JP5614691B2 - 帯鋼又は鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
また、途中で孔型ロール圧延を加えることによって例えば3mmφまで圧延すれば、この段階で大ひずみの導入が可能である。大ひずみの導入が可能となれば、その後の焼鈍によって粒径を制御でき、その結果、力学的性質の制御も可能となる。本発明者は、前記の熱間圧延鋼線材等をスタート材とすることによって、微細組織を有する高強度で且つ高延性の板厚が薄く、板幅が狭い帯鋼又は鋼板の製造方法を発明した。
以下、本願発明の特徴について述べる。
TH=D 0 (t/d 0 )≦0.6μm・・・・・・(B)
TH:得られた鋼材の平均フェライト粒界間隔
D 0 :初期粒径
d 0 :鋼線状若しくは鋼線又は棒鋼の直径又は対辺面間長さ
t:圧延後の帯鋼又は鋼板の厚さ
で表わされると共に、
TH≦0.6μm
を満たすことに特徴を有するものである。
d1’≦d0×0.6 ・・・・・・(5)
d0:鋼線材若しくは鋼線又は棒鋼の直径又は対辺面間長さ
d1’:圧延材の直径又は対辺面間長さ
を満たすことに特徴を有するものである。
d2’≦d0×0.3 ・・・・・・(6)
d0:鋼線材若しくは鋼線又は棒鋼の直径又は対辺面間長さ
d2’:異形断面材の短辺長さ
を満たすことに特徴を有するものである。
d3’≦d0×0.25 ・・・・・・(7)
d0:鋼線材若しくは鋼線又は棒鋼の直径又は対辺面間長さ
d3’:薄帯状材の厚さ
を満たすことに特徴を有するものである。
炭素鋼又はフェライト系ステンレス鋼若しくはオーステナイト系ステンレス鋼からなるスタート材(これらの直径又は対辺面間長さをいずれもd0で表記する)に対して、常温から250℃以下の範囲内の圧延温度において、平ロール圧延を行なうことにより、板厚をtまで圧延して薄帯鋼板を製造するときに、(1)式:
ln(d0/t)≧2.3 ・・・・・・(1)
を満たすことにより、大ひずみを導入することができる。本願発明においては、薄帯鋼板の用途により、必ずしも、薄帯鋼板を焼鈍して、材料内部の転位密度を低下させなくとも、強度及び延性を確保し得る場合もあるが、一方、強度を一定値以上に保持しつつ、延性を優れた水準に高めることが望ましい場合もある。この場合を考慮すると、上記(1)式を満たすことが必要である。
その際、被圧延材に導入すべきひずみは、圧延温度が、冷間温度領域の場合(本願発明においては、常温から250℃以下)、及び温間温度領域の場合(本願発明においては、250℃超えから800℃以下)のいずれの場合でも有効である。
更に、(1)式を満たす大ひずみが導入される限り、圧延方法が孔型ロール圧延であっても、あるいは平ロール圧延であっても可であり、また、1パス当たりのひずみ導入量については、通常行われている生産工場の圧延設備の能力範囲内であればよい。
本願発明により製造しようとする薄帯鋼板は、平ロールにより圧延が完了した段階の圧延ままの状態で、実質的な微細組織となるような加工硬化組織を得る必要がある。ここで、加工硬化組織とは、フェライト結晶粒界間隔THを指標とすることとし、TH≦2μmとすることが必要である。望ましくはTH≦0.6μmとすることがよい。
転位密度を十分に高くする観点から、ひずみeを、e≧2.3とする必要がある。
熱間圧延又は熱間鍛造により製造された上記スタート材(これらの直径又は対辺面間長さを、いずれもd0とし、ここでは、「スタート材の厚さ」と呼ぶ)の平均フェライト粒径は、一般に10〜20μmであることが公知である。
このスタート材に対して、上記冷間温度領域及び温間温度領域のいずれにおいても、圧延によりひずみを導入した場合、得られた鋼材の平均フェライト粒界間隔TH(μm)は、初期粒径をD0とし、被圧延材に導入されたひずみをeとすると、幾何学的に、
TH=D0exp(−e) ・・・・・・(A)
となる。
従って、(A)式と、e=ln(d0/t)とから、
TH=D0exp(t/d0) ・・・・・・(B)
但し、t :圧延により得られた上記鋼材の厚さ
d0:スタート材の厚さ
が得られる。
なお、TH≦0.6μmとすることが望ましいが、上記条件においてこれを実現するためには、上記(A)式により、e≧3.5とすればよい。
スタート材(前記d0)から薄帯鋼板(前記t)までにおいて、その圧延過程の中間段階における被圧延材料(本願発明における前記d1、d2又は、d3のいずれか)までに、所定量のひずみを被圧延材に導入することにより、圧延工程の全体を考えた場合に、圧延パス毎にひずみ量の変動が大きい圧延パススケジュールを回避することができる。このようなパススケジュールを設定するためには、下記(2)、(3)若しくは(4)式、又は(2’)、(3’)若しくは(4’)式:
d1≦d0×0.6 ・・・・・・(2)
d2≦d0×0.3 ・・・・・・(3)
d3≦d0×0.25 ・・・・・・(4)
d1’≦d0×0.6 ・・・・・・(5)
d2’≦d0×0.3 ・・・・・・(6)
d3’≦d0×0.25 ・・・・・(7)
の内、少なくともいずれかを満たすことが望ましい。
<1>中間段階の圧延材の断面形状を円又は四角形状(直径又は対辺面長さd1 又は d1 ’ )とする場合
この場合は、孔型ロール圧延の最終パスの孔型形状をスクエア又はラウンドにすることができる。また、所望の市販品コイルを購入することも可能である。特に制限する必要はない。
<2>中間段階の断面形状を断面がオーバル形状又は長方形の材料である異形断面材(短辺長さd2 又はd2 ’ )とする場合
この場合は、次の複数パスの平ロール圧延により、目標とする寸法の薄帯鋼板に圧延する最初のパスへ噛み込ませる工程で、噛む込み不良による材料の捻じれに起因する表面疵の発生を防止するために望ましい。
<3>中間段階の断面形状を薄帯状材(厚さd3又はd3 ’ )とする場合
上記<2>の後で更に1パス又は2パスの平ロール圧延をするので、被圧延材の断面形状がより一層、最終の薄帯鋼板の寸法・形状に近くなっているので、この後の複数パスの平ロール圧延のパススケジュールを弾力的に運用することができる。従って、圧延工程の運用上、望ましい。
このようなパススケジュールを採用することにより、できるだけ多方向から圧下方向することができる。よって、ひずみの導入をより一層正確に評価し得る有限要素法を用いた計算による塑性ひずみ(ε)の導入に効果的であり、結晶粒の微細化の必要条件を優位にすることができる。
オーバル孔型ロールによる圧下方向とこれに次ぐスクエア孔型ロール又はラウンド孔型ロールによる圧下方向とは直角とすることにより、塑性ひずみ(ε)の導入に効果的である。
また、オーバル孔型ロールに断面がスクエア形状の材料を噛み込ませる場合は、直前のスクエア孔型ロールによる圧下方向に対して45°の角度となるように噛み込ませることにより、被圧延材の4角形の対辺面がオーバル孔型の湾曲面で圧下されるように圧延を行なうことができる。こうすることにより、1パス当たりの減面率が大きくても、圧延中における材料の倒れや捻転が発生せず、断面形状が良好であり、また表面性状も良好に保持することが可能となる。更に、被圧延材の中心部までひずみを導入するのに有利となり、結晶粒の微細粒化に寄与する。
オーバル孔型ロールとスクエア孔型ロール又はラウンド孔型ロールとの圧延ライン方向のロール軸心間距離(Lで表記)が、各孔型ロールの半径(それぞれD(OV)/2、D(SQ)/2又はD(RD)/2で表記)との間に、下記(8a)又は(8b)式の関係を満たすように、
L≦{(D(OV)/2)+(D(SQ)/2)}×1.5・・・・・(8a)
L≦{(D(OV)/2)+(D(RD)/2)}×1.5・・・・・(8b)
且つ、前記各孔型ロールの外径周速度(それぞれV(OV)、V(SQ)又はV(RD)で表記)が、当該オーバル孔型ロールとスクエア孔型ロール又はラウンド孔型ロールとの二つの孔型ロールによる被圧延材の総減面率(R(OV+SQ)又はR(OV+RD)で表記)との間に、下記(9a)又は(9b)式の関係を満たすように、
V(SQ)/V(OV)=A・R(OV+SQ)+B・・・・・・・・・(9a)
V(RD)/V(OV)=A・R(OV+RD)+B ・・・・・・・・(9b)
但し、 A及びBは定数であって、
0.017≦A≦0.019
0.66≦B≦0.68
圧延することにより、被圧延材に捻転が発生せず、しかも下流側孔型ロールへの被圧延材の噛み込み充満度が適正となり、表面疵発生の防止及び断面形状の制御が良好となる。
スタート材から薄帯鋼板までの圧延過程における大ひずみの導入により、圧延のままの状態で強度として降伏強さが1.0GPa以上と高水準にあることは勿論であるが、絞りRAも20%以上が保持されている。従って、用途によっては、焼鈍無しでも使用することが可能である。しかしながら、一層の強度と延性バランスを必要とする場合には、本願発明の製造方法により得られる薄帯鋼板の焼鈍条件としては、焼鈍温度を400〜700℃の範囲内において、機械的性質を制御することができる。
薄帯鋼板の組織において、THの微細化により強度を向上させることができる。これが2μm以下であることが、強度と延性バランスから望ましい。更に望ましくは0.6μm以下であることがよい。更には、薄帯鋼板の板厚方向の方位差角が5度以上の平均フェライト結晶粒間隔THが0.6μm以下であれば、一層望ましい。
温間孔型ロール圧延装置として、図1に示す側面の概略外観を示す試験用の温間孔型ロール圧延装置を用いた。同図中、符号19’が2機の孔型ロール圧延機が直列に近接して配設された圧延基(以下、本願明細書においては「2機近接圧延基」と称し、この内、圧延ライン上流側の圧延機を「第1圧延機」と称し、下流側の圧延機を「第2圧延機」と称する)であり、符号9が鋼線材のコイル供給装置、符号18が鋼線材のコイル巻取装置である。
上記温間孔型ロール圧延装置を用い、下記の第1から第3工程の温間孔型ロール圧延を行なった。
この際も、第1圧延機に噛み込ませるときには、第2工程におけると同様、図4に示すように、第1圧延機のオーバル形状(A)の孔型ロールの湾曲面に対して鋼線材の横断面の4角形状(B)の対辺面が噛み込まれるようにした。また、第3工程における材料の減面率は35.1%であった。なお、第1工程から第3工程までの材料の総減面率は78.2%となる。
第1工程では、第1圧延機のオーバル孔型に噛み込まれる材料は、断面が円で、d0=6.0mm、
第2工程では、第1圧延機のオーバル孔型に噛み込まれる材料は、断面が4角形であり、C=3.9mm、
第3工程では、第1圧延機のオーバル孔型に噛み込まれる材料は、断面が4角形であり、C=3.1mm
である。そして、第1から第3各工程のオーバル孔型の最大短軸長さ(H)は順に、2.5mm、2.0mm、2.1mmであるから、両者の比の値は、次の通りとなる。
第1工程では、H/d0=2.5/6.0=0.42、
第2工程では、H/C=2.0/3.9=0.51、
第3工程では、H/C=2.1/3.1=0.68
これらはいずれも0.70以下となっている。このように、上記比の値が0.70以下である孔型ロール圧延を行なうと、相対的に小さな減面率であって、少ないパス数で、大きなひずみが被圧延材に導入され、フェライト結晶粒の微細化に効果的である。
更に、第1から第3の各工程における二つの孔型ロールによる被圧延材の総減面率(R)は、順に46.2%、38.0%、35.1%であり、そして、第1圧延機の孔型ロールの外径周速度(V(1))に対する第2圧延機の孔型ロールの外径周速度(V(2))の比を、
第1工程ではV(2)/V(1)=1.50、
第2工程ではV(2)/V(1)=1.30、
第3工程ではV(2)/V(1)=1.28
とした。
V(2)/V(1)=A・R(2+1)+B
但し、 A及びBは定数であって、
0.017≦A≦0.019
0.66≦B≦0.68
以上の温間孔型ロール圧延により得られた線径が2.8mmφの鋼細線材コイルからサンプリングして、引張試験及びフェライトのミクロ組織を観察した。その結果、引張強さが710MPa、絞り75.5%であり、フェライト組織は等軸結晶粒であり、平均結晶粒径は1μmであった。
上記試験条件及び試験結果を、表3及び表4にまとめた。
上記において、スタート材の直径(d0)が、d0=6.0mmであり、孔型ロール圧延で得られた鋼細線状の材料の直径(d1)が、d1=2.8mmであるから、
d1/d0=0.47≦0.6
となり、本発明の要件の内、(5)式を満たしている。
次に、上記で得られた線径2.8mmφの温間孔型ロール圧延仕上がりのコイル状に巻かれた鋼細線を、冷間平ロール圧延により板厚が0.16mmの薄帯鋼板を調製した。冷間平ロール圧延方法は次の通りである。
上記2.8mmφの温間孔型ロール圧延の鋼細線を、次の(1)から(4)の冷間圧延工程で0.16mm厚×20mm幅にした。
(1)コイル状の2.8mmφの温間圧延鋼線材を冷間クロス圧延により、複数パスを行なうことにより、1.2mm厚×10mm幅のコイルにした。
(2)これを450℃×30分の窒素ガス雰囲気にて軟化加熱処理して炉中空冷し、冷間圧延を複数パス行なうことにより、0.43mm厚のコイルとした。
(3)これを450℃×30分の窒素ガス雰囲気にて軟化加熱処理して炉中空冷し、冷間クロス圧延により、複数パスを行なうことにより、0.215mm厚×20mm幅の薄帯鋼板コイルとした。
(4)次に、コイルサイド部をスリットした後、冷間圧延を複数パスを行なうことにより0.16mm厚の薄帯鋼板のコイルに仕上げた。
ln(d0/t)=3.6≧2.4
となるので、本発明の要件の内、式(1)を満たしている。
表5に、引張試験の結果及び板厚方向の平均フェライト粒界間隔THを示す。
使用した装置は、実施例1で使用した温間孔型ロール圧延で使用した装置であるが、圧延温度条件を常温から200℃以下の冷間圧延温度範囲に設定したことが異なっているが、第1及び第2工程で用いた孔型ロールは実施例1で使用したものと実質的に同一のものを用い、第3及び第4工程では、実施例1とは異なるロールを用いたパススケジュールで行なった。但し、第1及び第2工程における被圧延材の減面率(R)と前後ロールの回転周速度(V(OV)、V(SQ))との関係についての設定条件は、下記の前記(9a)式を満たすように設定した。
V(SQ)/V(OV)=A・R(OV+SQ)+B・・・・・・・・・(9a)
但し、 A及びBは定数であって、
0.017≦A≦0.019
0.66≦B≦0.68
第1工程及び第2工程はいずれも、オーバル孔型に次ぐスクエア孔型による2パス圧延であって、第1圧延機と第2圧延機による圧下方向とは直角とした。
第3工程は、第1圧延機のみを用い、オーバル孔型を用いた。第2工程及び第3工程においては、第1圧延機のオーバル孔型に噛み込ませる被圧延材の方向として、被圧延材断面の4角形の対辺面がオーバル孔型の湾曲面で圧下するようにし、且つ当該圧下方向が直前のパスで被圧延材が受けた圧下方向に対して、45°の角度となるように圧延を行なった(図1〜4を参照)。
第4工程でも第1圧延機のみを用い、これを平ロールに組み替えて、1パスの冷間平ロール圧延を行なって、厚さ1.1mm、板幅6.9mmの薄帯状の材料とし、コイル状に巻き取った。
上記第1工程から第4工程の各工程の終了時における被圧延材の断面寸法は、次の通りであった。
第1工程終了後:対辺面間長さが4.0mm×4.0mmの4角形状
第2工程終了後:対辺面間長さが3.5mm×3.1mmの4角形状
第3工程終了後:短辺が2.5mm×長辺が4.7mmのオーバル形状
第4工程終了後:厚さが1.1mm×幅が6.9mmの薄帯状の材料
d3/d0=0.18≦0.25
となるので、本発明の要件の内、式(4)を満たしている。
次に、1スタンドの4段圧延機を用い、ロール径が120mmでロール幅が270mmのワークロールにより、1工程1パスの冷間平ロール圧延を7工程で合計7パス行ない、合計7パスの圧延を行なうことにより、上記板厚1.1mm×幅6.9mmのコイル状の薄帯状の材料から、板厚0.16mm×板幅10.0mmの薄帯鋼板のコイルを得た。上記7パスの冷間平ロール圧延による被圧延材の厚さの減少経過は次の通りである(単位は全てmm)。
厚さ1.1mm→0.7→0.4→0.3→0.25→0.2→0.18
→厚さ0.16mmで幅10.0の薄帯鋼板
圧延温度は、スタート材料から薄帯鋼板までの全行程を通じて、200℃未満であった。
ln(d0/t)=3.6≧2.4
となるので、本発明の要件の内、式(1)を満たしている。
実施例2(下記の4例)
冷間圧延のまま(焼鈍前)
450℃×40分の焼鈍材
550℃×40分の焼鈍材
650℃×40分の焼鈍材
比較例2
750℃×40分の焼鈍材
表7に、上記試験結果を示す
冷間圧延のままの0.16mm材に対し、試験片形状が幅5mm×ゲージ長40mmの引張試験片を作製し、引張試験を行なったところ、弾性変形のみで、塑性変形を伴わず、破壊する。引張強さとしては1.2GPaあったものの、延性がなかった。
焼鈍温度を変えることによって、引張強さTSを0.5〜1.2GPaの範囲で制御できる。
このとき、降伏強さYSは0.4〜1.1GPaとなり、破断強さFSと引張強さTSとの比FS/TSの値は、1.2を超えており、延性にも優れている。
<1>冷間圧延のまま材、<2>450℃×40分、<3>550℃×40分、<4>650℃×40分、及び<5>比較例2である750℃×40分の各焼鈍材について行なった。ギロチンせん断試験条件は、0.16mm厚×10mm幅×約1m長さの試験片を調製してギロチンせん断加工試験を行なった。その際、固定刃と移動刃とのクリアランスはほぼ0で行なった。
図7に、せん断加工面の外観写真を示す。
せん断面の総合評価を良好(○)、やや良好(△)、やや不良(×)に分類する。
<1>焼鈍なし(冷間圧延のまま)材では、せん断面比率が不均等であり、30%程度を主体として25〜70%程度の分布となっている(×)。
<2>450℃×40分焼鈍材では30%程度〜80%程度の分布となっている(×)。
<3>550℃×40分焼鈍材では、70%程度から90%程度の間の比較的安定した分布となっている(△)。
<4>650℃×40分焼鈍材では、せん断面比率は95%以上となっており、良好な結果となっている(○)。
<5>比較例2の750℃×40分焼鈍材においても、せん断面比率は95%以上となっており、良好な結果となっている(○)。
以上の結果より、焼鈍を行なうことが望ましく、450〜700℃が適切な条件であることがわかる。
このように、実施例2の製造方法で得られた本願発明の薄帯鋼板は、フェライト粒界間隔THが微細化され、高強度を有すると同時に、延性にも優れたものであることがわかる。
上記6.0mmφの熱間圧延鋼線材のコイルを用いて、温間における孔型ロール圧延及び平ロールも用いた圧延をした。この実施例3における温間における孔型ロール及び平ロール圧延方法は、圧延温度を400〜600℃の範囲内に設定したこと以外は、全て実施例2と同じである。即ち、使用した孔型ロール圧延装置、第1工程から第3工程までの計5パスの孔型ロール形状、パススケジュール、及び第4工程での1パスの平ロール諸元、並びに、第1工程から第4工程における被圧延材の圧下方向、及び被圧延材の孔型ロールへの噛み込み方向を実施例2と同一とし、更に、第1及び第2工程における孔型ロール圧延による被圧延材の減面率と前後ロールの回転周速度比との関係についての設定条件(前記(9a)式参照)も、実施例2での設定条件に準じて行なった(図1〜4を参照)。
上記第1工程から第4工程の各工程の終了時における被圧延材の断面寸法は、次の通りであった。
第1工程終了後:対辺面間長さが4.1mm×4.0mmの4角形状
第2工程終了後:対辺面間長さが3.4mm×3.3mmの4角形状
第3工程終了後:短辺が2.4mm×長辺が4.5mmのオーバル形状
第4工程終了後:厚さが1.0mm×幅が7.2mmの薄板形状
こうして、厚さ1.0mm×幅7.2mmのコイル状の薄帯状の材料に調製した。
d3 ’/d0=0.17≦0.25
となるので、本発明の要件の内、式(4’)を満たしている。
次いでこれを冷間における複数工程からなる複数パスの冷間平ロール圧延により、板厚0.18mm×幅13.1mmのコイル状の薄帯鋼板とした。この複数パスの平ロール圧延も、実施例2におけると同じ装置を用い、同じ圧延条件で行なった。
ln(d0/t)=3.5≧2.3
となるので、本発明の要件の内、式(1)を満たしている。
図8に、得られたコイルの外観写真を示す。コイルの表面及びエッジの性状は良好である。
冷間圧延のまま(焼鈍前)
450℃×40分の焼鈍材
550℃×40分の焼鈍材
650℃×40分の焼鈍材
比較例3
750℃×40分の焼鈍材
各試験材について、引張試験及びビッカース硬さ試験を行なった。また、SEMによるミクロ組織観察を行なった。
表8に、上記試験結果を示す。
冷間圧延のままの0.16mm材に対し、実施例2及び比較例2と同じ試験片形状で、引張試験をおこなったところ、引張強さとしては1.2GPaあったものの、全のびは2%以下であった。
本材料に対し、450℃で40分焼鈍を行ったところ、引張強さが1.0GPaに低下した。焼鈍によって、内部の転位密度を低下させたと示唆される。
焼鈍温度を550℃で40分にした場合、引張強さは0.8GPaに低下する。全伸びは2%を超えた。更に、焼鈍温度を650℃で40分とすると、引張強さ0.5GPaまで低下する。さらに、伸びは6.2%と大きくなる。実施例2と同様に、焼鈍温度を変えることによって、引張強さを0.5〜1.2GPaの範囲で制御できる。一方、焼鈍温度を750℃とした場合、全のびは16%まで増加するものの、引張強さは0.4GPaとなってしまう(比較例3)。
このとき、降伏強さYSは0.4GPa〜0.9GPaとなり、破断強さFSと引張強さTSとの比FS/TSの値は、1.2を超えており、延性にも優れている。
450℃、550℃の焼鈍では組織は伸長しており、フェライト粒界間隔THは0.4−0.5μmである。これに対して650℃×40分の焼鈍の場合、等軸状でその粒径は1.5μmである。
図11に、せん断加工面の外観写真を示す。
せん断面の総合評価を良好(○)、やや良好(△)、やや不良(×)に分類すると、
<1>冷間圧延のまま材では、やや不良(×)
<2>450℃×40分の焼鈍材では、やや良好(△)
<3>550℃×40分の焼鈍材では、ほぼ全面がせん断面であり、良好(○)
<4>650℃及び750℃×40分焼鈍材では、ほぼ全面がせん断面であり、良好(○)
<5>比較例4である750℃×40分の焼鈍材では、良好(○)
である。
このように、実施例3の製造方法で得られた本願発明の薄帯鋼板は、フェライト粒界間隔THが微細化され、高強度を有すると同時に、延性にも優れたものであることがわかる。
試験装置として、実施例2及び実施例3の後半における冷間における平ロール圧延で使用した、1スタンドの4段圧延機装置で、ロール径が120mmでロール幅が270mmのワークロールを用いた。上記6.0mmφのスタート材料に対して、1工程当たり1パスの冷間における平ロール圧延を7工程で合計7パスの平ロール圧延を行ない、板厚0.19mm×幅12.4mmのコイル状の薄帯鋼板鋼板材を得た。
この7パスによる板厚の減少経過は次の通りである(単位は全てmm)。
スタート材6.0mmφ→3.11→1.66→1.18→0.76
→0.50→0.26→厚さ0.19×幅12.4mm
ln(d0/t)=3.6≧2.3
となるので、本発明の要件の内、式(1)を満たしている。
図12に、得られたコイルの外観写真を示す。コイルの表面性状は良好である。
上記の板厚0.19mm×板幅12.4mm仕上がりのコイル材の薄帯鋼板からサンプリングして、実施例2におけると同じように焼鈍試験を行ない、焼鈍前の試験材(冷間圧延ままの試験材)及び下記条件の焼鈍をした試験材を採取した。
実施例4(下記の4例)
冷間圧延のまま(焼鈍前)
450℃×40分の焼鈍材
550℃×40分の焼鈍材
650℃×40分の焼鈍材
比較例4
750℃×40分の焼鈍材
各試験材について、引張試験及びビッカース硬さ試験を行なった。また、SEMによるミクロ組織観察を行なった。なお、ビッカース硬さ試験は、厚さ3.11mmから0.26mmの圧延中間段階の各材料についても行なった。
表9に、上記試験結果を示す。
表9に、上記試験結果を示す。
また、前記の図6(a)〜(e)に、焼鈍温度と各種機械的性質との関係を併示した。
本材料に対し、450℃で40分焼鈍を行なったところ、引張強さがわずか低下に低下した。焼鈍温度を550℃、40分にした場合、引張強さは0.9GPa(降伏点は0.8GPa)に低下する。全のびは2.4%程度となった。更に、焼鈍温度を650℃、40分とすると、引張強さは0.5GPaまで低下する。さらに、全伸びは3%と大きくなる。焼鈍温度を変えることによって、引張強さを0.5GPa〜1.2GPaの範囲で制御できる。一方、焼鈍温度を750℃とした場合、全のびは9%まで増加するものの、引張強さは0.4GPaとなってしまう(比較例4)。
図14に、各材料のSEM観察による金属組織を示す。
450℃、550℃の焼鈍では組織は伸長しており、フェライト粒界間隔THは0.4−0.5μmである。これに対して650℃×40分の焼鈍の場合、等軸状でそのTHは1.2μmである。
図15に、せん断加工面の外観写真を示す。
せん断面の総合評価を良好(○)、やや良好(△)、やや不良(×)に分類すると、
<1>冷間圧延のまま材では、やや不良(×)
<2>450℃×40分の焼鈍材では、やや良好(△)
<3>550℃×40分の焼鈍材では、ほぼ全面がせん断面であり、良好(○)
<4>650℃及び750℃×40分焼鈍材では、良好(○)
<5>比較例4である750℃×40分の焼鈍材においても、せん断面は良好(○)である。
このように、実施例4の製造方法で得られた本願発明の薄帯鋼板は、フェライト粒界間隔THが微細化され、高強度を有すると同時に、延性にも優れたものであることがわかる。
2 第1圧延機の孔型ロール対
3 第2圧延機
4 第2圧延機の孔型ロール対
4’スクエア孔型Bを備えた第2圧延機
5 被圧延鋼線材
6 圧延パスライン方向
7a 7b圧延パスライン下手側2機近接圧延基に含まれる第1圧延機の孔型(オーバル孔型)ロール
8,8’ 圧延機4’により被圧延材に対して加える圧下方向
9 鋼線材供給装置
10 ピンチロール
11 ストレートナー
12 加熱装置
18 コイル巻取装置
19’2機近接圧延基
Claims (7)
- 炭素鋼又はフェライト系ステンレス鋼若しくはオーステナイト系ステンレス鋼からなる鋼線材若しくは鋼線又は棒鋼を圧延して帯鋼又は鋼板を製造する方法であって、250℃超えから800℃以下の範囲内の圧延温度で孔型ロール圧延を行なって、平均結晶粒径が1μm以下となった圧延材を、常温から250℃以下の範囲内の圧延温度で平ロール圧延にて圧延して板状にするに当たり、以下の(B)式を満たすことを特徴とする帯鋼又は鋼板の製造方法。
TH=D 0 (t/d 0 )≦0.6μm・・・・・・(B)
TH:得られた鋼材の平均フェライト粒界間隔
D 0 :初期粒径
d 0 :鋼線状若しくは鋼線又は棒鋼の直径又は対辺面間長さ
t:圧延後の帯鋼又は鋼板の厚さ - 請求項1に記載の帯鋼および鋼板の製造方法において、前記鋼線材若しくは鋼線又は棒鋼を圧延材に圧延するに当たり、下記(5)式を満たすことを特徴とする帯鋼又は鋼板の製造方法。
d1’≦d0×0.6 ・・・・・・(5)
d0:鋼線材若しくは鋼線又は棒鋼の直径又は対辺面間長さ
d1’:圧延材の直径又は対辺面間長さ - 請求項1又は2に記載の帯鋼および鋼板の製造方法において、前記鋼線材若しくは鋼線又は棒鋼を、250℃超えから800℃以下の範囲内の圧延温度で孔型ロール圧延を行ない、当該孔型ロール圧延の最終パスにおいてオーバル孔型ロール又は偏平ボックス孔型ロールにより断面がオーバル形状又は長方形の異形断面材を、前記平ロール圧延にて圧延して板状にするにあたり、下記(6)式を満たすことを特徴とする帯鋼又は鋼板の製造方法。
d2’≦d0×0.3 ・・・・・・(6)
d0:鋼線材若しくは鋼線又は棒鋼の直径又は対辺面間長さ
d2’:異形断面材の短辺長さ - 請求項3に記載の鋼板の製造方法において、前記異形断面材を更に、250℃超えから800℃以下の範囲内の圧延温度で平ロールによる圧延を1パス又は2パス行なって得られた薄帯状材を、前記平ロール圧延にて圧延して板状にするに当たり、下記(7)式を満たすことを特徴とする帯鋼又は鋼板の製造方法。
d3’≦d0×0.25 ・・・・・・(7)
d0:鋼線材若しくは鋼線又は棒鋼の直径又は対辺面間長さ
d3’:薄帯状材の厚さ - 前記250℃超えから800℃以下の範囲内の圧延温度での孔型ロール圧延においては、オーバル孔型ロールとこれに次ぐスクエア孔型ロールとの組み合わせによる圧延を1回以上含ませることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の帯鋼又は鋼板の製造方法。
- 請求項1から5の何れかに記載の帯鋼または鋼板の製造方法において、前記鋼線材若しくは鋼線又は棒鋼から最終的に得られる帯鋼又は鋼板での圧延における塑性加工に伴って導入される、前記帯鋼または鋼板の板幅中心部で且つ板厚中心部における有限要素法を用いた計算による塑性ひずみが、2.3以上であることを特徴とする帯鋼又は鋼板の製造方法。
- 請求項1から6のいずれかに記載の製造方法において、平ロールによる圧延中、圧延後、又は圧延中及び圧延後の両方において、前記帯鋼又は鋼板に対して、400℃から700℃の範囲内で焼鈍することを特徴とする帯鋼又は鋼板の製造方法。
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