以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に係る極微量油剤供給式加工用油剤組成物(以下、場合により「本実施形態に係る油剤組成物」ともいう。)は、鉱油及び合成油から選ばれる少なくとも1種の基油と、パーフルオロアルキル基を有する化合物とを含有する。
基油は、加工効率、工具寿命、並びに取り扱い性を損なわない限り、通常の潤滑油に用いられる基油であればいずれでも混合して使用することができる。かかる基油としては、鉱油、合成油のいずれであってもよく、これらの混合物であってもよい。
鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を1種又は2種以上を適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱油又はナフテン系鉱油が挙げられる。
合成油としては、具体的には、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレンとプロピレンとのコオリゴマー、エチレンと1−オクテンとのコオリゴマー、エチレンと1−デセンとのコオリゴマー等のポリα−オレフィン又はそれらの水素化物;イソパラフィン;モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、ポリアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン;モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン;ジオクチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジトリデシルグルタレート等の二塩基酸エステル;トリメリット酸等の三塩基酸エステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、トリメチロールプロパンオレート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリールモノエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールジエーテル、ポリプロピレングリコールジエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコールジエーテル等のポリグリコール;モノアルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、モノアルキルトリフェニルエーテル、ジアルキルトリフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル等のフェニルエーテル;シリコーン油;パーフルオロエーテル等のフルオロエーテル、等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の基油の中でも、取り扱い性をさらに向上させる点から、ポリオールエステルが更に好ましい。
本実施形態に用いられるパーフルオロアルキル基を有する化合物において、パーフルオロアルキル基は、直鎖でも分岐でもよいが直鎖が好ましく、飽和でも不飽和でもよく、炭素数1以上18以下、好ましくは1以上12以下、より好ましくは1以上6以下、もっとも好ましくは1以上4以下である。炭素数が19以上であると分解性に劣るため外部に放出された際に環境負荷となり得るため好ましくない。
パーフルオロアルキル基を有する化合物としては、パーフルオロアルキルスルホンアミド、パーフルオロアルキルのアルキレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルアミン、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、及びこれらの塩や誘導体が挙げられる。
パーフルオロアルキルスルホンアミドとしては、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物が好ましい。
[式(1)中、R
1は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数2〜12のアルケニル基を示し、Aは炭素数1〜18のパーフルオロアルキル基を示し、Bは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルカノール基、炭素数6〜18のアリール基、又は一般式(2):
(式(2)中、R
2は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基又は炭素数6〜18のアリール基を示し、R
3は炭素数1〜12のアルキレン基又は炭素数2〜12のアルケニレン基を示す。)
で示される基を示す。]
Aは直鎖でも分岐でもよいが、直鎖が好ましい。また、Aは飽和でも不飽和でもよいが飽和が好ましい。Aの炭素数は、1以上18以下、好ましくは1以上12以下、より好ましくは1以上6以下、もっとも好ましくは1以上4以下である。炭素数が19以上であると分解性に劣るため外部に放出された際に環境負荷となり得るため好ましくない。Bの炭素数は、好ましくは2〜12、より好ましくは3〜8、もっとも好ましくは4〜6である。Bは直鎖でも分岐でも良く、飽和でも不飽和でも良い。R1は炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、より好ましくは1〜6、もっとも好ましくは1〜4であり、直鎖でも分岐でも良く、飽和でも不飽和でも良い。R2は、油剤組成物として用いる場合は、炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基が好ましく、8〜18のアルキル基、アルケニル基がより好ましく、12〜18のアルキル基、アルケニル基がもっとも好ましい。アルキル基、アルケニル基は直鎖でも分岐でも良いが、分岐が好ましい。加工液組成物として用いる場合は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基が好ましく、1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基がより好ましく、2〜3のアルケニル基がもっとも好ましい。アルキル基、アルケニル基は直鎖でも分岐でも良く、飽和でも不飽和でも良い。R3は炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルケニレン基が好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基が好ましい。
パーフルオロアルキルスルホンアミドは、1級アミド、2級アミド、3級アミドのいずれでもよいが、3級アミドが好ましい。
パーフルオロアルキルのアルキレンオキサイド付加物としては、下記一般式(3)で表される化合物が好適である。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられ、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの付加モル数は1以上20以下、好ましくは1以上12以下、より好ましくは1以上8以下、もっとも好ましくは1以上6以下である。単一のアルキレンオキサイドの付加物でも良く、複数のアルキレンオキサイドが混ざった付加物でも良い。この場合、アルキレンオキサイド重合部分はブロック重合体でもランダム重合体でも良いが、ランダム重合体が好ましい。
R4−O−(R5O)a−A (3)
[式(3)中、Aは炭素数1〜18のパーフルオロアルキルを示し、R4は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアシル基を示し、R5は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、aは1〜20の整数を示す。]
パーフルオロアルキルアミンとしては、下記一般式(4)で表される化合物が好適である。窒素に結合したパーフルオロアルキル基の数は1〜3個のいずれでも良いが、好ましくは1個である。また、窒素に結合した3−b個のR6は水素原子を含んでも含まなくてもよいが、1個が水素原子であることが好ましい。さらに、当該化合物が有し得る水素原子以外のR6としては、アルキル基、アルカノール基が好ましい。なお、R6で示されるアルキル基及びアルカノール基は、それぞれ直鎖でも分岐でもよく、飽和でも不飽和でも良い。
(R6)(3−b)−N−Ab (4)
[式(4)中、Aは炭素数1〜18のパーフルオロアルキル基を示し、R6は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアルキルアリール基、炭素数6〜12のシクロアルキル基又は炭素数7〜12のアルキルシクロアルキル基を示し、bは1〜3の整数を示す。]
パーフルオロアルキルスルホン酸は、炭素数1〜18のパーフルオロアルキル基を有するスルホン酸である。また、その塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩などが挙げられる。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム、アルカリ土類としてはマグネシウム、カルシウム、バリウムが用いられる。なかでもナトリウム、カリウムが好ましい。アミンとしてはモノアミン、ポリアミン、アルカノールアミン等が挙げられる。
モノアミンとしては、炭素数1〜22のアルキル基を1〜3個有するアルキルアミン、炭素数2〜23のアルケニル基を有するアルケニルアミン、メチル基を2個と炭素数2〜23のアルケニル基1個を有するモノアミン、芳香族置換アルキルアミン、炭素数5〜16のシクロアルキル基を有するシクロアルキルアミン、メチル基2個とシクロアルキル基を有するモノアミン、メチル基及び/又はエチル基が置換したシクロアルキル基を有するアルキルシクロアルキルアミンが挙げられる。ここでいうモノアミンには、油脂から誘導される牛脂アミン等のモノアミンも含まれる。
ポリアミンとしては、炭素数2〜4のアルキレン基を1〜5個有するアルキレンポリアミン、炭素数1〜23のアルキル基を有するN−アルキルエチレンジアミン、炭素数2〜23のアルケニル基を有するN−アルケニルエチレンジアミン、N−アルキル又はN−アルケニルアルキレンポリアミンが挙げられる。ここでいうポリアミンには油脂から誘導されるポリアミン(牛脂ポリアミン等)も含まれる。
アルカノールアミンとしては、炭素数1〜16のアルコールのモノ、ジ、トリアルカノールアミンが挙げられる。
スルホン酸塩を構成するスルホン酸は、常法によって製造された公知のものを使用することができる。具体的には、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものやホワイトオイル製造時に副生するいわゆるマホガニー酸等の石油スルホン酸、あるいは洗剤等の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生するポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる、直鎖状や分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルホン化したものやジノニルナフタレン等のアルキルナフタレンをスルホン化したもの等の合成スルホン酸等、が挙げられる。
パーフルオロアルキルカルボン酸は、炭素数1〜18のパーフルオロアルキル基にカルボキシル基が結合した化合物である。また、その塩の具体例としては、パーフルオロスルホン酸の塩の場合と同様の塩が挙げられる。
上記のパーフルオロアルキル基を有する化合物の含有量は、油剤組成物全量基準で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上、もっとも好ましくは0.1質量%以上である。また、当該含有量は、油剤組成物全量基準で、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、もっとも好ましくは1質量%以下である。含有量が5質量%を超えると摩擦係数が上昇し加工性に悪影響を及ぼす可能性がある。また、含有量が0.001質量%よりも少ないと効果が得られにくい。
本実施形態に係る油剤組成物は、加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、(B)油性剤を含有することが好ましい。油性剤としては、(B−1)アルコール(但し、下記(B−6)を除く)、(B−2)カルボン酸及びその金属塩、(B−3)不飽和カルボン酸の硫化物、(B−4)下記一般式(5)で表される化合物、(B−5)下記一般式(6)で表される化合物、(B−6)ポリオキシアルキレン化合物、(B−7)エステル(※但し、基油のエステルを除く)、(B−8)多価アルコールのハイドロカルビルエーテル、(B―9)アミン、などを挙げることができる。
[式(5)中、R
7は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、cは1〜6の整数を表し、dは0〜5の整数を表す。]
[式(6)中、R
8は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、eは1〜6の整数を表し、fは0〜5の整数を表す。]
(B−1)アルコールは、一価アルコールとしては、炭素数3〜18の直鎖状のアルコール、炭素数3〜18の分枝状のアルコール又は炭素数5〜10のシクロアルキルアルコール又はアルキルシクロアルキルアルコールが挙げられる。具体的には、直鎖状又は分枝状のプロパノール(n−プロパノール、1−メチルエタノール等を含む)、直鎖状又は分枝状のブタノール(n−ブタノール、1−メチルプロパノール、2−メチルプロパノール等を含む)、直鎖状又は分枝状のペンタノール(n−ペンタノール、1−メチルブタノール、2−メチルブタノール、3−メチルブタノール等を含む)、直鎖状又は分枝状のヘキサノール(n−ヘキサノール、1−メチルペンタノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール等を含む)、直鎖状又は分枝状のヘプタノール(n−ヘプタノール、1−メチルヘキサノール、2−メチルヘキサノール、3−メチルヘキサノール、4−メチルヘキサノール、5−メチルヘキサノール、2,4−ジメチルペンタノール等を含む)、直鎖状又は分枝状のオクタノール(n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−メチルヘプタノール、2−メチルヘプタノール等を含む)、直鎖状又は分枝状のノナノール(n−ノナノール、1−メチルオクタノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、1−(2’−メチルプロピル)−3−メチルブタノール等を含む)、直鎖状又は分枝状のデカノール(n−デカノール、iso−デカノール等を含む)、直鎖状又は分枝状のウンデカノール(n−ウンデカノール等を含む)、直鎖状又は分枝状のドデカノール(n−ドデカノール、iso−ドデカノール等を含む)、直鎖状又は分枝状のトリデカノール、直鎖状又は分枝状のテトラデカノール(n−テトラデカノール、iso−テトラデカノール等を含む)、直鎖状又は分枝状のペンタデカノール、直鎖状又は分枝状のヘキサデカノール(n−ヘキサデカノール、iso−ヘキサデカノール等を含む)、直鎖状又は分枝状のヘプタデカノール、直鎖状又は分枝状のオクタデカノール(n−オクタデカノール、iso−オクタデカノール等を含む)、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ジメチルシクロヘキサノール、シクロヘプタノールなどが挙げられる。
また、多価アルコールとしては、水酸基を2〜8個有する多価アルコールが好ましく用いられる。
2価アルコール(ジオール)としては、具体的には例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2ーメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどが挙げられる。 また、3価以上のアルコールとしては、具体的には例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜20量体)、1,3,5ーペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトースなどの糖類、並びにこれらの部分エーテル化物、及びメチルグルコシド(配糖体)などが挙げられる。これらの中でも、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールが好ましい。
アルコールのなかでも、加工性の観点から分岐鎖を有する飽和の一価アルコールが好ましく用いられる。また、多価アルコールを用いた場合は水酸基の一部がエステル化されたいわゆる部分エステルであってもよい。さらに、2種以上のアルコールを混合して使用することもできる。
アルコールの含有量は、加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、油剤組成物全量基準で、16質量%以上、好ましくは18質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、取り扱い性の点から、油剤組成物全量基準で、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、最も好ましくは80質量%以下である。
(B−2)カルボン酸は一塩基酸でも多塩基酸でもよい。加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、炭素数1〜40の1価のカルボン酸が好ましく、更に好ましくは炭素数5〜25のカルボン酸であり、最も好ましくは炭素数5〜20のカルボン酸である。これらのカルボン酸は、直鎖状でも分岐を有していてもよく、飽和でも不飽和でもよいが、べたつき防止性の点から飽和カルボン酸であることが好ましい。具体的には、前記したエステルの説明において例示した一塩基酸及び多塩基酸と同じものを挙げることができる。
カルボン酸の金属塩としては上記カルボン酸のナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム塩が挙げられる。
(B−3)不飽和カルボン酸の硫化物としては、例えば、上記(B)のカルボン酸のうち、不飽和のものの硫化物を挙げることができる。具体的には、オレイン酸の硫化物を挙げることができる。
(B−4)上記一般式(5)で表される化合物において、R7で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例としては、例えば炭素数1〜30の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアルキルシクロアルキル基、炭素数2〜30の直鎖又は分岐アルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜30のアルキルアリール基、及び炭素数7〜30のアリールアルキル基を挙げることができる。これらの中では、炭素数1〜30の直鎖又は分岐アルキル基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基であり、最も好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキル基である。炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐のプロピル基及び直鎖又は分岐のブチル基を挙げることができる。
水酸基の置換位置は任意であるが、2個以上の水酸基を有する場合には隣接する炭素原子に置換していることが好ましい。cは好ましくは1〜3の整数であり、更に好ましくは2である。dは好ましくは0〜3の整数であり、更に好ましくは1又は2である。一般式(5)で表される化合物の例としては、p−tert−ブチルカテコールを挙げることができる。
(B−5)上記一般式(6)で表される化合物において、R8で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例としては、前記一般式(5)中のR7で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例と同じものを挙げることができ、また好ましいものの例も同じである。水酸基の置換位置は任意であるが、2個以上の水酸基を有する場合には隣接する炭素原子に置換していることが好ましい。eは好ましくは1〜3の整数であり、更に好ましくは2である。fは好ましくは0〜3の整数であり、更に好ましくは1又は2である。一般式(6)で表される化合物の例としては、2,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンを挙げることができる。
(B−6)ポリオキシアルキレン化合物としては、例えば下記一般式(7)又は(8)で表される化合物を挙げることができる。
R9O−(R10O)g−R11 (7)
[式(7)中、R9及びR11は、各々独立に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、R10は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、gは数平均分子量が100〜3500となるような整数を表す。]
X−[(R12O)h−R13]i (8)
[式(8)中、Xは、水酸基を3〜8個有する多価アルコールの水酸基の水素原子の一部又は全てを取り除いた残基を表し、R12は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R13は水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、hは数平均分子量が100〜3500となるような整数を表し、iはXの水酸基から取り除かれた水素原子の個数と同じ数を表す。]
上記一般式(7)中、R9及びR11の少なくとも一方は水素原子であることが好ましい。R9及びR11で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えば上記一般式(5)のR7で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例と同じものを挙げることができ、また好ましいものの例も同じである。R10で表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基(メチルエチレン基)、ブチレン基(エチルエチレン基)を挙げることができる。eは、好ましくは数平均分子量が300〜2000となるような整数であり、更に好ましくは数平均分子量が500〜1500となるような整数である。
また、上記一般式(8)中、Xを構成する3〜8の水酸基を有する多価アルコールの具体例としては、(B−1)アルコールの説明で例示した多価アルコールが挙げられる。
R12で表される炭素数2〜4のアルキレン基の例としては、上記一般式(7)のR10で表される炭素数2〜4のアルキレン基の例と同じものを挙げることができる。またR13で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例としては、上記一般式(5)のR7で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例と同じものを挙げることができ、また好ましいものの例も同じである。i個のR13のうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましく、全て水素原子であることが更に好ましい。hは、好ましくは数平均分子量が300〜2000となるような整数であり、更に好ましくは数平均分子量が500〜1500となるような整数である。
(B−7)エステルの構成アルコールは、1価アルコールでも多価アルコールでもよい。また、(B−7)エステルの構成カルボン酸は一塩基酸でも多塩基酸であってもよい。
エステルを構成する1価アルコール及び多価アルコールの例としては、(B−1)アルコールの説明において例示した1価アルコール及び多価アルコールと同じものを挙げることができる。更に好ましいものについても同じである。またエステルを構成する一塩基酸及び多塩基酸の例としては、(B−2)カルボン酸及びその金属塩の説明において例示した一塩基酸及び多塩基酸と同じものを挙げることができる。更に好ましいものについても同じである。
なお、アルコール成分として多価アルコールを用いた場合、多価アルコール中の水酸基全てがエステル化された完全エステルである。また、カルボン酸成分として多塩基酸を用いた場合、多塩基酸中のカルボキシル基全てがエステル化された完全エステルでもよく、あるいはカルボキシル基の一部がエステル化されずカルボキシル基のままで残っている部分エステルであってもよい。
油性剤としてのエステルの合計炭素数には特に制限はないが、加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、合計炭素数が7以上のエステルが好ましく、9以上のエステルが更に好ましく、11以上のエステルが最も好ましい。またステインや腐食の発生を増大させない点、並びに有機材料との適合性の点から、合計炭素数が60以下のエステルが好ましく、45以下のエステルがより好ましく、26以下のエステルが更に好ましく、24以下のエステルが一層好ましく、22以下のエステルが最も好ましい。
(B−8)多価アルコールのハイドロカルビルエーテルを構成する多価アルコールとしては、通常2〜8価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。3〜8の水酸基を有する多価アルコールの具体例としては、本願発明にかかるアルコールの多価アルコールと同じである。また、これらの多価アルコールは単独でも良く2種以上を混合して用いてもよい。
好ましい多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、グリセリンが最も好ましい。
多価アルコールのハイドロカルビルエーテルとしては、上記多価アルコールの水酸基の一部又は全部をハイドロカルビルエーテル化したものが使用できる。加工効率の向上及び工具寿命の向上の点からは、多価アルコールの水酸基の一部をハイドロカルビルエーテル化したもの(部分エーテル化物)が好ましい。ここでいうハイドロカルビル基とは、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜18のアルキルアリール基、炭素数7〜18のアリールアルキル基等の炭素数1〜24の炭化水素基を表す。
これらハイドロカルビル基の中では、加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、炭素数2〜18の直鎖又は分枝のアルキル基、炭素数2〜18の直鎖又は分枝のアルケニル基が好ましく、炭素数3〜12の直鎖又は分枝のアルキル基、オレイル基(オレイルアルコールから水酸基を除いた残基)がより好ましい。
(B−9)アミンとしては、モノアミンが好ましく使用される。モノアミンの炭素数は、好ましくは6〜24であり、より好ましくは12〜24である。ここでいう炭素数とはモノアミンに含まれる総炭素数の意味であり、モノアミンが2個以上の炭化水素基を有する場合にはその合計炭素数を表す。
本実施形態で用いられるモノアミンとしては、第1級モノアミン、第2級モノアミン、第3級モノアミンの何れもが使用可能であるが、加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、第1級モノアミンが好ましい。
モノアミンの窒素原子に結合する炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等の何れもが使用可能であるが、加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、アルキル基又はアルケニル基であることが好ましい。アルキル基、アルケニル基としては、直鎖状のものであっても分岐鎖状のものであっても良いが、加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、直鎖状のものが好ましい。
本実施形態で用いられるモノアミンの好ましいものとしては、例えば、ヘキシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘプチルアミン(全ての異性体を含む)、オクチルアミン(全ての異性体を含む)、ノニルアミン(全ての異性体を含む)、デシルアミン(全ての異性体を含む)、ウンデシルアミン(全ての異性体を含む)、ドデシルアミン(全ての異性体を含む)、トリデシルアミン(全ての異性体を含む)、テトラデシルアミン(全ての異性体を含む)、ペンタデシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘキサデシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘプタデシルアミン(全ての異性体を含む)、オクタデシルアミン(全ての異性体を含む)、ノナデシルアミン(全ての異性体を含む)、イコシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘンイコシルアミン(全ての異性体を含む)、ドコシルアミン(全ての異性体を含む)、トリコシルアミン(全ての異性体を含む)、テトラコシルアミン(全ての異性体を含む)、オクタデセニルアミン(全ての異性体を含む)(オレイルアミン等を含む)及びこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。これらの中でも、加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、炭素数12〜24の第1級モノアミンが好ましく、炭素数14〜20の第1級モノアミンがより好ましく、炭素数16〜18の第1級モノアミンがさらに好ましい。
本実施形態においては、上記油性剤(B−1)〜(B−9)の中から選ばれる1種のみを用いてもよく、また2種以上の混合物を用いてもよい。これらの中でも、より潤滑性に優れることから、(B−1)アルコール、(B−2)カルボン酸及びその金属塩、(B−3)不飽和カルボン酸の硫化物、(B−7)エステルから選ばれる1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。
上記油性剤の含有量は特に制限はないが、加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、油剤組成物全量基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは2質量%以上である。また、安定性の点から、油性剤の含有量は、油剤全量基準で、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
また、本実施形態に係る油剤組成物は、加工性を向上させる目的で極圧剤を更に含有することが好ましい。好ましい極圧剤としては、後述する硫黄化合物及びリン化合物が挙げられる。
硫黄化合物としては、加工用油剤としての特性を損なわない限りにおいて特に制限されないが、ジハイドロカルビルポリサルファイド、硫化エステル(硫化油脂含む)、硫化鉱油、硫化脂肪酸、ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物及びジチオカルバミン酸モリブデンが好ましく用いられる。
ジハイドロカルビルポリサルファイドとは、一般的にポリサルファイド又は硫化オレフィンと呼ばれる硫黄系化合物であり、具体的には下記一般式(5)で表される化合物を意味する。
R14−Sj−R15 (9)
[式(9)中、R14及びR15は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数3〜20の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基あるいは炭素数7〜20のアリールアルキル基を表し、jは2〜6、好ましくは2〜5の整数を表す。]
上記一般式(9)中のR14及びR15としては、加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、別個に、エチレン又はプロピレンから誘導された炭素数3〜18の分枝状アルキル基であることがより好ましく、エチレン又はプロピレンから誘導された炭素数6〜15の分枝状アルキル基であることが特に好ましい。
硫化エステルとしては、具体的には、牛脂、豚脂、魚脂、菜種油、大豆油などの動植物油脂を任意の方法で硫化した、いわゆる硫化油脂や、不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸又は上記の動植物油脂から抽出された脂肪酸類などを含む)と各種アルコールとを反応させて得られる不飽和脂肪酸エステルを任意の方法で硫化したもの、及び動植物油脂と不飽和脂肪酸エステルの混合物を任意の方法で硫化したものが挙げられる。
硫化鉱油とは、鉱油に単体硫黄を溶解させたものをいう。ここで、硫化鉱油に用いられる鉱油としては特に制限されないが、具体的には、原油に常圧蒸留及び減圧蒸留を施して得られる潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの精製処理を適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などが挙げられる。また、単体硫黄としては、塊状、粉末状、溶融液体状等いずれの形態のものを用いてもよいが、粉末状又は溶融液体状の単体硫黄を用いると基油への溶解を効率よく行うことができるので好ましい。なお、溶融液体状の単体硫黄は液体同士を混合するので溶解作業を非常に短時間で行うことができるという利点を有しているが、単体硫黄の融点以上で取り扱わねばならず、加熱設備などの特別な装置を必要としたり、高温雰囲気下での取り扱いとなるため危険を伴うなど取り扱いが必ずしも容易ではない。これに対して、粉末状の単体硫黄は、安価で取り扱いが容易であり、しかも溶解に要する時間が十分に短いので特に好ましい。また、硫化鉱油における硫黄含有量に特に制限はないが、通常、硫化鉱油全量を基準として好ましくは0.05〜1.0質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
硫化脂肪酸としてはオレイン酸、リノール酸又は動植物油脂から抽出された脂肪酸類など、あるいはこれらの混合物を任意の方法で硫化したものが挙げられる。
ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物及びジチオカルバミン酸モリブデン化合物とは、それぞれ下記一般式(10)〜(13)で表される化合物を意味する。
[式(10)〜(13)中、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、R
30及びR
31は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1以上の炭化水素基を表し、X
1、X
2、X
3及びX
4はそれぞれ酸素原子又は硫黄原子を表し、X
1とX
2、X
3とX
4はそれぞれ同一でも異なっていても良い。]
本実施形態においては、上記硫黄化合物の中でも、ジハイドロカルビルポリサルファイド及び硫化エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いると、加工効率の向上及び工具寿命の向上が一層高水準で達成されるので好ましい。
上記硫黄化合物の含有量は任意であるが、加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、油剤全量基準で、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上である。また、異常摩耗の防止の点から、硫黄化合物の含有量は、油剤組成物全量基準で、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
また、本実施形態において極圧剤として用いるリン化合物としては、具体的には、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステル及びフォスフォロチオネート等が挙げられる。これらのリン化合物は、リン酸、亜リン酸又はチオリン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体が挙げられる。なお、本実施形態において、一分子中にリン原子及び硫黄原子の双方を有する化合物は、便宜的にリン化合物に包含されることとする。
本実施形態においては、上記リン化合物の中でも、加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、及び酸性リン酸エステルのアミン塩が好ましい。
上記リン化合物の含有量は任意であるが、加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、油剤全量基準で、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上である。また、異常摩耗の防止の点から、リン化合物の含有量は、油剤組成物全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
また、本実施形態に係る油剤組成物は、上記油性剤とは別に、加工性を向上させる目的でパーフルオロアルキル基を含有せず、親水親油指数が8〜14であるヒドロキシ酸のアルキレンオキサイド付加物を含有することが好ましい。
ここで、親水親油指数とは、界面活性剤分子の親水基部分に対する親油基部分の質量比であり、下式によって計算される。
親水親油指数=(親水基部分の分子量÷界面活性剤全体の分子量)×100÷5
本発明でいう親油基部分とは、アルキル基、シクロアルキル基等の炭化水素基などである。また、親水基部分とは、界面活性剤分子から親油基部分を除いた残基を意味し、例えば以下に示す界面活性剤の場合、式中の点線で囲んだ部分が親水基部分である。
ヒドロキシ酸のアルキレンオキサイド付加物の親水親油指数が8未満又は14を超えると加工性が不十分となる。
ヒドロキシ酸のアルキレンオキサイド付加物を構成するヒドロキシ酸としては、脂肪族モノヒドロキシ酸が好ましく、具体的には、ジュニペリック(Juniperic)酸、リシノール酸、デンシポリック(Densipolic)酸、α−オキシリノレン酸、レスクエレラ(Lesquerella)酸、あるいは、ひまし油、ナタネ油、トール油などに含有しているモノヒドロキシ酸が挙げられる。
また、アルキレンオキサイド中のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基(−CH2CH2−)、プロピレン基(−CH(CH3)CH2−)、トリメチレン基(−CH2CH2CH2−)、ブチレン基(−CH(CH2CH3)CH2−)、テトラメチレン基(−CH2CH2CH2CH2−)などが挙げられる。これらのアルキレン基の中でもエチレン基,プロピレン基がより好ましい。
ヒドロキシ酸のアルキレンオキサイド付加物としては、下記一般式(14)で表される化合物が好ましい。
式中、R
32は、炭素数7〜23、好ましくは9〜21、より好ましくは11〜19を有する炭化水素基を表し、直鎖でも分岐鎖でもよく、飽和でも不飽和でも良い。また、脂肪族ヒドロキシ酸でも芳香族ヒドロキシ酸でもよいが、不飽和で分岐鎖を有さない脂肪族モノヒドロキシ酸が好ましい。R
33は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、nはR
33Oで表されるオキシアルキレン基の繰り返し数を表し、好ましくは1〜20、より好ましくは2〜15、さらに好ましくは2〜12の整数である。また、(R
33O)
nが共重合鎖である場合、ランダム共重合鎖でもブロック共重合鎖でもよいが、ランダム重合鎖であることが好ましい。
本実施形態に係る油剤組成物における、ヒドロキシ酸のアルキレンオキサイド付加物の含有量は特に限定されないが、油剤組成物全量基準で、好ましくは0.5〜70質量%、より好ましくは1〜60質量%、さらに好ましくは3〜40質量%である。含有量が0.5質量%に満たないと配合効果小さく、70質量%を超えると配合量に見合った効果が得られないばかりか、加工性を低下させる場合もある。
本実施形態に係る油剤組成物は、さらに酸化防止剤を含有することが好ましい。使用できる酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、その他食品添加剤として使用されているものなどが挙げられる。また、一般式(10)で表されるジチオリン酸亜鉛化合物を酸化防止剤として用いることもできる。
フェノール系酸化防止剤としては、潤滑油の酸化防止剤として用いられる任意のフェノール系化合物が使用可能であり、特に制限されるものでないが、例えばアルキルフェノール化合物が好ましいものとして挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては、潤滑油の酸化防止剤として用いられる任意のアミン系化合物が使用可能であり、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン、N−p−アルキルフェニル−α−ナフチルアミン及びp,p’−ジアルキルジフェニルアミンが好ましいものとして挙げられ、具体的には、4−ブチル−4’−オクチルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ドデシルフェニル−α−ナフチルアミン及びこれらの混合物などが挙げられる。
また、食品添加剤として使用されている酸化防止剤も使用可能であり、上述したフェノール系酸化防止剤と一部重複するが、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール)、アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール(ビタミンE)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、1,2−ジハイドロ−6−エトキシ−2,2,4−トリメチルキノリン(エトキシキン)、2−(1,1−ジメチル)−1,4−ベンゼンジオール(TBHQ)、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン(THBP)を挙げることができる。
これらの酸化防止剤の中でも、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、並びに上記食品添加剤として使用されているものが好ましい。さらに、生分解性を重視する場合には、上記食品添加剤として使用されているものがより好ましく、中でもアスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール(ビタミンE)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、1,2−ジハイドロ−6−エトキシ−2,2,4−トリメチルキノリン(エトキシキン)、2−(1,1−ジメチル)−1,4−ベンゼンジオール(TBHQ)、又は2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン(THBP)が好ましく、アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール(ビタミンE)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、又は3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールがより好ましい。
酸化防止剤の含有量は特に制限はないが、良好な酸化安定性を維持させるためにその含有量は、油剤全量基準で0.01質量%以上が好ましく、更に好ましくは0.05質量%以上、最も好ましくは0.1質量%以上である。一方、それ以上添加しても効果の向上が期待できないことからその含有量は10質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは5質量%以下であり、最も好ましくは3質量%以下である。
また、本実施形態に係る油剤組成物には、上記した以外の従来公知の添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えば、上記したリン化合物、硫黄化合物以外の極圧添加剤(塩素系極圧剤を含む);ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の湿潤剤;アクリルポリマー、パラフィンワックス、マイクロワックス、スラックワックス、ポリオレフィンワックス等の造膜剤;脂肪酸アミン塩等の水置換剤;グラファイト、フッ化黒鉛、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、ポリエチレン粉末等の固体潤滑剤;アミン、アルカノールアミン、アミド、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸、リン酸塩、多価アルコールの部分エステル等の腐食防止剤;ベンゾトリアゾール、チアジアゾール等の金属不活性化剤;メチルシリコーン、フルオロシリコーン、ポリアクリレート等の消泡剤;アルケニルコハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアルケニルアミンアミノアミド等の無灰分散剤;等が挙げられる。これらの公知の添加剤を併用する場合の含有量は特に制限されないが、これらの公知の添加剤の合計含有量が油剤組成物全量基準で0.1〜10質量%となるような量で添加するのが一般的である。
本実施形態に係る油剤組成物の動粘度は特に制限されないが、加工部位への供給容易性の点から、その40℃における動粘度は、200mm2/s以下であることが好ましく、100mm2/s以下であることがより好ましく、75mm2/s以下であることが更に好ましく、50mm2/s以下であることが特に好ましい。また、加工効率の向上及び工具寿命の向上の点から、40℃における動粘度は、5mm2/s以上であることが好ましく、7mm2/s以上であることがより好ましく、10mm2/s以上であることが更に好ましい。
極微量油剤供給式加工においては、1時間当たり数mLから数十mL(好ましくは1〜90mL/h)の油剤を、圧縮流体と共に被加工物の加工部位(切削・研削加工部位)に向けてミスト状で供給する。圧縮流体としては、圧縮空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素などの圧縮流体を単独で、あるいはこれらの流体を混合して用いることが可能である。
また、本実施形態に係る油剤組成物を使用する際には、該油剤組成物の0.01〜100質量倍の水を被加工物の加工部位に供給することが好ましい。水の使用量は、より好ましくは油剤組成物の0.01〜100質量倍、更に好ましくは2〜100質量倍、一層好ましくは3〜50質量倍、特に好ましくは4〜40質量倍、最も好ましくは5〜30質量倍である。
水の供給方式は特に限定されず、例えば、(i)油剤組成物と水の混合物を圧縮流体でミスト化して供給する方法、(ii)油剤組成物と水を別々にミスト化して別々に供給する方法、(iii)油剤組成物と水とを別々にミスト化したものを混合した後に供給する方法などが挙げられる。
上記の構成を有する本実施形態に係る油剤組成物は、切削加工、研削加工、転造加工、鍛造加工、などに好適に使用することができる。これらの用途の中でも、切削加工、研削加工又は転造加工に用いられる油剤として、本実施形態に係る油剤組成物は非常に有用である。
また、本実施形態に係る油剤組成物の加工部への供給方式は、より顕著な効果を発揮できることから極微量油剤供給式が好ましく、特に極微量油剤供給式切削・研削加工用油剤として好ましい。
以下、実施例及び比較例に基いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1〜
3、参考例1〜2、実施例3〜27、比較例1〜5]
実施例1〜
3、参考例1〜2、実施例3〜27及び比較例1〜5においては、それぞれ以下に示す基油及び添加剤を用いて、表1〜5に示す組成を有する油剤組成物を調製した。なお、油剤組成物の構成成分が完全に溶解し合わない場合はホモジナイザーを用いて均一化して評価試験に供した。
(基油)
基油a:鉱油(40℃における動粘度:42mm
2/s)
基油b:トリメチロールプロパンのトリオレート(40℃における動粘度:49.3mm
2/s)
基油c:ポリα−オレフィン(40℃における動粘度:47mm
2/s)
(パーフルオロアルキル基を有する化合物)
A1:パーフルオロブチルエチレンオキサイド付加物(平均付加数5)
A2:パーフルオロアルキルアミン(C
3F
7−NH
2)
A3:パーフルオロブチルスルホン酸ナトリウム塩(C
4F
9−SO
3Na)
A4:パーフルオロブチルカルボン酸カリウム塩(C
4F
9−COOK)
A5:パーフルオロブチルスルホンアミド (C
4F
9−SO
2NH
2)
A6:下記式で示されるパーフルオロアルキルスルホンアミド
(油性剤)
B1:分岐鎖状トリデカノール
B2:オレイン酸カリウム塩
B3:グリセリンモノオレート
B4:オレイルアルコール
B5:オレイン酸硫化物(ヒロドキシ酸アルキレンオキサイド付加物)
C1:ひまし油脂肪酸とポリエチレングリコール(6モル)のモノエステル(親水新油指数9.43
C2:リシノール酸とポリエチレングリコール(12モル)のモノエステル(親水新油指数12.81)
(その他の添加剤)
D1:トリクレジルホスフェート
D2:硫化エステル
D3:2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
D4:p−ter−ブチルカテコール
[切削性評価]
実施例1〜3、参考例1〜2、実施例3〜27及び比較例1〜5の油剤組成物について、アジピン酸ジイソデシルを比較標準油として、加工性能を評価した。具体的には、まず、アジピン酸ジイソデシルにて1穴のタッピングを行った。次いで、予め下穴を空けた材料について、実施例1〜27又は比較例1〜5の各油剤組成物を用い、200穴連続でタッピング評価を行った。そして、各油剤組成物について、タッピング1穴ごとのタッピングエネルギー効率を求めた。
タッピング条件
被削材:JIS AC8A(アルミニウム材)
工具径:8mm
タップピッチ:1.25mm
タップすくい角:1.5度
タップ食いつき角:10度
タップ下穴径:7.4mm
回転数:300rpm
標準油:DIDA(アジピン酸ジイソデシル)
搬送空気圧:0.51MPa
連続加工性評価方法
上記試験におけるタッピングエネルギーを測定し、下記式を用いてタッピングエネルギー効率(%)を算出した。
タッピングエネルギー効率(%)=(アジピン酸ジイソデシルを用いた場合のタッピングエネルギー)/(油剤組成物を用いた場合のタッピングエネルギー)
各油剤組成物について得られた1穴ごとのタッピングエネルギー効率を調べ、タッピングエネルギー効率が90%未満のものは油剤の吐出不良が起こっているものと判断して不合格とした。そして、200穴中の不合格数を連続加工不良数とし、これに基いて吐出安定性を評価した。
さらに200穴の加工における最も高いタッピングエネルギー効率を最高タッピングエネルギー効率とした。この値が高いほど良好な加工性を有すると考えられる。
水の併用方法
A:油剤組成物と水を事前に混合
B:油剤組成物と水を別々にミスト化して別々に加工部位に供給
C:油剤組成物と水とを別々にミスト化したものを混合した後に加工部位に供給
得られた結果を表1〜5に示す。