JP5633270B2 - 送受信装置 - Google Patents
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かかる通信方式に用いる送受信機の構成としては、スーパーヘテロダイン方式とダイレクトコンバージョン方式がある。スーパーへテロダイン方式では受信した高周波信号をベースバンド信号にダウンコンバート(周波数変換)するのに、複数回の変換をおこなうため、回路規模が大きくなってしまうが、ダイレクトコンバージョン方式はダウンコンバートを1回でおこなうため、構成が簡素になり、実装面積を縮小できる。
また、UWBでは広帯域に信号を拡散させるため、短時間に搬送波周波数を切り替える(周波数ホッピング技術)必要がある。周波数ホッピングでは、3バンドごとにバンドグループを形成しており、連続して一続きのデータを送受信する間に3バンドを高速で切り替えている。従って、送受信機としては、複数のバンドグループに対応する必要がある。
すなわち、UWB等周波数ホッピングを行う通信方式での送受信実現するために、送受信機には、ミキサ回路(周波数変換回路)で短時間に周波数が切り替わる、例えば4位相の局部発振信号が必要となり、シンセサイザにて4位相の高周波信号を生成している。
4位相を生成するための第1の手法として、所望の周波数の2倍周波数で発振回路を発振させ、分周することで4位相を取り出す方法がある。
また、生成した4位相の信号を、位相を正確に保ったまま送信、受信のそれぞれのミキサ回路に伝送することは困難である。これは以下の理由による。
CMOSの高周波回路では、配線やデバイス間につく望ましくない寄生容量によってインピーダンスが低下する。これに対しては、チップ上にスパイラルインダクタを形成することが有効であるが、スパイラルインダクタは通常100um四方の大きさであり、通常のトランジスタ(ゲート長数10nm、ゲート幅数um)と比べて大きい。このため、スパイラルインダクタを含む回路では、回路面積が大きくなり、回路間の配線が長くなってしまうが、複数の配線それぞれにつく容量をコントロールすることはそもそも困難であり、配線ごとに位相差や振幅差が生じてしまう。その影響は高周波信号においてより顕著になる。局部発振信号に位相差や振幅差がある状態でミキサ回路にて周波数変換をおこなうと、QPSK変調やDCM変調の信号を復調する精度が低下し、信号の送受信特性が悪化する。
この方法では、変動する位相量が周波数によって異なるため、広帯域で正確に90度ずつずらすことが困難である。また3〜11GHzと高周波であるために素子値が小さくなりすぎ、配線抵抗や配線容量といった寄生素子の影響を受けて特性が変化してしまうという問題がある。
さらに、第3の手法として、QVCO(Quadrature Voltage Controlled Oscillator)という、2つの発振回路を互いに影響しあうように結合させて4位相を発振する方法がある。
この方法では、発振回路を2つ搭載することにより占有面積と消費電力が大きくなることと、2つの発振回路が互いに影響しあうことから、雑音特性が悪化するという問題がある。また、第1の方法と同様、生成した4位相の信号を正確にミキサ回路に伝送することは困難である。
この方法では、SSB Mixerへ入力する信号として正確な4位相の信号が必要であり、先述の4位相信号生成と同様の問題が発生する。
また、第2の手法として、PLL(Phase Locked Loop)を3つ搭載し、出力する周波数を切り替える方法があるが、この方法では、回路面積と消費電力が大きくなるという問題がある。
多相の局部発振信号を、短期間で周波数を切り替えて生成することをシンセサイザにて行うことには以上のような問題があった。
それに対し、シンセサイザからの局部発振信号をもとに、多相局部発振信号生成回路により多相局部発振信号を生成し、ミキサにおいて周波数変換をおこなう方法が原理的に可能であることは既に知られている。
特許文献1には、複数の通信規格に対応した送受信システムを1つに集積するコンボチップにおいて、局部発振信号のデューティを制御する回路と、所定信号の1/n倍の周波数を持つ局部発振信号を所定信号の1周期分ずつ位相を順次遅延させる直列接続されたn個の移相器と、個々の移相器からの出力信号に基づいて高周波信号の周波数変換をおこなうn個のサブミキサ回路と、n個のサブミキサ回路の出力を合成する演算器からなる送受信システムが開示されている。
かかる送受信システムでは、チップ面積を増加させることなく複数キャリア周波数に対応させることが出来る。
本発明は、高周波かつ広帯域にわたり局部発振信号の位相ずれによってQPSK変調やDCM変調などの変復調精度を維持しつつ、搬送波周波数が短時間に頻繁に切り替わる周波数ホッピングに対応でき、かつその回路面積と消費電力が小さくすることが出来る送受信装置を提供することを目的とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の送受信装置において、前記第1のミキサ回路の出力信号に発生するスプリアスを前記第2のミキサ回路によって周波数変換したときの信号強度が最小となるように前記第1の多相局部発振信号の各位相を調整することにより前記送信回路における前記第1の多相局部発振信号間の位相誤差を調整可能である送受信装置を特徴とする。
また、請求項4の発明は、前記第2のミキサ回路により、周波数変換した前記第1のミキサ回路の出力信号に発生するスプリアスの信号強度を検出し、該信号強度が最小となるまで前記送信回路における各遅延回路の遅延時間量を各々変更することにより前記送信回路における前記第1の多相局部発振信号間の位相誤差を調整する請求項2に記載の送受信装置を特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか一項に記載の送受信装置において、各多相局部発振信号の位相は、各遅延回路に接続したバッファの駆動力を変化させることで、各々独立に調整可能である送受信装置を特徴とする。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れか一項に記載の送受信装置において、前記第1のミキサ回路及び前記第2のミキサ回路は、前記多相局部発振信号が入力される、並列接続したトランジスタ群からなる回路を備え、前記トランジスタ群のうちON/OFFするトランジスタを切り替えることによって周波数変換を行う送受信装置を特徴とする。
図1は、送信回路を例に、遅延回路にて多相信号を生成し、ミキサでIQの直交周波数変換をする構成について説明する図である。
図1に示す送信回路は、直列接続した遅延回路1と、各々の遅延回路からの出力を混合するミキサ2(2−1、2−2)を備えている。
シンセサイザからの局部発振信号は入力3から遅延回路1に入力される。直列に複数接続して各々の出力を取り出すことで、位相がずれた多相信号を取り出すことが出来る。
なお、遅延回路の遅延時間は制御線4によって一斉に調整できる。
遅延回路1段ごとに、局部発振信号周期の1/12位相ずれ、12段の遅延回路で1周期分位相がずれるように、フィードバック制御によって遅延時間を制御する。半導体チップの製造上の問題で遅延回路の遅延時間を全て均一にすることが難しいため、このままでは多相信号間の位相を等しくすることは難しいため、後述のキャリブレーションが必要である。
図2において、差動信号5をNchトランジスタ6、7のゲートに入力し、差動出力8を得る。この回路の遅延時間はNch電流源9、もしくはPch電流源10、11が流す電流が、出力ノードにつく負荷容量をチャージする時間で決まるため、電流源9、10、11の電流量を調節することで遅延時間を調節することができる。
図3の構成では、直列接続した遅延回路1aから信号を取り出し、信号を増幅するバッファ12にて遅延時間をそれぞれ独立に離散的に変更できるようになっている。
遅延時間の調整はデジタル信号によって微調整する。これにより、多相信号の位相を等間隔にそろえることができる。
信号を増幅するバッファ13を、サイズを変えて並列に接続し、それらをスイッチ14で選択的に動作させることにより、出力につく負荷は一定のままバッファの駆動力を変化させることができ、遅延時間を調節することができる。即ち、バッファ13の数に比例して駆動力を強めることが出来る。
図5に示す構成は、送信、受信用のミキサ回路で一般的に用いられる構成である。
以下、簡単のため送信ミキサ回路を例に説明する。
図5において、トランジスタ15、16のゲートにベースバンド信号が入力され、トランジスタ17、18、19、20のゲートに局部発振信号が入力される。取り出す信号は周波数変換されている。
図6に示すミキサ2aは、直列(縦積み)接続しNchトランジスタを並列接続したアンプ回路を、複数(a〜d)備えている。
図5と同様にNchトランジスタ21、22のゲートにベースバンドからの信号が入力される。
縦積み接続したNchトランジスタ23〜46のゲートには、後述するキャリブレーションにより等間隔に位相が調節された多相局部発振信号(周波数は搬送波周波数の1/3)が入力される。
回路a(トランジスタ23、24、25、26、27、28)で、図5のトランジスタ17と同じはたらきをする。
また、回路b(トランジスタ29〜34)で図5のトランジスタ18、回路c(トランジスタ35〜40)で図5のトランジスタ19、回路d(トランジスタ41〜46)で、図5のトランジスタ20と同じ働きをする。
図7においては、ベースバンド信号を入力する方のトランジスタの側が縦積み接続されている。
トランジスタ51、52の組、トランジスタ53、54の組及びトランジスタ55、56の組が、並列接続され、さらに、トランジスタ57、58の組、トランジスタ59、60の組及びトランジスタ61、62の組が並列接続されている。
局部発振信号は、トランジスタ63〜66に入力される。なお、回路の働きは図6の場合と基本的に同じである。
図8において、図6の並列回路a、bにおけるトランジスタ23〜34のON/OFF状態を示している。
図8において斜線で示す期間、図6の縦積みトランジスタのペア(例えばトランジスタ23、24のペア、トランジスタ25、26のペア、トランジスタ27、28のペア)が同時にオンするため、トランジスタ23、24、25、26、27、28をあわせた動作は、図5のトランジスタ17と同じ働きをし、かつ変換周波数は局部発振信号の3倍となる。なお、多相局部発振信号のデューティ比は半分となっていることが条件である。
図8と同様に、図6におけるトランジスタ23〜34のON/OFF状態を示している。図8中、斜線で示した時間が、図6の縦積みトランジスタのペアが同時にオンする時間である。
同じく、トランジスタ23、24、25、26、27、28をあわせた動作は、図5のトランジスタ17と同じ働きをし、変換周波数も局部発振信号の3倍となる。
この場合、多相局部発振信号のデューティ比は約1/4であればよく、高い精度は必要ない。
図9の例で示したように、局部発振信号のデューティ比は約1/4になっていればよく、その精度は±1/12位相と非常に粗いため、定電流70で容量71を駆動するバッファ回路をシンセサイザ出力部にもちいれば、定電流70の電流値と容量71の容量値を調節することでデューティ比を要求される範囲内に収めることが可能である。
本発明の回路構成では、上述した特許文献1の回路構成のように正確にデューティ比を決める必要がないため、回路面積が少なく、低消費電力で実現できる。
本構成では、キャリブレーションのため、送信ミキサ回路(第1のミキサ回路)84で周波数変換した信号を受信ミキサ回路(第2のミキサ回路)85で再度周波数変換して元のベースバンド信号に戻すための、ループバック経路86を有している。シンセサイザ80で生成した局部発振信号は、遅延回路が直列接続された送信側の遅延回路列82(第1の遅延回路列)、受信側の遅延回路列81(第2の遅延回路列)に入力される。問題となる製造上のデバイスばらつきはランダムに発生するため、遅延回路列81、82はそれぞれ独立にキャリブレーションする必要がある。
遅延回路列82の出力の多相信号間の位相がばらついている場合、送信ミキサ回路84によって周波数変換された送信RF信号は、搬送波周波数の1/3及び2/3周波数とそれ以上の高調波のスプリアスが発生する。そこで、まずループバック経路86を通り、受信ミキサ回路85で搬送波周波数の1/3で周波数変換(ダウンコンバート)する。これで、送信ミキサ回路84で生じた搬送波周波数の1/3のスプリアスをベースバンドに周波数変換できるので、この強度を検出する。遅延回路列82の遅延回路各段の遅延時間量を各々独立に変更していき、受信回路で検出する信号強度が最小となるような設定を調べれば、送信ミキサ回路84で発生している1/3スプリアスを最小にすることができる。受信ミキサ回路85にて搬送波周波数の1/3周波数で周波数変換するには、図6におけるトランジスタ23、24のゲートに同位相の信号を入力し、トランジスタ25、26、27、28についてはオフにするという方法で実現する。
受信側の遅延回路列81のキャリブレーションの場合は、ループバック経路86を用いることなく、受信ミキサ回路85で生成した信号のスプリアスを直接検知し、各周波数におけるスプリアスが最小となるように遅延回路列81の各遅延回路の遅延時間量を調整すればよい。
なお、この手法を用いると、送信、受信の各ミキサ回路84、85にデバイスのばらつきがある場合でも、精度が良く周波数変換がおこなえるように調整された多相信号を生成することができる。
横軸が周波数、縦軸が信号強度をあらわしている。
図では搬送波周波数を9GHzとし、図11の送信ミキサ回路84で周波数変換された望ましい信号90の他にスプリアスが3GHzと6GHzで生じる。これを受信ミキサ回路85で3GHzの周波数変換をおこなうことで、ベースバンド信号として取り込み、信号強度を検出する。
SSB Mixer回路は、高速の周波数切り替えに有効であるが、高周波で動作させることが難しい。
図13の構成は、シンセサイザで出力する発振周波数を高速で切り替えるために有効な回路構成である。
かかる構成によっては、周波数ω1、ω2の入力信号に対して、周波数(ω1+ω2)の出力信号を生成することができる。入力信号の一方の正負を反転させることで、出力信号の周波数を(ω1−ω2)に瞬時にきりかえることができるため、高速な周波数切り替えに有効である。
しかし、SSB Mixerに入力する信号は正確に90度位相がずれていなければ、不要なイメージ波が発生してしまう。このため、出力周波数が約10GHzの場合は入力周波数も約10GHzでかつ4相が必要となり、現実的にCMOS回路で実装しにくくなる。本発明による回路構成では、シンセサイザの出力周波数は搬送波周波数の1/3で良いため、UWB規格を満たすには3GHz程度の4相信号が入力できればよく、これは2倍の6GHz信号を発振回路で生成して分周することで比較的容易に実現できるため、SSB Mixerを採用することができ、回路を小面積で低消費電力にできる。
このように構成することで、3〜11GHzの広帯域かつ高周波で周波数変換でき、配線抵抗や配線容量といった寄生素子によって動作に問題が生じることがなく、搬送波周波数が短時間に頻繁に切り替わることに対応できる。
シンセサイザの出力は搬送波周波数の1/3周波数であるため、広帯域の局部発振信号をトランジスタからなるアンプで増幅することが可能であり、スパイラルインダクタを使用する場合と比べて占有面積を小さくすることができる。
さらに、シンセサイザの出力周波数を搬送波周波数の1/3にすることで、シンセサイザを例えばSSB MixerとPLLで構成することができ小面積、低消費電力で回路を実装できる。これは、シンセサイザの出力周波数を低周波にすることで回路の選択肢が増えることに起因する。
局部発振信号の生成・伝送を低消費電力・小面積の回路で実現でき、送受信器全体の消費電力と面積を小さくする効果も期待できる。
Claims (7)
- 低周波の局部発振信号を出力するシンセサイザと、
複数の遅延回路を多段に接続して各遅延回路に前記局部発振信号を入力することで第1の多相局部発振信号を生成する第1の遅延回路列及び前記第1の多相局部発振信号を入力され、ベースバンド帯域の送信信号を高周波の搬送波周波数に変換する第1のミキサ回路を含む送信回路と、
複数の遅延回路を多段に接続して各遅延回路に前記局部発振信号を入力することで第2の多相局部発振信号を生成する第2の遅延回路列及び前記第2の多相局部発振信号を入力され、前記搬送周波数の受信信号をベースバンド帯域に周波数変換する第2のミキサ回路を含む受信回路と、
前記送信回路及び前記受信回路間に設けられたループバック経路と、
を備え、
前記ループバック経路を介して前記第2のミキサ回路にフィードバックされた前記第1のミキサ回路の出力信号を前記第2のミキサ回路で周波数変換したときの信号強度が最小となるように前記第1の多相局部発振信号の各位相を調整することにより、前記送信回路における前記第1の多相局部発振信号間の位相誤差を調整することを特徴とする送受信装置。 - 請求項1に記載の送受信装置において、
前記第1のミキサ回路の出力信号に発生するスプリアスを前記第2のミキサ回路によって周波数変換したときの信号強度が最小となるように前記第1の多相局部発振信号の各位相を調整することにより前記送信回路における前記第1の多相局部発振信号間の位相誤差を調整可能であることを特徴とする送受信装置。 - 請求項1に記載の送受信装置において、
前記第2のミキサ回路で生成した信号に発生するスプリアスの信号強度が最小となるように前記第2の多相局部発振信号の各位相を調整することにより、前記受信回路における第2の多相局部発振信号間の位相誤差を調整可能であることを特徴とする送受信装置。 - 前記第2のミキサ回路により、周波数変換した前記第1のミキサ回路の出力信号に発生するスプリアスの信号強度を検出し、該信号強度が最小となるまで前記送信回路における各遅延回路の遅延時間量を各々変更することにより前記送信回路における前記第1の多相局部発振信号間の位相誤差を調整することを特徴とする請求項2に記載の送受信装置。
- 前記第2のミキサ回路により、前記第2のミキサ回路で生成した信号に発生するスプリアスの信号強度が最小となるまで前記受信回路における各遅延回路の遅延時間量を各々変更することにより前記受信回路における前記第2の多相局部発振信号間の位相誤差を調整することを特徴とする請求項3に記載の送受信装置。
- 請求項1乃至5の何れか一項に記載の送受信装置において、各多相局部発振信号の位相は、各遅延回路に接続したバッファの駆動力を変化させることで、各々独立に調整可能であることを特徴とする送受信装置。
- 請求項1乃至6の何れか一項に記載の送受信装置において、前記第1のミキサ回路及び前記第2のミキサ回路は、各多相局部発振信号が入力される、並列接続したトランジスタ群からなる回路を備え、前記トランジスタ群のうちON/OFFするトランジスタを切り替えることによって周波数変換を行うことを特徴とする送受信装置。
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