以下本発明の詳細を説明する。
<ナノ炭素含有組成物>
[導電性ポリマー(A)]
導電性ポリマー(A)は、スルホン酸基及び/又はカルボキシ基等の酸性基を有する導電性ポリマーである。上記導電性ポリマー(A)は、ナノ炭素材料(B)の溶解性・分散性を向上させ、安定なナノ物質含有組成物とすることで、結果として得られる繊維や不織布の透明性や導電性等を更に向上させる役割を果たす。
上記導電性ポリマー(A)としては、フェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、カルバゾリレン等を繰り返し単位として含むπ共役系高分子を用いることができる。この中でも、特にチエニレン、ピロリレン、イミノフェニレン、フェニレンビニレン、カルバゾリレン、イソチアナフテンを含む骨格を有する導電性ポリマーであることが好ましい。
上記導電性ポリマー(A)は、溶解性、導電性、成膜性等の観点から、酸性基を有するπ共役系の導電性ポリマーあるいはその塩として用いることができ、前者として用いることが好ましい。ここで、酸性基を有する導電性ポリマー(A)としては、π共役系高分子の骨格又は該高分子中の窒素原子上に、酸性基、酸性基で置換されたアルキル基、又は酸性基で置換された、エーテル結合を含むアルキル基を有している導電性ポリマーが挙げられる。
また、導電性ポリマー(A)の塩としては、導電性ポリマー(A)とアンモニウム塩類及び/又はアミン類と反応させることにより、酸性基をスルホン酸基のアンモニウム塩(−SO3 −M+)及び/又はカルボキシ基のアンモニウム塩(−COO−M+)としたものを用いることができる。ここで、前記アンモニウム塩のアンモニウムイオン(M+)は、下記一般式(1)で示されるものである。
(式(1)中、R1〜R4は各々独立に水素、炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基、フェニル基、ベンジル基、R5OH、CONH2又はNH2であり、R1〜R4のうち少なくとも一つが炭素数5以上の基である。なお、R5は炭素数1〜24のアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基である。)
上記導電性ポリマー(A)としては、特開昭61−197633号公報、特開昭63−39916号公報、特開平01−301714号公報、特開平05−504153号公報、特開平05−503953号公報、特開平04−32848号公報、特開平04−328181号公報、特開平06−145386号公報、特開平06−56987号公報、特開平05−226238号公報、特開平05−178989号公報、特開平06−293828号公報、特開平07−118524号公報、特開平06−32845号公報、特開平06−87949号公報、特開平06−256516号公報、特開平07−41756号公報、特開平07−48436号公報、特開平04−268331号公報、特開平09−59376号公報、特開2000−172384号公報、特開平06−49183号公報、特開平10−60108号公報に示された水溶性導電性ポリマーが好ましく用いられる。
また、好ましい導電性ポリマー(A)としては、下記一般式(2)〜(10)から選ばれた少なくとも一種以上の繰り返し単位を、ポリマー全体の繰り返し単位の総数中に20〜100%含有する導電性ポリマーが挙げられる。
(式(2)中、R6、R7は各々独立に、H、−SO3 −、−SO3 −M+、−SO3H、−R8SO3 −、−R8SO3 −M+、−R8SO3H、−OCH3、−CH3、−C2H5、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R8)2、−NHCOR8、−OH、−O−、−SR8、−OR8、−OCOR8、−NO2、−COO−M+、−COOH、−R8COOH、−R8COO−M+、−COOR8、−COR8、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、M+は前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R8は炭素数1〜24のアルキル、アリールもしくはアラルキル基又はアルキレン、アリーレンもしくはアラルキレン基であり、かつR6、R7のうち少なくとも一つが−SO3 −、−SO3H、−R8SO3 −、−R8SO3H、−COOH、−R8COOH、及び−SO3M+、−R8SO3 −M+、−COO−M+、−R8COO−M+からなる群より選ばれた基である。)
(式(3)中、R9、R10は各々独立に、H、−SO3 −、−SO3 −M+、−SO3H、−R11SO3 −、−R11SO3 −M+、−R11SO3H、−OCH3、−CH3、−C2H5、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R11)2、−NHCOR11、−OH、−O−、−SR11、−OR11、−OCOR11、−NO2、−COO−M+、−COOH、−R11COOH、−R11COO−M+、−COOR11、−COR11、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、M+は前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R11は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、かつR9、R10のうち少なくとも一つが−SO3 −、−SO3H、−R11SO3 −、−R11SO3H、−COOH、−R11COOH、及び−SO3 −M+、−R11SO3 −M+、−COO−M+、−R11COO−M+からなる群より選ばれた基である。)
(式(4)中、R12〜R15は各々独立にH、−SO3 −、−SO3 −M+、−SO3H、−R16SO3 −、−R16SO3 −M+、−R16SO3H、−OCH3、−CH3、−C2H5、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R16)2、−NHCOR16、−OH、−O−、−SR16、−OR16、−OCOR16、−NO2、−COO−M+、−COOH、−R16COOH、−R16COO−M+ 、−COOR16、−COR16、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、M+は前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R16は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、かつR12〜R15のうち少なくとも一つが−SO3 −、−SO3H、−R16SO3 −、−R16SO3H、−COOH、−R16COOH、及び−SO3 −M+、−R16SO3 −M+、−COO−M+、−R16COO−M+からなる群より選ばれた基である。)
(式(5)中、R17〜R21は各々独立に、H、−SO3 −、−SO3 −M+、−SO3H、−R22SO3 −、−R22SO3 −M+、−R22SO3H、−OCH3、−CH3、−C2H5、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R22)2、−NHCOR22、−OH、−O−、−SR22、−OR22、−OCOR22、−NO2、−COO−M+、−COOH、−R22COOH、−R22COO−M+、−COOR22、−COR22、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、M+は前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R22は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、かつR17〜R21のうち少なくとも一つが−SO3 −、−SO3H、−R22SO3 −、−R22SO3H、−COOH、−R22COOH、及び−SO3 −M+、−R22SO3 −M+、−COO−M+、−R22COO−M+からなる群より選ばれた基である。)
(式(6)中、R23は、−SO3 −、−SO3H、−R24SO3 −、−R24SO3H、−COOH、−R24COOH、及び−SO3 −M+、−R25SO3 −M+、−COO−M+及び−R25COO−M+からなる群より選ばれ、ここで、M+は前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R24は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、R25は炭素数1〜24のアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基である。)
(式(7)中、R26〜R31は各々独立に、H、−SO3 −、−SO3 −M+、−SO3H、−R32SO3 −、−R32SO3 −M+、−R32SO3H、−OCH3、−CH3、−C2H5、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R32)2、−NHCOR32、−OH、−O−、−SR32、−OR32、−OCOR32、−NO2、−COO−M+、−COOH、−R32COOH、−R32COO−M+、−COOR32、−COR32、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、M+は前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R32は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、かつR26〜R31のうち少なくとも一つが−SO3 −、−SO3H、−R5SO3 −、−R32SO3H、−COOH、−R32COOH、及び−SO3 −M+、−R32SO3 −M+、−COO−M+、−R32COO−M+からなる群より選ばれた基であり、Htは、NR33、S、O、Se及びTeよりなる群から選ばれたヘテロ原子基であり、R33は水素及び炭素数1〜24の直鎖又は分岐のアルキル基、もしくは置換、非置換のアリール基を表し、R26〜R31の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、かかる基により置換を受けている炭素原子と共に少なくとも1つ以上の3〜7員環の飽和又は不飽和炭化水素の環状構造を形成する二価鎖を形成してもよく、このように形成される環状結合鎖にはカルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノの結合を任意の位置に含んでもよく、naはヘテロ環と置換基R27〜R30を有するベンゼン環に挟まれた縮合環の数を表し、0又は1〜3の整数である。)
(式(8)中、R34〜R42は各々独立に、H、−SO3 −、−SO3 −M+、−SO3H、−R43SO3 −、−R43SO3 −M+、−R43SO3H、−OCH3、−CH3、−C2H5、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R43)2、−NHCOR43、−OH、−O−、−SR43、−OR43、−OCOR43、−NO2、−COO−M+、−COOH、−R43COOH、−R43COO−M+、−COOR43、−COR43、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、M+は前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R43は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、かつR34〜R42のうち少なくとも一つが−SO3 −、−SO3H、−R43SO3 −、−R43SO3H、−COOH、−R43COOH、及び−SO3 −M+、−R43SO3 −M+、−COO−M+、−R43COO−M+からなる群より選ばれた基であり、nbは置換基R34及びR35を有するベンゼン環と置換基R37〜R40を有するベンゼン環に挟まれた縮合環の数を表し、0又は1〜3の整数である。)
(式(9)中、R44〜R53は各々独立に、H、−SO3 −、−SO3 −M+、−SO3H、−R54SO3 −、−R54SO3 −M+、−R54SO3H、−OCH3、−CH3、−C2H5、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R54)2、−NHCOR54、−OH、−O−、−SR54、−OR54、−OCOR54、−NO2、−COO−M+、−COOH、−R54COOH、−R54COO−M+、−COOR54、−COR54、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、M+は前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R54は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、かつR44〜R53のうち少なくとも一つが−SO3 −、−SO3H、−R54SO3 −、−R54SO3H、−COOH、−R54COOH、及び−SO3 −M+、−R54SO3 −M+、−COO−M+、−R54COO−M+からなる群より選ばれた基であり、ncは置換基R44〜R46を有するベンゼン環とベンゾキノン環に挟まれた縮合環の数を表し、0又は1〜3の整数である。)
(式(10)中、R55〜R59は各々独立に、H、−SO3 −、−SO3 −M+、−SO3H、−R60SO3 −、−R60SO3 −M+、−R60SO3H、−OCH3、−CH3、−C2H5、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R60)2、−NHCOR60、−OH、−O−、−SR60、−OR60、−OCOR60、−NO2、−COO−M+、−COOH、−R60COOH、−R60COO−M+、−COOR60、−COR60、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、M+は前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R60は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、かつR55〜R59のうち少なくとも一つが−SO3 −、−SO3H、−R60SO3 −、−R60SO3H、−COOH、−R60COOH、及び−SO3 −M+、−R60SO3 −M+、−COO−M+、−R60COO−M+からなる群より選ばれた基であり、Xa−は、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、リン酸イオン、ほうフッ化イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンよりなる1〜3価の陰イオン群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンであり、aはXのイオン価数を表し、1〜3の整数であり、pはドープ率であり、その値は0.001〜1である。)
また、その他の好ましい導電性ポリマー(A)として、ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルフェートが挙げられる。この導電性ポリマーは、導電性ポリマーの骨格にはスルホン酸基は導入されていないが、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸が付加されている構造を有している。また、酸性基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマー(A)としては、ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルホン酸アンモニウム又は置換アンモニウム塩を用いることもできる。この導電性ポリマーは、導電性ポリマーの骨格にはスルホン酸アンモニウム塩基は導入されていないが、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩が付加されている構造を有している。
これらの導電性ポリマー(A)の具体例としては、3,4−エチレンジオキシチオフェン(バイエル社製 Baytron M)をトルエンスルホン酸鉄(バイエル社製 Baytron C)等の酸化剤で重合することにより製造されるポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の付加体、あるいはこの付加体にアミン類又はアンモニアと反応させたものが挙げられる。また、Baytron P(バイエル社製)、又はBaytron Pとアミン類及び/又はアンモニウム類とを反応させて得られたものが挙げられる。
また、これらの他の好ましい導電性ポリマー(A)のなかでも、下記一般式(11)で表される繰り返し単位を、ポリマー全体の繰り返し単位の総数中に20〜100%含むものがより好ましい。
(式(11)中、yは0<y<1の任意の数を示し、R61〜R78は各々独立に、H、−SO3 −、−SO3 −M+、−SO3H、−R79SO3 −、−R79SO3 −M+、−R79SO3H、−OCH3、−CH3、−C2H5、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R79)2、−NHCOR79、−OH、−O−、−SR79、−OR79、−OCOR79、−NO2、−COO−M+、−COOH、−R79COOH、−R79COO−M+、−COOR79、−COR79、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、M+は前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R79は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、R61〜R78のうち少なくとも一つが−SO3 −、−SO3H、−R79SO3 −、−R79SO3H、−COOH、−R79COOH、及び−SO3 −M+、−R79SO3 −M+、−COO−M+、−R79COO−M+からなる群より選ばれた基である。)
上記導電性ポリマー(A)のなかでも、有機溶媒、含水有機溶媒等の溶媒への溶解性が非常に良好である点から、ポリマーの繰り返し単位の総数に対する酸性基を有する繰り返し単位の含有量が50%以上のものが好ましい。酸性基を有する繰り返し単位の含有量は、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、100%であることが特に好ましい。
また、芳香環に付加している置換基は、導電性及び溶解性の点から、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基が好ましく、特に、電子供与性を有するアルコキシ基が好ましい。これらの組み合わせの中で最も好ましい導電性ポリマー(A)を下記一般式(12)に示す。
(式(12)中、R80〜R83は、スルホン酸基、カルボキシ基、及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩からなる群より選ばれた1つの基であり、R80〜R83のうち少なくとも一つがスルホン酸基、カルボキシ基、及びこれらのアンモニウム塩からなる群より選ばれた基であり、R84は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ドデシル基、テトラコシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘプトキシ基、ヘクソオキシ基、オクトキシ基、ドデコキシ基、テトラコソキシ基、フルオロ基、クロロ基及びブロモ基からなる群より選ばれた1つの基を示し、xは0<x<1の任意の数を示し、mは重合度を示し3以上である。)
R80〜R83としては、中でも、導電性が高い点で、スルホン酸基並びにスルホン酸基のアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩が好ましい。
本発明における導電性ポリマー(A)は、化学重合又は電解重合等の各種合成法により得ることができる。例えば、本発明者らが提案した特開平7−196791号公報、特開平7−324132号公報に記載の合成方法が適用できる。すなわち、下記一般式(13)で表される酸性基置換アニリン、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩からなる群から選ばれる1つの化合物を、塩基性化合物を含む溶液中で酸化剤により重合させることにより導電性ポリマー(A)を得ることができる。
(式(13)中、R85〜R90は各々独立に、H、−SO3 −、−SO3 −M+、−SO3H、−R91SO3 −、−R91SO3 −M+、−R91SO3H、−OCH3、−CH3、−C2H5、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R91)2、−NHCOR91、−OH、−O−、−SR91、−OR91、−OCOR91、−COO−M+、−COOH、−R91COOH、−R91COO−M+、−COOR91、−COR91、−CHO及び−CNからなる群より選ばれ、ここで、M+は前記式(1)で表されるアンモニウムイオンであり、R91は炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、R85〜R90のうち少なくとも一つが−SO3 −、−SO3H、−R91SO3 −、−R91SO3H、−COOH、−R91COOH、及び−SO3 −M+、−R91SO3 −M+、−COO−M+、−R91COO−M+からなる群より選ばれた基である。)
特に好ましい導電性ポリマー(A)は、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩を、塩基性化合物を含む溶液中で酸化剤により重合させることにより得られる導電性ポリマーである。
また、導電性ポリマー(A)から、スルホン酸基のアンモニウム塩及び/又はカルボキシ基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーを合成する簡便な方法としては、下記一般式(14)で示されるアンモニウム塩類及び/又は下記一般式(15)で示されるアミン類と導電性ポリマー(A)とを、溶液中で反応させる方法が挙げられる。
(式(14)中、R101〜R104は各々独立に水素、R105OH、炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいはフェニル基、ベンジル基、CONH2又はNH2であり、かつR101〜R104のうち少なくとも一つが炭素数5以上の基であり、R105は炭素数1〜24のアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基であり、Yb−は水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、アミド硫酸イオン、亜硫酸イオン、ホスフィン酸イオン、リン酸イオン、ピロリン酸イオン、トリポリリン酸イオン、ほうフッ化イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、吉草酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、カンファースルホン酸イオン、酪酸イオン、蟻酸イオン、トリメチル酢酸イオン、ブロモ酢酸イオン、乳酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、シュウ酸イオン、酒石酸イオン、フマル酸イオン、マレイン酸イオン、マロン酸イオン、アスコルビン酸イオン、アニス酸イオン、アントラニル酸イオン、安息香酸イオン、ケイ皮酸イオン、フェニル酢酸イオン、フタル酸イオン、アニリンスルホン酸イオン、チオカルボン酸イオン、メチルスルフィン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンよりなる1〜3価の陰イオン群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンを示す。また、bはYのイオン価数であり、1〜3の整数を示し、jは1〜3の整数を示す。)
(式(15)中、R106〜R108は各々独立に水素、炭素数1〜24のアルキル、アリール又はアラルキル基あるいは、フェニル基、ベンジル基、R109OH、CONH2又はNH2であり、かつR106〜R108のうち少なくとも一つが炭素数5以上の基である。なお、R109は炭素数1〜24のアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基である。)
アンモニウム塩類としては、塩化ベンザルコニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム等のハロゲン化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルジエチルベンジルアンモニウム、臭化トリエチルベンジルアンモニウム等のハロゲン化アルキルジエチルベンジルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム等のハロゲン化テトラアルキルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムが好ましい。
また、アミン類としては、ベンジルアミン、トリ−n−オクチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、アニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジ−n−プロピルアニリン、ジ−iso−プロピルアニリン等のアニリン類が好ましい。
導電性ポリマー(A)の質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のポリエチレングリコール換算で、2,000〜3,000,000であることが好ましく、3,000〜1,000,000であることがより好ましく、5,000〜500,000であることが特に好ましい。導電性ポリマー(A)の質量平均分子量が2,000以上であれば、十分な膜強度、成膜性、導電性が得られやすい。また、導電性ポリマー(A)の質量平均分子量が3,000,000以下であれば、優れた溶解性が得られやすい。
導電性ポリマー(A)は、そのままでも使用できるが、公知の方法の酸によるドーピング処理方法を実施して、外部ドーパントを付与したものを用いてもよい。例えば、酸性溶液中に、導電性ポリマー(A)を含む導電体を浸漬させる等の処理によりドーピング処理を行うことができる。
ドーピング処理に用いる酸性溶液は、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸;p−トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸、安息香酸及びこれらの骨格を有する誘導体等の有機酸;ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパン)スルホン酸、ポリビニル硫酸及びこれらの骨格を有する誘導体等の高分子酸を含む水溶液、あるいは、水−有機溶媒の混合溶液が挙げられる。これらの無機酸、有機酸、高分子酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
[ナノ炭素材料(B)]
本発明のナノ炭素材料(B)は、ナノサイズの大きさを有する炭素材料であれば特に限定されない。ナノ炭素材料(B)としては、例えば、フラーレン、金属内包フラーレン、玉葱状フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、ピーポッド、気相成長カーボン(VGCF)、グラファイト、グラフェン、カーボンナノ粒子、ケッチェンブラック等が挙げられる。これらの中でも実用上は、導電性、透明性、繊維中での配向性の点から、カーボンナノチューブが好ましい。
カーボンナノチューブは、特に限定されず、通常のカーボンナノチューブを用いることができ、例えば、単層カーボンナノチューブ、何層かが同心円状に重なった多層カーボンナノチューブ、これらがコイル状になったもの等を用いることができる。
また、カーボンナノチューブとしては、厚さ数原子の層のグラファイト状炭素原子面を丸めた円筒が、単層あるいは複数個入れ子構造になったもので、nmオーダーの外径の極めて微小な物質が挙げられる。その他、カーボンナノチューブの片側が閉じた形をしたカーボンナノホーンやその頭部に穴があいたコップ型のナノカーボン物質等も用いることができる。
本発明におけるカーボンナノチューブの製造方法は、特に限定されるものではない。具体的には、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法、気相成長法、気相流動法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法等が挙げられる。
カーボンナノチューブとしては、これらの製造方法によって得られる単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブであることが好ましく、各種機能をより発現しやすい点から、更に洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の精製法によって、より高純度化されたカーボンナノチューブであることがより好ましい。
また、ナノ炭素材料(B)としては、前述の材料を、ボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等のボール型混練装置等を用いて粉砕しているものや、化学的、物理的処理によって短く切断されているものを用いることもできる。
ナノ炭素材料(B)は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
[溶媒(C)]
本発明における溶媒(C)は、導電性ポリマー(A)及びナノ炭素材料(B)の溶解性及び分散性をより向上させ、紡糸性、操作性等を向上させる役割を果たす。溶媒(C)は、ナノ炭素材料(B)を溶解又は分散するものであれば特に限定されないが、導電性ポリマー(A)を溶解又は分散するものが好ましい。
溶媒(C)としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;ジメチルスルオキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類等;アニリン、N−メチルアニリン等のアニリン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、m−クレゾール、アセトニトリル、テトラハイドロフラン、1,4−ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノールが好ましい。
なかでも、導電性ポリマー(A)の溶解性、ナノ炭素材料(B)の分散性の点から、水、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類やN−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類等の有機溶剤又は含水有機溶剤がより好ましく、含水有機溶剤中の有機溶剤としてはアルコール類、ケトン類が好ましく用いられる。
[高分子化合物(D)]
また、本発明におけるナノ炭素含有組成物は、導電性ポリマー(A)とは異なる高分子化合物(D)を含有させることにより、紡糸性が向上すると共に、加熱処理によって焼成して得られるナノ炭素構造体繊維を形成する前のナノ炭素含有繊維の強度を向上させることができる。
高分子化合物(D)としては、本発明におけるナノ炭素含有組成物に溶解又は分散できるものであれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール類;ポリアクリルアマイド、ポリ(N−t−ブチルアクリルアマイド)、ポリアクリルアマイドメチルプロパンスルホン酸等のポリアクリルアマイド類;ポリビニルピロリドン類、ポリスチレンスルホン酸及びそのソーダ塩類、ポリオキシエチレン樹脂、セルロース、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、マレイン酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、スチレン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合樹脂、フッ素樹脂及びこれらの共重合体等が用いられる。
これらの高分子化合物(D)は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これら高分子化合物(D)の中でも、導電性ポリマー(A)としてスルホン酸基のアンモニウム塩及び/又はカルボキシ基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーを用いる場合は、溶媒への溶解性、組成物の安定性、導電性の点から、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、マレイン酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合樹脂が好ましく、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂のうちの1種又は2種以上を混合して使用することが好ましい。
その中でも特にアクリロニトリル樹脂が好ましく用いることができる。アクリロニトリル樹脂としては、アクリロニトリルのホモポリマー、またはアクリロニトリルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。アクリロニトリル樹脂中のアクリロニトリル単位は、50質量%以上であることが好ましい。
上記他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等の不飽和モノマー類;p−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。
他のモノマーとしては、カルボン酸基を有するモノマーまたはアクリルアミド系モノマーが好ましい。カルボン酸基を有するモノマーとしては、メタクリル酸またはイタコン酸が好ましい。アクリロニトリル樹脂中のカルボン酸基の量は、1.0×10−5 当量以上3.0×10−4 当量以下が好ましい。本発明におけるカルボン酸基の量(当量)は、アクリロニトリル系重合体1g当たりのカルボン酸基の数である。
アクリルアミド系モノマーとしては、アクリルアミドが好ましい。また、溶剤に対するアクリロニトリル樹脂の溶解性の向上、凝固糸の緻密性の向上の観点から、アクリルアミド単位は、アクリロニトリル系重合体中に1質量%以上含まれることが好ましい。アクリルアミド単位の含有量は、好ましくは4質量%未満である。
アクリロニトリル樹脂の重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法等の公知の重合法を採用することができる。得られたアクリロニトリル樹脂から、未反応モノマー、重合触媒残渣、その他の不純物等を極力除く処理を施すことが好ましい。
アクリロニトリル樹脂の重合度は、紡糸する際の延伸性の点から、極限粘度〔η〕で1.0以上が好ましく、特に1.6以上が好ましい。アクリロニトリル樹脂の重合度が高すぎると、溶媒への溶解または紡糸が困難となる傾向があるため、極限粘度〔η〕は、4.0以下が好ましい。
また、アンモニウム塩を形成させていない酸性基を有する導電性ポリマー(A)を用いる場合は、水溶性高分子化合物又は水系でエマルジョンを形成する高分子化合物の溶媒への溶解性、組成物の安定性、導電性の点から、アニオン基を有する高分子化合物が好ましく、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオキシエチレン樹脂、水系アクリル樹脂、水系ポリエステル樹脂、水系ウレタン樹脂、水系塩素化ポリオレフィン樹脂及び四フッ化エチレン樹脂等の水系フッ素樹脂のうちの1種又は2種以上を混合して使用することがより好ましい。
更に、高分子化合物(D)は、塗膜形成工程の後の導電性ポリマー(A)を加熱して焼失させる焼成工程において、導電性ポリマー(A)と同程度の加熱処理条件で焼失する高分子化合物が好ましい。
[塩基性化合物(E)]
本発明におけるナノ炭素含有組成物は、前述の導電性ポリマー(A)、ナノ炭素材料(B)、溶媒(C)、高分子化合物(D)以外に、塩基性化合物(E)を更に含有させることが好ましい。塩基性化合物(E)は、ナノ炭素含有組成物に添加することで、構成成分である導電性ポリマー(A)を脱ドープし、組成物中への溶解性をより向上させる役割を果たす。また、遊離の酸性基と塩を形成することにより導電性ポリマー(A)の組成物への溶解が特段に向上させるとともに、ナノ炭素材料(B)の組成物への可溶化あるいは分散化を促進させる。
塩基性化合物(E)は、特に限定されないが、アンモニア、脂肪族アミン類、環式飽和アミン類、環式不飽和アミン類、アンモニウム塩類、無機塩基が好ましい。
アンモニア及び脂肪族アミン類の構造式を下記一般式(16)に示す。また、アンモニウム塩類の構造式を下記一般式(17)に示す。
(式(16)中、R201〜R203は各々互いに独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、CH2OH、CH2CH2OH、CONH2又はNH2を表す。)
(式(17)中、R204〜R207は各々互いに独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、CH2OH、CH2CH2OH、CONH2又はNH2を表し、Z−はOH−、1/2・SO4 2−、NO3 −、1/2CO3 2−、HCO3 −、1/2・(COO)2 2−、又はR208COO−を表し、R208は炭素数1〜3のアルキル基である。)
環式飽和アミン類としては、ピペリジン、ピロリジン、モルホリン、ピペラジン及びこれらの骨格を有する誘導体及びこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物が好ましい。
環式不飽和アミン類としては、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピロリン及びこれらの骨格を有する誘導体及びこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物が好ましい。
無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化物塩が好ましい。
塩基性化合物(E)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、アミン類とアンモニウム塩類を混合して用いることにより、得られる繊維や不織布の導電性を更に向上させることができる。具体的には、NH3/(NH4)2CO3、NH3/(NH4)HCO3、NH3/CH3COONH4、NH3/(NH4)2SO4、N(CH3)3/CH3COONH4、N(CH3)3/(NH4)2SO4等の併用が挙げられる。また、これらの混合比(質量比)は任意の割合とすることができるが、アミン類/アンモニウム塩類=1/10〜10/1であることが好ましい。
[界面活性剤(F)]
また、本発明におけるナノ炭素含有組成物には、界面活性剤(F)を更に含有させてもよい。界面活性剤(F)を含有させることにより、ナノ炭素材料(B)の可溶化あるいは分散化を更に促進させるとともに、紡糸性及び導電性等が向上する。
界面活性剤(F)としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α−スルホン化脂肪酸、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びこれらの塩等のアニオン系界面活性剤;第一〜第三脂肪アミン、四級アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウムアルキルピリジニウム、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム、N,N−ジアルキルモルホリニウム、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウム及びこれらの塩等のカチオン系界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のベタイン類、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩等のアミノカルボン酸類等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイド等の非イオン系界面活性剤;及びフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素系界面活性剤が挙げられる。ここで、アルキル基は炭素数1〜24が好ましく、炭素数3〜18がより好ましい。
これらの界面活性剤(F)は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明におけるナノ炭素含有組成物には、必要に応じて、更に可塑剤、分散剤、塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、保存安定剤、接着助剤、増粘剤、前記導電性ポリマー(A)以外の熱可塑性ポリマー、スリップ剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、帯電防止剤、無機フィラー、有機フィラー、表面有機化処理した無機フィラー等の公知の各種物質を含有させてもよい。
また、ナノ炭素構造体繊維の導電性を更に向上させるために、ナノ炭素含有組成物に導電性物質を含有させることもできる。該導電性物質としては、炭素繊維、導電性カーボンブラック、黒鉛等の炭素系物質等や金属微粒子や金属酸化物微粒子等が挙げられる。
本発明におけるナノ炭素含有組成物は、以上説明したような導電性ポリマー(A)、ナノ炭素材料(B)、溶媒(C)及び高分子化合物(D)を含有する組成物であり、必要に応じて、塩基性化合物(E)、界面活性剤(F)を更に含有させることができる。
以下、これらの組成比について説明する。
上記導電性ポリマー(A)と上記溶媒(C)との使用割合は、溶媒(C)100質量部に対して、上記導電性ポリマー(A)が0.001質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。導電性ポリマー(A)が0.001質量部以上であれば、十分な導電性が得られやすく、ナノ炭素材料(B)の可溶化あるいは分散化の効率がより向上する。また、導電性ポリマー(A)が50質量部以下であれば、高粘度化によるナノ炭素材料(B)の可溶化あるいは分散化の効率の低下を抑制しやすい。また、導電性ポリマー(A)が50質量部を超えても導電性はそれ以上大きく増加することはない。
ナノ炭素材料(B)と溶媒(C)の使用割合は、溶媒(C)100質量部に対してナノ炭素材料(B1)が0.0001質量部以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.001質量部以上10質量部以下である。ナノ炭素材料(B)を0.0001質量部以上とすることにより、導電性をより良好とすることができ、構造体の形成時の強度も向上する。一方、20質量部以下とすることにより、ナノ炭素材料(B)の可溶化あるいは分散化の効率をより良好にすることができ、紡糸性も向上する。
高分子化合物(D)と溶媒(C)の使用割合は、溶媒(C)100質量部に対して、高分子化合物(D)が0.1質量部以上400質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上300質量部であることがより好ましい。高分子化合物(D)が0.1質量部以上であれば、ナノ物質含有組成物から得られるナノ炭素含有繊維の成形性、強度がより向上し、その結果、ナノ炭素構造体繊維自体の特性も向上する。また、高分子化合物(D)が400質量部以下であれば、導電性ポリマー(A)やナノ炭素材料(B)の溶解性の低下が少なく、優れた紡糸性、導電性を維持しやすい。
塩基性化合物(E)と溶媒(C)の使用割合は、溶媒(C)100質量部に対して、塩基性化合物(E)が0.00001質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.00005質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。塩基性化合物(E)が0.00001質量部以上であれば、水溶性導電性ポリマー(A)の溶解性が高くなり、ナノ炭素材料(B)の溶媒(C)への可溶化あるいは分散化が促進され、ナノ炭素含有繊維やナノ炭素構造体繊維の導電性がより向上する。また、塩基性化合物(E)が10質量部を超えると、導電性ポリマーの導電性が低下するおそれがある。
界面活性剤(F)と溶媒(C)の使用割合は、溶媒(C)100質量部に対して、界面活性剤(F)が0.0001質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。界面活性剤(F)が0.0001質量部以上であれば、紡糸性、導電性、ナノ炭素材料(B)の可溶化あるいは分散化がより向上する。また、界面活性剤(F)が10質量部を超えると導電性が劣る等の現象が生じるとともに、ナノ炭素材料(B)の可溶化あるいは分散化の効率が低下するおそれがある。
[ナノ炭素含有組成物の製造方法]
本発明においては、溶媒(C)を用いることにより、分散性と紡糸性に優れたナノ炭素含有組成物が得られるため、高性能な繊維を製造することができる。
本発明におけるナノ炭素含有組成物の必須成分である導電性ポリマー(A)、ナノ炭素材料(B)、溶媒(C)、高分子化合物(D)、及び、必要に応じて塩基性化合物(E)、界面活性剤(F)等を混合する際には、超音波、ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリットミキサー等の撹拌又は混練装置が用いられる。なかでも、導電性ポリマー(A)、ナノ炭素材料(B)、溶媒(C)、あるいは更に他の成分を混合し、これに超音波を照射することが好ましく、この際、超音波照射とホモジナイザーを併用(超音波ホモジナイザー)して処理をすることが特に好ましい。
超音波照射処理の条件は、特に限定されるものではなく、ナノ炭素材料(B)を溶媒(C)中に均一に分散あるいは溶解させるのに十分な超音波の強度と処理時間であればよい。例えば、超音波発振機における定格出力は、超音波発振機の単位底面積当たり0.1〜500ワット/cm2が好ましい。発振周波数は、10〜200kHzが好ましく、20〜100kHzがより好ましい。また、超音波照射処理の時間は、1分〜48時間が好ましく、5分〜48時間がより好ましい。また、超音波照射処理を行う際のナノ炭素含有組成物の温度は、分散性向上の点から、60℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。
また、この超音波照射処理の後、更にボールミル、ビーズミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等のボール型混練装置を用いて分散あるいは溶解を徹底化することが好ましい。
所定の構成成分を混合する際には、すべての成分を一括添加してもよいし、溶媒(C)のうち、その少量を用いて、濃厚なナノ炭素含有組成物を調製した後、残りの溶媒(C)等の他の構成成分(高分子化合物(D)、塩基性化合物(E)、界面活性剤(F)、その他添加剤)で所定の濃度に希釈してもよい。また、溶媒(C)を2種類以上混合して用いる場合には、使用する溶媒(C)のうち1成分以上を用いて、濃厚なナノ炭素含有組成物を調製し、その後、その他の溶媒(C)成分で希釈してもよい。
<ナノ炭素含有繊維の製造方法>
本発明のナノ炭素含有繊維は、ドープ(紡糸原液)であるナノ炭素含有組成物を、該組成物成分に対して凝固能を有する凝固用溶媒(i)を有する凝固浴中で凝固させる、いわゆる湿式紡糸で製造される。例えば、ナノ炭素含有組成物を紡糸口金から凝固用溶媒(i)に押し出し、紡糸原糸を得ることによって行われる。この際、紡糸口金を凝固浴中に浸漬した状態でナノ炭素含有組成物を押し出しする方法や、紡糸口金から押し出された繊維状のナノ炭素含有組成物を、空気中を経て凝固浴中に導入する方法(エアギャップ法)を採用することができる。
ナノ炭素材料(B)の効果を充分に発揮させるには、ナノ炭素材料(B)は、繊維中に均一に分散された状態で存在している必要がある。繊維中に均一に分散させるためには、ナノ炭素含有組成物(紡糸原液)の段階でナノ炭素含有組成物を均一に分散させることが肝要である。そのような紡糸原液を得るためには、紡糸原液溶媒にナノ炭素材料(B)を均一分散させてから高分子化合物(D)を溶解する方法、重合溶媒にナノ炭素材料(B)を分散させてから重合を行う方法、あるいは高分子化合物(D)の溶液と導電性ポリマー(A)とナノ炭素材料(B)の溶液とを混合する方法のいずれを選択してもよい。さらに、ナノ炭素材料を均一分散させた紡糸原液を、分散不良部または異物を除くために濾過することが好ましい。濾過目開きとしては、最終段で50μm以下が好ましい。
凝固用溶媒(i)とは、ナノ炭素含有組成物を構成する溶媒(C)以外の成分(固形分成分)に対する溶解性が溶媒(C)よりも低いものである。凝固用溶媒(i)は、必ずしも該組成物中の固形分成分に対して貧溶媒である必要はなく、良溶媒であっても、固形分成分に対する溶解性が溶媒(C)よりも低ければよい。また、必要に応じて多段階で、得られた繊維をより固形分成分に対して溶解性の低い凝固用溶媒(i)に通してもよい。
凝固用溶媒(i)は、ナノ炭素含有組成物を構成する溶媒(C)以外の成分(固形分成分)に対する溶解性が溶媒(C)よりも低いものであれば特に限定されるものではない。例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;ジメチルスルオキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類等;アニリン、N−メチルアニリン等のアニリン類;塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウム等の無機化合物の水溶液等が好ましく用いられる。なお、これらの溶媒はそれぞれ単独で用いても、また2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。これらのうち、凝固糸および湿熱延伸糸の緻密性が高いという点で、N,N−ジメチルアセトアミドまたはN,N−ジメチルホルムアミドがより好ましい。
また、凝固浴の温度は、凝固糸の緻密性の観点からは温度が低い方が好ましいが、温度を下げすぎると凝固糸の引き取り速度が低下し生産性が低下する点を考慮すべきである。具体的には、湿式紡糸では、一般に50℃以下が好ましく、さらに好ましくは20℃以上40℃以下である。乾湿式紡糸では、一般に30℃以下が好ましく、さらに好ましくは0℃以上20℃以下である。
得られた凝固糸は、沸水中で凝固糸に含まれている溶媒を洗浄しながら延伸する湿熱延伸に供することができる。後述するように乾燥緻密化後にさらに延伸を加える場合には、湿熱延伸の倍率は、特に大きな倍率を必要としないので2倍以上5倍以下であれば十分である。乾燥緻密化後に延伸を加えない場合には、湿熱延伸に際して十分な延伸倍率を設定することが望ましい。また、湿熱延伸方法として、2段以上の多段延伸方法を用いることも可能である。また、湿熱延伸より前に空気中延伸を行うことも可能である。空気中延伸および湿熱延伸の手順は、本発明による特段の制限はなく、公知の方法を適用することができる。湿熱延伸における延伸浴温度は、単糸同士が融着しない範囲でできるだけ高温にすることが効果的である。この観点から、延伸浴の温度は70℃以上の高温とすることが好ましい。湿熱延伸を多段で行う場合は、最終浴を90℃以上の高温にすることが好ましい。
延伸、洗浄後の繊維は油剤処理を行うことが好ましい。油剤処理方法については本発明による特段の制限はなく、公知の方法を適用することができる。油剤の種類は特に限定されないが、アミノシリコーン系油剤が好適に使用される。油剤処理後、乾燥緻密化が行われる。乾燥緻密化の温度は、繊維のガラス転移温度を超えた温度で行う必要があるが、実質的には含水状態から乾燥状態によって異なることもあり、100〜200℃程度の加熱ローラーによる方法が好ましい。
合計延伸倍率が低いと繊維の配向が低下して、繊維の性能が低下する傾向があるという点で不利であり、反対に合計延伸倍率が高いと糸切れが生じる傾向があり生産上不利である。この観点から、乾燥緻密化後、必要に応じて合計延伸倍率を調節するため、追加の延伸を施すことができる。この延伸の方法は加熱ローラー間で行う乾熱延伸、加熱板上で行う熱板延伸、加圧蒸気中で行うスチーム延伸等を採用することができる。特に、高い延伸倍率を実現できるスチーム延伸が好ましい。追加の延伸を含む合計延伸倍率は、8倍以上20倍以下が好ましく、10倍以上15倍以下がより好ましい。
繊維状物を凝固浴に通す場合は、一定速度で引っ張りながら通すことが好ましい。巻き取り速度としては0.001〜1000m/minの範囲で実施される。こうして凝固された繊維は、一旦巻き取ってから、あるいは巻き取らずに乾燥させて、あるいは乾燥させながら、あるいは乾燥前に1.01以上、好ましくは1.1倍以上、更に好ましくは3倍以上に延伸することにより延伸糸を得ることができる。延伸は0〜300℃、好ましくは5〜200℃で行うことが好ましい。
得られたナノ炭素含有繊維は、平均繊維径が0.5μm〜100μmである極細ファイバーであり、表面が導電性ポリマー(A)及び高分子化合物(D)で被覆され、内部にナノ炭素材料(B)が存在し紡糸方向(長手方向)に配向している構造を有している。しかも、ナノ炭素材料(B)が高密度で凝集・配向構造を有しているため、導電性などの特性が大幅に向上する。
なお、このようにして得られたナノ炭素含有繊維を堆積させることにより不織布(シート状構造体)を製造することが可能である。更に、ナノ炭素含有繊維からなるシート状構造体を撚ることによって撚糸状構造体を製造することが可能である。
[ナノ炭素構造体繊維の製造方法]
[焼成工程]
本発明のナノ炭素構造体繊維の製造方法は、本発明のナノ炭素含有繊維を加熱することにより導電性ポリマー(A)、高分子化合物(D)及び塩基性化合物(E)を焼失させることによって得られる。
また、ナノ炭素含有繊維からなるシート状或いは撚糸状構造体を加熱することにより導電性ポリマー(A)や高分子化合物(D)を焼失させることによって、ナノ炭素構造体繊維からなるシート状或いは撚糸状構造体を得ることが出来る。
なお、本明細書において、「焼成」とは、加熱により、ナノ炭素含有繊維中の導電性ポリマー(A)、高分子化合物(D)や塩基性化合物(E)を焼失させることを意味する。従って、加熱処理条件(温度、時間、方法等)は、特に限定されず、導電性ポリマー(A)、高分子化合物(D)及び塩基性化合物(E)が焼失されればよい。但し、ナノ炭素含有繊維中のナノ炭素材料(B)が焼失すると、焼成後ナノ炭素構造体繊維の導電性能が低下するため好ましくない。
例えば、ナノ炭素含有繊維の加熱処理条件は、以下の加熱処理条件(1)〜(4)のいずれかを採用することができる。
加熱処理条件1:350℃以上400℃未満の温度範囲にて30分以上加熱する。
加熱処理条件2:400℃以上450℃未満の温度範囲にて15分以上加熱する。
加熱処理条件3:450℃以上500℃未満の温度範囲にて3分以上加熱する。
加熱処理条件4:500℃以上600℃未満の温度範囲にて1分以上加熱する。
加熱温度が350℃未満であると、導電ポリマー(A)、高分子化合物(D)、塩基性化合物(E)が焼失し難く、構造体に十分な透明性を付与することができない。また、加熱温度が600℃を超えると、ナノ炭素材料(B)自体焼失し、繊維自体が消失したりすることで強度を維持した構造体が形成されない傾向がある。
また、加熱時間は、加熱温度によって異なるが、350℃以上400℃未満の温度範囲では30分以上であり、35分以上180分以下であることが好ましい。400℃以上450℃未満の温度範囲では15分以上であり、20分以上180分以下であることが好ましい。450℃以上500℃未満の温度範囲では3分以上であり、5分以上180分以下であることが好ましい。500℃以上550℃未満の温度範囲では1分以上であり、3分以上180分以下であることが好ましい。それぞれの条件で加熱時間が所定時間未満であると、導電ポリマー(A)の焼失が十分でなく、構造体に十分な導電性を付与することができない。
加熱処理方法は、特に限定されないが、ナノ炭素含有繊維を熱風乾燥、ホットプレート、加熱炉、オーブン、真空乾燥、赤外線乾燥等により加熱処理する方法が好ましい。
なお、上記焼成工程における好ましい加熱時間や加熱温度は、加熱機器によっても異なる。例えば、ホットプレートのように直に加熱部分が接触する場合は、加熱時間が短くなる傾向があり、オーブン(加熱炉)のように直接接触しない場合には、加熱時間が長くなる傾向がある。
得られたナノ炭素構造体繊維は、平均繊維径が1μm〜100μmである極細ファイバーであり、表面を被覆していた導電性ポリマー(A)及び高分子化合物(D)が加熱処理によって焼失し、実質的に、内部に高密度で配向して存在していたナノ炭素材料(B)からなる構造を維持している。表面のナノ炭素材料より導電性が低い導電性ポリマー(A)及び絶縁性の高分子化合物(D)が加熱処理によって焼失したため、ナノ炭素材料(B)自体の導電性を発現させることが出来る。「実質的にナノ炭素材料(B)からなる」とは、ナノ炭素構造体繊維がナノ炭素材料(B)自体の所期の特性を発現する限りにおいて、導電性ポリマー(A)及び/又は高分子化合物(D)の焼成残留物が含まれていてもよいことを意味する。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
(製造例1)導電性ポリマー(A−1)
ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)の合成:
2−アミノアニソール−4−スルホン酸100mmolを25℃で4mol/Lのトリエチルアミン水溶液40mLに攪拌溶解し、これに、ペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolを水100mlに撹拌溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間更に攪拌した後に、反応生成物を濾別洗浄後、乾燥し、ポリマー粉末(導電性ポリマー(A))15gを得た。この導電性ポリマー(A)の体積抵抗値は9.0Ω・cmであった。
(製造例2、導電性ポリマー(A−1)と塩化ベンザルコニウムとの反応によって得られる導電性ポリマー(A−2))
上記導電性ポリマー(A−1)5gを水95gに攪拌溶解し、水溶性導電性ポリマー水溶液を調製した。得られた導電性ポリマー水溶液に塩化ベンザルコニウム 10gを水95gに攪拌溶解した塩化ベンザルコニウム水溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で1時間更に攪拌した後に反応生成物を濾別洗浄後乾燥し、スルホン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマー(A−2)10gを得た。
ナノ炭素材料(B)は、以下に示すものを使用した。
カーボンナノチューブ(B):ナノシル社によりCVD法(化学的気相成長法)にて製造された多層カーボンナノチューブ「商品名:NC7000」。
以下、カーボンナノチューブを「CNT」と略記することもある。
<ナノ炭素含有組成物>
(製造例3)ナノ炭素含有組成物1
製造例2の導電性ポリマー(A−2)2.5質量部、カーボンナノチューブ0.75部をN,N−ジメチルアセトアミド100部に室温にて混合後、超音波ホモジナイザー処理(SONICS社製 vibra cell 20KHz)を1時間実施し、カーボンナノチューブが均一に分散したN,N−ジメチルアセトアミド溶液であるナノ炭素含有組成物1を得た。この溶液について、調製後24時間経過した溶液状態を目視により観察したところ、変化は見られず均一な分散状態を保っていた。
<ナノ炭素含有繊維>
(製造例4)ナノ炭素含有繊維1
アクリロニトリル単位96%、アクリルアミド単位3%、メタクリル酸単位1%からなるアクリロニトリル系重合体(カルボン酸基の量は7.0×10-5 当量、極限粘度〔η〕は1.7)を、このナノ炭素含有組成物1に溶解して、紡糸原液(固形分濃度20%、原液温度60℃)を調製した。この紡糸原液を、直径0.075mm、孔数100の紡糸口金を用いて、温度35℃、濃度70%のジメチルアセトアミド水溶液(凝固浴)に吐出し、凝固糸とした。ついで、凝固糸を60℃から98℃の温水中で脱溶媒しながら、6倍に延伸した。延伸糸をアミノシリコーン系油剤1%水溶液中に浸漬した後、180℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化した。ついで、この糸に、0.22MPaの加圧水蒸気中で延伸倍率が合計12倍になるように延伸を施して、単糸繊度が1.9dtexのアクリル繊維(カーボンナノチューブの含有率1.8体積%)を得た。得られたアクリル繊維の弾性率は、13N/texと高いものであった。
<ナノ炭素構造体繊維>
(実施例1)
上記ナノ炭素含有繊維を加熱炉内で500℃、2時間加熱処理してナノ炭素構造体繊維を作製した。
(比較例1)
カーボンナノチューブを混合しない以外は、製造例3、製造例4及び実施例1と同様にしてナノ炭素構造体繊維を得た。
<評価方法>
実施例1及び比較例1において、加熱処理前のナノ炭素含有繊維と加熱処理後のナノ炭素構造体繊維の形成・外観観察を行った。
(構造体の形成・外観)
目視により構造体形成の可否を評価した。
○:繊維の構造体を形成・維持していた。
×:繊維の構造体形成・維持ができていなかった。
(抵抗値)
23±2℃、50±5%RH(相対湿度)の条件下で、抵抗値の測定には、カスタム社製抵抗計(CDM-03D)を用いて、電極間距離を10mmにして測定した。
(構造観察・平均繊維径)
走査型電子顕微鏡(SEM、キーエンス製VE−7800)を用いて繊維形態の観察を行った。観察は加速電圧2kVの条件で行った。得られた電子像から繊維上の任意の10点の繊維径を測定し、平均繊維径を求めた。
製造例4で得られたナノ炭素含有繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図1に示す。また、実施例1で得られたナノ炭素構造体繊維のSEM写真を図2に示す。本発明の実施例1のナノ炭素含有繊維を加熱処理することによって得られたナノ炭素構造体繊維はナノ炭素材料が高密度で配向していることが確認できた。
一方、比較例1では加熱処理条件は同じであるが、内部にナノ炭素材料が存在しないため、繊維を形成している導電性ポリマー(A)及び高分子化合物(D)が焼失してしまい、構造体を形成、維持することは出来なかった。
抵抗値については、加熱前のナノ炭素含有繊維が抵抗計の測定限界上限以上(4.0×107Ω以上)であったの対して、加熱処理後のナノ炭素構造体繊維は130Ωであり、5桁以上導電性が向上することが確認できた。
比較例1の加熱前の繊維(CNTを含まない繊維)も抵抗計の測定限界上限以上(4.0×107Ω以上)であった。