以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の焼結機を示す概略構成図であって、鉄鉱石粉を貯留するホッパー1a、石灰石及びドロマイトなどの含CaO系副原料を貯留するホッパー1b、製鉄所内回収粉、返鉱(焼結鉱篩下粉)等を貯留するホッパー1c、粉コークスや無煙炭などを貯留するホッパー1d等を有する原料供給部1を有する。この原料供給部1の各ホッパー1a〜1dから切り出された各原料は、ドラムミキサー2によって適量の水を混合して造粒し、3.0〜6.0mmの平均径を有する疑似粒子である焼結原料を焼結機3のサージホッパー5に貯留すると共に、細粒の焼結鉱を床敷ホッパー4に貯留しておく。
この焼結機3は、床敷ホッパー4及びサージホッパー5の下方に配設された無端移動式の焼結機パレット8を有し、焼結機パレット8の移動に伴って、床敷ホッパー4から細粒の焼結鉱を切り出して焼結機パレット8のグレート上に床敷層を形成させ、この床敷層上にサージホッパー5からドラムフィーダー及び切り出しシュートを使用して焼結原料が装入されて、焼結ベッドとも言われる400〜800mm程度の厚さ(高さ)の装入層9を形成する。
そして、サージホッパー5の下流側には、装入層9の上方に点火炉11が配設され、この点火炉11で、装入層9の表層中の炭材に点火する。この点火炉11には、製鉄所内のコークス炉で発生する所謂Cガスと称されるコークス炉ガスが供給されており、このコークス炉ガスを燃焼させることにより、装入層9の表層中の炭材に点火する。
この点火炉11の下流側には、例えば4台の気体燃料供給装置12a〜12cが焼結機パレット8の搬送方向に直列に隣接して配設されている。
そして、焼結機3で形成された焼結ケーキが粉砕機61によって粉砕され、次いで焼結機クーラー62で冷却された後、篩63で5.0mm以上の塊成物からなる成品焼結鉱が高炉64に供給され、5.0mm未満の塊成物からなる返鉱が返鉱ホッパー1cに送給される。
気体燃料供給装置12a〜12dのそれぞれは、図2に示すように、点火炉11の下流側且つ燃焼・溶融帯が装入層9中を進行する過程におけるパレット進行方向の何れかの位置に一つ以上配設され、装入層9中への希釈気体燃料の供給は、装入層9中の炭材への点火後の位置で行われるのが好ましい。この気体燃料供給装置12a〜12cは、点火炉11の下流側で、燃焼前線が表層下に進行した以降の任意の位置に一つ又は複数個配設されるものであり、目標とする製品焼結鉱の冷間強度及び被還元性を調整する観点から、大きさ、位置、配置数が後述するように決められる。
焼結機3は、具体的には、図2(a)及び(b)に示すように、焼結機パレット8の下段側から上段側へ折り返す左端位置に床敷ホッパー4及びその下流側に配設されたサージホッパー5を有する焼結原料供給装置としての給鉱部14が形成され、この給鉱部14で、床敷ホッパー4から切り出された細粒の焼結鉱が焼結機パレット8のグレート上に敷き詰められて床敷層が形成され、この床敷層上にサージホッパー5から定量切り出しされた焼結原料が装入されて所定厚みの装入層(焼結ベッド)9が形成される。
そして、給鉱部14の下流側における装入層9の上面に対向して点火炉11が配設され、この点火炉11の下流側に隣接して気体燃料供給装置12a〜12dが同様に装入層9の上面に対向して連続して配設され、さらに焼結機パレット8の最下流側に焼結機パレット8上に生成された焼結ケーキを排出する排鉱部15が形成されている。焼結機パレット8は排鉱部15で折り返されて給鉱部14に向かう。
ここで、上下の焼結機パレット8間における給鉱部14及び排鉱部15間には、上側の焼結機パレット8上に形成された装入層9の表層部の炭材に点火炉11で点火することにより形成される装入層9の燃焼・溶融帯を、焼結機パレット8の移動に伴って順次装入層9の下層側に移動させるための焼結機パレット8の上方から装入層9を通って空気を吸引するウインドボックス16が配設されている。このウインドボックス16は、主排気ダクト17を介して乾式の電気集塵機18に接続され、この電気集塵機18の出側に主排風装置19が接続されている。この主排風装置19から出力される排風が煙突20から大気に放散される。
そして、気体燃料供給装置12a〜12dのそれぞれは、概略的には、図3及び図4に模式的に示すように、焼結機パレット8の上部を囲う上端を開放した燃料供給部囲繞フード21で囲われている。
この燃料供給部囲繞フード21は、焼結機パレット8の搬送方向の前後ウォール21aと、これら前後ウォール21aの左右端部間を連結する焼結機パレット8の搬送方向に沿う左右ウォール21bとで上端及び下端を開放した方形枠状に形成された囲繞部21cと、この囲繞部21cを構成する前後ウォール21aおよび左右ウォール21bの上端に配設された透過率が25%以上、55%以下の例えば45%に設定されたパンチメタルで構成される飛散防止フェンス21dとで構成されている。
囲繞部21c内には焼結機パレット8の搬送方向に沿って延長し、頂部を上方とする等辺山形状の整流板22を焼結機パレット8の搬送方向と直交する幅方向に所定ピッチを保って所定本数平行に配設した構成を有する例えば上下方向に3列の整流板列22a〜22cが配設されている。
これら整流板列22a〜22cは、上下方向に隣接する整流板列22a及び22b間並びに22b及び22c間で、一方の整流板列の整流板22間に他方の整流板列の整流板22が位置するように千鳥状に配設されている。
したがって、整流板列22a〜22cによって、吸引された整流板列22a〜22c間を通過する空気と、気体燃料供給装置12a〜12dから供給される気体燃料との混合を図り、気体燃料を希釈できるとともに、希釈された希釈気体燃料が外部に漏洩することを防止する機能を持たせている。
燃料供給部囲繞フード21の具体的構成は、図5及び図6に示すように、焼結機パレット8の外側に垂設された支柱23間に配設された支持梁24に外側フード部25が固定され、この外側フード部25の内側に内側フード部26が相対移動機構27によって上下に相対移動可能に支持されている。
燃料供給部囲繞フード21は、前述したように前後ウォール21a及び左右ウォール21bとで方形枠状に形成された囲繞部21cと、この囲繞部21cの上端に形成された方形枠状の飛散防止フェンス21dとで構成されているが、これを外側フード部25として、前記したように支持梁23に固定配置されている。
一方、燃料供給部囲繞フード21内に配置されている整流板22、すなわち整流板列122a〜22cは、内側フード部26に支持されている。この内側フード部26は、外側フード部25の上端から外側に延長する支持枠26aと、この支持枠26aの前後枠部26bに固定された外側フード部25の前後ウォール21aの内側に沿って下方に焼結機パレット8上の装入層(焼結ベッド)の上方となる位置まで延長する所定本数例えば4本の垂直支持板部26cと、これら垂直支持板部26cの下端位置に複数段、例えば3段配設された水平支持板部26dとで構成されている。そして、水平支持板部26d間に、焼結機パレット8の搬送方向と直交する幅方向に所定ピッチP(例えば400mm)で平行に前述した等辺山形状の山形の整流板22が配列されて上下方向に3段の整流板列22a〜22cが配設されている。すなわち、整流板列22a〜22cは、水平支持板部26dで支持され内側フード部26に吊下されている。
ここで、整流板列22a〜22cの整流板22の幅Wは、図4で見て水平方向の間隔Lhの2倍以上に設定することが好ましい。具体的には山形の整流板22の幅Wが100mm以上であり、整流板22の水平方向及び垂直方向の間隔Lh及びLvが50mm以上、望ましくは100mm以上であることが好ましい。このように、整流板22の大きさを設定することによって、整流板22の表面における境界層形成による通気抵抗を小さくすることができる。
また、整流板22の垂直方向の配列は、トーナメント状(千鳥状)又はラビリンス状に多段に配設することが好ましい。このような配列構造とすることにより、吸引される空気の流速が平均化され、空気の巻き込みによる渦流の形成を抑制することができる。ただし、整流板22の垂直方向の段数を多くし過ぎると開口部の圧力損失が大きくなって、空気を焼結機パレット8の下で吸引しているウインドボックス16の負荷が増大し、吸引空気量が減少するため、焼結操業に支障を来すことになりかねない。そこで、開口部への整流板列22a〜22cの設置による圧力損失は10mmH2O以下に制御することが好ましい。このため、開口部の内部に設置される整流板22は、本例では、幅W=300mmの整流板22を、水平方向の間隔Lh=100mmで配列され、さらに垂直方向の間隔Lv=70mmで3段、トーナメント状に配列されている。また、装入層9の下方では、ウインドボックス16で空気を吸引速度約0・9m/sで吸引している。
因みに、整流板列22a〜22cを設置しない場合には、燃料供給部囲繞フード21内には渦流が形成され、その結果、後述するように整流板列22cの下側に気体燃料噴射ノズル31a〜31gを配置して気体燃料を水平方向に噴射した場合に気体燃料が散逸する。一方、上述したように整流板列22a〜22cを設置した場合、燃料供給部囲繞フード21の開口部の圧力損失は若干上昇しているもののフード21内の渦流形成も抑制され、さらに最下段の整流板列22cとその上端との間には気体燃料が微量認められるが、その上部では気体燃料は存在しない状態を作り出すことができる。その結果、気体燃料の散逸率(0.1%以下)も低減することができる。
また、燃料供給部囲繞フード21の下側と、焼結ベッド表面(装入層表面)との間には、必然的に間隙が生じるが、この間隙部分のシールが十分でないと、例えば、透過率が20〜30%あると、この部分から燃料供給部囲繞フード21の内部に空気を巻き込み、希釈気体燃料の濃度分布の偏りを増大させることが分かった。したがって、燃料供給部囲繞フード21の下端からの空気の侵入を防止することは重要である。
このため、燃料供給部囲繞フード21の焼結機パレット8の搬送方向に沿う左右ウォール21bの下端とパレットサイドウォール8aとの間には、図4に模式的に示すようにパレットサイドウォール8a上端より下方まで延び外側を覆うカバー62が設けられている。また、前記間隙部分のシール性能をさらにあげる必要がある場合は、焼結機パレット8の搬送方向に延長するワイヤーブラシ間にシールシートを介挿したワイプレシール71を設置して、その外側にワイプレシール71を外側から覆うカバー62を設ければ良い。なお、シール材としてはワイプレシール71に限らず、チェーンカーテン、シールブラシ、密着シール等のシール材を適用することができる。また、上記シール材は、耐熱性があり、且つ、可撓性ないし変形の自由度が大きく、装入層9の表面を傷つけないものであることが好ましい。
さらに、本発明では、外側フード部25に対して内側フード26を上下に移動可能としており、本例では、内側フード26を昇降させる昇降機構27を有する。昇降機構27は、図5に示すように、外側フード部25の左右ウォール21bにシリンダチューブ27aが固定配置され、且つピストンロッド27bが上方に突出する例えば左右2本ずつ計4本の油圧シリンダ27cで構成され、ピストンロッド27bの先端が内側フード部26の支持枠26aに連結されている。また、図6では、外側フード部25の前後ウォール21a側にシリンダチューブ27aを配置できるブラケット27dを設け、該ブラケット27d上に昇降機構27を配した例を示す。昇降機構27は、前後ウォール21a側あるいは左右ウォール21b側いずれでもかまわない。さらに飛散防止フェンス21dに内側フード26を支持する強度があるようであれば、飛散防止フェンス21d上に昇降機構27を搭載してもかまわない。なお、油圧シリンダに代えジャッキでもよく、昇降機構27としては、昇降機能を有する昇降装置で十分である。
そして、外側フード部25の基部21cを構成する前後ウォール21a間に気体燃料供給機構12i(i=a〜d)が配設されている。この気体燃料供給機構12iは、図5に示すように、焼結機パレット8の搬送方向に沿う幅方向に所定ピッチを保って平行に配設された例えば7本の気体燃料噴射ノズル31a〜31gと、これら気体燃料噴射ノズル31a〜31gに気体燃料を供給する気体燃料供給部32とで構成されている。
気体燃料噴射ノズル31a〜31gは、前述した図3に示すように、幅方向の両端の端部気体燃料噴射ノズル31a及び31gについては内側向きに気体燃料を水平方向に噴射する気体燃料噴出口31hが配設され、残りの気体燃料噴射ノズル31b〜31fについては隣接する気体燃料噴射ノズルに対向する対称位置に焼結機パレット8の搬送方向に所定ピッチで所定数の気体燃料を水平方向に噴射する気体燃料噴出口31hが配設されている。気体燃料噴出口31hから水平方向に噴射される気体燃料は、外側フード部25を介して導入される大気中に拡散し、所定濃度に希釈された希釈気体燃料となって装入層(焼結ベッド)9に吸引される。なお、噴射方向は、水平方向のほか、下向き、斜め上方向きであってもかまわない。噴射された気体燃料は、速やかに大気中に拡散して希釈された希釈気体燃料となる。
また、各気体燃料噴射ノズル31a〜31gは、図6及び図7に示すように、前後ウォール21a間に配設された中空丸棒で形成されたノズル受け材34と、このノズル受け材33の下方に配設されたノズル撓み防止ラチス構造体35と、このラチス構造体35の底面に配設された支持板部36に前後方向に所定間隔を保って取付けられた気体燃料噴射ノズル31a〜31gを支持する前後サポート材37とで構成されるノズル受け構造によって支持されている。このように、気体燃料噴射ノズル31a〜31gをラチス構造体35で支持することにより、上下方向の断面係数を向上させ、気体燃料噴射ノズル31a〜31gの撓みを防止することができる。
そして、隣接する気体燃料噴射ノズル31a〜31g間で、図8に示すように、一方の気体燃料噴射ノズルの気体燃料噴出口31hが他方の気体燃料噴射ノズルの気体燃料噴出口31h間の中央位置に配置されるように隣接する気体燃料噴射ノズル間で水平方向に気体燃料噴出口31hが千鳥状に配置されている。このため、隣接する気体燃料噴射ノズルで噴射される気体燃料が互いに干渉することなく、均一に分散されて装入層9上に噴射されて空気と混合されて希釈気体燃料38となる。その後、焼結機パレット8下の図示されていないウインドボックスの吸引力を利用して、装入層9の表層に生成した焼結ケーキを経て、装入層の深部(下層)にまで導入される。
また、端部気体燃料噴射ノズル31a及び31gのそれぞれは、図4に示すように、常時は気体燃料噴出口31hが水平内側を向く水平位置を維持するが、ノズル回動機構56が後述する制御装置50によって駆動制御されると、気体燃料噴出口31hが水平内側を向く水平位置とこの水平位置から下方に例えば60度回動した傾斜位置との間で回動駆動される。
さらに、気体燃料供給部32は、図5及び図6に示すように、都市ガス供給本管41及び窒素ガス供給本管42から供給される気体燃料としての都市ガス及びパージ用窒素ガスがバルブスタンド43に供給される。このバルブスタンド43には、詳細説明は省略するが、圧力計、流量計等の各種計器が配設されているとともに、各気体燃料噴射ノズル31a〜31gに気体燃料を分配する分配部とこの分配部で分配された各気体燃料の流量及び圧力を調整する調整弁等が配設され、このバルブスタンド43から出力される圧力及び流量が調整された気体燃料が都市ガス枝管44を介して各気体燃料噴射ノズル31a〜31gに供給される。
このように、気体燃料供給装置12iは、気体燃料を、装入層9の上方で、大気中に高速で吐出させ、それによって周囲の空気と短時間で混合し、その気体燃料の燃焼下限濃度以下の濃度に希釈し、その後、装入層中にその希釈気体燃料38を導入する必要がある。
上記のように、気体燃料を燃焼下限濃度以下の濃度に希釈する理由は、下記による。
表1は、本発明で用いることができる代表的な気体燃料の燃焼下限濃度、供給濃度等を示したものである。焼結原料中に気体燃料を供給する時のガス濃度は、火災の発生を防止するためには、燃焼下限濃度より低いほど安全である。すなわち、常温状態では燃焼しない(できない)ようにして供給することが安全のため必要である。この点、都市ガスは、Cガス(コークス炉ガス)と燃焼下限濃度が近似しているが、熱量がCガスよりも高いことから、供給濃度を低くできる。さらにCガスは、H2を主成分としているので逆火速度が都市ガスに比べ非常に早く、都市ガスに比べ危険でもある。したがって、安全性を確保する観点からは、供給濃度を低くすることができる都市ガス、また逆火速度の低い都市ガスの方がCガスより優位である。
表2は、気体燃料中に含まれる燃焼成分(水素,CO,メタン)と、それら成分の燃焼下限・上限濃度、層流、乱流時の燃焼速度等を示したものである。焼結中における火災発生を防止する、すなわち、焼結中に供給している気体燃料による火災発生を防止するためには、逆火防止を図る必要があるが、そのためには、少なくとも層流燃焼速度以上、好ましくは乱流燃焼速度以上の高速で気体燃料を吐出させれば良い。例えば、都市ガスの主要燃焼成分であるメタンを気体燃料とする場合には、3.7m/sを超える速度で吐出させれば、逆火の恐れはないわけである。
一方、水素ガスは、乱流燃焼速度がCOやメタンと比較して速いため、安全を確保するためには、その分、高速で吐出させる必要がある。この点から、表1に示した気体燃料を比較すると、水素成分を含まない都市ガスは、水素成分を59vol%も含有しているCガスと比較して、吐出速度を遅くすることができる点で有利である。
しかも、都市ガスは、CO成分を含まないので、ガス中毒を起こすおそれもなく安全である。したがって、安全性を確保する観点からは、都市ガスは、気体燃料として使用する上で好ましい特性を有すると言うことができる。Cガスも、気体燃料として使用することができるが、以上述べた問題があり、困難を伴う。本発明では、これらの点も合わせて解決する。
表3は、気体燃料を供給する形式による得失を評価した結果を示したものである。表中、直上吹込みとは、都市ガスやCガス等の気体燃料を、そのまま供給(吐出)して周囲の大気を巻き込ませることにより所定の濃度に希釈し、装入層中に吸引(導入)させる形式、予混合吹込みとは、あらかじめ大気と気体燃料とを混合して所定の濃度まで希釈したものを装入層上に供給し、装入層中に吸引(導入)させる、いわゆるプレミックス形式をさす。直上吹込み形式では、上述した乱流燃焼速度以上の速度で気体燃料を吐出すれば、逆火防止は容易であるが、予混合吹込み形式では、濃度偏差が発生したとき、逆火を起こす可能性がある。一方、直上吹込み形式では、気体燃料を周囲の大気と混合し希釈させる際、濃度ムラが発生しやすいため、装入層中で燃焼ムラを起こす可能性が、予混合吹込み形式に比べて大きい。しかし、設備コストを含めて総合的に評価した場合には、都市ガスの直上吹込みが最も優位である。
また、本発明では、気体燃料供給装置12iにより、気体燃料を、装入層9の上方で、大気中に高速で吐出させ、それによって周囲の空気と短時間で混合し、その気体燃料が有する燃焼下限濃度以下の濃度に希釈し、その後、装入層中にその希釈気体燃料を導入する必要がある理由は、下記による。
図9(a)に示したように、内径300mmφ×高さ400mmの焼結鍋に焼結ケーキを充填し、その焼結ケーキの中央部の上から深さ90mmの位置にノズルを埋め込んで、対空気で1vol%となるよう100%濃度のメタンガスを吹き込み、焼結ケーキ内の円周方向および深さ方向におけるメタンガス濃度を測定した結果を表4に示した。一方、図9(b)に示したように、同じノズルを用いて、焼結ケーキの上方350mmの位置からメタンガスを供給した場合について、上記と同様にしてメタンガス濃度の分布を測定した結果を表5に示した。これらの結果から、メタンガスを焼結ケーキ中に直接導入した場合には、メタンガスの横方向の拡散が不十分であるのに対して、メタンガスを焼結ケーキ上方で供給した場合には、焼結ケーキ内のメタンガス濃度はほぼ均一であり、十分に横方向に拡散していることがわかる。以上の結果から、気体燃料は、焼結ケーキの上方で空気中に供給することにより、装入層内に導入される前に、均一に希釈しておくことが好ましいことがわかる。
次に、本発明においては、気体燃料供給装置の気体燃料供給パイプに設けられたスリットやノズル等の噴出口から気体燃料を噴出させる速度は、逆火を防止する観点から高速で吐出させる必要がある。すなわち、気体燃料は、装入層表層に吸引・導入される段階までに、希釈されて燃焼下限濃度以下となっているが、本発明の焼結操業においては、焼結機パレット内に燃焼・溶融帯を形成するあるいは形成しつつある焼結層が存在し、常に火種を有する状態において、装入層の上方で、気体燃料の供給が行われる。従って、何らかの火種によって、気体燃料供給装置12iから供給された気体燃料に着火した場合、ノズル等から吐出させる気体燃料の流速が遅いと、逆火を起こして、気体燃料供給装置12iや気体燃料供給パイプ内で爆発・燃焼を起こすおそれがある。そこで、気体燃料に着火しても、逆火しないようにするために、気体燃料の噴出速度は、その気体燃料が有する燃焼速度以上、より好ましくは、乱流燃焼速度以上の速度で吐出させるのが望ましいと考えられる。因みに、メタンガスの層流燃焼速度は、約0.4m/s、乱流燃焼速度は、約4m/sである。
そこで、上記燃焼速度で実際に吹き消えが起こる条件を確認する実験を行った。
この実験では、図10に示したように25Aの配管に、開口径が1mmφ、2mmφおよび3mmφの噴出口を加工し、この配管にLNGガスを供給して上記噴出口からLNGガスを噴出させ、その噴出したLNGガスに点火源を用いて点火し、その後、上記点火源を引き離したときに吹き消えが起こる噴出速度を測定した。ここで、上記噴出速度は、LNGガスのヘッダー圧を変えることにより制御した。
その結果、噴出口の開口径が1mmφでは、LNGガスのヘッダー圧を300mmH2O以上とし、気体燃料の噴出速度を70m/s以上としたときに、また、2mmφの開口径では、LNGガスのヘッダー圧を550mmH2O以上とし、気体燃料の噴出速度を130m/s以上としたときに吹き消えが起こることがわかった。一方、3mmφの開口径では、LNGガスのヘッダー圧を2000mmH2Oとして音速を超える速度で気体燃料を噴出させても、噴出口での気体燃料の燃焼は防止できたとしても、その下流の低速部で燃焼を起こす、いわゆる煽火が発生し、確実に吹き消すことはできなかった。参考として、開口径が1mmφのときの実験結果を図11に示した。
上記のように、LNGガスあるいはLNGガスと同等の燃焼速度を有する燃料ガス(例えば、メタン、エタン、プロパンガス等)を用いる場合、吹き消しを起こさせて逆火を防止するには、少なくとも開口径は3mmφ未満とする必要があることがわかった。また、気体燃料の噴出速度は、単に燃焼速度以上としただけでは、噴出口での燃焼は防止できても、その下流で低速となった部分での燃焼(煽火)を防止することはできない。そこで、本発明では、斯かる煽火をも防止するために、吹き消え現象が起こる速度以上で噴出口から気体燃料を噴出させることとした。そして、この吹き消え現象を起こさせるためには、気体の噴出口を開口径3mmφ未満の大きさとして高速で気体燃料を噴出させる必要があり、例えば、開口径が1mmφ相当の場合は70m/s以上、開口径が1.5mmφ相当の場合は100m/s以上、開口径が2mmφの場合は130m/s以上の高速で噴出させることが好ましい。
なお、本発明を実機に適用する場合の好ましい開口径は0.8〜1.5mmφの範囲である。0.8mmφ未満では、配管に穴加工することが難しくなり、また、ガス中に含まれる粉塵等によって閉塞を起こしやすくなるからである。一方、1.5mmφ超えでは、吹き消しを起こさせるためには比較的大きな噴出速度が必要となるため、安全性を確保するためには噴出速度は低い方が好ましいからである。
ところで、上記説明では、噴出口の形状を円とし、その直径で大きさを説明してきたが、開噴出口の形状は、同一の開口面積を有するものであれば特に円に限定されるものではなく、例えば、楕円形状のものや溝状(スリット)としたものでもよい。
また、気体燃料の噴出速度は、開口径の他に、気体燃料の供給圧力によっても変化するため、上記吹き消えが起こる噴出速度を確保するには、開口を形成するノズル圧力とノズル流速(噴出速度)の関係に基づき制御を行えばよい。図12は、空気を噴出させる場合を例にとって、ノズル圧とノズル流速との関係を示したものであり、気体燃料のガス密度(ρ)を代入すれば、下記式;
ΔP=ρ・V2/(2・g)
ここで、ΔP:ノズル差圧(mmH2O)、ρ:30℃における気体燃料の密度(kg/m3)、V:ノズル流速(m/s)、g:重力加速度(m/s2)である。
を用いてノズル流速を求めることができる。
また、LNGガスを開口径が1mmφの孔から噴出させる場合には300mmH2Oで70m/s、1.5mmφの孔から噴出させる場合には700mmH2Oで100m/sの速度で噴出させることが可能で、吹き消しを起こさせることができる。
また、気体燃料を吐出させる配管が長尺である場合、一般に、気体燃料の供給元に近いほど高速で噴出し、供給元から遠くなるほど噴出速度が遅くなることが予想される。そこで、図13の写真に示したように、開口径1mmφの噴出口をピッチ160mmで76個開け、先端を閉塞した長さ6mの長尺配管(25A)を用い、この配管の片側端から空気を元圧0.1〜1.00kg/cm2・Gの範囲で変化させて供給し、上記噴出口から空気を噴出させ、このときの配管長さ方向の圧力変化を測定した。その実験の結果は表6に示したが、この実験条件(配管径、噴出口)の範囲内では、元圧と配管末端部の圧力にほとんど差はなく、したがって、各噴出口から均等にガスが噴出していることがわかった。
ただし、上記実験範囲を外れる条件では、元圧と配管の末端部の圧力差が大きくなる可能性がある。そこで、そのような場合には、
(a)配管内の断面積を徐々に小さくしたテーパー状配管を用いる
(b)燃料供給元ヘッダーより遠ざかるほど、開口断面積を大きくする
(c)燃料供給元ヘッダーより遠ざかるほど、開口部やノズルのピッチを狭め、単位配管長さ当りの開口部ないしノズル断面積の和が大きくする、
のいずれか1つを適用するか、これらを組み合わせて適用することにより、均等に燃料を供給することができる。
なお、上記気体燃料供給装置での気体燃料の吐出は、装入層表面の上方300mm以上の高さで行うことが好ましい。その理由は、以下の通りである。
図14に示したような、気体燃料の噴出方向が水平方向となるよう25Aの配管の両側面に開口径が1mmφの噴出口を112mmピッチで開けた気体供給配管を、焼結ベッド(装入層)の上の500mm位置に、400mmの間隔をもたせてパレット進行方向に平行に配列し、上記噴出口から200m/sの速度でLNGを大気中に噴出して周囲の空気と混合し、LNGを目標濃度0.8%に希釈させたときの均一化状況をシミュレーションした。なお、上記気体供給配管は、隣接する配管の噴出口が互いに56mmずつずれ、噴出した気体燃料が衝突しないように配列した。また、実焼結機を模して、焼結ベッドの上表面では、下方に0.9m/sの吸引速度で空気が吸引されているものとした。
図15は、開口径が1mmφの噴出口から200m/sの速度で噴出されたLNGが、焼結ベッド上方で周囲の空気と混合して希釈されて行く様子を示したものである。この図から、上記条件で噴出されたLNGの濃度は、噴出口から約100mm程度のところで、LNGの燃焼下限濃度である4.3%まで希釈されていること、したがって、それ以降であればLNGは理論上燃焼を起こすおそれがないことがわかる。
また、図16は、開口径が1mmφの噴出口から200m/sの速度で噴出されたLNGが、焼結ベッド表面に到達するまでおよび焼結ベッド層内でどのように拡散し、希釈されていくかを示したものである。この図から、上記噴出条件であれば、LNGは、焼結ベッド上200mm(噴出口下300mm)の位置では0.28〜1.14%に、また、焼結ベッド表面に達した段階では0.51〜1.14%にまで希釈されており、さらに、焼結ベッド層中層に至るまでに0.69〜0.87%に、さらに焼結ベッド下面に至るまでに0.75〜0.81%に希釈されていることがわかる。
以上の結果から、LNGを、焼結ベッド上方で高速で空気中に噴出させることにより、空気と十分に混合して均一に希釈されること、特に、噴出口の下300mmでは、おおむね均一に希釈されていることがわかった。そこで、本発明では、この結果と、噴出した気体燃料の装入層表面における跳ね返りを考慮し、気体燃料の大気中への供給は、装入層表面の上方300mm以上の高さで行うこととする。
本発明において、装入層中に供給する気体燃料としては、高炉ガス(Bガス)、コークス炉ガス(Cガス)、高炉ガスとコークス炉ガスとの混合ガス(Mガス)、都市ガス、天然ガス(LNG)またはメタン、エタン、プロパン、ブタンガス、あるいはこれらの混合ガスのいずれかを用いることができる。本発明では、これらの気体燃料のいずれかを空気中に高速で吐出し、空気と混合させて希釈気体燃料とし、装入層中に供給(導入)する。
上記希釈気体燃料は、その中に含まれる可燃性ガス(燃焼成分)の濃度を、大気中の常温における燃焼下限濃度の75%以下まで希釈した気体燃料であることが好ましく、より好ましくは燃焼下限濃度の60%以下、さらに好ましくは燃焼下限濃度の25%以下の濃度にまで希釈したものであるのが好ましい。燃焼下限濃度以下の75%以下に希釈した可燃性ガスを使用する理由は、下記の二つである。
(a)装入層上部への高濃度の可燃性ガスの供給は、時として、爆発的燃焼を招くおそれがあり、少なくとも常温では、火種があっても燃焼しない状態としておく必要がある。
(b)装入層中で完全に燃焼せず、未燃焼のままウインドボックスの下流にある電気集塵器等に到達したとしても、電気集塵器の放電によって燃焼するおそれがないことが必要である。
さらに、希釈気体燃料の濃度は、その希釈気体燃料の燃焼による酸素の消費によって、焼結原料用に含まれる総燃料(固体燃料+気体燃料)の燃焼に必要な酸素の不足を招いて燃焼不足を起こさない程度に希釈されたものであることが必要である。ただし、希釈気体燃料の濃度は、燃焼下限濃度の2%以上であるのが好ましい。濃度が2%未満では、燃焼による発熱量が不足し、焼結鉱の強度向上と歩留まりの改善が得られないからである。
また、本発明における焼結機では、装入層中の炭材に点火した直後に、希釈された気体燃料を装入層中へ供給(導入)することも可能である。希釈気体燃料の供給が、吹き消えを生じる気体燃料の供給で行なえるため、逆火のおそれなく、装入層の上層表面に焼結ケーキの層が形成されていれば、焼結が完了するまでの任意の位置で行うことができる。
希釈気体燃料の供給を装入層表層に焼結ケーキ層が形成された後に行うことが好ましい他の理由は、焼結ケーキが生成していない状態で装入層の上部に希釈気体燃料の供給を行うと、該装入層上で燃焼のみを生じるからである。希釈気体燃料の供給は、焼結鉱の歩留りを向上させる必要がある部分に対して行う、即ち、焼結鉱の強度を上昇させたい部分で燃焼を起こすよう供給するのが好ましいことからである。
また、点火後の装入層中に希釈気体燃料を供給し、装入層内の最高到達温度と高温域保持時間のいずれかまたは両方を制御するためには、燃焼・溶融帯の厚みが少なくとも15mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上となった状態において、希釈気体燃料の供給を行うことが好ましい。燃焼・溶融帯の厚みが15mm未満では、焼結層(焼結ケーキ)を通して吸引される空気と希釈気体燃料による冷却効果によって、気体燃料を燃焼させてもその効果が不十分となり、燃焼・溶融帯の厚みの拡大を図れない。一方、前記燃焼・溶融帯の厚みが15mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上となる段階で希釈気体燃料を供給すると、燃焼・溶融帯の厚みの拡大や高温域保持時間の延長を実現することができ、ひいては高強度の焼結鉱を得ることができるからである。なお、上記燃焼・溶融帯の厚みの確認は、後述するように、透明石英製窓付き竪型管状試験鍋を用いて行うことができる。この試験鍋を用いた焼結試験は、希釈気体燃料の供給位置を決定するのに有効な手段となる。
また、希釈気体燃料の装入層への導入は、燃焼前線が表層下に下がり、燃焼・溶融帯が表層から50mm以上、好ましくは100mm以上、より好ましくは200mm以上下がった位置、すなわち、装入層の中・下層領域を対象として行うのが好ましい。つまり、希釈気体燃料は、装入層の表層に生成した焼結ケーキ領域(焼結層)を燃焼することなく通過し、燃焼前線が表層から50mm以上移動した段階で燃焼するように供給するのが好ましい。その理由は、燃焼前線が表層から50mm以上下がった位置であれば、焼結層を通して吸引される空気による冷却の悪影響が軽減され、燃焼・溶融帯の厚みの拡大を図ることができ、燃焼・溶融帯の厚みを有効に拡大することができるからである。なお、気体燃料は、上記のように吹き消え現象が起こる高速で噴出しているので、点火炉での着火直後からの気体燃料供給でも、逆火を起こすおそれもなく実現できる。
上記理由から、希釈気体燃料を生成する気体燃料供給装置は、焼結機の規模にもよって異なるが、例えば、気体燃料供給量が1000〜5000m3(標準)/hr、生産量が約1.5万t/日で、機長が90mの規模の焼結機では、点火炉の出側直後から、または、下流側約5m以降の位置に配置するのが好ましい。
上述したように、本発明に係る焼結機では、希釈気体燃料の供給位置(装入層への導入位置)は、パレット移動方向における点火炉下流で、焼結ケーキが生成した後のいわゆる燃焼前線が表層下に進行した位置から焼結が完了するまでの間の1ヶ所以上の任意の位置で行うことが好ましい。このことは、燃焼前線が装入層の表層下に移った段階で気体燃料の導入を開始すること、したがって、気体燃料の燃焼が装入層の内部で起り、次第に下層へ移行することになるので、爆発のおそれがなく、安全な焼結操業が可能になることを意味している。
また、本発明における焼結鉱の製造方法では、装入層中への希釈気体燃料の導入は、生成した焼結ケーキの再加熱を促進するものであることを意味している。即ち、この希釈気体燃料の供給は、もともと高温域保持時間が短いために熱不足となり、焼結鉱の冷間強度が低くなりやすい部分に対して、固体燃料に比べて反応性の高い気体燃料を供給することによって、不足している燃焼熱を補填し、燃焼・溶融帯の再生−拡大を図るという役割を担うものだからである。
さらに、本発明における焼結鉱の製造方法では、装入層上部からの希釈気体燃料の供給は、装入層内に導入された希釈気体燃料を未燃焼のまま燃焼・溶融帯にまで到達させ、そこで燃焼させることによって、燃焼熱の補填を図るようにするのが好ましい。それは、希釈気体燃料の装入層中への供給(導入)は、装入層上部のみならず、厚み方向中央部の燃焼・溶融帯にまで波及させることがより効果的と考えられるからである。つまり、気体燃料の供給が、熱不足(高温域保持時間不足)になりやすい装入層の上層部で行われると、この部分に十分な燃焼熱が提供されるので、焼結ケーキの品質改善を図ることができる。さらに、希釈気体燃料の作用効果を中層部以下の帯域にまで及ぶようにすると、本来の炭材によって形成された燃焼・溶融帯の上に希釈気体燃料による燃焼・溶融帯を形成するのと等しいことになり、結果として燃焼・溶融帯の上下方向の拡幅につながり、最高到達温度を上げることなく、高温域保持時間の延長を図ることができるので、パレットの移動速度を落すことなく十分な焼結効果を得ることができる。その結果、装入層全体にわたって品質が改善(冷間強度の向上)されるので、成品焼結鉱の歩留り向上と生産性の向上を図ることができる。
また、本発明は、前記希釈気体燃料の供給位置を、気体燃料供給の作用・効果を装入層中のどこに及ぼすかという観点から決定している。また、気体燃料の供給によって、装入層内における最高到達温度や高温域保持時間を、熱量一定基準の下で固体燃料の量に応じて制御している。従って、本発明において、希釈気体燃料を装入層中へ導入(供給)するに当っては、その供給位置を調整するだけでなく、燃焼・溶融帯自体の形態を制御し、燃焼・溶融帯における最高到達温度および高温域保持時間の少なくとも一方を制御するようにすることが好ましい。
一般に、点火後の装入層内では、燃焼(火炎)前線が、パレットの移動に伴って次第に前方(下流側)かつ下方に拡大していくため、燃焼・溶融帯の位置は、図42(a)に示すように変化する。そして、図42(b)に示すように、焼結過程で受ける焼結層上層、中層、下層の熱履歴は大きく異なり、したがって、上層〜下層間では、高温域保持時間(約1200℃以上となる時間)も大きく異なる。その結果、パレット内の焼結鉱の位置別歩留まりは、図42(c)に示すような分布を示す。即ち、表層部(上層部)の歩留は低く、中層、下層部で高い歩留となる。そこで、本発明に従って、前記気体燃料を供給すると、燃焼・溶融帯の上下方向の厚みやパレット進行方向の幅が拡大し、これが成品焼結鉱の品質向上につながる。そして、高い歩留分布となる中層部や下層部は、さらに高温域保持時間を制御(延長)できるため、歩留がより向上する。
上記のように、本発明では、気体燃料の供給(導入)位置を調整することにより、燃焼・溶融帯の形態、即ち、燃焼・溶融帯の高さ方向の厚さおよびパレット移動方向の幅の少なくとも一方を制御できると共に、最高到達温度や高温域保持時間を制御することができる。そして、これらの制御を通じて、常に十分な焼成を達成し、ひいては成品焼結鉱の冷間強度を高め、品質向上を実現することができる。
また、本発明における装入層中への希釈気体燃料の供給(導入)は、成品焼結鉱全体の強度を制御するためであると言うこともできる。すなわち、本発明において、希釈気体燃料を供給するそもそもの目的は、焼結ケーキ(焼結鉱)の冷間強度を向上させることにあり、具体的には、気体燃料の供給位置制御や、焼結原料が燃焼・溶融帯に滞在する時間である高温域保持時間の制御、最高到達温度の制御を通じて、焼結鉱の冷間強度(シャッターインデックスSI)を75〜85%程度、好ましくは80%以上、より好ましく90%以上にすることである。なお、実機焼結機によって製造された焼結鉱の冷間強度(SI値)は、鍋試験で得られる値よりもさらに10〜15%高い値を示すのが一般的である。
この強度レベルは、本発明によれば、前記希釈気体燃料の濃度、供給量、供給位置および供給範囲を、好ましくは焼結原料中の炭材量をも考慮した上で(投入熱量を一定にする条件下で)調整することによって、安価に達成することができる。焼結鉱の冷間強度の向上は、一方で、通気抵抗の増大と生産性の低下を招くことがあるが、本発明では、そうした問題を、最高到達温度や高温域保持時間を制御することによって解消することができる。
したがって、本発明の焼結機において、希釈気体燃料の装入層中への導入位置は、装入層中に生成した焼結ケーキから湿潤帯までの間の任意の帯域における焼結鉱の冷間強度をどのように制御するかという観点も考慮して決定される。そして、この観点から、本発明では、気体燃料供給装置の規模(大きさ)、数、位置(点火炉からの距離)、ガス濃度を、好ましくは焼結原料中の炭材量(固体燃料)に応じて調整することによって、燃焼・溶融帯の大きさ(上下方向の厚さおよびパレット移動方向の幅)だけでなく、高温到達温度、高温域保持時間をも制御し、もって、生成する焼結ケーキ(焼結鉱)の強度の向上を図っている。
本発明の焼結機において、装入層中に供給する気体燃料としては、先述したように、高炉ガス、コークス炉ガス、高炉・コークス炉混合ガス、都市ガス、天然ガスあるいはメタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス、またはこれらの混合ガスのいずれかを用いることができるが、上記気体燃料の中でも、CO含有量が50massppm以下のものを用いることが好ましい。それは、COガスは、人体に対して有害であり、装入層上に供給された気体燃料が全量装入層中に導入されないで、機外に漏洩した場合には、人災を起こす可能性があるからである。具体的には、都市ガス13Aやプロパンガスを用いることがより安全性だけでなく、コストの面からも好ましい。
さらに、本発明の焼結機では、上記気体燃料以外に、気体状態での着火温度が、焼結ベッド表層の温度より高い、アルコール類、エーテル類、石油類、その他の炭化水素系化合物類等の液体燃料を気化させたものを用いることもできる。本発明で用いることができる液体燃料とその特性について、表7に示した。斯かる液体燃料を気化させた気体燃料は、着火温度が、上述した気体燃料と比較して着火温度が高いため、焼結ベッド表層の温度より高い、装入層のより内部で燃焼するため、吹き込む位置での燃焼・溶融帯のすその温度の拡大に有効である。特に、着火温度が500℃近いものは、その効果が大きい。なお、液体燃料を気化した気体燃料を用いる場合には、気体供給配管は、気化した燃料が再液化しないよう、該液体燃料の沸点以上着火温度未満の温度に保持することが好ましい。
なお、廃油等は、引火しやすい成分や着火温度の低い成分を含むことがあるので、本発明で用いるには好ましくない。着火温度や引火点の低い成分を含む廃油等の液体燃料を予め気化させて、焼結原料ベッド上に供給した場合には、原料ベッド中の燃焼帯近傍に到達する前の原料ベッド表層の上部空間ないしは原料ベッド表層近傍で燃焼してしまうため、本発明が意図する焼結原料ベッドの燃焼帯近傍で燃焼させて高温保持時間の延長を図るという効果を得ることができないためである。
本発明の焼結機における気体燃料供給装置12iは、焼結機の幅方向に沿って、パレット8の両サイドウォール8aに跨がるように配設されるのが好ましい。すなわち、上記気体燃料供給装置は、パレット8の両サイドウォール8aを跨がるようにフード21が配設され、その内部には気体燃料を供給する配管を、単数または複数本、好ましくは2〜15本、パレット進行方向に対して平行に、あるいは垂直に配列し、そのそれぞれの配管には、気体燃料を大気中に高速で供給するためのスリットや噴出穴あるいはノズルを複数取り付けたものにて構成されることが好ましい。
前記気体燃料供給装置12iは、点火炉11の下流側でかつ燃焼・溶融帯が装入層内を進行中の過程(状態)にある、パレット進行方向のいずれかの位置に1以上配設され、その位置において、希釈気体燃料の装入層中への供給が行われるのが好ましい。即ち、この装置は、点火炉の下流側で、燃焼前線が表層下に進行した以降の任意の位置に一ないし複数配設されるものであり、目標とする成品焼結鉱の冷間強度を調整する観点から、大きさ、位置、数が決められる。
この気体燃料供給装置12から供給する気体燃料は、点火炉11とは別途に独立した配管系の下で供給してもよく、また、点火炉用燃料配管と同じ種類として、点火炉11へのガス供給管(図示せず)の延長上に接続するように構成してもよい。
次に、表8は、Cガス、LNG、Bガス中に燃焼成分として含まれる水素、CO、メタン、エタン、プロパンの含有量と発熱量を示したものである。
本発明では、装入層中に導入する前記気体燃料として、希釈された可燃性ガスを用いるが、以下に、その希釈の程度について説明する。表9は、高炉ガス、コークス炉ガスおよび両者の混合ガス(Mガス)、プロパン、メタン、天然ガスの燃焼下限濃度および燃焼上限濃度を示している。このような燃焼限界をもつガスが、例えば、装入層内で燃焼せずに排風機に向かうと、途中の電気集塵機などで爆発や燃焼を起こす危険が生じる。そこで、発明者らは、試行錯誤の結果、上記危険がない濃度、即ち、燃焼下限濃度以下に希釈した気体燃料を装入層中に導入することとし、さらに、安全性をより高めるべく、その燃焼下限濃度の75%以下の濃度の希釈気体燃料を用いた実験を数多く行った結果、何の問題も生じないことが確認できた。
例えば、表9に示すとおり、大気中かつ常温において、高炉ガスが燃焼する濃度範囲は、燃焼下限が40vol%で、燃焼上限は71vol%である。即ち、40vol%未満では燃焼せず、また、71vol%を超えると、高炉ガス濃度が濃くなりすぎて、この場合もまた燃焼しない状態となることを意味している。以下に、この数値の根拠について図面に基づき説明する。
図17は、高炉ガスの燃焼限界を求める方法の一例を説明するものである。
図中の高炉ガスに含まれる燃焼成分(可燃性ガス)とその他の成分(イナート:不活性ガス)の割合については、H2とCO2およびCOとN2との組み合わせで検討すると以下のとおりである。
(1)「H2とCO2」部分の組み合わせについての、(イナートガス)/(可燃性ガス)の比は、20.0/3.5=5.7である。
そこで、この燃焼限界図の(イナートガス)/(可燃性ガス)の比を示す横軸の、5.7の軸と交差するH2+CO2曲線の交わる部分(燃焼限界)を求めると、下限は32vol%、上限は64vol%となる。即ち、H2+CO2の燃焼限界の下限濃度は32vol%、上限濃度は64vol%となる。
(2)一方、残りの燃焼成分である「COとN2」の組み合わせの場合における、(イナートガス)/(可燃性ガス)の比は、53.5/23.0=2.3であるから、同様にして、同図から横軸2.3と、CO+N2の曲線と交わる点から下限:44vol%、上限:74vol%が求まる。従って、この場合の燃焼限界の下限濃度は44vol%、上限濃度は74vol%である。
(3)さらに、両燃焼成分を含む高炉ガスの燃焼下限濃度は、図17中左方最下段の式で求めることができる。また、同式で前記(1)、(2)の上限値をあてはめれば燃焼上限濃度が求まる。このようにして高炉ガスの燃焼下限濃度ならびに燃焼上限濃度を求めることができる。
また、本発明において、気体燃料の燃焼下限に着目したもう一つの理由は、燃焼限界には温度依存性がある点である。燃料便覧(社団法人燃料協会編)では、温度の影響として、温度が高いときには、熱の逸散速度が遅くなるので、熱の発生、逸散両速度曲線の交わりは深くなって、爆発範囲(燃焼範囲)は左右に広がってくる、と説明している。すなわち、燃焼限界は、上述のようにして求められるものの、該燃焼限界には温度依存性があって、メタンガスの燃焼範囲の温度による影響として、燃料便覧(社団法人燃料協会編)では、表10に記載の例が示されている。これを燃焼下限濃度の温度依存性として作図すると、おおよそ図18に示すようになる。図中●印は、表5に記載されたメタンガスの例である。
また、図19は、大気中常温下における気体燃料の燃焼成分(燃焼ガス)濃度と温度との関係を示すものである。燃焼限界は、上述のようにして求められるものの、該燃焼限界には温度依存性があって、その温度依存傾向を例示すると、常温での燃焼下限値(図中では燃焼ガス濃度に相当)がおおよそ40vol%であっても、200℃領域では26〜27vol%と変化し、1000℃領域では数%、1200℃領域では1vol%未満でも燃焼する。
これから、装入層に供給する気体燃料の濃度(燃焼成分の含有量)は、常温の燃焼下限よりもさらに低い濃度とするのがより安全であり、また、その希釈ガスの濃度を適正範囲に調整してやることにより、気体燃料の装入層内の厚み方向における燃焼位置を自由に制御することができることがわかった。
そして、気体燃料の燃焼範囲には、このように温度依存性があり、例えば、燃焼範囲は雰囲気温度が高くなればなるほど広がり、焼結機の燃焼・溶融帯近傍の温度場ではよく燃焼するものの、焼結機の下流側にある電気集塵機内の200℃程度の温度場では、本発明の好適実施例で示すような気体燃料の濃度では燃焼しないこともわかった。
ところで、焼結鉱を製造するに当たって、焼結原料の装入層9中に供給された希釈気体燃料は、焼結機パレット8下のウインドボックス16によって吸引されて、該装入層9中の固体燃料(粉コークス)の燃焼により形成された燃焼・溶融帯の高温域で燃焼する。従って希釈気体燃料の供給は、装入層への投入熱量を一定にするという条件下において、前記希釈気体燃料の濃度や供給量などを制御すれば、焼結原料中の粉コークス量を調整(減少)することができる。また、希釈気体燃料の濃度調整は、この気体燃料の燃焼を装入層中の予定した位置(濃度領域)で起こるように制御することを意味している。
この意味において、従来技術における装入層中の燃焼・溶融帯は、固体燃料(粉コークス)のみが燃焼する帯域であるが、本発明における燃焼・溶融帯は、その粉コークスの燃焼に加えてさらに気体燃料も並行して燃焼する帯域であるということができる。従って、本発明において、その希釈気体燃料の濃度や供給量、その他の供給条件は、燃料の一部として粉コークスがあることを前提として、これとの関係において好適に変化させると、最高到達温度および/または高温域保持時間の望ましい制御が可能となり、焼結ケーキの強度向上をもたらすことになる。
さらに本発明の焼結機において、希釈された気体燃料を用いるもう一つの理由は、上述した焼結・溶融帯の形態制御を通じて焼結ケーキの強度、歩留りを制御するためである。それは、この焼結ケーキを高温帯域(燃焼・溶融帯域)にどれくらいの時間保持するか、また、どれくらいの温度にまで到達させるかという制御を行う上で、この希釈気体燃料の役割が有効に機能するからである。言い換えると、前記希釈気体燃料の使用は、焼結原料の高温域保持時間が長くかつ最高到達温度が適度に高くなるように制御することを意味している。そして、このような制御は、焼結原料中の固体燃料量(粉コークス量)に対して、燃焼雰囲気中で支燃性ガス(空気または酸素)が過不足を起さないように希釈調整された気体燃料を用いることを意味している。この点、従来技術では、焼結原料中の固体燃料の量と無関係に、しかも可燃性ガスを濃度調整することなしに吹き込むため、固体燃料や可燃性ガスの量に見合う量の支燃性ガス(酸素)が供給されずに燃焼不良を起こしたり、逆に部分的に過燃焼を起こしたりして、強度のバラツキを招いていたのである。これに対して、本発明では、気体燃料を希釈しかつ濃度調整をすることで、このような問題点を回避しているのである。
また、焼結反応は、「鉱物工学」(今井秀喜、武内寿久禰,藤木良規編、1976、175、朝倉書店)によると、図20の模式図のようにまとめられる。また、表11に、焼結過程で生成する各種鉱物の引張強度(冷間強度)と被還元性の値を示す。
図20から明らかなように、焼結過程では、1400℃以下の低温焼成領域では、昇温過程で、まず、鉄鉱石に含まれる一次ヘマタイト(元鉱)が生成され、次いで一次ヘマタイトからマグネタイトが生成される。そして、1200℃で融液が生成し始め、鉄鉱石と石灰石とが反応して、焼結鉱の構成鉱物の中で最も高強度であり、被還元性も比較的高いカルシウムフェライトが生成する。さらに昇温が進んで約1380℃を超える高温焼成領域となると、カルシウムフェライトが冷間強度と被還元性とが最も低い非晶質珪酸塩(カルシウムシリケート)と、還元粉化しやすい二次ヘマタイトとに分解する。なお、カルシウムフェライトは、図21に示すように、1200℃で、鉄鉱石及び石灰石が反応して針状カルシウムフェライトが生成し、この針状カルシウムフェライトが1350℃まで維持され、1350℃を超えると柱状カルシウムフェライトに変化し、この状態が1380℃まで維持されるが、1380℃を超えると非晶質珪酸塩(カルシウムシリケート)と二次ヘマタイトに分解する。
したがって、焼結鉱の冷間強度の向上と還元粉化指数(RDI)の改善を図るには、カルシウムフェライトを分解させずに、これを安定的に生成させ続けられるかどうかが重要な課題となる。
そして、高炉64から要求される焼結鉱品質は、図22に示すように、焼結鉱の高炉64への装入時に粉化しないシャッター強度(冷間強度)と、シャフト上部(約550℃)で還元粉化しない還元粉化指数(RDI)と、熱保存帯(約900℃)でガス還元しやすい被還元性(RI)との3つの指標で管理している。
高炉64での低還元材比操業に向けて、図23に示すように、焼結鉱品質への要求が高くなり、炉内通気性改善のために高強度焼結鉱を必要とし、熱流比上昇(コークス比下降)による低温還元粉化領域を拡大するために低還元粉化性(RDI)の焼結鉱を必要とし、さらに、鉄鉱石/コークスの比を上昇させて未還元層の増加を図るために高被還元性焼結鉱を必要とし、さらにまた良好な溶け落ち特性が得られることが要求されている。
高炉64から要求される焼結鉱品質の測定としては、図24に示すように、品質保証として焼結鉱強度を表すシャッター強度(SI)又はタンブラー強度(TI)、低温還元粉化性(RDI)及び被還元性(RI)のそれぞれについて粒度(mm)及び重量(kg)及び測定方法が設定されている。ここで、シャッター強度(SI)は、粒度10〜50mmで重量20kgの成品焼結鉱を、2mの高さから4下位落下後の10mmの篩上に残る重量割合を測定する。また、タンブラー強度(TI)は、粒度10〜40mmで重量15kgの成品焼結鉱を、1mφドラム(25rpm)で200回転後の6.3mmの篩上に残る重量割合を測定する。さらに、低温還元粉化性(RDI)は、粒度16〜20mmで重量0.5kgの成品焼結鉱を、550℃でCO/N2=30/70vol.%の還元ガスで30分還元後、130mmφドラム(30rpm)で900回転後の2.8mm以下の重量割合を測定する。さらにまた、被還元性(RI)は、粒度19〜21mmで重量0.5kgの成品焼結鉱を、900℃でCO/N2=30/70vol.%の還元ガスで180分還元後の重量減少率を測定する。
還元性粉化指数(RDI)および被還元性(RI)については一次ヘマタイトと針状カルシウムフェライトの組織が好ましい。
また、上記刊行物「鉱物工学」によると、焼結鉱の還元粉化の起点となる二次ヘマタイトの析出挙動について、図25に示すCaO−Fe2O3二元系状態図により説明している。その説明によれば、鉱物合成試験の結果では、還元粉化の起点となる骸晶状二次ヘマタイトは、Mag.+Liq.域まで昇温し、冷却したのちに析出するため、状態図上では、1400℃を超える(1)の経路でなく、1380℃未満の(2)のマグネタイトが生成する経路または1358℃未満の(3)のマグネタイトが未生成の経路を介して焼結鉱を製造することで、還元粉化性を抑制できるとしている。
そして、電気炉実験により、前述した図20の焼結過程における鉱物組織の変化を調査したところ、図26に示す結果が得られた。この図26では、各温度における焼結後の鉱物組成割合を粉末X線回折法で定量した結果を示し、焼結温度を1200℃で250秒保持した場合には、ヘマタイトが50%、カルシウムフェライトが45%で残りがマグネタイトとカルシウムシリケートである。焼結温度を1250℃で250秒保持した場合には、重量割合は1200℃で250秒保持した場合とさほど変化がないが、焼結温度を1300℃で250秒保持した場合には、マグネタイト及びカルシウムシリケートが増加し、これに応じてカルシウムフェライトが減少する。さらに、焼結温度を1350℃で250秒保持した場合には、カルシウムシリケートが10%、マグネタイトも5%となり、この分カルシウムフェライトがさらに減少する。さらに、焼結温度を1400℃で250秒保持した場合には、カルシウムシリケートが30%を超え、マグネタイトも10%を超え、カルシウムフェライトが10%未満に低下している。
この結果、カルシウムフェライトは、1200℃から生成し、1400℃以上ではカルシウムシリケート+ヘマタイトに分解融解されていることが実証された。
したがって、低RDIと高強度とを兼備する焼結鉱を製造するには、1200℃(カルシウムフェライトの固相線温度)と約1380℃(転移温度)の範囲内に、如何にして長時間保持したヒートパターンを装入層内において実現するかが重要となる。
ところで、本発明の焼結機のように気体燃料供給装置12a〜12dを使用しない従来の焼結機では、図27(b)に示すように、点火炉11で炭材に点火し、点火炉11の下流側に隣接する保温炉13で250℃程度の熱風を吹き込んで、燃焼溶融帯をパレット8の移動に伴って順次下層に移動させて焼結ケーキを形成するようにしている。
この場合、粉コークス量を5%に設定すると、図27(c)で破線図示のように、点火炉11で点火して約7分経過後に、層内温度が急激に上昇して1200℃を超えてから、その後約2分経過した時点で1200℃未満に低下し、最高到達温度が約1300℃となる。したがって、1200℃以上の状態を保持する高温保持時間は2分程度と短い。
この高温保持時間を長くするために、粉コークス量を6%に増加させると、図27(c)で実線図示のように、保持時間を4分程度に増加させることができるが、最高到達温度が1400℃を超えてしまい、カルシウムフェライトが冷間強度と被還元性とが最も低い非晶質珪酸塩(カルシウムシリケート)と、還元粉化しやすい二次ヘマタイトとに分解してしまう。
粉コークス量(%)と焼結鉱強度(%)及び被還元性(%)との関係は、図27(d)に示すようになる。
ここで、焼結鉱強度は粉コークス量が5.0%〜5.5%の間で70%程度保持するが、5.0%未満では、高温保持時間が短縮されることにより、粉コークス量の減少に伴って焼結鉱強度が低下し、5.5%を超えると最高到達温度が1400℃を超えることによる非晶質珪酸塩(カルシウムシリケート)が生成されることにより粉コークス量の増加に伴って焼結鉱強度が低下する。
一方、被還元性は、粉コークス量が4.0%であるときに70%を超えているが、粉コークス量を増加させると、これに応じて被還元性か徐々に低下し、粉コークス量が5.0%で65%となり、5.5%で62%まで低下し、その後さらに粉コークス量の増加に応じて被還元性が低下する。
ところで、焼結・高炉プロセスにおけるCO2削減には、焼結鉱の強度と被還元性の向上が有効である。しかしなから、上述したように粉コークスのみを使用して焼結を行う場合には、図27(a)に示すように、焼結鉱の冷間強度を向上させるために、焼結用粉コークス比の増加が効果的である。しかし、焼結用粉コークス比を増加させて焼結鉱の強度を向上させると、最高到達温度が1400℃を超えることによる非晶質珪酸塩(カルシウムシリケート)が生成されることにより、被還元性が低下してしまう。
一方、焼結鉱の被還元性を向上させるために、多孔質鉱石を使用すると、冷間強度が低下してしまい。粉コークス量だけで、冷間強度と被還元性との双方を向上させることは困難であり、焼結・高炉プロセスにおけるCO2削減効果を向上させることができない。
そして、従来の焼結機では、シャッター強度、被還元性(RI)及び還元粉化指数(RDI)を管理するには、図28に示すように、シャッター強度、被還元性(RI)及び還元粉化指数(RDI)と成品焼結鉱中のFeO割合との間に相関関係があるので、成品焼結鉱中のFeO割合を例えば2時間に1回測定し、管理指標としている。
一般的に、成品焼結鉱中のFeO割合は、焼結層内の熱レベルを表し、所定の冷間強度(シャッター強度)を達成する管理指標の一つとして、測定が、例えばFeO測定用磁気天秤(エバンス法)を適用することにより、強度や被還元性、還元粉化指数(RDI)よりも迅速・簡易であることから、実機操業で採用されている。
このため、従来の焼結機では、図28に示すように、シャッター強度を高目の例えば89%に設定する場合には、成品焼結鉱中のFeO(%)の目標値を6.4%程度に設定し、この目標値を維持するように粉コークス量を調整するようにしている。
しかしながら、従来の焼結機では、前述したように、最高到達温度を1200℃以上で例えば1400℃未満に制御する場合には、図29(a)に示すように、例えば粉コークス量を5.0%に設定したときに、燃焼・溶融帯が装入層9の中間部に存在する状態で、層内温度に対する時間を表すグラフで破線図示のように1200℃以上を継続する高温保持時間が短くなる。この高温保持時間を長くするために、粉コークス量を6.0%に増加させると、層内温度に対する時間を表すグラフで実線図示のように1200℃以上の高温保持時間は長くなるが、最高到達温度が1400℃を超えてしまう。このため、カルシウムフェライトがカルシウムシリケート及びヘマタイトに分解融解されて、焼結鉱強度及び被還元粉化指数RDIが低下してしまい。良好な焼結鉱を得ることができない。
これに対して、本発明の焼結機では、図29(b)に示すように、粉コークス量を5%から4.6%に減少させ、これに代えて希釈された液化天然ガス(LNG)を0.4%分装入層9の上方から吹き込み、ウインドボックス16で装入層9内に吸引すると、吸引された希釈された液化天然ガス(LNG)が燃焼・溶融帯の上側で燃焼する。このため、図29(b)における層内温度に対する時間を表すグラフで実線図示のように、破線図示の粉コークス量5%のみで温度制御する場合に比較して最高到達温度を1200℃以上で1380℃未満の範囲に収めながら高温保持時間を2倍以上に長くすることができる。この結果、カルシウムフェライトがカルシウムシリケート及び二次ヘマタイトに分解融解することを確実に防止することができ、焼結鉱強度を向上させることができる。
このように、本発明では、添加する炭材量を少なくし、不足分を気体燃料の供給により調整し、装入層内の最高到達温度を、1200℃を以上で1380℃未満の範囲に制御することが重要であり、好ましくは還元粉化性(RDI)を低下させて被還元性(RI)を向上させるためには針状カルシウムフェライトが得られる1200〜1350℃の範囲とするのが好ましい。
図30は、気体燃料としてLNGを気化させた都市ガスを燃焼下限濃度以下に希釈した希釈気体燃料を使用した本発明焼結法と、気体燃料の吹き込みを行わない従来焼結法とを比較した実験結果を示すものである。この実験は、図30に示す実験装置、即ち、透明石英製窓付き竪型管状の試験鍋(150mmφ×400mmH)を用い、使用する気体燃料として、都市ガスを用い、出願人会社の焼結工場で使用しているのと同じ焼結原料を使って、下方吸引圧力11.8kPa一定の条件で焼結鍋試験を行った例である。なお、希釈気体燃料の吹き込みを行わない従来焼結例では、粉コークスの添加量を5mass%とし、一方、粉コークス0.4mass%相当の希釈気体燃料を吹き込む本発明例では、総熱量を一定とするため、粉コークスの添加量を4.6mass%とした。
この図30からわかるように、希釈気体燃料を使用した場合は、燃焼・溶融帯幅が150mmと従来例の2.5倍程度延びており、冷間強度(シャッター強度)、成品歩留、生産性の向上が認められた。このように、希釈気体燃料の使用例において、シャッター強度、成品歩留等が向上した理由は、燃焼・溶融帯の拡大と、それによる高温域保持時間の延長によるものと考えられる。
次に、気体燃料の種類による影響について示す。
図31は、プロパンガス、コークス炉ガス(Cガス)及びLNGを気化させた都市ガスの3種類の気体燃料を燃焼下限濃度以下に希釈した希釈気体燃料を使用した本発明焼結法と、気体燃料の吹き込みを行わない従来焼結法とを比較した実験結果を示すものである。なお、希釈気体燃料の吹き込みを行わない従来焼結例では、粉コークスの添加量を5mass%とし、一方、粉コークス0.8mass%相当の希釈気体燃料を吹き込む本発明例では、総熱量を一定とするため、粉コークスの添加量を4.2mass%とした。図31からわかるように、希釈気体燃料を使用した場合は、いずれの例においても、シャッター強度、成品歩留、生産性の向上が認められた。このように、希釈気体燃料の使用例において、シャッター強度、成品歩留等が向上した理由は、燃焼・溶融帯の拡大と、それによる高温域保持時間の延長によるものと考えられる。
この図31の結果から気体燃料の種類による有意差は認められないが、火災発生防火のためには、燃焼下限濃度が低く、高熱量である都市ガスが有利である。また、逆火災防止のためには、火炎伝播速度がCガス(H2主成分)より遅い都市ガス(CH4主成分)が優位である。さらに、都市ガスにはCOが含有されておらず、ガス中毒の観点から都市ガスが優位である。さらにまた、都市ガスは、高圧で供給可能であるため、建設コスト上優位である。
このため、安全防災上および建設コストから気体燃料として都市ガスを採用することが好ましい。
以上のように、点火炉11で装入層9の炭材に点火したした後に、気体燃料供給装置12a〜12dで、装入層9の上面側から気体燃料を噴射して、空気と混合した希釈気体燃料38をウインドボックス16によって吸引して装入層9内に導入することにより、燃焼・溶融帯の最高到達温度を1380℃未満に制御しながら、燃焼・溶融帯を拡大して、高温保持時間を長くすることができ、シャッター強度、および被還元性(RI)を向上させながら、還元粉化性(RDI)を抑制することができる。
このように、本発明では、粉コークスと気体燃料とを併用することにより、焼結層内の熱レベルを表し、所定の冷間強度を達成するための管理指標の一つとなる成品焼結鉱中のFeO割合(%)とシャッター強度(%)、被還元性(RI)および還元粉化性(RDI)との関係は、図32に示すように、前述した図28について説明した気体燃料を含まない従来例の粉コークスのみを使用する焼結法に比較して、同等のシャッター強度89%を得るためには、成品焼結鉱中のFeO割合を約6.4%から約5.4%に約1%低下させることができる。このため、低FeO割合の目標値を設定して冷間強度(シャッター強度)を制御することができる。ここで、FeO割合を約1%低下させることは、焼結機3での粉コークス比を約5kg/t低下させることが可能となり、焼結工程で発生するCO2量を減少させることができる。
さらに、本発明では、気体燃料供給装置12a〜12dの幅方向の気体燃料濃度を均一濃度パターン、中央部高濃度パターン及び端部高濃度パターンの3つの濃度パターンを選択的に形成するようにしている。
このため、気体燃料供給部32は、図33に示すように、都市ガス供給本管41から供給される気体燃料としての都市ガスが各気体燃料供給装置12a〜12dへの都市ガス供給枝管42a〜42dに分岐されて、個別気体燃料制御部43a〜43dに供給される。これら個別気体燃料制御部43aは、都市ガス供給枝管42aに遮断弁44が介挿され、この遮断弁44の下流側に分岐部45が配設されている。この分岐部45では、遮断弁44を介して供給される都市ガスを気体燃料噴射ノズル31a〜31gに供給するために7系統の分岐管46a〜46gに分岐し、各分岐管46a〜46gには、それぞれ流量計47及び流量調節弁48がその順に介挿され、流量調節弁48の下流側に気体燃料噴射ノズル31a〜31gが接続されている。他の個別気体燃料制御部43b〜43dも、詳細説明はこれを省略するが上記個別気体燃料制御部43aと同様の構成を有する。
そして、各個別気体燃料制御部43a〜43dの遮断弁44及び流量調節弁48が制御装置50によって制御される。
この制御装置50には、図33に示すように、各気体燃料供給装置12a〜12dの個別気体燃料制御部43a〜43dの流量計47の流量検出データが入力されるとともに、内側フード26の内側で焼結機パレット8の装入層9の上面と気体燃料噴射ノズル31a〜31gとの間に配設された着火検知器51の着火検知信号及びフード21の上端部に配設された漏洩検知機52の漏洩検知信号が入力され、さらに、内側フード26内に配設されたメタン(CH4)濃度を検出するメタン(CH4)分析計53で検出されたメタン(CH4)濃度検出信号が入力されている。
ここで、メタン(CH4)濃度分析計53は、図34(a)に示すように、各気体燃料噴射ノズル31a〜31gの近傍位置に、一方の側縁から例えば0.5m、1.25m、2.5m、3.75m、4.5mの位置で且つ各機長方向に前後端部位置及び中央寄りの2個所の計20個所に配設されている。
また、制御装置50は、その出力側に各個別気体燃料供給部42a〜42dの気体燃料供給枝配管44a〜44dに介挿された遮断弁44を駆動制御する遮断弁駆動回路54が接続され、これら遮断弁駆動回路54を制御する遮断弁制御信号を出力するとともに、各個別気体燃料供給部42a〜42dの気体燃料噴射ノズル31a〜31gへの流量を制御する流量調節弁48を駆動制御する調節弁駆動回路55が接続され、これら流量調節弁駆動回路55を制御する流量制御指令値を出力する。
そして、制御装置50では、図35に示すように、気体燃料供給制御処理を実行する。この気体燃料供給制御処理は、所定時間毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS1で、着火検知器51及び漏洩検知機52で検出した検出信号を読込み、次いで、ステップS2に移行して、着火検知器51の検出信号が着火状態を検出しているか否かを判定し、着火状態を検知しているときには、ステップS3に移行して、着火状態を検知した気体燃料供給装置12i(i=a,b,c,d)に配設された遮断弁44を閉状態に制御するオン状態の制御信号SCを出力してから気体燃料制御処理を終了する。
一方、ステップS2の判定結果が、着火検知器51で着火状態を検知していないときにはステップS4に移行して、漏洩検知機52のいずれかで漏洩状態を検知しているか否かを判定し、何れかの漏洩検知機52で漏洩状態を検知したときには、ステップS5に移行して、漏洩状態を検知した漏洩検知機52が配置されている気体燃料供給装置12iに配設された遮断弁44を閉状態に制御するオフ状態の制御信号SCを出力してから気体燃料制御処理を終了する。
また、ステップS4の判定結果が全ての漏洩検知機52で漏洩状態を検知していないときには、ステップS6に移行して、各メタン(CH4)分析計53で検出したメタン濃度検出値のうち同一機長方向のメタン(CH4)分析計53で検出したメタン(CH4)濃度を平均化してメタン濃度平均値Mma〜Mmeを算出してからステップS7に移行する。
このステップS7では、設定された濃度パターンが均一濃度パターンであるか否かを判定し、均一濃度パターンであるときには、ステップS8に移行して、均一濃度パターンに応じてメタン濃度平均値Mma〜Mmeが平均化されるように各流量調節弁48を制御する制御信号SFを調節弁駆動回路55に出力してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
また、前記ステップS7の判定結果が、設定された濃度パターンが均一濃度パターンではないときには、ステップS9に移行して、設定された濃度パターンが中央部高濃度パターンであるか否かを判定し、中央部高濃度パターンであるときには、ステップS10に移行する。
このステップS10では、中央部高濃度パターンに応じて中央のメタン濃度平均値Mmcが他のメタン濃度平均値Nma,Mmb,Mmd,Mmeより所定値だけ高くなるように各流量調節弁48を制御する制御信号SFを調節弁駆動回路55に出力してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
また、ステップS9の判定結果が、濃度パターンが中央部高濃度パターンではないときには、濃度パターンが端部高濃度パターンであるものと判断してステップS11に移行し、端部気体燃料噴射ノズル31a及び31gを回動する回動駆動信号をノズル回動機構56に出力してからステップS12に移行する。
このステップS12では、端部高濃度パターンに応じて端部側のメタン濃度平均値Mma及びMmeが残りのメタン濃度平均値Mmb〜Mmdより所定値だけ高くなるように各流量調節弁48を制御する制御信号SFを調節弁駆動回路55地出力してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
したがって、制御装置50では、図35に示す気体燃料供給処理によって、気体燃料供給装置12a〜12dの着火検知器51で着火を検知した場合には該当する気体燃料供給装置12iの遮断弁44を閉状態として、気体燃料の供給を即座に停止させる。同様に、漏洩検知機52で気体燃料の漏洩を検知した場合も、該当する気体燃料供給装置12iの遮断弁44を閉状態として、気体燃料の供給を即座に停止させる。
一方、気体燃料供給装置12a〜12dの着火検知器51で着火を検知しておらず、漏洩検知機52でも気体燃料の漏洩を検知していない正常状態では、ステップS1、ステップS2及びステップS4を経てステップS6に移行する。このステップS6では、各メタン(CH4)分析計53で検出したメタン(CH4)濃度の内同一機長方向にあるメタン(CH4)分析計53で検出したメタン(CH4)濃度の平均値Mma〜Mmeを算出してからステップS7に移行する。このとき、均一濃度パターンが設定されているときには、ステップS8に移行して、各メタン濃度平均地Mma〜Mmeが平均化されるように各流量調節弁48の流量を制御する制御信号SFを調節弁駆動回路55に出力する。
すなわち、装入層9の表面から450mm上方に離間した位置に各メタン(CH4)分析計53を配置したときに、前述した図34(b)に示すように、均一濃度バターン制御を開始する前の各流量調節弁48を全開状態(100%)とした場合には、各メタン(CH4)分析計53で検出したメタン(CH4)濃度にバラツキがあり、端部気体燃料噴射ノズル46g近傍のメタン(CH4)濃度が最大値0.90(vol.%)であり、端部気体噴射ノズル46a近傍のメタン(CH4)濃度が最小値0.03(vol.%)であった。
この状態で、メタン濃度平均値Mma〜Mmeに基づいて各流量調節弁48の流量を制御し、結果として図34(c)に示すように、分岐管46a〜46cの流量調節弁48の弁開度を100%に維持し、中央の分岐管46dの流量調節弁48の弁開度を0%すなわち全閉とし、その隣の分岐管46eの流量調整弁48の弁開度を100%に維持し、さらに端部側の分岐管46f及び46gの流量調節弁48の弁開度を50%に低下させることにより、メタン(CH4)濃度の最大値が0.68(vol.%)に低下し、メタン(CH4)濃度の最小値が0.18(vol.%)に増加し、各メタン(CH4)分析計で検出されたメタン(CH4)濃度が略平均化された。
この均一濃度パターンから全体の平均濃度を一定とした状態で端部高濃度パターンが選択された場合には、図36に示すように、均一濃度パターン時の各分岐管46a〜46cの気体燃料の流量が28Nm3/hであり、中央部の分岐管46dの気体燃料流量が0Nm3/hであり、分岐管46eの気体燃料流量が28Nm3/hであり、分岐管46f及び46gの気体燃料流量が14Nm3/hであるものとする。
この状態から端部分岐管46a及び46gをノズル回動機構56によって回動させるとともに、端部分岐管46a及び46gの気体燃料流量を20Nm3/hとし、これらの内側の分岐管46b及び46fの気体燃料流量を36Nm3/hとし、中央部の3本の分岐管46c〜46eの気体燃料流量を10Nm3/hに制御することにより、図36(c)に示すように、端部側で0.90(vol.%)と1.12(vol.%)となり、中央部側が0.33程度となる端部高濃度パターンを形成することができる。
同様に、図示しないが、図36(c)の流量制御状態から中央部の分岐管46c〜46eの流量調節弁48の流量を多くし、端部側の分岐管46a,46b及び46f,46gの流量調節弁48の流量を少なくすることにより、中央部高濃度パターンを形成することができる。
ここで、均一濃度パターン及び中央部高濃度パターンの各パターンは端部気体燃料噴射ノズル31a及び31g、中央部気体燃料噴射ノズル31b〜31fに対する気体燃料の供給量を制御することにより制御可能である。ところが、端部高濃度パターンについては装入層9の幅方向端部が傾斜していること及びフード21の左右ウォール21bと焼結機パレット8の上端との間に隙間が生じていることなどの理由により、端部気体燃料噴射ノズル31a及び31gの気体燃料供給量を制御するだけでは、正確なパターン制御を行うことができない。
このため、本発明では、端部高濃度パターンを設定する場合には、端部気体燃料噴射ノズル31a及び31gをノズル回動機構56によって噴出口31hが水平方向内側に向く位置から下側に例えば60度回動した噴出口31hが斜め下向きに向く位置までの間で回動させる。これによって、端部気体燃料噴射ノズル31a及び31gで気体燃料を装入層9に向けて気体燃料を噴射することが可能となり、内側フードの幅方向両端部のメタン(CH4)濃度を高濃度に制御することができる。
なお、端部気体燃料噴射ノズル31a及び31bの回動角は60度の範囲に限定されるものではなく、任意に設定することができ、噴出口31hが下向きとなる90度の範囲としてフード21の左右ウォール21bに沿って気体燃料を噴射するようにしてもよい。この場合、フード21の下端と焼結機パレット8の両サイドウォール8aとの間にはワイプレシール71及びカバー72を設けることにより、外部からの空気の侵入を抑制しているが、ウインドボックス16で吸引している関係で、外部からの空気の侵入を確実に阻止することはできないので、この空気流によって端部気体燃料噴射ノズル31a及び31bから噴射された気体燃料が外部に漏洩することを阻止することができる。
そして、吹込み機長を15mとし、気体燃料噴射装置12iから気体燃料として都市ガスを250Nm3/hr吹込んで均一濃度パターンと端部高濃度パターンとで操業を行ったときの操業結果を図37に示す。この図37では、生産量(t/hr)、凝結材比(kg/t)、タンブラー強度(%)、FeO割合(%)、返鉱発生量(t/hr)、粒径5mm以下の割合(%)、返鉱量と粒径5mm以下の焼結鉱との加算量(t/hr)、歩留り(%)、粉率(%)、メリット(円/t−s)、平均粒径(mm)、被還元性(RI)、低温還元粉化性(RDI)、EP前温度(℃)、ボイラー入側温度(℃)、BTP及び煙突風量(千Nm3/hr)の各項目について均一濃度パターンと端部高濃度パターンとを比較している。
この結果、全体的なメリットとしては均一濃度パターンの方が端部高濃度パターンより僅かに有利であるが、タンブラー強度、FeO割合、被還元性(RI)及び低温還元粉化性(RDI)等の品質指標の向上については端部高濃度パターンが優位であることが確認された。
同様に、吹込み機長を15mとし、気体燃料噴射装置12iから気体燃料として都市ガスを250Nm3/hr吹込んで均一濃度パターンと中央部高濃度パターンとで操業を行ったときの操業結果を図38に示す。この図38での比較項目は低温還元粉化性(RDI)を除いて前述した図37と同様である。この図38から明らかなように、メリットとしては均一濃度パターンの方が中央高濃度パターンに比較して僅かに有利であり、中央部高濃度パターンではタンブラー強度がやや低下するが、平均粒径や被還元性(RI)は大幅に向上し、総返鉱量も少なく、総返鉱量や被還元性に着目した操業を行うには中央部高濃度パターンが優位であることが確認された。
したがって、高炉側から高い品質指標を要求された場合には、端部高濃度パターンを採用し、高い被還元性を要求された場合には中央部高濃度パターンを採用し、高炉側からの品質指標の要求がさほど高くない場合には、生産量等のメリットを考慮して均一濃度パターンを採用することができ、要求される品質指標に応じて最適な濃度パターンを選択することが可能となる。
しかも、端部気体燃料噴射ノズル31a及び31gがノズル回動機構56によって回動可能に構成されているので、端部気体燃料噴射ノズル31a及び31gに供給する気体燃料流量の調整のみでは調節しきれない端部高濃度パターンを確実に形成することができ、高品質の焼結鉱を製造することができる。
なお、上記実施形態においては、気体燃料供給装置12a〜12dで気体燃料としてLNGを吹き込むようにしたので、気体燃料濃度を検出する濃度測定装置として、メタン(CH4)分析計53を適用した場合について説明したが、気体燃料として他のプロパンガス、水素ガス、メタンガス、一酸化炭酸ガス(CO)、コークス炉ガス(Cガス)、高炉ガス(Bガス)、高炉・コークス炉混合ガス(Mガス)、LNGまたはこれらの混合ガスの何れかを適用することができ、これらの場合、適用する気体燃料に応じた濃度計を適用すればよく、炭酸ガス、コークス炉ガス、高炉ガスを適用する場合には、一酸化炭素を含むので、漏洩検知機52としてCO検知機を適用することが好ましい。
また、上記実施形態においては、4つの気体燃料供給装置12a〜12dを設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、任意数の気体燃料供給装置を適用することができ、長さが長い気体燃料噴射ノズル31a〜31gを保持可能であれば、1つの気体燃料供給装置を適用することができ、生産量に応じて気体燃料を吹込む気体燃料供給装置数を変更する場合には、複数の気体燃料供給装置を設置することが望ましい。