JP5614586B2 - 熱線遮蔽ポリカーボネートシート、熱線遮蔽ポリカーボネートシート積層体および熱線遮蔽ポリカーボネートシートの製造方法 - Google Patents
熱線遮蔽ポリカーボネートシート、熱線遮蔽ポリカーボネートシート積層体および熱線遮蔽ポリカーボネートシートの製造方法 Download PDFInfo
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Description
また特許文献1の他にも、透明基材表面に金属または金属酸化物を直接蒸着してなる熱線遮蔽板が数多く提案されている。
この他、たとえば特許文献2および特許文献3にはアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂に熱線反射能を有する粒子を練り込んだ熱線遮蔽板が提案されている。
また特許文献1の他であって、透明基材表面に金属または金属酸化物を直接蒸着してなる熱線遮蔽板も、製造に際して高真空や精度の高い雰囲気制御が必要な装置を使用する必要があり、量産性が悪く汎用性に乏しい。
熱線遮蔽成分が分散されたポリカーボネートシートであって、
熱線遮蔽成分として、少なくとも6ホウ化ランタン微粒子とアンチモン添加酸化錫微粒子とを含み、当該6ホウ化ランタン微粒子とアンチモン添加酸化錫微粒子との重量比が、2/100≦6ホウ化ランタン微粒子/アンチモン添加酸化錫微粒子≦15/100の範囲であり、
熱分解温度が230℃以上で、アクリル主鎖と、官能基としてCOOH基とを有し、酸価が3〜15mgKOH/gである高耐熱性分散剤を含み、当該高耐熱性分散剤と熱線遮蔽成分との重量比が、0.5≦分散剤/熱線遮蔽成分≦10の範囲であることを特徴とする熱線遮蔽ポリカーボネートシートである。
第2の構成は、
前記熱線遮蔽成分が、平均粒径200nm以下の微粒子であることを特徴とする第1の構成に記載の熱線遮蔽ポリカーボネートシートである。
第3の構成は、
前記高耐熱性分散剤が、COOH基を有するものであることを特徴とする第1または第2の構成に記載の熱線遮蔽ポリカーボネートシートである。
第4の構成は、
ポリカーボネートシートの少なくとも一方の面に、紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収皮膜が形成されていることを特徴とする第1から第3の構成のいずれかに記載の熱線遮蔽ポリカーボネートシートである。
第5の構成は、
第1から第3の構成のいずれかに記載の熱線遮蔽ポリカーボネートシートと、他のシートとが積層されているものであることを特徴とする熱線遮蔽ポリカーボネート積層体である。
第6の構成は、
前記熱線遮蔽ポリカーボネート積層体の少なくとも1層のシートが、紫外線吸収剤を含有するシートまたは紫外線吸収剤を含有する皮膜が形成されているシートであることを特徴とする第5の構成に記載の熱線遮蔽ポリカーボネート積層体である。
第7の構成は、
前記紫外線吸収剤が酸化亜鉛であることを特徴とする第4または第6の構成のいずれかに記載の熱線遮蔽ポリカーボネートシートまたは熱線遮蔽ポリカーボネートシート積層体である。
第8の構成は、
熱線遮蔽成分として少なくとも6ホウ化ランタン微粒子とアンチモン添加酸化錫微粒子が分散された熱線遮蔽ポリカーボネートシートの製造方法であって、
当該6ホウ化ランタン微粒子とアンチモン添加酸化錫微粒子との重量比が、2/100≦6ホウ化ランタン微粒子/アンチモン添加酸化錫微粒子≦15/100の範囲である6ホウ化ランタン微粒子と、熱分解温度が230℃以上で、アクリル主鎖と、官能基としてCOOH基とを有し、酸価が3〜15mgKOH/gである高耐熱性分散剤とを溶媒に加えて粉砕・分散処理を行い、6ホウ化ランタン微粒子分散液を得る工程と、
当該6ホウ化ランタン微粒子分散液から、溶媒を除去して、6ホウ化ランタン微粒子分散粉を得る工程と、
当該6ホウ化ランタン微粒子とアンチモン添加酸化錫微粒子との重量比が、2/100≦6ホウ化ランタン微粒子/アンチモン添加酸化錫微粒子≦15/100の範囲であるアンチモン添加酸化錫微粒子と、熱分解温度が230℃以上で、アクリル主鎖と、官能基としてCOOH基とを有し、酸価が3〜15mgKOH/gである高耐熱性分散剤とを、溶媒に加えて粉砕・分散処理を行い、アンチモン添加酸化錫微粒子分散液を得る工程と、
当該アンチモン添加酸化錫微粒子分散液から、溶媒を除去して、アンチモン添加酸化錫微粒子分散粉を得る工程と、
得られた6ホウ化ランタン微粒子分散粉と、アンチモン添加酸化錫微粒子分散粉と、ポリカーボネート樹脂ペレットとを混合し、熔融混練し、成形して高耐熱性熱線遮蔽成分含有マスターバッチを得る工程と、
得られた高耐熱性熱線遮蔽成分含有マスターバッチと、ポリカーボネート樹脂ペレットとを熔融混練した後に成形する工程とを、具備することを特徴とする熱線遮蔽ポリカーボネートシートの製造方法である。
但し、前記高耐熱性分散剤と熱線遮蔽成分との重量比は、0.5≦分散剤/熱線遮蔽成分≦10の範囲である。
第9の構成は、
前記高耐熱性分散剤が、COOH基を有するものであることを特徴とする第8の構成に記載の熱線遮蔽ポリカーボネートシートの製造方法である。
第10の構成は、
前記熱線遮蔽ポリカーボネートシートの少なくとも一方の面に、紫外線吸収皮膜を形成することを特徴とする第8または第9の構成に記載の熱線遮蔽ポリカーボネートシートの製造方法である。
以下、発明を実施するための形態について、(1)6ホウ化ランタン微粒子、(2)ATO微粒子、(3)6ホウ化ランタン微粒子とATO微粒子との混合使用、(4)高耐熱性分散剤、(5)高耐熱性分散剤と熱線遮蔽成分との重量比、(6)ホウ化ランタン微粒子とATO微粒子と高耐熱性分散剤とが分散した分散液、(7)ポリカーボネート樹脂、(8)ポリカーボネート樹脂への熱線遮蔽成分の分散方法、(9)本発明に係るポリカーボネート樹脂シートの成形方法、(10)本発明に係るポリカーボネート樹脂シートへの紫外線遮蔽効果の付与、の順に詳細に説明する。
本発明に使用される熱線遮蔽成分である6ホウ化ランタン微粒子は、当該微粒子の表面が酸化していないことが好ましい。しかし、通常は微粒子の表面が僅かに酸化している場合が多く、また微粒子の分散工程において微粒子表面の酸化が起こることはある程度避けられない。尤も、当該微粒子の表面が酸化していた場合でも、当該微粒子が熱線遮蔽効果を発現する有効性に変わりはない。
またこれらのホウ化物微粒子は、結晶としての完全性が高いほど大きい熱線遮蔽効果が得られる。尤も、結晶性が低くX線回折測定において、ブロードな回折ピークを生じるようなホウ化物微粒子であっても、当該微粒子内部の基本的な結合が、ホウ化物を構成する各金属とホウ素との結合から成り立っているものであるならば熱線遮蔽効果を発現する。
本発明で使用される熱線遮蔽成分であるATO微粒子は、可視光領域で光の吸収、反射がほとんど無く、波長1500nm以上の領域でプラズマ共鳴に由来する反射・吸収が大きい。つまり、ATO微粒子の透過プロファイルは、近赤外領域で長波長側に向かうに従い透過率が減少する。
本発明で使用されるATO微粒子は、例えば、錫を含む水酸化物と、アンチモンを含む水酸化物とを水溶液中で共沈させ、得られた沈殿物を500℃以上1100℃未満の温度で焼成することで得ることができる。
上述したように、6ホウ化ランタンの透過プロルファイルは波長1000nm付近にボトムをもち、それより長波長側では徐々に透過率の上昇を示す。この為、6ホウ化ランタン微粒子とATO微粒子とを併わせて使用することで、可視光透過率は減少させずに近赤外領域の熱線を遮蔽することが可能となる。さらに、6ホウ化ランタン微粒子とATO微粒子とを各々単独で使用するよりも、併せて熱線遮蔽成分として使用することで熱線遮蔽特性が向上する。
当該値が2/100以上あれば、全微粒子の添加量をあまり削減でき、コスト削減効果が大きく、熱線遮蔽特性も保つことが出来る。また当該値が15/100以下あれば、ATOの添加効果が発揮されて波長1500nm以上の赤外領域の吸収が明確になり、熱線遮蔽特性を保つことが出来る。
本発明に係るポリカーボネートシートへの、6ホウ化ランタン微粒子とATO微粒子との分散剤は、熱分解温度が230℃以上あり、且つ、アクリル主鎖を有する高耐熱性分散剤を用いる。
従来、塗料用として一般的に使用されている分散剤は、様々な酸化物微粒子を有機溶剤中に均一に分散する目的で使用されている。しかし本発明者らの検討によれば、これら一般的に使用されている分散剤は200℃以上の高温で使用されることを想定されて設計されていないものが多い。
例えば、本実施形態において、6ホウ化ランタン微粒子とATO微粒子とポリカーボネート樹脂とを溶融混練する際に、当該200℃以上の高温で使用されることを想定されて設計されていない分散剤を使用すると、当該分散剤中の官能基が熱により分解されて分散能が低下すると伴に、黄〜茶色に変色し不具合を起こしてしまう。
ポリカーボネートは熱可塑性樹脂であって一般的な融点は250℃であり、一般的な混練時の設定温度は290℃である。そうであるなら、6ホウ化ランタン微粒子やATO微粒子をポリカーボネートシートに分散させる為の分散剤には290℃以上の耐熱性が求められると考えられた。
ところが、本発明者らは分散剤の熱分解温度が230℃以上であれば、成形時に当該分散剤が熱分解することなく分散能を維持すると伴に、それ自体が黄〜茶色に変色することもないという知見を得た。
具体的には、ポリカーボネートの一般的な混練設定温度である290℃において、本発明に係る分散剤とポリカーボネート樹脂とを混練する試験を行ったところ、得られた混練物はポリカーボネート樹脂のみの混練物とまったく同じ外観を呈し、無色透明で全く着色しないことが確認された。一方、例えば、後述する比較例5で使用した分散剤(TG−DTAで測定される熱分解温度が200℃)を用いて同様の試験を行った場合、混練物は茶色に着色してしまうことが確認された。
上記高耐熱性分散剤と熱線遮蔽成分との重量比は、0.5≦分散剤の重量/熱線遮蔽成分の重量≦10の範囲であることが好ましい。当該重量比が0.5以上あれば、熱線遮蔽成分である6ホウ化ランタン微粒子とATO微粒子とを十分に分散することが出来るので、微粒子同士の凝集が発生せず、十分な光学特性が得られるからである。また、当該重量比が10以下あれば、熱線遮蔽ポリカーボネートシートの機械特性(引っ張り強度、曲げ強度、表面高度)が損なわれることがない。
本発明に係るポリカーボネートシート製造の為の途中原料であるホウ化ランタン微粒子とATO微粒子と高耐熱性分散剤とが分散した分散液の分散溶剤は、特に限定されるものではない。当該分散溶剤は配合するポリカーボネート樹脂、ポリカーボネートシートを形成する条件などに合わせて選択可能であり、各種の一般的な有機溶剤が使用可能である。また必要に応じて、酸やアルカリを添加してpH値を調整しても良い。さらに、ポリカーボネート樹脂中の微粒子の分散安定性を一層向上させる観点から、公知の各種の界面活性剤、シランカップリング剤やチタンカップリング剤などを添加することも可能である。尚、これら公知の界面活性剤やカップリング剤等を用いる場合、本発明で使用されるホウ化ランタン微粒子、ATO微粒子および高耐熱性分散剤の機能を阻害しないものを選択することは勿論である。
上記適宜な有機溶剤中に、ホウ化ランタン微粒子とATO微粒子と高耐熱性分散剤とが混合された混合物を、ビーズミル、ボールミル等の公知の湿式粉砕方法により湿式粉砕して十分に分散させ、分散液を得る。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、2価フェノール類とカーボネート系前駆体とを、溶液法または熔融法で反応させることによって得られるものである。2価フェノール類としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が代表的な例として挙げられる。中でも、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系が好ましく、特にビスフェノールAを主成分とするものが好ましい。
熱線遮蔽成分のポリカーボネート樹脂への分散方法は、上記ホウ化ランタン微粒子とATO微粒子と高耐熱性分散剤とが有機溶剤中に分散した分散液から、適宜な方法で有機溶剤を除去し粉末を得る。そして、得られた粉末をポリカーボネート樹脂に添加し、タンブラー、V型アレンダー、高速ミキサー等で均一に混合し、二軸押出機、単軸押出機を用いて溶融混合することで、熱線遮蔽成分の微粒子がポリカーボネート樹脂へ均一に分散された混合物を調製することが可能である。
本発明に係るポリカーボネートシートは、上記ポリカーボネート樹脂中に微粒子が均一に分散された混合物を、射出成形、押し出し成形、圧縮成形等の公知の方法により、平面状や曲面状に成形することにより作製することが出来る。また、上記ポリカーボネート樹脂中に微粒子が均一に分散された混合物を、造粒装置を用いて一旦ペレット化した後、当該ペレットを、射出成形、押し出し成形、圧縮成形等の公知の方法により、平面状や曲面状に成形することによりポリカーボネートシートを作製することも出来る。
本発明に係るポリカーボネートシート上に、紫外線吸収剤が分散された塗布液を塗布して紫外線吸収膜を形成することで、紫外線遮蔽機能を付加し耐侯性を向上させることも好ましい構成である。
また、本発明に係るポリカーボネートシート上に、耐擦傷性ハードコート層を形成しポリカーボネートシートの耐擦傷性を向上させることも好ましい構成である。
各実施例に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートの波長2000nm透過率、可視光透過率並びに熱線透過率は、日立製作所(株)製の分光光度計U−4000を用いて測定した。この熱線透過率は熱線遮蔽性能を示す指標である。また、ヘイズ値は村上色彩技術研究所(株)社製HR−200を用い、JIS K 7105に基づいて測定した。
6ホウ化ランタン(LaB6)を5質量%、高耐熱性分散剤α(アクリル主鎖にCOOH基をもつ分散剤、TG−DTAで測定した熱分解温度は250℃。)を1質量%、トルエンを94質量%秤量し、0.3mmφZrO2ビ−ズを入れたペイントシェ−カ−で3時間粉砕・分散処理することによってLaB6微粒子分散液(以下、A液と略称する。)を調製した。ここで、LaB6微粒子分散液A液内におけるLaB6微粒子の分散粒子径を測定したところ、50nmであった。
実施例1に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートの光学特性を測定したところ、表1に示すように、2000nm透過率9.8%、可視光透過率66.4%、熱線透過率は40.9%で、ヘイズ値は1.3%であった。得られた熱線遮蔽ポリカーボネートシートは表面硬度が高く、爪で傷を付けることはできなかった。
実施例1で説明したマスターバッチAを40質量%と、ポリカーボネート樹脂ペレット60質量%とを均一に混合し、一軸押出機を用いて280℃で熔融混練した後、Tダイより押し出し、0.1mm厚に成形した以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートを得た。
実施例2に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートの光学特性を測定したところ、表1に示すように、2000nm透過率9.9%、可視光透過率67.1%、熱線透過率は41.5%で、ヘイズ値は1.6%であった。得られた熱線遮蔽ポリカーボネートシートは表面硬度が高く、爪で傷を付けることはできなかった。
実施例1で説明したA粉と、B粉と、ポリカーボネート樹脂ペレットとを、LaB6濃度が0.105質量%、ATO濃度が5.25質量%、となるように混合した以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートを得た。
実施例3に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートの光学特性を測定したところ、表1に示すように、2000nm透過率2.8%、可視光透過率66.9%、熱線透過率は41.6%で、ヘイズ値は1.5%であった。得られた熱線遮蔽ポリカーボネートシートは表面硬度が高く、爪で傷を付けることはできなかった。
実施例1で説明したA粉と、B粉と、ポリカーボネート樹脂ペレットとを、LaB6濃度が0.215質量%、ATO濃度が1.45質量%、となるように混合した以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートを得た。
実施例4に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートの光学特性を測定したところ、表1に示すように、2000nm透過率19.8%、可視光透過率67.0%、熱線透過率は42.1%で、ヘイズ値は1.4%であった。得られた熱線遮蔽ポリカーボネートシートは表面硬度が高く、爪で傷を付けることはできなかった。
実施例1で説明した高耐熱性分散剤αとLaB6微粒子の重量比[高耐熱性分散剤/LaB6微粒子]を10、高耐熱性分散剤αとATO微粒子の重量比[高耐熱性分散剤/ATO微粒子]を10となるように調製した以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートを得た。
実施例1で説明した高耐熱性分散剤αとLaB6微粒子の重量比[高耐熱性分散剤/LaB6微粒子]を0.5、高耐熱性分散剤αとATO微粒子の重量比[高耐熱性分散剤/ATO微粒子]を0.5となるように調製した以外は、実施例1と同様にして実施例6に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートを得た。
実施例6に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートの光学特性を測定したところ、表1に示すように、2000nm透過率10.2%、可視光透過率66.3%、熱線透過率は41.2%で、ヘイズ値は1.6%であった。得られた熱線遮蔽ポリカーボネートシートは表面硬度が高く、爪で傷を付けることはできなかった。
実施例1で説明した高耐熱性分散剤αを高耐熱性分散剤β(アクリル主鎖にCOOH基をもつ分散剤、TG−DTAで測定した熱分解温度は230℃、分子量50000、酸価10.5mgKOH/g)へ代替した以外は、実施例1と同様にして実施例7に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートを得た。
実施例7に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートの光学特性を測定したところ、表1に示すように、2000nm透過率9.7%、可視光透過率66.9%、熱線透過率は40.9%で、ヘイズ値は1.3%であった。得られた熱線遮蔽ポリカーボネートシートは表面硬度が高く、爪で傷を付けることはできなかった。
ZnO微粒子を4.0g、メチルイソブチルケトンを14.0g、および、アクリル系高分子分散剤γ(アクリル主鎖にアミノ基をもつ分散剤、TG−DTAで測定した熱分解温度は200℃、分子量100000)を2.0gを混合して20gの原料液を調製した。当該原料液を、ペイントシェーカーにより18時間攪拌し、ZnO微粒子を粉砕して当該微粒子が分散された酸化亜鉛分散液を調製した。尚、当該酸化亜鉛分散液内に分散されたZnO微粒子の平均粒子径を測定したところ90nmと小さく、良好な分散液であることが確認された。
次に、当該酸化亜鉛分散液を15.5質量%と、アクリル樹脂が溶媒に溶解したモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーPH−91」84.50wt%とを十分に混合し、ZnO微粒子とアクリル系樹脂バインダーとが含まれた実施例8に係るプライマー層形成用塗布液を得た。
実施例8に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートの光学特性を測定したところ、表1に示すように、2000nm透過率9.6%、可視光透過率66.5%、熱線透過率は38.9%で、ヘイズ値は1.8%であった。
実施例2で説明した0.1mm厚に成形した熱線遮蔽ポリカーボネートシートを、2mm厚のポリカーボネートシートと共押出した以外は、実施例2と同様にして実施例9に係る熱線遮蔽ポリカーボネート積層体を得た。
実施例9に係る熱線遮蔽ポリカーボネート積層体の光学特性を測定したところ、表1に示すように、2000nm透過率9.7%、可視光透過率66.7%、熱線透過率は40.8%で、ヘイズ値は1.4%であった。
実施例1で説明したA粉と、B粉と、ポリカーボネート樹脂ペレットとを、LaB6濃度が0.095質量%、ATO濃度が5.90質量%、となるように混合した以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートを得た。
比較例1に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートの光学特性を測定したところ、表1に示すように、2000nm透過率1.7%、可視光透過率66.5%、熱線透過率は45.6%で、ヘイズ値は1.5%であった。得られた熱線遮蔽ポリカーボネートシートは表面硬度が高く、爪で傷を付けることはできなかった。
実施例1で説明したA粉と、B粉と、ポリカーボネート樹脂ペレットとを、LaB6濃度が0.24質量%、ATO濃度が1.2質量%、となるように混合した以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートを得た。
比較例2に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートの光学特性を測定したところ、表1に示すように、2000nm透過率35.1%、可視光透過率67.0%、熱線透過率は42.1%で、ヘイズ値は1.6%であった。得られた熱線遮蔽ポリカーボネートシートは表面硬度が高く、爪で傷を付けることはできなかった。
実施例1で説明した高耐熱性分散剤αとLaB6微粒子の重量比[高耐熱性分散剤/LaB6微粒子]を15、高耐熱性分散剤αとATO微粒子の重量比[高耐熱性分散剤/ATO微粒子]を15となるように調製した以外は、実施例1と同様にして比較例3に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートを得た。
比較例3に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートの光学特性を測定したところ、表1に示すように、2000nm透過率9.6%、可視光透過率66.7%、熱線透過率は41.9%で、ヘイズ値は1.6%であった。
実施例1で説明した高耐熱性分散剤αとLaB6微粒子の重量比[高耐熱性分散剤/LaB6微粒子]を0.2、高耐熱性分散剤αとATO微粒子の重量比[高耐熱性分散剤/ATO微粒子]を0.2となるように調製した以外は、実施例1と同様にして比較例4に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートを得た。
比較例4に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートの光学特性を測定したところ、表1に示すように、2000nm透過率10.5%、可視光透過率67.5%、熱線透過率は42.1%で、ヘイズ値は12.5%であった。得られた熱線遮蔽ポリカーボネートシートは表面硬度が高く、爪で傷を付けることはできなかった。
実施例1で説明した高耐熱性分散剤αを、分散剤γ(アクリル主鎖にアミノ基をもつ分散剤、TG−DTAで測定した熱分解温度は200℃、分子量100000。)に代替した以外は、実施例1と同様にして比較例5に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートを得た。
比較例5に係る熱線遮蔽ポリカーボネートシートの光学特性を測定したところ、表1に示すように、2000nm透過率9.7%、可視光透過率55.3%、熱線透過率は38.9%で、ヘイズ値は1.3%であった。
Claims (10)
- 熱線遮蔽成分が分散されたポリカーボネートシートであって、
熱線遮蔽成分として、少なくとも6ホウ化ランタン微粒子とアンチモン添加酸化錫微粒子とを含み、当該6ホウ化ランタン微粒子とアンチモン添加酸化錫微粒子との重量比が、2/100≦6ホウ化ランタン微粒子/アンチモン添加酸化錫微粒子≦15/100の範囲であり、
熱分解温度が230℃以上で、アクリル主鎖と、官能基としてCOOH基とを有し、酸価が3〜15mgKOH/gである高耐熱性分散剤を含み、当該高耐熱性分散剤と熱線遮蔽成分との重量比が、0.5≦分散剤/熱線遮蔽成分≦10の範囲であることを特徴とする熱線遮蔽ポリカーボネートシート。 - 前記熱線遮蔽成分が、平均粒径200nm以下の微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の熱線遮蔽ポリカーボネートシート。
- 前記高耐熱性分散剤が、COOH基を有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱線遮蔽ポリカーボネートシート。
- ポリカーボネートシートの少なくとも一方の面に、紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱線遮蔽ポリカーボネートシート。
- 請求項1から3のいずれかに記載の熱線遮蔽ポリカーボネートシートと、他のシートとが積層されているものであることを特徴とする熱線遮蔽ポリカーボネート積層体。
- 前記熱線遮蔽ポリカーボネート積層体の少なくとも1層のシートが、紫外線吸収剤を含有するシートまたは紫外線吸収剤を含有する皮膜が形成されているシートであることを特徴とする請求項5に記載の熱線遮蔽ポリカーボネート積層体。
- 前記紫外線吸収剤が酸化亜鉛であることを特徴とする請求項4または6のいずれかに記載の熱線遮蔽ポリカーボネートシートまたは熱線遮蔽ポリカーボネートシート積層体。
- 熱線遮蔽成分として少なくとも6ホウ化ランタン微粒子とアンチモン添加酸化錫微粒子が分散された熱線遮蔽ポリカーボネートシートの製造方法であって、
当該6ホウ化ランタン微粒子とアンチモン添加酸化錫微粒子との重量比が、2/100≦6ホウ化ランタン微粒子/アンチモン添加酸化錫微粒子≦15/100の範囲である6ホウ化ランタン微粒子と、熱分解温度が230℃以上で、アクリル主鎖と、官能基としてCOOH基とを有し、酸価が3〜15mgKOH/gである高耐熱性分散剤とを溶媒に加えて粉砕・分散処理を行い、6ホウ化ランタン微粒子分散液を得る工程と、
当該6ホウ化ランタン微粒子分散液から、溶媒を除去して、6ホウ化ランタン微粒子分散粉を得る工程と、
当該6ホウ化ランタン微粒子とアンチモン添加酸化錫微粒子との重量比が、2/100≦6ホウ化ランタン微粒子/アンチモン添加酸化錫微粒子≦15/100の範囲であるアンチモン添加酸化錫微粒子と、熱分解温度が230℃以上で、アクリル主鎖と、官能基としてCOOH基とを有し、酸価が3〜15mgKOH/gである高耐熱性分散剤とを、溶媒に加えて粉砕・分散処理を行い、アンチモン添加酸化錫微粒子分散液を得る工程と、
当該アンチモン添加酸化錫微粒子分散液から、溶媒を除去して、アンチモン添加酸化錫微粒子分散粉を得る工程と、
得られた6ホウ化ランタン微粒子分散粉と、アンチモン添加酸化錫微粒子分散粉と、ポリカーボネート樹脂ペレットとを混合し、熔融混練し、成形して高耐熱性熱線遮蔽成分含有マスターバッチを得る工程と、
得られた高耐熱性熱線遮蔽成分含有マスターバッチと、ポリカーボネート樹脂ペレットとを熔融混練した後に成形する工程とを、具備することを特徴とする熱線遮蔽ポリカーボネートシートの製造方法。
但し、前記高耐熱性分散剤と熱線遮蔽成分との重量比は、0.5≦分散剤/熱線遮蔽成分≦10の範囲である。 - 前記高耐熱性分散剤が、COOH基を有するものであることを特徴とする請求項8に記載の熱線遮蔽ポリカーボネートシートの製造方法。
- 前記熱線遮蔽ポリカーボネートシートの少なくとも一方の面に、紫外線吸収皮膜を形成することを特徴とする請求項8または9に記載の熱線遮蔽ポリカーボネートシートの製造方法。
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