以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る車両用制御システムの概略構成を示す模式図、図2は、実施形態1に係る車両の概略構成図、図3は、実施形態1に係る車両用制御システムにおける車速と入力回転数との対応関係の一例を表す線図、図4は、実施形態1に係る車両用制御システムにおける制御の一例を説明するフローチャート、図5は、変形例に係る車両用制御システムの概略構成を示す模式図である。
本実施形態の車両用制御システム1は、図1、図2に示すように、車両2に搭載され、この車両2を制御するためのシステムである。車両用制御システム1は、典型的には、車両2の走行中に走行用駆動源としてのエンジン3を駆動輪4側から切り離すことで機械的負荷(フリクション)を低減して慣性走行を行い、所定条件で走行用駆動源と駆動輪側とを繋ぐことにより、燃費向上を図ったシステムである。例えば、車両用制御システム1は、車両2の上記慣性走行中に、エンジン3への燃料カット(フューエルカット)制御を実行することで、エンジン3の作動が停止した状態となり、これにより、さらに燃費向上を図ることが可能となる。
具体的には、車両用制御システム1は、エンジン3と、駆動輪4と、動力伝達装置5と、油圧制御装置6と、制御装置としてのECU7とを備える。
エンジン3は、車両2を走行させる走行用駆動源(原動機)であり、燃料を消費して車両2の駆動輪4に作用させる動力を発生させる。エンジン3は、燃料の燃焼に伴って機関出力軸であるクランクシャフト31に機械的な動力(エンジントルク)を発生させ、この機械的動力をクランクシャフト31から駆動輪4に向けて出力可能である。また、エンジン3は、クランクシャフト31を回転始動(クランキング)するスタータ32、エンジン3の動力によって発電可能なオルタネータ33などが設けられている。
動力伝達装置5は、エンジン3から駆動輪4への動力の伝達経路中に設けられ媒体としての作動油の圧力(油圧)によって作動しこの作動油の圧力に応じて動力を伝達する。動力伝達装置5は、エンジン3からの動力が伝達され駆動輪4との間で相互に動力を伝達可能な出力部材としてのインプットシャフト51、及び、エンジン3とインプットシャフト51とを切り離しエンジン3とインプットシャフト51との間での動力伝達を遮断可能なクラッチ部としての切替クラッチC1を含んで構成される。
より詳細には、動力伝達装置5は、トルクコンバータ8、前後進切替機構9、変速機10等を含んで構成され、インプットシャフト51は、変速機10の変速機入力軸を構成し、切替クラッチC1は、前後進切替機構9の前後進切替クラッチを構成する。動力伝達装置5は、エンジン3のクランクシャフト31と変速機10のインプットシャフト51とがトルクコンバータ8、前後進切替機構9等を介して接続され、変速機10のインプットシャフト51が差動機構、駆動軸などを介して駆動輪4に接続される。
トルクコンバータ8は、クランクシャフト31と一体回転可能に結合されるフロントカバー81に伝達された動力を、ポンプやタービンからなる流体伝達機構82を介してトルクを増幅して、あるいは、ロックアップクラッチ83を介してそのままのトルクで、アウトプットシャフト84に伝達する。トルクコンバータ8は、後述の油圧制御装置6から供給される作動油の圧力に応じてロックアップクラッチ83が解放状態(ロックアップOFF)と係合状態(ロックアップON)とに切り替えられる。
前後進切替機構9は、エンジン3からの動力(回転出力)を変速可能であると共にその回転方向を切り替え可能であり、遊星歯車機構91と、切替クラッチC1と、切替ブレーキB1とを含んで構成される。遊星歯車機構91は、相互に差動回転可能な複数の回転要素として、外歯歯車として構成されるサンギヤ91Sと、サンギヤ91Sに対して同心円上に配置された内歯歯車として構成されるリングギヤ91Rと、サンギヤ91Sとリングギヤ91Rとに噛み合っているピニオンギヤ91Pを自転自在、かつ、公転自在に支持するキャリヤ91Caとを含んで構成される差動機構である。リングギヤ91Rは、アウトプットシャフト84と一体回転可能に結合され、エンジン3からの動力は、アウトプットシャフト84を介してこのリングギヤ91Rに伝達される。サンギヤ91Sは、インプットシャフト51と一体回転可能に結合され、エンジン3からの動力は、このサンギヤ91Sを介してインプットシャフト51に伝達される。キャリヤ91Caは、切替クラッチC1を介してリングギヤ91Rと連結可能であると共に、切替ブレーキB1を介して固定部(例えばケーシング)と連結可能である。
切替クラッチC1、切替ブレーキB1は、前後進切替機構9の作動状態を切り替えるための係合要素であり、例えば、多板クラッチなどの摩擦式の係合機構やドグクラッチなど噛み合い式の係合機構によって構成することができ、ここでは、油圧式の多板クラッチを用いる。切替クラッチC1は、リングギヤ91Rとキャリヤ91Caとを選択的に連結し、切替ブレーキB1は、リングギヤ91Rと固定部とを選択的に連結する。例えば、切替クラッチC1は、リングギヤ91Rとキャリヤ91Caとを切り離しリングギヤ91Rとキャリヤ91Caとの間での動力伝達を遮断することで、エンジン3とインプットシャフト51とを切り離しエンジン3とインプットシャフト51との間での動力伝達を遮断することができる。つまり、切替クラッチC1は、リングギヤ91Rとキャリヤ91Caとを連結する係合状態と、その連結を解除する解放状態とに切り替え可能であり、これにより、エンジン3側の回転部材(クランクシャフト31やアウトプットシャフト84)と駆動輪4側の回転部材(インプットシャフト51)との間で動力が伝達される動力伝達状態(係合状態)と、動力伝達が遮断される遮断状態(解放状態)とを切り替え可能である。
前後進切替機構9は、後述の油圧制御装置6から供給される作動油の圧力によって切替クラッチC1、切替ブレーキB1が作動し作動状態が切り替えられる。前後進切替機構9は、切替クラッチC1が係合状態(ON状態)、切替ブレーキB1が解放状態(OFF状態)である場合に、エンジン3からの動力を正転回転(車両2が前進する際にインプットシャフト51が回転する方向)でインプットシャフト51に伝達する。前後進切替機構9は、切替クラッチC1が解放状態、切替ブレーキB1が係合状態である場合に、エンジン3からの動力を逆転回転(車両2が後進する際にインプットシャフト51が回転する方向)でインプットシャフト51に伝達する。前後進切替機構9は、ニュートラル時には、切替クラッチC1、切替ブレーキB1共に解放状態とされる。
変速機10は、エンジン3から駆動輪4への動力の伝達経路における切替クラッチC1と駆動輪4との間に設けられエンジン3の動力を変速して出力可能である。変速機10は、後述の油圧制御装置6から供給される作動油の圧力によって作動しこの作動油の圧力に応じて動力を伝達する。変速機10は、例えば、作動油の圧力によって車両2の車速に対する変速機10への入力回転速度の変化量、言い換えれば、変速時における変速比の変化量を調節可能である。
変速機10は、インプットシャフト51に伝達(入力)されるエンジン3からの回転動力(回転出力)を所定の変速比で変速して変速機出力軸であるアウトプットシャフト52に伝達し、このアウトプットシャフト52から駆動輪4に向けて変速された動力を出力する。ここでは、変速機10は、その一例として、プライマリシャフトとしてのインプットシャフト51に連結されたプライマリプーリ53、セカンダリシャフトとしてのアウトプットシャフト52に連結されたセカンダリプーリ54、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54との間に掛け渡されたベルト55などを含んで構成されるベルト式の無段自動変速機(CVT)を例示している。変速機10は、後述の油圧制御装置6から各種油圧室に供給される作動油の圧力に応じて、変速動作を行い、プライマリプーリ53の入力回転速度に相当する入力回転数(プライマリ回転数)とセカンダリプーリ54の出力回転速度に相当する出力軸回転数(セカンダリ回転数)との比に相当する変速比を無段階に変更し、また、セカンダリプーリ54等がベルト55を挟圧する力(ベルト挟圧力)が調節され、これに応じたトルク容量で動力を伝達する。
上記のように構成される動力伝達装置5は、エンジン3が発生させた動力をトルクコンバータ8、前後進切替機構9、変速機10などを介して駆動輪4に伝達することができる。この結果、車両2は、駆動輪4の路面との接地面に駆動力[N]が生じ、これにより走行することができる。
油圧制御装置6は、流体としての作動油の油圧によってロックアップクラッチ83、切替クラッチC1、切替ブレーキB1の係合要素等を含む動力伝達装置5を作動させるものである。油圧制御装置6は、例えば、ECU7により制御される種々の公知の油圧回路を含んで構成される。油圧制御装置6は、複数の油路、オイルリザーバ、オイルポンプ、複数の電磁弁などを含んで構成され、後述するECU7からの信号に応じて、動力伝達装置5の各部に供給される作動油の流量あるいは油圧を制御する。
ECU7は、車両2の各部の駆動を制御するものである。ECU7は、CPU、ROM、RAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路である。ECU7は、例えば、運転者によるアクセルペダルの操作量(アクセル操作量)、例えば、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ71、プライマリプーリ53の回転数に相当する入力回転数(プライマリ回転数)を検出するプライマリ回転センサ72、車両2の走行速度である車速を検出する車速センサ73等の車両2の各部に設けられた種々のセンサ、検出装置が電気的に接続される。ECU7は、エンジン3の燃料噴射装置、点火装置、スロットル装置や油圧制御装置6等が電気的に接続される。ECU7は、種々のセンサから検出した検出結果に対応した電気信号が入力され、入力された検出結果に応じてこれら各部に駆動信号を出力しこれらの駆動を制御すると共に、これらの装置の各所に設けられるセンサからエンジン回転数(クランク角度)等の信号を受信する。例えば、ECU7は、通常の運転時においては、アクセル開度、車速等に基づいてスロットル開度を調整しエンジン3への吸入空気量を調節して、その変化に対応して燃料噴射量を制御し、燃焼室に充填される混合気の量を調節してエンジン3の出力を制御する。また、ECU7は、アクセル開度、車速等に基づいて変速比、典型的には変速機10への入力回転数を調節して、変速機10の変速制御を行う。
このECU7は、車両2の走行中において、エンジン3を始動し、又は作動を停止して、エンジン3の作動状態と非作動状態とを切り替えることが可能となっている。ここで、エンジン3を作動させた状態とは、燃焼室で燃料を燃焼して生じる熱エネルギをトルクなどの機械的エネルギの形で出力する状態である。一方、エンジン3の非作動状態、すなわち、エンジン3の作動を停止させた状態とは、燃焼室で燃料を燃焼させずトルクなどの機械的エネルギを出力しない状態である。
そして、ECU7は、例えば、車両2の惰性走行中等に、エンジン3での燃料の消費を停止し非作動状態としいわゆるフリーラン状態とする制御に移行可能である。ECU7は、例えば、アクセルオフのコースト走行による車両2の減速時やエンジン回転数が所定回転数以上である場合に、油圧制御装置6を制御し切替クラッチC1を解放状態とすることでエンジン3とインプットシャフト51とを切り離しエンジン3を駆動輪4側から切り離すと共に、状況に応じてエンジン3の燃焼室への燃料の供給を停止し(フューエルカット)、エンジン3による動力の発生を停止する制御を実行する。これにより、ECU7は、エンジン3に機械的動力を出力させることなく、機械的負荷(フリクション)を低減して車両2の慣性力により惰性で走行する惰性走行を行うことができ、燃費を向上させることができる。なお、この車両2は、前進走行中においては、切替ブレーキB1が解放状態(OFF状態)であるため、基本的には、切替クラッチC1を係合状態から解放状態とすればエンジン3とインプットシャフト51とが切り離された状態となる。
ところで、本実施形態の車両用制御システム1は、車両2で用いる作動油を加圧するための装置として、第1ポンプとしてのメインポンプ61と、第2ポンプとしてのサブポンプ62とを備えると共に、さらに、状況に応じてサブポンプ62を駆動する電動機としてのモータジェネレータ11(以下、特に断りのない限り「モータ11」と略記する)を備えることで、より適切にサブポンプ62等を含む補機の性能を確保している。
具体的には、上述の油圧制御装置6は、メインポンプ61と、サブポンプ62とを含んで構成される。メインポンプ61、サブポンプ62は、共に機械式のメカポンプである。ここでは、メインポンプ61とサブポンプ62とは、サブポンプ62の吐出容量がメインポンプ61の吐出容量より小さく設定されてもよい。
メインポンプ61は、エンジン3からの動力によって駆動して車両2で用いる作動油を加圧する。メインポンプ61は、駆動軸61aに一体回転可能に結合されたプーリ61bと、トルクコンバータ8のブランケット85、流体伝達機構82のポンプ、フロントカバー81等を介してクランクシャフト31と一体回転可能に結合されるプーリ61cとに、ベルト61dが巻き掛けられている。これにより、メインポンプ61は、プーリ61c、ベルト61d、プーリ61b等を介して駆動軸61aにエンジン3からの動力(駆動力)が伝達され、クランクシャフト31の回転に同期して連動して駆動し、吸入した作動油を昇圧後に吐出することができる。つまり、メインポンプ61は、エンジン3によって回転駆動する。
サブポンプ62は、インプットシャフト51から一方向クラッチF1を介して駆動輪4からの動力が伝達され、この駆動輪4からの動力によって駆動して作動油を加圧する。サブポンプ62は、駆動軸62aに一体回転可能に結合されたプーリ62bと、内輪62cがインプットシャフト51と一体回転可能に結合される一方向クラッチF1の外輪62dとに、ベルト62eが巻き掛けられている。一方向クラッチF1は、一方向のみの回転を許容し他方向の回転を規制するものであり、内輪62cの回転数が外輪62dの回転数以上の場合は内輪62cと外輪62dとが一体回転し、内輪62cの回転数が外輪62dの回転数未満の場合は内輪62cと外輪62dとが別々に回転する。一方向クラッチF1は、インプットシャフト51から駆動軸62aへの動力伝達を許容し、駆動軸62aからインプットシャフト51への動力伝達を阻止する。これにより、サブポンプ62は、一方向クラッチF1、ベルト62e、プーリ62b等を介して駆動軸62aに駆動輪4側からの動力(被駆動力)が伝達され、車両2の惰性走行時などにインプットシャフト51の回転に同期して連動して駆動し、吸入した作動油を昇圧後に吐出することができる。つまり、サブポンプ62は、切替クラッチC1より駆動輪4側でこの駆動輪4に接続される軸であるインプットシャフト51を介して駆動輪4側から伝達される動力によって回転駆動する。
また、サブポンプ62は、車両2の運転状態によっては、モータ11が発生させる動力によって駆動する。モータ11は、ロータが駆動軸62aに一体回転可能に結合される。モータ11は、インバータなどを介してバッテリから供給された電力を機械的動力に変換する電動機としての機能と、入力された機械的動力を電力に変換する発電機としての機能とを兼ね備えた回転電機である。モータ11は、サブポンプ62を含む種々の補機を駆動可能である。
モータ11によって駆動されうる補機としては、サブポンプ62の他、エアコンのコンプレッサ、ブレーキに使用する負圧を発生させるための負圧ポンプ等、回転駆動する必要がある種々の補機を含んでよい。ここでは、車両用制御システム1は、例えば、負圧ポンプ12を備えるものとして図示している。負圧ポンプ12は、車両2の制動装置にアシスト負圧を供給するものである。負圧ポンプ12は、相互に噛み合う歯車12a、12bなどを介して駆動軸62aからの動力が伝達され、この駆動軸62aの回転に同期して連動して駆動し、例えば、エンジン3の吸気負圧を利用する負圧式のブレーキ倍力装置の負圧タンクに負圧を供給する。
この車両用制御システム1は、エンジン3の作動中、エンジン3の駆動時においては主にメインポンプ61がエンジン3からの動力によって駆動して車両2で用いる作動油を加圧する。そして、車両用制御システム1は、上記のように車両2の走行中にエンジン3の作動が停止すると共に切替クラッチC1にてエンジン3とインプットシャフト51とが切り離された状態となると、エンジン3からの動力によって駆動するメインポンプ61もこれに伴って作動が停止する。このとき、この車両用制御システム1は、サブポンプ62が駆動輪4からの動力によって駆動して車両2で用いる作動油を加圧する。また、車両用制御システム1は、上記のように車両2の走行中にエンジン3の作動が停止すると共に切替クラッチC1にてエンジン3とインプットシャフト51とが切り離された状態となると、エンジン3の吸気負圧を利用する負圧式のブレーキ倍力装置への供給負圧もこれに伴って低下するが、サブポンプ62と同様に負圧ポンプ12が駆動輪4からの動力によって駆動して車両2の制動装置にアシスト負圧を供給する。これにより、車両用制御システム1は、車両2の惰性走行による運動エネルギを活用してサブポンプ62、負圧ポンプ12などの補機を駆動することができ、結果的に燃費を向上することができる。
そして、ECU7は、エンジン3の作動が停止し切替クラッチC1にてエンジン3とインプットシャフト51とが切り離された状態で、車両2の車速が所定車速以下である場合に、モータ11を制御しこのモータ11が発生させる動力によってサブポンプ62、負圧ポンプ12を含む補機を駆動する。
ここで、サブポンプ62は、上述したように駆動輪4からの動力によってインプットシャフト51の回転に連動して駆動することから、車両2の車速が低下しインプットシャフト51の回転数が低下するほど、吐出流量が少なくなり吐出油圧が低下する傾向にある。このため、車両用制御システム1は、車両2の惰性走行時等において、車速が所定よりも高いときにはサブポンプ62によって十分な吐出油圧が得られるが、車両2が減速し低車速状態となると、駆動輪4からの動力でサブポンプ62を駆動するだけでは十分な吐出油圧が得られなくなるおそれがある。
しかしながら、本実施形態の車両用制御システム1は、エンジン3の作動が停止し切替クラッチC1にてエンジン3とインプットシャフト51とが切り離された車両2の惰性走行時等において、駆動輪4からの動力でサブポンプ62を駆動するだけでは十分な吐出油圧が得られなくなるおそれがあるような低車速走行領域では、ECU7がモータ11を制御しこのモータ11が発生させる動力によってサブポンプ62、負圧ポンプ12を含む補機を駆動する。
これにより、車両用制御システム1は、例えば、別個に電動ポンプを設けることによるコスト増加等を招くことなく、車両2の低車速走行領域であってもサブポンプ62、負圧ポンプ12を含む補機性能を適切に確保することができる。さらに言えば、車両用制御システム1は、車両2の走行領域全体で補機性能を適切に確保した上で、例えば、モータ11を駆動しこのモータ11が発生させる動力によってサブポンプ62、負圧ポンプ12等の補機を駆動するモータ駆動走行領域を、エンジン3の作動が停止した状態での低車速走行領域近傍の必要最小限の領域に抑えることができ、この結果、電力損失を低減し、燃費を向上することができる。
そして、車両用制御システム1は、例えば、エンジン3の作動が停止した状態での車両2の低車速走行領域であっても、モータ11によってサブポンプ62の吐出性能を適切に確保することができるので、動力伝達装置5等での作動油の必要油圧(必要流量)に対して、サブポンプ62から動力伝達装置5等への実際の作動油の吐出油圧(吐出流量)が不足することを抑制することができる。よって、車両用制御システム1は、エンジン3の作動が停止した状態での車両2の低車速走行領域であっても、変速機10での変速や適正なベルト挟圧力に必要な油圧、切替クラッチC1や切替ブレーキB1などの係合要素の作動に必要な油圧等を適正に確保することができ、適正な動作や適正なトルク容量を確保することができ、動力伝達装置5等を適正に作動させることができる。
また、車両用制御システム1は、例えば、エンジン3の作動が停止した状態での車両2の低車速走行領域であっても、モータ11によって負圧ポンプ12の性能を適切に確保することができるので、負圧式のブレーキ倍力装置へのアシスト負圧を適正に確保することができる。
ここで、モータ11の駆動の判定基準となる上記所定車速は、モータ11を駆動するか否かを判定するために車速に対して設定される判定値(閾値)であり、動力伝達装置5等での作動油の必要油圧等に応じて定まる。さらに詳細に言えば、上記所定車速は、駆動輪4からの動力でサブポンプ62を駆動するだけでは、必要油圧に対して十分な吐出油圧が得られなくなるおそれがある車速に応じて定まる。例えば、所定車速は、駆動輪4からの動力でサブポンプ62を駆動するだけでは、サブポンプ62による吐出油圧が車両2での作動油の必要油圧より低くなってしまう車速よりもやや高い車速に設定される。車両2での作動油の必要油圧は、例えば、上述したように変速機10での変速や適正なベルト挟圧力に必要な油圧、切替クラッチC1や切替ブレーキB1などの係合要素の作動に必要な油圧などの合計の油圧である。
なお、本実施形態の所定車速は、言い換えれば、エンジン3の作動が停止し切替クラッチC1にてエンジン3とインプットシャフト51とが切り離された車両2の惰性走行時等におけるモータ駆動走行領域の上限車速に相当する。また、この所定車速は、固定的な値を用いてもよいが、車両の状態、例えば、作動油の温度、粘度、経年変化の度合い等に応じて異なる値を適用してもよい。
ここで、図3は、横軸を車両2の車速V、縦軸をインプットシャフト51の回転数である入力回転数Nとしている。図3中、γmaxは変速機10の最大変速比に応じた最ロー側変速線、γminは変速機10の最小変速比に応じた最ハイ側変速線、L1は、車両2の惰性走行(アクセルオフのコースト走行)における減速時のコースト変速線を表す。
ECU7は、例えば、車両2の惰性走行時における減速時には、コースト変速線L1に沿って変速機10を制御して変速制御を実行する。ECU7は、最低入力回転数N3を目標入力回転数として変速制御を実行し、実変速比が最大変速比となったらその後は最ロー側変速線γmaxに沿って最大変速比を維持する。
モータ11の駆動の判定基準となる所定車速Vthは、典型的には、変速比が最大変速比、入力回転数がエンジン3のアイドル状態におけるアイドル入力回転数N1であるときの車速V1から、変速比が最大変速比、入力回転数が回転数N2であるときの車速V2までの範囲内で設定される。ここでの回転数N2は、変速機10を確実に通常作動できる吐出油圧が得られる入力回転数であり、サブポンプ62の仕様等に応じて予め定まる。図3中、所定入力回転数Nthは、変速比が最大変速比、車速が所定車速Vthのときの入力回転数に相当する。この車両用制御システムでは、エンジン3の作動が停止し切替クラッチC1にてエンジン3とインプットシャフト51とが切り離された車両2の惰性走行時等において、少なくとも車速が車速V1以下となる領域、すなわち、入力回転数がアイドル入力回転数N1以下となる領域は、モータ11が発生させる動力によってサブポンプ62等を駆動するモータ駆動走行領域となる。
次に、図4のフローチャートを参照して車両用制御システム1における制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
まず、ECU7は、車両2の各部に設けられた種々のセンサ、検出装置の検出結果等に基づいて、車両2が(前進)走行中であるか否かを判定する(ST1)。
ECU7は、車両2が走行中であると判定した場合(ST1:Yes)、エンジン3の作動が停止した状態で、かつ、切替クラッチC1が解放状態であるか否かを判定する(ST2)。
ECU7は、エンジン3の作動が停止した状態で、かつ、切替クラッチC1が解放状態であると判定した場合(ST2:Yes)、車両2の車速が所定車速Vth以下であるか否かを判定する(ST3)。
ECU7は、車両2の車速が所定車速Vth以下であると判定した場合(ST3:Yes)、モータ11を駆動し、あるいは、駆動した状態を継続し、モータ11が発生させる動力によってサブポンプ62、負圧ポンプ12を含む補機を駆動し(ST4)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
ECU7は、ST1にて車両2が走行中でないと判定した場合(ST1:No)、ST2にてエンジン3の作動が状態である、あるいは、切替クラッチC1が係合状態であると判定した場合(ST2:No)、車両2の車速が所定車速Vthより高い車速であると判定した場合(ST3:No)、モータ11の駆動を停止し、あるいは、停止した状態を継続し(ST5)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
以上で説明した実施形態に係る車両用制御システム1によれば、駆動輪4を駆動し車両2を走行させるエンジン3からの動力によって駆動して車両2で用いる作動油を加圧するメインポンプ61と、エンジン3からの動力が伝達され駆動輪4との間で相互に動力を伝達可能なインプットシャフト51、及び、エンジン3とインプットシャフト51とを切り離しエンジン3とインプットシャフト51との間での動力伝達を遮断可能な切替クラッチC1を含む動力伝達装置5と、インプットシャフト51から一方向クラッチF1を介して駆動輪4からの動力が伝達されこの駆動輪4からの動力によって駆動して作動油を加圧するサブポンプ62と、サブポンプ62を含む補機を駆動可能なモータ11と、エンジン3の作動が停止し切替クラッチC1にてエンジン3とインプットシャフト51とが切り離された状態で、車両2の車速が所定車速以下である場合に、モータ11を制御しモータ11が発生させる動力によって補機を駆動するECU7とを備える。したがって、車両用制御システム1は、補機性能を適切に確保することができる。
なお、以上で説明した車両用制御システム1は、図5の変形例に例示するように、第1ポンプとしてのメインポンプ61Aがトルクコンバータ8のブランケット85に直接的に設けられる構成であってもよい。この場合、車両用制御システム1は、駆動軸61a、プーリ61b、61c、ベルト61d等を備えない構成とすることができ、車両用制御システム1を構成する部品点数を削減することができる。
[実施形態2]
図6は、実施形態2に係る車両用制御システムにおける車速と入力回転数との対応関係の一例を表す線図である。実施形態2に係る車両用制御システムは、変速制御の点で実施形態1とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、主要な構成については適宜図1、図2を参照する(以下で説明する実施形態も同様である。)。
本実施形態の車両用制御システム201は、図6に例示するように、車両2の惰性走行(アクセルオフのコースト走行)におけるエンジン3の作動状態での減速時のコースト変速線L2がコースト変速線L1とは異なる。
ここでは、図6中に示すように、エンジン3の作動が停止し切替クラッチC1にてエンジン3とインプットシャフト51とが切り離された状態で車両2の車速が所定車速Vth以下の走行領域における車速Vに対する入力回転数Nの変化量に相当する変化勾配を変化勾配Δ1とする。また、エンジン3が作動し切替クラッチC1にてエンジン3とインプットシャフト51との間で動力が伝達される状態で車両2が所定車速Vthより大きい走行領域における車速Vに対する入力回転数Nの変化量に相当する変化勾配を変化勾配Δ2とする。この場合に、ECU7は、車両2の惰性走行時に、変速機10を制御し、変化勾配Δ1と比較して、変化勾配Δ2を相対的に小さくすると共に、変化勾配Δ2となる走行領域においてモータ11を制御しこのモータ11が発生させる動力によってサブポンプ62等を含む補機を駆動する。
ECU7は、例えば、車両2の惰性走行時における減速時には、エンジン3が作動した状態ではコースト変速線L2に沿って変速機10を制御して変速制御を実行する。この場合、ECU7は、最低入力回転数N3を目標入力回転数として変速制御を実行し、実変速比が最大変速比に至る前に目標入力回転数を最低入力回転数N3から下げる。このとき、ECU7は、車速Vの変化に対して変化勾配Δ1より小さな変化勾配Δ2で目標入力回転数を低減し、これに応じて変速制御を実行する。そして、ECU7は、目標入力回転数が低下し実際の入力回転数が低下する分、モータ11を駆動してこのモータ11が発生させる動力によってサブポンプ62を駆動して実際の吐出油圧を補うことで、車両2での必要油圧を適正に確保することができる。目標入力回転数を最低入力回転数N3から下げるタイミングとしては、例えば、所定車速Vthのときに実変速比が最大変速比となるように、変化勾配Δ2に応じて設定すればよい。また、変化勾配Δ2は、例えば、変速機10の仕様等に応じて変化勾配Δ1より小さく0より大きい範囲内で設定されればよい。図6の例では、ECU7は、車両2の車速が所定車速Vthより高い車速V3になった時点で、目標入力回転数を低減し、モータ11を駆動してこのモータ11が発生させる動力によってサブポンプ62を駆動する。その後、ECU7は、実変速比が最大変速比となった後は最ロー側変速線γmaxに沿って最大変速比を維持する。
つまり、この車両用制御システム201は、モータ11が発生させる動力によってサブポンプ62を駆動することで、適正な吐出油圧を確保した上で、実変速比が最大変速比に至る前に目標入力回転数を最低入力回転数N3から下げて、実際の入力回転数を下げることができる。この結果、車両用制御システム201は、実際の入力回転数をはやめに下げることができることから、エンジン3が作動した状態での減速時に車両2に大きな減速度が作用することを確実に抑制することができ、また例えば、一旦フューエルカットした後、フューエルカット復帰時のショックも低減でき、ドライバビリティを向上することができる。
以上で説明した実施形態に係る車両用制御システム201によれば、動力伝達装置5は、動力の伝達経路における切替クラッチC1と駆動輪4との間に設けられエンジン3の動力を変速して出力可能な変速機10を含み、この変速機10が車両2の車速に対する変速機10への入力回転数の変化量を調節可能であり、ECU7は、車両2の惰性走行時に、変速機10を制御し、エンジン3の作動が停止し切替クラッチC1にてエンジン3とインプットシャフト51とが切り離された状態で車両2の車速が所定車速以下の走行領域における上記変化量と比較して、エンジン3が作動し切替クラッチC1にてエンジン3とインプットシャフト51との間で動力が伝達される状態で車速が所定車速より大きい走行領域における上記変化量を相対的に小さくすると共に、上記変化量を相対的に小さくする走行領域においてモータ11を制御しこのモータ11が発生させる動力によって補機を駆動する。したがって、車両用制御システム201は、ドライバビリティを向上することができる。
[実施形態3]
図7は、実施形態3に係る油圧制御装置の概略構成を示す模式図である。実施形態3に係る車両用制御システムは、第1切替部を備える点で実施形態2とは異なる。
本実施形態の車両用制御システム301は、図7に例示するように、油圧制御装置306を備える。この油圧制御装置306は、メインポンプ61を吐出/空廻し切り替え可能な油圧回路を備える。
より詳細には、油圧制御装置306は、メインポンプ61と、サブポンプ62と共に、ストレーナ363と、第1切替部としての切替弁364と、複数の油路365a〜365eとを含んで構成される。ストレーナ363は、オイルパンなどに貯留される作動油を吸入する部分である。切替弁364は、車両2の運転状態に応じてサブポンプ62の作動状態を吐出状態と空廻し状態とに切り替え可能なものである。ここで、サブポンプ62の吐出状態とは、作動油が加圧されて吐出される状態であり、サブポンプ62の空廻し状態とは、作動油が加圧されずに空廻しされる状態である。
ストレーナ363は、油路365aを介してメインポンプ61の吸入口に接続される。メインポンプ61は、吐出口が油路365bを介してライン圧回路306Aに接続される。ライン圧回路306Aは、例えば、プライマリレギュレータバルブ等を含む油圧回路であり、動力伝達装置5等を作動させるための油圧回路である。また、ストレーナ363は、油路365aから分岐する油路365cを介してサブポンプ62の吸入口に接続される。サブポンプ62は、吐出口が切替弁364及び油路365bに合流する油路365dを介してライン圧回路306Aに接続される。メインポンプ61は、駆動することでストレーナ363、油路365aを介してオイルパン内の作動油を吸入し、吸入した作動油を昇圧後に油路365bを介してライン圧回路306A側に吐出する。サブポンプ62は、駆動することでストレーナ363、油路365a、油路365cを介してオイルパン内の作動油を吸入し、吸入した作動油を昇圧後に切替弁364、油路365d、油路365bを介してライン圧回路306A側に吐出する。
切替弁364は、サブポンプ62の吐出口側に設けられており、サブポンプ62の吐出先を油路365dと油路365eとの間で切り替え可能である。油路365eは、空廻し油路であり、サブポンプ62の吸入口側、ここでは、油路365cに接続される。切替弁364は、例えば、ソレノイド、スプール、弾性部材などからなる電磁弁等を含んで構成される。切替弁364は、ECU7に接続されており、このECU7により駆動が制御される。切替弁364は、例えば、ソレノイドの非通電時(OFF制御時)にサブポンプ62の吐出口と油路365dとを接続する状態となる一方、ソレノイドの通電時(ON制御時)にサブポンプ62の吐出口と油路365eとを接続する状態となる電磁弁により構成される。この結果、サブポンプ62は、切替弁364がOFF制御されると吐出状態となり、ON制御されると空廻し状態となる。
ECU7は、車両2の運転状態に応じて切替弁364の駆動を制御する。ECU7は、例えば、エンジン3が作動した状態(かつ例えばロックアップON時)でのエンジン駆動走行中に、車両2での作動油の必要油圧(必要流量)が所定油圧(所定流量)より少ない場合に、切替弁364をON制御し、サブポンプ62を空廻し状態とする。ECU7は、基本的には上記以外の場合には切替弁364をOFF制御し、サブポンプ62を吐出状態とする。
ここで、必要油圧に対して設定される所定油圧は、例えば、その時点でメインポンプ61の吐出油圧だけでまかなうことができる油圧等に応じて定められる。メインポンプ61は、エンジン3によって駆動されるものであることから、所定油圧は、例えばその時点でのエンジン回転数(あるいは入力回転数)に応じて定まる。このため、ECU7は、例えば、エンジン回転数等を監視することで、車両2での作動油の必要油圧が予め設定される所定油圧より少ないか否かを判定することもでき、例えば、エンジン回転数が予め設定された所定回転数以上であるときには、メインポンプ61の吐出油圧だけで必要油圧をまかなうことができることから、切替弁364をON制御し、サブポンプ62を空廻し状態とする。
この結果、車両用制御システム301は、所定の運転状態ではサブポンプ62を空廻し状態とすることで、サブポンプ62の仕事量(ポンプ負荷)を抑制しサブポンプ62におけるポンプ駆動損失を低減することができ、この結果、例えばさらに燃費を向上することができる。また、車両用制御システム301は、例えば、エンジン3が作動した状態で、車両2の惰性走行時(例えば、アクセルオフのコースト走行アイドルON時)に、上記のようにサブポンプ62を空廻し状態とした場合には、負トルクが低減されることでエンジン3が作動した状態での減速時に車両2に大きな減速度が作用することをより確実に抑制することができ、例えば、不要な最加速も低減できるので、燃費をさらに向上することができる。
以上で説明した実施形態に係る車両用制御システム301によれば、サブポンプ62の作動状態を作動油が加圧されて吐出される吐出状態と作動油が加圧されずに空廻しされる空廻し状態とに切り替え可能な切替弁364を備え、ECU7は、エンジン3が作動した状態で、車両2での作動油の必要油圧(必要流量)が所定油圧(所定流量)より少ない場合に、切替弁364を制御し、サブポンプ62を空廻し状態とする。したがって、車両用制御システム301は、燃費を向上することができる。
[実施形態4]
図8は、実施形態4に係る油圧制御装置の概略構成を示す模式図である。実施形態4に係る車両用制御システムは、蓄圧機構、第2切替部を備える点で実施形態3とは異なる。
本実施形態の車両用制御システム401は、図8に例示するように、油圧制御装置406を備える。この油圧制御装置406は、蓄圧機構としてのアキュムレータ466と、アキュムレータ466を給排出/蓄圧切り替え可能な油圧回路とを備える。
より詳細には、油圧制御装置406は、さらに、アキュムレータ466と、第2切替部としての切替弁467と、プレッシャーリリーフバルブ468と、複数の油路465f、465gとを含んで構成される。アキュムレータ466は、メインポンプ61又はサブポンプ62によって加圧された作動油の圧力を蓄圧可能なものである。切替弁467は、車両2の運転状態に応じてアキュムレータ466の作動状態を給排出状態と蓄圧状態とに切り替え可能なものである。ここで、アキュムレータ466の給排出状態とは、作動油の油圧(圧力)を給排出する状態、すなわち、作動油の油圧を蓄圧する状態又は蓄圧した油圧を排出する状態である。アキュムレータ466の蓄圧状態とは、蓄圧した圧力を保持する状態である。
アキュムレータ466は、油路365bから分岐する油路465f、切替弁467等を介してメインポンプ61の吐出口及びサブポンプ62の吐出口に接続される。切替弁467は、油路465f上に設けられ、この油路465fを遮断状態と解放状態とに切り替え可能である。プレッシャーリリーフバルブ468は、アキュムレータ466と切替弁467との間で油路465fから分岐する油路465gを介してアキュムレータ466に接続される。
切替弁467は、例えば、ソレノイド、スプール、弾性部材などからなる電磁弁等を含んで構成される。切替弁467は、ECU7に接続されており、このECU7により駆動が制御される。切替弁467は、例えば、ソレノイドの非通電時(OFF制御時)に油路465fを遮断する状態となる一方、ソレノイドの通電時(ON制御時)に油路465fを解放する状態となる電磁弁により構成される。この結果、アキュムレータ466は、切替弁364がOFF制御されると蓄圧状態となり、ON制御されると給排出状態となる。プレッシャーリリーフバルブ468は、アキュムレータ466の状態に応じて解放状態となることで、アキュムレータ466に蓄圧される油圧が過剰になることを防止する。
ECU7は、車両2の運転状態に応じて切替弁467を制御する。ECU7は、例えば、エンジン3が作動し切替クラッチC1にてエンジン3とインプットシャフト51との間で動力が伝達される状態で、車両2の惰性走行時に、切替弁467をON制御し、アキュムレータ466を給排出状態とする。これにより、アキュムレータ466は、車両2の惰性走行時にメインポンプ61、サブポンプ62によって加圧された作動油の油圧を蓄圧(回生蓄圧)することができる。ECU7は、アキュムレータ466が油圧を蓄圧すると、切替弁467をOFF制御し、アキュムレータ466を蓄圧状態とする。この結果、車両用制御システム401は、車両2の惰性走行による運動エネルギを活用してメインポンプ61、サブポンプ62を駆動してアキュムレータ466に油圧を蓄圧できるので、結果的に燃費を向上することができる。なお、ECU7は、上記以外の運転状態、例えば車両2のエンジン駆動時などの通常走行時において、切替弁467をON制御し、アキュムレータ466を給排出状態として、アキュムレータ466に作動油の油圧を蓄圧してもよい。
また、ECU7は、例えば、アキュムレータ466に所定の圧力が蓄圧された状態で、エンジン3の作動が停止し、切替クラッチC1にてエンジン3とインプットシャフト51とが切り離された状態で、必要に応じて切替弁467をON制御し、アキュムレータ466を給排出状態とする。これにより、アキュムレータ466は、蓄圧した作動油の油圧をライン圧回路306Aに供給することができる。この結果、車両用制御システム401は、サブポンプ62の容量をメインポンプ61の容量よりも小さくした場合であっても、例えば、車両2での必要油圧が比較的に大きくなるような運転状態、例えば車両2の急変速時、急制動時などに、アキュムレータ466に蓄圧された油圧を排出しライン圧回路306Aに供給することで、必要油圧に対してライン圧回路306Aに供給される実際の油圧が不足することを確実に防止することができる。また、車両用制御システム401は、モータ11の動力によってサブポンプ62を駆動する頻度を低減することができるので、さらに電力損失を低減し、燃費を向上することができる。よって、車両用制御システム401は、燃費を向上した上で、確実に動力伝達装置5等を適正に作動させることができる。
なお、ECU7は、上記車両2での必要油圧が比較的に大きくなるような運転状態以外の運転状態で、切替弁467をON制御し、アキュムレータ466に蓄圧された油圧を排出しライン圧回路306Aに供給するようにしてもよい。この場合、ECU7は、例えば、作動油の油圧を用いる際に、モータ11が発生させる動力によってサブポンプ62を駆動する制御より、切替弁467を制御しアキュムレータ466によって蓄圧された油圧を排出する制御を優先して行うことが好ましい。
ECU7は、例えば、アキュムレータ466に予め設定される第1所定圧力の油圧が蓄圧された後にエンジン3の作動が停止し切替クラッチC1が解放状態となった場合、アキュムレータ466に蓄圧された圧力を用いて車両2を制御し動力伝達装置5等を制御し、このアキュムレータ466に蓄圧された油圧が予め設定される第2所定圧力以下となった後に、モータ11が発生させる動力によってサブポンプ62を駆動して加圧された作動油の油圧を用いて車両2を制御し動力伝達装置5等を制御するようにするとよい。ここで、第1所定圧力は、例えば、モータ11が発生させる動力によってサブポンプ62を駆動することで確保する油圧+αの油圧であり、第2所定圧力は、例えば、モータ11が発生させる動力によってサブポンプ62を駆動することで確保する油圧+β(α>β)の油圧である。この結果、車両用制御システム401は、モータ11の動力によってサブポンプ62を駆動する頻度をさらに低減することができるので、さらに電力損失を低減し、燃費を向上することができる。
また、本実施形態のECU7は、切替弁364のON・OFF制御に関し、さらに詳細には、エンジン3が作動した状態で、車両2の惰性走行時(例えば、アクセルオフのコースト走行アイドルON時)には、車両2での作動油の必要油圧が予め所定油圧より少なく、かつ、アキュムレータ466による蓄圧が不要である場合に、切替弁364を制御し、サブポンプ62を空廻し状態とする、ECU7は、基本的には上記以外の場合には切替弁364をOFF制御し、サブポンプ62を吐出状態とする。惰性走行時に行う蓄圧である回生蓄圧が不要である場合としては、例えば、すでにアキュムレータ466に予め設定された所定油圧が蓄圧されている場合などがあげられる。
この結果、車両用制御システム401は、所定の運転状態ではサブポンプ62を空廻し状態とすることで、サブポンプ62の仕事量(ポンプ負荷)を抑制しサブポンプ62におけるポンプ駆動損失を低減することができ、この結果、例えばさらに燃費を向上することができ、また、エンジン3が作動した状態での減速時に車両2に大きな減速度が作用することをより確実に抑制することができる。
以上で説明した実施形態に係る車両用制御システム401によれば、メインポンプ61又はサブポンプ62によって加圧された作動油の油圧を蓄圧可能なアキュムレータ466と、アキュムレータ466の作動状態を、作動油の油圧を給排出する給排出状態と、蓄圧した油圧を保持する蓄圧状態とに切り替え可能な切替弁467とを備える。したがって、車両用制御システム401は、燃費を向上した上で、動力伝達装置5等を適正に作動させることができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る車両用制御システムは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係る車両用制御システムは、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよい。
以上で説明した車両用制御システムの制御装置は、ECU7とは別個に構成され、ECU7と電気的に接続され、相互に検出信号や駆動信号、制御指令等の情報の授受を行う構成としてもよい。以上で説明した走行用駆動源は、エンジンに限られない。以上で説明した変速機は、例えば、手動変速機(MT)、有段自動変速機(AT)、トロイダル式の無段自動変速機(CVT)、マルチモードマニュアルトランスミッション(MMT)、シーケンシャルマニュアルトランスミッション(SMT)、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)などを用いてもよい。以上で説明した第1ポンプと第2ポンプとは、その吐出容量がほぼ同等に設定されていてもよいし、第2ポンプの吐出容量が第1ポンプの吐出容量より大きく設定されていてもよい。