JP5620892B2 - インクジェットインク組成物、インクジェット記録方法、加飾シート、及び、インモールド成形方法 - Google Patents

インクジェットインク組成物、インクジェット記録方法、加飾シート、及び、インモールド成形方法 Download PDF

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Description

本発明は、インクジェットインク組成物、インクジェット記録方法、加飾シート、及び、インモールド成形方法に関する。
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。
インクジェット方式は、印刷装置が安価であり、かつ、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインク組成物を吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インク組成物を効率良く使用でき、特に小ロット生産の場合にランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れており、近年注目を浴びている。
中でも、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェットインク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)は、紫外線などの放射線の照射によりインク組成物の成分の大部分が硬化するため、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れ、また、画像がにじみにくいことから、種々の被記録媒体に印字できる点で優れた方式である。
放射線硬化型インク組成物は、活性放射線の照射により高い硬化性が付与されるため種々の利点をも有し、得られた画像(印刷物)の硬化膜が高い柔軟性、伸長性、基材密着性、耐衝撃性、耐ブロッキング性等を有することで、様々な環境下で長期間印刷物を高画質に保ったまま表示、保管でき、また、印刷物の取り扱いが容易になるなどのメリットがある。これらのインクジェットインク組成物としては、特許文献1及び2に記載のものが挙げられる。
また、インモールドラミネーションやインモールドデコレーションといった3次元加飾成形の分野において、小部数/短納期化のためにインクジェット記録方法による加飾が簡便であるため、放射線硬化型インク組成物が利用されてきている。
特開2010−222385号公報 特開2010−235697号公報
本発明の目的は、得られた画像の膜硬度、高温時の延伸性、及びインク流れ耐性に優れるインクジェットインク組成物、前記インクジェットインク組成物を使用したインクジェット記録方法、打ち抜き加工適性に優れた加飾シート、並びに、インモールド成形方法を提供することである。
本発明の上記課題は、下記の<1>、<18>、<20>、及び<21>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<17>、及び<19>と共に以下に記載する。
<1>(成分A)主鎖にウレタン結合を有し、かつ側鎖及び/又は末端にエチレン性不飽和基及びポリシロキサン構造を有する樹脂、並びに、(成分B)式(B)で表される化合物、を含有することを特徴とするインクジェットインク組成物、
Figure 0005620892
(式(B)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、X1及びX2はそれぞれ独立に、単結合、エーテル結合、オキシアルキレン基又はエステル結合を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、単結合、メチレン基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ポリ(エチレンオキシ)基又はポリ(プロピレンオキシ)基を表し、Zは式(Z−1)で表される基、式(Z−2a)で表される基、式(Z−2b)で表される基、又は、式(Z−2a)で表される基及び式(Z−2b)で表される基を2以上組み合わせた基を表す。)
Figure 0005620892
(式(Z−1)、式(Z−2a)及び式(Z−2b)中、波線部分は式(B)中のY1及びY2との結合位置を表し、rはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。)
<2>成分Bの含有量が、インク組成物の全重量に対し、0.5〜10重量%である、上記<1>に記載のインクジェットインク組成物、
<3>(成分C)エチレン性不飽和化合物を更に含有する、上記<1>又は<2>に記載のインクジェットインク組成物、
<4>成分Cが、単官能エチレン性不飽和化合物である、上記<3>に記載のインクジェットインク組成物、
<5>前記単官能エチレン性不飽和化合物の含有量が、成分A〜成分Cの全重量に対して、80重量%以上である、上記<4>に記載のインクジェットインク組成物、
<6>前記単官能エチレン性不飽和化合物が、(成分C1)N−ビニル化合物及び/又は(成分C2)炭素数が5〜20でかつ脂肪族炭化水素環骨格を有する単官能エチレン性不飽和化合物を含有する、上記<4>又は<5>に記載のインクジェットインク組成物、 <7>成分C2の含有量が、インク組成物の全重量に対し、5重量%以上である、上記<6>に記載のインクジェットインク組成物、
<8>成分C1が、N−ビニルカプロラクタムである、上記<6>又は<7>に記載のインクジェットインク組成物、
<9>成分C2が、式(a−1)〜式(a−12)で表される化合物の少なくとも1つを含む、上記<6>〜<8>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
Figure 0005620892
<10>成分Aの含有量が、インク組成物の全重量に対し、0.1〜5重量%である、上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<11>成分Aが、式(A)で表される樹脂を有する、上記<1>〜<10>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
Figure 0005620892
(式(A)中、A1及びA3はそれぞれ独立に、炭素数5〜15のアルキレン基、芳香族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基及び脂肪族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基よりなる群から選ばれた二価の連結基を表し、A2は側鎖にポリシロキサン構造を有する二価の連結基を表し、A4は側鎖にエチレン性不飽和基を有する二価の連結基を表す。m及びnは、m:n=100:1〜1:100の関係を満たす正数を表す。)
<12>(成分D)重合開始剤を更に含有する、上記<1>〜<11>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<13>成分Dの含有量が、インク組成物の全重量に対し、0.01〜10重量%である、上記<12>に記載のインクジェットインク組成物、
<14>成分Dが、チオキサントン化合物を含む、上記<12>又は<13>に記載のインクジェットインク組成物、
<15>(成分E)連鎖移動剤を更に含有する、上記<1>〜<14>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<16>成分Eの含有量が、インク組成物の全重量に対し、0.1〜10重量%である、上記<15>に記載のインクジェットインク組成物、
<17>成分Eが、式(S)で表される基を有する化合物である、上記<15>又は<16>に記載のインクジェットインク組成物、
Figure 0005620892
(式(S)中、波線部分は、結合位置を表す。)
<18>(a1)樹脂シート上に、上記<1>〜<17>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物をインクジェット方式により吐出する工程、及び、(b1)吐出されたインクジェットインク組成物に活性光線を照射して、前記インクジェットインク組成物を硬化させる工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法、
<19>前記活性光線の光源が、発光ダイオードである、上記<18>に記載のインクジェット記録方法、
<20>樹脂シート上に上記<1>〜<17>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物の硬化画像層を設けたことを特徴とする加飾シート、
<21>複数の金型により形成された空洞部の内壁に上記<20>に記載の加飾シートを配置し、ゲートから前記空洞部内に溶融樹脂を注入し射出成形する工程を含むことを特徴とするインモールド成形方法。
本発明によれば、得られた画像の膜硬度、高温時の延伸性、及びインク流れ耐性に優れるインクジェットインク組成物、前記インクジェットインク組成物を使用したインクジェット記録方法、打ち抜き加工適性に優れた加飾シート、並びに、インモールド成形方法を提供することができる。
本発明の加飾シート及び加飾成形品の一例を模式的に示す断面図である。 本発明のインモールド成形方法の一例を模式的に示す断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
(インクジェットインク組成物)
本発明のインクジェットインク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)は、(成分A)主鎖にウレタン結合を有し、かつ側鎖及び/又は末端にエチレン性不飽和基及びポリシロキサン構造を有する樹脂、並びに、(成分B)式(B)で表される化合物、を含有することを特徴とする。
Figure 0005620892
(式(B)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、X1及びX2はそれぞれ独立に、単結合、エーテル結合、オキシアルキレン基又はエステル結合を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、単結合、メチレン基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ポリ(エチレンオキシ)基又はポリ(プロピレンオキシ)基を表し、Zは式(Z−1)で表される基、式(Z−2a)で表される基、式(Z−2b)で表される基、又は、式(Z−2a)で表される基及び式(Z−2b)で表される基を2以上組み合わせた基を表す。)
Figure 0005620892
(式(Z−1)、式(Z−2a)及び式(Z−2b)中、波線部分は式(B)中のY1及びY2との結合位置を表し、rはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。)
なお、本発明において、数値範囲を表す「A〜B」の記載は「A以上B以下」と同義である。また、前記「(成分A)主鎖にウレタン結合を有し、かつ側鎖及び/又は末端にエチレン性不飽和基及びポリシロキサン構造を有する樹脂」等を単に「成分A」等ともいう。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタアクリル」のいずれか一方、又は、その両方を含む語であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタアクリレート」のいずれか一方、又は、その両方を含む語である。
本発明のインク組成物は、活性放射線(「活性エネルギー線」ともいう。)により硬化可能な油性のインク組成物である。「活性放射線」とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる放射線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
本発明のインク組成物は、成分A、成分Bを含有することにより、得られた画像の膜硬度、高温時の延伸性、及びインク流れ耐性に優れるインクジェットインク組成物が得られる。
以下、本発明のインク組成物の各成分について、説明する。
(成分A)主鎖にウレタン結合を有し、かつ側鎖及び/又は末端にエチレン性不飽和基及びポリシロキサン構造を有する樹脂
本発明のインク組成物は、(成分A)主鎖にウレタン結合を有し、かつ側鎖及び/又は末端にエチレン性不飽和基及びポリシロキサン構造を有する樹脂を含有する。
以下に、本発明のインク組成物の成分Aとして使用される、主鎖にウレタン結合を有し、かつ側鎖及び/又は末端にエチレン性不飽和基及びポリシロキサン構造を有する樹脂について説明する。
なお、成分Aを適宜「表面偏析ポリマー」とも称する。表面偏析ポリマーは、インク組成物の硬化膜表面に偏在することで、膜硬度、高温時の延伸性、及びインク流れ耐性に優れるインクジェットインク組成物を提供することができるものと推定される。
以下に、成分Aを構成する、主鎖構造、ポリシロキサン構造を含む基、及びエチレン性不飽和基を含む基について説明する。
<主鎖構造>
成分Aは、主鎖にウレタン結合(−NRCOO−又は−OCONR−、Rは水素原子又は炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基を表す。)を含む、いわゆるポリウレタン樹脂である。前記置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基が挙げられる。成分Aの主鎖構造としては、ジイソシアネートなどのポリイソシアネート成分とジオールなどのポリオール成分とを反応させることによりポリウレタン構造を形成することができる。
ポリウレタン構造を形成しうるポリイソシアネート成分の好ましい具体例としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。
ポリウレタン構造を形成しうるポリオール成分としては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチルヘキサメチレンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールオクタン、ペンタエリスルトール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
これらの中でも、分子量が4,000以下のポリオールを使用することが好ましい。
<ポリシロキサン構造を含む基>
本発明における成分A(表面偏析ポリマー)に含まれるポリシロキサン構造を含む基とは、「−Si−O−Si−」構造を有していれば、特に制限はないが、成分Aの側鎖及び又は主鎖末端の少なくとも一方に有することが好ましい。具体的には、式(a2−1)で表される基、又は、式(a2−2)で表される基を有することが好ましい。
Figure 0005620892
式(a2−1)において、R21は、アルキル基、又はアリール基を表し、W21は、2価の連結基を表し、X21は、−O−、−S−、又は−N(R24)−のいずれかの基を表す。ここで、R24は、水素原子、又は炭素数1〜4個のアルキル基を表す。また、na2は、5〜100の整数を表し、*はポリマーの主鎖及び/又は主鎖末端と連結する位置を表す。
21のアルキル基としては、炭素数1〜12であることが好ましく、直鎖構造であっても、分岐構造であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等をあげることができる。また、炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜4の直鎖構造のアルキル基であることが更に好ましく、ブチル基が特に好ましい。
21のアリール基としては、炭素数は6〜20であることが好ましく、6〜14であることがより好ましい。R21のアリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等を挙げることができ、フェニル基であることがより好ましい。
21で表される2価の連結基としては、炭素数1〜20のアルキレン基、又はアリーレン基であることが好ましい。前記アルキレン基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。また、置換基を有していても、無置換であってもよい。有していてもよい前記置換基としては、ハロゲン原子等があげられる。
21が炭素数1〜20のアルキレン基である場合、無置換であることが好ましく、より好ましくは、炭素数1〜10の無置換のアルキレン基であり、更に好ましくは、炭素数1〜4の無置換のアルキレン基ある。アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等を例示することができる。これらの基は直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。
21がアリーレン基であるとき、炭素数6〜20のアリーレン基が好ましく、炭素数6〜12のアリーレン基がより好ましい。具体的には、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等を例示することができる。中でもフェニレン基は特に好ましい。
また、W21で表される2価の連結基中には、イミノ結合(−NH−)、アミド結合(−CONH−又は−NHCO−)、エステル結合(−COO−又は−OCO−)、エーテル結合(−O−)、スルホンアミド結合(−NHSO2−又は−SO2NH−)、ウレタン結合(−NHCOO−又は−OCONH−)、ウレイレン結合(−NHCONH−)、カーボネート結合(−OCOO−)、又は複素環を有する基(具体的には、トリアジン、イソシアヌル酸、ピペラジン等の複素環から水素原子を2つ除いた基)、が結合基として介在していてもよい。
これらの中でも、W21としては、炭素数1〜4の無置換のアルキレン基、又はエーテル結合(−O−)を結合基として含む炭素数1〜8の無置換のアルキレン基であることがより好ましく、**−CH2CH2−O−CH2CH2−**が特に好ましい(**は結合位置を表す。)。
21は、−O−、−S−、又は−N(R24)−のいずれかの基である。ここで、R24は、水素原子、又は炭素数1〜4個のアルキル基を表し、該アルキル基としては、直鎖構造であっても、分岐構造であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等を挙げることができる。これらの中でも、R24としては、水素原子、又はメチル基が好ましい。
また、X21としては、これらの中でも、−O−であることが最も好ましい。
式(a2−2)において、R21は、アルキル基、又はアリール基を表し、W21は、2価の連結基を表し、Q21は、−O−、−S−、又は−N(R24)−のいずれかの基を2個有する3価の連結基を表す。ここで、R24は、水素原子、又は炭素数1〜4個のアルキル基を表す。また、na2は、5〜100の整数を表し、*はポリマーの主鎖及び/又は主鎖末端と連結する位置を表す。
式(a2−2)において、R21、W21、R24、及びna2は、式(a2−1)のR21、W21、R24、及びna2と同義である。また、好ましい態様も同様である。
21は、−O−、−S−、又は−N(R24)−のいずれかの基を末端に2個有する3価の連結基である。Q21で表される3価の連結基としては、炭素数1〜20のアルキレン基、又はアリーレン基であることが好ましい。前記アルキレン基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。また、置換基を有していても、無置換であってもよい。有していてもよい前記置換基としては、ハロゲン原子等が挙げられる。
21が炭素数1〜20のアルキレン基である場合、無置換であることが好ましく、より好ましくは、炭素数1〜10の無置換のアルキレン基であり、更に好ましくは、炭素数1〜4の無置換のアルキレン基ある。アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等を例示することができる。アルキレン基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよいが、分岐構造のアルキレン基がより好ましい。
21がアリーレン基である場合、炭素数6〜20のアリーレン基が好ましく、炭素数6〜12のアリーレン基がより好ましい。具体的には、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等を例示することができる。
21は、アルキレン基又はアリーレン基であっても、−O−、−S−、又は−N(R24)−のいずれかの基を2個有する。これらの2個の基は、アルキレン基又はアリーレン基の任意の位置に有すればよい。
21は、分岐した炭素数3〜10のアルキレン基で、異なる末端に少なくとも2個のエーテル結合(−O−)を有し、少なくとも1個の単結合を有する3価の連結基であることがより好ましい。
式(a2−1)又は式(a2−2)で表される基を成分Aの主鎖及び又は主鎖末端に導入する具体的な手法は後述するが、成分Aの合成時に、式(a2−1)又は式(a2−2)の構造を有する市販の化合物を適用すればよい。
式(a2−1)又は式(a2−2)で表される構造を含む化合物としては、アルコール化合物、アミン化合物、又はチオール化合物等を用いることができるが、アルコール化合物であることが好ましく、具体的には、式(a2−3)又は式(a2−4)で表される化合物がより好ましい。
Figure 0005620892
式(a2−3)及び式(a2−4)において、W21、R21、及びna2は好ましい範囲も含めて、式(a2−1)及び式(a2−2)と同義である。
式(a2−4)中、Q22は、3価の連結基であり、炭素数1〜20のアルキレン、又はアリーレン基で、直鎖でも分岐でもよいが分岐が好ましい。2個のエーテル結合と1個の単結合に繋がる3価の連結基であることが好ましい。
式(a2−3)及び式(a2−4)で表される化合物としては、例えば、以下のものを例示することができる(例示化合物中、na2は5〜100の整数である。)。但し、本発明は、これらに限定されるものではない。
Figure 0005620892
Figure 0005620892
また、式(a2−3)又は式(a2−4)で表されるアルコール化合物は、市販品として入手可能であり、例えば、信越化学工業(株)製のX−22−170BX、X−22−170DX、X−22−173DX、Chisso社製のSILAPLANE FM−0411、FM−0421、FM−0425、FM−DA11、FM−DA21、FM−DA26等を例示することができる。
成分Aにポリシロキサン構造を含む基を導入する場合、主鎖構造及び/又は少なくともいずれか一方の主鎖末端に含むことが好ましい。
ポリシロキサン構造を含む基を主鎖に導入する方法としては、具体的には、前述のポリイソシアネートとポリオールとを反応させてポリウレタン構造を得る際、ポリオールとしてポリシロキサン構造を含む基を有するジオールを原料として用いればよい。
ポリシロキサン構造を含む基を主鎖末端に導入する方法としては、具体的には、成分Aの合成時に、導入したい構造に応じ、ポリシロキサン構造を有する基をもつアルコール化合物を適宜選択して、重合停止剤として用いればよい。具体例としては、前述のポリシロキサン構造を含む基を有する一価のアルコール化合物を挙げることができる。
具体的には、まず、前述のポリイソシアネートとポリオールとを反応させてポリウレタン構造を得る際、合成系中に含まれるイソシアネート基の合計モル数が、含まれる水酸基の合計モル数に対して小過剰となるように反応させ、末端にイソシアネート基を有するポリマーを得る。
続いて、このポリマー末端に形成されたイソシアネート基に、前記ポリシロキサン構造を含む基を有する一価のアルコール化合物を反応させることにより、ポリシロキサン構造をポリマーの主鎖末端に導入することができる。なお、イソシアネート基をどの程度小過剰とするかは、形成する成分Aの分子量に応じて適宜決定することができる。
<エチレン性不飽和基>
成分Aは、エチレン性不飽和基を側鎖及び/又は主鎖末端に有する。
成分Aがエチレン性不飽和基を含有することで、インク組成物の硬化膜表面をより強固にし成分Aで被覆することができると推定される。従って、膜硬度、高温時の延伸性、及びインク流れ耐性に優れるインクジェットインク組成物を提供することができるものと推定される。
エチレン性不飽和基の例としては、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基等の不飽和カルボン酸エステル基、及びスチレン基等のラジカル重合性基が挙げられる。中でも、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基(すなわち、(メタ)アクリル酸エステル基)が好ましい。
エチレン性不飽和基を成分Aに導入する方法としては、エチレン性不飽和基の二重結合を保護基を用いて反応を封止したモノマーを用い、このモノマーを共重合させた後保護基を取り除いて二重結合とする方法や、エチレン性不飽和基を有する低分子化合物を成分Aの出発原料となるポリマーに高分子反応で導入する方法が挙げられる。
成分Aとしては、式(A)で表される樹脂がより好ましく用いられる。
Figure 0005620892
(式(A)中、A1及びA3はそれぞれ独立に、炭素数5〜15のアルキレン基、芳香族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基及び脂肪族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基よりなる群から選ばれた二価の連結基を表し、A2は側鎖にポリシロキサン構造を有する二価の連結基を表し、A4は側鎖にエチレン性不飽和基を有する二価の連結基を表す。m及びnは、m:n=100:1〜1:100の関係を満たす正数を表す。)
式(A)中、A1及びA3は、前述の成分Aの主鎖構造で説明したポリウレタン構造を形成しうるジイソシアネート化合物のイソシアネート基が結合する母体構造を表す。A1及びA3の好ましい構造は、前述の成分Aの主鎖構造で説明したポリウレタン構造を形成しうるジイソシアネート化合物の好ましい具体例で例示されたジイソシアネート化合物のイソシアネート基が結合する母体構造を例示できる。
式(A)中、A2は側鎖にポリシロキサン構造を有する二価の連結基を表し、前述の成分Aのポリシロキサン構造を有する基の好ましい例である式(a2−2)で、Q21が少なくとも2つのエーテル結合を有する場合の2つのエーテル結合を除いたポリシロキサン構造を有する基を表す。
式(A)中、A4は側鎖にエチレン性不飽和基を有する二価の連結基を表し、特に制限はないが、式(a4−1)で表される基がより好ましい。
Figure 0005620892
式(a4−1)中、W21とQ21は、式(a2−2)中のW21とQ21と同義である。式(a4−1)で表される基において、W21としてはエステル結合が好ましく、Q21としては分岐した炭素数3〜10のアルキレン基で、少なくとも異なる末端に2個のエーテル結合を有し、少なくとも1個の単結合を有する3価の連結基であることが好ましい。
具体的にはエチレン性不飽和基を有する二価以上のアルコール化合物から水酸基を2つ除いた構造を表す。エチレン性不飽和基の好ましい例としては、前述の成分Aのエチレン性不飽和基の説明で例示した基を挙げることができる。
エチレン性不飽和基を有する二価以上のアルコール化合物は、エチレン性不飽和基をアセタール基で保護した、例えば2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール(和光純薬工業(株)製)を出発原料とし、Tetrahedron Letters,1985,26,3095,Angewandte Chemie,2007,119,4229,J.Am.Chem.Soc.,2002,124,1590を参考に、(メタ)アクリロイル化、スチリル基導入、ビニルエーテル化をした後に、塩化水素(メタノール溶液)等を用いて脱アセタール化することでウレタン原料となるエチレン性不飽和基を有するジオールが得られる。
エチレン性不飽和基を有する二価以上のアルコール化合物の具体的な例としては、式(a4−2)の化合物が好ましく挙げられる。式(a4−2)の化合物は、市販品として日油(株)製のブレンマ−GLMを入手することができる。
Figure 0005620892
式(A)において、ポリシロキサン構造を有する一価のアルコールを原料とした場合には、主鎖末端に付加した式(Ae−a)又は式(Ae−b)のような構造となることもある。
Figure 0005620892
(式(Ae−a)及び式(Ae−b)中、A3、A4、nは、式(A)中のA3、A4、nと同義であり、W21、R21、及びna2は、式(a2−3)のW21、R21、及びna2と同義である。)
また、式(A)で表されるポリマーの主鎖末端基は、ポリマーの合成方法により種々の基を含有することができる。公知で用いられる重合停止剤を添加することにより、末端基がイソシアネート基、アミド基、水酸基等の構造となる場合もあり、これらの具体例としては、式(Ae−1)〜式(Ae−4)で表される構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
式(Ae−1)〜式(Ae−4)中、A1〜A4は、式(A)中のA1〜A4と同義である。二重波線部分は、式(A)の樹脂の残りの部分との結合位置である。
式(A)のポリマーの末端は、両末端が同じ構造でも異なる構造でもよい。
Figure 0005620892
式(A)中、m及びnは、m:n=100:1〜1:100の関係を満たす正数を表す。また、m及びnは、成分Aの繰り返し単位のモル比を表す。好ましくは、m:n=0.1:99.9〜10:90、より好ましくは、0.5:99.5〜5:95である。
成分Aの重量平均分子量は、5,000〜200,000が好ましく、8,000〜150,000がより好ましく、10,000〜100,000が更に好ましい。
また、本発明のインク組成物に含有される成分Aの含有量は、インク組成物全固形分中、0.1〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましく、0.2〜3重量%が更に好ましい。
以下に、本発明における成分Aのポリマーの好ましい具体例を表1、表2に挙げる。なお、本発明はこれらの具体例に何ら限定されるものではない。
表1、表2中の、A1〜A4は、式(A)のA1〜A4を表す。*は結合位置を表す。A2が一価のアルコールの部分構造である場合には、A2は主鎖末端に付加する。
Figure 0005620892
Figure 0005620892
(成分B)式(B)で表される化合物
本発明のインク組成物は、(成分B)式(B)で表される化合物を含有する。
Figure 0005620892
(式(B)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、X1及びX2はそれぞれ独立に、単結合、エーテル結合、オキシアルキレン基又はエステル結合を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、単結合、メチレン基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ポリ(エチレンオキシ)基又はポリ(プロピレンオキシ)基を表し、Zは式(Z−1)で表される基、式(Z−2a)で表される基、式(Z−2b)で表される基、又は、式(Z−2a)で表される基及び式(Z−2b)で表される基を2以上組み合わせた基を表す。)
Figure 0005620892
(式(Z−1)、式(Z−2a)及び式(Z−2b)中、波線部分は式(B)中のY1及びY2との結合位置を表し、rはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。)
以下、成分Bについて説明する。
成分Bは、分子内に式(Z−1)〜式(Z−2b)で表される基に含まれる炭素−炭素二重結合を有し、かつ分子の両末端にエチレン性不飽和基を有する化合物であるため、インク画像の液滴表面に偏在して表面硬化性に寄与し、更に膜硬化性と高温時延伸性を両立できると推定される。
式(B)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。より好ましくは、R1及びR2が共に水素原子である。
式(B)中、X1及びX2はそれぞれ独立に、単結合、エーテル結合(−O−)、オキシアルキレン基又はエステル結合(−C(O)O−又は−OC(O)−)を表し、より好ましくはエステル結合である。
式(B)中、Y1及びY2はそれぞれ独立に、単結合、メチレン基(−CH2−)、エチレンオキシ基(−C24O−又は−OC24−)、プロピレンオキシ基(−C36O−又は−OC36−)、ポリ(エチレンオキシ)基又はポリ(プロピレンオキシ)基を表す。
式(B)中、Zは式(Z−1)で表される基、式(Z−2a)で表される基、式(Z−2b)で表される基、又は、式(Z−2a)で表される基及び式(Z−2b)で表される基を2以上組み合わせた基を表す。式(Z−1)で表される基は、ビスフェノールAから2個の水酸基を除いた構造の基であり、式(Z−2a)で表される基及び式(Z−2b)で表される基は、ポリブタジエン構造を構成する基である。
式(B)中、rはそれぞれ独立に1以上の整数である。rの上限は200、好ましくは100である。
成分Bは、R1及びR2が共に水素原子であり、X1及びX2が共にエステル結合であるジアクリレート化合物であることが特に好ましい。
成分Bとして、より強固なインク膜を要する場合には、式(Z−1)で表される基を有する化合物がより好ましく、より柔軟なインク膜を要する場合には、式(Z−2a)で表される基及び式(Z−2b)で表される基を2以上組み合わせた基を有する化合物を含有することが好ましい。
成分BのZが、式(Z−1)で表される構造の場合は、Y1及びY2はそれぞれ独立にZとエーテル結合で結合するポリ(エチレンオキシ)基であることが好ましい。エチレンオキシ基の繰り返し数は特に制限されないが、Y1及びY2はそれぞれ独立にエチレンオキシ基の繰り返し数が1〜30であることがより好ましい。
成分Bは、ビスフェノール構造を有し、両末端にアクリロキシ基を有し、ポリ(オキシエチレン基)を有する、式(B−1a)で表される化合物であることが特に好ましい。
Figure 0005620892
(式(B−1a)中、p及びqは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、p+q=3〜30の関係を満たす。)
ビスフェノール構造を有する成分Bとしては、NKエステルA−BPE−10、A−BPE−4(新中村化学工業(株)製)、SR349、SR601(サートマー社製)、ブレンマーADPE−150(日本油脂(株)製)、アロニックスM−210、M−211B(東亞合成(株)製)、ライトアクリレートBP−4EA(共栄社化学(株)製)、BPE−4(第一工業製薬(株)製)、ビスコート#700(大阪有機化学(株)製)、Ebecryl150、Ebecryl1150(ダイセルUCB(株)製)等が挙げられる。
成分BのZが、式(Z−2a)で表される基、式(Z−2b)で表される基、又は、式(Z−2a)で表される基及び式(Z−2b)で表される基を2以上組み合わせた構造の場合は、成分Bはポリブタジエン構造を有するオリゴマーであることが好ましい。
オリゴマーは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーが結合した重合体であり、オリゴマーと称される公知の化合物を任意に選択可能であるが、本発明においては、重量平均分子量が400〜10,000(より好ましくは500〜5,000)の重合体を選択することが好ましい。
成分BのZが、式(Z−2a)で表される基、式(Z−2b)で表される基、又は、式(Z−2a)で表される基及び式(Z−2b)で表される基を2以上組み合わせた構造の場合は、Y1及びY2はそれぞれ独立にメチレン基であることが好ましく、成分Bは、ポリブタジエン構造にアクリロキシ基を有するポリブタジエンジアクリレート化合物であることが特に好ましい。
ポリブタジエン構造及び両末端にアクリロキシ基を有する成分Bとしては、市販品の入手できる製品として、CN301、CN303、CN307(サートマー社製)等が挙げられる。
成分Bは、目的に合わせ適宜1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明のインク組成物における成分Bの含有量としては、インク組成物の全重量に対して、0.1〜10重量%であることが好ましく、0.5〜10重量%であることがより好ましく、1〜10重量%であることが更に好ましい。
(成分C)エチレン性不飽和化合物
本発明のインク組成物は、高分子量の成分A及び成分Bとは異なる、分子量が1,000以下の比較的低分子量化合物である(成分C)エチレン性不飽和化合物を更に含有することが好ましい。
成分Cは、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する比較的低分子量の化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する有機化合物であればどのようなものでもよい。エチレン性不飽和結合の数により、単官能エチレン性不飽和化合物、多官能エチレン性不飽和化合物に分類される。適宜目的に合わせ、エチレン性不飽和化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。
本発明のインク組成物は、成分Cとして単官能エチレン性不飽和化合物がより好ましく用いられる。
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
本発明のインク組成物に含有される成分Cの単官能エチレン性不飽和化合物としては、(成分C1)N−ビニル化合物及び/又は(成分C2)炭素数が5〜20でかつ脂肪族炭化水素環骨格を有する単官能エチレン性不飽和化合物を含有することが好ましい。
以下に、(成分C1)N−ビニル化合物、及び(成分C2)炭素数が5〜20でかつ脂肪族炭化水素環骨格を有する単官能エチレン性不飽和化合物について説明する。
(成分C1)N−ビニル化合物
本発明のインク組成物に用いられる(成分C1)N−ビニル化合物としては、N−ビニルラクタム類が好ましく挙げられる。N−ビニルラクタム類としては、式(a)で表される化合物が好ましい。
Figure 0005620892
式(a)中、nは2〜6の整数を表し、インク組成物が硬化した後の柔軟性、被記録媒体との密着性、及び、原材料の入手性の観点から、nは3〜5の整数であることが好ましく、nが3又は5であることがより好ましく、nが5である、すなわちN−ビニルカプロラクタムであることが特に好ましい。N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好なインク硬化性、及び硬化膜の被記録媒体への良好な密着性が得られるので好ましい。
また、上記N−ビニルラクタム類は、ラクタム環上の水素原子がアルキル基、アリール基等の置換基により置換されていてもよく、ラクタム環と飽和又は不飽和環構造とが連結していてもよい。
式(a)で表される化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
(成分C2)炭素数が5〜20でかつ脂肪族炭化水素環骨格を有する単官能エチレン性不飽和化合物
本発明のインク組成物は、成分Cの単官能エチレン性不飽和化合物として、(成分C2)炭素数が5〜20でかつ脂肪族炭化水素環骨格を有する単官能エチレン性不飽和化合物を好ましく用いることができる。
成分C2を用いることにより、インク画像の硬化膜の膜硬度を改良することができる。
成分C2としては、式(I)〜式(III)で表される化合物が好ましく用いられる。
Figure 0005620892
(式(I)〜式(III)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、X1はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、Y1は単結合、エーテル結合、アルキレンオキシ基、ポリ(アルキレンオキシ)基の二価の連結基を表し、Y1は脂肪族炭化水素環の任意の位置に結合し、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に置換基を表し、s、t及びuはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、nは環状炭化水素構造を表す。)
式(I)〜式(III)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、水素原子が特に好ましい。
式(I)〜式(III)中、X1は、エーテル結合、エステル結合、アミド結合であり、エステル結合であることが特に好ましい。エチレン性不飽和基は、アクリロキシ基であることが特に好ましい。
式(I)〜式(III)中、Y1は、単結合、エーテル結合、アルキレンオキシ基、ポリ(アルキレンオキシ)基の二価の連結基を表し、Y1は脂肪族炭化水素環の任意の位置に結合することができる。Y1は、単結合及びアルキレンオキシ基がより好ましい。単結合が特に好ましい。
式(I)〜式(III)中、R2〜R4はそれぞれ独立に置換基を表し、炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基がより好ましい。メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基が更に好ましい。
s、t及びuは、それぞれ独立に0〜5の整数を表し、好ましくは0〜3の整数であり、2以上の場合、脂肪族炭化水素環の同一炭素原子に1個及び/又は2個結合することができる。
s個存在するR2、t個存在するR3、及び、u個存在するR4はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
式(II)中、nが環状炭化水素構造を表す場合、環状炭化水素構造の両端はノルボルナン骨格の任意の位置で置換していてもよく、5員環又は6員環の環状炭化水素構造が好ましい。また、nは単環構造であっても、多環構造であってもよく、式(II)としては、下記の構造が好ましく挙げられる。
Figure 0005620892
式(II−a)〜式(II−c)中、R1、R3、X1、Y1及びtは、式(II)中のR1、R3、X1、Y1及びtと同義であり、好ましい態様も同様である。
式(I)〜式(III)で表される化合物は、脂肪族炭化水素環にアクリロキシ基が直接結合したアクリレート化合物が好ましい。
本発明のインク組成物に用いられる成分C2としては、具体的に式(a−1)〜式(a−12)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0005620892
成分C2の含有量は、本発明のインク組成物の全重量に対し、5重量%以上であることが好ましい。5重量%以上であると、インク画像の膜に十分な硬度が得られる。
成分Cの単官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、インク組成物中の成分A〜成分Cの全重量に対して、80重量%以上含有することが好ましい。
更に塗膜の柔軟性を向上させるために、単官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、80〜100重量%が好ましく、85〜100重量%がより好ましく、85〜99重量%が更に好ましい。
<他のエチレン性不飽和化合物>
本発明のインク組成物は、成分Cとして、前述の成分C1及び/又は成分C2以外の他のエチレン性不飽和化合物を更に含有していてもよい。
他のエチレン性不飽和化合物としては、公知のエチレン性不飽和化合物を用いることができ、前述した成分C1及び/又は成分C2以外の(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、N−ビニル化合物、不飽和カルボン酸類等が例示できる。例えば、特開2009−221414号公報に記載のラジカル重合性モノマー、特開2009−209289号公報に記載の重合性化合物、特開2009−191183号公報に記載のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
他のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はないが、前述したエチレン性不飽和化合物以外の単官能(メタ)アクリレート化合物を更に含有することがより好ましい。
前述したエチレン性不飽和化合物以外の単官能(メタ)アクリレート化合物としては、式(2)で表される化合物を好ましく使用することができる。
Figure 0005620892
(式(2)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又は二価の連結基を表す。)
式(2)におけるR1は、水素原子又はメチル基を表し、硬化速度の点で、水素原子が好ましい。
式(2)におけるXとしては、アルキレン基、又は、1以上のアルキレン基とエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合及びウレア結合よりなる群から選ばれた1以上の結合とを組み合わせた基が好ましく例示でき、アルキレン基、アルキレンオキシ基、又はポリアルキレンオキシ基がより好ましく例示できる。
前記アルキレン基、アルキレンオキシ基、又はポリアルキレンオキシ基は、炭素数2〜10であることが好ましく、炭素数2〜4であることがより好ましく、炭素数2であることが特に好ましい。また、前記アルキレン基、アルキレンオキシ基、又はポリアルキレンオキシ基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基等が例示できる。
これらの中でも、式(2)で表される化合物としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、フェノキシエチルアクリレートが特に好ましい。
また、成分A、成分B、成分C1及び成分C2以外の単官能(メタ)アクリレート化合物のその他の例として、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−フタルイミドエチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、5−(メタ)アクリロイルオキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサシクロヘキサン、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
他のエチレン性不飽和化合物としては、芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物を含むこともできる。芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物の芳香族基の環状構造には、O、N、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
前記式(2)で表される化合物以外の芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物としては、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、2−α−ナフチルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−β−ナフチルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−アントリル(メタ)アクリレート、9−アントリル(メタ)アクリレート、1−フェナントリル(メタ)アクリレート、2−フェナントリル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート(以下、「エチレンオキサイド」を「EO」ともいう。)、p−ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p−ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−フリル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、2−チエニル(メタ)アクリレート、2−テニル(メタ)アクリレート、1−ピロリル(メタ)アクリレート、2−ピリジル(メタ)アクリレート、2−キノリル(メタ)アクリレート、N−(1,1−ジメチル−2−フェニル)エチル(メタ)アクリルアミド、N−ジフェニルメチル(メタ)アクリルアミド、N−フタルイミドメチル(メタ)アクリルアミド、N−(1,1’−ジメチル−3−(1,2,4−トリアゾール−1−イル))プロピル(メタ)アクリルアミド等を例示できる。
本発明のインク組成物は、前述した単官能エチレン性不飽和化合物以外に、更に成分A及び成分B以外の多官能(メタ)アクリレート化合物を、好ましく使用できる。
成分A、成分B以外の多官能(メタ)アクリレート化合物としては、成分A及び成分B以外の2官能(メタ)アクリレート化合物又は3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を好ましく使用できる。
2官能(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
中でも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、ジプロピレングリコールジアクリレートが特に好ましい。
2官能(メタ)アクリレート化合物としては、炭素数5以上の分岐を有していてもよい炭化水素鎖を有する2官能(メタ)アクリレート化合物が好ましく使用できる。
2官能(メタ)アクリレート化合物の好ましい例としては、炭素数5以上の炭化水素鎖を分子内に有する2官能(メタ)アクリレート化合物であり、具体的には、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能(メタ)アクリレート化合物の好ましい例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。4官能(メタ)アクリレート化合物の好ましい例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、成分A、成分B、成分C1及び成分C2以外の他のエチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
他のエチレン性不飽和化合物として具体的には、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられる。
更に具体的には、山下晋三編「架橋剤ハンドブック」(1981年、大成社);加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編「UV・EB硬化技術の応用と市場」79頁(1989年、(株)シーエムシー出版);滝山栄一郎著「ポリエステル樹脂ハンドブック」(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品又は業界で公知のラジカル重合性又は架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
他の重合性化合物の分子量は、80〜2,000であることが好ましく、80〜1,000であることがより好ましく、80〜800であることが更に好ましい。
他のエチレン性不飽和化合物として、単官能ビニルエーテル化合物を用いることも好ましい。
好適に用いられる単官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
また、多官能ビニルエーテル化合物を用いることもできる。
好適に用いられる多官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物が挙げられる。
本発明のインク組成物における、成分Cのうちの多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量は、インク組成物の全重量に対し、0.01〜15.0重量%が好ましく、0.05〜10.0重量%がより好ましい。
(成分D)重合開始剤
本発明のインク組成物は、(成分D)重合開始剤を好ましく含有することができる。被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。
なお、本発明における重合開始剤は、活性放射線等の外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物だけでなく、特定の活性放射線を吸収して重合開始剤の分解を促進させる化合物(いわゆる、増感剤)も含まれる。
本発明のインク組成物において、重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。増感剤としては例えば、特開2008−208190号公報に記載のものが挙げられる。
前記重合開始剤は、ラジカル重合反応に用いられる重合開始剤であり、(成分D−1)チオキサントン化合物、又は(成分D−2)ビスアシルホスフィン化合物が好ましい。前記重合開始剤と、前記成分A〜成分Cの組み合わせにより、インク画像の膜硬度、高温時の延伸性、及びインク流れ耐性に優れるインクジェットインク組成物が得られる。
以下に、成分D−1及びD−2の化合物について説明する。
<(成分D−1)チオキサントン化合物>
本発明のインク組成物は、(成分D−1)チオキサントン化合物を好ましく含有することができる。
チオキサントン化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、式(D−1)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0005620892
前記式(D−1)において、R1F、R2F、R3F、R4F、R5F、R6F、R7F及びR8Fはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基(一置換及び二置換の場合を含む。なお、以下においても同様である。)、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。上記アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、アシル基におけるアルキル部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。
1F、R2F、R3F、R4F、R5F、R6F、R7F及びR8Fは、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基が挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
チオキサントン化合物としては、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,3−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−シクロヘキシルチオキサントン、4−シクロヘキシルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、n−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、n−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリドが例示できる。これらの中でも、入手容易性や硬化性の観点から、チオキサントン、2,3−ジエチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−シクロヘキシルチオキサントン、4−シクロヘキシルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、及び、4−イソプロピルチオキサントンが好ましく、2−イソプロピルチオキサントン、及び、4−イソプロピルチオキサントンがより好ましい。
成分D−1の含有量は、インク組成物全体の0.1〜5.0重量%が好ましく、0.5〜3.0重量%がより好ましい。
<(成分D−2)ビスアシルホスフィン化合物>
(成分D−2)ビスアシルホスフィン化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、式(D−2)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0005620892
(式(D−2)中、R1E、R2E及びR3Eはそれぞれ独立に、メチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
ビスアシルホスフィン化合物としては、公知のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が使用できる。例えば、特開平3−101686号公報、特開平5−345790号公報、特開平6−298818号公報に記載のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。
具体例としては、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−クロロフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−クロロ−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
これらの中でも、ビスアシルホスフィン化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819:チバ・ジャパン(株)製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドなどが好ましい。
成分D−2の含有量は、インク組成物全体の2〜7重量%が好ましく、3〜6重量%であることがより好ましい。
本発明における成分Dの好ましい態様は、成分D−1を含有することであり、より好ましくは成分D−1と成分D−2の両者を含有することである。
本発明における成分Dの総含有量は、インク組成物全体の0.01〜10.0重量%であることが好ましく、1.0〜8.0重量%であることがより好ましく、2.0〜6.0重量%であることが更に好ましい。
上記範囲であると、成分A〜成分Cと組み合わせて使用することにより、インク画像の膜硬度、高温時の延伸性、及びインク流れ耐性に優れるインクジェットインク組成物が得られる。
本発明のインク組成物は、成分D−1及びD−2の重合開始剤以外のその他の重合開始剤を含んでもよい。その他の重合開始剤としては、モノアシルホスフィン化合物、α−ヒドロキシケトン、α−アミノアルキルケトン、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、及び、炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。
上記重合開始剤の詳細については、当業者に公知であり、例えば、特開2009−185186号公報の段落0090〜0116に記載されている。
(成分E)連鎖移動剤
本発明のインク組成物は、(成分E)連鎖移動剤を含有することが好ましい。
連鎖移動剤とは、連鎖重合反応で成長中のポリマー鎖からラジカルを受け取り、ポリマーの伸長を止めるが、ラジカルを受け取った連鎖移動剤はモノマーを攻撃して再び重合を開始させることができる官能基である連鎖移動性基を有する化合物である。連鎖移動性基としては、例えば、チオール基、ジスルフィド基、フェノール基、及び、アリル基などが挙げられる。
本発明のインク組成物において好ましく用いられる成分Eの連鎖移動性基としては、チオール基、ジスルフィド基、及び、アリル基が好ましく、チオール基、及び、ジスルフィド基がより好ましく、チオール基が特に好ましい。
成分Eにおける連鎖移動性基は、1種単独で有していても、2種以上を有していてもよい。
成分Eにおける連鎖移動性基の数は、1以上であり、1〜6であることがより好ましく、1分子内に連鎖移動性基を複数個有する場合が好ましく、2〜6であることが更に好ましく、2〜4であることが特に好ましい。
成分Eとしては、式(S)で表される基を有する化合物がより好ましい。
Figure 0005620892
(式(S)中、波線部分は、結合位置を表す。)
式(S)中、波線部分は式(S)で表される基を有する化合物の母核となる有機残基との結合位置を表す。
前記有機残基(母核)は、脂肪族基、芳香族基、複素環基、又はこれらを組み合わせた基が例示でき、いずれも置換基を有していてもよい。また、脂肪族基、芳香族基、又は複素環基は、単結合で結合されても、−O−、−S−、−CO−、−NH−、−SO2−、及び−SO−並びにこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた二価の連結基を介して結合されてもよい。
以下に、上記の有機残基(母核)の化学構造について、詳述する。
脂肪族基の炭素原子数は、1〜60であることが好ましく、1〜30であることがより好ましく、1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが最も好ましい。脂肪族基は、二重結合又は三重結合を有していてもよい。脂肪族基は、環状構造又は分岐を有していてもよい。
芳香族基は、べンゼン環又はナフタレン環からなることが好ましく、ベンゼン環からなることが更に好ましい。
複素環基は、3員乃至10員の複素環を有することが好ましく、4員乃至8員の複素環を有することが更に好ましく、5員又は6員の複素環を有することが最も好ましい。複素環の複素原子は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子であることが好ましい。複素環には、脂肪族環、芳香族環又は他の複素環が縮合又はスピロ結合していてもよい。複素環の例には、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロチオフェン環、ジオキサン環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、フラン環、チオフェン環及びイソシアヌル環が含まれる。それらの中でもイソシアヌル環が最も好ましい。
脂肪族基、芳香族基及び複素環基の置換基の例には、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例、塩素原子)、シアノ基、アミノ基、置換アミノ基、複素環基、アシル基及びアシルオキシ基が含まれる。置換アミノ基の置換基は、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。芳香族基及び複素環基は、アルキル基を置換基として有していてもよい。
ただし、上記の置換基として、メルカプト基又はこれを含有する基は含まない。
以下に前記母核の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、母核にメルカプト含有基が結合する位置〔式(S)中の波線部分〕は*により示す。
Figure 0005620892
前記有機残基は、付加重合又は重縮合により得られる構造単位を含むことができ、例えば、オリゴビニル基又はポリビニル基が例示できる。成分Eは、分子量が10,000以下の低分子であることが好ましい。後に詳しく説明する。
本発明に用いられる成分Eの具体例を以下に挙げるが、これらに限定されない。
1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ジチオエリスリトール、2,3−ジメルカプトサクシン酸、1,2−ベンゼンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、3,4−ジメルカプトトルエン、4−クロロ−1,3−ベンゼンジチオール、2,4,6−トリメチル−1,3−ベンゼンジメタンチオール、4,4’−チオジフェノール、2−ヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,2’−(エチレンジチオ)ジエタンチオール、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3−メルカプトプロポキシフェニルプロパン)等の2個のメルカプト基を有する化合物、1,2,6−ヘキサントリオールトリチオグリコレート、1,3,5−トリチオシアヌル酸、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート等の3個のメルカプト基を有する化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート等の4個以上のメルカプト基を有する化合物が挙げられる。これらの多官能チオール化合物には、市販のものとして、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(いずれも淀化学(株)製)等がある。
上記の例示化合物の他に、特開2009−262370号公報の段落0033〜0035に記載された化合物もまた、本発明に使用できる。
これらの化合物には、1,2−ベンゼンジメタンチオール、o−,m−あるいはp−キシレンジチオール、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、2−(ジメチルアミノ)−1,3−プロパンビスチオール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール、等の2官能チオール化合物、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリヒドロキシエチルトリイソシアヌール酸トリスチオプロピオネート、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート等の3個以上の重合性官能基を有し、3官能チオール化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)等の4官能チオール化合物等が挙げられる。
本発明に使用する成分Eとして、これらのチオール基(メルカプト基ともいう。)を複数個有する化合物(多官能チオール化合物ともいう。)が好ましく挙げられるが、市販のものとして、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(カレンズMTBD1)(商標)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(カレンズMTPE1)(商標)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(カレンズMTNR1)(商標)(いずれも昭和電工(株)製)や、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(TMMP)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)(DPMP)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)(いずれも堺化学工業(株)製)等がある。
好ましい具体例を化学構造式で以下に示した。いくつかの化合物は、実施例でも使用した。
Figure 0005620892
本発明に使用する成分Eの分子量は特に限定されるものではないが、100〜10,000が好ましく、200〜5,000がより好ましく、200〜1,000が特に好ましい。上記の分子量範囲であると、揮発性又は臭気を抑え、溶解性又は相溶性に優れる。
本発明のインク成物中の成分Eの含有量は、インク組成物全重量の0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5重量%である。また、これらの成分Eは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
<着色剤>
本発明のインク組成物は、形成された画像部の視認性を向上させるため、好ましくは着色剤を含有する。着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤としては、特に顔料が好ましい。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
本発明に使用できる顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤又はマゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド3(「Pigment Red 3」ともいう。)、5、19、22、31、38、42、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、202、208、216、226、257、C.I.ピグメントバイオレット3(「Pigment Violet 3」ともいう。)、19、23、29、30、37、50、88、C.I.ピグメントオレンジ13(「Pigment Orange 13」ともいう。)、16、20、36、青又はシアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1(「Pigment Blue 1」ともいう。)、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、22、27、28、29、36、60、緑顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7(「Pigment Green 7」ともいう。)、26、36、50、黄顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1(「Pigment Yellow 1」ともいう。)、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94、95、97、108、109、110、120、137、138、139、150、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193、黒顔料としては、C.I.ピグメントブラック7(「Pigment Black 7」ともいう。)、28、26、白色顔料としては、C.I.ピグメントホワイト6(「Pigment White 6」ともいう。)、18、21などが目的に応じて使用できる。
着色剤は、インク組成物に添加された後、適度に当該インク組成物内で分散することが好ましい。着色剤の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
着色剤は、インク組成物の調製に際して、各成分と共に直接添加してもよい。また、分散性向上のため、あらかじめ溶剤又は本発明に使用する重合性化合物のような分散媒体に添加し、均一分散あるいは溶解させた後、配合することもできる。
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。すなわち、溶剤を含まないことが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、最も粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。着色剤はインク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
なお、インク組成物中において固体のまま存在する顔料などの着色剤を使用する際には、着色剤粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、更に好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができるので好ましい。
インク組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.01〜30重量%であることが好ましい。
<分散剤>
本発明のインク組成物は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
高分子分散剤としては、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERBYK−111、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−182(BYKケミー社製);EFKA4010、EFKA4046、EFKA4080、EFKA5010、EFKA5207、EFKA5244、EFKA6745、EFKA6750、EFKA7414、EFKA745、EFKA7462、EFKA7500、EFKA7570、EFKA7575、EFKA7580(エフカアディティブ社製);ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ(株)製);ソルスパース(SOLSPERSE)2000、3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、22000、24000、26000、28000、32000、36000、39000、41000、71000などの各種ソルスパース分散剤(日本ルーブリゾール(株)製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123((株)ADEKA製);イオネットS−20(三洋化成工業(株)製);ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)(楠本化成(株)製)が挙げられる。
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.05〜15重量%であることが好ましい。
<その他の成分>
本発明のインク組成物は、必要に応じて、前記各成分以外に、界面活性剤、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、塩基性化合物等を含んでいてもよい。これらその他の成分としては、公知のものを用いることができ、例えば、特開2009−221416号公報に記載されているものが挙げられる。
また、本発明のインク組成物は、保存性、及び、ヘッド詰まりの抑制という観点から、重合禁止剤を含有することが好ましい。
重合禁止剤の含有量は、本発明のインク組成物の全重量に対し、200〜20,000ppmであることが好ましい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤や、ヒンダードアミン系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
(インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、印刷物、加飾シート、及び、インモールド成形方法)
<インクジェット記録方法>
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用として好適に使用される。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用として被記録媒体(支持体、記録材料、樹脂シート等)上に吐出し、被記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性放射線を照射し、インクを硬化して画像を形成する方法である。 本発明のインクジェット記録方法において、被記録媒体は樹脂シートであることが特に好ましい。
より具体的には、本発明のインクジェット記録方法は、(a1)樹脂シート上に、本発明のインク組成物を吐出する工程、及び、(b1)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とする。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(a1)及び(b1)工程を含むことにより、樹脂シート上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
また、本発明の印刷物は、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物であることが好ましい。
また、本発明のインク組成物は、成形加工が施される支持体にインクジェット方式により画像を形成する際に好適に使用される。上記のインクジェット記録方法によって得られた印刷物を成形加工することにより、成形印刷物を製造することができる。
より詳細には、本発明の成形印刷物の製造方法は、(a2)本発明のインク組成物を支持体上にインクジェット方式により吐出して画像を形成する工程、(b2)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させて、前記支持体上に硬化した画像を有する印刷物を得る工程、及び、(c2)前記印刷物を成形加工する工程を含むことを特徴とする。成形加工としては、エンボス加工、真空成形加工、圧空成形加工、真空圧空成形加工、穴あけ加工、及び、インモールド成形加工が好ましい。
本発明において、被記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、フィルム状又はシート状の樹脂(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又は樹脂フィルム等が挙げられる。また、本発明における被記録媒体として、非吸収性被記録媒体が好適に使用することができる。中でも、シート状の樹脂(樹脂シート)が特に好ましい。
本発明に用いることができる支持体としての樹脂は、特に限定はないが、印刷物に成形加工等を施す場合、後述する公知の樹脂を用いることができる。
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、オレフィン系熱化塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール共重合体、ポリエステル系熱化塑性エラストマー等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン6,6等のポリアミド系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ三フッ化ビニリデン、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、ポリ四フッ化エチレン等のフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂等を例示できる。上記アクリル系樹脂は、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等の樹脂〔ただし、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを表す。〕を単体又は2種以上の混合物で用いることができる。
中でも、加飾印刷が容易なことや仕上がり成形物の諸耐性が優れている点で、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート樹脂やポリカーボネート樹脂に他樹脂をブレンドした樹脂シートが好ましく用いられる。
本発明において、成形加工時の支持体に用いる熱可塑性樹脂シートの厚み(積層体構成の場合は総厚)は、エンボス加工、真空成形、圧空成形及び真空圧空成形の原理を併用した真空圧空成形が可能な範囲の厚みの樹脂シートであれば特に限定されないが、50μm〜1,000μmのものが好ましく、70μm〜800μmのものがより好ましく、100〜500μmのものが更に好ましい。
熱化塑性樹脂シートの中から、高光沢領域、低光沢領域、及びシート厚みの厚薄を付与するためのエンボス加工適性、更に、成形印刷物を加熱軟化させて真空成形等の成形加工を行う場合には該成形加工時の熱による成形適性とエンボス加工の耐久性(エンボス消失防止)との両立性等を考慮の上、適宜選定する。透明樹脂基材シートの層構成は、単層、あるいは異種の樹脂を2層以上積層した積層体のいずれでもよい。
熱可塑性樹脂シート中には、必要に応じ適宜、添加剤を添加することができる。添加剤としては、表面光沢、融点等の熱的挙動に支障を来さない範囲で、各種添加剤を適量添加しうる。例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系ラジカル補捉剤等の光安定剤、シリコーン樹脂、ワックス等の滑剤、着色剤、可塑剤、熱安定剤、抗菌剤、防黴剤、帯電防止剤等である。
本発明において、成形印刷物は熱可塑性樹脂シートに真空成形等を施すことによって作製されるが、成形に先立って支持体にインクジェット方式により画像が形成される。画像の形成は、透明シートの裏面側(真空成形において金型に面する側)に施されるのが一般的であるが、その反対面にも画像が形成されてもよい。また場合によっては、前記反対面にのみ画像を形成することもでき、この場合には基材となる熱可塑性樹脂シートは透明である必要はない。
−加飾シート−
本発明の加飾シートは、前述の本発明に好ましく用いられる樹脂シート上に画像層が設けられる形態が好ましい形態であり、前記画像層は本発明のインクジェットインク組成物のインク硬化画像であることが好ましい。
以下にこの加飾シートの概要について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る加飾シート1及び成形品1Aの一例を模式的な断面図で示す。
図1中(1)において、加飾シート1は、樹脂シート2の上に、画像層4が設けられている。この加飾シート1はインモールド成形に使用できる。
図1中(2)において、成形品1Aは、加飾シート1と熱可塑性樹脂8が一体に成形されている。
図2は、本発明の加飾シートを使用するインモールド成形方法に用いられるインモールド成形用金型10の一例を模式的に示す断面図である。固定金型12と移動金型14により形成された空洞部16内に、樹脂シート2上に画像層4を有する加飾シート1が位置決めされ固定されている。この空洞部16にゲート18から熱可塑性樹脂を注入して加飾シートと一体に成形品が製造される。
以下にこの加飾シートの製造に使用する材料について説明する。インモールド成形については、詳細説明を後述する。
本発明に使用する被記録媒体としての樹脂シートは、加飾シートの基材を構成する。樹脂シートとしては、透明性の高い各種の合成樹脂のフィルム又はシートが好ましく使用される。合成樹脂の好ましい例としては、熱可塑性樹脂があり、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、スチレン、アクリル樹脂が代表的である。
本発明の加飾シートは、インモールド成形材料として好ましく使用される。
「インモールド成形」とは、樹脂シート上に画像を形成した加飾シートを複数の、好ましくは一対の金型により形成される空洞部の内部に挿入した後、加熱溶融した熱可塑性樹脂を前記の空洞部に射出して、加飾シートと熱可塑性樹脂とが一体に成形された製品を形成することをいう。インモールド成形では、射出成形後に金型内で樹脂シートと画像層とを分離してもよい。一方、射出成形時に金型内に固定した加飾シートと注入した熱可塑性樹脂とを一体に成形し、樹脂シートを含めた最終製品とする成形方法を、フィルムインサート成形と呼ぶこともある。
本発明の「インモールド成形」は、上位概念であり、樹脂シートを分離するインモールド成形の他にフィルムインサート成形を含むものである。
インモールド成形方法は、後に詳しく説明する。
本発明のインクジェット記録方法における(a1)及び(a2)工程には、以下に詳述するインクジェット記録装置を用いることができる。
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成しうる公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a1)工程及び成形印刷物の製造方法の(a2)における樹脂シート(支持体)へのインクの吐出を実施することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
上述したように、本発明のインク組成物のような放射線硬化型インクは、吐出されるインクを一定温度にすることが望ましいことから、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
上記のインクジェット記録装置を用いて、本発明のインク組成物の吐出は、インク組成物を、好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インクで使用される水性インクより粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インクの温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
次に、(b1)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化する工程及び、(b2)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させて、支持体上に硬化した画像を有する印刷物を得る工程、について説明する。
樹脂シート(支持体)上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、ラジカルなどの開始種を発生し、その開始種の機能にラジカル重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用されうる。活性放射線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることが更に好ましい。
また、本発明のインク組成物の、重合開始系は、低出力の活性放射線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
活性放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、LEDとして、米国特許番号第6,084,250号明細書に開示されている300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出しうるLEDが例示できる。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性放射線源はUV−LEDであり、特に好ましくは350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの樹脂シート上での最高照度は、10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
本発明のインク組成物は、このような活性放射線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、樹脂シートに着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な樹脂シートに対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法及び成形印刷物の製造方法に適用することができる。
上述したような方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な樹脂シート(支持体)に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の高い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の高いインクから順に重ねることにより、下部のインクまで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
本発明のインクジェット記録方法において、吐出する各着色インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の高い着色インク組成物から被記録媒体に付与することが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックを使用する場合には、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはホワイト→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。更に、本発明はこれに限定されず、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトのインク組成物との計7色が少なくとも含まれるインクセットを好ましく使用することもでき、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
<成形加工>
本発明のインク組成物を用いて作成された印刷物は、エンボス加工、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、又は、穴あけ加工等の成形加工適性を有する。印刷物を成形加工する装置としては、公知の装置を使用することができ、前記インクジェット記録装置と一体の装置であっても、別の装置であってもよい。
−エンボス加工−
エンボス加工は、印刷物等を図柄や文字等の任意の形状にくぼませて立体感を出す加工のことであり、例えば、ローラーやプレス機等を用いて加工することができる。
エンボス加工の一例としては、ホット・コールドプレス法が挙げられ、特開平10−199360号公報に記載の方法等を参照することができる。
ホット・コールドプレス法によるエンボス成形装置の一例を以下に示す。
該エンボス成形装置は、下部定盤(下定盤)と上部定盤(上定盤)が相互に接近離隔可能に配置されている。そして、下部定盤上にはプレート型ヒータが固定されており、上部定盤の下面にもプレート型ヒータが固定されている。これにより、支持体を加熱しながらホットプレスを行うことができる。このホットプレス機において、その下定盤上のプレート型ヒータに、所定のエンボス形状に倣う凸部を有する金型を取付け、上定盤の下面に固定されたヒータに接触するように、前記凸部に整合する形状の凹部を有する金型を取付ける。そして、画像を形成した支持体を配置し、この支持体と凹部金型との間にクッションシートを配置して、上定盤を下降させる等して上定盤と下定盤との間で支持体及びクッションシートをプレスする。このホットプレス工程における加圧力は例えば30トンであり、プレート型ヒータによる加熱温度は例えば170℃である。そして、上定盤を下定盤に押圧し、支持体及びクッションシートを金型間で挟圧し、このホットプレスを約3分間保持する。支持体は金型を介してヒータにより加熱され、熱変形により複数個の凸部が形成される。次いで、この支持体及びクッションシートを金型間に挟持したまま、ヒータを具備しない内部水冷型定盤間に配置し、例えば加圧力30トン、保持時間約3分の条件で内部水冷型定盤により押圧し、コールドプレスする。これにより、支持体はホットプレスにより熱変形した凸形状が保持され、エンボス加工を施した成形印刷物が得られる。加圧力及び加熱温度は、用いる印刷物の材質や加工形状等の条件に応じ、適宜調整することができる。
本発明のインク組成物を用いて作成した印刷物をエンボス加工する場合、20℃〜150℃の温度で行うことが好ましく、20℃〜100℃の温度で行うことがより好ましく、25℃〜60℃の温度で行うことが特に好ましい。上記温度範囲であると、画像の色味変化が少なく、型への離型製に優れる加工が可能である。
−真空成形、圧空成形、真空圧空成形−
真空成形は、画像が形成された支持体を予め熱変形可能な温度まで予熱し、これを金型へ減圧によって吸引して延伸しながら金型に圧着冷却し成形する方法であり、圧空成形は、画像が形成された支持体を予め熱変形可能な温度まで予熱し、金型の反対側から加圧して金型に圧着冷却し成形する方法である。真空圧空成形は、前記減圧及び加圧を同時に行い成形する方法である。
詳しくは高分子大辞典(丸善株式会社)p.766〜768に記載されている「熱成形」の項目及び該項目に引用されている文献を参照することができる。加工温度は支持体種、支持体によって適宜決定されるが、支持体温度が60℃〜180℃で成形加工することが好ましく、より好ましくは80℃〜160℃であり、更に好ましくは80℃〜150℃である。上記温度範囲であると、画像の色味変化が少なく、型への離型性に優れる加工が可能である。
−穴あけ加工−
穴あけ加工とは、印刷物等を図形や文字等の任意の形状に穴をあける加工であり、従来公知のプレス機等を用いた打ち抜き加工、ドリル等による穴あけ加工、レーザーによる穴あけ加工方法がある。このうち、プレス機等を用いた打ち抜き加工が同じものを数多く作る場合に適した加工方法である。
プレス機等を用いた打ち抜き加工は、金型上に設置した印刷物に打ち抜き刃を設置したプレス機を用いてせん断する方法である。
本発明のインク組成物を用いて作成した印刷物を穴あけ加工する場合、20℃〜150℃の温度で行うことが好ましく、20℃〜100℃の温度で行うことがより好ましく、25℃〜60℃の温度で行うことが特に好ましい。上記範囲であると、画像の色味変化が少なく、型への離型製に優れる加工が可能である。
<インモールド成形方法>
本発明のインモールド成形加工の方法は、複数の金型、好ましくは1対の金型、例えば対向配置された固定金型と移動金型により形成された空洞部の内壁に本発明の前記加飾シートを配置し、ゲートから前記空洞部に溶融樹脂を注入し射出成形する工程を含むことを特徴とする。
以下にこの成形方法について説明する。
本発明のインモールド成形方法における最初の必須工程は、前記複数の好ましくは1対の金型により形成された空洞部の内壁に本発明の前記加飾シートを固定する工程である。 射出成形は、射出成形機により行う。成形品を造るのに使用する金型は、例えば対向配置された固定金型と移動金型により形成され、両金型により挟まれた空洞部が形成される。なお、金型は、通常、スプル、ランナー、及び、ゲートを通じてキャビティに充填された成形材料を冷却固化させた後、自動的に金型を開いて、その成形品を取り出すように作られている。
ここで、空洞部は、キャビティとも呼ばれ、成形品の形状に該当する空間部分である。この工程は、印刷された画像層を有する加飾フィルムを金型の空洞内に位置決めして固定する工程である。加飾シートの樹脂シート上の画像層は、金型に接する側へ向けて固定しても、空洞部側へ向けて固定してもよいが、この場合に、加飾シートの画像層が空洞部の内側になるように固定するのが好ましい。
本発明の加飾シートを、予め真空成形又は圧空成形した後に、金型内に固定することもできる。この真空成形又は圧空成形により、最終的な製品の外観形状の一部に合致した形状に成形しておくことができる。この場合、最初の工程では、予め真空成形又は圧空成形した加飾シートを金型内に、好ましくは固定金型の側に、後述するゲートから射出される溶融樹脂がシート上に射出する位置に固定することになる。
真空成形又は圧空成形における加飾シートの延伸率は、加飾シートのすべての領域で200%以下であることが好ましく、150%以下であることがより好ましい。なお、多くの場合厚みのある立体を2つに分割した形状に成形する場合には、周辺部の延伸率が大きくなる傾向がある。
本発明のインモールド成形方法における2段目の必須工程は、ゲートから前記空洞部に溶融樹脂を注入し射出成形する工程である。
ここで、「ゲート」とは、射出成形用の金型において、成形材料である溶融樹脂をキャビティ内へ注入するための注入口をいう。ゲートの位置は成形する形状に適合するいくつかの候補があり、適宜選択することが好ましい。
射出成形の条件は、注入する熱可塑性樹脂の種類、成形品の形状等により適宜決定される。アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂の場合を例に採ると、シリンダー温度180〜260℃、金型温度40〜80℃、射出圧力500〜1,800kg重/cm2であることが好ましい。インモールド成形に用いられる樹脂の好ましい例としては、熱可塑性樹脂があり、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、スチレン、アクリル樹脂が代表的である。その他、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、変性ポリフェニレンエーテル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体、ポリアミド、又はこれらの2種以上からなるポリマーアロイなども使用される。中でも、ABS樹脂、ポリカーボネートが好ましい。
本発明の成形方法において、射出成形工程の後で、射出金型から製品を取り出すと、加飾された成形品が得られる。
既に述べたように、インモールド成形では、射出成形時に金型内に固定した加飾シートと注入した樹脂とを一体に成形する。
インモールド成形は、多くの分野に応用されており、家電、通信、雑貨等、広く採用される成形方法に発展してきた。近年の携帯電話の普及にも大きく貢献をし、表示ウィンドウには欠かせない技術に成長してきている。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示すものとする。
本発明で使用した素材は下記に示す通りである。
・CINQUASIA MAGENTA RT−355−D(マゼンタ顔料、BASFジャパン(株)製)
・SOLSPERSE32000(分散剤、日本ルーブリゾール(株)製)
・V−CAP(N−ビニルカプロラクタム、ISP社製)
・ポリマー1(後述の合成方法を参照)
・ポリマー2(後述の合成方法を参照)
・ポリマー3(後述の合成方法を参照)
・ポリマー6(後述の合成方法を参照)
・ポリマー9(後述の合成方法を参照)
・ポリマー15(後述の合成方法を参照)
・ポリマー21(後述の合成方法を参照)
・ポリマー27(後述の合成方法を参照)
・ポリマー33(後述の合成方法を参照)
・CN307(オリゴマー、ポリブタジエンジアクリレート、Sartomer社製)
・A−BPE−10(ビスフェノールA構造を有するジアクリレート、新中村化学工業(株)製)
・PEA(SR339、フェノキシエチルアクリレート、Sartomer社製)
・IBOA(SR506、イソボロニルアクリレート、Sartomer社製)
・Irg819(IRGACURE819、ビスアシルホスフィン系光重合開始剤、BASFジャパン(株)製)
・ITX(光重合開始剤、イソプロピルチオキサントン、シェルケミカルズジャパン(株)製)
・カレンズMT−PE1(連鎖移動剤、昭和電工(株)製)
<ポリマー1の合成>
コンデンサー及び撹拌機を備えた500mlの3つ口丸底フラスコに、FM−DA11(Mw=1,000,Chisso社製)1.1g(1mmol)、及びブレンマーGLM(日油(株)製)14.85g(93mmol)を2−ブタノン160mlに溶解したものを投入した。これに、キシリレンジイソシアナート(東京化成工業(株)製)19.4g(103mmol)とジブチル錫ジラウリレート(和光純薬工業(株)製)0.1gとを添加し、60℃にて、6時間加熱撹拌した。その後、70℃まで加熱し、2−ブタノン100mlを加え更に2時間加熱した。
次いで上記反応液へメチルアルコール50mlを添加し30分撹拌した。該反応溶液を別に用意した容器中のヘキサン3l中に撹拌しながら投入し、白色のポリマーを析出させた。このポリマーを濾別し、水で洗浄後、真空下、乾燥させることにより47gのポリマーを得た。合成された特定ポリウレタン樹脂は、前記表1中の特定ポリマー(ポリマー1)で表される構造を有した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分子量を測定したところ、重量平均分子量(ポリスチレン標準)で30,000であった。
<ポリマー2、3、6、9、15、21、27、33の合成>
ポリマー2、3、6、9、15、21、27、33の合成は、ポリマー1と同様の方法により、対応する原料を用いて合成した。対応する原料として、エチレン性不飽和基を導入するジオールには、すべてブレンマーGLMを使用した。原料のジイソシアネートとして、ポリマー2、3、6にはキシリレンジイソシアネート、ポリマー9にはジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート(東京化成工業(株)製)、ポリマー15にはトリレンジイソシアネート(日化トレーディング(株)製)、ポリマー21にはジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート(Aldrich社製)、ポリマー27には1,6ヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成工業(株)製)、ポリマー33にはイソホロンジイソシアネート(和光純薬(株)製)を使用した。ポリシロキサン構造を導入する原料として、ポリマー2、3、9、15、21、27、33にはFM−DA11(Chisso社製)、ポリマー6にはFM−0411(Chisso社製)を使用した。合成した各ポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分子量を測定したところ、重量平均分子量(ポリスチレン標準)は、表1及び表2に記載の値であった。
<マゼンタミルベースの調製>
・マゼンタ顔料:CINQUASIA MAGENTA RT−355D:30重量部
・PEA(フェノキシエチルアクリレート):60重量部
・SOLSPERSE32000:10重量部
上記の成分を撹拌し、マゼンタミルベースを得た。なお、顔料ミルベースの調製は、分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで8時間分散を行った。
<実施例1〜26、並びに、比較例1及び2>
−インク組成物の調製−
成分A〜成分E、マゼンタミルベース、及び、その他の添加剤をそれぞれ表3に示す添加量を加え混合し、高速撹拌することで実施例1〜26、並びに、比較例1及び2のインク組成物をそれぞれ得た。なお、表3で「−」は、非含有を表す。
−インクジェット画像記録−
ピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録装置を用いて、樹脂シートへの記録を行った。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に40℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、1〜10plのマルチサイズドットを600×600dpiの解像度で射出できるよう駆動した。着弾後はUV光を露光面照度1,200mW/cm2に集光し、樹脂シート上にインク組成物が着弾した0.1秒後に照射が始まるよう露光系、主走査速度及び射出周波数を調整した。また、露光時間を可変とし、露光エネルギーを照射した。紫外線ランプには、UV−LEDランプ(松下電工(株)製)を使用した。
なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
樹脂シートとして、ポリカーボネート(膜厚500μm、帝人化成(株)製、商品名:パーンライト)を用いた。
ここで、インク画像は前述のヘッドが6往復して形成されるため、最初に打適されたインクは6往復分の露光量が照射される。1往復約50mJ/cm2の露光量であるため、6往復した場合の総露光量は300mJ/cm2となる。下記の膜硬度及び打ち抜き適性評価では、この往復回数を制御することで評価を行った。
上記で作製した、実施例及び比較例のインク組成物サンプルについて、膜硬度、加熱延伸率、打ち抜き適性及びインク流れ耐性の評価を行った。各評価方法は以下の通りであり、評価結果は表3に記載した。
<膜硬度の測定>
前記インクジェット記録方法に従い、透明基材(ポリカーボネート)を被記録媒体とし、実施例及び比較例のインク組成物を用いて平均膜厚が30μmのベタ画像のインク描画を行い、そのインク画像を25℃でJIS K5600−5−4に沿って鉛筆硬度測定を行った。
硬度の基準は下記の通りである。
5:H以上
4:F
3:HB
2:B
1:2B以下
評価5が最も優れており、評価3以上が実用上問題のない範囲である。
<加熱延伸率の測定>
前記インクジェット記録方法に従い、樹脂シートとして透明基材(ポリカーボネート)に対し、実施例及び比較例のインク組成物を用いて平均膜厚が30μmのベタ画像のインク描画を行い、そのインク画像を5cm×2cmにカットし、下記延伸機械・温度条件で引っ張り、延伸率を測定した。
使用機械:テンシロン((株)島津製作所製)
条件:温度180℃、引張り速度50ミリメートル/分,破断時の長さを測定し延伸率を算出。ここで延伸率は、{(破断時の長さ−延伸前の長さ/延伸前の長さ)×100、により求めた。((例)10cmで破断した場合、{(10cm−5cm)/5cm}×100=100%延伸と算出される。)
加熱延伸性の評価基準は下記の通りである。
5:延伸率200%以上
4:延伸率150%以上200%未満
3:延伸率100%以上150%未満
2:延伸率70%以上100%未満
1:延伸率70%未満
評価5がもっとも優れており、評価3以上が実用上問題のない範囲である。
<打ち抜き適性>
前記インクジェット記録方法に従い、樹脂シートとして透明基材(ポリカーボネート)に対し、実施例及び比較例のインク組成物を用いて平均膜厚が30μmのベタ画像のインク描画を行い、インク膜を作製した。事務用パンチ機を用いて下記条件での打ち抜き試験を実施し、打ち抜き適性を目視及び光学顕微鏡観察により評価した。
使用機械:事務用パンチ機(製品名DP−23ブルー、MAX(株)製)
条件:温度25℃でインク膜を打ち抜いた。
打ち抜き適性の評価基準は下記の通りである。
5:目視及び顕微鏡観察で、全く割れた箇所がない。
4:目視で確認できないが、顕微鏡で見ると割れた箇所が2箇所以下であることが確認できた。
3:目視で確認できないが、顕微鏡で見ると割れた箇所が3箇所以上あることが確認できた。
2:パンチ穴周辺から目視で確認できるひび割れが発生していた。
1:パンチ穴周辺から5cm以上広がるひび割れが発生していた。
評価5が最も優れており、評価3以上が実用上問題のない範囲である。
<インク流れ耐性>
前記インクジェット記録方法に従い、樹脂シートとして透明基材(ポリカーボネート)に対し、実施例及び比較例のインク組成物を用いて平均膜厚が30μmのベタ画像のインク描画を行い、インク膜を作製した。
下記の射出成形用機械を用いて、加飾シートを5.5cm×5.5cmの金型の空洞部の内壁に固定して、加飾シートの画像面に向けてゲートから220℃のABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)樹脂を射出し成形した。成形品について、その際に生じたインク流れ耐性を評価した。
インク流れとは、射出成形の際、加飾シートのインク画像膜が射出された高温溶融した射出樹脂の伸縮に追従できずにインク画像が欠損する現象をいい、その欠損部分の長さを測定した。
使用した射出成形用機械:住友重機械工業(株)製SG−50
インク流れ耐性の評価基準は下記の通りである。
5:インク流れがまったく起きていない。
4:射出された箇所の画像層の画像濃度が薄くなっている。
3:射出された箇所の画像層で、インク流れが0.1〜0.5cm発生している。
2:射出された箇所の画像層で、インク流れが0.5〜5cm発生している。
1:射出された箇所の画像層で、インク流れが5cm以上発生している。
評価5がもっとも優れており、評価3以上が実用上問題のない範囲である。
Figure 0005620892
1:加飾シート
1A:成形品
2:樹脂シート
4:画像層
8:熱可塑性樹脂
10:インモールド成形用金型
12:固定金型
14:移動金型
16:空洞部
18:ゲート

Claims (21)

  1. (成分A)主鎖にウレタン結合を有し、かつ側鎖及び/又は末端にエチレン性不飽和基及びポリシロキサン構造を有する樹脂、並びに、
    (成分B)式(B)で表される化合物、を含有することを特徴とする
    インクジェットインク組成物。
    Figure 0005620892
    (式(B)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、X1及びX2はそれぞれ独立に、単結合、エーテル結合、オキシアルキレン基又はエステル結合を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、単結合、メチレン基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ポリ(エチレンオキシ)基又はポリ(プロピレンオキシ)基を表し、Zは式(Z−1)で表される基、式(Z−2a)で表される基、式(Z−2b)で表される基、又は、式(Z−2a)で表される基及び式(Z−2b)で表される基を2以上組み合わせた基を表す。)
    Figure 0005620892
    (式(Z−1)、式(Z−2a)及び式(Z−2b)中、波線部分は式(B)中のY1及びY2との結合位置を表し、rはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。)
  2. 成分Bの含有量が、インク組成物の全重量に対し、0.5〜10重量%である、請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
  3. (成分C)エチレン性不飽和化合物を更に含有する、請求項1又は2に記載のインクジェットインク組成物。
  4. 成分Cが、単官能エチレン性不飽和化合物である、請求項3に記載のインクジェットインク組成物。
  5. 前記単官能エチレン性不飽和化合物の含有量が、成分A〜成分Cの全重量に対して、80重量%以上である、請求項4に記載のインクジェットインク組成物。
  6. 前記単官能エチレン性不飽和化合物が、(成分C1)N−ビニル化合物及び/又は(成分C2)炭素数が5〜20でかつ脂肪族炭化水素環骨格を有する単官能エチレン性不飽和化合物を含有する、請求項4又は5に記載のインクジェットインク組成物。
  7. 成分C2が、インク組成物の全重量に対し、5重量%以上である、請求項6に記載のインクジェットインク組成物。
  8. 成分C1が、N−ビニルカプロラクタムである、請求項6又は7に記載のインクジェットインク組成物。
  9. 成分C2が式(a−1)〜式(a−12)で表される化合物の少なくとも1つを含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
    Figure 0005620892
  10. 成分Aの含有量が、インク組成物の全重量に対し、0.1〜5重量%である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
  11. 成分Aが、式(A)で表される樹脂を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
    Figure 0005620892
    (式(A)中、A1及びA3はそれぞれ独立に、炭素数5〜15のアルキレン基、芳香族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基及び脂肪族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基よりなる群から選ばれた二価の連結基を表し、A2は側鎖にポリシロキサン構造を有する二価の連結基を表し、A4は側鎖にエチレン性不飽和基を有する二価の連結基を表す。m及びnは、m:n=100:1〜1:100の関係を満たす正数を表す。)
  12. (成分D)重合開始剤を更に含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
  13. 成分Dの含有量が、インク組成物の全重量に対し、0.01〜10重量%である、請求項12に記載のインクジェットインク組成物。
  14. 成分Dが、チオキサントン化合物を含む、請求項12又は13に記載のインクジェットインク組成物。
  15. (成分E)連鎖移動剤を更に含有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
  16. 成分Eの含有量が、インク組成物の全重量に対し、0.1〜10重量%である、請求項15に記載のインクジェットインク組成物。
  17. 成分Eが、式(S)で表される基を有する化合物である、請求項15又は16に記載のインクジェットインク組成物。
    Figure 0005620892
    (式(S)中、波線部分は、結合位置を表す。)
  18. (a1)樹脂シート上に、請求項1〜17のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物をインクジェット方式により吐出する工程、及び、
    (b1)吐出されたインクジェットインク組成物に活性光線を照射して、前記インクジェットインク組成物を硬化させる工程、を含むことを特徴とする
    インクジェット記録方法。
  19. 前記活性光線の光源が、発光ダイオードである、請求項18に記載のインクジェット記録方法。
  20. 樹脂シート上に請求項1〜17のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物の硬化画像層を設けたことを特徴とする
    加飾シート。
  21. 複数の金型により形成された空洞部の内壁に請求項20に記載の加飾シートを配置し、ゲートから前記空洞部内に溶融樹脂を注入し射出成形する工程を含むことを特徴とする
    インモールド成形方法。
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