JP5643530B2 - 鋳物の製造方法及び鋳造装置 - Google Patents
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Description
そこで、一般に砂型では、鋳型内に冷やし金を埋設する方法を採用しても、やはり冷却速度が小さいために、冷却速度の大きい鋳造装置としては、単純に金型を利用することが考えられる(特許文献を示すまでも無く周知技術である)。
また、砂型において大きな冷却速度を得る方法として、砂型内に水を浸透させる方法(例えば、特許文献1参照)や、鋳型内に貫通する空気孔を形成して、その空気孔に空気と水との混合したミストを流通させて、中子や主型との熱交換によって溶湯を冷却する方法(例えば、特許文献2参照)があった。
また、砂型を水で冷却する方法は、水を目的とする冷却部位に届かせるには、多くの水量を必要とする上、鋳造後の砂の再利用という点において、砂を乾燥させる工程を必要とするために、エネルギーやコスト的に問題点がある。
また、鋳型内の空気孔にミストを流通させて、主型および中子と熱交換する場合、冷却能力が低いという問題がある。
ミストの噴射は、水だけを供給する場合と異なって、急冷対象領域の表面などに形成される気化膜を、ミスト中に混入される気体である不活性ガスの流れによって強制的に排除できるため、冷却効率が非常に高く、冷却液の使用量を少なくできる。
従って、鋳型内の金属は、急速に凝固して微細な結晶組織になり、強度の大きな製品を作ることができる。
また、気体として不活性ガスを使用することにより、鋳型を形成するバインダーとして有機バインダーを使用しても、その有機バインダーが酸化分解するのを抑制でき、少なくとも鋳型の一部に形成される通気性鋳型部が壊れにくい。
従って、鋳造時に鋳型が壊れ難く、製品キャビティの立体形状を維持しながら鋳造することが可能と成る。
さらに、有機バインダーの炭素成分が鋳物に取り込まれる、いわゆるカーボンピックアップも抑制できる。
従って、鋳造品を取り出す際の鋳型の崩し作業が簡単にできる。
その上、酸素含有気体の通気により、鋳型内に残留するミスト成分を排出して、乾燥させることができ、特に、通気性鋳型部が砂型の場合には、砂の回収および再利用がしやすくなる。
また、自在な寸法変更ができ、その上、通気性が良いために、ミストの気化時には気体が鋳型の外方に速やかに逃がし易く、冷却液の気化時の体積膨張を緩衝吸収することができ、安全性がより高い。
図1、図2に示すように、例えば鉄系金属の鋳物を製造するに当たって、特に耐熱鋳鋼については、注湯後の冷却速度を上げて凝固時に形成される結晶組織を細かくして、強度の高い製品を製作しなければならず、そのために、耐熱材を鋳造するための砂型4を例に挙げて、次に説明する。
製品キャビティ1の下部に連通する湯口2が、上方に延設されて上端部を外方に開口している。
製品キャビティ1に注湯した溶融金属を冷却するために、冷却液と気体とが混合したミストを形成し、且つ、通気性鋳型部を通して製品キャビティ1の急冷対象領域に向けて噴射するノズル部3を、砂型4内に設け、ノズル部3に冷却液と気体を供給する流体供給路を形成する給液配管5と給気配管6とを設けてある。
また、冷却液には水を使用し、気体には、不活性ガスを使用する。
これは、冷却液に水が最も安価で安全であると共に、気化のための潜熱が大きい材料であるからで、また、ミストを形成するために混入する気体に、不活性ガスを使用するのは、空気の場合であれば、砂型4に混入される有機バインダーが、酸化分解して注湯時に型崩れを発生させ易く、しかも、有機バインダーの分解により生じる炭化物が、溶融金属に混入するいわゆるカーボンピックアップ現象が発生する虞があるのに対し、不活性ガスの吹込みでは、有機バインダーの分解を防止でき、所定の形状でしかも品質の良い鋳造品を製造し易くなる。
前記自硬性鋳型の場合は、鋳砂として、珪砂、ジルコン砂、クロマイト砂、オリビン砂、ムライト砂、アルミナ砂等を使用し、その砂に対して、樹脂同士が反応して硬化するフラン、アルカリフェノール、フェノールウレタン等の樹脂を、質量%で0.5〜2%添加する。
前記熱硬化性鋳型の場合は、質量%で、前記鋳砂に対して加熱によって硬化する水ガラスを5〜10%添加するか、フェノール樹脂等を1〜3%添加する。
前記ガス硬化性鋳型の場合は、前記鋳砂に対してガスとの接触により硬化反応するアミン、フェノールウレタン等を質量%で1〜3%添加する。
前記砂型4の強度は、製品キャビティ1を形成する上で常温圧縮強度が1N/mm2以上が必要で、鋳造後の砂型4の分解のためには、上限は3〜7N/mm2と考えられる。
1. 湯口2より溶湯を注湯する前に、予めアルゴンガスのみをノズル部3から噴射して、鋳型内に通流路を確保しておく。
2. 湯口2より製品キャビティ1内に、溶湯を注湯する。
3. 給液配管5および給気配管6を介して水と不活性ガスのアルゴンガス(Ar)を供給して、ノズル部3から水のミストを、急冷対象領域に向けて噴射する。この時、気体の気流に乗って、ミストが型内を抵抗少なく移動するばかりか、製品キャビティ1周りで水が気化して滞留した水蒸気が、新しいミスト気流により追い出され、新鮮なミストが鋳物の急冷対象領域と接触し易く、冷却能が向上する。
4. 前記製品キャビティ1に注湯した溶湯が凝固した後、通気性鋳型部に空気等の酸素含有気体を流す。つまり、溶湯の凝固後に、酸素含有気体をノズル部3より噴射することにより、砂型4の有機バインダーが酸化分解し易く、製品取り出し時に砂型4を崩壊させて、取り出しやすくなる。
尚、製造したサンプルは、外径140mm×内径40mm×全長200mmの大きさのものを、使用した。
材料は、48Ni−27Crの耐熱鋳鋼で、その組成は、次の表1に示す。
材料は、35Ni−27Crの耐熱鋳鋼で、その組成は、次の表3で示す。
〔実施例3〕
つまり、冷却速度は、
ミストによる冷却>水のみによる冷却>従来の砂型冷却
の順に示すように、ミストによる冷却が最も冷却効率は高く、早く鋳造品が冷却されて強度の高い製品としてとりだせることを示す。
以下に他の実施の形態を説明する。
〈2〉 鋳型全体が鋳砂から成る砂型4で形成されるものを示したが、製品キャビティ1を形成する鋳型内面部の少なくとも一部に通気性鋳型部を形成するだけで、残部は、通気性が無いか、もしくは、少ない生型や金属型から成る鋳型部があってもよい。つまり、急冷すべき箇所には、少なくとも通気性鋳型部を設ける必要がある。
〈3〉 ミストに混入する気体は、アルゴンガスに限らず不活性ガスとして、窒素ガスやヘリウムガス等であれば、有機バインダーの分解を抑えることができる。また、砂型4のバインダーとして、無機バインダーや、耐熱性の有機バインダーを使用する場合は、給気配管6に空気を供給してミストを形成しても良い。
〈4〉 前記通気性鋳型部を、砂型4以外にセラミックなどの多孔質の耐火物で形成しても良い。
〈5〉 ノズル部3は、図2では周方向の4箇所に設けた例で示したが、2箇所でも又は5箇所以上に設けてもよく、また、急冷対象領域の大きさや数に応じて適宜設けても良い。
〈6〉 図1,2では、急冷対象領域に水平に向けた配置となっているが、残留する冷却液の排出を促すために、ミストノズルを上方又は斜め上方から急冷対象領域に向けた配置であっても良い。
〈7〉 図1,2では、ミスト発生ノズルを鋳型内に設けた空間に設置した例を示したが、特に砂型である場合は、砂型内に埋設しても良い。つまり、砂型内にミストノズルを埋設することは、製品キャビティとミストノズルの距離を小さくし易くなるため、特に大型鋳物の鋳造時において、砂型の厚みを確保した上でミストノズルをキャビティ近傍に設置でき、鋳型強度を高く維持することができる。さらに、噴射されたミストが鋳型の表面ではじかれることが回避されることも相まって、供給されるミストが鋳物の冷却に使用される効率が高まるという格別の効果を奏する。
3 ノズル部
4 砂型
Claims (6)
- 注湯されるべき空間からなる製品キャビティを形成する鋳型における内面部の少なくとも一部に通気性鋳型部を形成しておいて、
鋳物を冷却する冷却液と不活性ガスとが混合したミストを前記通気性鋳型部を介して製品キャビティの急冷対象領域に向けて噴射して、
製品キャビティに注湯した溶湯を凝固させる鋳物の製造方法。 - 前記鋳型内に設けたノズル部から前記ミストを噴射する請求項1に記載の鋳物の製造方法。
- 前記ミストを前記急冷対象領域に向けて噴射する前に、予め不活性ガスのみを前記通気性鋳型部を介して前記急冷対象領域に向けて噴射しておく請求項1に記載の鋳物の製造方法。
- 前記鋳型の内の少なくとも前記通気性鋳型部は有機バインダーを使用して形成しておいて、前記製品キャビティに注湯した溶湯が凝固した後、前記通気性鋳型部に酸素含有気体を流す請求項1に記載の鋳物の製造方法。
- 注湯されるべき空間からなる製品キャビティを形成する鋳型の内面部の少なくとも一部に通気性鋳型部を形成し、
鋳物を冷却する冷却液と不活性ガスとが混合したミストを前記通気性鋳型部を介して製品キャビティの急冷対象領域に向けて噴射するノズル部を前記鋳型内に設け、
前記ノズル部に冷却液と不活性ガスを供給する流体供給路を設けてある鋳造装置。 - 前記鋳型が砂型である請求項5に記載の鋳造装置。
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