以下、図面を参照しつつ本発明に係る光検出装置及び光検出システムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る光源装置の概略構成を示す平面図である。同図に示す光源装置1は、半導体検査装置等の各種検査装置において、特定の発光波長域(例えば、近赤外波長域)を有する光源として用いられる装置である。この光源装置1は、光源からの光のうちの特定の波長域を選択する分光装置の一態様であり、放熱機構としてのヒートシンク2上に取り付けられた光源3と、その光源3から照射された光が入射されて、その光を変換して光ファイバ4を経由して外部出力する光変換光学系5と、光源3及び光変換光学系5を制御する制御系30とから構成されている。ここで、図1においては、紙面上において光源3の光軸に沿った方向にX軸をとり、紙面上においてX軸に垂直な方向に沿ってY軸、X軸及びY軸に垂直な方向に沿ってZ軸をとるものとする。
光源3は、発光波長域として可視光成分から赤外成分までの所定波長域を広く含むハロゲンランプ、白色LED等の光源装置であり、+X軸方向に位置する光変換光学系5に向けて非偏光状態の拡散光を出射する。
まず、光変換光学系5の構成について説明する。この光変換光学系5には、光源3の近傍から+X軸方向に沿って順に、コリメートレンズ6、波長選択素子7、及びフィルタ回転体8が設けられている。
光源3からの拡散光はコリメートレンズ6によって平行光L1に変換され、波長選択素子7に入射する。波長選択素子7は、光源3の発光波長域を波長域として有する平行光L1のうち、所定の波長範囲(例えば、350nm〜750nm)の光を選択するための素子であり、例えば、上記所定の波長範囲の光を透過し、その波長範囲以外の光を反射させるダイクロイックミラーである。この波長選択素子7はその反射面をX軸に対して傾斜させて配置されている。コリメートレンズ6から平行光L1が入射すると、波長選択素子7は、所定の波長範囲を有する光L2をフィルタ回転体8に向けて+X軸方向に透過させ、それ以外の波長成分の光を不必要な光として−Y軸方向に反射させてビームダンパー9で消失させる。なお、波長選択素子7が選択する波長範囲は、光源装置1から最終的に出力される光の波長可変範囲(例えば、400nm〜700nm。以下、「想定波長範囲」と呼ぶ。)を少なくとも含むように設定されている。
ここで、図2を参照して、フィルタ回転体8の構造について詳細に述べる。
フィルタ回転体8は、Z軸に沿った回転軸を有する回転機構14によって回転可能に支持された円板状部材である回転テーブル(回転支持部材)10と、回転テーブル10の主面10a上にその周縁に沿って回転対称となるように立設された4枚のバンドパスフィルタ11a,11b,11c,11dとによって構成されている。
これらのバンドパスフィルタ11a,11b,11c,11dは、光入射面12と光出射面13との間に公知の誘電体薄膜の積層構造を含む平板状の形状を有する、いわゆる誘電体薄膜干渉型フィルタである。このような構造により、バンドパスフィルタ11a,11b,11c,11dは、光入射面12に対する光の入射角に応じた波長範囲で光を選択的に透過することができる。そして、4枚のバンドパスフィルタ11a〜11d間で入射角に対する透過波長域の特性が異なるように、それぞれの誘電体薄膜の材料や膜厚が設定されている。例えば、バンドパスフィルタ11aは、光入射面12に対する光の入射角が0度の場合は、中心波長が約700nmで半値幅が数nmの透過波長域の特性を有し、入射角を大きくするに従って透過波長域が短波長側にシフトし、入射角が50度の場合は中心波長が約600nmの透過波長域の特性を有する。また、バンドパスフィルタ11b,11c,11dは、それぞれ、入射角が0度の場合に中心波長が約610nm、約530nm、約460nmとなるバンドパスフィルタ11aとは異なる透過波長域特性を有する。図3には、S偏光およびP偏光の入射光に対するバンドパスフィルタ11a〜11dの透過波長域のピーク波長の入射角依存性を示す。このように、入射角が0度のピーク波長を基準にして入射角の絶対値が大きくなるに従ってピーク波長が小さくなり、その変化率は入射角の絶対値が大きくなるほど大きくなる。
図2に戻って、上記構成のバンドパスフィルタ11a〜11dは、回転テーブル10の主面10aに対して、その光入射面12および光出射面13がほぼ垂直になるように固定されている。詳細には、バンドパスフィルタ11a〜11dの主面10a上の中心点15a〜15dと主面10aの回転中心C1とを結んだ線が、それぞれ、バンドパスフィルタ11a〜11dの光入射面12および光出射面13に対して傾斜し、その傾斜角が互いに等しくなるように設定されている。さらに、それぞれの光出射面13と主面10aとで形成される4つの交線16a〜16dが、1つの仮想的な内接円17に接し、かつ、バンドパスフィルタ11a〜11dの中心点15a〜15dがこの内接円17の外側に位置するように設定されている。加えて、バンドパスフィルタ11a〜11dは、その中心点15a〜15dと回転中心C1とを結ぶ4つの線が互いに等角度、すなわち90度を成すように配置されている。すなわち、4つのバンドパスフィルタ11a〜11dは、主面10a上において回転中心C1を中心にして4回回転対称となるように配置されることになる。
また、バンドパスフィルタ11a〜11dには、その中心点15a〜15dの近傍にその中心点15a〜15dと回転中心C1とを結んだ線に対する光入射面12および光出射面13の傾斜角を微調整するためにシャフト部材やネジ部材等の回転軸部材18a〜18dが取り付けられていてもよい。
上記構造のフィルタ回転体8は、主面10aがXY平面に平行となり、主面10a上の回転中心C1と主面10aの周縁部との間に光L2が入射するように配置される。これにより、バンドパスフィルタ11a〜11dのいずれかを光L2の光路上に位置するように回転させて選択的に光L2を入射させることが可能になるとともに、バンドパスフィルタ11a〜11dに対する入射角を所定の角度範囲で変更可能にされる。この場合の各バンドパスフィルタの入射角の可変範囲は、光L2のビーム幅、バンドパスフィルタの枚数、及びバンドパスフィルタの形状や配置によって決まる。
図1に戻って、光変換光学系5には、フィルタ回転体8によって透過された光L3の光軸に沿って、+X軸方向に順に、ビームサンプラー21、シャッタ22、及び集光レンズ23が配設されている。光L3は、その一部がビームサンプラー21によって反射されて、パワーモニタ24に導かれてその光強度がモニタされる。その一方で、光L3は、ビームサンプラー21、シャッタ22、集光レンズ23を介して光ファイバ4に導光されることにより、外部に照射される。
次に、制御系30の構成について説明すると、制御系30は、光源3を給電する光源用電源31と、回転機構14を回転駆動する駆動回路32と、光源用電源31、駆動回路32、及びパワーモニタ24に接続された制御回路33とから構成されている。
この制御回路33にはコンピュータ端末34が接続され、コンピュータ端末34に対してパワーモニタ24によってモニタされた光強度値が出力可能にされるとともに、コンピュータ端末34からの制御信号に応じて光源用電源31の出力を調整することにより、光源3の光量調整も可能にされる。
また、制御回路33は、コンピュータ端末34からの制御信号に応じて、回転機構14の回転角を制御する機能も有する。このとき、制御回路33は、バンドパスフィルタ11a〜11dに対する入射角が所定の角度になるように回転機構14の回転角を変更制御する。この回転角は、光源装置1から最終的に出力される発光波長域の中心波長に対応して定められる。
図4を参照して、バンドパスフィルタ11aの入射角の可変範囲について例示する。同図では、光L2のビーム径が5mm、バンドパスフィルタ11aの主面10aに沿った幅及び厚さが11mm、2mm、回転中心C1からバンドパスフィルタ11aまでの最短距離R1が16.6mmの場合のバンドパスフィルタ11aへの光L2の入射状態を示している。まず、図4(a)には、バンドパスフィルタ11aの入射角が0度の場合を示しており、このとき光L2の光路上には他のバンドパスフィルタが位置しないために、バンドパスフィルタ11a〜11d間で干渉することはない。また、図4(b)には、バンドパスフィルタ11a〜11dを反時計回りに回転させてバンドパスフィルタ11aへの入射角を25度に設定した状態、図4(c)には、バンドパスフィルタ11a〜11dを反時計回りにさらに回転させてバンドパスフィルタ11aへの入射角を50度に設定した状態を示しており、どちらの場合もバンドパスフィルタ11a〜11d間で干渉することはない。図4(c)の状態からさらに回転させると、バンドパスフィルタ11bが光L2の光路上に入ってきてしまうため、2つのバンドパスフィルタ11a,11b間で互いの透過特性が干渉し合って安定した発光波長が得られなくなる。従って、この場合の各バンドパスフィルタ11a〜11dの入射角の可変範囲は0度〜50度ということになる。
図5には、本実施形態においてバンドパスフィルタ11a〜11dへの入射角を0度〜50度の範囲で変更した場合の光透過率の波長特性を示している。特性GA,GB,GC,GDは、それぞれ、バンドパスフィルタ11a,11b,11c,11dに対する入射角の変化に対応する光透過率の波長特性に対応する。このように、バンドパスフィルタ11a〜11dを切り替えながらそれらに関する入射角も制御することで、光源装置1の発光波長の可変域として約400nm〜700nmまでの広い範囲が実現されることがわかる。
以上説明した光源装置1によれば、光源3から回転テーブル10の主面10aに沿って光L2が入射されて、その光L2がバンドパスフィルタ11a〜11dへの入射角に応じた波長範囲で選択的にバンドパスフィルタ11a〜11dを透過されて出力される。このとき、回転テーブル10を主面10aの回転中心C1を中心に回転させることによって、光L2が透過する4個のバンドパスフィルタ11a〜11dを交互に切り替えることができると共に、それぞれのバンドパスフィルタ11a〜11dへの光L2の入射角も所定角度範囲で変化させることができ、その結果、発光波長を連続的に変更することが可能になる。
特に、バンドパスフィルタ11a〜11dを、その光入射面12が主面10a上の回転中心C1とバンドパスフィルタ11a〜11dの中心点15a〜15dとを結ぶ線に対して傾斜するように配置することで、複数のバンドパスフィルタ11a〜11d間の干渉が広い回転角(入射角)の範囲で低減される結果、回転テーブル10を大きくすること無しに発光波長の可変範囲を容易に広くすることができる。
また、4個のバンドパスフィルタ11a〜11dは、主面10aと光入射面12又は光出射面13とで形成されるそれぞれの交線16a〜16dが1つの内接円17に接するように搭載されているので、それぞれのバンドパスフィルタ11a〜11dの光の入射角の可変範囲を均等にすることができ、限られた回転テーブル10の面積に対して発光波長の可変範囲を効率良く広げることが出来る。
また、4個のバンドパスフィルタ11a〜11dは、それぞれ、主面10a上において内接円17の外側に位置するので、バンドパスフィルタ11a〜11d間の干渉をより一層低減することが出来る。
さらに、4個のバンドパスフィルタ11a〜11dは、回転中心C1とバンドパスフィルタ11a〜11dの中心点15a〜15dとを結ぶ線が互いに等角度を成しており、主面10a上において回転中心C1を中心にして4回回転対称となるように配置されているので、それぞれのバンドパスフィルタ11a〜11dの光の入射角の可変範囲を均等にすることができ、限られた回転テーブル10の面積に対して発光波長の可変範囲をさらに効率良く広げることが出来る。
ここで、本実施形態による発光波長の可変範囲の拡大効果を、比較例と比較することにより説明する。図17及び図18は、本発明の比較例であるフィルタ回転体の構造を示す平面図である。
図17に示すフィルタ回転体908Aは、バンドパスフィルタ11a〜11dの主面10aに沿った幅及び厚さが10mm、2mmであって、バンドパスフィルタ11a〜11dが、回転中心C1からの最短距離が1mm、回転中心C1と中心点15a〜15dとを結ぶ線に対する光入射面12の傾斜角が0度となるように配置された例である。このフィルタ回転体908Aを回転させた場合は、バンドパスフィルタ11a〜11d間で干渉を生じないためには、ビーム径が5mmの光L2の入射角の可変範囲が0度(図17の実線で示す状態)〜21度(図17の点線で示す状態)に制限される。
また、図18(a)に示すフィルタ回転体908Bは、フィルタ回転体908Aの回転中心C1からの最短距離を5mmに広げた場合の例である。この場合、ビーム径が5mmの光L2の入射角の可変範囲が0度〜27度となりやや拡がるが、本実施形態のフィルタ回転体8に比較するとかなり制限されている。
また、図18(b)に示すフィルタ回転体908Cは、フィルタ回転体908Aに対して、バンドパスフィルタ11a〜11dの幅及び厚さを18mm、2mmに変更し、回転中心C1からの最短距離を32mmに広げた場合の例である。この場合、ビーム径が5mmの光L2の入射角の可変範囲が0度〜39度と拡大されるが、本実施形態のフィルタ回転体8に比較すると狭くなっている。それにもかかわらず、フィルタ回転体8の回転テーブル10の直径約30mmに比較して、フィルタ回転体908Cの回転テーブル10の直径を102mm程度にかなり大きくする必要がある。
このように、バンドパスフィルタ11a〜11dを回転中心C1と中心点15a〜15dとを結ぶ線に沿って配置した場合は、隣接するフィルタ間の干渉によりフィルタ1枚あたりに割り当てられる入射角度に制約が発生してしまう。また、バンドパスフィルタ11a〜11dへの入射角が0度を跨った正負の角度の範囲となるため(例えば、フィルタ回転体908Aの場合、±21度の範囲)、実質的な入射角変化量が角度可変範囲の半分の角度となってしまう。これに対して、バンドパスフィルタ11a〜11dを回転中心C1と中心点15a〜15dとを結ぶ線に傾斜させて配置した本実施形態の場合は、フィルタ1枚あたりに割り当てられる入射角度を効率的に広げることが出来ると共に、その入射角度の可変範囲を有効に利用して実質的な入射角を変化させることができる。さらに、本実施形態の場合は、そのようなメリットをフィルタ回転体8を大型化することなく実現することができる。
ここで、図1において、波長選択素子7からビームダンパー9に導かれる波長成分に関しても、フィルタ回転体および回転機構を含む同様な構成の波長選択機構を設けることで、異なる波長域の2つの波長の光を同時に出力可能となる。また、この場合に波長選択素子7をハーフミラーとすれば、同じ波長域において2つの波長の光を同時に出力可能となる。更にこの場合に、波長選択素子7の透過率を適宜選択して複数段配置し、それに対応して波長選択機構を設けることで、多波長出力を得ることも可能になる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る光源装置の概略構成を示す平面図である。同図に示す光源装置101と第1実施形態にかかる光源装置1との相違点は、フィルタ回転体8と同一構成を有する2つのフィルタ回転体8A,8Bを用いて、光L2から分離された2つの直線偏光成分L4,L5を、それぞれP偏光としてフィルタ回転体8A,8Bを透過させる構成を有する点である。
詳細には、光源装置101の光変換光学系105には、偏光分離素子25、ミラー26,27、偏光合成素子28、フィルタ回転体8A,8B、及び2つのフィルタ回転体8A,8Bを回転させる回転機構14A,14Bが設けられている。
偏光分離素子25は、波長選択素子7を透過した光L2を受け、光L2を互いに直交する2つの直線偏光成分に分離するための光学素子であり、例えば、キューブ状の偏光ビームスプリッタ(PBS)である。具体的には、この偏光分離素子25は、光L2からY軸に沿った偏光方向を有する偏光成分L4(以下、「水平偏光成分」とも言う。)を分離して+X軸方向に透過させると同時に、光L2からZ軸に沿った偏光方向を有する偏光成分L5(以下「垂直偏光成分」とも言う。)を分離して+Y軸方向に反射させる。
フィルタ回転体8A,8Bは、偏光分離素子25によって透過又は反射される偏光成分L4,L5の光軸上にそれぞれ設けられている。これらのフィルタ回転体8A,8Bにそれぞれ搭載されたバンドパスフィルタ11a〜11dは、2つのフィルタ回転体8A,8B間でP偏光及びS偏光の入射角に対する透過波長域の特性が同一にされている。より具体的には、2つのフィルタ回転体8A,8Bに搭載されるバンドパスフィルタ11a間、バンドパスフィルタ11b間、バンドパスフィルタ11c間、及びバンドパスフィルタ11d間で透過波長域の特性が同一にされている。
フィルタ回転体8Aは、Z軸に沿った回転軸を有する回転機構14Aにその回転テーブル10の主面10aをXY平面に沿わせるように取り付けられ、主面10a上の回転中心C1と主面10aの周縁部との間(図2参照)に水平偏光成分L4が入射するように位置している。これにより、フィルタ回転体8Aは、回転テーブル10を回転させることにより、水平偏光成分L4のバンドパスフィルタ11a〜11dに対する入射角を変更可能にされ、かつ、水平偏光成分L4はバンドパスフィルタ11a〜11dに対して常にP偏光の状態で入射することになる。
フィルタ回転体8Bは、Y軸に沿った回転軸を有する回転機構14Bに回転テーブル10の主面10aをZX平面に沿わせるように取り付けられ、主面10a上の回転中心C1と主面10aの周縁部との間(図2参照)に垂直偏光成分L5が入射するように位置している。また、偏光分離素子25とフィルタ回転体8Bとの間には想定波長範囲のS偏光を全反射するミラー26が配置され、+Y軸方向に出射された垂直偏光成分L5を+X軸方向に反射してフィルタ回転体8Bに入射させるように構成されている。これにより、フィルタ回転体8Bは、回転テーブル10を回転させることにより、垂直偏光成分L5のバンドパスフィルタ11a〜11dに対する入射角を変更可能にされ、かつ、垂直偏光成分L5はバンドパスフィルタ11a〜11dに対して常にP偏光の状態で入射することになる。
ここで、バンドパスフィルタ11a〜11dへP偏光で入射するように回転テーブル10の回転軸がフィルタ回転体8Aとフィルタ回転体8Bとの間で直交した状態となっているが、回転テーブル10の回転軸は同じ方向とし、λ/2板等を用いて偏光面を回転してバンドパスフィルタ11a〜11dへP偏光で入射するようにしてもよい。尚、λ/2板を用いる場所は、バンドパスフィルタの前後にλ/2板を挿入する。
偏光合成素子28は、フィルタ回転体8Aを透過した水平偏光成分L4の光軸上に沿って+X軸方向に配置され、ミラー27は、この偏光合成素子28とフィルタ回転体8Bとの間に配置されている。ミラー27は、想定波長範囲のS偏光を全反射し、フィルタ回転体8Bを透過した垂直偏光成分L5を反射して−Y軸方向に沿って偏光合成素子28に入射させる役割を有する。
この偏光合成素子28は、互いに直交する2つの偏光成分L4,L5を合波するための光学素子であり、例えば、キューブ状の偏光ビームスプリッタ(PBS)が用いられる。具体的には、偏光合成素子28は、X軸に沿って入射する水平偏光成分L4と、Y軸に沿って入射する垂直偏光成分L5を合成して非偏光状態の合成光L3を生成して、+X軸方向に出射させる。偏光合成素子28によって合成された合成光L3は、その一部がパワーモニタ24に導かれると同時に、ビームサンプラー21、シャッタ22、集光レンズ23を介して光ファイバ4に導光されることにより、外部に照射される。
制御系30の制御回路33は、フィルタ回転体8A,8Bに搭載された同一光透過特性を有するバンドパスフィルタ11a、バンドパスフィルタ11b、バンドパスフィルタ11c、及びバンドパスフィルタ11dのいずれかにそれぞれの偏光成分L4,L5が入射し、かつ、その偏光成分L4,L5のバンドパスフィルタ11a〜11dに対する入射角が同一となるように、回転機構14A,14Bの回転角を変更制御する。このように、2つの偏光成分L4,L5の入射角を同一にすれば、フィルタ回転体8A,8Bが、それぞれの入射角に応じた偏光成分L4,L5の透過波長域が一致するように配置されることになる。すなわち、フィルタ回転体8A,8Bを透過後の光成分L4,L5は同じスペクトルプロファイルになる。
このような光源装置101によれば、偏光分離素子25によって分離された水平偏光成分L4がフィルタ回転体8AにP偏光として入射され、偏光分離素子25によって分離された垂直偏光成分L5がフィルタ回転体8Bに水平偏光成分L4と同じ入射角でP偏光として入射された後、2つのフィルタ回転体8A,8Bを透過した光が合波されて外部に出射される。ここで、2つのフィルタ回転体8A,8Bに搭載されたバンドパスフィルタ11a〜11dのP偏光に関する入射角に対する透過波長域の特性は同一にされているので、その入射角を適宜設定することで、想定波長範囲内に亘って発光特性の狭帯域化及び安定化が可能になるとともに、光源からの光を効率よく利用して出射させることができる。
また、2つの偏光成分L4,L5のバンドパスフィルタ11a〜11dへの入射角を異なる角度にすれば、異なる2つの波長出力を同時に得ることもできる。この場合に2つの波長出力の偏光方向は垂直偏光と水平偏光となっており、互いに直交しているが、偏光解消板等を用いて非偏光状態にすることもできる。
図7には、本実施形態において2つのフィルタ回転体8A,8Bのバンドパスフィルタ11a〜11dへの入射角を0度〜50度の範囲で変更した場合の光透過率の波長特性を示している。このように、光源3からの光を2つの直線偏光成分に分けてそれぞれの成分のバンドパスフィルタ11a〜11dへの入射角を制御することで、発光強度特性を広い可変波長域において安定化させることが可能となることがわかる。
[第3実施形態]
図8は、本発明の第3実施形態に係る光源装置の概略構成を示す平面図である。同図に示す光源装置201と第2実施形態にかかる光源装置101との相違点は、偏光成分L4,L5を、それぞれS偏光として2つのフィルタ回転体8C,8Dを透過させる構成を有する点である。
フィルタ回転体8Cは、Y軸に沿った回転軸を有する回転機構14Cにその回転テーブル10の主面10aをZX平面に沿わせるように取り付けられ、主面10a上の回転中心C1と主面10aの周縁部との間(図2参照)に水平偏光成分L4が入射するように位置している。これにより、フィルタ回転体8Cは、回転テーブル10を回転させることにより、水平偏光成分L4のバンドパスフィルタ11a〜11dに対する入射角を変更可能にされ、かつ、水平偏光成分L4はバンドパスフィルタ11a〜11dに対して常にS偏光の状態で入射することになる。
フィルタ回転体8Dは、Z軸に沿った回転軸を有する回転機構14Dに回転テーブル10の主面10aをXY平面に沿わせるように取り付けられ、主面10a上の回転中心C1と主面10aの周縁部との間(図2参照)に垂直偏光成分L5が入射するように位置している。これにより、フィルタ回転体8Dは、回転テーブル10を回転させることにより、垂直偏光成分L5のバンドパスフィルタ11a〜11dに対する入射角を変更可能にされ、かつ、垂直偏光成分L5はバンドパスフィルタ11a〜11dに対して常にS偏光の状態で入射することになる。
ここで、バンドパスフィルタ11a〜11dへS偏光で入射するように回転テーブル10の回転軸がフィルタ回転体8Cとフィルタ回転体8Dとの間で直交した状態となっているが、回転テーブル10の回転軸は同じ方向とし、λ/2板等を用いて偏光面を回転してバンドパスフィルタ11a〜11dへS偏光で入射するようにしてもよい。尚、λ/2板を用いる場所は、バンドパスフィルタの前後にλ/2板を挿入する。
制御系30の制御回路33は、フィルタ回転体8C,8Dに搭載された同一光透過特性を有するバンドパスフィルタ11a、バンドパスフィルタ11b、バンドパスフィルタ11c、及びバンドパスフィルタ11dのいずれかにそれぞれの偏光成分L4,L5が入射し、かつ、その偏光成分L4,L5のバンドパスフィルタ11a〜11dに対する入射角が同一となるように、回転機構14C,14Dの回転角を変更制御する。
このような光源装置101によれば、偏光分離素子25によって分離された水平偏光成分L4がフィルタ回転体8CにS偏光として入射され、偏光分離素子25によって分離された垂直偏光成分L5がフィルタ回転体8Dに水平偏光成分L4と同じ入射角でS偏光として入射された後、2つのフィルタ回転体8C,8Dを透過した光が合波されて外部に出射される。ここで、2つのフィルタ回転体8C,8Dに搭載されたバンドパスフィルタ11a〜11dのS偏光に関する入射角に対する透過波長域の特性は同一にされているので、その入射角を適宜設定することで、想定波長範囲内に亘って発光特性の狭帯域化及び安定化が可能になるとともに、光源からの光を効率よく利用して出射させることができる。
また、2つの偏光成分L4,L5のバンドパスフィルタ11a〜11dへの入射角を異なる角度にすれば、異なる2つの波長出力を同時に得ることもできる。この場合に2つの波長出力の偏光方向は垂直偏光と水平偏光となっており、互いに直交しているが、偏光解消板等を用いて非偏光状態にすることもできる。
図9には、本実施形態において2つのフィルタ回転体8C,8Dのバンドパスフィルタ11a〜11dへの入射角を0度〜50度の範囲で変更した場合の光透過率の波長特性を示している。この場合も、光源3からの光を2つの直線偏光成分に分けてそれぞれの成分のバンドパスフィルタ11a〜11dへの入射角を制御することで、発光強度特性を広い可変波長域において安定化させることが可能となることがわかる。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、フィルタ回転体8に搭載するバンドパスフィルタの枚数としては特定の枚数に限定されるものではなく、想定波長範囲およびフィルタ回転体8の面積に応じて3以上の任意の枚数を選択してよい。
図10には、5枚のバンドパスフィルタ11a〜11eを有するフィルタ回転体108の構造を示している。この場合、光L2のビーム径が5mm、バンドパスフィルタ11a〜11eの主面10aに沿った幅及び厚さが10mm、2mm、回転中心C1からバンドパスフィルタ11a〜11eまでの最短距離R1が15.3mmとなっており、バンドパスフィルタ11a〜11eを反時計回りに回転させると、各バンドパスフィルタ11a〜11eの入射角の可変範囲は0度〜45度に設定される。
また、図11には、6枚のバンドパスフィルタ11a〜11fを有するフィルタ回転体208の構造を示している。この場合、光L2のビーム径が5mm、バンドパスフィルタ11a〜11fの主面10aに沿った幅及び厚さが12mm、2mm、回転中心C1からバンドパスフィルタ11a〜11fまでの最短距離R1が39.4mmとなっており、バンドパスフィルタ11a〜11fを反時計回りに回転させると、各バンドパスフィルタ11a〜11fの入射角の可変範囲は0度〜45度に設定される。
また、図12には、3枚のバンドパスフィルタ11a〜11cを有するフィルタ回転体308の構造を示している。この場合、光L2のビーム径が10mm、バンドパスフィルタ11a〜11cの主面10aに沿った幅及び厚さが18mm、2mm、回転中心C1からバンドパスフィルタ11a〜11cまでの最短距離R1が3.16mmとなっており、バンドパスフィルタ11a〜11cを反時計回りに回転させると、各バンドパスフィルタ11a〜11cの入射角の可変範囲は0度〜50度に設定される。
これに対して、図19(a)に示す本発明の比較例であるフィルタ回転体908Dは、バンドパスフィルタ11a〜11eの主面10aに沿った幅及び厚さが10mm、2mmであって、バンドパスフィルタ11a〜11eが、回転中心C1からの最短距離が1.38mm、回転中心C1とバンドパスフィルタ11a〜11eの中心点とを結ぶ線に対する光入射面の傾斜角が0度となるように配置された例である。このフィルタ回転体908Dを回転させた場合は、バンドパスフィルタ11a〜11e間で干渉を生じないためには、ビーム径が5mmの光L2の入射角の可変範囲が0度〜9度に制限される。また、図19(b)に示す本発明の比較例であるフィルタ回転体908Eは、バンドパスフィルタ11a〜11eの主面10aに沿った幅及び厚さが10mm、2mmであって、バンドパスフィルタ11a〜11eが、回転中心C1からの最短距離が16.38mm、回転中心C1とバンドパスフィルタ11a〜11eの中心点とを結ぶ線に対する光入射面の傾斜角が0度となるように配置された例である。このフィルタ回転体908Eを回転させた場合は、ビーム径が5mmの光L2の入射角の可変範囲が0度〜24度に制限される。さらに、図19(c)に示す本発明の比較例であるフィルタ回転体908Fは、バンドパスフィルタ11a〜11eの主面10aに沿った幅及び厚さが12mm、2mmであって、バンドパスフィルタ11a〜11eが、回転中心C1からの最短距離が32mm、回転中心C1とバンドパスフィルタ11a〜11eの中心点とを結ぶ線に対する光入射面の傾斜角が0度となるように配置された例である。このフィルタ回転体908Fを回転させた場合は、回転テーブル10の径が大きくなるにも関わらず、ビーム径が5mmの光L2の入射角の可変範囲が0度〜29度に制限される。このように、同じ枚数のバンドパスフィルタを用いた図10のフィルタ回転体108に比較して、入射角の可変範囲が大きく制限される。
また、図20に示す本発明の比較例であるフィルタ回転体908Gは、バンドパスフィルタ11a〜11fの主面10aに沿った幅及び厚さが12mm、2mmであって、バンドパスフィルタ11a〜11fが、回転中心C1からの最短距離が32mm、回転中心C1とバンドパスフィルタ11a〜11fの中心点とを結ぶ線に対する光入射面の傾斜角が0度となるように配置された例である。このフィルタ回転体908Gを回転させた場合は、ビーム径が5mmの光L2の入射角の可変範囲が0度〜23度に制限される。このように、同じ枚数のバンドパスフィルタを用いた図11のフィルタ回転体108に比較して、入射角の可変範囲が大きく制限される。
また、図21(a)に示す本発明の比較例であるフィルタ回転体908Hは、バンドパスフィルタ11a〜11cの主面10aに沿った幅及び厚さが18mm、2mmであって、バンドパスフィルタ11a〜11cが、回転中心C1からの最短距離が0.577mm、回転中心C1とバンドパスフィルタ11a〜11cの中心点とを結ぶ線に対する光入射面の傾斜角が0度となるように配置された例である。このフィルタ回転体908Hを回転させた場合は、ビーム径が10mmの光L2の入射角の可変範囲が0度〜38度に制限され、図12のフィルタ回転体308に比較して、入射角の可変範囲が大きく制限される。また、図21(b)に示す本発明の比較例であるフィルタ回転体908Iは、バンドパスフィルタ11a〜11cの主面10aに沿った幅及び厚さが26mm、2mmであって、バンドパスフィルタ11a〜11cが、回転中心C1からの最短距離が14.577mm、回転中心C1とバンドパスフィルタ11a〜11cの中心点とを結ぶ線に対する光入射面の傾斜角が0度となるように配置された例である。このフィルタ回転体908Iを回転させた場合は、ビーム径が10mmの光L2の入射角の可変範囲が0度〜50度となるが、図12のフィルタ回転体308に比較して回転テーブル10の径が2倍以上に大きくなる。
フィルタ回転体8のバンドパスフィルタ11a〜11dに関する入射角度の可変範囲は、バンドパスフィルタ11a〜11dの傾斜角を変更することで様々な範囲に設定することができる。
例えば、入射角度の可変範囲に含まれる最小角度は0度に限定されるものではない。具体的には、図13に示すように、バンドパスフィルタ11a〜11fを、主面10a上の回転中心C1とバンドパスフィルタ11a〜11fの中心点とを結ぶ線に対する光入射面の傾斜角が大きくなるように配置して、バンドパスフィルタ11a〜11fに関する入射角の可変範囲を例えば20度〜50度になるように設定してもよい。同図では、バンドパスフィルタ11a〜11fの主面10aに沿った幅及び厚さが11mm、2mmであって、バンドパスフィルタ11a〜11fが、回転中心C1からの最短距離が16.6mmとなるように設定され、光L2のビーム径が5mmと設定された例を示している。このように、入射角度の可変範囲に含まれる最小角度を0度より大きくすることで、入射角度変化に対する透過波長域の変化を大きくすることができ、全体の波長可変範囲を大幅に広げることができる。例えば、図3に示すような透過波長域のピーク波長の入射角依存性を有するバンドパスフィルタ11aの場合に、入射角を0度〜30度で変化させた場合では、ピーク波長の変化幅が最大ピーク波長に対して5.43%となる。それに対して、バンドパスフィルタ11aの入射角を20度〜50度で変化させた場合では、ピーク波長の変化幅が11.18%となり、同じ入射角の変化で透過波長域の変化を大きくとることができることがわかる。
また、本実施形態の光源装置1,101,201に内蔵されるバンドパスフィルタ11a〜11dは、同一入射角に対する透過波長域における中心波長が互いに異なっていたが、中心波長が同一で半値幅が異なるように構成されていてもよい。図14(a)〜(d)には、それぞれ、バンドパスフィルタ11a〜11dにおいて入射角を0度〜50度の範囲を5度間隔で変化させた場合の透過波長域の特性の一例を示している。このように中心波長が等しいバンドパスフィルタ11a〜11dを用いた場合は、帯域幅を切り換えながら選択波長の可変範囲を容易に広くすることができる。
本発明の分光装置の実施形態としては、上述した光源装置以外に、図15に示すような光検出装置301を挙げることができる。この光検出装置301は、外部から入力された光のうちで所定の波長成分を分光検出するための装置であり、光源装置101と同一構成を有する光変換光学系105と、外部からの光をコリメートレンズ6に導光する光ファイバ303と、光変換光学系105によって分光された光を検出する光検出器304とを備える。このような光検出装置301によっても、外部からの光を分光検出する際に、装置を大型化すること無く検出波長の可変範囲を容易に広げることができる。
また、本発明の応用例としては、図16に示すような、光源装置101と光検出装置301とを組み合わせた蛍光検出システム401を挙げることができる。この蛍光検出システム401では、光源装置101から出力される光を、レンズユニット402Aを経由して試料Aに励起光として照射可能にされ、それに伴い試料Aから発せられた蛍光をレンズユニット402Bを経由して光検出装置301に入力させることにより、所定波長域の蛍光を検出することが可能にされる。このような蛍光検出システム401を用いれば、発光させる励起光の波長域、及び検出する蛍光の波長域を広い範囲で自由に調整することができる。ここで、ある程度限定された試料Aを測定対象にする場合には、光源装置101は、レーザ光源等の一般的な光源に置き換えても良い。
本発明の上述した各実施形態で用いる誘電体薄膜干渉フィルタは、バンドパスフィルタの他、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、ノッチフィルタ等を適用しても良い。