取り出し、純水200mLに浸した。さらに2度水浸漬により膜を洗浄することで酸を除き、80℃で15時間乾燥することでスルホン化ポリマーを得た(収率99%)。スルホン化ポリマーを80℃のDMAcに溶解し、スルホン化ポリマー溶液を作製した。
電解質膜を作製し、分析を行ったところIECは1.51(meq/g)であった。
合成例1で得られたポリマーを、N,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、ガラス板にキャストすることでフィルム(4cm×5cm、平均厚み40μm)を作製した。
作製したフィルムを、室温のスルホン化溶液(クロロスルホン酸6.2g/1−クロロブタン100mL)に浸した。2分後スルホン化溶液から取り出し、純水100mLに浸した。さらに2度水浸漬により膜を洗浄することで酸を除き、80℃で15時間乾燥することでスルホン化ポリマーを得た(収率99%)。スルホン化ポリマーを80℃のDMAcに溶解し、スルホン化ポリマー溶液を作製した。
電解質膜を作製し、分析を行ったところIECは1.51(meq/g)であった。
合成例1で得られたポリマーを、ジクロロメタンに溶解し、均一なポリマー溶液(ポリマー1.0g/ジクロロメタン50mL)を調製した。
調製したポリマー溶液を室温のスルホン化溶液(クロロスルホン酸1.7g/ジクロロメタン50mL)にゆっくりと滴下しながら加えた。そのまま攪拌しながら12時間反応させた。反応後は赤褐色の沈殿物が生じており、上澄み液を除き、水を加えて洗浄した。水を加えて白色になった固体を取り出し、吸引ろ過しながら水洗を行った。洗浄後、80℃で15時間減圧乾燥することでスルホン化ポリマーを得た(収率92%)。スルホン化ポリマーを80℃のDMAcに溶解し、スルホン化ポリマー溶液を作製した。
電解質膜を作製し、分析を行ったところIECは1.64(meq/g)であった。
ただし、吸引ろ過工程において酸を除去するために5時間を要し、酸性水溶液の廃液を10リットル排出した。
スルホン化溶液からスルホン化ポリマーを回収する際、スルホン化ポリマーが反応容器の内部に付着しており回収が困難であった。また、回収後に酸の除去を行うために、あらかじめスルホン化ポリマーを粉砕する必要があり、吸引ろ過の操作には5時間を要した。酸性水溶液の廃液量はおよそ10リットルであった。
合成例1で得られたポリマーを、室温でジクロロメタンに溶解し、均一なポリマー溶液(ポリマー0.5g/ジクロロメタン50mL)を調製した。
調製したポリマー溶液に室温でクロロスルホン酸(4g)をゆっくりと滴下しながら加えた。そのまま攪拌しながら12時間反応させた。反応後は赤褐色の沈殿物が生じており、上澄み液を除き、水を加えて洗浄した。水を加えて白色になった固体を取り出し、吸引ろ過しながら水洗を行った。洗浄後、80℃で15時間減圧乾燥することでスルホン化ポリマーを得た(収率91%)。スルホン化ポリマーを80℃のDMAcに溶解し、スルホン化ポリマー溶液を作製した。
電解質膜を作製し、分析を行ったところIECは1.48(meq/g)であった。
スルホン化溶液からスルホン化ポリマーを回収する際、スルホン化ポリマーが反応容器の内部に付着しており回収が困難であった。また、回収後に酸の除去を行うために、あらかじめスルホン化ポリマーを粉砕する必要があり、吸引ろ過の操作には5時間を要した。酸性水溶液の廃液量はおよそ8リットルであった。
合成例1で得られたポリマー1gを、98%硫酸30mLに溶解し、室温で20時間反応させた。反応後に大量の水に加えることでスルホン化ポリマーを析出させ、吸引ろ過しながら水洗を行った。洗浄後、80℃で15時間減圧乾燥することでスルホン化ポリマーを得た(収率94%)。分子量の低下が見られ、またNMR分析でもスルホン酸基はほとんど導入されなかった。濃硫酸によるスルホン化ではスルホン化反応の速度が遅く、またポリマーの分解が起こったものと考えられる。
得られたスルホン化ポリマーを80℃のDMAcに溶解し、スルホン化ポリマー溶液を作製した。電解質膜を作製したが、非常に脆く分析を行うことができなかった。
合成例1で得られたポリマーを、N,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、ガラス板にキャストすることでフィルム(4cm×5cm、平均厚み40μm)を作製した。
作製したフィルムを、室温のスルホン化溶液(クロロスルホン酸6.2g/1−クロロブタン100mL)に浸した。30秒後スルホン化溶液から取り出し、純水100mLに浸した。さらに2度水浸漬により膜を洗浄することで酸を除き、80℃で15時間乾燥することでスルホン化ポリマーを得た(収率99%)。スルホン化ポリマーを80℃のDMAcに溶解し、スルホン化ポリマー溶液を作製した。
電解質膜を作製し、分析を行ったところIECは0.56(meq/g)であった。
スルホン化を行う時間が30秒では浸漬した膜は部分的に色のムラが見られ、スルホン化剤が膜内部まで浸透していない様子であった。またIECは低い値であった。
合成例1で得られたポリマーを、N,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、ガラス板にキャストすることでフィルム(3cm×5cm、平均厚み70μm)を作製した。
作製したフィルムを2枚のテフロン(登録商標)パンチングシート(4cm×6cm、膜厚550μm)ではさみ、室温のクロロスルホン酸30gに浸した。2分後スルホン化ポリマーは流動性が高くなり、テフロン(登録商標)パンチングシートから漏れ出してしまった。反応10分後、反応溶液を多量の水に加え、析出した固体を回収し、吸引ろ過しながら水洗を行った。洗浄後、80℃で15時間減圧乾燥することでスルホン化ポリマーを得た(収率60%)。スルホン化ポリマーを80℃のDMAcに溶解し、スルホン化ポリマー溶液を作製した。
電解質膜を作製し、分析を行ったところIECは1.48(meq/g)であった。
有機溶媒を使用せず、クロロスルホン酸のみを用いてスルホン化すると、スルホン化ポリマーは流動性が高くなり、回収が困難であった。
実施例1〜3と比較例3を比較すると、濃硫酸を用いてスルホン化すると、スルホン化が遅く、またポリマーが分解してしまうことが分かる。
実施例1〜3と比較例4を比較すると、比較例4のようにスルホン化時間が30秒では十分なスルホン化を行うことができないが、実施例3のようにスルホン化時間が2分では十分にスルホン化を行うことができることがわかる。
実施例1〜3と比較例5を比較すると、比較例5のように有機溶媒を用いず、クロロスルホン酸のみでスルホン化を行うと、スルホン化ポリマーの流動性が高くなりすぎてしまうため、回収が困難になってしまうことが分かる。
Claims (15)
- 前記固体状のポリマー、及び、前記固体状のスルホン化ポリマーは、フィルム形状であることを特徴とする、請求項2又は3に記載のスルホン化ポリマー溶液の製造方法。
- 前記(A)工程において、前記固体状のポリマーを、支持体で夾持した状態でスルホン化させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のスルホン化ポリマー溶液の製造方法。
- 前記スルホン化溶液が、有機溶媒を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のスルホン化ポリマー溶液の製造方法。
- 前記有機溶媒が、ハロゲン系溶媒であることを特徴とする、請求項6に記載のスルホン化ポリマー溶液の製造方法。
- 前記有機溶媒が、1,2−ジクロロエタン、1−クロロブタン、1−クロロペンタンおよび1−クロロオクタンからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする、請求項6又は7に記載のスルホン化ポリマー溶液の製造方法。
- 前記ポリマーが、主鎖に芳香族基を含む構造を有することを特徴とする、請求項1及び3〜8のいずれかに記載のスルホン化ポリマー溶液の製造方法。
- 前記ポリマーが、ブロック共重合体であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のスルホン化ポリマー溶液の製造方法。
- 前記ポリマーが、スルホン酸基が導入されるブロックとスルホン酸基が導入されないブロックを含むことを特徴とする、請求項1、2及び4〜10のいずれかに記載のスルホン化ポリマー溶液の製造方法。
- 前記ポリマーが、繰り返し単位中にスルホン酸基を3個以上導入することができるブロックを有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載のスルホン化ポリマー溶液の製造方法。
- 前記(A)工程において、スルホン化剤としてクロロスルホン酸を用いることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載のスルホン化ポリマー溶液の製造方法。
- 請求項1〜13のいずれかに記載のスルホン化ポリマー溶液の製造方法を含むことを特徴とする、高分子電解質膜の製造方法。
- 請求項1〜13のいずれかに記載のスルホン化ポリマー溶液の製造方法を含むことを特徴とする、触媒層バインダー溶液の製造方法。
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