JP5633998B2 - 歯の再石灰化促進剤およびこれを含む口腔または経口用組成物 - Google Patents

歯の再石灰化促進剤およびこれを含む口腔または経口用組成物 Download PDF

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Description

本発明は歯の再石灰化促進剤に関する。また本発明は、当該歯の再石灰化促進剤を含有することによって、歯の再石灰化を促進してう蝕(虫歯)予防に有効に用いられる口腔用または経口用組成物に関する。
う蝕(虫歯)は、歯面への歯垢の堆積、及びそれに続く歯垢内の微生物(う蝕原因細菌)が産生する有機酸によって生じ始める。有機酸は、口腔内、特に歯の表面のpHを5.5以下に低下させるため、歯面表層下のヒドロキシアパタイトを構成するカルシウムイオンやリン酸イオンが溶出し、表層下脱灰が生じる。歯の表面では、通常、表層の崩壊(脱灰)と修復(再石灰化)が常に繰り返されているものの、表層下脱灰が進むと、脱灰が再石灰化よりも優勢となり、表層が崩壊し歯面に修復不可能なう蝕が生じる。
従って、う蝕予防(虫歯予防)には、再石灰化を促進して再石灰化が脱灰を上回る状態にもっていくことが重要である。
再石灰化を促進してう蝕を予防する方法として、フッ素化合物を用いる方法が古くから知られている。しかし、フッ素は大量摂取によって毒性を示すため、安全性が高く飲食物にも使用できる再石灰化促進成分が求められている。
例えば、歯の再石灰化促進作用を示すことをうたった飲食物(特定保健用食品)として、下記のチューインガムが知られている。
(1)カゼインホスホペプチド(以下、「CPP」という)と非晶質リン酸カルシウム(以下、「ACP」という)を含有するチューインガム(特許文献1参照)。
(2)キシリトール、第二リン酸カルシウム、及びフクロノリ抽出物(硫酸化多糖の一種。以下、「フノラン」という)を含有するチューインガム(非特許文献1及び2参照)。
(3)リン酸化オリゴ糖カルシウム(以下、「ポスカ」という)を含有するチューインガム(非特許文献3参照)。
これらの製品は、いずれもカルシウムを可溶化する成分とともにカルシウムと結合する酸性基を含むことを特徴とする。具体的には、チューインガム(1)は、カルシウム可溶化成分としてCPPと、酸性基(リン酸基)を含む非晶質リン酸カルシウムを;チューインガム(2)は、カルシウム可溶化成分としてフノランと、酸性基(リン酸基および硫酸基)を含む第二リン酸カルシウムおよびフクロノリ抽出物を;チューインガム(3)は、カルシウム可溶化成分として、酸性基(リン酸基)を含むポスカを含有している。
カルシウムは、食品中のリン酸と結合すると、通常不溶性のリン酸カルシウムとなって析出し生体がカルシウムとして利用できなくなるが、上記各成分の酸性基はカルシウムと可逆的に結合することが可能であるので、これらの製品を食べると、カルシウムが口腔内で可溶化状態となり、歯の再石灰化に動員されることになる。
これらの製品は、安全でしかも再石灰化促進効果を発揮するものの、更に優れた歯の再石灰化促進作用を有する新たな有効成分の出現が待望されている。
鵜澤 昌好:シリーズ「ヘルスクレームの科学的根拠」−7−『キシリトール+2』製品の再石灰化促進効果,ILSIイルシー No.76,5−12(2003) Thomas Imfeldら:フクロノリ抽出物およびリン酸一水素カルシウム配合キシリトールタブレットのう蝕誘発能の評価,健康・栄養食品研究 Vol.5,No.4,23−31(2002) 稲葉 大輔ら:リン酸化オリゴ糖カルシウム配合ガム「ポスカム」の再石灰化促進効果,デンタル・マンスリーレポートNo.207,株式会社モリタ編集・発行(2003) 国際公開第02/094204号パンフレット
本発明の目的は、歯の再石灰化促進作用を有し、しかも安全で口腔内や経口用に使用することができる、新規な歯の再石灰化促進剤を提供することである。また、本発明の目的は、当該再石灰化促進剤を配合することによって再石灰化促進効果を発揮し、う蝕予防に有効な口腔用または経口用組成物を提供することである。
本発明者らは、上記事情に鑑み、歯の再石灰化を促進する物質を探索すべく鋭意検討を重ねていたところ、アラビアガムにかかる優れた作用があり、歯の再石灰化促進剤として有用であることを見出した。さらに、当該再石灰化促進剤を有効量配合した口腔用組成物または経口用組成物は、歯の再石灰化を促進することによってう蝕防止に有効に利用できることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は下記の構成を有する。
項1.アラビアガムを有効成分とする歯の再石灰化促進剤。
項2.項1記載の歯の再石灰化促進剤を、歯の再石灰化を促進する有効量の割合で含む口腔用または経口用組成物。
なお、ここで口腔用組成物または経口用組成物100重量%中に含まれる再石灰化促進剤の有効量としては、アラビアガムの配合割合に換算して、例えば0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜20重量%を挙げることができる。
項3.歯磨き剤、洗口液、パスタ剤、口内消臭剤、チュアブル剤、トローチ剤または人口唾液である項2に記載する口腔用用組成物。
項2または3に記載する口腔用組成物として好ましくは、1日あたりアラビアガムの量に換算して10〜1000mg、好ましくは40〜400mgの割合で口腔内に用いられる口腔用組成物を挙げることができる。
項4.チューインガム、グミ、ゼリー、ヌガー、キャンディー、飲料、チョコレートまたは焼き菓子である項2に記載する経口用組成物。
項2または4に記載する経口用組成物として好ましくは、1日あたりアラビアガムの量に換算して10〜1000mg、好ましくは40〜400mgの割合で経口摂取される経口用組成物を挙げることができる。
項5.口腔用または経口用組成物に歯の再石灰化を促進する有効成分としてアラビアガムを配合することを特徴とする、当該口腔用または経口用組成物に対する歯の再石灰化促進作用および蝕予防作用の付与増強方法。
項6.アラビアガムの歯の再石灰化促進剤としての使用(但し、ヒトへの医療行為を除く。)。
項7.再石灰化促進剤のpHが6.6〜7の範囲である、項6記載の使用。
項8.上記再石灰化促進剤が、口腔用組成物または経口用組成物100重量%中に、アラビアガムの割合に換算して0.1〜50重量%の割合で配合されるものである、項6または7に記載する使用。
本発明によれば、歯の再石灰化促進に有効に使用される再石灰化促進剤を提供することができる。また本発明によれば、上記再石灰化促進剤を歯の再石灰化促進に有効な量含むことによってう蝕予防(虫歯予防)に有効な口腔用または経口用組成物を提供することができる。歯の再石灰化促進にかかわるアラビアガムの機能は、必ずしも明らかではなく、またこれに拘束されるものではないが、アラビアガムは酸性基を17%程度の割合で含むため、口腔内で可溶化状態となったカルシウムと可逆的に結合し、歯の再石灰化に動員されるものと考えられる。
(1)歯の再石灰化促進剤
本発明の歯の再石灰化促進剤は、アラビアガムを有効成分とすることを特徴とする。本発明で「再石灰化促進剤」とは、歯牙の表層下脱灰の状態から再石灰化する作用を有するものであって、歯の再石灰化を目的として専ら使用されるものを意味する。
アラビアガムは、マメ科植物であるアカシア属のアカシア・セネガル(Acacia senegal)やアカシア・セイアル(Acacia seyal)またはこれらの同属植物の幹や枝から得られるゴム状の滲出液を乾燥して調製される天然樹脂(多糖類)である。アカシア・セネガル(Acacia senegal)やアカシア・セイアル(Acacia seyal)など、アラビアガムはその種を特に制限するものではない。
アラビアガムは、スーダンを始め、エチオピアからセネガルにいたる北アフリカ一帯(エチオピア、セネガル、ナイジェリア、アフリカ北部のコルドファン、ナイル河支流近傍、その他アメラハ地方)で産出されるが、本発明においてはその由来を問うことなく、いずれの産地由来のものであってもよい。
また、アラビアガムは、その水分含量を特に制限するものではない。通常商業的に入手可能なアラビアガム(原料)は、105℃で6時間加熱乾燥することによって減少する水分量(乾燥減量)が、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下というものである。本発明においても、このような水分含量(乾燥減量)を有するアラビアガムを任意に選択し使用することができる。
また通常、アラビアガムは、塊状物、玉状物、粗粉砕物、粒状、または粉末状の形態で入手することができるが、本発明ではこれらの形態を問わず、いずれの形態のものをも使用することができる。水に短時間で溶解することから、好ましくは粗粉砕物、粒状、または粉末状の形態のものである。
本発明の再石灰化促進剤は、その形状を問わず、上記アラビアガムの形状と同様に、粗粉砕物、粒状、または粉末状の形態を有するものであってもよいし、また、アラビアガムを水に溶解または懸濁した溶液または懸濁液の形態であってもよい。この場合、アラビアガム水溶液またはアラビアガム懸濁液中のアラビアガムの濃度は特に規定しないが、通常50重量%以下の範囲から適宜設定することができる。好ましくは20〜40重量%、より好ましくは25〜35重量%である。
本発明の再石灰化促進剤のpHは特に制限されないが、通常pH6.6〜7の範囲で調整することができる。好ましくはpH7である。アラビアガムは通常pH4〜4.5であるから、再石灰化促進剤を上記のpH範囲に調整するために、例えば後述する塩基性化合物または酸を用いることができる。
アラビアガムのpHを上げるために使用される塩基性化合物としては、食品に配合することができるものを広く挙げることができ、この限りにおいて特に制限されない。例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム等を挙げることができる。また、陰イオン交換樹脂を用いることによってもpHを上げることができる。陰イオン交換樹脂としては、制限されないが、ダイヤイオン SA10A(商標、三菱化学(株)製、以下同じ)、ダイヤイオン SA12A、ダイヤイオン SA20A、ダイヤイオン PA306、ダイヤイオン WA10、ダイヤイオン WA20などが例示される。またアラビアガムのpHを下げるために使用される酸としては食品添加物として通常使用される酸であれば特に制限されず、かかる中から任意に選択使用することができる。例えばクエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸、または硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸等を例示することができる。
なお、本発明の再石灰化促進剤には、有効成分であるアラビアガムに加えて、再石灰化促進作用を有する他の成分が含まれていてもよい。かかる成分としては、特に制限なく公知の再石灰化促進成分を広く用いることができる。具体的には、例えばフッ素化合物、亜鉛化合物、リン化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。
ここでフッ素化合物としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化第一スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等を挙げることができる。
また亜鉛化合物として、好適には酸化亜鉛、クエン酸亜鉛、またはステアリン酸亜鉛などの水難溶性亜鉛化合物を挙げることができる。なお、ここで水難溶性亜鉛化合物とは、25℃において、水100gに対して、溶解する量が0.5g未満のものをいい、全く溶解しないものも含まれる。水難溶性亜鉛化合物は粒子径が小さく、比表面積が大きい粒子のほうが、味の観点で好ましく、具体的には平均粒子径0.3μm以下で、かつ比表面積が10m2/g以上のものが好ましい。
リン化合物としては、限定されるものではないが、例えばリン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム等が挙げられる。
またカルシウム化合物としては、限定されるものではないが、例えば塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ピロリン酸水素カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
(2)口腔用組成物
本発明は、前述するアラビアガムを有効成分とする再石灰化促進剤を、歯の再石灰化を促進する有効量含有する口腔用組成物に関する。なお、本発明でいう口腔用組成物には、口腔内で歯の表面に接するようなかたちで使用されるものが含まれる。例えば、歯を含む口腔衛生や口腔内のケア、または口腔粘膜(咽喉粘膜を含む)からの吸収を目的として口腔内で使用される組成物を挙げることができる。なお、当該口腔用組成物は上記用途または目的で使用されるものであればよく、商品区分として、医薬品、医薬部外品、食品または雑貨などの別を特に制限するものではない。しかし、後述する主として食品を対象とした経口用組成物と区別する意味から、好ましくは医薬品、医薬部外品または雑貨に属する組成物である。
より具体的には、歯磨き剤、洗口液、口内消臭剤、チュアブル剤、舌下剤、バッカル剤、パスタ剤、トローチ剤および人口唾液を例示することができる。好ましくは歯磨き剤、洗口液、口内消臭剤、チュアブル剤、パスタ剤、トローチ剤および人口唾液であり、より好ましくは歯磨き剤、洗口液、口内消臭剤、チュアブル剤および人口唾液である。
これらの組成物の剤形は特に制限されず、例えばペースト状、クリーム状または軟膏状(例えば、練歯磨剤、パスタ剤または口腔用軟膏など)、粉末状(例えば、粉歯磨剤など)、溶液状またはスプレー状(例えば、液体歯磨剤、洗口液、口内消臭液、人口唾液など)、錠剤状(例えば、チュアブル剤、舌下剤、バッカル剤またはトローチ剤など)、またはガム状(例えば、チュアブル剤など)などの各種の剤形とすることができる。
口腔用組成物中に配合される上記再石灰化促進剤の割合としては、口腔用組成物100重量%中に配合されるアラビアガムの配合割合に換算して、通常0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲を挙げることができる。
本発明の口腔用組成物は、本発明の石灰化促進剤を、歯の石灰化を促進する有効量の割合で含有するものであればよく、他の配合成分は特に限定されるものではない。好ましい配合成分としてカルシウムを挙げることができる。カルシウムを含有すると、アラビアガムがカルシウムを利用して効率よく歯の再石灰化を促進することができる。ここでカルシウムは、無機カルシウムおよび有機カルシウムの別を問わない。無機カルシウムとして、制限されないが、好ましくは炭酸カルシウムやハイドロキシアパタイトを、有機カルシウムとして、制限されないが、好ましくは乳酸カルシウムやグルコン酸カルシウムを例示することができる。
口腔用組成物の種類に応じて、公知の口腔用組成物用の成分、例えば、酵素、抗菌剤、ビタミン類、収斂剤、研磨剤、湿潤剤、粘結剤、発泡剤、保存剤、香味剤、甘味剤、pH調整剤、有機酸、糖アルコール、抗酸化剤等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
制限されないが、酵素としては、例えばアミラーゼ、プロテアーゼ、リゾチーム、デキストラナーゼなどを;抗菌剤としては、例えばサンギナリン、アラントイン、アミノ安息香酸誘導体、ヘキセチジン、クロルヘキシジン塩類、トリクロサン、塩化セチルピリジニウムなどを;ビタミン類としては、例えばビタミンB、C、E等を;収斂剤としては、例えば硝酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩等を挙げることができる。
研磨剤としては、シリカ系研磨剤(シリカゲル、沈降シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケートなど)、アルミナ、水酸化アルミニウム、第2リン酸カルシウム2水和物及び無水和物、第3リン酸カルシウム、第3リン酸マグネシウム、第4リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム等が挙げられる。口腔用組成物が歯磨剤の場合、かかる研磨剤を、通常全体の2〜60重量%、好ましくは8〜45重量%の割合で配合することができる。
湿潤剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、マルチニット、ラクチニット、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロース、アルギン酸塩、キサンタンガム、カラギーナン、モンモリナイト、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
また発泡剤としては、陰イオン、非イオン、陽イオン、および両イオン性界面活性剤が挙げられる。ここで陰イオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸系界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アミノ酸系界面活性剤、スルホコハク酸系界面活性剤、ショ糖脂肪酸エステル等が;非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体であるプルロニック系界面活性剤、脂肪酸ジアルカノールアミド系界面活性剤等が挙げられる。
保存剤としては、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンゾエート、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、二酸化チタン等が挙げられる。香味剤として、ペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油、オレンジ油、メントール、丁子油、アニス油、冬緑油、ユーカリ油等が挙げられる。甘味剤または甘味料としては、サッカリン塩、デキストロース、アスパルテーム、キシリトール、パラチニット、ステビアエキス、アセスルファムカリウム、スクラロース、グラニュー糖、粉糖、水飴等が挙げられる。pH調整剤としては、クエン酸およびその塩、リン酸およびその塩、リンゴ酸およびその塩、グルコン酸およびその塩、マレイン酸およびその塩、アスパラギン酸およびその塩、グルコン酸およびその塩、コハク酸およびその塩、グルクロン酸およびその塩、フマル酸およびその塩、グルタミン酸およびその塩、アジピン酸およびその塩、乳酸およびその塩、パントテン酸およびその塩、塩酸、水酸化アルカリ金属等が挙げられる。
また、本発明の口腔用組成物は、さらにキシリトールや還元パラチノースなど非発酵性糖類を含有することができる。かかる非発酵性糖類は、虫歯原因菌により消化されないため有機酸が産生されず、歯垢をできにくくするといった効果を期待することができる。非発酵性糖類の含有量としては、配合する再石灰化促進剤による歯の再石灰化の促進効果が妨げられないかぎり特に制限されない。
本発明の口腔用組成物は、歯の再石灰化を促進してう蝕を予防するのに有効である。すなわち、有効成分として含有するアラビアガムが脱灰と再石灰化の平衡を再石灰化に傾けるとともに、唾液分泌を促進して唾液中のカルシウムによる再石灰化をも促進することができる。このような歯の再石灰化促進効果およびう蝕予防効果を得るための摂取量の目安としては、口腔用組成物の形態、歯の状態などにもよるが、本発明の口腔用組成物に含まれるアラビアガムの量に換算して1日あたり10〜1000mg、好ましくは40〜400mgとなるように摂取することが望ましい。例えば、アラビアガムを3重量%の割合でガム状の口腔用組成物(2g)を、毎食後及び就寝前(1日4回)に摂取することにより、適量を摂取することができる。
(3)経口用組成物
本発明は、前述するアラビアガムを有効成分とする再石灰化促進剤を、歯の再石灰化を促進する有効量含有する経口用組成物に関する。なお、本発明でいう経口用組成物には、口から摂取されて嚥下される組成物が含まれる。当該経口用組成物はかかる態様で使用されるものであればよく、商品区分として医薬品や食品の別を特に制限するものではないが、好ましくは食品である。
かかる経口用組成物として、具体的にはキャンディー、グミ、ゼリー、チョコレート、飲料、ヌガー、チューインガム、または焼き菓子を例示することができる。
経口用組成物中に配合される上記再石灰化促進剤の割合としては、経口用組成物100重量%中に配合されるアラビアガムの配合割合に換算して、通常0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲を挙げることができる。
本発明の経口用組成物は、本発明の石灰化促進剤を、歯の石灰化を促進する有効量配合するものであればよく、他の成分として、通常の食品や経口医薬品に配合する成分を同様に配合することができる。またその製造も、本発明の石灰化促進剤を配合する以外、特に制限されず、通常の通常の食品や経口医薬品の製造と同様の条件および手順で行うことができる。
また、本発明の経口用組成物は、口腔用組成物と同様に、さらにキシリトールや還元パラチノースなど非発酵性糖類を含有することができる。かかる非発酵性糖類は、虫歯原因菌により消化されないため有機酸が産生されず、歯垢をできにくくするといった効果を期待することができる。非発酵性糖類の含有量としては、配合する再石灰化促進剤による歯の再石灰化の促進効果が妨げられないかぎり特に制限されない。
本発明の経口用組成物は、歯の再石灰化を促進してう蝕予防(虫歯予防)に有効である。すなわち、有効成分として含有するアラビアガムが脱灰と再石灰化の平衡を再石灰化に傾けるとともに、唾液分泌を促進して唾液中のカルシウムによる再石灰化をも促進することができる。このような歯の再石灰化促進効果を得るための摂取量の目安としては、経口用組成物の形態、歯の状態などにもよるが、本発明の経口用組成物に含まれるアラビアガムの量に換算して1日あたり10〜1000mg、好ましくは40〜400mgとなるように摂取することが望ましい。例えば、アラビアガムを0.5%の割合でガム状の経口用組成物を、毎食後及び就寝前(1日4回)に摂取することにより、適量を摂取することができる。
(4)口腔用または経口用組成物に対する歯の再石灰化促進作用および蝕予防作用の付与増強方法
本発明はまた、口腔用または経口用組成物に対してアラビアガムを歯の再石灰化を促進する有効成分として配合して、当該アラビアガムの配合に基づいて、口腔用または経口用組成物について歯の再石灰化促進効果および蝕予防効果を発揮させる方法に関する。対象とする口腔用組成物および経口用組成物はそれぞれ(2)および(3)で説明した通りである。口腔用組成物および経口用組成物に対するアラビアガムの配合割合は、制限されないが、口腔用組成物または経口用組成物100重量%中、例えば0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜20重量%を挙げることができる。より具体的には、1日に使用される口腔用組成物または経口用組成物中に、アラビアガムが10〜1000mg、好ましくは40〜400mgの割合で含まれるように、配合することができる。
以下に実験例および実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
実験例1 再石灰化促進効果の評価
アラビアガムの再石灰化促進効果を、稲葉らの方法(岩医大歯誌27:197-202,2002)に従って、抜去したヒトの第3大臼歯および第2小臼歯を用いてインビトロ試験を行って、評価した。
具体的には、抜去したヒトの第3大臼歯9本および第2小臼歯6本(合計15本)を3群(発明群、比較群、対照群)に分け、下記の(1)脱石灰溶液、(2)再石灰化溶液、(3)被験試料溶液を用いて、下記の操作を行った。
1.使用処理液の組成
(1) 脱灰溶液
CaCl2 1.5 mM
KH2PO4 0.9 mM
CH3COOH 100 mM
ヒドロキシセルロース 1.6 %
KOHでpH4.3に調整。
(2) 再石灰化溶液
CaCl2 1.5 mM
KH2PO4 0.9 mM
HEPES 59.575 g/l
KCl 2.237 g/l
KOHでpH7.0に調整。
(3) 被験試料溶液
発明群用溶液:アラビアガム(10mg/ml含有→1重量%)水溶液
比較群用溶液:フッ化ナトリウム(1000ppm含有→0.1重量%)水溶液
対照群用溶液:蒸留水。
2.試験操作
(1)脱灰処理
a.被験歯の頬側面を歯面研磨剤で研磨した後、ネイルカラーを用いて研磨面に4mm×2mmのウインドウを作成する。
b.37℃で7日間、脱灰溶液中で浸漬する。
c.蒸留水で洗浄する。
(2)pH-サイクリング処理
a.アイソメット(Buehler Co. LTD, Lake Bluff, IL, USA製)を用いて、被験歯を頬舌方向に2分割する。
b.一方はそのままゴラック-2004(日新EM株式会社製)に包埋し、もう一方に対しては、下記のpH-サイクリング処理を14日間繰り返し行う。
(i) 脱灰溶液に37℃で4時間浸漬する。
(ii) 蒸留水で洗浄する。
(iii)各被験試料溶液に室温で10分間浸漬する。
(iv) 再石灰化溶液に37℃で20時間浸漬する。
(v)蒸留水で洗浄する。
(3)包埋
上記でpH-サイクリング処理した被験歯を下記の方法で、包埋する。
a.10%ホルマリン溶液で固定(6日間)
b.上昇性エタノールで脱水(7日間)
c.スチレンモノマーで置換(4日間)
d.リゴラック(重合促進剤:不含)で重合(7日間)
e.リゴラックで重合(7日間)。
(4)コンタクトマイクロラジオグラフィー
被験歯表面のエナメル質の脱灰度を、コンタクトマイクロラジオグラフィーで測定した。具体的には、脱灰処理後とpH-サイクリング処理後の両段階の被験歯を対象として、被験歯を100μmに研磨し、軟X線発生装置(SOFRON社製)で照射後、現像し、エナメル質の脱灰度(ΔZ、%μm)を評価した。
結果を図1に示す。図1は、上から、発明群用溶液〔アラビアガム(10mg/ml含有)水溶液〕、比較群用溶液〔フッ化ナトリウム(1000ppm含有)水溶液〕および対照群用溶液〔蒸留水〕で処理した被験歯について、脱灰後(処理前)と再石灰化後(処理後)のエナメル質脱灰度を示す画像図である。図2は、上から、発明群用溶液〔アラビアガム(10mg/ml含有)水溶液〕、比較群用溶液〔フッ化ナトリウム(1000ppm含有)水溶液〕および対照群用溶液〔蒸留水〕で処理した被験歯について、脱灰後(処理前)と再石灰化後(処理後)のエナメル質脱灰度を示す図である。ここで示すΔZが、エナメル質脱灰度を意味する。ΔZから下式に従って再石灰度(mineral gain)(%μm)を求め、各群(発明者群、比較群、対照群)の再石灰度(%μm)の平均を求めた。
Figure 0005633998
結果を図3に示す。図3は左から、発明群用溶液〔アラビアガム(10mg/ml含有)水溶液〕、比較群用溶液〔フッ化ナトリウム(1000ppm含有)水溶液〕および対照群用溶液〔蒸留水〕処理による脱灰度(%μm)を示し、値が小さいほど、歯の再石灰促成効果が高いことを意味する。
これらの結果から、アラビアガムが歯のエナメル質の再石灰化を促進することが明らかになった。
以下に処方例を示す。下記に示す口腔用組成物および経口用組成物はいずれも良好な歯の再石灰化促進効果を有する。このためう蝕予防に好適に用いることができる。なお、%は重量%を意味する。
処方例1 人口唾液
以下の成分を混合し、人口唾液を調製した。
塩化ナトリウム 0.084(%)
塩化カリウム 0.12
塩化カルシウム 0.015
塩化マグネシウム 0.0052
リン酸二カリウム 0.034
アラビアガム 1.0
水 残 り
100.00。
処方例2 練歯磨
以下の処方により、練り歯磨きを調製した。
水酸化アルミニウム 50.0(%)
炭酸カルシウム 5.0
グリセリン 20.0
カルボキシメチルセルロース 1.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
香料 0.9
アラビアガム 1.0
水 残 り
100.0。
処方例3 液状歯磨
以下の処方により、液状歯磨きを調製した。
水酸化アルミニウム 25.0(%)
グリセリン 40.0
ソルビット 15.0
カルボキシメチルセルロース 0.2
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
アラビアガム 2.0
水 残 り
100.0。
処方例4 口腔用軟膏
以下の処方により、口腔用軟膏を調製した。
流動パラフィン 15.0(%)
セタノール 10.0
グリセリン 20.0
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル 5.0
香料 0.5
サッカリンナトリウム 0.1
アラビアガム 2.0
水 残 り
100.0。
処方例5 洗口液
以下の処方により、洗口液を調製した。
エタノール 15.0(%)
香料 0.2
グリセリン 10.0
ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル 0.5
サッカリンナトリウム 0.03
アラビアガム 0.5
水 残 り
100.0。
処方例6 トローチ
以下の処方により、トローチを調製した。
ブドウ糖 35.0(%)
パラチノース 35.0
香料 1.0
アラビアガム 8.0
水 残 り
100.0。
処方例7 キャンディ
以下の処方により、トローチを調製した。
砂糖 50.0(%)
水飴 35.0
クエン酸 1.0
乳酸カルシウム 0.3
香料 1.0
アラビアガム 5.0
水 残 り
100.0。
処方例8 チューインガム
以下の処方により、チューインガムを調製した。
キシリトール 60.0(%)
ガムベース 20.0
水飴 15.0
リン酸一水素カルシウム 1.0
香料 2.0
アラビアガム 3.0
100.0。
処方例9 ドリンク
以下の処方により、ドリンクを調製した。
果糖ブドウ糖液糖 15.0(%)
リンゴ酸 0.1
ビタミンC 0.05
ニコチン酸アミド 0.01
リボフラビンリン酸エステルナトリウム 0.001
ピリドキシン塩酸塩 0.001
香料 0.1
アラビアガム 1.0
水 残 り
100.00。
処方例10 グミ
ソルビトール液 58.0(%)
水 62.0
ゼラチン 12.0
クエン酸 1.0
乳酸カルシウム 0.5
スクラロース 0.07
香料 0.65
アラビアガム 42.0
乾燥前 175.75
乾燥後 100.00。
処方例11 口腔用ゲル
以下の処方により、口腔用ゲルを調製した。
パラチニット 20.0(%)
カルボキシメチルセルロース 0.2
グリセリン 40.0
アラビアガム 5.0
水 残 り
100.0。
処方例11 クッキー
以下の処方により、クッキーを調製した。
小麦粉 50.5(%)
砂糖 21.0
マーガリン 25.0
全卵 12.0
スキムミルク 6.0
食塩 0.3
乳酸カルシウム 0.1
香料 0.1
アラビアガム 5.0
焼成前 120.0
焼成後 100.0。
処方例12 チョコレート
以下の処方により、チョコレートを調製した。
チョコレート生地 98.8(%)
チョコレートシード 0.2
アラビアガム 1.0
100.0。
処方例13 ソフトキャンディー
以下の処方により、ソフトキャンディーを調製した。
砂糖 25.0(%)
水飴 58.0
水 23.0
極度硬化油脂 7.5
ショ糖脂肪酸エステル 0.5
ゼラチン 1.5
フォンダンベース 10.0
クエン酸 1.0
乳酸カルシウム 0.5
ビタミンC 0.1
香料 0.2
アラビアガム 2.0
収量 100.00。
本発明によれば、歯の再石灰化促進に有効な再石灰化促進剤、ならびに歯の再石灰化を促進してう蝕予防効果に優れた口腔用または経口用組成物の有効成分を提供することができる。すなわち、本発明の再石灰化促進剤を含む組成物を口腔内に歯と摂取するような態様でも用いることにより、有効成分であるアラビアガムが脱灰と再石灰化の平衡を再石灰化に傾けるとともに、唾液分泌を促進して唾液中のカルシウムによる再石灰化をも促進することができる。
実験例1で、アラビアガムの再石灰化促進効果を評価したコンタクトマイクロラジオグラフ顕微鏡写真像を示す。上から、発明群用溶液〔アラビアガム(10mg/ml含有)水溶液〕、比較群用溶液〔フッ化ナトリウム(1000ppm含有)水溶液〕および対照群用溶液〔蒸留水〕で処理した被験歯について、脱灰後(処理前)(図左列)と再石灰化後(処理後)(図右列)のエナメル質脱灰度を示す画像図である。 エナメル質の相対的な脱灰度を示す模式図を示す。上から、発明群用溶液〔アラビアガム(10mg/ml含有)水溶液〕、比較群用溶液〔フッ化ナトリウム(1000ppm含有)水溶液〕および対照群用溶液〔蒸留水〕で処理した被験歯について、脱灰後(処理前)(図左列)と再石灰化後(処理後)(図右列)のエナメル質脱灰度を示す。顕微鏡写真をコンピューターに取り込み、NIH imageソフトウェアーを用いて計測した。横軸はエナメル質表層からの深さ、縦軸は健全なエナメル質を100とした場合の相対的な脱灰度を示し、ΔZは斜線部分の面積として求められ、その歯の相対的な脱灰度を示す。 再石灰化処理による脱灰度の変化を示す。脱灰直後のΔZに対する再石灰化処理後のΔZの割合を示す。左から、発明群用溶液〔アラビアガム(10mg/ml含有)水溶液〕、比較群用溶液〔フッ化ナトリウム(1000ppm含有)水溶液〕および対照群用溶液〔蒸留水〕処理による脱灰度(%μm)を示す。

Claims (2)

  1. アラビアガムを有効成分とする、歯の再石灰化促進剤。
  2. pHが6.6〜7の範囲である、請求項1記載の再石灰化促進剤。
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