JP5615632B2 - 表面導電性積層シート - Google Patents

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Description

本発明は、IC等の電子部品を包装するキャリアテープ等の包装資材に適した、熱可塑性樹脂からなる表面導電性積層シートに関する。
電子機器や自動車などあらゆる工業製品の中間製品の包装容器にはシートを加熱成形して得られる真空成形トレイ、エンボスキャリアテープなどが使用されている。そして静電気を嫌うICや、ICを有する各種の部品の包装容器用シートとして、ポリスチレン系樹脂若しくはABS系樹脂からなる基材層に、カーボンブラック等の導電性フィラーを含有するポリスチレン系樹脂を積層したシートが使用されている(例えば特許文献1〜3参照)。特に基材層としてABS系樹脂からなる表面導電性シートは、その機械特性が優れていることからよく使用されている。しかしながら、近年IC等の電子部品の小型化にともなって、キャリアテープ等の性能として、原反シートをテープの幅にスリットする際や、エンボス成形の際にスプロケットホール等を打ち抜く際にその断面に発生する毛羽やバリが発生することが、大きな解決すべき課題としてクローズアップされてきた。
このような課題を解決する目的で、例えば基材層または表面導電層にポリオレフィンや、SBS、SEBS等のブロック共重合体を配合することが提案されている(特許文献4、5参照)。
特開平9−76422号公報 特開平9−76425号公報 特開平9−174769号公報 国際公開第2006/030871号 特開2003−170547号公報
スリットやスプロケットホールの打ち抜き等で発生する毛羽や抜きバリは、前記のような改善策をとることによって改善される場合もあるが、スリットの方法や、エンボス成形に用いる成形機によって、改善が殆ど認められない場合があった。
本発明は、ABS系樹脂を基材層とする表面導電性の積層シートにおいて、スリットの方法やエンボス成形の際の打ち抜きで、どのような成形機に対しても抜きバリの発生が極めて少ないシートおよびそのシートを用いたキャリアテープ等の成形体を提供することを課題とする。
本発明者等は、これら課題について鋭意検討し、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を基材とした多層構成の積層シートで、各層を特定の樹脂組成物で構成すること、特に基材層を構成する樹脂として特定のグラフトゴムを有する樹脂を用いることによって、前記課題のすべてを解決したシートが得られることを見出し本発明に至った。
即ち本発明は、ABS樹脂を主成分とする基材層(A層)と、少なくともその片側の表面が表面層(B層)で構成され、前記ABS樹脂中のグラフトゴムが、アクリロニトリル(An)が5〜15質量%、ブタジエン(Bd)が40〜60質量%、およびスチレン(St)が55〜25質量%の組成比からなり、且つグラフト率が100〜140%である表面導電性積層シートである。 前記グラフトゴムのグラフト鎖の重量平均分子量(Mw)が、18,000〜56,000であること、更にグラフトゴムの体積平均粒子径が0.3〜2.0μmであることが好ましい。
そしてA層を構成するABS樹脂としては、前記グラフトゴム20〜40質量%、およびアクリニトリルとスチレンの共重合体(AS共重合体)60〜80質量%からなる樹脂であることが好ましい。そしてこのAS共重合体は、アクリロニトリル(An)20〜40質量%、スチレン(St)が60〜80質量%の組成比からなり、重量平均分子量が80,000〜120,000であることが好ましい。一方で表面層(B層)は、スチレン系樹脂とアセチレンブラックを含有する樹脂組成物からなることが好ましい。更に、本発明は、前記の表面導電性積層シートを用いたキャリアテープおよび電子部品搬送用トレイのような電子部品包装容器を包含する。
本発明によって、ABS系樹脂を基材層とする表面導電性積層シートにおいて、スリットの方法やエンボス成形の際の打ち抜きで、どのような成形機に対しても抜きバリが極めて少ないシートおよびそのシートを用いたキャリアテープ等の成形体を提供することが出来る。
図1は実施例および比較例のシートの打ち抜きを行った際の、抜きバリ状態の評価見本である。
以下本発明について詳細に説明する。
本発明の表面導電性積層シートは、前記のようにABS樹脂を主成分とする基材層と、少なくともその片側の表面が導電性を有する表面層で構成される。
基材層に用いるABS樹脂は、ジエン系ゴム−芳香族ビニル単量体−シアン化ビニル単量体の3元共重合体を主成分とするもので、代表的にはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンの3元共重合体を主成分とする樹脂又は樹脂組成物を意味する。その具体例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体とアクリロニトリル−スチレン2元共重合体の混合物が挙げられる。本発明では、これらの中でアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体を用いるのが好ましく、更に、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体とアクリロニトリル−スチレン2元共重合体の混合物を用いるのがより好ましい。これらの重合体は、前記の単量体単位に加えて、スチレン系単量体の微量成分として、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロロスチレン、ビニルナフタレン等の単量体を含有するものも含まれる。またシアン化ビニル単量体の微量成分としては、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリル等の単量体を含有するものも含まれる。以下の記載では微量成分についての記載は省略するが、本願発明の効果を損なわない範囲で、これらの成分を含有するものも包含する。
前記のいずれのタイプのABS樹脂を用いる場合でも、ABS樹脂は、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)またはスチレン−ブタジエンブロック共重合体やその水添物等からなる分散相にスチレンとアクリロニトリルがグラフト重合した、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体であるグラフトゴムと、アクリロニトリルとスチレンの2元共重合体(AS共重合体)の連続相からなる。本発明において該グラフトゴムは、後述する方法によって、ABS樹脂から分離することができるものを指す。
グラフトゴムとAS共重合体の含有比率は、グラフトゴム20〜40質量%とAS共重合体60〜80質量%の範囲が一般的である。
このグラフトゴムとしては、グラフトゴムを100質量%としたとき、後述する方法にて測定した各成分の含有量が、アクリロニトリル(An)が5〜15質量%、ブタジエン(Bd)が40〜60質量%、およびスチレン(St)が55〜25質量%の組成比のものを用いる。
各成分の含有率が前記の範囲内のときに各種の機械特性のバランスも良好で、後述する評価法で良好なシートの打ち抜き性が得られる。Bdの含有率がこの範囲より小さい場合、得られる表面導電性積層シートの耐衝撃強度(デュポン衝撃強度)、耐折強度および破断伸びが低くなり十分な機械特性が得られない。またこの範囲より大きい場合は、降伏強度等の強度特性が低下する。そしていずれの場合においても得られたシートを打ち抜いたときのバリの発生が大きくなる。
そして本発明は、このグラフトゴムのグラフト率が100〜140%であることが重要である。グラフト率とは、詳細な測定方法は後述するが、基本的にはグラフトゴム中のゴム分とそれにグラフトしているAnとStからなるグラフト鎖の質量比率であって、グラフト率が100%未満ではバリが多く発生し、グラフト率が140%を超えるグラフトゴムの合成は困難であり、シート強度も大きく低下する。このグラフトゴムのグラフト率を調整する方法は、厳密には各種のABS樹脂の製造方法によっても異なるが、重合開始剤の添加量や連鎖移動剤の添加量および添加時期、重合中の温度制御等の一般的な重合条件の調整で調整することが出来る。また、グラフト率がこの範囲のグラフトゴムを含有するABS樹脂は、市場で入手することもできる。
更に、グラフトゴムのグラフト鎖の重量平均分子量(Mw)は、18,000〜56,000であることが好ましい。Mwが18,000未満ではデュポン衝撃強度、耐折強度が低下する場合があり、56,000を超えると後述する本発明の導電シートの打ち抜きの際に、バリの発生が増加する場合がある。即ち、グラフトゴムのグラフト枝とAS共重合体との相互作用が増加することが、シートの打ち抜きの際のバリの発生の要因の一つとなっていることを示すものである。
また、グラフトゴムの体積平均粒径は、0.3〜2.0μmであることが好ましい。0.3μm未満ではデュポン衝撃強度、耐折強度が低下する場合があり、2.0μmを超えるとバリの発生が増加する恐れがある。
一方で、連続相を形成する前記のAS共重合体としては、アクリロニトリル(An)20〜40質量%、スチレン(St)が80〜60質量%を主成分とする共重合体を用いることが、シートの押出成形性の観点から好ましい。
またAS共重合体は、Mwが80,000〜120,000であることが好ましい。Mwが80,000未満ではデュポン衝撃強度、および耐折強度が低下する場合があり、120,000を超えるとバリの発生が増加する恐れがある。
本発明の基材層には、前記の樹脂成分以外に、溶融押出時の流動性を損なわない範囲でアセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックを添加することができる。アセチレンブラックの場合は、樹脂成分100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲の添加で、シートを包装容器に成形した際にシート厚みが薄くなり成形品のコーナー部等が透けてしまうといった問題点を解決することが可能である。
本発明の導電シートは、少なくともその片面に導電性の熱可塑性樹脂組成物からなる表面層を有する。表面層は、その表面抵抗率が10^2〜 1 0^1 0 Ω/□ であることが好ましい。表面抵抗率がこの範囲よりも高いと静電気による電子部品の破壊を抑制することが困難となり、表面抵抗率がこの範囲よりも低いと外部から静電気等による電気の流入を容易にし、電子部品が破壊してしまう可能性がある。導電層としては例えば導電性塗料による塗工層や、熱可塑性樹脂に導電性フィラーを練りこんだものが挙げられるが、中でも、ポリスチレン系樹脂とカーボンブラックを含有する導電層が成形性等において好ましい。ここでポリスチレン系樹脂とは、スチレンの単独重合体あるいは共重合体であって、例えば一般用ポリスチレン又は共役ジエン重合体成分を含有する耐衝撃性ポリスチレン及びこれらのブレンド物を指す。また導電層には滑剤、可塑剤、加工助剤などの各種添加剤や無機フィラーを添加することができる。
表面層に用いるカーボンブラックは、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等であり、好ましくは比表面積が大きく、樹脂への添加量が少量で高度の導電性が得られるものという観点から、特にアセチレンブラックが好ましい。その添加量はポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対して5〜5 0質量部 が好ましい。5 質量部未満では静電気による電子部品の破壊を防止するために十分な表面抵抗率が得られず5 0 質量部を超えると流動性が低下するとともに得られるシートの機械的強度も低下してしまう。
本発明の導電シートを製造する方法は特に限定されるものではなく一般的な方法で製造することができる。例えば、基材層と表面層を構成する原料をそれぞれ個別の押出機に供給し、マルチマニホールドを有する多層Tダイを用いた押出成形、またはフィードブロックを用いたTダイ法押出成形によって好適に製造される。またこの種の積層シートの製造方法では、シート押出工程で発生する所謂「耳」の部分等を粉砕し、基材層に戻すのが一般的であり、積層シートのデュポン衝撃強度、耐折強度やバリに大きな影響の無い範囲で戻すことができる。
本発明の導電シートから真空成形、圧空成形、プレス成形等公知のシートの成形方法(熱成形)を利用することにより、キャリアテープ(エンボスキャリアテープ)、およびトレイ等の種々の形状の電子部品包装容器を得ることができる。本発明の導電シートを用いることにより、導電シートをスリットする際や、前記の電子部品包装容器の成形で、スプロケットホール等を打ち抜く際に、その断面に毛羽やバリの発生が極めて少ない包装容器を得ることができる。特にキャリアテープのエンボス成形において極めて有力である。そしてこれらの成形によって、耐折強度、及び耐衝撃強度のいずれも良好なエンボスキャリアテープを製造するのに極めて有用である。
エンボスキャリアテープは、前記の成形方法で形成された収納部に電子部品を収納した後に、カバーテープにより蓋をしてリール状に巻き取ったキャリアテープ体として、電子部
品の保管および搬送に用いる。
キャリアテープ体とは、キャリアテープに電子部品を収納したものである。包装する電子部品としては特に限定はなく、例えばIC、LED(発光ダイオード)、抵抗、液晶、コンデンサー、トランジスター、圧電素子レジスター、フィルター、水晶発振子、水晶振動子、ダイオード、コネクター、スイッチ、ボリュウム、リレー、インダクタ等がある。また、これら電子部品を使用した中間製品や最終製品の包装にも用いることができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
[樹脂特性の評価方法]
本発明の実施例および比較例で用いたABS樹脂を特定する特性を、以下の方法にて評価した。
(1) ABS樹脂中のグラフトゴムとAS共重合体の含有比率の測定
グラフト共重合体ラテックス約20gをメタノール100mlで析出、凝固させ、凝固物は濾紙を用いて吸引濾過する。濾過物は室温で24時間、真空乾燥機で約4時間乾燥させる。得られた試料の約1.2gを100ml三角フラスコに取り、メチルエチルケトン(MEK)30gを加えた後、温度23℃で24時間攪拌し、その後、遠心分離器機(日立製作所製CR26H)でメチルエチルケトン(MEK)に対する不溶分の分離を実施し、遠心分離操作後30分静置した。この遠心分離器の操作条件を次の通り設定した。
温度 :−9℃
回転数:23,000rpm
時間 :50分
遠心分離させた溶液の上澄み液と沈殿物とを分離し、上澄み液をメタノール150mlが入れてある300mlビーカーに注ぎ入れて、析出させ、析出物を濾紙を用いて吸引濾過した。濾過物は室温で24時間乾燥させ、次に真空乾燥機で4時間残溶剤を飛ばして試料を得た。
得られたMEK不溶分の沈殿物に更にMEKを加えて遠心分離操作で洗浄し、吸引濾過および真空乾燥したものを「グラフトゴム」とし、前記MEK可溶分のメタノール析出で得られた沈殿物を「AS共重合体」とし、それらの質量比より、それぞれの含有比率を求めた。
尚、グラフト共重合体に更にAS共重合体を加えたABS樹脂についても、前記の方法に準じてグラフトゴムとAS共重合体の含有比率を求めた。
(2)グラフトゴムのグラフト率の測定方法
前項(1)と同様にして得たグラフトゴムについて、An単量体量をケルダール窒素法によって定量し(y)、St単量体単位を熱分解ガスクロマトグラフィーにより定量し(z)、下記の式によってグラフト率を求めた。
グラフト率(%)=100×(y+z)/{x−(y+z)}
ここで、(x)は、グラフトゴムの全質量である。
(2) グラフトゴム中のグラフト鎖の分子量の測定方法
グラフトゴムをオゾン分解し、その後に水素化リチウムアルミニウムで還元する方法は、Poly m e r , v o l 2 2 , 1 7 2 1 ( 1 9 8 1 ) 、R u b b e r C h e m i s t r y a nd T e c h n o l o g y , v o l . 5 9 , 1 6 ( 1 9 8 6 ) 、M a c r o m o l e c u le s , v o l . 1 6 , 1 9 2 5 ( 1 9 8 3 ) 等に記載される方法に準拠した。
即ち、グラフトゴム約0. 1 5 g を精秤し、これをジクロロメタン50 m l に分散させた。この液を1 0 0 m l 三口フラスコに入れ、−80℃ まで冷却した状態で、オゾン発生装置( 朝日理化硝子工業社製L A B O OZ O N − 2 5 0 ) により供給されるオゾンを含有する酸素を1 0 0 m l / m i n の流量で三口フラスコ内に吹き込み、オゾン酸化反応させた。三口フラスコから流出する気流をヨウ化カリウム水溶液に通し、この液が黄変するまでオゾン酸化反応を継続した。
続いて、別に用意しておいた3 0 0 m l 三口フラスコに水素化リチウムアルミニウム0.3 5 g とジエチルエーテル5 0 m l を入れて攪拌し、この三口フラスコの中にオゾン酸化反応液を室温下で滴下した。滴下後、6 0 ℃ のオイルバスで該30 0 m l 三口フラスコを加温し、4 5 分間系内を還流させた。
その後室温まで該3 0 0 m l 三口フラスコを冷却してから、2. 5 g の水を反応液に滴下して未反応の水素化リチウムアルミニウムを分解した。更に適量の硫酸マグネシウムを加えた後、該反応液を吸引濾過して、得られた濾液を溶媒留去してポリマー分を得、真空乾燥した。本発明においては、得られたポリマー分をグラフト鎖とし、GP C 法によりポリスチレン換算値として分子量(Mw)を測定した。
(3) グラフトゴムの体積平均粒子径の測定方法
グラフトゴムの体積平均粒子径は、グラフトゴムの重合ラテックスを蒸留水で希釈した液を試料として、スレーザー回折散乱法で求めた。その測定条件は以下の通りである。
装置:COULTER LS 230(COULTER社製)
濃度:2.0%
希釈溶媒:蒸留水
(4) AS共重合体の分子量の測定。
前記(1)の方法で得られたグラフトゴムのMEK可溶分のGPC曲線より、重量平均分子量(Mw)を求めた。
[シートの評価方法]
各実施例/比較例の導電シートを、下記の評価方法にて下記の特性の評価を行った。
(1)引張特性
JIS−K−7127に準拠し、各シートのMD(シートの押出方向)およびTD (シート押出方向と垂直方向)にサンプリングした各試験片について4号ダンベルでの評価を行った。(破断伸び、降伏点強度、破断点強度、引張弾性率)
(2)デュポン衝撃強度
デュポン衝撃試験機/東洋精機社製を使用し、300g、500gの荷重を落下させ50%破壊高さを求め、そのときの荷重からエネルギー値を計算した。計算はJIS−K−7211に準じて行った。
(3)耐折強度
ASTM D2176に基づき、長さ120mm、幅15mm、厚さ0.3mmの試験片を作製し、東洋精機製作所製MIT耐折疲労試験機を用いて、シートより、MDおよびTDを長さ方向としたサンプリングを行い、MIT耐折強度の測定を行った。この時、折り曲げ角度135度、折り曲げ速度175rpm、測定荷重9.8Nにて試験を行った。
(4)引裂強度
JIS−K−7128−3に準拠して、MDおよびTDを長さ方向とした試験片について、引き裂き強度を測定した。
(5)表面抵抗率
ASTM D−257に基づき、ACL社StaticideACL800機を用いて、表面抵抗率を測定した。
(6)成形性
EDG社製圧空成形機で成形したエンボスキャリアテープの賦形性が良好なものを5、賦形性が不良なものを1とし5段階評価で数値化した。
(7) 抜きバリ指数
シートの打抜き条件はクリアランス(打ち抜きピンとシート支え台の隙間)が20μm、打抜き速度が230mm/secで実施し、この条件で打ち抜いた面を30倍の倍率で顕微鏡観察し、打ち抜き面にバリの発生がない場合は5、バリが発生している場合を1とし、バリの大きさ、発生度合いを図1に示した見本に従って5段階評価を行った。4以上でれば、バリによるコンタミ等のトラブルが発生しない。尚、各実施例のシートについては、前記のクリアランスを2、60、および130μmとした場合についても同様の評価を行った。
(実施例1〜12)
表面層の原料として、下記のスチレン系樹脂70質量部とアセチレンブラック20質量部を高速混合機により均一混合した。得られる混合物をφ45mmのベント式二軸押出機を用い混練し、ストランドカット法によりペレット化した。
スチレン系樹脂:HIPS (H701N:電気化学工業社製)
アセチレンブラック:デンカブラック(電気化学工業社製)
別途基材層の原料として表1に示したA〜Dから選択したグラフトゴムと表2に示したAおよびBから選択したAS樹脂を、表3に記載した比率で混合機により均一に混合し、φ45mmのベント式二軸押出機を用い混練し、ストランドカット法によりペレット化し、基材層の樹脂組成物とした。
この基材層用樹脂組成物と上記の表面層用ペレットを使用し、φ65mm押出機(L/D=28),φ40mm押出機(L/D=26)2台とフィードブロック及びTダイを用いて、両表面層と基材層の厚み比率が1:8:1で全体の厚さを0.3mmを有する3層のシート状に成形し、各実施例のサンプルとし、前記の評価を行った。評価結果を表4および表5に纏めて示した。
(比較例1〜8)
基材層の原料として表1に示したE〜Gから選択したグラフトゴムと表2に示したCおよびDから選択したAS樹脂を、表6に記載した比率で配合した以外は、実施例1〜12と同様にして3層のシート状に整形し、各比較例のサンプルとした。評価結果を表7および表8に纏めて示した。
前記の各実施例および比較例のシートについて打ち抜き試験を行い、前記の抜きバリ指数の評価を行い、結果を表9に示した。
各実施例のシートは、引張特性、デュポン衝撃強度、耐折強度および引裂強度等で、各種の電子部品包装用のシートとして一定レベル以上の特性を有し、成形性も良好であり、打ち抜き試験での抜きバリ指数が良好であった。 それに対して、各比較例のシートは、全般的に打ち抜き試験で抜きバリが発生する傾向が認められ、クリアランス20μの打ち抜きで抜きバリ指数が殆どのものが3以下であった。比較例5のシートは、この条件での抜きバリ指数は比較的良好であったが、シートのデュポン衝撃強度や耐折強度が極めて低いシートであった。

Claims (8)

  1. ABS樹脂を主成分とする基材層(A層)と、少なくともその片側の表面が導電層(B層)で構成され、前記ABS樹脂が、グラフトゴム20〜40質量%、およびアクリロニトリルとスチレンの共重合体(AS共重合体)60〜80質量%からなり、前記ABS樹脂中のグラフトゴムが、アクリロニトリル(An)が5〜15質量%、ブタジエン(Bd)が40〜60質量%、およびスチレン(St)が55〜25質量%の組成比からなり、且つグラフト率が100〜140%である表面導電性積層シート。
  2. 前記グラフトゴムのグラフト鎖の重量平均分子量(Mw)が、18,000〜56,000である請求項1に記載の表面導電性積層シート。
  3. 前記グラフトゴムの体積平均粒子径が0.3〜2.0μmである請求項1または請求項2に記載の表面導電性積層シート。
  4. 前記アクリニトリルとスチレンの共重合体(AS共重合体)が、アクリロニトリル(An)20〜40質量%、スチレン(St)が60〜80質量%の組成比からなり、重量平均分子量が80,000〜120,000である請求項1〜のいずれか1項に記載の表面導電性積層シート。
  5. 表面層(B層)がスチレン系樹脂とアセチレンブラックを含有する樹脂組成物からなる請求項1〜のいずれか1項に記載の表面導電性積層シート。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の表面導電性積層シートを用いた電子部品包装容器。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の表面導電性積層シートを用いたキャリアテープ。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の表面導電性積層シートを用いた電子部品搬送用トレイ。
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