JP5620055B2 - タイヤ製造工程の管理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、グリーンタイヤの予測断面形状及び該グリーンタイヤの加硫に使用されるタイヤ金型の断面形状を利用してタイヤ製造工程を管理する方法に関し、更に詳しくは、グリーンタイヤの予測断面形状及びタイヤ金型の断面形状に基づいて故障原因を効果的に究明し、タイヤ製造故障の発生を未然に防ぐことを可能にしたタイヤ製造工程の管理方法に関する。
タイヤの製造故障は、タイヤサイズや補強構造や断面形状によって、その発生部位や頻度が異なっている。そのため、タイヤサイズや補強構造や断面形状が種々異なるタイヤについて、一定の理論に基づいて故障対策を行うことが強く求められている。
ところで、タイヤ製造において、タイヤ構成部材の物性条件及び成形条件に基づいてグリーンタイヤの断面形状を予測する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術においては、カーカスの物性条件及び成形条件に基づいて特定の工程でのカーカスの断面形状を算出し、そのカーカスの断面形状を基準として他の構成部材をカーカスの内外に幾何学的に配置することにより、グリーンタイヤの予測断面形状を求めている。
このようにグリーンタイヤの予測断面形状を求めることにより、設計段階で適切なベントホール位置を決定することが可能になり、また、グリーンタイヤの予測断面形状は故障原因の究明にも利用可能である。しかしながら、上記文献においては、グリーンタイヤの予測断面形状に基づいて故障原因を効果的に究明する方法を教えていない。
特開2006−168294号公報
本発明の目的は、グリーンタイヤの予測断面形状及びタイヤ金型の断面形状に基づいて故障原因を効果的に究明し、タイヤ製造故障の発生を未然に防ぐことを可能にしたタイヤ製造工程の管理方法を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明のタイヤ製造工程の管理方法は、タイヤ構成部材の物性条件及び成形条件に基づいて算出されるグリーンタイヤの予測断面形状からタイヤ外表面の座標点をタイヤ径方向に等間隔で抽出する一方で、該グリーンタイヤの加硫に使用されるタイヤ金型の断面形状からタイヤ成形面の座標点を前記タイヤ外表面の座標点と同一間隔で抽出し、前記タイヤ外表面の座標点から前記タイヤ成形面の座標点までのタイヤ軸方向の距離から前記タイヤ外表面の各座標点における前記タイヤ外表面と前記タイヤ成形面との間隙の大きさをグリーンタイヤよりもタイヤ金型の方が大きい場合に正値をとりタイヤ金型よりもグリーンタイヤの方が大きい場合に負値をとるベクトル値として求め、該ベクトル値からなる間隙の大きさをタイヤ製造工程におけるタイヤの故障原因の指標として用い、前記間隙の大きさに基づいて故障原因の予測又は特定を行うタイヤ製造工程の管理方法であって、
複数種類のタイヤについて前記間隙の大きさを求める一方で、これら複数種類のタイヤのサイド部における任意部位の故障率を求め、前記タイヤ外表面の各座標点における間隙の大きさと故障率との相関係数を求め、これら間隙の大きさと故障率との相関性が高い部位を特定し、間隙の大きさと故障率との相関係数の絶対値が0.55以上である部位において、相関係数が正の値である場合は間隙の大きさが大きくならないように、相関係数が負の値である場合は間隙の大きさが小さくならないように製造工程を管理することを特徴とするものである。
本発明では、グリーンタイヤの予測断面形状からタイヤ外表面の座標点をタイヤ径方向に等間隔で抽出する一方で、タイヤ金型の断面形状からタイヤ成形面の座標点をタイヤ外表面の座標点と同一間隔で抽出し、タイヤ外表面の座標点からタイヤ成形面の座標点までのタイヤ軸方向の距離からタイヤ外表面の各座標点におけるタイヤ外表面とタイヤ成形面との間隙の大きさを求めることにより、その間隙の大きさに基づいてタイヤ製造工程における故障原因の予測や特定を視覚的に簡単に行うことができる。
本発明における「間隙の大きさ」とは、タイヤ外表面とタイヤ成形面との寸法差のベクトル値を意味し、グリーンタイヤよりもタイヤ金型の方が大きい場合に正値をとり、タイヤ金型よりもグリーンタイヤの方が大きい場合に負値をとる。
本発明において、サイズや断面形状が異なるタイヤも同等に比較するためにタイヤ外表面の座標点を等間隔で抽出することが必要であるが、その精度を高めるためにグリーンタイヤの径方向の全範囲において100点以上の座標点を設定することが好ましい。つまり、より多くの座標点を抽出することにより、間隙の大きさをより正確に検出することができる。
本発明では、複数種類のタイヤについて間隙の大きさを求める一方で、これら複数種類のタイヤの任意部位の故障率を求め、タイヤ外表面の各座標点における間隙の大きさと故障率との相関係数を求め、これら間隙の大きさと故障率との相関性が高い部位を特定することが必要である。間隙の絶対値が大きいと、それが故障原因となる傾向があるが、必ずしも間隙の大きさと故障率とが比例関係にあるわけではない。そこで、間隙の大きさと故障率との相関性が高い部位を特定することにより、故障原因の予測や特定を更に効果的に行うことができる。その場合、複数種類のタイヤは、サイズ、断面形状及び補強構造の少なくとも1つが共通するものであることが好ましい。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1はタイヤ構成部材の物性条件及び成形条件に基づいて算出されるグリーンタイヤの予測断面形状を示す図である。図1に示すように、グリーンタイヤTは、ビード部に配置されるビードコア1と、一対のビードコア1に跨がるように装架されるカーカス層2と、カーカス層2の内面に配置されるインナーライナー層3と、ビードコア1上に配置されるビードフィラー4と、ビードコア1を包み込むように配置されるチェーファー層5と、トレッド部に埋設されるベルト層6と、トレッド部に配置されるトレッドゴム層7と、サイド部に配置されるサイドゴム層8と、ビード部に配置されるリムクッションゴム層9とを備えている。
これらビードコア1、カーカス層2、インナーライナー層3、ビードフィラー4、チェーファー層5、ベルト層6、トレッドゴム層7、サイドゴム層8、リムクッションゴム層9からなるタイヤ構成部材は、いずれも曲げ剛性等の物性条件が把握されたものである。そのため、これらタイヤ構成部材の物性条件、及び、これらタイヤ構成部材を用いてグリーンタイヤを成形する際の成形条件に基づいてグリーンタイヤTの断面形状を予測することが可能である。具体的な予測方法としては、特開2006−168294号公報に記載される手法を採用することが可能であるが、これと同様にグリーンタイヤTの断面形状を予測可能であれば、他の手法を採用しても良い。
なお、図1に示すグリーンタイヤTの予測断面形状は、加硫機でグリーンタイヤTがシェーピングされた状態での予測断面形状であるが、異なるタイヤについて条件を統一する限りにおいて、任意の状態での予測断面形状を採用することが可能である。
図2は図1のグリーンタイヤの加硫に使用されるタイヤ金型の断面形状を示す図である。図2に示すように、タイヤ金型Mは、トレッド部からビード部にわたって延長するタイヤ成形面11を備えている。タイヤ金型Mは、その具体的な構造が限定されるものではなく、2つ割りタイプ又はセクショナルタイプのいずれであっても良い。
図3は図1のグリーンタイヤの予測断面形状から抽出したタイヤ外表面の座標点に基づいて描画された輪郭線及び図2のタイヤ金型の断面形状から抽出したタイヤ成形面の座標点に基づいて描画された輪郭線を示す図である。ここで、X軸はタイヤ軸方向の位置を示し、Y軸はタイヤ径方向の位置を示す。上述したグリーンタイヤTの予測断面形状は多数の座標点の集合体であるが、その予測断面形状からタイヤ外表面の座標点をタイヤ径方向に等間隔で抽出し、隣り合う座標点を直線で結んで輪郭線L1を描画すると図3の実線のようになる。一方、上述したタイヤ金型Mの断面形状は多数の座標点の集合体であるが、その断面形状からタイヤ成形面の座標点をタイヤ外表面の座標点と同一間隔で抽出し、隣り合う座標点を直線で結んで輪郭線L2を描画すると図3の破線のようになる。
図3において、タイヤ外表面の各座標点での間隙の大きさを精度良く検出するために、グリーンタイヤTの径方向の全範囲において100点以上、より好ましくは、300点以上の座標点が設定されている。座標点が100点未満であると座標点の間隔が広過ぎるため正確な間隙情報が得られなくなる場合がある。
図4は図3におけるタイヤ外表面とタイヤ成形面との間隙の大きさを示す図である。図4において、縦軸はタイヤ径方向の位置を示し、下側がビード側であり、上側がトレッド側である。図3に示す座標点を利用し、タイヤ径方向の同一高さ位置におけるタイヤ成形面(輪郭線L2)のX座標値からタイヤ外表面(輪郭線L1)のX座標値を減じた値を求め、それをタイヤ径方向の各高さ位置にプロットすることにより図4が得られる。間隙の大きさは、グリーンタイヤTよりもタイヤ金型Mの方が大きい部位では正値をとり、タイヤ金型MよりもグリーンタイヤTの方が大きい部位では負値をとる。
図4において、間隙の絶対値が大きい部位、例えば、間隙の大きさがプラス方向に大きくて型閉め時にグリーンタイヤTとタイヤ金型Mとが大きく離間する部位や、間隙の大きさがマイナス方向に大きくて型閉め時にグリーンタイヤTがタイヤ金型Mに対して強く押しつけられる部位では、製造故障が比較的多く発生する傾向がある。従って、このような間隙の大きさをタイヤ製造工程における故障原因の指標として用いることにより、故障原因の予測や特定を視覚的に簡単に行うことができる。
上述のように間隙の大きさをタイヤ製造工程における故障原因の指標とするにあたって、間隙の絶対値が大きいと、それが故障原因となる傾向があるが、必ずしも間隙の大きさと故障率とが比例関係にあるわけではない。そこで、共通の構成を有する複数種類のタイヤについて間隙の大きさを求める一方で、これら複数種類のタイヤの任意部位の故障率を求め、各座標点における間隙の大きさと故障率との相関係数を求め、これら間隙の大きさと故障率との相関性が高い部位を特定することは、故障原因の予測や特定を行うに際して極めて有意義である。
図5は複数種類のタイヤの各座標点における間隙の大きさと故障率との相関係数を示す図である。図5において、縦軸はタイヤ径方向の位置を示し、下側がビード側であり、上側がトレッド側である。図5を得るには、複数種類のタイヤについて図4のような間隙の大きさに関するデータを作成する一方で、これら複数種類のタイヤの任意部位(例えば、サイド部)における故障率を求める。そして、複数種類のタイヤについて各座標点での間隙の大きさと故障率との相関係数を求める。例えば、複数種類のタイヤについて最もビード側の座標点での間隙の大きさと故障率との相関係数を求め、その値を図5の最も下側の位置にプロットする。このような計算を最もビード側の座標点から最もトレッド側の座標点まで個々に行うことにより、図5を描画することができる。
図5において、相関係数が正である場合、間隙が大きいほどサイド故障率が増加することを意味し、相関係数が負である場合、間隙が大きいほどサイド故障率が減少することを意味する。特に、統計学的に見て相関係数の絶対値が0.55以上である場合、間隙の大きさと故障率との相関性が高いと判断することができる。図5においては、タイヤ径方向の外側部分(A部)において相関係数が正の値で大きくなっているので、この部分では間隙の大きさを小さくすることが望ましく、そうでない場合は故障原因になり易いと判断することができる。一方、図5においては、ビード部分(B部)において相関係数が負の値で大きくなっているので、この部分では間隙の大きさを大きくすることが望ましく、そうでない場合は故障原因になり易いと判断することができる。
上述のような判断は共通の構成を有する複数種類のタイヤについて好ましく適用することができる。ここで、共通の構成を有する複数種類のタイヤとは、サイズ、断面形状及び補強構造の少なくとも1つが共通するものである。共通の構成を有するタイヤでは間隙の大きさと故障率との相関性について同様の傾向が存在する。そのため、過去に製造されたタイヤに関するデータを蓄積することにより、それと共通の構成を有する新規なタイヤの製造故障を予測することが可能になる。
図5のようなデータを作成する場合、10種類以上のタイヤについて、各座標点における間隙の大きさと故障率との相関係数を求めることが好ましい。つまり、共通の構成を有する多種類のタイヤからデータを採取することにより、間隙の大きさと故障率との相関性が高い部位を精度良く特定することができる。
上述したタイヤ製造工程の管理方法によれば、グリーンタイヤの予測断面形状から抽出したタイヤ外表面の座標点及びタイヤ金型の断面形状から抽出したタイヤ成形面の座標点を利用してタイヤ外表面とタイヤ成形面との間隙の大きさを求め、その間隙の大きさに基づいてタイヤ製造工程における故障原因の予測や特定を視覚的に簡単に行うことができる。従って、実際にタイヤを製造する以前のシミュレーションの段階で故障原因を予測し、その故障原因が無くなるようにタイヤ設計を行うことが可能になる。また、実際のタイヤ製造工程において製造故障が発生した場合、その故障原因を速やかに特定し、適切な処置をとることが可能になる。これにより、タイヤの生産効率を大幅に向上することが可能になる。
本発明において、タイヤ構成部材の物性条件及び成形条件に基づいて算出されるグリーンタイヤの予測断面形状を示す図である。 図1のグリーンタイヤの加硫に使用されるタイヤ金型の断面形状を示す図である。 図1のグリーンタイヤの予測断面形状から抽出したタイヤ外表面の座標点に基づいて描画された輪郭線及び図2のタイヤ金型の断面形状から抽出したタイヤ成形面の座標点に基づいて描画された輪郭線を示す図である。 図3におけるタイヤ外表面とタイヤ成形面との間隙の大きさを示す図である。 複数種類のタイヤの各座標点における間隙の大きさと故障率との相関係数を示す図である。
符号の説明
T グリーンタイヤ
M タイヤ金型
P 座標点
L1 タイヤ外表面の輪郭線
L2 タイヤ成形面の輪郭線

Claims (3)

  1. タイヤ構成部材の物性条件及び成形条件に基づいて算出されるグリーンタイヤの予測断面形状からタイヤ外表面の座標点をタイヤ径方向に等間隔で抽出する一方で、該グリーンタイヤの加硫に使用されるタイヤ金型の断面形状からタイヤ成形面の座標点を前記タイヤ外表面の座標点と同一間隔で抽出し、前記タイヤ外表面の座標点から前記タイヤ成形面の座標点までのタイヤ軸方向の距離から前記タイヤ外表面の各座標点における前記タイヤ外表面と前記タイヤ成形面との間隙の大きさをグリーンタイヤよりもタイヤ金型の方が大きい場合に正値をとりタイヤ金型よりもグリーンタイヤの方が大きい場合に負値をとるベクトル値として求め、該ベクトル値からなる間隙の大きさをタイヤ製造工程におけるタイヤの故障原因の指標として用い、前記間隙の大きさに基づいて故障原因の予測又は特定を行うタイヤ製造工程の管理方法であって、
    複数種類のタイヤについて前記間隙の大きさを求める一方で、これら複数種類のタイヤのサイド部における任意部位の故障率を求め、前記タイヤ外表面の各座標点における間隙の大きさと故障率との相関係数を求め、これら間隙の大きさと故障率との相関性が高い部位を特定し、間隙の大きさと故障率との相関係数の絶対値が0.55以上である部位において、相関係数が正の値である場合は間隙の大きさが大きくならないように、相関係数が負の値である場合は間隙の大きさが小さくならないように製造工程を管理することを特徴とするタイヤ製造工程の管理方法。
  2. 前記グリーンタイヤの径方向の全範囲において100点以上の座標点を設定したことを
    特徴とする請求項1に記載のタイヤ製造工程の管理方法。
  3. 複数種類のタイヤは、サイズ、断面形状及び補強構造の少なくとも1つが共通するもの
    であることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ製造工程の管理方法。
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