従来の粉砕機では、投入される被粉砕物の形状または材質が様々であり、粉砕あるいは破砕の切断プロセスも、くさびの押込み、圧延、せん断、引張りなどの複合で過渡的な衝撃荷重が発生するため、粉砕機の最大切断力を想定することは容易ではなかった。このため、被粉砕物の粉砕時における過負荷から粉砕機を保護するために、モータが出力することができる最大トルクに対して十分な安全率を設けること、電気的なサーマル保護を設けること、モータを駆動する電流に対する過電流保護装置(例えば、ショックリレーなど)を設けること、ユーザには粉砕機の最大切断力を提示することなど様々な対策が講じられているにもかかわらず粉砕衝撃負荷による減速機や粉砕刃の破損が後を絶たない。また、粉砕実績のない新たな被粉砕物を粉砕する場合には、実際に被粉砕物を粉砕してみて判断せざるを得ず、回転刃、固定刃、回転軸、ギア又は変速機などの部品の破損が生ずるリスクを抱えるという問題もあった。また、このような問題は、粉砕機に限らず、回転軸に回転体を備え、回転体で所定の処理を行う電気機器も同様である。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、回転体による所要の処理が可能であるか否かを確実に判定することができる電動機駆動トルク制御装置及び電動機駆動トルク制御方法を提供することを目的とする。
第1発明に係る電動機駆動トルク制御装置は、商用電源の周波数を変換する周波数変換器と、該周波数変換器で駆動される電動機と、該電動機の電動機軸の回転数を減速する減速機と、該減速機で減速された回転数で回転する1又は複数の回転軸に取り付けられた回転体を有する電気機器とを備え、負荷状態に合わせた該電気機器の回転数制御を用いた電動機駆動トルク制御装置において、前記電動機の駆動トルクが実トルクに近づく状態となる、商用周波数よりも低い低周波数域で前記周波数変換器を動作させて前記回転体を駆動し、該低周波数域で前記駆動トルクが許容範囲内にあるか否かに応じて、商用周波数又は商用周波数付近での前記回転体による処理の可否を判定する判定部を備えることを特徴とする。
第2発明に係る電動機駆動トルク制御装置は、第1発明において、前記電動機の駆動トルクに関連する特徴量を検出する検出部と、該検出部で検出した特徴量を収集して統計値を算出する統計値算出部とを備え、前記判定部は、前記統計値算出部で算出した特徴量の統計値に基づいて前記処理の可否を判定するように構成してあることを特徴とする。
第3発明に係る電動機駆動トルク制御装置は、第2発明において、前記周波数変換器の出力周波数と前記電動機の負荷率との対応関係を記憶する記憶部と、該記憶部に記憶した対応関係に基づいて、前記検出部で検出した特徴量を補正する補正部とを備えることを特徴とする。
第4発明に係る電動機駆動トルク制御装置は、第2発明において、前記周波数変換器を前記低周波数域から商用周波数付近までの間で動作させて前記検出部で検出した特徴量に基づいて、前記周波数変換器の出力周波数と前記電動機の負荷率との対応関係を特定する特定部と、該特定部で特定した対応関係に基づいて、前記検出部で検出した特徴量を補正する補正部とを備えることを特徴とする。
第5発明に係る電動機駆動トルク制御装置は、第2発明において、前記周波数変換器を前記低周波数域の任意の一の周波数で動作させて前記統計値算出部で算出した統計値に基づいて、前記周波数変換器の出力周波数と前記電動機の負荷率との対応関係を特定する特定部と、該特定部で特定した対応関係に基づいて、前記検出部で検出した特徴量を補正する補正部とを備えることを特徴とする。
第6発明に係る電動機駆動トルク制御装置は、第3発明乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記補正部で補正した特徴量及び所定の閾値の大小に応じて前記回転軸の回転数を制御する回転数制御部を備えることを特徴とする。
第7発明に係る電動機駆動トルク制御装置は、第6発明において、前記回転数制御部は、前記電動機の定出力範囲において前記補正部で補正した特徴量が前記閾値より大きい場合、前記回転軸の回転数を下げるように構成してあることを特徴とする。
第8発明に係る電動機駆動トルク制御装置は、第7発明において、前記回転数制御部は、前記電動機の定出力範囲において前記補正部で補正した特徴量が前記閾値より大きい場合、補正した特徴量が前記閾値以下になるまで、所定の減速勾配で回転数を下げるように構成してあることを特徴とする。
第9発明に係る電動機駆動トルク制御装置は、第6発明から第8発明までのいずれか1つにおいて、前記回転数制御部は、前記補正部で補正した特徴量が前記閾値より小さい場合、前記回転軸の回転数を上げるように構成してあることを特徴とする。
第10発明に係る電動機駆動トルク制御装置は、第9発明において、前記回転数制御部は、所定時間の間、前記補正部で補正した特徴量が前記閾値より小さい場合、所定の加速勾配で回転数を上げるように構成してあることを特徴とする。
第11発明に係る電動機駆動トルク制御装置は、第6発明から第10発明までのいずれか1つにおいて、前記判定部は、所定の判定時間の間に前記処理の可否を判定し、前記回転数制御部は、前記判定部で前記処理が可であると判定した場合、前記回転軸の回転数を制御するように構成してあることを特徴とする。
第12発明に係る電動機駆動トルク制御装置は、第1発明から第11発明までのいずれか1つにおいて、前記処理の可否を判定するための操作を受け付ける受付部を備え、前記判定部は、前記受付部で操作を受け付けた場合、前記処理の可否を判定するように構成してあることを特徴とする。
第13発明に係る電動機駆動トルク制御装置は、第1発明から第12発明までのいずれか1つにおいて、前記判定部で前記処理が否であると判定した場合、その旨を通知する通知部を備えることを特徴とする。
第14発明に係る電動機駆動トルク制御方法は、商用電源の周波数を変換する周波数変換器と、該周波数変換器で駆動される電動機と、該電動機の電動機軸の回転数を減速する減速機と、該減速機で減速された回転数で回転する1又は複数の回転軸に取り付けられた回転体を有する電気機器とを備え、負荷状態に合わせた該電気機器の回転数制御を用いた電動機駆動トルク制御装置による電動機駆動トルク制御方法において、前記電動機の駆動トルクが実トルクに近づく状態となる、商用周波数よりも低い低周波数域で前記周波数変換器を動作させて前記回転体を駆動し、該低周波数域で前記駆動トルクが許容範囲内にあるか否かに応じて、商用周波数又は商用周波数付近での前記回転体による処理の可否を判定するステップを含むことを特徴とする。
第1発明又は第14発明にあっては、1又は複数の回転軸を有する電気機器(例えば、粉砕機)において、周波数変換器を商用周波数よりも低い低周波数域で動作させ、回転体で所要の処理(例えば、回転刃で被粉砕物の粉砕)を行って、モータ(電動機)の許容トルク範囲内での処理(例えば、当該被粉砕物の粉砕)の可否を判定する判定部を備える。周波数変換器の商用周波数は、例えば、50Hz又は60Hzであり、低周波数域は、例えば、数Hzから20Hz程度の周波数である。好ましくは商用周波数の10%程度であり、5Hz又は6Hz±数Hzとすることができる。周波数変換器の出力周波数を商用周波数(50Hz又は60Hz)で周波数変換器を動作させ、所要の処理、例えば、被粉砕物を粉砕した場合、過渡的な過負荷が発生し、回転刃(回転軸)には大きな負荷がかかる。回転軸に比べて高速で回転するモータ軸(電動機軸)の慣性が大きいので、回転軸に過負荷が加わった場合、高速で回転しているモータ軸の大きな慣性により、モータの駆動トルク(モータの駆動電流により出力するトルク)を遥かに上回る慣性付加トルク(慣性モーメントと角加速度の乗算値)が生じ、実トルク(実際に負荷に与えるトルク)は、モータの駆動トルクと慣性付加トルクの合計値となる。すなわち、周波数変換器を商用周波数で動作させた場合、実トルクは、モータの駆動トルクだけではなく、駆動トルクに慣性付加トルクが加わった、駆動トルクよりも大きなトルクになる。このため、従来のように、駆動トルクが許容範囲内にあるか否かで被粉砕物の粉砕の可否を判定した場合、実際には予期しない大きなトルクが負荷に与えられているため、実トルクが許容範囲を超えている事態が起こり得る。
一方、負荷に与えるトルク(実トルク)、すなわち被粉砕物を切断する力は、回転軸(回転刃)の回転数(周波数変換器の出力周波数)の大小にかかわらず同じである。そこで、周波数変換器を、出力周波数が低周波数域内にある状態で動作させて、モータ軸の回転数を小さくして(下げて)、慣性付加トルクの影響を極力少なくすることで、駆動トルクが実トルクに近づく状態で被粉砕物を粉砕させる。この場合に駆動トルクが許容範囲内であるか否か判定することで、当該被粉砕物を粉砕した場合に、実トルクが許容範囲内であるかを近似的に判定することができる。これにより、周波数変換器の出力周波数を商用周波数、商用周波数以上又は商用周波数以下にした場合であっても、実トルクが許容範囲内にあるか否かを判定しているので、過渡的な過負荷が発生した場合でも実トルクが許容範囲を超えることがなく、当該被粉砕物の粉砕が可能であるか否かを確実に判定することができる。なお、駆動トルクに代えて、モータのトルク電流又はモータの負荷電流などを用いることもできる。
第2発明にあっては、モータ(電動機)の駆動トルクに関連する特徴量を検出する検出部と、検出部で検出した特徴量を収集して統計値を算出する統計値算出部とを備える。モータの駆動トルクに関連する特徴量は、例えば、モータの駆動トルクの他、モータのトルク電流又はモータの負荷電流などである。統計値は、例えば、特徴量(例えば、駆動トルクなど)のピーク値を複数回検出し、検出したピーク値の平均値あるいは最大値などとすることができる。判定部は、算出した特徴量の統計値が許容範囲内(例えば、許容トルク範囲内)であるか否かに応じて所要の処理、例えば、粉砕の可否を判定する。特徴量として、モータのトルク電流又はモータの負荷電流を検出する場合には、検出したトルク電流又はモータの負荷電流を駆動トルクに変換すればよい。統計値を用いることにより、被粉砕物の粉砕、破砕状態によって変化する特徴量(例えば、駆動トルクなど)のバラツキを考慮した上で、特徴量が許容範囲内であるか否かを判定するので、被粉砕物の粉砕が可能であるか否かを確実に判定することができる。
第3発明にあっては、周波数変換器の出力周波数とモータ(電動機)の負荷率との対応関係を記憶する記憶部と、記憶部に記憶した対応関係に基づいて、検出部で検出した特徴量を補正する補正部とを備える。周波数変換器の出力周波数が大きく(高く)なるに応じて、モータ軸の回転数が大きく(高く)なるので、実トルクに占める慣性付加トルクの割合が大きくなる。すなわち、実トルクに占める駆動トルクの割合(モータの定格トルクに対する負荷率と称する)が小さくなる。そこで、対応関係として、周波数変換器の出力周波数に対する負荷率(モータの定格トルクに対する負荷率)を記憶しておき、検出した特徴量が実トルクとほぼ同程度になるように、検出した特徴量を補正する。これにより、モータの駆動電流値には現れないモータ軸の慣性による慣性付加トルクを加味した実トルクを補正駆動トルク値として求めることができる。
第4発明にあっては、周波数変換器を低周波数域から商用周波数付近までの間で動作させて、検出部で検出した特徴量に基づいて、周波数変換器の出力周波数とモータ(電動機)の負荷率との対応関係を特定する特定部と、特定部で特定した対応関係に基づいて、検出部で検出した特徴量を補正する補正部とを備える。周波数変換器の出力周波数が大きく(高く)なるに応じて、モータ軸の回転数が大きく(高く)なるので、実トルクに占める慣性付加トルクの割合が大きくなる。すなわち、実トルクに占める駆動トルクの割合(モータの定格トルクに対する負荷率と称する)が小さくなる。そこで、対応関係として、周波数変換器の出力周波数に対する負荷率(モータの定格トルクに対する負荷率)を特定し、検出した特徴量が実トルクとほぼ同程度になるように、検出した特徴量を補正する。これにより、モータの駆動電流値には現れないモータ軸の慣性による慣性付加トルクを加味した実トルクを補正駆動トルク値として求めることができる。
第5発明にあっては、周波数変換器を低周波数域の任意の一の周波数で動作させて、統計値算出部で算出した統計値に基づいて、周波数変換器の出力周波数とモータ(電動機)の負荷率との対応関係を特定する特定部と、特定部で特定した対応関係に基づいて、検出部で検出した特徴量を補正する補正部とを備える。周波数変換器の出力周波数が大きく(高く)なるに応じて、モータ軸の回転数が大きく(高く)なるので、実トルクに占める慣性付加トルクの割合が大きくなる。すなわち、実トルクに占める駆動トルクの割合(モータの定格トルクに対する負荷率と称する)が小さくなる。そこで、低周波数域の任意の一の周波数における特徴量の統計値を算出し、算出した統計値に基づいて出力周波数での特徴量を推定することにより、対応関係として、周波数変換器の出力周波数に対する負荷率(モータの定格トルクに対する負荷率)を特定し、検出した特徴量が実トルクとほぼ同程度になるように、検出した特徴量を補正する。これにより、モータの駆動電流値には現れないモータ軸の慣性による慣性付加トルクを加味した実トルクを補正駆動トルク値として求めることができる。
第6発明にあっては、補正部で補正した特徴量及び所定の閾値(例えば、トルク閾値など)の大小に応じて回転軸の回転数を制御する回転数制御部を備える。周波数変換器で制御されるモータの出力特性は、基底回転数(例えば、周波数変換器の商用周波数と、モータの極数とによって決定される同期回転数である)以下の回転数では定トルク特性を有し、基底回転数以上の回転数では定出力特性を有する。回転数制御部は、モータを基底回転数以上の回転数で動作させた場合、すなわち、定出力領域で動作させた場合、補正部で補正した補正駆動トルク及び所定のトルク閾値の大小に応じて回転軸の回転数を制御する。例えば、補正駆動トルクが閾値より小さい場合、軽負荷であるので回転数を上げてトルクを減らし粉砕処理能力を高める。また、補正駆動トルクが閾値より大きい場合、重負荷であるので回転数を下げることによりトルクを増やし過負荷停止を防止する。これにより、負荷特性に応じたトルク特性を実現し、かつ最大の処理能力を得ることができ、負荷変動に応じてトルクを変更することができる。また実トルクに相当する補正駆動トルクを用いて回転数の制御を行うので、被粉砕物の粉砕、破砕状態によって過渡的な過負荷が発生した場合でも、回転刃、固定刃、回転軸、ギア又は減速機などの破損を防止することができる。
第7発明にあっては、回転数制御部は、モータ(電動機)の定出力範囲において補正部で補正した特徴量が閾値(例えば、トルク閾値など)より大きい場合、回転軸の回転数を下げる。例えば、負荷変動により補正駆動トルクがトルク閾値を超えた場合、回転軸の回転数を下げることによりトルクを増加させる。これにより、重負荷になった場合でも、必要なトルクが得られ、負荷変動に対応させて過負荷停止を防止することができる。
第8発明にあっては、回転数制御部は、モータ(電動機)の定出力範囲において補正部で補正した特徴量が閾値(例えば、トルク閾値など)より大きい場合、補正した駆動トルクがトルク閾値以下になるまで、所定の減速勾配で回転数を下げる。回転数制御部は、定出力範囲において、すなわちモータを基底回転数以上の回転数で動作させた場合に、補正駆動トルクがトルク閾値より大きい場合、補正駆動トルクがトルク閾値以下になるまで、所定の減速勾配で回転数を下げる。所定の減速勾配は、例えば、1秒間で周波数変換器の周波数を5Hzだけ減少させたときの回転軸の回転数とすることができる。なお、回転数は、時間変化に対応して連続的に変化させてもよく、離散的(段階的)に変化させてもよい。これにより、回転軸の回転数を急激ではなく徐々に下げることができる。
第9発明にあっては、回転数制御部は、補正部で補正した特徴量が閾値(例えば、トルク閾値など)より小さい場合、回転軸の回転数を上げる。回転数制御部は、モータを基底回転数以上の回転数で動作させた場合に、補正駆動トルクがトルク閾値より小さい場合、回転軸の回転数を上げる。例えば、負荷変動により補正駆動トルクがトルク閾値を下回る場合、回転軸の回転数を上げることによりトルクを減少させる。これにより、軽負荷になった場合でも、必要なトルクを維持しつつ回転数を増やすことができ、負荷変動に対応させて粉砕処理能力を高めることができる。
第10発明にあっては、回転数制御部は、所定時間の間、補正部で補正した特徴量(例えば、補正駆動トルク)が閾値(例えば、トルク閾値など)より小さい場合、所定の加速勾配で回転数を上げる。回転数制御部は、モータを基底回転数以上の回転数で動作させた場合に、所定時間の間、補正駆動トルクがトルク閾値より小さい場合、所定の加速勾配で回転数を上げる。所定時間は、例えば、10分、5分など予め設定しておくことができる。また、所定の加速勾配は、例えば、1秒間で周波数変換器の周波数を5Hzだけ増加させたときの回転軸の回転数とすることができる。なお、回転数は、時間変化に対応して連続的に変化させてもよく、離散的(段階的)に変化させてもよい。これにより、回転軸の回転数を急激ではなく徐々に上げることができる。
第11発明にあっては、判定部は、所定の判定時間の間に所要の処理、例えば、被粉砕物の粉砕の可否を判定し、回転数制御部は、判定部で粉砕が可であると判定した場合、回転軸の回転数を制御する。判定時間は、例えば、5分、10分などの時間とすることができる。判定時間の間、粉砕機に被粉砕物を投入して、投入した被粉砕物が粉砕可能であるか否かを判定し、粉砕可能であると判定した場合に、回転軸の回転数を制御して実運転(実際に被粉砕物を粉砕する運転)を行う。判定時間の間に、被粉砕物の粉砕、破砕状態によって変化する駆動トルクのバラツキを考慮した上で、粉砕の可否を判定するので、被粉砕物の粉砕が可能であるか否かを確実に判定することができる。
第12発明にあっては、所要の処理、例えば、被粉砕物の粉砕の可否を判定するための操作を受け付ける受付部を備え、判定部は、受付部で操作を受け付けた場合、被粉砕物の粉砕の可否を判定する。これにより、実運転を行う前に被粉砕物の粉砕の可否を確認するための判定運転を行うことができるので、ユーザの利便性が向上する。
第13発明にあっては、判定部で所要の処理、例えば、被粉砕物の粉砕が否であると判定した場合、その旨を通知する通知部を備える。これにより、粉砕時に破損を与えかねない被粉砕物を事前に確認することができ、回転刃、固定刃、回転軸、ギア又は減速機などの破損を未然に防止することができる。
第1発明及び第14発明によれば、周波数変換器の出力周波数を商用周波数、商用周波数以上又は商用周波数以下にした場合であっても、実トルクが許容範囲内にあるか否かを判定しているので、過渡的な過負荷が発生した場合でも実トルクが許容範囲を超えることがなく、当該被粉砕物の粉砕などの回転体による所定の処理が可能であるか否かを確実に判定することができる。
第2発明によれば、被粉砕物の粉砕、破砕状態によって変化する特徴量(例えば、駆動トルクなど)のバラツキを考慮した上で、駆動トルクが許容範囲内であるか否かを判定するので、所要の処理、例えば、被粉砕物の粉砕が可能であるか否かを確実に判定することができる。
第3発明によれば、モータの駆動電流値には現れないモータ軸の慣性による慣性付加トルクを加味した実トルクを補正駆動トルク値として求めることができる。
第4発明及び第5発明によれば、モータの駆動電流値には現れないモータ軸の慣性による慣性付加トルクを加味した実トルクを補正駆動トルク値として求めることができる。
第6発明によれば、負荷特性に応じたトルク特性を実現し、かつ最大の処理能力を得ることができ、負荷変動に応じてトルクを変更することができる。また実トルクに相当する補正駆動トルクを用いて回転数の制御を行うので、被粉砕物の粉砕、破砕状態によって過渡的な過負荷が発生した場合でも、回転刃、固定刃、回転軸、ギア又は減速機などの破損を防止することができる。
第7発明によれば、重負荷になった場合でも、必要なトルクが得られ、負荷変動に対応させて過負荷停止を防止することができる。
第8発明によれば、回転軸の回転数を急激ではなく徐々に下げることができる。
第9発明によれば、軽負荷になった場合でも、必要なトルクを維持しつつ回転数を増やすことができ、負荷変動に対応させて粉砕処理能力を高めることができる。
第10発明によれば、回転軸の回転数を急激ではなく徐々に上げることができる。
第11発明によれば、判定時間の間に、被粉砕物の粉砕、破砕状態によって変化する駆動トルクのバラツキを考慮した上で、粉砕の可否を判定するので、被粉砕物の粉砕が可能であるか否かを確実に判定することができる。
第12発明によれば、実運転を行う前に被粉砕物の粉砕の可否を確認するための判定運転を行うことができるので、ユーザの利便性が向上する。
第13発明によれば、粉砕時に破損を与えかねない被粉砕物を事前に確認することができ、回転刃、固定刃、回転軸、ギア又は減速機などの破損を未然に防止することができる。
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。なお、以下では、電気機器として粉砕機を例に挙げて説明するが、電気機器は粉砕機に限定されるものではない。
図1は実施の形態1に係る粉砕機100の構成の一例を示す外観斜視図である。粉砕機100は、筐体を備える粉砕機本体50、50Hz又は60Hzなどの商用電源から供給される交流電源の周波数を変換し、変換した周波数の交流電圧を出力する周波数変換器としてのインバータ40、インバータ40が出力する交流電圧により駆動されるモータ20、モータ20のモータ軸の回転数を減速する減速機30、粉砕機100の動作を制御する制御部70などを備える。粉砕機100は、筐体内に横置きされた回転軸を有し、回転軸は、減速機30で減速された回転数で回転する。粉砕機100は、筐体内の回転軸に取り付けられた回転刃と筐体内に配置された固定刃との協働により被粉砕物を粉砕する。
粉砕機本体50は、上側と下側が開口した筐体を備える。粉砕機本体50は、中央部が開口した金属製の支持台1にボルト等で固定されている。支持台1の下側には、粉砕機本体50の下部に取り付けられた材料受部が配置されている。
粉砕機本体50の上方には、略S字状の投入ホッパ60を設けている。投入ホッパ60の下側縁部には、開閉用の軸(不図示)を設けてあり、軸回りに約90度投入ホッパ60を回転させることにより、粉砕機50の上方を開放することができる。投入ホッパ60の内部は開放され、投入口61から投入された被粉砕物(スプルランナ)は粉砕機本体50へ供給される。
図2は実施の形態1に係る粉砕機本体50の一例を示す要部平面図である。図2に示すように、支持台1の上面には、適長離隔した1対の金属製の固定側壁2、2を対設してあり、固定側壁2、2の両側部には、1対の金属製の揺動側壁3、3が固定側壁2、2で挟まれるように配置してあり、固定側壁2、2、及び揺動側壁3、3により筐体を構成している。そして、粉砕機本体50の筐体は、上側及び下側が開口している。
一方の固定側壁2の略中央部には、軸受10が取り付けられてあり、他方の固定側壁2には、モータ20、減速機30を取り付けてある。なお、図2においてインバータ40、制御部70は省略している。減速機30は、ピニオン及びホイール(ギア)などを備え、モータ20のモータ軸の回転数を減速し、減速した回転数で粉砕機本体50の回転軸(不図示)を回転させる。回転軸は、固定側壁2、2の間に横置きに配置されている。これにより、モータ20のモータ軸に連動して粉砕機本体50の回転軸が回転する。
固定側壁2、2、及び揺動側壁3、3で囲まれる空間には、回転軸に嵌装された回転刃としての粗砕刃4、4、及び粉砕刃6、6、6が収容される。粗砕刃4、4は、回転軸の周面から円弧状に突出している。すなわち、粗砕刃4、4は、回転方向に向かって先端部(刃先部)が湾曲したアーム状をなし回転軸の軸方向に適長離隔して配置されている。粉砕刃6、6、6は、固定側壁2と粗砕刃4との間、及び粗砕刃4、4の間に配置され、回転軸方向に所定の間隔で環状溝が形成され、隣接する環状溝間の環状突起部の外周面を鋸歯状に形成している。
揺動側壁3、3は、回転軸に平行な揺動軸(不図示)の回りに揺動可能であり、揺動側壁3、3を開くことにより、筐体内部が上向きに開放される。一方の揺動側壁3の内側には、各粗砕刃4、及び各粉砕刃6との協働により被粉砕物(スプルランナ)を粉砕するための矩形の板状の第1固定刃7a、…、及び第2固定刃7bで構成される固定刃7が、内側に向かって下方向に傾斜するように固定されている。
第1固定刃7aは、長手方向の寸法が粉砕刃6の軸方向の寸法と略同一であり、長辺側の一方の縁部は、粉砕刃6の刃先と噛み合うように凹凸状に形成された歯部を有し、ボルト9、…で揺動側壁3の内側に固定されている。また、第1固定刃7aの短辺側であって粗砕刃4と近接する縁部には、粗砕刃4との協働により被粉砕物を粉砕する歯部を形成している。
第2固定刃7bは、長手方向の寸法が揺動側壁3の軸方向の寸法と略同一であり、長辺側の一方の縁部であって、粗砕刃4と近接する箇所には、粗砕刃4との協働により被粉砕物を粉砕する歯部を形成している。第2固定刃7bは、ボルト(不図示)により第1固定刃7a、…の長辺側の他方の縁部に当接するように揺動側壁3の内側に固定されている。
揺動側壁3の内側であって固定刃7の下側には、粗砕刃4、4で粗砕され、所定の大きさに粉砕されていない被粉砕物が排出されることを防止するため、粗砕刃カバー(不図示)が設けられている。粗砕刃カバーは、粗砕刃4、4の回転軌道を覆うように内側に円弧状の溝加工が施されている。
他方の揺動側壁3の内側には、粉砕刃6、6、6で所定の大きさ(粒形状)に粉砕された粉砕材を掻き落とし、筐体の下側の材料受部へ排出するための略矩形の板状のスクレーパ5が、ボルト8、8、8により内側に向かって下方向に傾斜するように固定されている。
スクレーパ5は、粗砕刃4、4が回転する部分に矩形状の切り込みを形成してあり、長辺側の一方の縁部であって、粉砕刃6、6、6と近接する箇所には、粉砕刃6の刃先と噛み合うように凹凸状に形成された掻き落とし部を形成している。
揺動側壁3の内側であってスクレーパ5の下側には、粗砕刃4、4で粗砕され、未だ所定の大きさに粉砕されていない被粉砕物が排出されることを防止するため、粗砕刃カバーが設けられている。粗砕刃カバーは、粗砕刃4、4の回転軌道を覆うように内側に円弧状の溝加工が施されている。両方の揺動側壁3、3を閉じた場合、各粗砕刃カバーは、一端部でお互いに当接して、粗砕刃4、4の回転軌道を覆う空間を形成し、未粉砕の被粉砕物が排出されることを防止する。
各固定側壁2、及び各揺動側壁3で構成される筐体の4隅には、揺動側壁3、3を固定側壁2、2に固定するため一面がテーパ状のロック部材13、…が取り付けられるようになっており、テーパ状の一面で固定側壁2、揺動側壁3の端部を挟み込み、ロック部材13に螺合したレバー12を締め付けることにより、揺動側壁3、3を固定側壁2、2に固定する。各揺動側壁3は、揺動側壁3に固定されたハンドル14を持って開閉することができる。
被粉砕物を粉砕する場合、レバー12を締め付けることにより、揺動側壁3、3を固定側壁2、2に固定する。筐体の上部に配置された投入ホッパ60に被粉砕物を投入し、インバータ40の電源をオンにすると、回転軸が所定の回転数で回転し、粗砕刃4、粉砕刃6が回転する。回転方向は、粗砕刃4、及び粉砕刃6が上側から下側に向かって固定刃7と噛み合うとともに、下側から上側に向かってスクレーパ5と噛み合う方向である。
これにより、被粉砕物は、まず粗砕刃4と固定刃7との協働により粗砕され、粉砕刃6に食い込み易い大きさに細断される。粗砕された被粉砕物は、粉砕刃6と第1固定刃7aとの協働により所定の大きさの粉砕材に粉砕され、粉砕刃6の回転に伴って筐体の下側に送られ、材料受部に排出される。また、所定の大きさに粉砕された粉砕材のうち、静電気で粉砕刃6の側面に付着したものは、粉砕刃6とスクレーパ5との協働によりスクレーパ5の下面で掻き落とされ、材料受部に排出される。
粗砕刃4により粗砕された被粉砕物の一部は、粗砕刃4の回転により固定刃7の下側に送られるが、粗砕刃カバーで受け止められ、再び各粉砕刃6の上側に送られるとともに、材料受部に誤って排出されることを防止する。
図3は実施の形態1の粉砕機100の回路構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、インバータ40は、50Hz又は60Hzの交流電圧を所要の周波数に変換し、変換した周波数の出力電圧をモータ20へ供給する。モータ20は、例えば、誘導電動機であり、インバータ40から供給された周波数の交流電圧に応じて駆動される。モータ20のモータ軸の回転数は減速機30で減速され、粉砕機本体50の回転軸は減速機30により減速された回転数で回転する。
インバータ40は、モータ20の駆動トルクTmを検出するトルク検出部41を備える。トルク検出部41は、例えば、インバータ40がモータ20へ出力する出力電流(インバータ40がモータ20に接続されている場合、モータ負荷電流という。)によりモータ20の駆動トルクTmを検出する。より具体的には、インバータ40の出力電流から無負荷電流を減算した負荷状態での電流に力率などを考慮したトルク電流にさらに効率などを考慮して駆動トルクTmを求めることができる。トルク検出部41は、検出した駆動トルクを制御部70へ出力する。
図4はインバータ40の出力電流波形の一例を示すタイムチャートである。図4において、横軸は時間を示し、縦軸は出力電流を示す。インバータ4の出力電流は、粉砕機本体50が被粉砕物を粉砕していない無負荷の状態での「無負荷電流」と、被粉砕物を粉砕している負荷状態の「負荷状態での電流」との合計で表すことができる。図4の例では、「負荷状態での電流」が時間の経過とともに変動しており、被粉砕物が粉砕される過程で生じる駆動トルクが変動している様子がわかる。なお、出力電流の波形は一例であって、図4の例に限定されるものではない。
インバータ40を使用する場合、インバータの出力周波数とモータ軸の回転数との関係は、Vf=120×f/Pで表すことができる。ここで、Vfはモータ軸の回転数で、Pは極数で、fはインバータの出力周波数である。例えば、モータ20が4極であり、インバータ40の出力周波数fが100Hzの場合、モータ軸の回転数Vfは3000rpmとなる。
減速機30の減速比は、例えば、1/160であり、従来の減速機の減速比よりも大きくしている。
制御部70は、インバータ40が出力する交流電源の周波数を制御することにより、粉砕機本体50の回転軸の回転数を制御する回転数制御部71、駆動トルクがモータ20の許容トルク範囲内(例えば、トルク閾値以下)にあって被粉砕物を粉砕可能であるか否かを判定する判定部72、トルク検出部41で検出した駆動トルクの統計値を算出するトルク値算出部73、インバータ40の出力周波数とモータ20の駆動トルクとの対応関係としてのインバータ40の出力周波数に対する負荷率(モータ20の定格トルクに対する負荷率)を特定する負荷率特定部74、トルク検出部41で検出した駆動トルクを負荷率に基づいて補正して補正駆動トルクを算出するトルク値補正部75、被粉砕物の粉砕の可否を判定する判定運転及び実運転などの操作を受け付ける操作部76、判定運転の結果を通知するための表示部77、モータ20の定格トルクに対する負荷率などの所定の情報を記憶する記憶部78などを備える。
判定部72は、インバータ40の定格周波数(例えば、商用周波数とすることができる)よりも低い低周波数域で動作させ、被粉砕物を実際に粉砕して、モータ20の許容トルク範囲内での当該被粉砕物の粉砕の可否を判定する。許容トルクは、例えば、モータ20の連続出力可能トルクから、短時間出力可能な最大瞬間出力可能トルクまでの範囲内の所望のトルク閾値以下であれば、許容範囲内とすることができる。
インバータ40の定格周波数は、例えば、50Hz又は60Hzであり、低周波数域は、例えば、数Hzから20Hz程度の周波数である。好ましくは定格周波数の10%程度であり、5Hz又は6Hz±数Hzとすることができる。以下、粉砕可否の判定方法について具体的に説明する。
図5はインバータ40の出力周波数が6Hzの場合の定格トルクに対する負荷率の実測値の一例を示す説明図であり、図6はインバータ40の出力周波数が20Hzの場合の定格トルクに対する負荷率の実測値の一例を示す説明図であり、図7はインバータ40の出力周波数が40Hzの場合の定格トルクに対する負荷率の実測値の一例を示す説明図であり、図8はインバータ40の出力周波数が60Hzの場合の定格トルクに対する負荷率の実測値の一例を示す説明図である。
図5〜図8において、横軸は、被粉砕物(例えば、厚みが3mmのポリプロピレンの板片である)の粉砕時間を示し、縦軸はモータ20の定格トルクに対する負荷率を示す。定格トルクに対する負荷率は、実トルクT(実際に負荷に与えるトルク)に対する駆動トルクTmの割合である。なお、図5〜図8において、被粉砕物は同一のものを使用した。図5〜図8に示すように、インバータ40の出力周波数が大きく(高く)なるに応じて、負荷率は小さくなる。
図9はインバータ40の出力周波数と負荷率との対応関係の一例を示す説明図である。図9において、横軸はインバータ40の出力周波数を示し、縦軸はモータ20の定格トルクに対する負荷率を示す。図9は、図5〜図8に示す実測値を平均化してプロットしたものである。
図9から分かることは、同一の負荷を与えた場合でも、インバータ40の出力周波数が大きく(高く)なると、すなわち被粉砕物の切断速度が増加すると、回転軸等の慣性による追加慣性トルク成分J×dw/dt(モータ20が慣性で出力するトルク)が増加し、モータ20の駆動トルクTmの実トルクTに占める割合が減少する。すなわち、モータ20の定格トルクに対する負荷率が減少する。そして、実トルクTは、T=(J×dw/dt)+Tmで表すことができる。ここで、Jは回転軸等の慣性モーメントであり、wは回転軸の角速度である。したがって、(dw/dt)は回転軸等の角加速度である。
すなわち、モータ20の定格トルク(実トルク)Tに対する負荷率Lとインバータ40の出力周波数fとの間に図9に示すような対応関係が存在する。例えば、図9に示す対応関係は、L=87−1.2×fで近似することができる。なお、図9に示す対応関係は一例であって、被粉砕物の形状又は材質で変動する。例えば、硬材質の場合、軟質材に比べて対応関係を示す直線(又は曲線)は、傾きが大きくなるとともに低周波数域の負荷率が大きくなる。
図9において、インバータ40の出力周波数が60Hzの場合、負荷率Lが20%で近似することができたとすると、トルク検出部41で検出した駆動トルクTmが実トルクTに占める割合が20%ということであり、実際にモータ20が負荷に与える実トルクTは、駆動トルクTmの4倍の大きさであることがわかる。そして、従来は、追加慣性トルクがモータ20の駆動電流に現れてこないので、この実トルクTを検出することができず、駆動トルクTmが負荷に与えるトルクであると考えられてきたのである。
つまり、インバータ40の出力周波数を定格周波数(50Hz又は60Hz)にしてインバータ40を動作させ、被粉砕物を粉砕した場合、過渡的な過負荷が発生し、回転刃(回転軸)には大きな負荷がかかる。回転軸に比べて高速で回転するモータ軸の慣性が大きいので、回転軸に過負荷が加わった場合、高速で回転しているモータ軸の大きな慣性により、モータ20の駆動トルク(モータの駆動電流により出力するトルク)を遥かに上回る慣性付加トルク(慣性モーメントと角加速度の乗算値)が生じ、実トルク(実際に負荷に与えるトルク)は、モータ20の駆動トルクと慣性付加トルクの合計値となる。すなわち、インバータ40を、例えば、定格周波数で動作させた場合、実トルクは、モータ20の駆動トルクだけではなく、駆動トルクに慣性付加トルクが加わった、駆動トルクよりも大きなトルクになる。このため、従来のように、駆動トルクが許容範囲内にあるか否かで被粉砕物の粉砕の可否を判定した場合、実際には予期しない大きなトルクが負荷に与えられているため、実トルクが許容範囲を超えている事態が起こり得る。
一方、負荷に与えるトルク(実トルク)T、すなわち被粉砕物を切断する力は、回転軸(回転刃)の回転数(インバータ40の出力周波数)の大小にかかわらず同じである。そこで、インバータ40を、出力周波数が低周波数域内にある状態で動作させて、モータ軸の回転数を小さくして(下げて)、慣性付加トルクの影響を極力少なくすることで、駆動トルクが実トルクTに近づく状態で被粉砕物を粉砕させる。この場合に駆動トルクTmが許容範囲内であるか否か判定することで、当該被粉砕物を粉砕した場合に、実トルクTが許容範囲内であるかを近似的に判定することができる。
これにより、インバータ40の出力周波数を定格周波数、定格周波数以上又は定格周波数以下にした場合であっても、実トルクTが許容範囲内にあるか否かを判定しているので、過渡的な過負荷が発生した場合でも実トルクTが許容範囲を超えることがなく、当該被粉砕物の粉砕が可能であるか否かを確実に判定することができる。
トルク値算出部73は、トルク検出部41で検出した駆動トルクを収集して統計値を算出する。統計値は、例えば、図5〜図8に示すような、駆動トルクのピーク値を複数回検出し、検出したピーク値の平均値あるいは最大値などとすることができる。
判定部72は、トルク値算出部73で算出した駆動トルクの統計値が許容トルク範囲内であるか否かに応じて粉砕の可否を判定する。統計値を用いることにより、被粉砕物の粉砕、破砕状態によって変化する駆動トルクのバラツキを考慮した上で、駆動トルクが許容範囲内であるか否かを判定するので、被粉砕物の粉砕が可能であるか否かを確実に判定することができる。
図9に示すような対応関係は、種々の材料についてデータを収集して予め定めておくことができる。そして、記憶部78にインバータ40の出力周波数とモータ20の駆動トルクとの対応関係を材料毎に記憶しておくことができる。
トルク値補正部75は、記憶部78に記憶した対応関係に基づいて、トルク検出部41で検出した駆動トルクを補正する。なお、この場合、いずれの材料について駆動トルクを補正するかをユーザが設定することができるようにすればよい。インバータ40の出力周波数が大きく(高く)なるに応じて、モータ軸の回転数が大きく(高く)なるので、実トルクTに占める慣性付加トルクの割合が大きくなる。すなわち、実トルクTに占める駆動トルクTmの割合(モータの定格トルクに対する負荷率と称する)が小さくなる。そこで、対応関係として、インバータ40の出力周波数に対する負荷率(モータの定格トルクに対する負荷率)を記憶しておき、検出した駆動トルクTmが実トルクTとほぼ同程度になるように、検出した駆動トルクを補正する。これにより、モータ20の駆動電流値には現れないモータ軸の慣性による慣性付加トルクを加味した実トルクTを補正駆動トルク値として求めることができる。
なお、インバータ40の出力周波数と負荷率との対応関係を記憶部78に記憶する構成に代えて、対応関係をリアルタイムで特定することもできる。
負荷率特定部74は、インバータ40を低周波数域から定格周波数付近までの間で動作させて、トルク検出部41で検出した駆動トルクに基づいて、インバータ40の出力周波数とモータ20の駆動トルクとの対応関係(周波数毎の負荷率)を特定する。
なお、負荷率特定部74は、インバータ40を低周波数域から定格周波数付近までの間で動作させて、対応関係を特定する方法に代えて、別の方法を用いることもできる。
例えば、インバータ40を低周波数域の任意の一の周波数で動作させて、トルク検出部41で検出した駆動トルクを収集する。収集した駆動トルクを用いてトルク値算出部73で駆動トルクの統計値(例えば、平均値、中央値、最頻値など)を算出する。算出した統計値に基づいて、負荷率特定部74は、インバータ40の出力周波数(前述の一の周波数以外の他の周波数)に対するモータ20の駆動トルクを推定して、インバータ40の出力周波数とモータ20の駆動トルクとの対応関係(周波数毎の負荷率)を特定する。
より具体的には、例えば、予めインバータ40の出力周波数に対するモータ20の負荷率との関係が直線近似(又は曲線近似)され、当該直線の傾き又は曲線の近似式等が分かっている場合に、近似した直線又は曲線が、収集した統計値に対応する座標を通るように直線又は曲線を補正し、補正した直線又は曲線の点(座標)をインバータ40の出力周波数に対するモータ20の駆動トルクとして求めることができる。
トルク値補正部75は、負荷率特定部74で特定した対応関係に基づいて、トルク検出部41で検出した駆動トルクを補正する。対応関係として、インバータ40の出力周波数に対する負荷率(モータの定格トルクに対する負荷率)を特定し、検出した駆動トルクTmが実トルクTとほぼ同程度になるように、検出した駆動トルクTmを補正する。これにより、モータ20の駆動電流値には現れないモータ軸の慣性による慣性付加トルクを加味した実トルクTを補正駆動トルク値として求めることができる。
図10は駆動トルク値の補正の一例を示す説明図である。図10において、横軸はインバータ40の出力周波数fを示し、縦軸は補正した補正駆動トルク値K(f)×Tmを示す。図10に示すように、低周波数域(例えば、6Hz)での駆動トルクをTmとすると、任意の周波数fにおける補正駆動トルクは、K(f)×Tmで求めることができる。ここでK(f)は、周波数fを変数とする関数であり、周波数fが大きくなるに応じて補正駆動トルク値は、駆動トルクTmより大きくなる。なお、K(f)>1である。これにより、モータ20の駆動電流値には現れないモータ軸の慣性による慣性付加トルク成分に応じて、駆動トルクTmを実トルクTに近似する補正をすべての周波数域で行うことができる。
回転数制御部71は、補正駆動トルク及び所定のトルク閾値の大小に応じて、インバータ40の周波数を制御して粉砕機本体50の回転軸の回転数を制御する制御部の機能を有する。ここで、モータ20のモータ軸は、減速機30を介して回転軸に繋がっているので、回転軸の回転数を制御することは、インバータ40の出力周波数を変えて、モータ20のモータ軸の回転数を制御することと同義である。
また、回転数制御部71は、トルク検出部41で検出したトルクに基づいて、あるいは自身の周波数の指令でモータ20が定トルク特性で動作しているか定出力特性で動作しているかを予測することができる。
回転数制御部71は、例えば、モータ20を基底回転数以上の回転数で動作させた場合に、補正駆動トルク及び所定のトルク閾値の大小に応じて、粉砕機本体50の回転軸の回転数を制御する。インバータ40で制御されるモータ20の出力特性は、基底回転数以下の回転数では定トルク特性を有し、基底回転数以上の回転数では定出力特性を有する。回転数制御部71は、モータ20を基底回転数以上の回転数で動作させた場合、すなわち、定出力領域で動作させた場合、補正駆動トルク及び所定のトルク閾値の大小に応じて粉砕機本体50の回転軸の回転数を制御する。
例えば、補正駆動トルクが閾値より小さい場合、軽負荷であるので回転数を上げてトルクを減らし粉砕処理能力を高める。また、補正駆動トルクが閾値より大きい場合、重負荷であるので回転数を下げることによりトルクを増やし過負荷停止を防止する。これにより、負荷特性に応じたトルク特性を実現し、かつ最大の処理能力を得ることができ、負荷変動に応じてトルクを変更することができるので、予め大容量(大定格)のモータを設ける必要がなく、また大容量のモータを低い負荷率で動作させる必要もないので、低価格で低容量のモータを用いることができるとともに省エネを図ることができる。
また実トルクに相当する補正駆動トルクを用いて回転数の制御を行うので、被粉砕物の粉砕、破砕状態によって過渡的な過負荷が発生した場合でも、回転刃、固定刃、回転軸、ギア又は減速機などの破損を防止することができる。
図11は従来の粉砕機の回転軸の回転数とインバータの周波数との関係を示す説明図であり、図12は従来のインバータ制御されたモータの出力特性の一例を示す説明図である。図11に示すように、従来、減速機の減速比は、1/80程度のものが用いられていた。インバータの出力電圧の基底周波数を50Hzとした場合、4極のモータの回転数(基底回転数)は1500rpmとなり、減速比1/80で減速された粉砕機の回転軸の回転数は、18.75rpmである。また、インバータの出力電圧の基底周波数を60Hzとした場合、4極のモータの回転数(基底回転数)は1800rpmとなり、減速比1/80で減速された粉砕機の回転軸の回転数は、22.5rpmである。
図12において、横軸はインバータの周波数と粉砕機の回転軸の回転数を示し、縦軸はモータの出力トルクを示す。図12に示すように、インバータの周波数を60Hz(基底周波数)とした場合に基底回転数が1800rpmに対応する粉砕機の回転軸の回転数である22.5rpmを境にしてモータの出力特性が変わる。基底回転数(回転軸の回転数22.5rpmに相当)以下では、定トルク特性となり、基底回転数以上では定出力特性となる。従来の粉砕機にあっては、粉砕処理能力を高めるために回転軸の回転数をある程度以上維持しつつ、多種多様な負荷による負荷変動に対応するため、十分な大きさのトルクが得られるように減速機の減速比を1/80程度のものとしていた。減速比を仮にさらに大きくした場合には、モータの基底回転数に対応する粉砕機の回転軸の回転数が小さくなり、定トルク特性が得られる周波数範囲が狭くなるとともに、回転軸の回転数を上げたときには、定出力特性となって十分なトルクが得られないという事態になるからである。
図13は実施の形態1の粉砕機100のモータ20の出力特性の一例を示す説明図である。図13において、横軸はインバータ40の周波数と粉砕機100の回転軸の回転数を示し、縦軸はモータ20の出力トルクを示す。図13中、実線は本実施の形態の粉砕機100のモータ20の出力特性を示し、破線は図12で例示した従来の粉砕機のモータの出力特性を示す。
図13中の破線で示すように、従来の粉砕機のモータは、粉砕機の回転軸の回転数が22.5rpm以下では定トルク特性であり、22.5rpm以上では定出力特性となり、トルクは回転数の増加に伴って減少する。従来の粉砕機は、負荷変動を見込んで最大のトルクが常に得られるように定トルク特性で運転されるが、ある程度の余裕を有して動作する設計になっている。このため、大容量(例えば、0.75kW)のモータを低い負荷率で運転することになり、十分な省エネ運転になっていない。
一方、図13中の実線で示すように、本実施の形態の粉砕機100のモータ20は、減速機30の減速比が、従来の1/80より大きい1/160であるので、インバータ40の基底周波数60Hzでモータ20のモータ軸が1800rpmの基底回転数で回転した場合、粉砕機100の回転軸の回転数は11.25rpmとなる。すなわち、本実施の形態の粉砕機100のモータ20は、粉砕機100の回転軸の回転数が11.25rpm以下では定トルク特性であり、従来の粉砕機と同じトルクを出力することができ、回転数が11.25rpm以上では定出力特性となり、トルクは回転数の増加に伴って減少する。また、本実施の形態のモータ20の容量(定格)は0.4kWであり、従来の粉砕機で用いられたモータの容量よりも小さい。
図13中のAで示す領域内のように重負荷で大きいトルクを必要とする場合、すなわち、補正駆動トルクがトルク閾値より大きい場合、回転数制御部71は、インバータ40の周波数を小さくすることにより粉砕機本体50の回転軸の回転数を下げる。例えば、負荷変動により補正駆動トルクがトルク閾値を超えた場合、回転軸の回転数を下げることによりトルクを増加させる。これにより、重負荷になった場合でも、必要なトルクが得られ、負荷変動に対応させて粉砕処理能力を高めることができる。
また、図13中のBで示す領域内のように軽負荷で大きいトルクを必要としない場合、すなわち、補正駆動トルクがトルク閾値より小さい場合、回転数制御部71は、インバータ40の周波数を大きくすることにより粉砕機本体50の回転軸の回転数を上げる。例えば、負荷変動により補正駆動トルクがトルク閾値を下回る場合、回転軸の回転数を上げることによりトルクを減少させる。これにより、軽負荷になった場合でも、必要なトルクを維持しつつ回転数を増やすことができ、負荷変動に対応させて粉砕処理能力を高めることができる。また、本実施の形態では、インバータ40として周波数可変の汎用のインバータを用いることができる。
回転数制御部71は、補正駆動トルクがトルク閾値より大きい場合、補正駆動トルクがトルク閾値以下になるまで、所定の減速勾配で回転数を下げる。所定の減速勾配は、例えば、1秒間でインバータの周波数を5Hzだけ減少させたときの回転軸の回転数とすることができる。なお、回転数は、時間変化に対応して連続的に変化させてもよく、離散的(段階的)に変化させてもよい。これにより、回転軸の回転数を急激ではなく徐々に下げることができる。なお、減速勾配は、上述の5Hzに限定されるものではない。
回転数制御部71は、所定時間の間、補正駆動トルクがトルク閾値より小さい場合、所定の加速勾配で回転数を上げる。所定時間は、例えば、10分、5分など予め設定しておくことができる。また、所定の加速勾配は、例えば、1秒間でインバータの周波数を5Hzだけ増加させたときの回転軸の回転数とすることができる。なお、回転数は、時間変化に対応して連続的に変化させてもよく、離散的(段階的)に変化させてもよい。これにより、回転軸の回転数を急激ではなく徐々に上げることができる。なお、加速勾配は、上述の5Hzに限定されるものではない。
図13の破線で示すように、従来の粉砕機にあっては、減速機の減速比を、例えば、1/80程度にすることにより、モータの基底回転数が1800rpm(インバータの基底周波数が60Hz)では粉砕機の回転軸の回転数が22.5rpm程度まで定トルク特性が得られるようにしていた。また、モータの基底回転数が1500rpm(インバータの基底周波数が50Hz)では粉砕機の回転軸の回転数が18.75rpm程度まで定トルク特性が得られるようにしていた。
実施の形態1では、減速機30の減速比を従来のものより大きくし(例えば、1/160など)、モータ20を基底回転数の回転数で動作させた場合、粉砕機100の回転軸の回転数が18rpm以下となるようにする。なお、図13の例では、インバータ40の基底周波数が60Hzの場合、モータ20の基底回転数での粉砕機100の回転軸の回転数は、11.25rpmとなり、インバータ40の基底周波数が50Hzの場合、モータ20の基底回転数での粉砕機100の回転軸の回転数は、9.375rpmとなり、いずれも18rpm以下である。これにより、モータ20の定トルク領域の範囲を従来のものより狭くし、定出力領域の範囲を広くすることができ、負荷変動に対応して広い範囲で回転数及びトルクの調整を行うことができるので、より大きな負荷変動に対応することができる。なお、モータ20の基底回転数での粉砕機100の回転軸の回転数は、図13に例示する11.25rpmに限定されるものではなく、18rpm以下であれば、従来に比べて回転軸の回転数の広い範囲で定出力特性を活用することができる。
図14は実施の形態1の粉砕機100のトルク閾値の一例を示す説明図である。図14において、横軸は粉砕機100の回転軸の回転数を示し、縦軸はモータ20の出力トルクを示す。図14中実線は、モータ20の連続出力可能トルク特性を示し、いわゆる定格(100%)でのトルク特性を表す。また、図14中一点鎖線は、短時間であれば出力可能な電気機器の回転体の慣性を含めた最大瞬間出力可能トルク特性を示し、例えば、定格の200%程度の出力である。また、破線はトルク閾値を示し、例えば、定格の120%〜200%程度の値を設定することができる。トルク閾値は、予め記憶部78に記憶しておくことができる。
判定部72は、所定の判定時間の間に被粉砕物の粉砕の可否を判定し、回転数制御部71は、判定部72で粉砕が可であると判定した場合、回転軸の回転数を制御する。判定時間は、例えば、5分、10分などの時間とすることができる。判定時間の間、粉砕機に被粉砕物を投入して、投入した被粉砕物が粉砕可能であるか否かを判定し、粉砕可能であると判定した場合に、回転軸の回転数を制御して実運転(実際に被粉砕物を粉砕する運転)を行う。判定時間の間に、被粉砕物の粉砕、破砕状態によって変化する駆動トルクのバラツキを考慮した上で、粉砕の可否を判定するので、被粉砕物の粉砕が可能であるか否かを確実に判定することができる。
操作部76は、被粉砕物の粉砕の可否を判定するための操作(例えば、粉砕可否判定運転の開始の操作)を受け付ける受付部としての機能を有する。判定部72は、操作部76で操作を受け付けた場合、被粉砕物の粉砕の可否を判定する。これにより、実運転を行う前に被粉砕物の粉砕の可否を確認するための判定運転を行うことができるので、ユーザの利便性が向上する。
表示部77は、判定部72で被粉砕物の粉砕の可否を通知する通知部としての機能を有する。例えば、判定部72で被粉砕物の粉砕が否であると判定した場合、表示部77は、その旨を通知する。これにより、粉砕時に破損を与えかねない被粉砕物を事前に確認することができ、回転刃、固定刃、回転軸、ギア又は減速機などの破損を未然に防止することができる。
従来、粉砕機を運転させて被粉砕物を粉砕する場合、投入した被粉砕物が粉砕機の能力を超えないか否かは、モータの駆動トルクを表す電流信号(駆動電流)で判断していた。しかし、上述のとおり、モータの回転軸等の慣性による追加慣性トルクが駆動電流には現れない状態で駆動トルクに加算されていることがわかった。すなわち、従来のトルク検出機構では、全く検出することができない追加慣性トルクが発生していたため、粉砕機の能力内で被粉砕物を粉砕していると考えられた場合にも、回転刃、固定刃、回転軸、ギア、減速機などの部品の破損に至ることがあった。本実施の形態によれば、追加慣性トルクという要因を発案するとともに、実トルクが、駆動トルクと追加慣性トルクの合計であることを発案し、モータの定格トルクに対する負荷率を考慮することにより、検出した駆動トルクを、従来では計測できなかった実トルクに近似することができる。これにより、従来のように駆動トルクを検出するだけで、インバータの動作周波数全域に亘って実トルクを求めることができ、負荷に与えるトルクを把握することができるので、粉砕機の能力を超えることなく様々な形状又は材質の被粉砕物を粉砕することができ、粉砕機の信頼性を飛躍的向上させることができる。
また、従来であれば、被粉砕物の粉砕時に粉砕機の能力を超えないようにするため、機械的トルクリミッタなどの保護装置を設ける必要があった。しかし、トルクリミッタが滑っているか否かは非常に短時間で発生するため、確認することができない場合が多く、クラッチフェーシング部の摩滅又は焼付きなどの問題も生じる。さらに滑りを検出して粉砕機を停止させるには、設置スペースの増加、コスト上昇などの問題もあった。本実施の形態によれば、保護装置が不要となりコスト低減及び粉砕機の大型化を抑制して小型化を図ることができる。
(実施の形態2)
上述の実施の形態1では、モータ20の駆動トルクを検出する構成であったが、駆動トルクに限定されるものではない。すなわち、モータ20の駆動トルクに関連する特徴量として、駆動トルクTmに代えて、モータ20のトルク電流Ir又はモータ20の負荷電流Iなどを用いることもできる。
図15は実施の形態2の粉砕機200の回路構成の一例を示すブロック図である。図15に示すように、図3に示す構成との相違点は、トルク検出部41に代えて、電流検出部21を備える点である。
電流検出部21は、モータ20のトルク電流Irを検出する構成でもよく、あるいはモータ20の負荷電流を検出する構成でもよく、いずれもモータ20の駆動トルクTmの代用特性としての特徴量を検出するものである。
モータ20の入力電圧と入力電流との位相角をθとすると、トルク電流Ir=負荷電流I×cosθの関係がある。cosθは力率である。力率cosθは、負荷状態に応じて、例えば、20%〜80%程度の値を用いることができる。
また、駆動トルクTmとトルク電流Irとの関係は、例えば、Tm=k×Pw/Vf、Pw=V×Ir×ηと関係付けることができる。ここで、kはモータ20により決定される定数、Pwは出力電力、Vfはモータ20の回転数、Vは入力電圧、ηは効率である。すなわち、モータ20のトルク電流Ir又はモータ20の負荷電流Iを検出することにより、モータ20の駆動トルクTmを求めることができる。
電流検出部21で検出したモータ20のトルク電流Ir、あるいはモータ20の負荷電流Iを、前述の変換式に基づいて、モータ20の駆動トルクTmに変換することができる。なお、駆動トルクTmへの変換処理は、制御部70で行うことができる。これにより、実施の形態2においても実施の形態1と同様に各処理を行うことができる。
(実施の形態3)
上述の実施の形態では、いわゆる1軸式の粉砕機を例に挙げて説明したが、粉砕機は1軸式に限定されるものではなく、複数の回転軸と、各回転軸に回転刃が設けられた粉砕機であってもよい。
図16は実施の形態3の粉砕機本体150の一例を示す要部断面図である。実施の形態1、2との相違点は、回転刃が固定された回転軸を2つ備える点である。図16において、シャーシ170の内側に横向きに2つの回転軸151、161を平行に配設してある。なお、回転軸151、161それぞれに減速機、モータ(不図示)を備えてもよく、あるいは、1つのモータ及び減速機で2つの回転軸151、161を回転するようにしてもよい。なお、回転軸151、161は、図16中の矢印で示す向きに同一速度で同期回転する。
回転軸151には、複数枚の大径の回転刃153が、回転軸151の軸方向に沿って所定の離隔寸法を設けて並べて嵌着されている。隣り合う回転刃153の間には、小径のカラー152を固定してある。回転刃153の周囲には、回転方向に向かって先端部(刃先部)が湾曲したアーム状をなした刃部154を突設してある。
また、同様に、回転軸161には、複数枚の大径の回転刃163が、回転軸161の軸方向に沿って所定の離隔寸法を設けて並べて嵌着されている。隣り合う回転刃163の間には、小径のカラー162を固定してある。回転刃163の周囲には、回転方向に向かって先端部(刃先部)が湾曲したアーム状をなした刃部164を突設してある。
シャーシ170の内壁には、案内壁156、166が設けられている。案内壁156の下側にはスクレーパ155を設けてある。スクレーパ155は、カラー152の外周と摺動可能に当接してあり、回転刃153の回転軌道に合わせて先端が櫛形状をなす。また、案内壁166の下側にはスクレーパ165を設けてある。スクレーパ165は、カラー162の外周と摺動可能に当接してあり、回転刃163の回転軌道に合わせて先端が櫛形状をなす。
実施の形態3の粉砕機本体150は、図3又は図15で示した場合と同様の構成により稼働させることができる。
シャーシ170上方の開口部171から被粉砕物を投入した場合、回転中の回転刃153、163、刃部154、164により被粉砕物をシャーシ170の中央部に引き込むことができ、被粉砕物を刃部154、164により粉砕(切断)することができる。粉砕された粉砕片は、回転刃153、163の回転に伴ってシャーシ170の下方へ排出される。
回転刃153、163の回転に伴って一緒に上方へ移動する粉砕片は、スクレーパ155、165により下方へ掻き落すことができる。
上述の実施の形態では、粉砕機について説明したが、上述の実施に形態は、粉砕機に限定されるものではなく、回転軸(回転体)を回転させて所定の処理を行う装置であれば、粉砕機に限らず産業機械に用いられる電気機器にも適用することができる。すなわち、本実施の形態は、粉砕機に限定されるものではなく、他の電気機器も含む。このような電気機器としては、回転軸に回転体を備えるものであり、例えば、工作機械、圧延機、フォーミング加工機、鉄鋼機械、エレベータ、巻き上げクレーンなどである。
すなわち、このような電気機器においても、インバータを定格周波数よりも低い低周波数域で動作させ、回転体で所要の処理(例えば、負荷が過渡的に変動するような処理)を行って、モータの許容トルク範囲内での回転体による処理の可否を判定する判定部を具備させる。インバータの定格周波数は、例えば、50Hz又は60Hzであり、低周波数域は、例えば、数Hzから20Hz程度の周波数である。好ましくは定格周波数の10%程度であり、5Hz又は6Hz±数Hzとすることができる。インバータの出力周波数を定格周波数(50Hz又は60Hz)でインバータを動作させ、回転体を回転させた場合、過渡的な過負荷が発生し、回転体(回転軸)には大きな負荷がかかる。仮に回転軸に比べて高速で回転するモータ軸の慣性が大きい場合、回転軸に過負荷が加わったときには、高速で回転しているモータ軸の大きな慣性により、モータの駆動トルク(モータの駆動電流により出力するトルク)を遥かに上回る慣性付加トルク(慣性モーメントと角加速度の乗算値)が生じ、実トルク(実際に負荷に与えるトルク)は、モータの駆動トルクと慣性付加トルクの合計値となる。すなわち、インバータを定格周波数で動作させた場合、実トルクは、モータの駆動トルクだけではなく、駆動トルクに慣性付加トルクが加わった、駆動トルクよりも大きなトルクになる。このため、従来のように、駆動トルクが許容範囲内にあるか否かで回転体による処理の可否を判定した場合、実際には予期しない大きなトルクが負荷に与えられているため、実トルクが許容範囲を超えている事態が起こり得る。
一方、負荷に与えるトルク(実トルク)、すなわち回転体が負荷に与える力は、回転軸(回転体)の回転数(インバータの出力周波数)の大小にかかわらず同じである。そこで、インバータを、出力周波数が低周波数域内にある状態で動作させて、モータ軸の回転数を小さくして(下げて)、回転体の慣性による慣性付加トルクの影響を極力少なくすることで、駆動トルクが実トルクに近づく状態で処理させる。この場合に駆動トルクが許容範囲内であるか否か判定することで、当該処理を行った場合に、実トルクが許容範囲内であるかを近似的に判定することができる。これにより、インバータの出力周波数を定格周波数、定格周波数以上又は定格周波数以下にした場合であっても、実トルクが許容範囲内にあるか否かを判定しているので、過渡的な過負荷が発生した場合でも実トルクが許容範囲を超えることがなく、当該処理が可能であるか否かを確実に判定することができる。