JP5617766B2 - 炭材の改質処理設備 - Google Patents
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Description
NOxを低減する手段としては、例えば、特許文献1に、CaO含有量が5〜50質量%であるCaO−FexO系複合酸化物を主成分とする触媒によるNOxの除去技術が開示されている。
しかし、上記したCaO−FexO系複合酸化物は、石灰系原料と鉄鉱石を溶融成形して製造されるため、通常の焼結で副原料として使用される石灰系原料に比べて高価だった。
ここで、石灰系原料とコークスを造粒する方法としては、例えば、特許文献2に記載の技術が開示されている。具体的には、粒径0.3mm以下の含有量が50質量%以上のコークスに、生石灰と消石灰の1種又は2種(以下、単に石灰という)を配合し、その後、造粒し養生する方法である。なお、配合する石灰の平均粒度は0.5〜3mmである。
(1)焼結原料に用いる炭材の表面に、カルシウム成分を36質量%以上含有する被覆物を、前記炭材に対する質量%で2質量%以上30質量%未満の割合で被覆した表面被覆炭材を製造し、該表面被覆炭材と焼結配合原料を混合機で混合して前記焼結原料にするための炭材の改質処理設備であって、
前記カルシウム成分を含有する固形分の濃度が10質量%以上50質量%未満の石灰スラリーと、前記炭材とを撹拌し、該石灰スラリー中の固形分で前記炭材の表面を被覆する撹拌機を有し、しかも、前記石灰スラリー中の固形分には、製鋼スラグ微粉及び炭酸カルシウムのいずれか一方又は双方が含まれていることを特徴とする炭材の改質処理設備。
(2)焼結原料に用いる炭材の表面に、カルシウム成分を36質量%以上含有する被覆物を、前記炭材に対する質量%で2質量%以上30質量%未満の割合で被覆した表面被覆炭材を製造し、該表面被覆炭材と焼結配合原料を混合機で混合して前記焼結原料にするための炭材の改質処理設備であって、
前記カルシウム成分を含有する固形分の濃度が10質量%以上50質量%未満の石灰スラリーと、前記炭材とを撹拌し、該石灰スラリー中の固形分で前記炭材の表面を被覆する撹拌機を有し、しかも、前記表面被覆炭材の含有水分量が9.5質量%以上19質量%未満となるように、a)前記撹拌機内に供給する前記石灰スラリー量、及びb)前記石灰スラリー中の固形分の濃度のいずれか一方又は双方を調整することを特徴とする炭材の改質処理設備。
(3)焼結原料に用いる炭材の表面に、カルシウム成分を36質量%以上含有する被覆物を、前記炭材に対する質量%で2質量%以上30質量%未満の割合で被覆した表面被覆炭材を製造し、該表面被覆炭材と焼結配合原料を混合機で混合して前記焼結原料にするための炭材の改質処理設備であって、
前記カルシウム成分を含有する固形分の濃度が10質量%以上50質量%未満の石灰スラリーと、前記炭材とを撹拌し、該石灰スラリー中の固形分で前記炭材の表面を被覆する撹拌機を有し、しかも、前記混合機の上流側に、製造した前記表面被覆炭材を貯留可能な貯留槽を設けたことを特徴とする炭材の改質処理設備。
従って、NOxの発生を経済的に抑制できる。
ここで、製鋼スラグ微粉や炭酸カルシウムには、NOx抑制に有効なカルシウム成分が多く含まれているため、この製鋼スラグや炭酸カルシウムを表面被覆炭材の製造に利用することで、焼結時に発生する排ガス中のNOxを経済的に低減できると共に、資源の有効利用も図れる。
また、表面被覆炭材の含有水分量が9.5質量%以上19質量%未満となるように、撹拌機への石灰スラリーの供給量、及び/又は、石灰スラリーの固形分濃度を調整することで、炭材の表面への最適厚みの被覆物の被覆効率を向上できる。このように、表面被覆炭材の含有水分量を調整するのは、撹拌機で、石灰スラリー中の水酸化カルシウムの結晶が、炭材の表面に選択的に付着し易く、炭材の表面への被覆物の付着強度を向上できることによる。
更に、混合機の上流側に、製造した表面被覆炭材を貯留可能な貯留槽を設けることで、表面被覆炭材を混合機へ供給する前で、表面被覆炭材を一時的に貯留できる。これにより、例えば、表面被覆炭材を製造する撹拌機の操業を停止しなければならない状態が発生しても、貯留槽に貯留された表面被覆炭材を、混合機へ安定供給できる。
まず、本発明の炭材の改質処理設備に想到した経緯について説明する。
焼結で生成(発生)するNOxは、炭材中の窒素が酸化したものであり、図1に示されるように、1000℃以下では、燃焼温度が低下するほど生成量が多くなることが確認されている。この図1の縦軸のNOx転換率は、式(1)により算出したものである。
{NOx転換率(mol%)}
=100×{NOx発生量(mol)}/{炭材中の窒素量(mol)} ・・・(1)
従って、NOx生成を抑制するためには、炭材を極力、高温燃焼させることが重要である。
しかしながら、CaO−FexO系複合酸化物は、石灰系原料と鉄鉱石を溶融成形して製造されるため、通常の焼結で副原料として使用される石灰系原料に比べて高価である。
図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る炭材の改質処理設備(以下、単に改質処理設備ともいう)10は、焼結原料に用いる炭材(例えば、粉コークス)の表面に、カルシウム成分を36質量%以上含有する被覆物を、炭材に対する質量%で2質量%以上30質量%未満の割合で被覆した表面被覆炭材を製造し、この表面被覆炭材と焼結配合原料を混合機11で混合して焼結原料にするための設備であり、石灰スラリーを利用して、被覆物を炭材の表面に被覆する撹拌機12を有している。以下、詳しく説明する。
この撹拌機12は、石灰スラリーと炭材を均一に撹拌し混合できるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ドラムミキサーやピンミキサー、あるいはダウミキサーやレディゲミキサー等を使用できる。
なお、撹拌機12は、石灰スラリーを撹拌機12内へ供給する構成となっているが、特に、図2に示すように、撹拌機12内の上方に、石灰スラリーを下方へ噴霧する噴霧器13を、撹拌機12の長手方向(炭材の搬送方向)に沿って2以上の複数(1つでもよい)設けることが好ましい。この噴霧器13には、例えば、長手方向に渡って多数の噴霧孔(ノズル)が設けられた配管を使用できる。
これにより、撹拌機12内に炭材を装入し、更に撹拌機12内の上方から石灰スラリーを噴霧して撹拌することで、石灰スラリー中の固形分を炭材の表面に効果的に被覆して、被覆物を形成できる。
このスラリー化槽14は、石灰スラリーの原料と水とを混合し撹拌可能な構成であれば、特に限定されるものではなく、例えば、大容量の貯留用タンク内に、回転可能な撹拌翼が設けられた構成の槽を使用できる。
これにより、均質な濃度の石灰スラリーを製造し、更に、それを維持することが可能となり、石灰スラリーを安定して撹拌機12内に供給することができる。
また、図4に示す炭材の改質処理設備10bのように、撹拌機12の上流側に、粉コークスを撹拌機12内に供給するコンベア(搬送手段)16を設け、このコンベア16で搬送中の粉コークスに、撹拌槽15で製造したスラリーを、噴霧器を介して上方から散布してもよい。
この混合機11は、上記した表面被覆炭材の製造に用いられる原料の一部又は全部を除いた焼結鉱の配合原料(即ち、焼結配合原料)と、製造した表面被覆炭材とを混合し造粒する装置であり、例えば、ドラムミキサーやその他の混合機等を使用できる。なお、混合機11には、撹拌機12で製造した表面被覆炭材を混合機11内部に装入するコンベア(装入装置)17が、表面被覆炭材の装入位置が混合機11内の下流側領域にくるように取り付けられ、表面被覆炭材を造粒途中の焼結配合原料に供給できる構成になっている。
一般の焼結機においては、焼結配合原料の混合度を高めるため、2つ以上の混合機を直列もしくは並列、あるいは直列と並列を組み合わせた構成に配置した例が多い。この場合、コンベア17を最も下流側に位置する混合機に設置し、この混合機に表面被覆炭材を装入して混合処理を行う。
また、混合機11の上流側、例えば、撹拌機12と混合機11(コンベア17)の間に、貯留槽(図示しない)を設けることもできる。この貯留槽は、撹拌機12、更には上記した造粒機で製造した表面被覆炭材を、一時的に貯留可能な槽である。なお、貯留槽は、撹拌機12がトラブルで停止した際に、安定した成分の原料を焼結機へ供給するためのバッファーでもある。
本発明では、改質処理設備10を用いて、焼結で使用する炭材の全部もしくは一部に、カルシウム成分を含有する被覆物を被覆する処理を行った後、混合機11を用いて、表面被覆炭材と、それ以外の焼結配合原料とを混合する。そして、この混合原料を焼結機において焼成し、焼結鉱を製造する。
図2に示すように、貯留ホッパー18から生石灰を、また貯留ホッパー19から製鋼スラグ微粉(製鋼スラグの微粉)を、予め水分が供給されたスラリー化槽14へそれぞれ供給した後、撹拌して石灰スラリーを製造する。
ここでは、石灰スラリーの原料として、生石灰と製鋼スラグ微粉を使用したが、これに限るものではなく、生石灰の代わりに消石灰、又は生石灰と消石灰の双方を使用することもでき、一方、製鋼スラグ微粉の代わりに炭酸カルシウム(CaCO3)、又は製鋼スラグ微粉と炭酸カルシウムの双方を使用することもできる。更に、製鋼スラグ微粉(及び/又は炭酸カルシウム)を使用することなく、生石灰(及び/又は消石灰)のみでもよい。
生石灰については、粒度が小さいほど、また、活性度が高いものほど、水和反応性が高く、短時間での消化が可能であることから、特に粒度の下限ならびに活性度の上限を規定するものではないが、工業的に入手できる生石灰の粒度の下限は0.1mm程度であり、活性度の上限についても400mL程度である。
なお、生石灰の純度は、高純度であることが好ましいが、例えば、85質量%以上、好ましくは90質量%以上、更に好ましくは93質量%以上とするのがよい。一方、上限は、上記した理由から100質量%でもよい。
また、消石灰は、消化の必要がなく、平均粒度は特に限定されるものではないが、一般的に市販されているものは、JIS−R9001に規定されている特号消石灰(CaO:72.5質量%以上)、1号消石灰(CaO:70質量%以上)、2号消石灰(CaO:65質量%以上)であり、いずれも600μm以下の粒度であることから、これらをそのまま使用することが可能である。これらの消石灰は、水との親和性が高いため、水中では20μm以下の微粒子に解離して分散し、均一な濃度のスラリーとなることが知られている。
更に、炭酸カルシウムとしては、石灰石を粉砕して製造した重質炭酸カルシウムや、水酸化カルシウム水溶液を炭酸化して製造した沈降炭酸カルシウムなど、炭酸カルシウム成分が90質量%以上のものが好ましいが、これに限らず、貝殻の粉砕物などを混合して炭酸カルシウム成分を50質量%以上90質量%未満、含有するように調整したものであってもよい。
なお、上記した製鋼スラグならびに炭酸カルシウムの粒度については、スラリーとして水中に分散させるという観点から、100μm以下、好ましくは20μm以下、更には、市販の沈降炭酸カルシウムのような5ミクロン以下の微粒子とすることが好ましい。
石灰スラリー中の固形分の濃度が10質量%未満の場合、NOx低減に必要な厚みの被覆物層を形成させることができない。一方、石灰スラリー中の固形分の濃度が50質量%以上の場合、石灰スラリーの水分量が少な過ぎて粘性が高くなるため、撹拌過程において石灰スラリーの拡散が阻害され、炭材の表面に均等な被覆物層を形成できない。
即ち、石灰スラリー中の固形分の濃度を10質量%以上50質量%未満(好ましくは、下限を15質量%、更には25質量%、上限を45質量%、更には40質量%)にすることで、撹拌機12内において、炭材と石灰スラリーが効率的に接触し、炭材の表面に均等な厚みの被覆物を形成できる。
なお、石灰スラリー中の固形分の濃度は、50gの石灰スラリーを採取し、乾燥機を用いて105℃の雰囲気内で4時間乾燥を行った後、その乾燥残渣を固形分として秤量し、その百分率、即ち、{(固形分質量)/(石灰スラリー質量)}×100を、固形分濃度(%)として求めた。
上記した石灰スラリー中の固形分には、前記したように、製鋼スラグ微粉及び炭酸カルシウムのいずれか一方又は双方が含まれていることが好ましい。
ここで、石灰スラリー中の固形分に含まれるものが炭酸カルシウムの場合、この炭酸カルシウムはカルシウム成分以外の成分が少ないことから、例えば、炭酸カルシウムが固形分中の水酸化カルシウムを除く全部でもよく、またその一部でもよく、特にその含有量が制限されるものではない。
このため、固形分中の製鋼スラグ微粉量を、0を超え50質量%未満とすることが好ましいが、下限を5質量%、更には10質量%とすることが更に好ましく、上限を45質量%、更には40質量%とすることが更に好ましい。
水酸化カルシウムの濃度が50質量%未満の場合、炭材表面への固形分の付着強度が弱くなり、ベルトコンベア等で搬送する途中、特に、乗り継ぎ部で炭材の表面を覆った被覆物の一部が剥がれ落ちることがある。
この固形分中の水酸化カルシウムの濃度の上限は、上記した理由から100質量%でもよいが、消化に要する時間を考慮すれば、90質量%、更には85質量%程度である。
なお、水酸化カルシウム量は、50gの石灰スラリーを採取し、塩酸(例えば、4N−塩酸)で中和滴定を行い、消費した塩酸量から、下記の式で算出した。
水酸化カルシウム濃度(質量%)
={(水酸化カルシウム量(mol)×74)/固形分質量(g)}×100
水酸化カルシウム量(mol)=消費した塩酸量(mol)×1/2
このとき、石灰スラリーの添加位置は、必ずしも撹拌機12中である必要はなく、例えば、図4に示すように、撹拌機12へ炭材を搬送し投入するコンベア16上で、石灰スラリーを供給あるいは噴霧することもできる。また、図3に示すように、撹拌槽15で石灰スラリーと製鋼スラグを混合し撹拌した後、このスラリーを、噴霧器13を介して撹拌機12内に噴霧することもできる。
この炭材は、通常、焼結原料として使用している粒径5mm以下のものでもよいが、その中の粒径0.5mm未満の微粉炭材の累積質量を20質量%以下にした粗粒炭材を使用することが好ましく、更には11.0質量%以下とするのが望ましい。一方、粒径0.5mm未満の炭材の累計質量の下限値は、上記した理由から特に規定していないが、篩網による篩分け限界を考慮すれば5質量%である。
更に、粒径0.5mm以上5mm以下の炭材の累積質量は、40質量%以上であることが望ましく、70質量%以上であることが特に望ましい。
ここで、改質処理前の炭材の水分量とは、炭材がもともと含有する水分であり、乾燥状態の炭材100に対する質量%(外掛け)である。
ここで、製品水分量が9.5質量%未満の場合、水分量が少な過ぎて被覆物の炭材への接着強度が弱くなり、被覆物が炭材から容易に剥離するため、NOx低減効果が低下する。一方、製品水分量が19質量%以上の場合、水分量が多過ぎて被覆物同士が塊となり易く、被覆物の炭材への均一な被覆が困難となるため、NOx低減効果が低下する。
以上のことから、表面被覆炭材の製品水分量を9.5質量%以上19質量%未満としたが、下限を12.0質量%とし、上限を16.0質量%とすることが好ましい。
ここで、図5(A)、(B)に、表面被覆炭材の顕微鏡観察を行った結果の一例を示す。図5(A)は、製品水分量を上記した範囲内に調整した表面被覆炭材であるため、被覆物の層厚が上記した適正厚みになっていることが分かった。一方、図5(B)は、製品水分量が上記した範囲の上限値を超えたため、被覆物の層厚が上記した適正厚みの上限値を超えた厚みになっていることが分かった。
図6に示すように、コークス(炭材)の表面に被覆物を形成しない場合(被覆物なし)、NOx転換率は30mol%程度であったが、コークス表面に被覆物を500μm被覆することで、NOx転換率を28.6mol%以下程度まで低減できることが分かった。
以上のことから、固形分の濃度を10質量%以上50質量%未満とした石灰スラリーを使用して、表面被覆炭材の製品水分量を9.5質量%以上19質量%未満に調整することが好ましい。
この被覆物は、消石灰(固形物)のみで構成されることが好ましいが、例えば、未消化の生石灰や微粉の炭材等が含まれていてもよい。なお、消石灰は、バインダーとなって、炭材表面に密着した被覆物を形成するため、例えば、焼結配合原料との混合時や、焼結機への原料装入までの搬送過程において、炭材表面の被覆物の脱離を抑制できる。
被覆物として粉体状の石灰系原料を用いた場合には、炭材と被覆物の異種粉体を混合し混練する処理に時間がかかるうえ、被覆物同士が付着した状態で造粒してしまうなど、炭材上の被覆物層厚を均一化しにくい問題がある。
石灰スラリーは、主成分である水酸化カルシウム粒子が均一に分散したスラリーとなっているので、炭材とスラリーを簡易に撹拌して混合する操作を行うだけで、炭材の表面に均一な被覆物を形成させることができる。更に、スラリーとすることで、任意の微粉粉体を均一に混合する処理も容易に行える。
即ち、付着力が低いため被覆物としては適さない製鋼スラグや炭酸カルシウムなどのカルシウム含有原料を、微粉化して予め石灰スラリーへ混合することで、任意の比率で配合して活用することが可能となる。
ここで、被覆物のカルシウム成分が36質量%未満の場合、溶剤量が少な過ぎて、周囲は鉄鉱石濃度が高い状態であるため、炭材表面での溶融反応が遅くなり、炭材の燃焼を促進させる効果が小さくなる。
また、被覆物には水酸化カルシウムが含まれ、しかもこの水酸化カルシウムの付着力が充分に高いため、この場合、石灰スラリー中に付着力の弱いカルシウム含有原料(製鋼スラグ微粉、炭酸カルシウム)を混合して使用できる。このとき、水酸化カルシウムの含有濃度を50質量%以上とすることが望ましい。しかし、上記したカルシウム含有原料を使用することなく、水酸化カルシウムの含有濃度を100質量%とすることが特に望ましい。
ここで、被覆物の炭材に対する質量%が2質量%未満の場合、炭材表面全体を包囲する十分な被覆物(被覆層)の形成が難しくなり、炭材表面の一部が露出したり、また被覆物層厚が薄くなり過ぎて、低温域での大気中の酸素の遮断によるNOx低減効果が得られなくなる。一方、炭材表面の被覆物量が30質量%以上の場合、被覆物層厚が厚くなり過ぎて粉コークスの燃焼性が悪化し、焼結鉱の強度や焼結成品の歩留りが低下する。
このため、炭材表面の被覆物を、炭材に対する質量%で2質量%以上30質量%未満としたが、下限を5質量%、また上限を20質量%とすることが望ましい。
図7から明らかなように、コークスに対する被覆物量を2質量%以上とすることで、被覆物量の増加と共に、NOx転換率を低減できることを確認できた。なお、被覆物量が30質量%以上になっても、NOx転換率は低減できているが、上記したように、焼結鉱の強度や焼結成品の歩留りが低下することから好ましくない。
また、被覆物中のカルシウム成分量を、36質量%から54質量%(36質量%以上)へ増やすことで、NOx転換率を低減できることも確認できた。
焼結配合原料を混合し造粒する前に、表面被覆炭材を添加した場合、焼結配合原料の混合時や造粒時に、炭材表面の被覆物が崩壊し剥離してしまう。そこで、この剥離を避けるため、造粒途中(終盤)の焼結配合原料に、表面被覆炭材を供給するのがよい。
なお、炭材表面からの被覆物の剥離を更に抑制するには、表面被覆炭材を造粒後の焼結配合原料に供給することが好ましい。
この表面被覆炭材の供給量は、例えば、焼結機へ装入する全焼結原料の0.5質量%以上4.5質量%以下程度であり、低減するNOx量に応じて調整することができる。
上記した表面被覆炭材は、炭材の燃焼初期である低温領域で、炭材表面が被覆物で覆われているため、被覆物内の炭材の燃焼を抑えてNOxの発生を抑制する。
従って、本発明の炭材の改質処理設備を使用することで、低温領域でのNOxの発生を経済的に抑制できる。
準備した焼結原料は、鉄鉱石、石灰石、生石灰、蛇紋岩、返鉱、及び粉コークス(炭材)である。なお、鉄鉱石は82.85質量%、石灰石は13.1質量%、生石灰は1.00質量%、蛇紋岩は3.05質量%であり、この合計量(100)に対して、返鉱を15.0質量%、粉コークスを4.2質量%、それぞれ添加する構成にしている。
ここで、表面被覆炭材を製造にするに際し、上記した焼結原料の粉コークス4.2質量%のうちの3.8〜4.2質量%分を使用した。また、炭材の表面に被覆物を被覆するに際して使用した石灰スラリー中の固形分の濃度については、0又は8〜54質量%の範囲で変更した。
使用した焼結鍋試験装置は、直径300φ、層高600mmの鍋形状であり、この鍋に焼結原料を装入して、点火炉で焼結原料中の炭材に90秒間点火し、焼結試験を行った。このとき、鍋の下方に設置した風箱より、吸引ブロアーで15kPaの一定負圧で排気を行い、焼結燃焼に伴う排気ガスの成分を分析した。
また、焼結配合原料の混合は、直径1000mmのドラムミキサーを用いて6分間行った。一方、各種の調整条件で製造した表面被覆炭材は、上記したドラムミキサーでの混合開始から5分45秒後に、上記した混合後の焼結配合原料に添加し、その混合処理を15秒間行うこととした。
表面被覆炭材の製造条件を、表1〜表3にそれぞれ示す。また、製造した表面被覆炭材を焼結配合原料に混合した焼結試験における焼結生産率、成品歩留、及びNOx転換率を、表4に示す。
また、比較例2、3は、石灰スラリー中の固形分(消石灰とその他の固形分)の濃度を適正範囲外(10質量%未満又は50質量%以上)にした表面被覆炭材を製造し、特に比較例2は、被覆物量を適正範囲外(炭材に対する質量%で2質量未満)にし、比較例4は、被覆物中のCa量を適正範囲外(36質量%未満)にした表面被覆炭材を製造し、これらをそれぞれ焼結配合原料と共に混合処理して焼結させた結果である。
一方、実施例1〜17は、固形分の濃度を適正範囲内(10質量%以上50質量%未満)にした石灰スラリーを使用し、炭材の表面に、Ca量を適正範囲内(36質量%以上)にした被覆物を、炭材に対する質量%で2質量%以上30質量%未満の割合で被覆した表面被覆炭材を製造し、これを焼結配合原料と共に混合処理して焼結させた結果である。
実施例5〜8に示すように、撹拌機での滞留時間の増加と共に、NOx転換率が低下することが分かった。これは、撹拌時間の増加に伴い、炭材の表面への被覆物の被覆を均一にできたことに起因すると考えられる。
なお、ここでは、撹拌機での滞留時間を、最適範囲(1分以上15分未満)の上限を超える15分とした場合に、NOx転換率を最も低減できたが、設備費と運転電力の上昇を考慮すれば、上記した最適範囲内が好ましい。
撹拌中に炭材に石灰スラリーを噴霧したこと以外、略同一の条件である実施例7(撹拌前に炭材に石灰スラリーを散布)と比較して、NOx転換率を低減できた。これは、撹拌中に炭材に石灰スラリーを噴霧したことで、撹拌中の炭材の表面に満遍なく石灰スラリーを噴霧でき、その結果、炭材の表面に均等に被覆物を被覆できたことに起因すると考えられる。
実施例10〜12に示すように、固形分中の水酸化カルシウム量の減少と共に、NOx転換率が上昇したが、NOx転換率は29mol%程度以下に低減できた。このように、NOx転換率が上昇したのは、水酸化カルシウム量の減少に伴って、炭材表面への固形分の付着強度が低下し、炭材の表面を覆った固形物が、搬送途中で剥がれ落ちたことに起因すると考えられる。
なお、ここでは、石灰スラリー中の固形分に含まれる水酸化カルシウム量を、実施例10では29.0質量%(固形分の82.9質量%)、実施例11では22.4質量%(固形分の64.0質量%)、実施例12では14.3質量%(固形分の40.9質量%)としたが、最適範囲内(50質量%以上)とすることで、NOx転換率を最大26.2mol%程度まで低減できた。
炭酸カルシウムを使用したこと以外、略同一の条件である実施例11(製鋼スラグ微粉を使用)と比較して、NOx転換率が低下した。これは、実施例11で使用した製鋼スラグ微粉と比較して、炭酸カルシウムの方が、カルシウム成分以外の成分が少ないことに起因すると考えられる。
また、実施例14は、石灰スラリー中の固形分の一部に、製鋼スラグ微粉と炭酸カルシウムの双方を使用した結果である。
実施例14に示すように、実施例13の条件に、更に製鋼スラグ微粉を加えた条件とすることで、実施例13と比較して、NOx転換率が低下した。これは、固形分中にカルシウム成分がより多く含まれたことに起因すると考えられる。なお、製鋼スラグを使用することで、資源の有効利用も図れる。
実施例15〜17に示すように、表面被覆炭材の製品水分量を適正範囲内(9.5質量%以上19質量%未満)とすることで、NOx転換率を27.8mol%程度まで低減でき、特に、実施例16に示すように、表面被覆炭材の製品水分量を最適範囲内(12.0質量%以上16.0質量%以下)とすることで、NOx転換率を26.4mol%程度まで低減できた。
パレット幅5.5m、ストランド長120m、焼結面積660m2の焼結機を用い、層厚720mm、吸引負圧18.3kPaの操業条件において、炭材の一部を粉コークスから表面被覆炭材に振り替え操業評価試験を行った。焼結原料の条件としては、ブレンド鉱石64.4質量%、石灰石10.8質量%、生石灰1.2質量%、ドロマイト2.8質量%、及び返鉱20.8質量%の焼結配合原料をベースに、炭材3.8質量%(外枠配合)中の3.6質量%を表面被覆炭材に置き換えた。
撹拌機12にダウミキサーを用い、固形分の濃度が40質量%の石灰スラリーと、炭材とを撹拌し、石灰スラリー中の固形分で炭材の表面を被覆して、表面被覆炭材を製造した。この際における固形分は、水酸化カルシウムが82.9質量%、製鋼スラグ微粉が10質量%となるように調整した。また、製造された表面改質炭材は、直列2系統に配置されたドラムミキサーのうち、後段のドラムミキサー(混合機11)の出側から3mの位置に、投入用ベルトコンベア17で供給した。
以上のことから、本発明の炭材の改質処理設備を使用することで、低温領域でのNOxの発生を経済的に抑制できることを確認できた。
また、前記実施の形態においては、表面被覆炭材の被覆物が、石灰スラリー中の固形分である水酸化カルシウム、更には製鋼スラグ微粉や炭酸カルシウムを含有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。つまり、被覆物がカルシウム成分を36質量%以上含有していれば、製鋼スラグ微粉や炭酸カルシウム以外に、粉鉄鉱石やダスト、その他の原料が含まれていてもよい。
Claims (6)
- 焼結原料に用いる炭材の表面に、カルシウム成分を36質量%以上含有する被覆物を、前記炭材に対する質量%で2質量%以上30質量%未満の割合で被覆した表面被覆炭材を製造し、該表面被覆炭材と焼結配合原料を混合機で混合して前記焼結原料にするための炭材の改質処理設備であって、
前記カルシウム成分を含有する固形分の濃度が10質量%以上50質量%未満の石灰スラリーと、前記炭材とを撹拌し、該石灰スラリー中の固形分で前記炭材の表面を被覆する撹拌機を有し、しかも、前記石灰スラリー中の固形分には、製鋼スラグ微粉及び炭酸カルシウムのいずれか一方又は双方が含まれていることを特徴とする炭材の改質処理設備。 - 焼結原料に用いる炭材の表面に、カルシウム成分を36質量%以上含有する被覆物を、前記炭材に対する質量%で2質量%以上30質量%未満の割合で被覆した表面被覆炭材を製造し、該表面被覆炭材と焼結配合原料を混合機で混合して前記焼結原料にするための炭材の改質処理設備であって、
前記カルシウム成分を含有する固形分の濃度が10質量%以上50質量%未満の石灰スラリーと、前記炭材とを撹拌し、該石灰スラリー中の固形分で前記炭材の表面を被覆する撹拌機を有し、しかも、前記表面被覆炭材の含有水分量が9.5質量%以上19質量%未満となるように、a)前記撹拌機内に供給する前記石灰スラリー量、及びb)前記石灰スラリー中の固形分の濃度のいずれか一方又は双方を調整することを特徴とする炭材の改質処理設備。 - 焼結原料に用いる炭材の表面に、カルシウム成分を36質量%以上含有する被覆物を、前記炭材に対する質量%で2質量%以上30質量%未満の割合で被覆した表面被覆炭材を製造し、該表面被覆炭材と焼結配合原料を混合機で混合して前記焼結原料にするための炭材の改質処理設備であって、
前記カルシウム成分を含有する固形分の濃度が10質量%以上50質量%未満の石灰スラリーと、前記炭材とを撹拌し、該石灰スラリー中の固形分で前記炭材の表面を被覆する撹拌機を有し、しかも、前記混合機の上流側に、製造した前記表面被覆炭材を貯留可能な貯留槽を設けたことを特徴とする炭材の改質処理設備。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭材の改質処理設備において、前記石灰スラリー中の固形分には、水酸化カルシウムが50質量%以上含まれていることを特徴とする炭材の改質処理設備。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭材の改質処理設備において、前記撹拌機内に、前記炭材の表面に前記石灰スラリーを噴霧する噴霧器を、該撹拌機の長手方向に1又は複数設けたことを特徴とする炭材の改質処理設備。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭材の改質処理設備において、前記撹拌機の上流側に、前記石灰スラリーの原料と水とを混合し撹拌して該石灰スラリーを製造するためのスラリー化槽を設けたことを特徴とする炭材の改質処理設備。
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