JP5634150B2 - 無効電力補償装置 - Google Patents

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Description

この発明は、電力系統に無効電力を供給して系統電圧を調整する無効電力補償装置に関する。
一般に電力が大きく変動する負荷が接続されている電力系統においては、その電力系統の電圧が負荷に流れる電流に応じて変動する。このような電圧電動を抑制するために設置される装置の一つに無効電力補償装置がある。この無効電力補償装置は、系統電圧が低下しているときには進み無効電力を電力系統に供給し、一方、系統電圧が上昇しているときには遅れ無効電力を電力系統に供給することで、電圧変動を調整する(例えば、特許文献1参照)。無効電力補償装置は、系統電圧と設定電圧との差に応じて常に動作しながら定常的な電圧変動を抑制している。
特公平6−42183号公報
ところで、電力系統の一層の安定化及び太陽光発電や風力発電等の分散電源の普及による電力系統の電圧変動を抑制するために1つの電力系統に複数台の無効電力補償装置が設置される。このような1つの電力系統に複数台の無効電力補償装置を設置した際に、各無効電力補償装置に設けられる電流や電圧等の検出センサ同士に微妙なばらつきがあると、各無効電力補償装置が逆の出力をすることでお互い効果を打ち消して、電力系統の電圧変動を補償することができないおそれがあった。そこで、複数台設置したとしても協調運転が可能な無効電力補償装置が求められていた。
また、無効電力補償装置が、定常的な電圧変動を補償するために出力範囲を最大に使用して運転している状況下において急峻な電圧変動が生じると、無効電力補償装置の出力に余裕がなく、急峻な電圧変動を補償できないおそれがあった。そこで、急峻な電圧変動に対応可能な無効電力補償装置が求められていた。
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、1つの電力系統に複数の無効電力補償装置が設置されたとしても、協調運転及び急峻な電圧変動に対応可能な無効電力補償装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、電力系統の系統電圧を安定させるために電力系統に無効電力を供給する電圧一定制御方式の無効電力補償装置において、電圧設定値の上下に上限電圧設定値と下限電圧設定値を設定するとともに、当該上限電圧設定値を上限、当該下限電圧設定値を下限とする電圧設定域を設定し、前記系統電圧が前記電圧設定域内の電圧変動では、前記無効電力を供給せず、前記系統電圧が前記電圧設定域外への電圧変動では、前記無効電力を供給することにより前記上限電圧設定値もしくは前記下限電圧設定値となるように電圧一定制御し、前記電圧設定域の上下に前記上限電圧設定値の最上限としての最大電圧設定値と、前記下限電圧設定値の最下限としての最小電圧設定値を設定し、前記系統電圧の検出電圧値に近づくように前記電圧設定値を一定時間ごとに段階的に変更させるとともに、前記電圧設定値の変更に合わせ前記電圧設定域も段階的に変更し、前記系統電圧が前記電圧設定値に一致するまで前記無効電力を供給するように電圧一定制御するか、又は前記電圧設定値の変更によって、前記上限電圧設定値が前記最大電圧設定値以上の場合には前記最大電圧設定値を前記上限電圧設定値に固定し、前記下限電圧設定値が前記最小電圧設定値以下の場合には前記最小電圧設定値を前記下限電圧設定値に固定し、前記検出電圧値が前記最大電圧設定値又は前記最小電圧設定値を超えたときには前記上限電圧設定値又は前記下限電圧設定値が固定されることにより前記電圧設定域の段階的な変更を禁止して、前記系統電圧が前記最大電圧設定値もしくは前記最小電圧設定値となるまで前記無効電力を供給するように電圧一定制御することをその要旨としている。
同構成によれば、微小な電圧変動に対する無効電力の出力を抑制できる。また、1つの電力系統に複数台の無効電力補償装置が設置された状態において協調運転が可能である。
さらに、系統電圧が電圧設定値の電圧設定域内となるように無効電力を供給するので、設定電圧の1点に合わせるのではなく余裕のある幅で無効電力を出力可能である。よって、無効電力の定常的な出力を抑制して、急峻な電圧変動に対して即座に対応することが可能である。加えて、電圧変動による系統電圧の過剰な上昇、下降を抑制することが可能である。よって、電力系統の急峻な電圧変動に対して裕度を持たせて確実に対応することが可能である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無効電力補償装置において、前記系統電圧の一定時間における平均値に近づくように前記電圧設定値を変更することをその要旨としている。
同構成によれば、一定時間の系統電圧の平均値と電圧設定値とを比較して、一定時間における平均値に近づくように電圧設定値を変更した。このため、急峻な電圧変動によって電圧設定値が大きく変更されることを抑制でき、電圧変動に対応が可能である。
本発明によれば、1つの電力系統に複数の無効電力補償装置が設置されたとしても、協調運転及び急峻な電圧変動に対応することができる。
無効電力補償装置の概略構成を示すブロック図。 無効電力補償装置の電圧一定制御を示す図。 無効電力補償装置の制御を示す図。 無効電力補償装置の動作を示す図。 無効電力補償装置の動作を示す図。 複数台同時使用時の無効電力補償装置の動作を示す図。 電力系統への無効電力補償装置の設置態様を示すブロック図。
以下、本発明の一実施形態について図1〜図6を参照して説明する。
図1に示されるように、無効電力補償装置10は、電力系統1に対して開閉器2及び変圧器3を介して並列接続されている。無効電力補償装置10は、電力系統1に接続された負荷4等によって電圧変動が発生する際に、無効電力を供給することにより電力系統1の系統電圧、例えば6600Vを調整する装置である。本実施例の無効電力補償装置10は、主回路にインバータ11を備え、同インバータ11には連系リアクトル12が接続されている。連系リアクトル12は、変圧器3に接続され、開閉器2を介して電力系統1に接続されている。インバータ11には、電位確立用のコンデンサ13が接続されている。開閉器2には、電力系統1の電流を検出する2つの電流センサCTと、電力系統1の電圧(以下、系統電圧という)を検出する電圧センサPTが設けられている。また、無効電力補償装置10には、制御装置14が設けられている。同制御装置14には、2つの電流センサCT及び電圧センサPTが接続されている。無効電力補償装置10は、系統電圧とインバータ出力電圧との電圧差で連系リアクトル12に流れる無効電力を調整しながら、連続的に出力を可変することで電力系統1の電圧を調整する。なお、本実施例の無効電力補償装置10は、SVG(Static Var Generator)方式の装置である。
無効電力補償装置10は、インバータ11の出力電圧を系統電圧の位相と同期させ、大きさを変化させることにより、系統電圧から90度遅れ、進みの電流が連系リアクトル12に流れる。すなわち、無効電力補償装置10は電力系統1から見ると、可変の進相コンデンサや分路リアクトルが接続されているように動作する。例えば、負荷4の変動により電力系統1の電圧が低下した場合には、電力系統1から見て進相コンデンサと同様な動作をして電圧を持ち上げる。また、電力系統1の電圧が上昇した場合には、電力系統1から見て分路リアクトルと同様な動作をして電圧を下げる。
無効電力補償装置10は、連系点の電圧を定電圧管理する「電圧一定制御」と、連系点より電源側の無効電力が零になるように管理する「力率1制御」との2つの制御方式がある。電圧一定制御は、連系点の電圧が基準電圧設定値の設定幅(電圧設定域)内に位置するように無効電力を連続的に発生する。一方、力率1制御は、連系点の負荷側の無効電力を検出し、電源側の無効電力が零になるように無効電力を連続的に発生する。なお、本実施例の無効電力補償装置10は、電圧一定制御によって電圧変動を抑制する。
図2に示されるように、無効電力補償装置10は、系統電圧が一定となるようにフィードバック制御を行う。ここで、無効電力補償装置10は、系統電圧が基準電圧設定値Vに上下に一定幅を持った電圧設定域VH‐L内に安定するように電圧制御を行う。なお、基準電圧設定値Vが電圧設定値に相当する。
まず、無効電力補償装置10の制御装置14は、電圧センサPTが検出した系統電圧を取得する(ステップS1)。そして、制御装置14は、系統電圧が基準電圧設定値Vの設定幅内、すなわち電圧設定域VH‐L内にあるか否かを判別する(ステップS2)。なお、基準電圧設定値Vの設定幅の上限は、基準電圧設定値Vに上側電圧幅V、例えば150Vを加えたV+Vであり、上限電圧設定値VCHに相当する。基準電圧設定値Vの設定幅の下限は、基準電圧設定値Vから下側電圧幅V、例えば150Vを引いたV−Vであり、下限電圧設定値VCLに相当する。上限電圧設定値VCHと下限電圧設定値VCLとの間の領域を電圧設定域VH‐Lとする。
続いて、制御装置14は、系統電圧が上限電圧設定値VCHと下限電圧設定値VCLとの電圧設定域VH‐L内である(VCL<系統電圧<VCH)場合には、現在の無効電力の出力に固定する(ステップS3)。本実施例では、0Varとして無効電力を出力しない。また、制御装置14は、系統電圧が上限電圧設定値VCHよりも大きい(系統電圧>VCH)場合には、上限電圧設定値VCHに電圧一定制御する(ステップS4)。また、制御装置14は、系統電圧が下限電圧設定値VCLよりも小さい(系統電圧<VCL)場合には、下限電圧設定値VCLに電圧一定制御する(ステップS5)。上記のように、制御装置14は、系統電圧の判別に基づいた電圧一定制御を逐次繰り返す。
また、図3に示されるように、本実施例の無効電力補償装置10は、一定時間の電力系統1の検出電圧の平均値Σに基づいて基準電圧設定値Vを変更する。まず、無効電力補償装置10の制御装置14は、系統電圧を取得する(ステップS11)。続いて、制御装置14は、検出電圧の平均値Σに基づいて基準電圧設定値Vを判別する(ステップS12)。なお、検出電圧の平均値Σは、サンプリング時間Tにおける検出電圧の積分値VΣをサンプリング時間Tで除した値である。また、サンプリング時間Tが一定時間に相当する。
続いて、制御装置14は、検出電圧の平均値Σが基準電圧設定値Vよりも大きい(Σ>V)場合には、基準電圧設定値Vを現在の基準電圧設定値Vに変更幅V、例えば10Vを加えた値(V=V+V)に変更する(ステップS13)。すなわち、制御装置14は、検出電圧が基準電圧設定値Vよりも上側で推移していると判断して、現在の基準電圧設定値Vを変更幅Vだけ上側へ変更することで、無効電力の出力に余裕を持たせる。また、制御装置14は、検出電圧の平均値Σが基準電圧設定値Vよりも小さい(Σ<V)場合には、基準電圧設定値Vを現在の基準電圧設定値Vから変更幅Vを引いた値(V=V−V)に変更する(ステップS14)。すなわち、制御装置14は、検出電圧が基準電圧設定値Vよりも下側で推移していると判断して、現在の基準電圧設定値Vを変更幅Vだけ下側へ変更することで、無効電力の出力に余裕を持たせる。また、制御装置14は、検出電圧の平均値Σが基準電圧設定値Vと同じ(Σ=V)場合には、基準電圧設定値Vを現在の基準電圧設定値Vのまま(V=V)とする(ステップS15)。
続いて、制御装置14は、検出電圧の平均値Σによる判別に基づく新たな基準電圧設定値Vの電圧設定域VH−Lが最大値以上であるか、又は最小値以下であるかを判別する。
まず、制御装置14は、下限電圧設定値VCLが電圧設定の最小値としての最小電圧設定値VMIN以下である否かを判別する(ステップS16)。そして、制御装置14は、下限電圧設定値VCLが最小電圧設定値VMIN、例えば本来の系統電圧6600Vから300V引いた6300V以下である(VCL≦VMIN)場合(ステップS16:YES)には、基準電圧設定値Vを最小電圧設定値VMINに下側電圧幅Vを足した値に設定する(V=VMIN+V)(ステップS17)。すなわち、下限電圧設定値VCLを最小電圧設定値VMINに設定する(VCL=VMIN)。よって、下限電圧設定値VCL(最小電圧設定値VMIN)に基づいて電圧一定制御を行うこととなる。
一方、制御装置14は、下限電圧設定値VCLが最小電圧設定値VMINよりも大きい(VCL>VMIN)場合(ステップS16:NO)には、上限電圧設定値VCHが電圧設定の最大値としての最大電圧設定値VMAX、例えば本来の系統電圧6600Vに300V加えた6900V以上であるか否かを判別する(ステップS18)。そして、制御装置14は、上限電圧設定値VCHが最大電圧設定値VMAX以上である(VCH≧VMAX)場合(ステップS18:YES)には、基準電圧設定値Vを最大電圧設定値VMAXから上側電圧幅Vを引いた値に設定する(V=VMAX−V)(ステップS19)。すなわち、上限電圧設定値VCHを最大電圧設定値VMAXに設定する(VCH=VMAX)。よって、上限電圧設定値VCH(最大電圧設定値VMAX)に基づいて電圧一定制御を行うこととなる。
一方、制御装置14は、上限電圧設定値VCHが最大電圧設定値VMAXよりも小さい(VCH<VMAX)場合(ステップS18:NO)には、系統電圧を取得し検出電圧の平均値Σによる判別に基づいた制御を逐次繰り返す。
次に、前述のように構成された無効電力補償装置10を1つの電力系統1に1台設置した際における無効電力補償装置10の動作態様について説明する。ここでの系統電圧は、無効電力補償装置10が電圧センサPTによって取得した検出電圧である。
図4に示されるように、系統電圧が基準電圧設定値Vと一致する状態から基準電圧設定値Vの設定幅の下側電圧幅V内に低下する場合について説明する。
まず、系統電圧は、基準電圧設定値Vに一致している。そして、第1サンプリング時間TS1において系統電圧が基準電圧設定値Vから設定幅内、すなわち電圧設定域VH‐L内(VCL<系統電圧<VCH)において低下する。この時、無効電力補償装置10は、無効電力を電力系統1に出力しない。すなわち、無効電力補償装置10の出力は0Varである。また、検出電圧の平均値Σは、系統電圧が基準電圧設定値Vよりも下方で推移したので、基準電圧設定値Vよりも小さい値となる。よって、無効電力補償装置10は、現在の基準電圧設定値Vから変更幅Vを引いたV−Vを第2サンプリング時間TS2において新たな基準電圧設定値Vとする。
続いて、第2サンプリング時間TS2において系統電圧が第1サンプリング時間TS1と同じ値、言い換えれば設定幅内(VCL<系統電圧<VCH)を維持する。この時も無効電力補償装置10は、無効電力を電力系統1に出力しない。また、検出電圧の平均値Σは、系統電圧が基準電圧設定値Vよりも下方で推移したので、基準電圧設定値Vよりも小さい値となる。よって、無効電力補償装置10は、現在の基準電圧設定値Vから変更幅Vを引いたV−Vを第3サンプリング時間TS3において新たな基準電圧設定値Vとする。すなわち、第1サンプリング時間TS1における基準電圧設定値Vに対して2倍の変更幅Vを引いた値となる。
更に、第3サンプリング時間TS3において系統電圧が第2サンプリング時間TS2と同じ値、言い換えれば設定幅内(VCL<系統電圧<VCH)を維持する。この時も無効電力補償装置10は、無効電力を電力系統1に出力しない。また、検出電圧の平均値Σは、系統電圧が基準電圧設定値Vよりも下方で推移したので、基準電圧設定値Vよりも小さい値となる。よって、無効電力補償装置10は、現在の基準電圧設定値Vから変更幅Vを引いたV−Vを新たな基準電圧設定値Vとする。すなわち、基準電圧設定値Vは、第1サンプリング時間TS1における基準電圧設定値Vに対して3倍の変更幅Vを引いた値となる。すると、系統電圧と基準電圧設定値Vとが一致する。以後、無効電力補償装置10は、系統電圧の平均値Σに基づいて制御する。
ここで、需要家においては、急峻な電圧変動が発生するとフリッカ等が起きて問題である。このため、急峻な電圧変動に対応して急峻な電圧変動を抑制することが重要である。無効電力補償装置10が電圧設定値の設定幅内、すなわち電圧設定域VH‐L内のような小さな変動のために電力系統1に無効電力を出力範囲の最大で出力していると、急峻な電圧変動に対応することができなくなる。そこで、本実施例の無効電力補償装置10は、上記のように基準電圧設定値Vを系統電圧に近づけることで、系統電圧が現在の値から大きく変動した際に即座に対応して無効電力を出力範囲の最大で出力することが可能となり、急峻な電圧変動を抑制することを可能とする。
次に、図5に示されるように、系統電圧が基準電圧設定値Vと一致する状態から低下して、無効電力補償装置10による補償がなければ基準電圧設定値Vの下限電圧設定値VCLよりも低下する場合について説明する。
まず、系統電圧は、基準電圧設定値Vに一致している。そして、第1サンプリング時間TS1、例えば10秒おいて系統電圧が基準電圧設定値Vから低下して下限電圧設定値VCLと一致する。よって、無効電力補償装置10は、下限電圧設定値VCLに電圧一定制御を行う。ここで、無効電力補償装置10は、進み無効電力を電力系統1に出力する。また、検出電圧の平均値Σは、系統電圧が基準電圧設定値Vよりも下方で推移したので、基準電圧設定値Vよりも小さい値となる。よって、無効電力補償装置10は、現在の基準電圧設定値Vから変更幅Vを引いたV−Vを第2サンプリング時間TS2において新たな基準電圧設定値Vとする。なお、第1サンプリング時間TS1及び第2サンプリング時間TS2が一定時間に相当する。
続いて、第2サンプリング時間TS2において系統電圧が第1サンプリング時間TS1における下限電圧設定値VCLから更に低下して新たな基準電圧設定値Vの下限電圧設定値VCLと一致する。よって、無効電力補償装置10は、下限電圧設定値VCLに電圧一定制御を行う。ここで、無効電力補償装置10は、先ほどよりは少なめに進み無効電力を電力系統1に出力する。また、検出電圧の平均値Σは、系統電圧が基準電圧設定値Vよりも下方で推移したので、基準電圧設定値Vよりも小さい値となる。よって、無効電力補償装置10は、現在の基準電圧設定値Vから変更幅Vを引いたV−Vを第3サンプリング時間TS3において新たな基準電圧設定値Vとする。すなわち、第3サンプリング時間TS3における基準電圧設定値Vは、第1サンプリング時間TS1における基準電圧設定値Vに対して2倍の変更幅Vを引いた値となる。
更に、第3サンプリング時間TS3において系統電圧が第2サンプリング時間TS2における下限電圧設定値VCLから更に低下するが、設定幅内、すなわち電圧設定域VH‐L内(VCL<系統電圧<VCH)である。よって、無効電力補償装置10は、無効電力を電力系統1に出力しない。また、検出電圧の平均値Σは、系統電圧が基準電圧設定値Vよりも下方で推移したので、基準電圧設定値Vよりも小さい値となる。よって、無効電力補償装置10は、現在の基準電圧設定値Vから変更幅Vを引いたV−Vを新たな基準電圧設定値Vとする。すなわち、基準電圧設定値Vは、第1サンプリング時間TS1における基準電圧設定値Vに対して3倍の変更幅Vを引いた値となる。
その後、無効電力補償装置10は、系統電圧が基準電圧設定値Vに一致するか、又は系統電圧が電圧設定値の最小電圧設定値VMINと一致するまで基準電圧設定値Vを段階的に変更する。
上記のように、系統電圧が基準電圧設定値Vの下限電圧設定値VCLよりも低下しそうになると、下限電圧設定値VCLに電圧一定制御することで、系統電圧を基準電圧設定値Vの設定幅内、すなわち電圧設定域VH‐L内に補償することができる。基準電圧設定値Vを系統電圧に近づけることで、無効電力の出力を抑制できる。そして、急峻な電圧変動に対して増加及び減少のどちらでも即座に無効電力を出力範囲の最大で出力することができるので、急峻な電圧変動を抑制することができる。
次に、1つの電力系統1に2台の無効電力補償装置10が設置された際における2台の無効電力補償装置10の動作態様について説明する。
本実施形態では、無効電力補償装置10の1台目の無効電力補償装置10aと2台目の無効電力補償装置10bとは、電流や電圧等の検出センサの微妙なばらつきにより検出値及び設定値が異なるとともに、2台目の無効電力補償装置10bの検出値及び設定値が1台目の無効電力補償装置10aよりも低い場合について説明する。
また、図6に示されるように、両無効電力補償装置10において系統電圧が電圧設定域VH‐L内に存在する状態から下限電圧設定値VCLよりも低下した際、両無効電力補償装置10の進み無効電力を供給することにより再び電圧設定域VH‐L内に復帰する場合について説明する。なお、負荷機器においては、初動負荷が大きいので、最初に大きく電圧降下が発生し、徐々に電圧が基に戻る。
まず、系統電圧は、1台目の無効電力補償装置10aにおいては、基準電圧設定値VC1に一致しており、2台目の無効電力補償装置10bにおいては、基準電圧設定値VC2よりも高い値に検出されている。この時、両無効電力補償装置10は、系統電圧が電圧設定域VH‐L内の存在する状態であるので、無効電力を電力系統1に出力しない。すなわち、両無効電力補償装置10の出力は0Varである(A区間)。
そして、第1サンプリング時間TS1において系統電圧が両無効電力補償装置10の基準電圧設定値VC1,VC2から低下して下限電圧設定値VC1L,VC2Lよりも低下する。よって、1台目の無効電力補償装置10aは、先に下限電圧設定値VC1Lよりも低下するため、下限電圧設定値VC1Lに電圧一定制御を行う。続いて、2台目の無効電力補償装置10bが、下限電圧設定値VC2Lよりも低下するため、下限電圧設定値VC2Lに電圧一定制御を行う。
ここで、2台の無効電力補償装置10は、系統電圧が基準電圧設定値VC1,VC2の設定幅内、すなわち電圧設定域VH‐L内(系統電圧<VC1L,VC2L)に入るまで(B区間)、進み無効電力を電力系統1に出力範囲の最大で出力する。これにより、無効電力補償装置が設置されていない場合よりも系統電圧の低下が抑制され、早期に系統電圧を復帰させることができる。よって、両無効電力補償装置10の進み無効電力により系統電圧が上昇する。
そして、系統電圧が2台目の無効電力補償装置10bの下限電圧設定値VC2Lとなると(系統電圧=VC2L)、進み無効電力の出力を徐々に低下する(C区間)。この時、1台目の無効電力補償装置10aは系統電圧が下限電圧設定値VC1Lよりも低い(系統電圧<VC1L)ため、進み無効電力を電力系統1に出力範囲の最大で出力する。よって、両無効電力補償装置10の進み無効電力により系統電圧が一定となる。
そして、1台目の無効電力補償装置10aは、進み無効電力を電力系統1に出力範囲の最大で出力する。よって、両無効電力補償装置10の進み無効電力により系統電圧が一定となる。この時、2台目の無効電力補償装置10bは、系統電圧が下限電圧設定値VC2Lとなったため、すなわち電圧設定域VH‐L内(系統電圧<VC2L)に入ったため、電圧制御を停止して無効電力を電力系統1に出力しない(D区間)。
そして、系統電圧が無効電力補償装置10aの下限電圧設定値VC1Lとなると(系統電圧=VC1L)、進み無効電力の出力を徐々に低下する(E区間)。よって、無効電力補償装置10aの進み無効電力により系統電圧が一定になる。そして、系統電圧が電圧設定域VH‐L内(系統電圧<VC1L,VC2L)に入ったため、電圧制御を停止して無効電力を無効電力補償装置10a、10bともに電力系統1に出力しない(F区間)。よって、系統電圧は、基準電圧設定値VC1及び基準電圧設定値VC2に近づきながら一定となる。
続いて、第2サンプリング時間TS2において基準電圧設定値VC1及び基準電圧設定値VC2が変更幅V低下することで、系統電圧が新たな基準電圧設定値VC1,VC2に近づくとともに、新たな基準電圧設定値VC2に一致する。
以後、2台の無効電力補償装置10は、系統電圧と基準電圧設定値VC1、系統電圧と基準電圧設定値VC2とがそれぞれ一致するように基準電圧設定値VC1,VC2をそれぞれ段階的に変更する。
さて、本実施例の無効電力補償装置10は、基準電圧設定値Vに設定幅(電圧設定域)を設け、系統電圧が設定幅内(電圧設定域)では無効電力を出力しないので、無効電力を定常的に出力することを抑制できる。よって、1つの電力系統1に複数の無効電力補償装置10が設置されたとしても、微小な電圧変動では無効電力を出力しないので、互いに異なる動作をすることなく、協調運転ができる。また、無効電力補償装置10は、系統電圧の急峻な電圧変動に対して増加及び減少のどちらにも即座に無効電力を出力範囲の最大で出力して電圧変動を抑制することができる。また、無効電力補償装置10は、系統電圧に一致するように基準電圧設定値Vを段階的に変更することで、電力系統1の急峻な電圧変動に対して確実に対応することができる。
また、図7に示されるように、同一の電力系統1に自動電圧調整器(SVR:Step Voltage Regulator)5を各負荷4や発電機6の近傍に設置されることが多いので、系統電圧が基準電圧設定値Vの設定幅内である場合には、自動電圧調整器5によって系統電圧を調整すれば、電圧変動は自動電圧調整器5で、急峻な電圧変動は無効電力補償装置10で対応して動作を分担させることができる。
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)基準電圧設定値VC1の上下に上限電圧設定値VCHと下限電圧設定値VCLとを設定するとともに、上限電圧設定値VCHを上限、下限電圧設定値VCLを下限とする設定幅(電圧設定域)とを設定して、系統電圧が基準電圧設定値VC1の設定幅(電圧設定域)内となるように基準電圧設定値VC1を段階的に変更した。このため、微小な電圧変動に対する無効電力の出力を抑制できる。また、1つの電力系統1に複数台の無効電力補償装置10が設置された状態において協調運転が可能である。
さらに、系統電圧が基準電圧設定値VC1の設定幅(電圧設定域)内となるように無効電力を供給するので、設定電圧の1点に合わせるのではなく余裕のある幅で無効電力を出力できる。よって、無効電力の定常的な出力を抑制して、急峻な電圧変動に対して即座に対応することが可能である。
(2)一定時間の系統電圧の平均値と基準電圧設定値VC1とを比較して、一定時間における平均値に近づくように基準電圧設定値VC1を変更した。このため、急峻な電圧変動によって基準電圧設定値VC1が大きく変更されることを抑制でき、電圧変動に対応が可能である。
(3)系統電圧が基準電圧設定値VC1の設定幅(電圧設定域)内では無効電力を供給せず、系統電圧が設定幅(電圧設定域)外であるときに無効電力を供給した。このため、無効電力の出力を抑制することが可能である。
(4)系統電圧が徐々に変化して、結果的に大きく変化した場合でも基準電圧設定値VC1の設定幅(電圧設定域)が設定幅の上限と下限との間に制限されるので、ある程度の基準電圧設定値VC1になるように無効電力を出力可能である。
(5)上限電圧設定値VCHの最上限としての最大電圧設定値VMAXと、下限電圧設定値VCLの最下限としての最小電圧設定値VMINとを設定し、基準電圧設定値Vの変更によって、上限電圧設定値VCHが最大電圧設定値VMAX以上の場合には最大電圧設定値VMAXを上限電圧設定値VCHに設定し、下限電圧設定値VCLが最小電圧設定値VMIN以下の場合には最小電圧設定値VMINを下限電圧設定値VCLに設定した。このため、電圧変動による系統電圧の過剰な上昇、下降を抑制することが可能である。よって、電力系統1の急峻な電圧変動に対して裕度を持たせて確実に対応することができる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態において、系統電圧、設定幅、変更幅、及びサンプリング時間等の値は設置場所に応じて任意に設定可能である。
・上記実施形態では、系統電圧が基準電圧設定値Vと一致するように、基準電圧設定値Vを段階的に変更したが、系統電圧が基準電圧設定値Vの設定幅内に一致するように変更してもよい。
・上記実施形態では、基準電圧設定値Vの設定幅が最大電圧設定値VMAX及び最小電圧設定値VMINを超えないように設定したが、最大電圧設定値VMAX及び最小電圧設定値VMINを設定しなくともよい。
・上記実施形態において、基準電圧設定値Vの上側電圧幅Vと下側電圧幅Vとは個々に任意の値に設定してもよい。例えば、無効電力補償装置10が設置される電力系統1の電圧変動の特性に合わせて、電圧の増加が起こり易ければ上側電圧幅Vを小さくしたり、電圧の減少が起こり易ければ下側電圧幅Vを小さくしたりしてもよい。
・上記実施形態では、系統電圧が電圧設定域VH‐L内に安定する場合には無効電力補償装置10は、無効電力を電力系統1に出力せず0Varとし、電圧設定域VH‐Lを超える場合には無効電力を供給するようにした。しかしながら、電圧設定域VH‐L内に安定する場合であっても一定の無効電力を系統電圧に出力してもよい。
・上記実施形態では、系統電圧と基準電圧設定値Vとの比較をサンプリング時間Tにおいて行ったが、系統電圧と基準電圧設定値Vとの比較を逐次行ってもよい。
・上記実施形態では、1つの電力系統1に1台の無効電力補償装置10を設置して時と2台の無効電力補償装置10を設置したときの動作様態について説明したが、3台以上を設置しても同様の効果を得ることができる。
1…電力系統、2…開閉器、3…変圧器、4…負荷、5…自動電圧調整器(SVR)、6…発電機、10…無効電力補償装置(SVG)、11…インバータ、12…連系リアクトル、13…コンデンサ、14…制御装置、CT…電流センサ、PT…電圧センサ、V,VC1,VC2…電圧設定値としての基準電圧設定値、VCH…上限電圧設定値、VCL,VC1L,VC2L…下限電圧設定値、V…上側電圧幅、V…下側電圧幅、VH−L…電圧設定域、V…変更幅、VMAX…最大電圧設定値、VMIN…最小電圧設定値、TS1,TS2,TS3…一定時間としてのサンプリング時間、Σ…平均値。

Claims (2)

  1. 電力系統の系統電圧を安定させるために電力系統に無効電力を供給する電圧一定制御方式の無効電力補償装置において、
    電圧設定値の上下に上限電圧設定値と下限電圧設定値を設定するとともに、当該上限電圧設定値を上限、当該下限電圧設定値を下限とする電圧設定域を設定し、
    前記系統電圧が前記電圧設定域内の電圧変動では、前記無効電力を供給せず、前記系統電圧が前記電圧設定域外への電圧変動では、前記無効電力を供給することにより前記上限電圧設定値もしくは前記下限電圧設定値となるように電圧一定制御し、
    前記電圧設定域の上下に前記上限電圧設定値の最上限としての最大電圧設定値と、前記下限電圧設定値の最下限としての最小電圧設定値を設定し、
    前記系統電圧の検出電圧値に近づくように前記電圧設定値を一定時間ごとに段階的に変更させるとともに、前記電圧設定値の変更に合わせ前記電圧設定域も段階的に変更し、
    前記系統電圧が前記電圧設定値に一致するまで前記無効電力を供給するように電圧一定制御するか、又は前記電圧設定値の変更によって、前記上限電圧設定値が前記最大電圧設定値以上の場合には前記最大電圧設定値を前記上限電圧設定値に固定し、前記下限電圧設定値が前記最小電圧設定値以下の場合には前記最小電圧設定値を前記下限電圧設定値に固定し、前記検出電圧値が前記最大電圧設定値又は前記最小電圧設定値を超えたときには前記上限電圧設定値又は前記下限電圧設定値が固定されることにより前記電圧設定域の段階的な変更を禁止して、前記系統電圧が前記最大電圧設定値もしくは前記最小電圧設定値となるまで前記無効電力を供給するように電圧一定制御する
    ことを特徴とする無効電力補償装置。
  2. 請求項1に記載の無効電力補償装置において、
    前記系統電圧の一定時間における平均値に近づくように前記電圧設定値を変更する
    ことを特徴とする無効電力補償装置
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