本発明の実施の形態による電動工具について図1乃至図9に基づき説明する。電動工具1は、具体的には丸鋸からなる鋸刃23を備えた携帯用切断機であり、切断作業時に図示せぬ加工材上に当接配置されるベース10と、ベース10の加工材当接面たる図1の下面(一面)とは反対側の面に位置してベース10に対して回動可能に設けられた丸鋸本体20とにより主に構成される。
ベース10は一面側が図示せぬ加工材上に当接して摺動する加工材当接面をなし、後述の鋸刃23を加工材側に突出させるための開口部10aが形成されている。また、ベース10の切断方向前方側端部たる図1の右下側端部付近には、丸鋸本体20をベース10に対して回動させる回動支持部11が設けられており、回動支持部11には回動ピン12が後述の丸鋸軸23Aと平行に延びている。
丸鋸本体20は、ハウジング21と、ソーカバー22とにより外郭をなし、鋸刃23を備えている。鋸刃23は被駆動部材に相当する。ハウジング21は鋸刃23の一側面側に位置し、ハウジング21は、丸鋸軸23Aを回転軸心として鋸刃23を回転駆動するためのモータ24(図2等)を収納すると共に反鋸刃23側に空気流入口21aが形成され、鋸刃23側に空気排出口21bが形成されたモータハウジング21Aと、モータ24の回転を鋸刃23に伝達する図示せぬ動力伝達機構を収納しモータハウジング21Aとソーカバー22の間に位置するギヤケース21Bとから構成される。また、ハウジング21内には、電源が作業者によってオフの状態とされたときにモータ24の駆動を短時間で停止させるためのブレーキ機構が内蔵されている。ハウジング21は本体に相当する。モータ24は具体的にはブラシレスモータであり、内部に回転子24Aを備え、回転子24Aの回転軸はモータ24の出力軸24Bをなす。出力軸24Bは図2の上下方向に指向しており、出力軸24Bの中間位置には、後述する回転部材、例えばワンウェイクラッチ25A等を介してファン25が出力軸24Bに対して同軸的に回転可能に設けられている。
ハウジング21の頂部にはハンドル28が設けられている。ハンドル28には作業者が操作するトリガ(トリガスイッチ)28Aが設けられている。ソーカバー22は、鋸刃23の上半分を覆い、ハウジング21の一端部に一体に設けられている。ソーカバー22の切断方向前方側の端部は、前述のように回動ピン12に回動可能に接続され、ベース10の開口部10a(図1)からの鋸刃23の突出量を可変としている。また、ベース10と丸鋸本体20との間には、図1に示されるように、丸鋸本体20のベース10に対する回動位置の固定及びその解除をするための固定解除機構29が設けられている。すなわち、固定解除機構29を構成するノブを緩め、回動支持部11のピン12を支点として丸鋸本体20をベース10に対して回動することにより、開口部10aを介してベース10の加工材当接面から加工材側に突出する鋸刃23の突出量を調整することができる。所望の突出量に設定したら固定解除機構29を構成するノブを締め付けることで所望の突出量で切断作業を行うことができる。また、回動支持部11は、丸鋸本体20をベース10に対して傾動させる機構、即ちベース10の幅方向に丸鋸本体20を傾斜させる機構及び傾斜位置を固定・解除する傾斜機構30が設けられている。
また、丸鋸本体20には、不使用時に鋸刃23の下半分を覆うためのセフティカバー31が丸鋸軸23Aを中心に回動可能に設けられ、セフティカバー31には指先でその回動位置を保持するためのセフティカバーレバー31aが設けられている。図示せぬ加工材を切断するときには、セフティカバー31は加工材に当たり自動的に回動して鋸刃23の下半分を露出させる。また窓切り作業など加工材の上方から下方に鋸刃23を移動させる必要があるときは、セフティカバーレバー31aを指先に掛けて、セフティカバー31の開状態を維持する。
ハウジング21とモータ24との間には、図6において破線の矢印で示されるように、ソーカバー22の方向に向かう風路Fが画成されている。より具体的には、空気は主としてモータ24の側面に沿ってハウジング21とモータ24の側面との間を図の右側から左側へと流れると共に、モータ24の内部に流入し内部を図の右側から左側へと流れるように風路Fは形成されている。ファン25はその回転により、ハウジング21の反鋸刃側に形成された空気流入口21aから空気をハウジング21内に導入し、風路Fにおいて空気を通過させて制御回路41を有する基板27及びモータ24を冷却し、ハウジング21の鋸刃側に形成された空気排出口21bからハウジング21外へ空気を排出可能である。
以上のような構成の電動工具1(携帯用丸鋸)における動作は、被加工材上にベース10を当接させて載置し、作業者がハンドル28を把持してトリガ28Aを操作する。トリガ28Aの操作によってモータ24が回転し、モータ24の回転が動力伝達機構を介してモータ24の出力軸24Bに取り付けられた鋸刃23に減速されて伝達され、被加工材を切断する。このとき、モータ24の回転により出力軸24Bに同軸的に取り付けられたファン機構が回転するため、ファン機構により空気流入口21aからハウジング21内に空気を取り込み、モータ24や後述の制御回路部(基板27、FET27A)等を冷却することができる。
次に本実施の形態におけるファンについて説明する。ファン25は、モータ24の回転子24A(出力軸24B)と同軸的に、回転子24Aと一体回転又は相対回転可能に設けられており、回転子24Aが回転している間は回転子24Aと一体的に回転し、回転子24Aが停止した後或いは回転が停止間近になった場合に回転子24Aに対して相対的に回転するように構成されている。よって、モータ24が停止した後もファン25自体の慣性力により回転することができ、ファン25による冷却能力を向上することができる。
回転子24Aから延びた出力軸24Bとファン25との径方向の間には後述する回転伝達手段が設けられており、回転伝達手段は、回転子24Aの回転をファン25に伝達するように構成されている。例えば回転伝達手段をモータ出力軸24B側に設けた場合、回転子24Aの回転により生じる遠心力によって出力軸24Bの径方向外側に突出するような機構を設け、突出機構がファン25と係合することにより、回転子24Aとファン25が一体的に回転することができファン25によって本体20内を冷却することができる。一方、遠心力が小さくなる或いはなくなった場合(回転子24Aが停止等)には、突出機構が外側に突出しなくなるため、回転子24Aとファン25の係合が解除され、ファン25は回転子24A(出力軸24B)に対して相対的に回転することができ、モータ24停止後にもファン25の回転を継続することができるため、ファン25による冷却効果を向上することができる。
以下、本発明の回転伝達手段について説明する。図3乃至図5に示すように、本実施の形態における回転伝達手段はワンウェイクラッチ25Aから構成されている。回転子24Aすなわち出力軸24Bの径方向外周には、回転子24Aと一体的に回転する回転部材25Cが圧入等により取り付けられている。回転部材25Cを介してファン25が出力軸24Bに対して同軸的に回転可能に設けられている。ワンウェイクラッチ25Aは、図3乃至図4に示されるように、回転部材25Cには、出力軸24Bの周面と、長手方向がモータ24の出力軸24Bに平行に配置された10本の円柱部材25B(移動部材)と、略円筒状をしたファン25の内周部の内周面に形成されモータ24の出力軸24Bに平行に延出する10本の溝25aとにより構成されており、円柱部材25Bは溝25a内に配置されている。出力軸24Bが回転して、図3に示されるように円柱部材25Bが遠心力により溝25aから出ようとして出力軸24Bの周面とファン25の内周部の内周面との間に挟まった状態となったときには、出力軸24Bとファン25とが一体で回転する。出力軸24Bの回転が急に停止したときには、遠心力がなくなるため図4に示されるように円柱部材25Bが溝25a内へ落ち(円柱部材25Bがファン25と接触しなくなる)、円柱部材25Bが出力軸24Bの周面とファン25の内周部の内周面との間に挟まった状態が解除される。このとき、出力軸24Bに対してファン25は相対的に回転可能となるように構成されている。
従って、後述のブレーキ機構により回転子24Aが回転停止した後もファン25は回り続けることができ、ファン25による冷却効果を得ることができ、ブレーキ機構により回転子24Aが回転停止した後のブラシレスモータ24の余熱による温度上昇を極力抑えることができ、本体内部の温度上昇を極力抑えることができる。このため、ブラシレスモータ24を構成する部品や材料として耐熱性の比較的低い部品や材料を用いることができ、電動工具1の製造に係るコストを低減することができる。また、ワンウェイクラッチ25Aにより構成されているため、比較的簡単な構成で、回転子24Aがブレーキ機構により回転停止した後もファン25を慣性力により所定時間回転し続けさせることができる。ワンウェイクラッチ25Aは回転伝達手段(移動部材)に相当する。なお、ワンウェイクラッチ25Aは、円柱部材25B及び溝25aにより、回転子24Aに対してファン25を一方の回転方向には回転可能であると共に、反対方向には回転不能となるように構成されているため、モータ24が停止した後、モータ24が回転していた方向にのみ回転を継続できるようになっている。
尚、本実施形態のファン25を採用することにより、図18に示すように、ブラシレスモータ24の出力軸24Bと一体的に回転可能なファン25を備えた丸鋸1001に対して、基板27(FET27A)やモータ24の冷却をより一層行うことができる。
ファン25の周縁部には、図5に示されるように、ファン25と同軸的に質量の大きなリング状をした重量物26が固定されて設けられている。この構成により、重量物26による慣性力によって、ブレーキ機構により回転子24Aが回転停止した後、より長時間にわたりファン25を回転させ続けることができ、より長時間にわたりファン25による冷却効果を得ることができる。
ブレーキ機構は制御回路41により構成されている。図7に示されるように、制御回路41は位置検出回路41Aと、速度制御回路41Bと電圧制御回路41Cと電力積算回路41Dとを有しており、位置検出回路41Aはモータ24の端子電圧又は回転位置を検出可能であると共に、モータ24の回転位置を検出するためのホール素子等からなる位置センサ41E及び/又はモータ24の端子電圧を検出する端子電圧検出部41Hに電気的に接続されている。位置検出回路41Aは速度制御回路41Bに電気的に接続されており、位置センサ41E及び/又は端子電圧検出部41Hからの信号に基づきモータ24の回転子24Aの位置を算出する。速度制御回路41Bは電圧制御回路41Cに電気的に接続されている。電圧制御回路41Cは速度制御回路41B及び電力積算回路41Dに電気的に接続されている。電力積算回路41Dはモータ24に流れる電流を検出するための電流センサ41Fと、モータ24の温度を検出するための温度センサ41Gとにそれぞれ電気的に接続されている。
また、制御回路41は、図7、図8に示されるように、FET駆動回路42に電気的に接続されており、制御回路41及びFET駆動回路42はモータ24に電気的に接続されている。FET駆動回路42は、本発明の制御回路部となる制御回路41(電圧制御回路41C)からの信号により、モータ25の三層巻線に電流を流すタイミングを切り替えるスイッチング素子(FET)27Aが制御されることにより、モータ25を所望の回転速度で回転する。また、制御回路41及びFET駆動回路42は、直流変換回路43を介して交流電源44に接続されている。
以上の構成のブレーキ機構により、モータ24に流れる電流が電力素子たる回路上の部品例えばFET27A等の上限を超えたり、ハウジング21内の温度やFET27Aの温度が回路上の部品の温度の上限を超えたり、積算電力が電力素子たる回路上の部品の電力の上限を超えていたり、電源スイッチたるトリガスイッチ28Aがオフの状態とされたりしたときには、制御回路41からの信号によりFET駆動回路42のスイッチング素子(FET)27Aがスイッチング制御されモータ25を減速、停止させる。モータ24への電力供給を止めるとモータ24の回転子24Aの回転が減速、停止させられる。すると、動力伝達機構によりモータ24の回転子24Aと連結された被駆動部材たる鋸刃23の駆動もただちに停止させられるように構成されている。これらの制御回路41、FET駆動回路42(FET27A)、及び直流変換回路43を有する電子回路は、基板27上に載置されることにより構成されていると共に、基板27は、ハウジング21内に取り込まれた空気の風路F上に配置されている。
ここで、FET27A等が載置された制御基板27の配置について説明する。基板27は、FET27Aが載置されている表面が図6に示されるように出力軸24Bと垂直をなし、モータ24の回転子24Aに関して出力軸24Bのファン25が設けられている側に対して反対の側に設けられている。
このためFET27Aは、空気流入口21aに対向するように位置しており、ファン25の回転により空気流入口21aからハウジング21内へと流入した空気は、破線の矢印で示される後述の風路Fを流れる。このため、空気流入口21aからハウジング21内へと流入した空気がFET27Aに直接当たるようにすることができると共に、モータ24の外部及び内部を流れるようにすることができる。この結果、FET27A及びFET27Aが載置された基板27を効果的に冷却することができると共に、モータ24を効果的に冷却することができる。FET27A等を冷却した空気は、風路Fを通り空気排出口21bからハウジング21外部へ排出される。この排出された空気は、鋸刃23側に排出され、鋸刃23によって被加工材を切断した際に発生する切屑を吹き飛ばすことができるため、被加工材の切断位置の視認性を確保することができる。
また、ブラシレスモータ24を用いることによりモータ自身の全長が短くなるため、空気流入口21aと対向した位置に基板27を配置しても、モータ24を収納するモータハウジング21Aの全長(図6の左右方向)を従来のブラシ付きモータを使用した場合に対して小さく或いは大きさを維持することができ、工具自体の大きさを小さくしながらFET27A等の冷却効率を向上することができる。
また、モータ24の回転子24Aの回転軸心方向におけるモータ24の端部に対向する位置に基板27を配置させることができるため、この対向位置に位置センサ41Eを設けることができ、一枚の基板27に電子回路及び位置センサ41Eを設けた構成とすることができる。
以上のような構成の電動工具1における動作は以下の通りである。図9のフローチャートに示されるように、先ず、トリガスイッチ28Aが作業者によってオンの状態とされたかオフの状態のままかを制御回路(マイコン)41が判断する(S1)。トリガスイッチ28Aがオフの状態のままであるときには(S1:オフ)、引き続き、トリガスイッチ28Aが作業者によってオンの状態とされたかオフの状態のままかの判断が行われる。
作業者によってトリガスイッチ28Aがオンの状態とされると制御回路41が判断すると(S1:オン)、制御回路41によってFET駆動回路42のFET27Aがスイッチング制御され、制御回路41は位置センサ41E、電流センサ41F、温度センサ41G等の信号からモータ24の状態(回転子位置、モータ電流、モータ温度等)を見張りながらモータ24に電流を流すように所定のスイッチング順及びスイッチングタイミングによってFET27Aを制御しモータ24の回転を開始する(S2)。その後トリガスイッチ28Aが作業者によってオフの状態とされたかオンの状態のままかの判断が行われる(S3)。トリガスイッチ28Aがオフの状態とされたことを制御回路41が検出すると(S3:オフ)、制御回路41は、FET27Aを停止するためのスイッチング制御信号をFET駆動回路42に出力し(ブレーキ機構)モータ24の回転を急速に減速し始め(S7)、モータ24の回転が停止する(S8)。
オンの状態のままの場合には(S3:オン)、次に、モータ24に流れる電流が電力素子たる回路上の部品(例えばFET27A)の上限を超えているか否かの判断が行われる(S4)。これは、鋸刃23が被加工材に食い込んでしまい、モータ24(回転子24A)が回転できない状態になった場合であり、制御回路41はトリガスイッチ28Aが押されている間、モータ25を所望の回転速度に維持するようにモータ25に電流を流し続けるため、モータ24やFET27Aの温度が上昇してしまう。この判断において上限を超えている場合には(S4:Yes)、上述した制御と同様、制御回路41はFET駆動回路42にモータ25を停止させるためのFETスイッチング信号を出力することで、モータ24への電流の流れが停止され、ブレーキ機構によりモータ24の回転が急速に減速し始め(S7)、モータ24の回転が停止する(S8)。この判断において上限を超えていない場合には(S4:No)、次に、ハウジング21内の温度が電力素子たる回路上の部品の温度の上限を超えているか否かの判断が行われる(S5)。
この判断において上限を超えている場合には(S5:Yes)、上述した制御と同様の制御を行い、モータ24への電流の流れが停止され、ブレーキ機構によりモータ24の回転が急速に減速し始め(S7)、モータ24の回転が停止する(S8)。この判断において上限を超えていない場合には(S5:No)、次に、積算電力が電力素子たる回路上の部品の電力の上限を超えているか否かの判断が行われる(S6)。
この判断において上限を超えている場合には(S6:Yes)、モータ24への電流の流れが停止され、ブレーキ機構によりモータ24の回転が急速に減速し始め(S7)、モータ24の回転が停止する(S8)。この判断において上限を超えていない場合には(S6:No)、モータ24の回転を持続し(S2)。再び、トリガスイッチ28Aが作業者によってオフの状態とされたかオンの状態のままかの判断が行われる(S3)。
上記したS4乃至S6は、鋸刃23が被加工材に食い込んでしまい、モータ24(回転子24A)が回転できない状態になった場合であり、制御回路41はトリガスイッチ28Aが押されている間、モータ25を所望の回転速度に維持するようにモータ25に電流を流し続けるため、モータ24やFET27Aに過大な電流が流れたり温度が上昇たりしてしまう。この過大電流や過大温度によってモータ24やFET27Aの故障を抑制するための制御である。本発明ではモータ24が停止した場合にファン25が出力軸24Bに対して相対的に回転することができるため、従来のように出力軸とファンが一体的にのみ回転する工具に対して冷却能力を向上することができ、モータ24やFET27A等の故障を従来に対してより一層抑制することができる。
本発明の携帯用丸鋸は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、基板27の配置は本実施の形態の配置に限定されない。例えば、図10に示されるように、FET27Aが載置されている基板27が出力軸24Bの軸方向に平行であってモータ24に対して図10の上側に配置されてもよいし、図11に示されるように、FET27Aが載置されている基板27が出力軸24Bの軸方向に平行であってモータ24に対して図11の下側に配置されてもよい。すなわち基板27が風路F内に配置されてもよい。基板27の表面とモータ24の側面との間には風路Fたる隙間が形成され、基板27の裏面とハウジング21の内周面との間にも同様に風路Fたる隙間が形成されている。
このように配置することで、基板27の表面がハウジング21内部を流れる空気の流れに沿った位置関係となり、基板27の表面上に空気を効果的に流すことができる。このため、基板27上に載置されたFET27Aがブラシレスモータ24における電流のスイッチングに伴い発熱したときに、基板27の表面上を流れる空気により効果的に冷却され、ブレーキ機構により回転子24Aが回転停止した後のFET27Aの余熱による温度上昇を極力抑えることができ、ハウジング21内部の温度上昇を極力抑えることができる。このため、制御回路41を構成する部品や材料として耐熱性の比較的低い部品や材料を用いることができ、電動工具1の製造に係るコストを低減することができる。
また、これらの配置とすることで、モータ24の出力軸24B方向における丸鋸本体20の寸法を小さくすることができ、同方向における電動工具1の小型化を図ることができる。また、モータ24に対して図10の上側に配置されるようにすれば、この部分における丸鋸本体20のハウジング21内のデッドスペースを有効利用することができ、電動工具1の小型化を図ることができる。
また、モータ24や基板27を内蔵するモータハウジング21Aは、筒形形状を有しているため、図11のように基板27をモータ24の下側(ベース側)に設けた際に、モータハウジング21Aをベース10側に大きくし、モータ24とモータハウジング21A内周部との間に基板27を配置するための隙間を設けなくてはならないため、鋸刃23による被加工材の切込み深さを深くとる(切込み量を大きくとる)場合、モータハウジング21Aの底部(ベース側)がベース10と近い位置となってしまうため本体20をベース10側に移動することができず切込み深さを確保できない場合がある。これに対し、図10のように、基板27をモータ24の上側(反ベース側)に設けることにより、モータハウジング21Aの底部(ベース側)とベース10間のスペースを確保できるため、ファン25による冷却効率を向上させつつ本体20をベース10側に近づけることができ切込み深さを深くとることができる。
また、図10、図11に示されるようにFET27Aは放熱板27Bを備える構成としてもよい。放熱板27Bは、モータ24の出力軸24Bに平行な平板状をなし、モータ24の出力軸24Bの延出方向における両端部はモータ24の出力軸24Bに接近する方向へ垂直に折り曲げられている。即ち放熱板27Bはモータ24の外形に倣った形状をなしている。放熱板27Bは、FET27Aに設けられ穴が形成された図示せぬ放熱板取付け部に図示せぬリベットにより固定される。このような構成により、モータ24の外形に沿って流れる空気を効率よく放熱板27Bに沿って流すことができ、放熱効果を高めることができ、この結果、冷却効果を高めることができる。尚、図6のように、基板27をモータ25の端部に設けた構成として放熱板27Bを備えても冷却効果を高めることができる。
また、ファンの数は1つに限定されない。例えば、図12に示されるように、モータ24に関してモータ24の出力軸24Bの一端側と他端側とにそれぞれ1つずつファン25、25Cを設け、少なくとも一方を回転伝達手段例えばワンウェイクラッチ25Aを介して出力軸24Bに支承されるようにしてもよい。図12に示されるように、FET27Aが載置されている基板27の表面は出力軸24Bの軸方向に平行な位置関係をなしており、基板27がモータ24に対して図12の上側に位置するように配置されているため、このように、モータ24の回転子24Aに関してモータ24の出力軸24Bの一端側と他端側とにファン25、25Cをそれぞれ設けることができる構成とすることができる。
FET27Aが載置されている基板27の表面が出力軸24Bの軸方向に平行な位置関係をなし基板27がモータ24に対して図12の下側に配置されていたとしても、同様に2つのモータ24を設けることができる。ファン25、25Cが2つ設けられていることにより、2つのファン25、25Cによりハウジング21内部の空気の流れを作ることができ、冷却効果を高めることができる。
また、ブラシレスモータ24を用いることにより、従来のモータよりハウジング21Aの長手方向(図12の左右方向)の寸法を小さくできるため、ファン25Cを配置しても従来のモータハウジング寸法を維持しながらファン風による冷却効率を向上することができる。
また、このように2つのファン25、25Cはそれぞれワンウェイクラッチ25Aを介して出力軸24Bに支承されなくてもよく、少なくとも1つのファンがワンウェイクラッチを介して出力軸に支承されていてもよい。このような構成とすることで、回転子が回転しているときは2つのファンで本体内部のブラシレスモータや制御回路等を冷却することができ、ブレーキ機構により回転子が回転停止した後所定時間経過するまでの間は、少なくとも1つのファンで本体内部のブラシレスモータや制御回路等を冷却することができる。従って構成を簡単にして極めて高い冷却効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、本発明による電動工具を携帯用切断機に応用したが、携帯用切断機に限定されない。例えば、ジグソーやインパクトドライバ等の他の電動工具に応用してもよい。
例えば、図13に示されるように、ジグソー101に応用した場合には、本実施の形態と同様にモータ24の出力軸24Bの中間位置には、回転伝達手段となるワンウェイクラッチ25Aを介してファン25が出力軸24Bに対して同軸的に一体回転又は相対回転可能に設けられる。また、FET27Aが載置されている基板27の表面は、出力軸24Bの軸方向に平行であってモータ24に対して図13の下側に配置されており、基板27の表面がハウジング21内部に形成された風路Fを流れる空気の流れに沿った位置関係となっている。基板27をモータ24の下側に設けることにより、モータハウジング21Aのベース側面とベース10との間のスペースを有効に活用することができるため、ジグソー101を大型化することなく冷却効率を向上することができる。また、FET27Aは放熱板27Bを備える構成を採っており、前述の本実施の形態の変形例と同様に、放熱板27Bはモータ24の外形に倣った形状をなしている。また、基板27は、図6と同様に、空気流入口21aに対向するハウジング内に設けても良い。
また例えば、図14に示されるようにインパクトドライバ201に応用した場合には、本実施の形態と同様にモータ24の出力軸24Bの中間位置には、回転伝達手段となる遠心クラッチ225Aを介してファン25が出力軸24Bに対して同軸的に一体回転又は相対回転可能に設けられる。
遠心クラッチ225Aは、図15に示されるように、圧入によりモータ24の出力軸24Bに嵌入された略リング状部材225Bと、略リング状部材225Bの外周の略半分を覆う一対の揺動部材225Cと、一対の揺動部材225Cにそれぞれ設けられたバネ225Dとを有している。略リング状部材225B、揺動部材225C、バネはそれぞれ、本発明の回転部材、移動部材、弾性部材に相当する。
揺動部材225Cは、その一端が略リング状部材225Bの直径位置にそれぞれ揺動軸225Eを中心として揺動可能に支承されており、当該揺動により揺動部材225Cの外周面がファン25の内周面に当接可能である。揺動部材225Cの外周面は粗面からなり、また、ファン25の内周面も粗面からなる。
バネ225Dは、一端が揺動部材225Cの他端に接続されており、他端が略リング状部材225Bの一部に接続されており、常時揺動部材225Cの他端と略リング状部材225Bの周面とを接近させる方向に付勢している。このことにより、出力軸24Bが回転しておらず遠心力が揺動部材225Cに作用していないときには、略リング状部材225Bの周面に揺動部材225Cの内周面が当接(揺動部材225Cの他端側が出力軸24B側に位置)し、揺動部材225Cの外周面はファン25の内周面から離間した状態となる。このときには、ファン25は出力軸24Bに対して相対回転可能となっている。出力軸24Bが回転して遠心力が揺動部材225Cに作用しているときには、略リング状部材225Bの周面から揺動部材225Cの内周面が離間し、揺動部材225Cの外周面がファン25の内周面に当接した状態となる。このときには、揺動部材225Cの外周面の粗面とファン25の内周面の粗面との当接による摩擦から、ファン25は出力軸24Bと一体で回転する。
従って、モータ24の駆動により出力軸24Bが回転しているときにはファン25は出力軸24Bと一体で回転するが、出力軸24Bが回転停止するとファン25は出力軸24Bに対して相対回転可能となるため、出力軸24Bが回転停止した後も、ファン25自身の慣性力によりファン25は所定時間回転し続ける。
また、図16、図17に示されるように、遠心クラッチ325Aを、インパクトドライバ301の駆動による衝撃を吸収できる構成としてもよい。インパクトドライバ301はモータ24の回転方向を切り替えて使用することができるため、ファン25が慣性力によって回っている状態で逆方向にモータ24を回転させようとすると、ファン25とモータ24の回転方向が逆になるため、ファン24と遠心クラッチ325Aの衝突によりモータ24(遠心クラッチ)或いはファン25が故障してしまう場合が考えられる。より具体的には、図16、図17に示されるように、モータ24の出力軸24Bと一体回転する略リング状部材325B(回転部材)の周面に、略リング状部材325Bの半径方向外方へ向けて開口する開口部が形成され、当該開口部内において略リング状部材325Bの半径方向に移動可能な係合部材325Cを設け、ファン25の内周面に形成された凹部25bに係合部材325Cが係合可能な構成としてもよい。
略リング状部材325Bの半径方向外方における係合部材325Cの端部の表面325Eは、例えばゴム等の弾性部材325Eにより覆われており、略リング状部材325Bの半径方向内方における係合部材325Cの端部にはバネ325Dの一端が接続されている。バネ325Dの他端は、略リング状部材325Bの半径方向における開口部の最も内方に位置する部分を画成している略リング状部材325Bの部分に接続されている。
バネ325Dは常時係合部材を略リング状部材325Bの半径方向内方へ付勢しており、モータ24の駆動により出力軸24Bが回転しているときには、遠心力により係合部材324Cが開口部から突出してファン25の内周面に形成された凹部25bに係合し、ファン25、略リング状部材325B、及びモータ24の出力軸24Bは一体で回転する。出力軸24Bが回転停止するとバネ325Dの付勢力により係合部材324Cは開口部内に収容されファン25の内周面の凹部25bとの係合は解除され、ファン25は出力軸24Bに対して相対回転可能となるため、出力軸24Bが回転停止した後も、ファン25自身の慣性力によりファン25は所定時間回転し続ける。なお、係合部材325C自体を弾性部材で構成しても良いし、ファン25の内周面(凹部25b)を弾性部材で構成しても良い。
更に、略リング状部材325Bを設けずに、出力軸24Bから直接径方向外側に移動する移動部材を設けてファンと係合する構成にしても良いし、ファン25に出力軸24B側に移動する移動部材を設け、出力軸24Bに移動部材と係合する溝等の係合部を設けても良い。
前述のインパクトドライバ201は、ブラシレスモータ24、ファン25等を内蔵するハウジング21と、作業者が把持しトリガスイッチ28Aが設けられたハンドル28と、モータ24等の駆動源となる電池202から主に構成されている。電池202は、ハンドル28の反ハウジング側に設けられた取付部28aに着脱可能に取り付けられる。
モータをブラシレスモータ24としたことにより、ハウジング21の全長(図14の左右方向)を小さくできる。本実施の形態では、モータ24の出力軸24Bと同軸的にファン25を設けており、従来のブラシ付きモータを使用した場合と同程度の全長を保ちながら、冷却効率を向上させている。上述したファン25によって空気流入口21aからハウジング21内に入った空気は、風路Fに沿ってハウジング21、ハンドル28内を流れ、ハンドル28の取付部28aに形成された空気排出口21bを介して本体外に排出される。
取付部28aは電池202の取付部を受けるため、電池202の幅寸法と同程度の寸法を有しているため、この取付部28a内に基板27を配置することができ、ハウジング21やハンドル28を大きくすることなく、基板27を配置することができる。基板27は、風路F内に位置すると共に空気排出口21bと対向する位置に配置されているため、ファン風により冷却することができる。更に、ハンドル28内をファン風が通るためハンドル28の冷却もできる。風路Fはハンドル28方向とは別に、ハウジング21内にも形成されており、この風路Fによってモータ24を冷却している。尚、基板27はハンドル28の下部に配置する必要はなく、モータ24に近接させて配置させてもよく、ファン25によって空気流入口21aからハウジング21に入った空気が直接基板27に当たるようにしても良い。