JP5633217B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、空気入りラジアルタイヤに関する。より詳しくは、本発明の空気入りラジアルタイヤは、有機繊維補強層間にゴム材を配設した空気入りラジアルタイヤに関する。
重荷重用ラジアルタイヤには、カーカス折り返し端部における歪みを緩和するため、当該端部のタイヤ幅方向外側に有機繊維補強層を配設する手法が用いられている。
例えば、特許文献1には、有機繊維補強層として有機繊維コード層を含む重荷重用ラジアルタイヤが開示されている。この重荷重用ラジアルタイヤにおいては、有機繊維コード層は、ビードコアのタイヤ幅方向外側近傍位置から折返し部終端をタイヤ幅方向外側で超える位置に向け折返し部に対し末広がり状に離隔して延びる配置になるとともに、有機繊維コード層は、ビードコアのタイヤ幅方向外側近傍位置からタイヤ半径方向外方にて折返し部及び巻上げ方向に対しタイヤ幅方向外側に向け鋭角で曲がる第一の屈曲部分を有し、タイヤ断面にて、折返し部及びその巻上げ方向に対する第一の屈曲部分の屈曲角度が15〜60°の範囲内にある。
特許第4315473号公報
特許文献1に開示されている空気入りラジアルタイヤは、有機繊維補強層を含むことからビード部剛性が高いため、カーカス折り返し端部における歪みの分散が可能である。しかしながら、複数の有機繊維補強層が、コードが交差するように配設されているため、有機繊維補強層間にせん断歪みが生ずるおそれがある。従って、この有機繊維補強層間で生じたせん断歪みに起因して、応力が集中するカーカス折り返し端部において歪みの発生が助長され、その結果カーカス折り返し端部が故障の起点となるおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、カーカス折り返し端部近傍における故障を抑制した空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る空気入りラジアルタイヤは、カーカス折り返し端部のタイヤ幅方向外側に、有機繊維コードをゴム材で被覆した有機繊維補強層を少なくとも2層備え、正規リムに装着し、正規内圧を充填した無負荷状態で、カーカス折り返し端部よりもタイヤ径方向内側の第1の位置から、カーカス折り返し端部よりもタイヤ径方向外側の第2の位置までの間であり、かつ、前記有機繊維補強層同士の間に、ゴム材が配設されていることを特徴とする。
本発明の空気入りラジアルタイヤにおいては、カーカス折り返し端部のタイヤ幅方向外側であって、第1の位置から第2の位置まであり、かつ、有機繊維補強層同士の間に、ゴム材が配設されている。このため、この所定領域に配設されたゴム材により、有機繊維補強層間で生じるせん断歪みに起因してカーカス折り返し端部で助長されるせん断歪みを緩和することができ、これによりカーカス折り返し端部近傍における故障を抑制することができる。
また、本発明の空気入りラジアルタイヤにおいては、第1の位置のタイヤ径方向内側、及び第2の位置のタイヤ径方向外側においては、有機繊維コード間距離を、従来どおり、ほぼ一定とすることができる。このため、本発明の空気入りラジアルタイヤによれば、ビード部剛性を大きく損なうことを抑制することができる。
また、この空気入りラジアルタイヤにおいては、前記有機繊維補強層同士の有機繊維コード間距離が、前記第1の位置からタイヤ径方向外側に向かうにつれて徐々に大きくなっているとともに、前記第2の位置からタイヤ径方向内側に向かうにつれて徐々に大きくなっており、カーカス折り返し端部のタイヤ径方向位置付近で最大となっていることが望ましい。
この空気入りラジアルタイヤにおいては、有機繊維補強層同士の有機繊維コード間距離が、カーカス折り返し端部よりもタイヤ径方向内側の位置(第1の位置)からタイヤ径方向外側に向かうにつれて、また、カーカス折り返し端部よりもタイヤ径方向外側の位置(第2の位置)からタイヤ径方向内側に向かうにつれて、いずれも漸増しており、カーカス折り返し端部のタイヤ径方向位置付近で最大となっている。
このため、この空気入りラジアルタイヤによれば、応力が集中して歪みが助長されるカーカス折り返し端部付近で、ゴム材のタイヤ幅方向厚みを効率的に大きくすることができるため、カーカス折り返し端部付近における有機繊維補強層間の歪みを抑制することができる。
また、この空気入りラジアルタイヤにおいては、前記第1の位置と前記第2の位置との少なくとも一方における前記有機繊維補強層同士の有機繊維コード間距離をD1とするとともに、前記有機繊維補強層同士の有機繊維コード間最大距離をD2とした場合に、1.2×D1≦D2≦3.0×D1であることが望ましい。
D1及びD2の関係を1.2×D1≦D2とすることで、ゴム材の配設領域を十分に確保することができる。このため、有機繊維補強層間で生じるせん断歪みに起因してカーカス折り返し端部で助長されるせん断歪みを十分に緩和することができ、これによりカーカス折り返し端部近傍における故障を十分に抑制することができる。また、D1及びD2の関係をD2≦3.0×D1とすることで、有機繊維補強層間に配設されたゴム材を大きくし過ぎず、有機繊維補強層間においても箍効果を十分に発揮してビード部剛性の低下を抑制することができる。その結果、カーカス折り返し端部でのせん断歪みの十分な緩和による、カーカス折り返し端部近傍での故障を十分に抑制することができる。
また、この空気入りラジアルタイヤにおいては、ビードコアの重心からカーカス折り返し端部までのタイヤ径方向距離をHcとし、ビードコアの重心から前記第1の位置までのタイヤ径方向距離をHlとし、ビードコアの重心から前記第2の位置までのタイヤ径方向距離をHuとし、ビードコアの重心から高さが最も低い有機繊維補強層のタイヤ径方向上端部までのタイヤ径方向距離をHnとした場合に、0.5×Hc≦Hl≦0.9×Hc、かつ、1.1×Hc≦Hu<Hnであることが望ましい。
Hl及びHcの関係をHl≦0.9×Hcとすることで、有機繊維補強層同士の有機繊維コード間距離が大きい部分を十分に確保することができる。このため、有機繊維補強層間で生じるせん断歪みに起因してカーカス折り返し端部で助長されるせん断歪みを十分に緩和することができ、その結果、カーカス折り返し端部近傍における故障を十分に抑制することができる。また、Hl及びHcの関係を0.5×Hc≦Hlとすることで、有機繊維補強層同士の有機繊維コード間距離が大きい部分を過度に確保することなく、有機繊維補強層間においても箍効果を十分に発揮してビード部剛性の低下を抑制することができる。その結果、カーカス折り返し端部でのせん断歪みの十分な緩和による、カーカス折り返し端部近傍での故障を十分に抑制することができる。
同様に、Hu及びHcの関係を1.1×Hc≦Huとすることで、有機繊維補強層同士の有機繊維コード間距離が大きい部分を十分に確保することができる。このため、有機繊維補強層間で生じるせん断歪みに起因してカーカス折り返し端部で助長されるせん断歪みを十分に緩和することができる。その結果、カーカス折り返し端部近傍における故障を十分に抑制することができる。また、Hu及びHnの関係をHu<Hnとすることで、有機繊維補強層の上端部であって、かつ、有機繊維補強層間において、箍効果を発揮することができ、ビード部のタイヤ径方向外側領域での剛性を大きく損うことを抑制することができる。
また、この空気入りラジアルタイヤにおいては、前記第1の位置から前記第2の位置までの間であって、かつ、前記有機繊維補強層同士の間に配設されたゴム材の300%モジュラスが、前記有機繊維補強層に用いられたゴム材の300%モジュラス以下であることが望ましい。このような配設位置に依存したゴム材の物性選択により、有機繊維補強層間で生じるせん断歪みに起因してカーカス折り返し端部で助長されるせん断歪みを十分に緩和することができ、これによりカーカス折り返し端部近傍における故障を十分に抑制することができる。
本発明に係る空気入りラジアルタイヤは、カーカス折り返し端部近傍における故障を抑制することができる。
図1は、本実施形態の空気入りラジアルタイヤを示す子午断面図である。 図2−1は、図1に示す領域Aの一例を拡大して示す子午断面図である。 図2−2は、図1に示す領域Aの一例を拡大して示す子午断面図である。 図2−3は、図1に示す領域Aの一例を拡大して示す子午断面図である。 図3−1は、図2−1に示す領域Bの一例を拡大して示す子午断面図である。 図3−2は、図2−1に示す領域Bの一例を拡大して示す子午断面図である。 図3−3は、図2−1に示す領域Bの一例を拡大して示す子午断面図である。 図4は、本実施形態の空気入りラジアルタイヤのビード部を拡大して示す子午断面図である。 図5は、本発明の実施例に係る空気入りラジアルタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、及びいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に開示する構成は、適宜組み合わせることができる。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向外側とはタイヤ回転軸から遠ざかる側をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ回転軸へ向かう側をいう。タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸として回転する方向をいう。タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から遠ざかる側をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう側をいう。タイヤ赤道面とは、タイヤ回転軸に直交するとともに、タイヤ幅の中心を通る平面をいう。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面上にあってタイヤ周方向に沿う線をいう。
図1は、本実施形態の空気入りラジアルタイヤを示す子午断面図である。空気入りラジアルタイヤ1は、タイヤ赤道面Cを中心としてほぼ対称になるように構成されている。このため、以下では、図1に示すタイヤ赤道面Cを中心とした一方側のみを説明し、他方側の説明は省略する。
図1に示す空気入りラジアルタイヤ1は、正規リムに装着し、正規内圧を充填した無負荷状態である。ここで、「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば"Measuring Rim"を意味する。また「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧を意味し、乗用車用タイヤの場合には180kPaとする。TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" を意味する。
図1に示すように、空気入りラジアルタイヤ1は、トレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4及びビード部5とを含んで構成されている。また、空気入りラジアルタイヤ1は、カーカス6、ビード保護層7、及びベルト層8を有するとともに、カーカス6のタイヤ幅方向外側に有機繊維補強層群9を有する。
トレッド部2は、空気入りラジアルタイヤ1の外部に露出したものであり、その表面が空気入りラジアルタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。このトレッド面21には、タイヤ周方向に延在する複数の周方向溝22と、これら周方向溝22により区画形成された複数の陸部をなすリブ23とが形成されている。本実施形態では、トレッド部2のタイヤ幅方向の中央であってタイヤ赤道面C上となるクラウンセンターCLの位置を含み7本の周方向溝22が形成され、これら周方向溝22により8本のリブ23が形成されている。
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りラジアルタイヤ1におけるタイヤ幅方向の両外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51、硬質ビードフィラ52、及び軟質ビードフィラ53を含む。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラ52、53は、カーカス6がビードコア51の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間に配設されている。
カーカス6は、ゴム材で被覆された有機繊維やスチールで形成されており、コードを空気入りラジアルタイヤ1のタイヤ赤道線に直交する態様で、空気入りラジアルタイヤ1のタイヤ周方向に沿って配設されている。カーカス6は、タイヤ幅方向において、トレッド部2から、その両側のショルダー部3及びサイドウォール部4を介してビード部5のビードコア51に対してトロイド状に架け渡されている。ビード保護層7は、ゴム材で被覆された有機繊維やスチールで形成されており、コードを空気入りラジアルタイヤ1のタイヤ赤道線に直交する態様で、ビード部5においてカーカス6を包み込むように配設されている。ビード保護層7のタイヤ幅方向外側の終端部は、カーカス6のタイヤ幅方向外側の終端部よりも、タイヤ径方向内側に位置している。
ベルト層8は、トレッド部2においてカーカス6よりもタイヤ径方向外側に設けられている。ベルト層8は、ゴム材で被覆された有機繊維やスチールで形成された複数のベルトが積層されたものであり、カーカス6をタイヤ周方向に沿って覆うものである。本実施形態におけるベルト層8は、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側に向かって第1ベルト81、第2ベルト82、第3ベルト83、第4ベルト84、及び第5ベルト85の順で積層された5層構造を有している。
有機繊維補強層群9は、第1有機繊維補強層91及び第1有機繊維補強層91のタイヤ幅方向外側に位置する第2有機繊維補強層92からなる。有機繊維補強層91、92は、カーカス6の折り返し部のタイヤ幅方向外側に設けられており、有機繊維補強層91、92のタイヤ径方向外側の終端部は、カーカス6のタイヤ径方向終端部よりも、タイヤ径方向外側に位置している。第1有機繊維補強層91及び第2有機繊維補強層92は、有機繊維コードをゴム材で被覆したコード層である。第2有機繊維補強層92のタイヤ径方向外側の終端部は、第1有機繊維補強層91のタイヤ径方向外側の終端部よりも、タイヤ径方向外側に位置している。第2有機繊維補強層92のタイヤ径方向内側の終端部は、第1有機繊維補強層91のタイヤ径方向内側の終端部よりも、タイヤ径方向外側に位置している。
第1有機繊維補強層91及び第2有機繊維補強層92の有機繊維コードは、ビード部剛性を高めるために、互いに交差させることが好ましい。しかしながら、本実施形態における第1有機繊維補強層91及び第2有機繊維補強層92は、このような態様に限られず、有機繊維コードが互いに交差していない態様も含む。
以上のように構成される空気入りラジアルタイヤ1は、そのビード部5が次のように構成されている。図2−1は、図1に示す領域Aを拡大して示す子午断面図である。図2−1に示すように、カーカスの折り返し端部のタイヤ幅方向外側周辺領域では、第1有機繊維補強層91及び第2有機繊維補強層92が、それらの間にゴム材10を配設するように形成されている。ここで、カーカスの折り返し端部とは、単数又は複数のカーカスのうち、タイヤ径方向の最も外側まで延在するカーカスを意味し、図2−1に示す例においては、カーカス6の折り返し端部を意味する。
即ち、図2−1に示す例では、カーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向内側の位置であって、有機繊維補強層同士の有機繊維コード間距離が0.5mmから1.5mmである第1の位置から、カーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向外側の位置であって、有機繊維補強層同士の有機繊維コード間距離が0.5mmから1.5mmである第2の位置までの間であり、かつ、有機繊維補強層91、92同士の間に、ゴム材10が配設されている。
ここで、第1の位置及び第2の位置を決定するにあたり、有機繊維コード間距離は、子午断面視で、第1有機繊維補強層91中の全てコードのタイヤ幅方向最外点を結んだ曲線(曲線1)と、第2有機繊維補強層92中の全てのコードのタイヤ幅方向最内点を結んだ曲線(曲線2)との間の距離であって、第1有機繊維補強層91中の特定のコード上における曲線1の法線に沿った、曲線1から曲線2までの距離、として定義するものとする。
図2−1に示す空気入りラジアルタイヤにおいては、カーカス6の折り返し端部のタイヤ幅方向外側であって、第1の位置から第2の位置まであり、かつ、有機繊維補強層91、92同士の間に、ゴム材10が配設されている。このため、この所定領域に配設されたゴム材10により、有機繊維補強層91、92間で生じるせん断歪みに起因してカーカス6の折り返し端部で助長されるせん断歪みを緩和することができる。その結果、カーカス6の折り返し端部近傍における故障を抑制することができる。
また、図2−1に示すビード部を備える空気入りラジアルタイヤによれば、第1の位置のタイヤ径方向内側、及び第2の位置からタイヤ径方向外側においては、有機繊維補強層91、92間の距離をほぼ一定としている。このため、図2−1に示す例によれば、ビード部剛性を大きく損なうことを抑制することが可能となる。
また、図2−1に示す例では、第1有機繊維補強層91及び第2有機繊維補強層92は、上述のように定義される、有機繊維補強層91に含まれる有機繊維コード(図2−1中丸印)と有機繊維補強層92に含まれる有機繊維コード(図2−1中丸印)との間の距離が、カーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向内側の位置(第1の位置)からタイヤ径方向外側に向かうにつれて徐々に大きくなっている。また、当該距離は、カーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向外側の位置(第2の位置)からタイヤ径方向内側に向かうにつれて徐々に大きくなっている。さらに、当該距離は、カーカス6の折り返し端部のタイヤ径方向位置付近で最大となっている。
即ち、図2−1に示すビード部を備える空気入りラジアルタイヤでは、有機繊維補強層91、92同士の有機繊維コード間距離が、第1の位置からタイヤ径方向外側に向かうにつれて、また、第2の位置からタイヤ径方向内側に向かうにつれて、いずれも漸増しており、カーカス6の折り返し端部のタイヤ径方向位置付近で最大となっている。
このため、図2−1に示すビード部を備える空気入りラジアルタイヤによれば、応力が集中して歪みが助長されるカーカス6の折り返し端部付近で、ゴム材10のタイヤ幅方向厚みを効率的に大きくすることができる。その結果、カーカス折り返し端部付近における有機繊維補強層間の歪みを抑制することができる。
ゴム材10の配設形状は、図2−1に示すように、子午断面視で略三日月形状とすることができるが、本実施形態ではこのような形状に限られない。図2−2は、図1に示す領域Aの一例を拡大して示す子午断面図であり、図2−1とは、ゴム材10の形状を異ならせた例である。ゴム材10の形状は、図2−2に示すように、子午断面視で長方形とすることもできる。また、本実施形態では、ゴム材10の形状は、子午断面視で、図2−3に示す台形とすることもできる。これらの形状の中では、図2−3に示す台形とすることが製造時の部材段差を小さくし、製造故障を抑制できることから最適である。
図1に示す空気入りラジアルタイヤ1においては、カーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向内側の位置(第1の位置)と、カーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向外側の位置(第2の位置)との少なくとも一方における有機繊維補強層91、92同士の有機繊維コード間距離をD1とするとともに、有機繊維補強層91、92同士の有機繊維コード間最大距離をD2とした場合に、1.2×D1≦D2≦3.0×D1であることが好ましい。
図3−1は、図2−1に示す領域Bの一例を拡大して示す子午断面図である。図3−1に示す例では、カーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向外側の位置(第2の位置)における有機繊維補強層91、92同士の有機繊維コード91a、92a間距離をD1uとするとともに、有機繊維補強層91、92同士の有機繊維コード91b、92b間の距離である、有機繊維コード間最大距離をD2とした場合に、1.2×D1u≦D2≦3.0×D1uとなっている。
D1u及びD2の関係を1.2×D1u≦D2とすることで、ゴム材10の配設領域を十分に確保することができる。このため、有機繊維補強層91、92間で生じるせん断歪みに起因してカーカス6の折り返し端部で助長されるせん断歪みを十分に緩和することができる。その結果、カーカス6の折り返し端部近傍における故障の十分な抑制が可能となる。また、D1u及びD2の関係をD2≦3.0×D1uとすることで、有機繊維補強層91、92間に配設されたゴム材10を大きくし過ぎず、有機繊維補強層91、92間においても箍効果を十分に発揮してビード部5の剛性の低下を抑制することができる。その結果、カーカス6の折り返し端部でのせん断歪みの十分な緩和による、カーカス6の折り返し端部近傍での故障の十分な抑制が可能となる。
図3−1に示す例は、カーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向外側の位置(第2の位置)における上述の距離D1uと、カーカス6の折り返し端部近傍における有機繊維コード91b、92b間距離である、有機繊維コード間最大距離D2と、の関係を規定した態様であるが、本実施形態はこのような態様に限られない。
図3−2及び図3−3は、図2−1に示す領域Bの一例を拡大して示す子午断面図であり、図3−1に示す例とはそれぞれ異なる例を示す図である。本実施形態においては、ビード部5は、図3−2に示すように、カーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向内側の位置(第1の位置)における有機繊維補強層91、92同士の有機繊維コード91c、92c間距離をD1lとするとともに、有機繊維補強層91、92同士の有機繊維コード91b、92b間距離である、有機繊維コード間最大距離をD2とした場合に、1.2×D1l≦D2≦3.0×D1lとすることもできる。
図3−2に示す態様によれば、D1l及びD2の関係を1.2×D1l≦D2とすることで、ゴム材10の配設領域を十分に確保することができるため、有機繊維補強層91、92間で生じるせん断歪みに起因してカーカス6の折り返し端部で助長されるせん断歪みを十分に緩和することができる。その結果、カーカス6の折り返し端部近傍における故障の十分な抑制が可能となる。また、D1l及びD2の関係をD2≦3.0×D1lとすることで、有機繊維補強層91、92間に形成されたゴム材10を大きくし過ぎず、有機繊維補強層91、92間においても箍効果を十分に発揮してビード部5の剛性の低下を抑制することができる。その結果、カーカス6の折り返し端部でのせん断歪みの十分な緩和による、カーカス6の折り返し端部近傍での故障の十分な抑制が可能となる。
また、本実施形態においては、ビード部5は、図3−3に示すように、カーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向外側の位置(第2の位置)における有機繊維補強層91、92同士の有機繊維コード91a、92a間距離をD1uとするとともに、有機繊維補強層91、92同士の有機繊維コード91b、92b間の距離である、有機繊維コード間最大距離をD2とした場合に、1.2×D1u≦D2≦3.0×D1uとし、かつ、カーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向内側の位置(第1の位置)における有機繊維補強層91、92同士の有機繊維コード91c、92c間距離をD1lとするとともに、有機繊維補強層91、92同士の有機繊維コード91b、92b間の距離である、有機繊維コード間最大距離をD2とした場合に、1.2×D1l≦D2≦3.0×D1lとすることもできる。
図3−3に示す態様は、図3−1に示す態様と図3−2に示す態様との組み合わせであり、D1u、D1l及びD2の関係を1.2×D1u≦D2、かつ、1.2×D1l≦D2とすることで、ゴム材10の配設領域を十分に確保することができるため、有機繊維補強層91、92間で生じるせん断歪みに起因してカーカス6の折り返し端部で助長されるせん断歪みをさらに緩和することができる。その結果、カーカス6の折り返し端部近傍における故障の一層の抑制が可能となる。また、D1u、D1l及びD2の関係をD2≦3.0×D1u、かつ、D2≦3.0×D1lとすることで、有機繊維補強層91、92間に形成されたゴム材10を大きくすることなく、有機繊維補強層91、92間においても箍効果をさらに発揮してビード部5の剛性の低下をさらに抑制することができる。その結果、カーカス6の折り返し端部でのせん断歪みのさらなる緩和による、カーカス6の折り返し端部近傍での故障の一層の抑制が可能となる。
図1に示す空気入りラジアルタイヤ1においては、ビードコアの重心51aからカーカス6の折り返し端部までのタイヤ径方向距離をHcとし、ビードコアの重心51aからカーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向内側の位置(第1の位置)までのタイヤ径方向距離をHlとし、ビードコアの重心51aからカーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向外側の位置(第2の位置)までのタイヤ径方向距離をHuとし、ビードコアの重心51aから高さが最も低い有機繊維補強層91のタイヤ径方向上端部までのタイヤ径方向距離をHnとした場合に、0.5×Hc≦Hl≦0.9×Hc、かつ、1.1×Hc≦Hu<Hnであることが好ましい。
Hl及びHcの関係をHl≦0.9×Hcとすることで、有機繊維補強層91、92同士の有機繊維コード間距離が大きい部分を十分に確保することができる。即ち、図4に示す例では、カーカス6の折り返し端部のタイヤ幅方向外側周辺領域に位置する、有機繊維コード間距離が大きい部分を十分に確保することができる。その結果、有機繊維補強層91、92間で生じるせん断歪みに起因してカーカス6の折り返し端部で助長されるせん断歪みを十分に緩和することができ、これによりカーカス6の折り返し端部近傍における故障を十分に抑制することができる。
また、Hl及びHcの関係を0.5×Hc≦Hlとすることで、有機繊維補強層91、92同士の有機繊維コード間距離が大きい部分を過度に確保しないことが可能となる。即ち、図4に示す例では、カーカス6の折り返し端部のタイヤ幅方向外側周辺領域に位置する、有機繊維コード間距離が大きい部分を過度に確保しないことが可能となる。このため、有機繊維補強層91、92間においても箍効果を十分に発揮してビード部5の剛性の低下を抑制することができる。その結果、カーカス6の折り返し端部でのせん断歪みの十分な緩和による、カーカス6の折り返し端部近傍での故障を十分に抑制することができる。
同様に、Hu及びHcの関係を1.1×Hc≦Huとすることで、有機繊維補強層91、92同士の有機繊維コード間距離が大きい部分を十分に確保することができる。その結果、有機繊維補強層91、92間で生じるせん断歪みに起因してカーカス6の折り返し端部で助長されるせん断歪みを十分に緩和することができ、これによりカーカス6の折り返し端部近傍における故障を十分に抑制することができる。また、Hu及びHnの関係をHu<Hnとすることで、有機繊維補強層91、92の上端部であって、かつ、有機繊維補強層91、92間において、箍効果を発揮することができ、ビード部5のタイヤ径方向外側領域での剛性を大きく損うことを抑制することができる。
図1に示す空気入りラジアルタイヤ1においては、カーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向内側の位置(第1の位置)からカーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向外側の位置(第2の位置)までの間であって、有機繊維補強層91、92同士の間に配設されたゴム材10の300%モジュラスが、有機繊維補強層91、92に用いられるゴム材10の300%モジュラス以下であることが好ましい。
このような配設位置に依存したゴム材10の物性選択により、有機繊維補強層91、92間で生じるせん断歪みに起因してカーカス6の折り返し端部で助長されるせん断歪みを十分に緩和することができる。その結果、カーカス6の折り返し端部近傍における故障を十分に抑制することができる。
ゴム材10の300%モジュラスは、10.0MPaから12.0MPaであることがさらに好ましい。ゴム材10の300%モジュラスを10.0MPa以上とすることで、ゴム材10と有機繊維補強層91、92に用いられるゴム材との間において材質を大きく変えることなく、これにより、これらゴム材間の歪みを低減することができる。また、ゴム材10の300%モジュラスを12.0MPa以下とすることで、有機繊維補強層91、92の層間の歪み抑制効果を増大することができる。ちなみに、有機繊維補強層91、92に用いられるゴム材の300%モジュラスは、12.0MPaから14.0MPaである。
以上に示す例は、有機繊維補強層が2層である例であるが、本実施形態はこのような態様に限られない。即ち、有機繊維補強層がn層(nは3以上の自然数)の場合は、有機繊維補強層間にn−1個のゴム材充填領域を設けることができる。
本実施形態、及び従来例に係る空気入りラジアルタイヤを作製し、評価した。なお、本実施形態によるものが実施例である。
タイヤサイズを11R22.5で共通にし、図1に示す構成の空気入りラジアルタイヤにおいて、図5に示す諸事項(図3−1に示す有機繊維コード91b、92b間の距離である、有機繊維コード間最大距離D2、図4に示すビードコアの重心51aからカーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向内側の位置(第1の位置)までのタイヤ径方向距離Hl、ビードコアの重心51aからカーカス6の折り返し端部よりもタイヤ径方向外側の位置(第2の位置)までのタイヤ径方向距離Hu、及び第1の位置から第2の位置までのタイヤ径方向領域であって、有機繊維補強層91、92同士の間に挟まれた領域に配設されたゴム材10のモジュラスM)を満たす、従来例、及び実施例1〜7の空気入りラジアルタイヤをそれぞれ製造した。なお、従来例の標記D1uは、図3−1中D1uを示すものであり、第1の位置から第2の位置まで、有機繊維コード91a、92a間距離がD1uで一定であることを意味する。
これら各試験タイヤをリムサイズ8.25×22.5のリムに装着し、規定空気圧の80%の低空気圧条件下で、かつ、荷重を29.42kNとした条件下にて、ドラム試験を実施し、タイヤが故障するまでの走行距離を指数化した。その結果を図5に併記する。当該指数は、その値が大きいほど優れた結果を示すものである。
また、ドラム試験においてタイヤが故障した際に、タイヤのいずれの箇所が故障したかを調査した。特に、図3−1に示すカーカス6の折り返し端部での故障、及び有機繊維補強層91、92間での故障についての有無を図5に併記する。
図5から明らかなように、実施例1〜7の空気入りラジアルタイヤはいずれも、従来例の空気入りラジアルタイヤに比べて、タイヤが故障するまでの走行距離が伸びている。これは、実施例1〜7の空気入りラジアルタイヤはいずれも、カーカス折り返し端部よりもタイヤ径方向内側の第1の位置から、カーカス折り返し端部よりもタイヤ径方向外側の第2の位置までの間であり、かつ、有機繊維補強層同士の間に、ゴム材10が配設されているからであると考えられる。
実施例1〜7の空気入りラジアルタイヤを個別にみると、実施例5〜7の空気入りラジアルタイヤはいずれも、1.2×D1u≦D2≦3.0×D1uを満たすとともに、0.5×Hc≦Hl≦0.9×Hc、かつ、1.1×Hc≦Hu<Hnを満たす。このため、タイヤが故障するまでの走行距離が著しく長く、しかも、カーカス6の折り返し端部での故障、及び有機繊維補強層91、92間での故障のいずれも観察されなかった。なお、実施例5〜7の空気入りラジアルタイヤについては、タイヤが故障した際の故障箇所は、主にベルトエッジであった。
実施例1、2の空気入りラジアルタイヤは、1.2×D1u≦D2≦3.0×D1uを満たさないため、実施例5〜7の空気入りラジアルタイヤに比べてタイヤが故障するまでの走行距離が短く、しかも、カーカス6の折り返し端部での故障、及び有機繊維補強層91、92間での故障のいずれかが観察された。
実施例3の空気入りラジアルタイヤは、0.5×Hc≦Hl≦0.9×Hcを満たさないため、実施例5〜7の空気入りラジアルタイヤに比べてタイヤが故障するまでの走行距離が短く、しかも、カーカス6の折り返し端部での故障が観察された。実施例4の空気入りラジアルタイヤは、1.1×Hc≦Hu<Hnを満たさないため、実施例5〜7の空気入りラジアルタイヤに比べてタイヤが故障するまでの走行距離が短く、しかも、カーカス6の折り返し端部での故障が観察された。
なお、図5に示すように、実施例1〜7において、ゴム材10のモジュラスMについては、10.0MPaから12.0MPaの範囲であれば、いずれも問題のない結果が得られることが確認された。
以上のように、本発明の空気入りラジアルタイヤは、カーカス折り返し端部近傍における故障を抑制することに有用である。
1 空気入りラジアルタイヤ
2 トレッド部
21 トレッド面
22 周方向溝
23 リブ
3 ショルダー部
4 サイドウォール部
5 ビード部
51 ビードコア
51a ビードコアの重心
52 硬質ビードフィラ
53 軟質ビードフィラ
6 カーカス
7 ビード保護層
8 ベルト層
81、82、83、84、85 ベルト
9 有機繊維補強層群
91 第1有機繊維補強層
91a、91b、91c 第1有機繊維補強層に含まれる有機繊維コード
92 第2有機繊維補強層
92a、92b、92c 第2有機繊維補強層に含まれる有機繊維コード
10 ゴム材
A、B 領域
D1u、D1l、D2 有機繊維補強層同士の有機繊維コード間距離
C タイヤ赤道面
CL クラウンセンター
Hc ビードコアの重心からカーカス折り返し端部までのタイヤ径方向距離
Hl ビードコアの重心からカーカス折り返し端部よりもタイヤ径方向内側の位置(第1の位置)までのタイヤ径方向距離
Hn ビードコアの重心から高さが最も低い有機繊維補強層のタイヤ径方向上端部までのタイヤ径方向距離
Hu ビードコアの重心からカーカス折り返し端部よりもタイヤ径方向外側の位置(第2の位置)までのタイヤ径方向距離

Claims (4)

  1. カーカス折り返し端部のタイヤ幅方向外側に、有機繊維コードをゴム材で被覆した有機繊維補強層を少なくとも2層備え、
    正規リムに装着し、正規内圧を充填した無負荷状態で、カーカス折り返し端部よりもタイヤ径方向内側の第1の位置から、カーカス折り返し端部よりもタイヤ径方向外側の第2の位置までの間であり、かつ、前記有機繊維補強層同士の間に、ゴム材が配設され
    前記有機繊維補強層同士の有機繊維コード間距離が、前記第1の位置からタイヤ径方向外側に向かうにつれて徐々に大きくなっているとともに、前記第2の位置からタイヤ径方向内側に向かうにつれて徐々に大きくなっており、カーカス折り返し端部のタイヤ径方向位置付近で最大となっていることを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
  2. 前記第1の位置と前記第2の位置との少なくとも一方における前記有機繊維補強層同士の有機繊維コード間距離をD1とするとともに、前記有機繊維補強層同士の有機繊維コード間最大距離をD2とした場合に、1.2×D1≦D2≦3.0×D1である請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
  3. ビードコアの重心からカーカス折り返し端部までのタイヤ径方向距離をHcとし、ビードコアの重心から前記第1の位置までのタイヤ径方向距離をHlとし、ビードコアの重心から前記第2の位置までのタイヤ径方向距離をHuとし、ビードコアの重心から高さが最も低い有機繊維補強層のタイヤ径方向上端部までのタイヤ径方向距離をHnとした場合に、0.5×Hc≦Hl≦0.9×Hc、かつ、1.1×Hc≦Hu<Hnである請求項1または2に記載の空気入りラジアルタイヤ。
  4. 前記第1の位置から前記第2の位置までの間であって、かつ、前記有機繊維補強層同士の間に配設されたゴム材の300%モジュラスが、前記有機繊維補強層に用いられたゴム材の300%モジュラス以下である請求項1からのいずれか1項に記載の空気入りラジアルタイヤ。
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