JP5637051B2 - 大動脈バルーンポンピング駆動装置制御プログラム及び大動脈バルーンポンピング駆動装置 - Google Patents

大動脈バルーンポンピング駆動装置制御プログラム及び大動脈バルーンポンピング駆動装置 Download PDF

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Description

本発明は、大動脈バルーンポンピング(IABP)において、バルーンカテーテルを駆動する駆動装置を制御するプログラムと、バルーンカテーテルを駆動する駆動装置に関する。
IABPにおいてバルーンカテーテルを駆動する場合、その駆動装置は、バルーンを心臓の拍動に合わせた適切なタイミングで拡張及び収縮させる必要がある。なぜなら、IABPでは、心臓の拍動に合わせた適切なタイミングでバルーンを拡張させることによって、ダイアストーリック・オーグメンテーション効果と呼ばれる大動脈圧の上昇に関する効果を適切に得ることができる。また、IABPでは、心臓の拍動に合わせた適切なタイミングでバルーンを収縮させることによって、シストーリック・アンローディング効果と呼ばれる大動脈圧の急激な低下に関する効果を適切に得ることができる。
したがって、IABPでは、バルーンを拡張及び収縮させるタイミングを、心臓の拍動に適切に同期させることが重要である。バルーンの制御を心臓の拍動に同期させるための従来技術としては、バルーンへの圧力伝達から、バルーンの変形効果が血圧波形上に実現されるまでの遅延時間を決定する技術が提案されている(例えば特許文献1等参照)。
特表2007−503883号公報
しかし、従来技術では、バルーンの拡張を同期させるべきダイクロティックノッチ(重拍性ノッチ、重複切痕とも呼ばれる)の検出が駆動開始前に行われ、その結果に基づきバルーンの拡張タイミングが決定される。なぜなら、駆動中は、ダイクロティックノッチがバルーンの拡張に伴う血圧変動と重なることにより、血圧波形からダイクロティックノッチを検出することが困難となるためである。しかし、このような制御では、患者の心拍状態が時間とともに変化することにより、バルーンの拡張タイミングがダイクロティックノッチからずれてしまうという問題を有している。
さらに、バルーンの拡張タイミングとダイクロティックノッチのずれを低減するために、1拍おき又は数拍おきにバルーンの動作を停止し、バルーンを駆動しない心拍でダイクロティックノッチを検出する技術も提案されている。しかし、このような技術は、バルーンが停止している心拍では上述した大動脈圧に関する効果が全く得られないため、全体としてIABPによる効果が大幅に低減してしまうという問題がある。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、バルーンの拡張タイミングがダイクロティックノッチからずれる現象を制御し、当該現象に伴うIABPの効果の低減を抑制し得る制御プログラム及び大動脈バルーンポンピング駆動装置を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る大動脈バルーンポンピング駆動装置制御プログラムは、
コンピューターに、
トリガーからダイクロティックノッチまでの時間に対応する第1の時間を、記憶手段に記憶させる手順と、
心電波形又は血圧波形から前記トリガーを検出し、前記トリガーが検出されてから前記第1の時間が経過した時にバルーンを拡張させ、その後に前記バルーンを収縮させる通常駆動を制御する手順と、
前記心電波形又は前記血圧波形から前記トリガーを検出し、前記トリガーが検出されてから前記第1の時間より長い第2の時間が経過した時に前記バルーンを拡張させ、その後に前記バルーンを収縮させる検出駆動を制御する手順と、を実行させる。
本発明に係るプログラムによって制御されるIABP駆動装置は、ダイクロティックノッチに合わせてバルーンを拡張させる通常駆動に加えて、ダイクロティックノッチから遅らせたタイミングでバルーンを拡張させる検出駆動を行う。検出駆動では、バルーンの拡張を意図的に遅らせることにより、バルーンの拡張に伴う血圧変動とダイクロティックノッチとの重なりが解消され、血圧波形からダイクロティックノッチを検出することが可能となる。さらに、駆動装置の操作者等は、検出駆動においてダイクロティックノッチの検出結果に基づき第1の時間を修正することにより、通常駆動においてバルーンを拡張させるタイミングを適正化できる。
なお、検出駆動では、バルーンの拡張を意図的に遅らせるため、バルーンの拡張時に得られるダイアストーリック・オーグメンテーション効果は、通常駆動に比べて減少する傾向にある。しかし、ダイクロティックノッチの検出のためにバルーンの動作を停止する従来技術では、その心拍においては全くダイアストーリック・オーグメンテーション効果が得られない。したがって、本発明に係るプログラムによって制御される駆動装置は、このような従来技術に比べれば、全体として多くのダイアストーリック・オーグメンテーション効果を得られる。
また、バルーンの拡張がダイクロティックノッチから遅れても、その影響はダイアストーリック・オーグメンテーション効果の低減に留まり、バルーンの拡張がダイクロティックノッチより早くなる場合のように、患者に重大が悪影響を及ぼすことはない。さらに、本発明における検出駆動では、バルーンの収縮時に、通常駆動とほぼ同様のシストーリック・アンローディング効果を得ることができる。したがって、本発明に係るプログラムによって制御される駆動装置は、ダイクロティックノッチの検出のためにバルーンの動作を停止する従来技術に比べて、効果の高いIABPを実施できる。
また、例えば、本発明に係るIABP駆動装置制御プログラムは、
前記コンピューターに、
前記検出駆動の際に得られる前記血圧波形から前記ダイクロティックノッチを検出する手順と、
前記ダイクロティックノッチの検出結果に基づき、前記記憶手段に記憶された前記第1の時間を更新する手順と、を実行させても良い。
このようなプログラムによって制御されるIABP駆動装置は、自動的にトリガーからダイクロティックノッチまでの時間を検出し、これに合わせてバルーンの拡張タイミングを修正することができる。したがって、このようなプログラムは、効果の高いIABPを実施しつつ、駆動装置を操作する操作者の負担も軽減できる。
また、例えば、前記ダイクロティックノッチを検出する手順において、前記ダイクロティックノッチを検出不能であった場合は、次回に行われる前記検出駆動における前記第2の時間を、前回に行われた前記検出駆動における前記第2の時間より長くしても良い。
検出駆動時における第2の時間は、通常駆動においてバルーンを拡張させる第1の時間から、バルーンを収縮させるべき時間までの間で任意に設定され得る。しかし、例えば第2の時間が第1の時間と極めて近いような場合には、血圧波形中のダイクロティックノッチを検出できない場合がある。この場合は、前記検出駆動における前記第2の時間を長くすることによって、バルーンの拡張に伴う血圧変動とダイクロティックノッチとの重複を解消し、ダイクロティックノッチの検出が可能となる。また、第2の時間を徐々に長くするように変化させる制御は、バルーンの拡張に伴う血圧変動が心臓収縮期に侵入することを回避する方向に変化させるものである。したがって、このような制御は、患者に重大な悪影響を及ぼすことを回避しつつ、ダイクロティックノッチを適切に検出することができる。
また、例えば、本発明に係るIABP駆動装置制御プログラムは、
前記コンピューターに、
前記通常駆動を制御する手順を1回以上実行した後、前記検出駆動を制御する手順を1回実行する処理を1サイクル処理とし、当該サイクル処理を繰り返し実行させる。
本発明に係るプログラムによって制御されるIABP駆動制御では、患者の心拍に合わせて、通常駆動と検出駆動のいずれかを常に実施することができる。この場合、通常駆動と検出駆動とが、心拍に合わせて交互に実施されるか、あるいは数回の通常駆動に対して1回の検出駆動が行われることにより、IABPの効果を維持しつつ、これと並行してダイクロティックノッチを検出することができる。
また、本発明の第2の観点に係る大動脈バルーンポンピング駆動装置は、
トリガーからダイクロティックノッチまでの時間に対応する第1の時間を記憶する記憶手段と、
心電図波形又は血圧波形から前記トリガーを検出する検出手段と、
前記記憶手段に記憶された第1の時間及び前記検出手段による検出結果を用いてバルーンを拡張及び収縮させる駆動手段と、を有し、
前記駆動手段は、前記トリガーが検出されてから前記第1の時間が経過した時に前記バルーンを拡張させ、その後に前記バルーンを収縮させる通常駆動と、前記トリガーが検出されてから前記第1の時間より長い第2の時間が経過した時に前記バルーンを拡張させ、その後に前記バルーンを収縮させる検出駆動と、を行う。
本発明の第2の観点に係るIABP駆動装置は、本発明の第1の観点に係るプログラムによって制御されるIABP駆動装置と同様の作用効果を奏する。
図1は、本発明の一実施形態に係るIABP駆動装置の概略構成図である。 図2は、図1に示すIABP駆動装置に接続されるバルーンカテーテルの一例を表す断面図である。 図3は、図2に示すバルーンカテーテルの使用例を表す概念図である。 図4は、図1に示すIABP駆動装置において行われる通常駆動における血圧波形及び駆動圧力波形を表すグラフである。 図5は、図1に示すIABP駆動装置による心臓へのサポート効果を説明するための概念図である。 図6は、図1に示すIABP駆動装置を制御する際におけるバルーンの拡張期間を説明した概念図である。 図7は、図1に示すIABP駆動装置において行われる通常駆動及び検査動作における血圧波形及び駆動圧力波形を表すグラフである。 図8は、図1に示すIABP駆動装置において行われるIABPの第1の例を表すフローチャートである。 図9は、図1に示すIABP駆動装置において行われるIABPの第2の例を表すフローチャートである。 図10は、参考例に係るIABP制御における血圧波形を表すグラフである。
以下、本発明に係るIABP駆動装置を、図面に示す実施形態に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る大動脈バルーンポンピング駆動装置29の概略構成図である。IABP駆動装置29は、心臓近傍の動脈中に留置したIABP用バルーンカテーテル30のバルーン32を、患者の心拍に合わせて拡張及び収縮させる。
図2に示すように、IABP用バルーンカテーテル30は、心臓の拍動に合わせて拡張及び収縮するバルーン32を有する。バルーン32は、膜厚約75〜150μm程度の筒状のバルーン膜で構成される。図2に示すバルーンカテーテル30において、拡張状態のバルーン膜の形状は円筒形状であるが、これに限定されず、多角筒形状であっても良い。
IABP用バルーン32は耐屈曲疲労特性に優れた材質で構成される。バルーン32の外径および長さは、心機能の補助効果に大きく影響するバルーン32の内容積と、動脈血管の内径などに応じて決定される。バルーン32は、通常、その内容積が25〜50ccであり、外径が拡張時14〜16mmであり、長さが210〜270mmである。
このバルーン32の遠位端は、短チューブ35を介してまたは直接に内管40の遠位端外周に熱融着または接着などの手段で取り付けてある。バルーン32の近位端には、金属チューブ37などの造影マーカーを介してまたは直接に、カテーテル管34の遠位端に接合してある。このカテーテル管34の内部に形成された第1のルーメンを通じて、バルーン32内に、駆動流体が導入または導出され、バルーン32が拡張または収縮するようになっている。バルーン32とカテーテル管34との接合は、熱融着あるいは紫外線硬化樹脂などの接着剤による接着により行われる。
内管40の遠位端はカテーテル管34の遠位端より遠方へ突き出ている。内管40は、バルーン32およびカテーテル管34の内部を軸方向に挿通されている。内管40の近位端は、分岐部36の第2ポート42に連通するようになっている。内管40の内部には、第2ルーメンが形成してある。第2ルーメンは、バルーン32の内部に形成される膨張・収縮空間や、カテーテル管34内に形成された第1のルーメンとは連通しない。内管40は、遠位端の開口端43で取り入れた血圧を分岐部36の第2ポート42へ送り、そこから血圧変動の測定を行うようになっている。
バルーン32内に位置する内管40の第2ルーメンは、バルーンカテーテル30を動脈内に挿入する際に、バルーン32を都合良く動脈内に差し込むためのガイドワイヤ挿通管腔としても用いられる。バルーンカテーテル30を血管などの体腔内に差し込む際には、バルーン32は、内管40の外周に折り畳んで巻回される。図2に示す内管40は、たとえばカテーテル管34と同様な材質で構成される。内管40の内径は、ガイドワイヤを挿通できる径であれば特に限定されず、たとえば0.15〜1.5mm、好ましくは0.5〜1mmである。この内管40の肉厚は、0.1〜0.4mmが好ましい。内管40の全長は、血管内に挿入されるバルーンカテーテル30の軸方向長さなどに応じて決定され、特に限定されないが、たとえば500〜1200mm、好ましくは700〜1000mm程度である。
カテーテル管34は、ある程度の可撓性を有する材質で構成されることが好ましい。カテーテル管34の内径は、好ましくは1.5〜4.0mmであり、カテーテル管34の肉厚は、好ましくは0.05〜0.4mmである。カテーテル管34の長さは、好ましくは300〜800mm程度である。
カテーテル管34の近位端には患者の体外に設置される分岐部36が連結してある。分岐部36はカテーテル管34と別体に成形され、熱融着あるいは接着などにより、カテーテル管34と固着される。分岐部36にはカテーテル管34内の第1のルーメンおよびバルーン32内に駆動流体を導入または導出するための第1ポート38と、内管40の第2ルーメン内に連通する第2ポート42とが形成してある。
第1ポート38は、たとえば図3に示す駆動装置29に接続され、この駆動装置29により流体圧がバルーン32内に導入または導出されるようになっている。バルーン32への充填に使用する補充ガスは特に限定されないが、駆動装置29の駆動に応じて素早くバルーン32が拡張または収縮するように、質量の小さいヘリウムガスなどを主成分とする流体が用いられる。
図3に示すように、第2ポート42は、血圧変動測定装置49に接続される。血圧変動測定装置49は、バルーン32の遠位端に位置する内管40の開口端43及び第2ルーメンを介して、動脈内の血圧の変動を測定することができる。血圧変動測定装置49は、測定した血圧の変動等を駆動装置29に出力する。駆動装置29は、血圧変動測定装置49から得られる血圧の変動及び心電計測装置71から得られる心電波形等から心臓85の拍動状態を認識し、これに合わせてバルーン32を膨張及び収縮させる。駆動装置29は、通常0.4〜1秒程度の短周期でバルーン32を拡張および収縮させる。
IABP用バルーンカテーテル30では、前述したように、バルーン32を駆動するためにバルーン32内に導入される補充ガスとして、応答性が良好であるなどの観点から、質量の小さいヘリウムガスなどを用いる。しかし、ヘリウムガスの陽圧および陰圧を、直接ポンプやコンプレッサなどで作り出すことは、ガス消費量が大きく経済性に難があり又、容量の制御が困難である。したがって、本実施形態に係る駆動装置29では、図1に示すような構造を採用している。すなわち、バルーン32内に連通する二次配管系28と、圧力発生手段としての第1ポンプ14a及び第2ポンプ14bに連通する一次配管系27とを、圧力伝達隔壁装置50により分離している。圧力伝達隔壁装置50は、ダイヤフラムおよびプレートを有する隔壁55により気密に仕切られた第1室56と第2室58とを有する。なお、隔壁55は、ダイヤフラムのみで構成されていても良い。
圧力伝達隔壁装置50の第1室56は、入力ポート52を通じて図1に示す一次配管系27に連通している。第2室58は、出力ポート54を通じて二次配管系28に連通している。
第1室56と第2室58とは、流体の連通は遮断されているが、第1室56の圧力変化(容積変化)が、隔壁55の変位により、第2室58の圧力変化(容積変化)として伝達するようになっている。このような構造を採用することにより、一次配管系27と二次配管系28とを連通させることなく、一次配管系27の圧力変動を二次配管系28に伝達することができる。また、駆動装置29は、二次配管系28に封入される駆動流体の容量(化学当量)を一定に制御し易い。さらに、駆動装置29は、仮にバルーン32に異常が生じて駆動流体が漏れたとしても、その漏れ量が過大になることを防止することができる。
本実施形態では、一次配管系27の内部流体を空気とし、二次配管系28にヘリウムガスを充填及び補充する。二次配管系28へ供給する流体をヘリウムガスとしたのは、質量(分子量)が小さいガスを用いることで、バルーン32の膨張・収縮の応答性を高めるためである。
図1に示すように、一次配管系27には、圧力発生手段として、二つのポンプ14a,14bが配置してある。一方の第1ポンプ14aは、陽圧発生用ポンプ(コンプレッサとも言う;以下同様)であり、他方の第2ポンプ14bは、陰圧発生用ポンプである。第1ポンプ14aの陽圧出力口には、減圧弁17を介して、陽圧タンクとしての第1圧力タンク12が接続してある。また、第2ポンプ14bの陰圧出力口には、逆止弁18を介して陰圧タンクとしての第2圧力タンク13が接続してある。
第1圧力タンク12および第2圧力タンク13には、それぞれの内部圧力を検出する圧力検出手段としての圧力センサ15,16が装着してある。各圧力タンク12,13には、それぞれ電磁弁21および電磁弁22が接続してある。これら電磁弁21,22の開閉は、中央制御手段72により制御され、たとえば患者の心臓の拍動状態に対応して制御される。これら電磁弁21,22の出力端は、二次圧力発生手段としての圧力伝達隔壁装置50の入力ポート52に接続してある。
圧力伝達隔壁装置50の出力ポート54は、二次配管系28に接続してある。二次配管系28は、バルーン32の内部に連通しており、ヘリウムガスを主成分とする駆動流体が封入された密閉系となっている。この二次配管系28は、ホースまたはチューブなどで構成される。この二次配管系28には、その内部圧力を検出する圧力検出手段としての圧力センサ25が装着してある。この圧力センサ25の出力は、補充制御手段20へ入力するようになっている。
また、この二次配管系28には、主ライン28aから分岐して、排気ライン28bが接続してある。この排気ライン28bには、電磁弁19を介して、図示省力してある排気用ポンプが接続してある。排気ライン28bに設けられた電磁弁19および排気用ポンプは、二次配管系28の内部を真空引きするためのものである。例えば、使用前において、二次配管系28及びこれに繋がる第1ルーメン及びバルーン32内は、排気ライン28bを介して排気された後、後述の補充ライン28cからヘリウムガスを供給されることによって、ヘリウムガスへの置換が実施される。
この二次配管系28には、補充ライン28cを介して補充装置60が接続してある。補充装置60は、二次配管系28(第1ルーメン及びバルーン32の内部を含む)内部に存在する駆動流体の化学当量が一定に保たれるように、二次配管系28に対してヘリウムガスを補充する。補充装置60は、一次ガスタンクとしての一次ヘリウムガスタンク61を有する。一次ヘリウムガスタンク61の出力側には、減圧弁62を介して、電磁弁63が接続してある。この電磁弁63の開閉は、補充制御手段20により制御される。この電磁弁63の出力側には、二次ヘリウムガスタンク64が接続してあり、電磁弁63の開閉により、一次ヘリウムガスタンク61と二次ヘリウムガスタンク64が連通するようになっている。
二次ヘリウムガスタンク64には、圧力センサ65が装着してあり、圧力センサ65は、二次ヘリウムガスタンク64内の圧力を検出し、補充制御手段20へ検出結果を出力する。補充制御手段20は、電磁弁63の開閉を制御することにより、二次ヘリウムガスタンク64内の圧力を略一定に保つ。たとえば二次ヘリウムガスタンク64内の圧力は、100mmHg程度に制御される。
二次ヘリウムガスタンク64には、電磁弁68が接続してある。電磁弁68は、補充制御手段20により制御される。補充制御手段20は、圧力センサ25を介して二次配管系28内部の圧力を検知し、バルーン32などからの透過により二次配管系28内部の圧力が低下した場合には、電磁弁68を開いて一定容量のヘリウムガスを補充する。補充制御手段20は、バルーン32の膨張及び収縮における所定のタイミングで二次配管系28の圧力を検知し、電磁弁68の開閉を行う。これにより、駆動装置29は、バルーン32を膨張及び収縮させる動作を続けながら、バルーン32の膨張及び収縮動作を阻害することなく、ヘリウムガスの補充を行うことができる。
また、図示省略してあるが、その電磁弁68と並列に置換用電磁弁が接続してある。置換用電磁弁は、排気ライン28bを介して排気され負圧にされた二次配管系28内に、ヘリウムガスを充填する際に用いられる。バルーン32を短周期で膨張及び収縮させる通常使用状態においては、置換用電磁弁は閉じられている。
ヘリウムガス充填(置換)時には、圧力センサ25により系内の圧力をモニタリングし、二次配管系28内が負圧になったことを確認した後、バルーン32の容量により決定される圧力となるまでヘリウムガスを封入する。たとえば40ccの容量のバルーンカテーテル30を用いる場合には、その二次配管系28の充填時の圧力を+10±4mmHg(ゲージ圧)とし、30ccの容量のバルーンカテーテル30を用いる場合には、その二次配管系28の充填時の圧力を−30±4mmHg(ゲージ圧)とする。
IABPにおけるバルーン32の拡張及び収縮は、中央制御手段72によって制御される。中央制御手段72は、電磁弁21及び電磁弁22に対して電気的に接続されており、電磁弁21及び電磁弁22の開閉タイミングを制御することによって、バルーン32の拡張及び収縮のタイミングを制御することができる。
中央制御手段72には、中央制御手段72によって書き込み及び読み出し可能な記憶手段73が接続されている。記憶手段73には、中央制御手段72による演算処理を規定するプログラムが格納されており、中央制御手段72は、記憶手段73に記憶されたプログラムに従って、駆動装置29全体を制御する。また、中央制御手段72は、駆動装置29の制御に使用する数値等を記憶手段73に記憶させ、必要に応じてその数値を更新することができる。
中央制御手段72には、血圧変動測定装置49及び心電計測装置71から、患者の心拍状態に関する情報が入力される。血圧変動測定装置49は、図6に示すような血圧波形に関する信号を、中央制御手段72に出力する。中央制御手段72は、不図示の表示部に血圧波形を表示させることができる。駆動装置29の操作者は、表示部に表示された血圧波形から、例えばダイクロティックノッチ91(図6参照)を確認することができる。また、中央制御手段72は、血圧波形からダイクロティックノッチ91(図6参照)を自動的に検出し、バルーン32を拡張するタイミングに反映させることができる。
心電計測装置71は、患者に取り付けられた電極を介して、図6に示すような心電波形を取得し、中央制御手段72に出力する。中央制御手段72は、不図示の表示部に、血圧波形と並べて心電波形を表示させることができる。また、中央制御手段72は、バルーン32の拡張時及び収縮時を決定する際の基準時となるトリガーを、心電波形や血圧波形から取得することができる。IABPにおいて中央制御手段72で行われる処理については、具体例を挙げて後ほど詳述する。
図4は、図1に示す駆動装置29において、IABPの通常駆動を実施している際に、血圧変動測定装置49から得られる血圧波形と、圧力センサ25で検知される圧力波形である駆動圧波形とを表したものである。血圧波形と、駆動圧波形は、時間をそろえて表示してある。図1に示す駆動装置29の中央制御手段72は、IABPを実施する際、電磁弁21及び電磁弁22の開閉を制御する。これにより、二次配管系28には、図4の駆動圧波形に示すような圧力変動が発生する。患者の大動脈内に留置されたバルーン32は、電磁弁21及び電磁弁22の開閉に伴う圧力変動が伝達されることにより拡張及び収縮し、患者の血圧波形に対して、IABPに特徴的な変化を生じさせる。
図4の血圧波形に示すように、IABPを実施すると、血圧波形中に血圧の高い部分である上昇部81が生じる。上昇部81の形成は、ダイアストリック・オーグメンテーション効果と呼ばれるものである。ダイアストリック・オーグメンテーション効果とは、図5(a)に示すように、心拡張期開始時に合わせてバルーン32を拡張させることにより、大動脈圧が上昇して冠動脈への血流増加を生じるものである。
また、図4の血圧波形に示すように、IABPを実施すると、血圧波形中に血圧の低い部分である下降部82が生じる。下降部82の形成は、シストーリック・アンローディング効果と呼ばれるものである。シストーリック・アンローディング効果とは、図5(b)に示すように、心収縮期開始直前にバルーン32を収縮させることにより、大動脈圧が急激に低下して、心臓85が比較的楽に血液を全身へ送り出すことができるようになるものである。
図4及び図5に示すようなIABPの効果を得るためには、患者の心周期に合わせて適切にバルーンを拡張及び収縮させる必要がある。図6は、バルーンを拡張及び収縮させるタイミングを説明した概念図である。図6には、図1に示す心電計測装置71を介して取得される心電波形と、IABPが実施されていない状態における血圧波形とが、時間をそろえて表示してある。
駆動装置29による制御では、患者の心周期の基準となる時点をトリガーとし、トリガーから所定の時間が経過した時にバルーン32を拡張及び収縮させることにより、患者の心周期に合わせたバルーン32の駆動を実現する。駆動装置29は、心電波形又は血圧波形からトリガーを検出することができ、心電波形のQRS89や、血圧波形における血圧立ち上がり90等をトリガーとすることができる。本実施形態の説明では、心電波形のQRS89をトリガーとする場合を例に説明を行う。
IABPによって適切な循環補助効果を得るためには、図6に示すように、バルーン32の拡張期間を制御する必要がある。すなわち、バルーン32の拡張については、バルーン32の拡張が心拡張期開始時におこる大動脈弁86(図5(a)参照)の閉鎖と同時に行われる場合に、最適なダイアストリック・オーグメンテーション効果(図5(a)参照)が得られる。ここで、大動脈弁86の閉鎖は、血圧波形においてダイクロティックノッチ91となって表れる。このため、トリガーであるQRS89からバルーン32を拡張させるべき時点までの時間は、QRS89からダイクロティックノッチ91までの時間である第1の時間Tとすることができる。
また、バルーン32を大動脈弁86の閉鎖と同時に拡張させるためには、駆動装置29は、第1の時間Tに加えて、遅延時間TDLを考慮する必要がある。遅延時間TDLは、中央制御手段72が電磁弁21の開放信号を発してから、実際にバルーン32が拡張を開始するまでに要する時間である。遅延時間TDLは、バルーン32のサイズや圧力タンク12,13の設定を考慮して決定しても良く、バルーン32の駆動に伴う血圧波形情報をフィードバックすることにより決定されてもよい。
次に、バルーン32の収縮については、バルーン32の収縮が、心収縮期開始時に起こる大動脈弁86の開放の直前に行われる場合に、最適なシストーリック・アンローディング効果(図5(b)参照)が得られる。トリガーであるQRS89からバルーン32を収縮させるべき時点までの時間は、QRS89から大動脈弁開放時92の直前までの時間である第3の時間Tとすることができる。遅延時間TDL3は、中央制御手段72が電磁弁22の開放信号を発してから、実際にバルーン32が収縮を終了するまでに要する時間である。
図1に示す駆動装置29によってIABPを実施する場合には、予め第1の時間T及び第3の時間Tを記憶手段73に記憶させておき、中央制御手段72が読み出せる状態にしておく。第1の時間T及び第3の時間Tは、駆動装置29の操作者が手動で計測し、駆動装置29に備えられる入力手段(不図示)を介して記憶手段73に記憶させても良く、中央制御手段72が自動検出しても良い。また、第1の時間T及び第3の時間Tの計測は、患者の血圧波形から行われても良く、心電波形から推定して行われても良く、血圧波形と心電波形の両方を考慮して行われても良い。
第1の時間T及び第3の時間Tを決定し、これに合わせてバルーン32の拡張及び収縮が行われると、図4に示すような血圧波形が得られる。しかし、第1の時間Tにバルーン32の拡張開始時を同期させる駆動(通常駆動)においては、バルーン32の拡張開始時である拡張タイミング83が、ダイクロティックノッチ91(図6参照)と重なる。このため、操作者によるダイクロティックノッチ91の検出及び中央制御装置によるダイクロティックノッチ91の自動検出が、いずれも困難となる。IABPでは、第1の時間Tを計測した後に患者の心周期が変化することがあるが、通常駆動中においては、駆動に用いられている第1の時間Tが、現在の患者のダイクロティックノッチ91のタイミングを正しく反映しているか否かを検証することが難しい。また、同様の理由により、通常駆動中においては、駆動に用いられている第1の時間Tを、現在の患者のダイクロティックノッチ91のタイミングに合わせて修正することも難しい。
図10は、参考例に係る制御によって得られる血圧波形を表すものであり、バルーン32の拡張及び収縮を1拍おきに停止する制御を行っている。参考例に係る制御では、図10の中央部分に示すように、バルーン32の拡張及び収縮が停止されている心拍が1拍おきに生じる。そのため、このような心拍からダイクロティックノッチ91を検出し、駆動に用いられている第1の時間Tが、現在の患者のダイクロティックノッチ91のタイミングを正しく反映しているか否かを検証できる。しかしながら、参考例に係る制御は、バルーン32が停止している心拍では図5で説明したIABPによる効果が全く得られないため、全体としてIABPによる効果が大幅に低減してしまうという問題がある。
そこで、本実施形態に係る制御では、トリガーからバルーン32の拡張までの時間を第1の時間Tとする通常駆動に加えて、トリガーからバルーン32の拡張までの時間を第1の時間Tより長い第2の時間Tとする検出駆動を行う。図6に示すように、検出駆動では、駆動装置29は、トリガーであるQRS89から第2の時間Tが経過した時にバルーン32を拡張させる。なお、中央制御手段72による電磁弁21の開放は、通常制御の場合と同様に、遅延時間TDLを考慮して行われる。第1の時間Tと第2の時間Tとの差である延長時間Δtは、ダイクロティックノッチ91とバルーン32の拡張に伴う血圧変化の重複を解消するために必要最小限度の長さとすることが好ましい。例えば、延長時間Δtは、0.05拍から0.6拍程度の長さとすることができる。
なお、トリガーであるQRS89からバルーン32を収縮させるまでの時間は、検出駆動においても、通常駆動と同様に第3の時間Tとすることが好ましい。また、バルーン32の収縮を第3の時間Tで行えるようにするため、第2の時間Tは、少なくとも第3の時間Tより小さいことが好ましい。
図7は、図1に示す駆動装置29において、通常駆動と検出駆動を1拍ずつ交互に行う制御を行った場合における血圧波形と駆動圧波形を表している。図7は、図4と同様に、血圧変動測定装置49から得られる血圧波形と、圧力センサ25で検出される駆動圧波形とを、時間を揃えて表示している。図7に示す例では、中央の心拍に対応する区間94において検出駆動が行われており、両端の心拍に対応する区間93及び区間95において通常駆動が行われている。
区間94において行われる検出駆動では、駆動波形における圧力上昇のタイミングが、通常駆動における圧力上昇のタイミングである時点a1から、延長時間Δtに相当する長さ遅れ、時点a2へ変化する。血圧波形についても、血圧上昇として表れるバルーン32の拡張開始時が、通常駆動における拡張タイミング83から延長時間Δtに相当する長さ遅れ、検出駆動における拡張タイミング83aへ変化する。これにより、検出駆動における血圧波形では、ダイクロティックノッチ91とバルーン32の拡張に伴う血圧変化の重複が解消され、操作者によるダイクロティックノッチ91の検出及び中央制御手段72によるダイクロティックノッチ91の自動検出が可能となる。
なお、検出駆動では、バルーン32の拡張を意図的に遅らせるため、バルーン32の拡張時に得られるダイアストーリック・オーグメンテーション効果(図5(a)参照)は通常駆動に比べて減少する傾向にあるが、図7において上昇部81aが形成されていることからも解るように、ある程度の効果は期待できる。また、バルーン32の拡張がダイクロティックノッチ91から遅れても、バルーン32の拡張がダイクロティックノッチ91より早くなる場合のように、患者に重大が悪影響を及ぼすことはない。さらに、図7に示すように、検出駆動においても下降部82aが形成されており、バルーン32の収縮時に通常駆動とほぼ同様のシストーリック・アンローディング効果を期待できる。
図8は、図1に示すIABP駆動装置29において行われる制御の第1の例を表すフローチャートである。図8に示すステップS001では、駆動装置29を制御する中央制御手段72が、バルーンカテーテル30の駆動に関する一連の処理を開始する。なお、ステップS001を開始する前に、バルーン32を患者の大動脈における所定の位置に留置し、バルーン32内、第1ルーメン及び二次配管系28にヘリウムガスを充填するなど、IABPに必要な準備を完了しておく。
図1に示すステップS002では、中央制御手段72が、トリガーであるQRS89からダイクロティックノッチ91までの時間である第1の時間Tと、QRS89から大動脈弁開放時92の直前までの時間である第3の時間T(図6参照)とを、記憶手段73に記憶させる。中央制御手段72は、操作者に対して第1の時間Tおよび第3の時間Tの計測および計測結果の入力を促し、操作者の入力結果に基づき第1の時間Tおよび第3の時間Tを取得しても良い。また、中央制御手段72は、バルーン32の駆動開始前における血圧波形および心電波形を取得し、血圧波形および心電波形から第1の時間Tおよび第3の時間Tを検出し、これを記憶手段73に記憶させても良い。
ステップS003では、中央制御手段72は、図6に示すような遅延時間TDL及び遅延時間TDL3を決定する。中央制御手段72は、操作者によって入力された情報や各センサからの情報に基づき遅延時間TDL及びTDL3を決定してもよく、バルーン32をテスト駆動することにより、遅延時間TDL及びTDL3を決定しても良い。中央制御手段72によって決定された遅延時間TDL及び遅延時間TDL3は、記憶手段73に格納される。
ステップS004では、中央制御手段72は、駆動装置29によって通常駆動が実施されるように、制御を行う。ステップS004の通常駆動においては、まず、中央制御手段72は、心電波形からQRS89(図6参照)を検出する。
次に、中央制御手段は、QRS89が検出されてから第1の時間Tが経過した時にバルーン32を拡張させるように、駆動装置29を制御する。このとき、中央制御手段72は、第1の時間T及び遅延時間TDLを記憶手段73から読み出し、第1の時間Tから遅延時間TDLを引いた時間を算出し、検出したQRS89からその算出時間が経過した時に、電磁弁21へ開放信号を出力する。また、中央制御手段72は、電磁弁21を開放してから所定の時間で、電磁弁21を閉鎖する。
さらに、中央制御手段は、QRS89が検出されてから第3の時間Tが経過した時にバルーン32を収縮させるように、駆動装置29を制御する。このとき、中央制御手段72は、第3の時間T及び遅延時間TDL3を記憶手段73から読み出し、第3の時間Tから遅延時間TDL3を引いた時間を算出し、検出したQRS89からその算出時間が経過した時に、電磁弁22へ開放信号を出力する。また、中央制御手段72は、電磁弁22を開放してから所定の時間で、電磁弁22を閉鎖する。なお、ステップS004では、駆動装置29によって通常駆動が行われることにより、血圧変動測定装置49を介して、図7の区間93に示すような血圧波形が取得される。
ステップS005では、中央制御手段72は、駆動装置29によって検出駆動が実施されるように、制御を行う。ステップS005の検出駆動は、図6に示す延長時間Δt及び第2の時間Tを決定し、QRS89が検出されてから第2の時間Tが経過した時にバルーン32が拡張されるように制御されることを除き、ステップS004の通常駆動と同様である。
ステップS005の検出駆動においては、まず、中央制御手段72は、延長時間Δt及び第2の時間Tを決定する。図6に示すように、第1の時間Tと第2の時間Tとの差である延長時間Δtは、心電波形から取得された直前の心拍周期に基づき決定されても良く(例えば0.1拍)、予め定められた固定値によって決定されても良い(例えば100ms)。第2の時間Tは、記憶手段73に記憶されている第1の時間Tに、決定された延長時間Δtを加算することによって算出される。
次に、中央制御手段72は、心電波形のQRS89を検出し、QRS89が検出されてから第2の時間Tが経過した時にバルーン32を拡張させるように、駆動装置29を制御する。このとき、中央制御手段72は、第2の時間Tから遅延時間TDLを引いた時間を算出し、検出したQRS89からその算出時間が経過した時に、電磁弁21へ開放信号を出力する。また、中央制御手段72は、電磁弁21を開放してから所定の時間で、電磁弁21を閉鎖する。さらに、中央制御手段72は、QRS89が検出されてから第3の時間Tが経過した時にバルーン32を収縮させるように、駆動装置29を制御する。バルーン32を収縮させる制御については、ステップS004の通常駆動と同様である。なお、ステップS005では、駆動装置29によって検出駆動が行われることにより、血圧変動測定装置49を介して、図7の区間94に示すような血圧波形が取得される。
ステップS006では、中央制御手段72は、現在用いられている第1の時間Tを更新すべきか否かについて、判断を行う。中央制御手段72が自動的に第1の時間Tを変更するオートタイミングを採用している場合、中央制御手段72は、検出駆動で得られた血圧波形から、ダイクロティックノッチ91を自動検出する。さらに、中央制御手段72は、検出駆動に係るQRS89からダイクロティックノッチ91までの時間が、現在用いられている第1の時間Tに対して所定の誤差範囲内に無い場合は、第1の時間Tを更新すると判断する。
これとは反対に、中央制御手段72は、検出駆動に係るQRS89からダイクロティックノッチ91までの時間が、現在用いられている第1の時間Tに対して所定の誤差範囲内にある場合は、第1の時間Tを更新しないと判断する。また、中央制御手段72は、検出駆動で得られた血圧波形からダイクロティックノッチ91を自動検出できない場合も、第1の時間Tを更新しないと判断する。
中央制御手段72がオートタイミングを採用していない場合は、中央制御手段72は、操作者から新たな第1の時間Tが入力されているか否かを検出し、操作者から新たな第1の時間Tが入力されている場合は、第1の時間Tを更新すると判断する。なお、中央制御手段72がオートタイミングを採用していない場合、駆動装置29の操作者は、血圧動作で得られた血圧波形を用いて、QRS89からダイクロティックノッチ91までの時間を計測し、現在の第1の時間Tが適切か否かを判断できる。その上で、駆動装置29の操作者は、現在の第1の時間Tが適切でないと判断した場合は、測定結果に基づく新たな第1の時間Tを、駆動装置29に入力する。
ステップS006で第1の時間Tの更新が必要であると判断した場合、中央制御手段72は、ステップS007の処理を行う。ステップS007では、中央制御手段72が、その時点で記憶手段73に記憶されている第1の時間Tを、ステップS006で算出又は入力された新たな第1の時間Tに更新する。
ステップS006で第1の時間Tの更新が必要でないと判断した場合、及びステップS007において第1の時間Tを更新した後に、中央制御手段72は、ステップS008の処理を行う。ステップS008では、中央制御手段72は、IABPを停止するか否かを判断する。中央制御手段72は、IABPを停止する旨の信号が操作者によって入力されている場合は、ステップS009へ進み、一連の処理を終了させる。これに対して、IABPを停止する旨の信号が入力されていない場合は、中央制御手段72は、ステップS004へ戻り、IABPを続行する。
図8に示す一連の処理により、駆動装置29は、通常駆動を1回実行した後、検出駆動を1回実行する処理を1サイクルとし、このサイクル処理を繰り返し実行するIABPを実施する。このように、本実施形態に係る制御は、通常駆動と検出駆動とを心拍に合わせて交互に実施することによって、IABPの効果を維持しつつ、これと並行してバルーン32の拡張タイミングの適否の判断及び拡張タイミングの更新を行うことができる。なお、図8に示す処理では、通常駆動と検出駆動が交互に実施されるが、検出駆動の実施頻度はこれに限定されず、検出駆動は、通常駆動が数回もしくは所定時間実施された後に、1回実施されてもよい。
図9は、図1に示す駆動装置29において行われるIABPの第2の例を表すフローチャートである。図9に示す処理では、中央制御手段72が血圧波形からダイクロティックノッチ91を自動検出し、これに基づきバルーン32の拡張タイミングに関する第1の時間Tを修正するオートタイミングが実施される。図9に示すステップS101〜ステップS104は、図8に示すステップS001〜ステップS004と同様であるため、説明を省略する。
ステップS105では、中央制御手段72は、ステップS104に係る通常駆動が所定時間以上連続して実施されているか否かを判断する。通常駆動が所定時間以上連続して実施されていない場合、中央制御手段72は、ステップS104の処理を繰り返す。これに対して、通常駆動が所定時間以上連続して実施されている場合、中央制御手段72は、ステップS106の処理へ進む。
ステップS106では、図8に示すステップS005と同様に、中央制御手段72は、駆動装置29によって検出駆動が実施されるように、制御を行う。ただし、ステップS105の検出駆動は、後述するステップS111で更新される延長時間Δtを使用して行われる。
ステップS107では、中央制御手段72は、ステップS106に係る検出駆動で得られた血圧波形から、ダイクロティックノッチ91(図7参照)を自動検出する。さらに、ステップS108では、中央制御手段72は、ステップS107において実施された自動検出により、血圧波形からダイクロティックノッチ91が検出されたか否かを判断する。中央制御手段72は、ステップS107において実施された自動検出によりダイクロティックノッチ91が検出されていると判断した場合には、ステップS109の処理へ進む。
ステップS109では、中央制御手段72は、ステップS107において自動検出されたダイクロティックノッチ91に基づき、QRS89からダイクロティックノッチ91までの時間である第1の時間T(図6参照)を算出する。さらに、中央制御手段72は、その時点で記憶手段73に記憶されている第1の時間Tを、当該ステップS109で算出された新たな第1の時間Tに更新する。
ステップS107において実施された自動検出によりダイクロティックノッチ91が検出されなかった場合は、中央制御手段72は、ステップS110の処理へ進む。ステップS110では、ステップS106に示す検出駆動が、連続して5回以上行われているか否かを判断する。ステップS106の判断に用いられる連続探索回数(N)は、ステップS104で行われる通常駆動が実施されると「0」となり、ステップS106で行われる検出駆動が1回実施される毎に「1」を加算される。ステップS110では、中央制御手段72が、連続探索回数(N)が5より小さいか否かを演算処理することによって、判断を行う。連続探索回数(N)が5より小さい場合、中央制御手段72は、ステップS111の処理へ進む。
ステップS111において、中央制御手段72は、ステップS106の検出駆動における第2の時間Tの算出に用いられる延長時間Δtを更新する。ステップS111で決定される延長時間Δtは、連続探索回数(N)の関数として定義されており(Δt=tN)、連続探索回数(N)が大きくなるに従って大きくなるように設定されている。ステップS111の処理を終えると、中央制御手段72はステップS106の処理へ進む。ステップS106では、更新された延長時間Δtを用いた検出駆動が実施される。
ステップS110、ステップS111及びその後に再試行されるステップS106〜ステップS108は、ステップS107においてダイクロティックノッチ91を検出できなかった場合に実施される。ステップS107でダイクロティックノッチ91が検出できなかった原因の一つとして、第2の時間Tの算出に用いられる延長時間Δtが小さすぎ、ダイクロティックノッチ91とバルーン32による血圧変化との重複が、検出駆動において解消されなかったことが考えられる。そこで、ステップS111において延長時間Δtを大きくすることによって、次回の検出駆動において問題となる重複が解消され、ステップS107でダイクロティックノッチ91が検出できるようになることを期待できる。
なお、ステップS110によって連続探索回数(N)を制限したのは、検出駆動が連続して実施されることにより、IABPの効果が低下することを防止するためである。また、延長時間Δtを変えてダイクロティックノッチの検出を繰り返したにもかかわらず検出が成功しないのは、患者の心圧波形のダイクロティックノッチが元々明確でないことが原因ではないかと疑われるからである。ステップS110において連続探索回数(N)が5より大きいと判断した場合には、中央制御手段72は、これ以上検出駆動を繰り返さず、ステップS112の処理へ進む。
図9に示すステップS112及びステップS113は、図8に示すステップS008及びステップS009と同様であるため、説明を省略する。
図9に示す一連の処理により、駆動装置29は、中央制御手段72が血圧波形からダイクロティックノッチを自動検出し、これに基づきバルーン32の拡張タイミングを修正しながらIABPを行う。したがって、このような処理によって制御されることにより、駆動装置29は、効果の高いIABPを実施しつつ、駆動装置29を操作する操作者の負担も軽減できる。
12,13…圧力タンク
14a,14b…ポンプ
18…逆止弁
20…補充装置制御手段
27…一次配管系
28…二次配管系
29…駆動装置
30…バルーンカテーテル
32…バルーン
34…カテーテル管
35…短チューブ
36…分岐部
37…金属チューブ
38…第1ポート
40…内管
42…第2ポート
43…開口端
49…血圧変動測定装置
50…圧力伝達隔壁装置
55…隔壁
60…補充装置
61,64…ヘリウムガスタンク
71…心電計測装置
72…中央制御装置
73…記憶手段
81,81a…上昇部
82,82a…下降部
83,83a…拡張タイミング
85…心臓(左心室)
86…大動脈弁
89…QRS
91…ダイクロティックノッチ
…第1の時間
…第2の時間
DL,TDL3…遅延時間
15,16,25,65…圧力センサ
19,21,22,63,68…電磁弁
17,62…減圧弁

Claims (5)

  1. コンピューターに、
    トリガーからダイクロティックノッチまでの時間に対応する第1の時間を、記憶手段に記憶させる手順と、
    心電波形又は血圧波形から前記トリガーを検出し、前記トリガーが検出されてから前記第1の時間が経過した時にバルーンを拡張させ、その後に前記バルーンを収縮させる通常駆動を制御する手順と、
    前記心電波形又は前記血圧波形から前記トリガーを検出し、前記トリガーが検出されてから前記第1の時間より長い第2の時間が経過した時に前記バルーンを拡張させ、その後に前記バルーンを収縮させる検出駆動を制御する手順と、
    前記検出駆動の際に得られる前記血圧波形から前記ダイクロティックノッチを検出する手順と、を実行させるための大動脈バルーンポンピング駆動装置制御プログラム。
  2. 前記コンピューターに、
    前記ダイクロティックノッチの検出結果に基づき、前記記憶手段に記憶された前記第1の時間を更新する手順を実行させる請求項1に記載のプログラム。
  3. 前記ダイクロティックノッチを検出する手順において、前記ダイクロティックノッチを検出不能であった場合は、次回に行われる前記検出駆動における前記第2の時間を、前回に行われた前記検出駆動における前記第2の時間より長くすることを特徴とする請求項1又は2に記載のプログラム。
  4. 前記コンピューターに、
    前記通常駆動を制御する手順を1回以上実行した後、前記検出駆動を制御する手順を1回実行する処理を1サイクル処理とし、当該サイクル処理を繰り返し実行させる請求項1から請求項3のいずれかに記載のプログラム。
  5. トリガーからダイクロティックノッチまでの時間に対応する第1の時間を記憶する記憶手段と、
    心電波形又は血圧波形から前記トリガーを検出するトリガー検出手段と、
    前記記憶手段に記憶された第1の時間及び前記検出手段による検出結果を用いて、前記トリガーが検出されてから前記第1の時間が経過した時に前記バルーンを拡張させ、その後に収縮させる通常駆動と、前記トリガーが検出されてから前記第1の時間より長い第2の時間が経過した時に前記バルーンを拡張させ、その後に前記バルーンを収縮させる検出駆動と、を行う駆動手段と、
    前記検出駆動の際に得られる前記血圧波形から前記ダイクロティックノッチを検出するダイクロティックノッチ検出手段と、を有することを特徴とする大動脈バルーンポンピング駆動装置。
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