実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気調和装置の冷媒回路を示す冷媒回路図である。この図1に基づいて、空気調和装置500の回路構成について説明する。
空気調和装置500は、冷媒を循環させる冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)を利用して、冷房運転及び暖房運転を行うものである。ここで、図1に示す空気調和装置500は2つの熱源側ユニット(熱源側ユニット100及び熱源側ユニット200)を備えており、各熱源側ユニットには重複する機能部品が搭載されている。このため、以下の説明においては、両熱源側ユニットを区別して説明する必要がない場合、熱源側ユニット100の機能部品の符号についてはそのまま記載し、熱源側ユニット200の機能部品の符号については括弧内に記載することとする。なお、図1に示す空気調和装置500はあくまでも一例であり、熱源側ユニットを3つ以上備えてもよいし、複数の負荷側ユニットを備えていてもよい。
空気調和装置500は、2つの熱源側ユニット(熱源側ユニット100及び熱源側ユニット200)及び1つの負荷側ユニット(負荷側ユニット300)を備えている。そして、熱源側ユニット100及び熱源側ユニット200がガス配管401及び液配管402によって負荷側ユニット300に並列接続され、冷凍サイクル回路が構成されている。
熱源側ユニット100(200)は、圧縮機101(201)、気液分離器102(202)、逆止弁103(203)、四方切替え弁104(204)、熱源側熱交換器105(205)、第2絞り装置106(206)、第1絞り装置107(207)、逆止弁108(208)、冷媒−冷媒熱交換器109(209)、開閉弁110(210)、アキュムレーター111(211)、流路切り替え弁112(212)、異物回収器113(213)、逆止弁114(214)、毛細管115(215)、逆止弁116(216)、逆止弁117(217)、開閉弁118(218)、及び冷媒充てん用ポート119(219)を備えている。
圧縮機101(201)の吐出側には、気液分離器102(202)及び逆止弁103(203)を介して、四方切替え弁104(204)が接続されている。気液分離器102(202)は、圧縮機101(201)から吐出された冷媒中から冷凍機油を分離するものである。気液分離器102(202)の下部は毛細管115(215)を介して圧縮機101(201)の吸入側と接続されており、分離した冷凍機油を圧縮機101(201)へ戻すようになっている。逆止弁103(203)は、圧縮機101(201)から四方切替え弁104(204)への冷媒流れを許容するものである。
四方切替え弁104(204)は、圧縮機101(201)から吐出された冷媒の流路を熱源側熱交換器105(205)へ流れる流路又は負荷側ユニット300へ流れる流路へ切り替えるものである。この四方切替え弁104(204)は、熱源側熱交換器105(205)及び配管133(233)を介してガス配管401とも接続されている。また、四方切替え弁104(204)は、アキュムレーター111(211)とも接続されており、熱源側熱交換器105(205)又は負荷側ユニット300から流入した冷媒をアキュムレーター111(211)へ送るようになっている。ここで、四方切替え弁104(204)が本発明の流路切替装置に相当する。なお、流路切替装置は、四方切替え弁に限らず、例えば二方弁等を組み合わせて構成してもよい。
熱源側熱交換器105(205)の四方切替え弁104(204)と接続されていない側の端部は、配管130(230)を介して液配管402と接続されている。この配管130(230)には、逆止弁116(216)及び第2絞り装置106(206)が設けられている。逆止弁116(216)は液配管402から熱源側熱交換器105(205)への冷媒流れを許容するものであり、逆止弁116(216)をバイパスするように分岐配管132(232)が配管130(230)に接続されている。この分岐配管132(232)の途中は、配管133(233)に設けられた冷媒−冷媒熱交換器109(209)と接続されている。これにより、冷媒−冷媒熱交換器109(209)では、分岐配管132(232)を流れる冷媒と配管133(233)を流れる冷媒とが熱交換を行う。また、分岐配管132(232)には、冷媒−冷媒熱交換器109(209)から配管130(230)への冷媒流れを許容する逆止弁117(217)が設けられている。
また、配管130(230)には、配管130(230)と配管133(233)とを接続する(つまり、負荷側ユニット300をバイパスする)バイパス配管131(231)が接続されている。このバイパス配管131(231)には、第1絞り装置107(207)、及び配管130(230)から配管133(233)への冷媒流れを許容する逆止弁108(208)が設けられている。また、バイパス配管131(231)には、冷媒充てん用ポート119(219)が接続されている。バイパス配管131(231)と冷媒充てん用ポート119(219)との間には、バイパス配管131(231)と冷媒充てん用ポート119(219)との間の流路を開閉する開閉弁118(218)が設けられている。ここで、開閉弁118(218)が本発明における開閉装置に相当する。
上述のように、アキュムレーター111(211)は、四方切替え弁104(204)に接続されている。このアキュムレーター111(211)と四方切替え弁104(204)とを接続する配管は、配管134(234)を介して分岐配管132(232)と接続されている。この配管134(234)には、開閉弁110(210)が設けられている。また、アキュムレーター111(211)は、その上部が流出配管を介して圧縮機101(201)の吸入側と接続されている。アキュムレーター111(211)の下部は、三方弁である流路切り替え弁112(212)を介して、異物回収器113(213)と接続されている。この異物回収器113(213)は、逆止弁114(214)を介して、流路切り替え弁112(212)の残りの接続口に接続された配管と接続されている。これらは、アキュムレーター111(211)の上部に接続された配管と共に、圧縮機101(201)の吸入側に接続されている。なお、逆止弁114(214)は、異物回収器113(213)から圧縮機101(201)への冷媒流れを許容するものである。
また、熱源側ユニット100(200)には、吐出温度センサー121(212)、流入配管温度センサー122(222)、高圧センサー123(223)、及び低圧センサー124(224)が設けられている。吐出温度センサー121(212)は、圧縮機101(201)の吐出側配管に設けられており、圧縮機101(201)から吐出された冷媒の温度を検知するものである。流入配管温度センサー122(222)は、四方切替え弁104(204)とアキュムレーター111(211)との間の配管に設けられており、アキュムレーター111(211)に流入する冷媒の温度を検知するものである。高圧センサー123(223)は、圧縮機101(201)の吐出側配管に設けられており、圧縮機101(201)から吐出された冷媒の圧力を検知するものである。低圧センサー124(224)は、例えば配管134に設けられており、アキュムレーター111(211)に流入する冷媒の圧力を検知するものである。
また、熱源側ユニット100(200)には、制御装置1(2)が設けられている。制御装置1(2)は、吐出温度センサー121(212)、流入配管温度センサー122(222)、高圧センサー123(223)及び低圧センサー124(224)の検知値等に基づいて、圧縮機101(201)の回転数、第1絞り装置107(207)の開度及び第2絞り装置106(206)の開度等を制御する。また、制御装置1及び制御装置2は、相互に通信することが可能となっており、相手方の熱源側ユニットの運転状況(圧縮機101(201)の回転数、第1絞り装置107(207)の開度及び第2絞り装置106(206)の開度等)を認識可能となっている。なお、制御装置1及び制御装置2を1つの制御装置で構成しても勿論よい。
(負荷側ユニット)
負荷側ユニット300は、負荷側熱交換器301及び負荷側絞り装置302を備えている。負荷側熱交換器301の一方の端部は、ガス配管401及び配管133(233)を介して、四方切替え弁104(204)と接続されている。負荷側熱交換器301の他方の端部は、液配管402及び配管130(230)を介して、熱源側熱交換器105(205)に接続されている。負荷側絞り装置302は液配管402に設けられている。
<均液制御>
このように構成された空気調和装置500の均液制御について説明する。以下では、まず、通常の空調運転時(冷媒回路内に適正な量の冷媒が充てんされている状態で暖房運転や冷房運転を行っている状態)における均液制御について説明する。その後、冷媒充てん時における均液制御について説明する。また、冷媒充てん時における均液制御の説明では、一例として熱源側ユニット100(200)等を更新(リプレース)する際の制御について説明する。
[通常の空調運転時における均液制御]
(通常の暖房運転時における均液制御)
通常の暖房運転時、冷媒は、図1に示す破線矢印のように流れる。
圧縮機101(201)から吐出された高温高圧のガス冷媒は、気液分離器102(202)、四方切り替え弁104(204)、冷媒−冷媒熱交換器109(209)及びガス配管401を順次経由して、負荷側ユニット300に流入する。負荷側ユニット300に流入した高温高圧のガス冷媒は、負荷側熱交換器301において周囲空気(例えば室内空気)と熱交換し、低温高圧の液冷媒となる。この低温高圧の液冷媒は、絞り装置302によって減圧され、低温低圧の二相冷媒(液冷媒とガス冷媒とが混合した冷媒)となり、液配管402を通って熱源側ユニット100(200)へ流入する。
熱源側ユニット100(200)へ流入した低温低圧の二相冷媒は、絞り装置106(206)、逆止弁116(216)を経由して熱源側熱交換器105(205)へ流入する。熱源側熱交換器105(205)へ流入した低温低圧の二相冷媒は、周囲空気と熱交換することによってガス化し、四方切り替え弁104(204)及びアキュムレーター111(211)を経由して再び圧縮機101(201)へ吸入される。
図2は、本実施の形態1に係る圧縮機の運転状態を示すモリエル線図である。本実施の形態1に係る空気調和装置500のように複数の熱源側ユニットを備えた空気調和装置は、種々の要因によって各熱源側ユニット間に冷媒の偏りが生じる場合がある。そして、この冷媒の偏りと圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度との間には、図2に示すような相関関係がある。つまり、熱源側ユニット内の冷媒量が少なくなると、圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度が大きくなる。換言すると、熱源側ユニット内の冷媒量が多くなると、圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度が小さくなる。
そこで、本実施の形態1に係る空気調和装置500においては、制御装置1(2)は、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1及び圧縮機201の吐出過熱度TdSH2を求め、これら吐出過熱度に基づいて第2絞り装置106(206)の開度を制御することにより、熱源側ユニット100と熱源側ユニット200との均液を図っている。
具体的には、次式(1)に示すように、制御装置1は、高圧センサー123で検知された吐出圧力から飽和温度Tc1を計算し、吐出温度センサー121によって検知される吐出温度Td1からこの飽和温度Tc1を減算することにより、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1を求める。
TdSH1=Td1−Tc1…(1)
また、次式(2)に示すように、制御装置2は、高圧センサー223で検知された吐出圧力から飽和温度Tc2を計算し、吐出温度センサー221によって検知される吐出温度Td2からこの飽和温度Tc2を減算することにより、圧縮機201の吐出過熱度TdSH2を求める。
TdSH2=Td2−Tc2…(2)
熱源側ユニット100と熱源側ユニット200とに均等に冷媒が分配されている場合、理想的にはTdSH1=TdSH2の関係が成り立つ。一方、熱源側ユニット100内の冷媒保持量と熱源側ユニット200内の冷媒保持量との間に差が生じた場合、熱源側ユニット内の冷媒保持量に応じて、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1と圧縮機201の吐出過熱度TdSH2との間に差が生じる。例えば、熱源側ユニット100内の冷媒保持量よりも熱源側ユニット200内の冷媒保持量の方が少なくなった場合、TdSH1<TdSH2となる。
本実施の形態1に係る空気調和装置500においては、|TdSH1−TdSH2|が設定値αを超えた場合、吐出過熱度の小さい圧縮機が搭載されている熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を減少させ、吐出過熱度の大きい圧縮機が搭載されている熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を増加させる。第2絞り装置106(206)は、それぞれ液配管402の二相冷媒を熱源側ユニット100(200)へ供給する際の入り口となっている。このため、第2絞り装置106(206)の開度が大きいほど熱源側ユニット100(200)への冷媒供給量は増加し、第2絞り装置106(206)の開度が小さいほど熱源側ユニット100(200)への供給量は低下する。したがって、冷媒保持量が多い方の熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を減少させることによって、冷媒保持量が多い方の熱源側ユニット内に流入する冷媒量を抑制し、冷媒保持量が少ない方の熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を増加させることによって、冷媒保持量が少ない方の熱源側ユニット内に流入する冷媒量を増加させ、両熱源側ユニット間の均液を図っている。
図3は、本発明の実施の形態1に係る空気調和装置の通常の暖房運転時における均液制御を示すフロー図である。
暖房運転が開始されると(ステップS1)、制御装置1は圧縮機101の吐出過熱度TdSH1を算出し、制御装置2は圧縮機201の吐出過熱度TdSH2を算出する。そして、制御装置1(又は制御装置2)は、|TdSH1−TdSH2|が設定値αよりも大きいか否かを判定する(ステップS2)。|TdSH1−TdSH2|が設定値αよりも大きい場合はステップS3に進み、|TdSH1−TdSH2|が設定値α以下の場合はステップS2を繰り返す。
ステップS3では、制御装置1(又は制御装置2)は、TdSH1及びTdSH2のうちのどちらの値が大きいかを判定する。TdSH1よりもTdSH2の方が大きい場合、制御装置1は第2絞り装置106の開度を減少させ、制御装置2は第2絞り装置206の開度を増加させる(ステップS4)。一方、TdSH1よりもTdSH2の方が小さい場合、制御装置1は第2絞り装置106の開度を増加させ、制御装置2は第2絞り装置206の開度を減少させる(ステップS5)。
このように、冷媒保持量が過剰な熱源側ユニットは第2絞り装置の開度を減少させ、冷媒保持量が不足している熱源側ユニットは第2絞り装置の開度を増加させることにより、通常の暖房運転時において、各熱源側ユニット間の冷媒の偏りを精度良く是正することができる(均液制御することができる)。
なお、本実施の形態1では、第2絞り装置106(206)の開度の調整量について特に言及しなかったが、例えば第2絞り装置106(206)の開度を一定量ずつ変更してもよいし、第2絞り装置106(206)の開度の調整量を|TdSH1−TdSH2|の関数としてもよい。第2絞り装置106(206)の開度の調整量を|TdSH1−TdSH2|の関数とすることにより、冷媒量の偏りに応じた均液制御を行うことができる。
また、本実施の形態1では、|TdSH1−TdSH2|に基づいて第2絞り装置106(206)の開度を制御したが、TdSH1及びTdSH2の各値に基づいて第2絞り装置106及び第2絞り装置206の開度を制御してもよい。つまり、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1が一定の範囲となるように制御装置1は第2絞り装置106の開度を制御し、圧縮機201の吐出過熱度TdSH2が一定の範囲となるように制御装置2は第2絞り装置206の開度を制御してもよい。このように第2絞り装置106(206)の開度を制御しても、各熱源側ユニット間の冷媒の偏りを精度良く是正することができる(均液制御することができる)。
また、本実施の形態1では圧縮機101(201)の吐出過熱度に基づいて第2絞り装置106(206)の開度を制御したが、圧縮機101(201)の吸入過熱度に基づいて第2絞り装置106(206)の開度を制御してもよい。図2に示すように、圧縮機101(201)の吐出過熱度及び吸入過熱度は、相関関係が成立するからである。
また、本実施の形態1では、|TdSH1−TdSH2|に基づいて第2絞り装置106(206)の開度を制御する場合に双方の開度を制御したが、少なくともどちらか一方の開度を制御すればよい。つまり、冷媒保持量の多い熱源側ユニットの第2絞り装置の開度が冷媒保持量の少ない熱源側ユニットの第2絞り装置の開度よりも相対的に小さくなるように、第2絞り装置106及び第2絞り装置206のうちの少なくとも一方の開度を制御すればよい。
(通常の冷房運転時における均液制御)
通常の冷房運転時、冷媒は、図1に示す実線矢印のように流れる。
圧縮機101(201)から吐出された高温高圧のガス冷媒は、気液分離器102(202)及び四方切り替え弁104(204)を通って熱源側熱交換器105(205)に流入する。熱源側熱交換器105(205)に流入した高温高圧のガス冷媒は、周囲空気と熱交換して凝縮し、低温高圧の液冷媒(又は二相冷媒)となる。この低温高圧の液冷媒(又は二相冷媒)は、冷媒−冷媒熱交換器109(209)へ流入し、配管133(233)を流れる冷媒(負荷側ユニット300から流出した冷媒)によって冷却される。そして、過冷却度を確保して確実に液冷媒となったこの冷媒は、逆止弁117(217)、絞り装置106(206)及び液配管402を経由して、負荷側ユニット300へ流入する。
負荷側ユニット300へ流入した低温高圧の液冷媒は、負荷側絞り装置302で減圧されて低温低圧の二相冷媒となり、負荷側熱交換器301に流入する。負荷側熱交換器301に流入した低温低圧の二相冷媒は、周囲空気(例えば室内空気)と熱交換してガス化し(又は二相冷媒となり)、ガス配管401を通って熱源側ユニット100(200)へ流入する。熱源側ユニット100(200)へ流入したガス冷媒(又は二相冷媒)は、冷媒−冷媒熱交換器109(209)において配管134を流れる冷媒(熱源側熱交換器105(205)から流出した低温高圧の液冷媒)によって加熱される。なお、冷媒−冷媒熱交換器109(209)の高圧出口と低圧入り口は、バイパス配管131(231)及び絞り装置107(207)を介して接続バイパスされている。絞り装置107(207)の開度によって高圧の液冷媒を低圧側配管(配管133(233))に供給し、アキュムレーター111(211)入り口の乾き度が過大とならないように制御している。過熱度を確保して確実にガス化したこの冷媒は、四方切り替え弁104(204)、アキュムレーター111(211)を経由して再び圧縮機101(201)へ吸入される。
本実施の形態1に係る空気調和装置500のように複数の熱源側ユニットを備えた空気調和装置は、種々の要因によって各熱源側ユニット間に冷媒の偏りが生じる場合がある。そして、この冷媒の偏りと圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度との間には、暖房運転時と同様に、図2に示すような相関関係がある。つまり、熱源側ユニット内の冷媒量が少なくなると、圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度が大きくなる。換言すると、熱源側ユニット内の冷媒量が多くなると、圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度が小さくなる。
そこで、本実施の形態1に係る空気調和装置500においては、制御装置1(2)は、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1及び圧縮機201の吐出過熱度TdSH2を求め、これら吐出過熱度に基づいて第1絞り装置107(207)の開度を制御することにより、熱源側ユニット100と熱源側ユニット200との均液を図っている。
具体的には、制御装置1は、上述の式(1)を用いて、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1を求める。また、制御装置2は、上述の式(2)を用いて、圧縮機201の吐出過熱度TdSH2を求める。
熱源側ユニット100と熱源側ユニット200とに均等に冷媒が分配されている場合、理想的にはTdSH1=TdSH2の関係が成り立つ。一方、熱源側ユニット100内の冷媒保持量と熱源側ユニット200内の冷媒保持量との間に差が生じた場合、熱源側ユニット内の冷媒保持量に応じて、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1と圧縮機201の吐出過熱度TdSH2との間に差が生じる。例えば、熱源側ユニット100内の冷媒保持量よりも熱源側ユニット200内の冷媒保持量の方が少なくなった場合、TdSH1<TdSH2となる。
本実施の形態1に係る空気調和装置500においては、|TdSH1−TdSH2|が設定値αを超えた場合、吐出過熱度の小さい圧縮機が搭載されている熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を減少させ、吐出過熱度の大きい圧縮機が搭載されている熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を増加させる。第1絞り装置107(207)は、高圧の液冷媒を低圧側の配管133(233)にバイパスするバイパス配管131(231)に設けられている。このため、第1絞り装置107(207)の開度を大きくするほど、熱源側ユニット100(200)の系外へ流出する冷媒量が減少する。反対に、第1絞り装置107(207)の開度を小さくするほど、熱源側ユニット100(200)の系外へ流出する冷媒量が増加する。したがって、冷媒保持量が多い方の熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を減少させることによって、冷媒保持量が多い方の熱源側ユニットから流出する冷媒量を増大させ、冷媒保持量が少ない方の熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を増加させることによって、冷媒保持量が少ない方の熱源側ユニット内から流出する冷媒量を抑制し、熱源側ユニット間の冷媒量の偏りを是正することができる。
図4は、本発明の実施の形態1に係る空気調和装置の通常の冷房運転時における均液制御を示すフロー図である。
冷房運転が開始されると(ステップS11)、制御装置1は圧縮機101の吐出過熱度TdSH1を算出し、制御装置2は圧縮機201の吐出過熱度TdSH2を算出する。そして、制御装置1(又は制御装置2)は、|TdSH1−TdSH2|が設定値αよりも大きいか否かを判定する(ステップS12)。|TdSH1−TdSH2|が設定値αよりも大きい場合はステップS13に進み、|TdSH1−TdSH2|が設定値α以下の場合はステップS12を繰り返す。
ステップS13では、制御装置1(又は制御装置2)は、TdSH1及びTdSH2のうちのどちらの値が大きいかを判定する。TdSH1よりもTdSH2の方が大きい場合、制御装置1は第1絞り装置107の開度を減少させ、制御装置2は第1絞り装置207の開度を増加させる(ステップS14)。一方、TdSH1よりもTdSH2の方が小さい場合、制御装置1は第1絞り装置107の開度を増加させ、制御装置2は第1絞り装置207の開度を減少させる(ステップS15)。
このように、冷媒保持量が過剰な熱源側ユニットは第2絞り装置の開度を減少させ、冷媒保持量が不足している熱源側ユニットは第2絞り装置の開度を増加させることにより、通常の冷房運転時において、各熱源側ユニット間の冷媒の偏りを精度良く是正することができる(均液制御することができる)。
なお、本実施の形態1では、第1絞り装置107(207)の開度の調整量について特に言及しなかったが、例えば第1絞り装置107(207)の開度を一定量ずつ変更してもよいし、第1絞り装置107(207)の開度の調整量を|TdSH1−TdSH2|の関数としてもよい。第1絞り装置107(207)の開度の調整量を|TdSH1−TdSH2|の関数とすることにより、冷媒量の偏りに応じた均液制御を行うことができる。
また、本実施の形態1では、|TdSH1−TdSH2|に基づいて第1絞り装置107(207)の開度を制御したが、TdSH1及びTdSH2の各値に基づいて第1絞り装置107及び第1絞り装置207の開度を制御してもよい。つまり、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1が一定の範囲となるように制御装置1は第1絞り装置107の開度を制御し、圧縮機201の吐出過熱度TdSH2が一定の範囲となるように制御装置2は第1絞り装置207の開度を制御してもよい。このように第1絞り装置107(207)の開度を制御しても、各熱源側ユニット間の冷媒の偏りを精度良く是正することができる(均液制御することができる)。
また、本実施の形態1では圧縮機101(201)の吐出過熱度に基づいて第1絞り装置107(207)の開度を制御したが、圧縮機101(201)の吸入過熱度に基づいて第1絞り装置107(207)の開度を制御してもよい。図2に示すように、圧縮機101(201)の吐出過熱度及び吸入過熱度は、相関関係が成立するからである。
また、本実施の形態1では、|TdSH1−TdSH2|に基づいて第1絞り装置107(207)の開度を制御する場合に双方の開度を制御したが、少なくともどちらか一方の開度を制御すればよい。つまり、冷媒保持量の多い熱源側ユニットの第1絞り装置の開度が冷媒保持量の少ない熱源側ユニットの第1絞り装置の開度よりも相対的に小さくなるように、第1絞り装置107及び第1絞り装置207のうちの少なくとも一方の開度を制御すればよい。
[冷媒充てんをしながら空調運転する際の均液制御]
従来から、既設の配管をそのまま利用して、熱源側ユニットや負荷側ユニットを新たなユニットに置き換え可能な(リプレース可能な)空気調和装置が存在する。このような空気調和装置は、既設の熱源側ユニットや負荷側ユニットを既設の配管から取り外し、既設の配管はそのままで、新しい熱源側ユニットや負荷側ユニットを据え付ける。このように既設の配管を流用することによって新たに延長配管部の工事をする必要がなくなるため、作業時間が短縮でき、工事費用だけでなく部材にかかる費用も抑制することができる。また、これまで運転してきた実績のある配管を流用することにより、分岐配管部のろう付け不具合等のような工事上の不良を低減でき、空気調和装置の信頼性を向上させることができる。
このようなリプレース可能な空気調和装置の多くは、HCFC系冷媒を使用するために設計された配管に接続される。HCFC冷媒を使用する製品が登場してから十数年が経過しているため、製品寿命によって既設ユニットが故障したり、ランニングコストが上昇したりしたためと考えられる。また、より優れた機能や性能を持った空気調和装置への買い替え時期に来ていることが原因としてあげられる。また、近年のOA機器の増加に伴って処理する空調負荷が増加したことにより、従来のシステムから増設したい等の要求が高まっていることも、原因としてあげられる。
さらには、既設の熱源側ユニット及び負荷側ユニットに代わって据え付けられるリプレース可能な空気調和装置は、HFC系の冷媒が使用されている場合が多い。これは、近年の環境保護に対する意識の高まりから、オゾン破壊係数が0であるHFC冷媒への切替えが進んでいることが要因と考えられる。ここで、HCFC冷媒で使用している冷凍機油は鉱油と呼ばれるものであるが、鉱油又は鉱油に含まれるHCFC冷媒由来の塩素成分は、HFC冷媒で使用する冷凍機油(エステル油)を劣化させる。このため、既設のHCFC冷媒を使用するユニットを取り外した後、そのままHFC冷媒を使用する新しいユニットに入れ替えただけで空調運転を行うと、圧縮機故障等の原因となる。また、圧縮機の故障等によって既設のユニットが運転不能の状態に陥った場合、既設の配管には圧縮機から出た磨耗片等が残留している恐れがある。このため、新たにユニットをリプレースした場合、これらの残留物が新しいユニットの圧縮機やその他の部品に不具合を発生させる原因となり得る。
したがって、既設の配管を流用してリプレース可能な空気調和装置を新たに据え付けた際、通常の空調運転をするのに先立って、既設配管内の異物回収運転(配管内に冷媒を充てんしながら、既設配管内の冷凍機油(鉱油)や残留異物を冷媒で押し流し、その異物を異物回収器等で捕獲・回収する運転)が必要となる。
ところで、既設の配管を流用しようとする場合、過去の配管系統図面が紛失する等して、正確な配管長が不明となっている場合も多い。このため、リプレース可能な空気調和装置には、自動で冷媒の適正量を判定しながら冷媒を充てんする機能が付加されている。しかしながら、このような既設の配管を流用してリプレース可能な空気調和装置を設置した場合、運転開始時の冷媒充てん量が適正量よりも少なくなっていることが一般的である。また、従来の空気調和装置の均液制御は、空気調和装置の冷媒回路内に適正量の冷媒が充てんされていることを前提としたものとなっている。このため、冷媒を充てんしながら従来の均液制御を行った場合、従来の空気調和装置は、圧縮機の吐出過熱度や吸入過熱度を目標の範囲に制御できず、制御が発散してしまう場合があった。
そこで、本実施の形態1に係る空気調和装置500は、冷媒を充てんしながらの空調運転において均液制御を行う場合、|TdSH1−TdSH2|に基づいて第1絞り装置107(207)の開度や第2絞り装置106(206)の開度を制御することにより、各熱源側ユニット間の冷媒の偏りを精度良く是正している。
本実施の形態1に係る空気調和装置500のユニット(熱源側ユニット100(200)及び負荷側ユニット300)を更新(リプレース)する際、まずは既設のシステムの冷媒回収を実施する。その後、既設の熱源側ユニット及び負荷側ユニットを、既設配管であるガス配管401及び液配管402から取り外し撤去する。そして、既設のユニット間の通信用に接続されていた伝送線を取り外す。なお、既設の負荷側ユニットをそのまま流用できる場合、既設の負荷側ユニットを必ずしも取り外す必要はない。
続いて、本実施の形態1に係る空気調和装置500の熱源側ユニット100(200)及び負荷側ユニット300をガス配管401及び液配管402と接続し、各ユニットを電送線で接続する。そして、気密試験によって冷媒回路からの漏れが無いことを確認した後、冷媒回路の真空引きを行う。通常、新設の熱源側ユニット100(200)には冷媒が封入されているため、真空引きは既設配管及び負荷側ユニット部分において実施する。真空引きが完了すると、冷媒回路に冷媒を充てんすることとなる。
本実施の形態1に係る空気調和装置500の熱源側ユニット100(200)及び負荷側ユニット300を更新(リプレース)した後、上述のように、冷媒を充てんしながらの異物回収運転を行う。なお、本実施の形態1では、異物の回収運転を含めた冷媒充てん中の暖房運転を説明するが、異物の回収運転を必要としない冷媒充てん中の暖房運転も基本的には同様の運転となる。また、異物の回収運転、冷媒の充てん及び冷媒量の判定は、同時に行ってもよく、順次行ってもよい。つまり、異物の回収運転、冷媒の充てん及び冷媒量の判定を行う順番は、適宜設定すればよい。
冷媒を充てんしながらの異物回収運転は、周囲の空気条件に応じて運転モードを決定する。例えば、夏季であれば冷房モードによって異物回収運転を行い、冬季であれば暖房モードにて異物回収運転を行う。周囲の空気条件に応じた運転モードを決定して異物の回収運転と冷媒充てんを実施することにより、圧縮機101(201)の保護制御を回避し、圧縮機101(201)の吐出圧及び吸入圧を安定して維持することができる。このため、短時間に異物の回収と高精度の冷媒充てんを行うことができる。
(冷媒充てん及び異物回収運転をしながら暖房運転する際の均液制御)
まず、冷媒充てん及び異物回収運転をしながら暖房運転する際の均液制御について説明する。
冷媒充てん及び異物回収運転をしながら暖房運転する際、冷媒は、図1に示す破線矢印のように流れる。
圧縮機101(201)から吐出された高温高圧のガス冷媒は、気液分離器102(202)及び四方切り替え弁104(204)を通って、冷媒−冷媒熱交換器109(209)に流入する。冷媒−冷媒熱交換器109(209)に流入した高温高圧のガス冷媒は、分岐配管132(232)を流れる低温低圧の二相冷媒に冷却される。冷媒―冷媒熱交換器109(209)の熱交換能力は、ガス配管401の入り口乾き度が1未満(つまり二相冷媒)となるように選定されている。これにより、液冷媒によってガス配管401中に付着した異物は液冷媒によって剥ぎ取ることができる。また、ガス配管401中に浮遊した異物は、ガス冷媒によって、高速で異物回収器113(213)まで押し流すことができる。したがって、ガス配管401中の異物の回収効率が向上する。
冷媒―冷媒熱交換器109(209)を流出した高圧の二相冷媒は、ガス配管401を経由して、負荷側ユニット300に流入する。負荷側ユニット300に流入した高圧の二相冷媒は、負荷側熱交換器301において周囲空気(例えば室内空気)と熱交換し、低温高圧の液冷媒となる。この低温高圧の液冷媒は、絞り装置302によって減圧され、低温低圧の二相冷媒となり、液配管402を通って熱源側ユニット100(200)へ流入する。
冷媒充てん及び異物回収運転をしながらの暖房運転では、開閉弁110(210)が開いており、逆止弁116(216)を通過後の冷媒が分岐配管132(232)にも流れるようになっている。このため、熱源側ユニット100(200)へ流入した低温低圧の二相冷媒は、逆止弁116(216)を通過後、配管130(230)を通って熱源側熱交換器105(205)へ流入するものと、分岐配管132(232)を通って冷媒−冷媒熱交換器109(209)に流入するものとに分岐される。分岐配管132(232)を通って冷媒−冷媒熱交換器109(209)に流入した低温低圧の二相冷媒は、配管130(230)を流れる高温高圧のガス冷媒に加熱され、配管130(230)に流入した後に再び逆止弁116(216)を通過する。
一方、熱源側熱交換器105(205)へ流入した低温低圧の二相冷媒は、周囲空気と熱交換することによってガス化し、四方切り替え弁104(204)を通ってアキュムレーター111(211)に流入する。アキュムレーター111(211)に流入した低温低圧のガス冷媒は、ガス冷媒と既設の配管から回収した異物とに分離される。そして、ガス冷媒のみが圧縮機101(201)へ吸入され、異物はアキュムレーター111(211)の下部へ溜まる。このとき、アキュムレーター111(211)と異物回収器113(213)とを導通するように流路切り替え弁112(212)の流路が設定されているので、異物を異物回収器113(213)へ移動・回収することができる。圧縮機101(201)に吸入されたガス冷媒は、昇圧された後に再び吐出される。
なお、冷媒充てん及び異物回収運転をしながらの暖房運転では、充てん用ポート119(219)に冷媒充てん用ボンベが接続されている。開閉弁118(218)及び絞り装置107(207)を開くことで、充てん用ポート119(219)は低圧側に開放され、冷媒充てん用ボンベ内の冷媒が冷媒回路内へ充てんされる。
熱源側ユニット内の冷媒保持量と圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度との間には、上述のように図2のような相関関係がある。つまり、熱源側ユニット内の冷媒量が少ないと、圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度が大きくなる。換言すると、熱源側ユニット内の冷媒量が多くなると、圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度が小さくなる。
そこで、本実施の形態1に係る空気調和装置500においては、制御装置1(2)は、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1及び圧縮機201の吐出過熱度TdSH2を求め、これら吐出過熱度に基づいて第2絞り装置106(206)の開度を制御することにより、熱源側ユニット100と熱源側ユニット200との均液を図っている。
具体的には、制御装置1は、上述の式(1)を用いて、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1を求める。また、制御装置2は、上述の式(2)を用いて、圧縮機201の吐出過熱度TdSH2を求める。
空気調和装置500が必要とする冷媒量に対して充分な量の冷媒が入った冷媒充てん用ボンベが冷媒充てん用ポート119と冷媒充てん用ポート219へ接続されている場合、熱源側ユニット100と熱源側ユニット200とに均等に冷媒が分配され、理想的にはTdSH1=TdSH2の関係が成り立つ。これに対し、一方の冷媒充てん用ボンベ内の冷媒量が少ない場合や、どちらかの熱源側ユニットに冷媒充てん用ボンベが接続されていない場合、熱源側ユニットに供給される冷媒量に差が生じる。つまり、熱源側ユニット100内の冷媒保持量と熱源側ユニット200内の冷媒保持量との間に差が生じる。このような場合、熱源側ユニット内の冷媒保持量に応じて、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1と圧縮機201の吐出過熱度TdSH2との間に差が生じる。例えば、熱源側ユニット100内の冷媒保持量よりも熱源側ユニット200内の冷媒保持量の方が少なくなった場合、TdSH1<TdSH2となる。
本実施の形態1に係る空気調和装置500においては、|TdSH1−TdSH2|が設定値αを超えた場合、吐出過熱度の小さい圧縮機が搭載されている熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を減少させ、吐出過熱度の大きい圧縮機が搭載されている熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を増加させる。第2絞り装置106(206)は、それぞれ液配管402の二相冷媒を熱源側ユニット100(200)へ供給する際の入り口となっている。このため、第2絞り装置106(206)の開度が大きいほど熱源側ユニット100(200)への冷媒供給量は増加し、第2絞り装置106(206)の開度が小さいほど熱源側ユニット100(200)への供給量は低下する。したがって、冷媒保持量が多い方の熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を減少させることによって、冷媒保持量が多い方の熱源側ユニット内に流入する冷媒量を抑制し、冷媒保持量が少ない方の熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を増加させることによって、冷媒保持量が少ない方の熱源側ユニット内に流入する冷媒量を増加させ、両熱源側ユニット間の均液を図っている。
つまり、冷媒充てん及び異物回収運転をしながら暖房運転する際の均液制御は、通常の暖房運転時の均液制御(図3)と同様な制御となっている。
このように、冷媒保持量が過剰な熱源側ユニットは第2絞り装置の開度を減少させ、冷媒保持量が不足している熱源側ユニットは第2絞り装置の開度を増加させることにより、均液制御が発散することなく、冷媒回路内に適正な冷媒量を充てんできる。また、各熱源側ユニット間の冷媒の偏りを精度良く是正することができる(均液制御することができる)。また、周囲の空気条件が暖房モードに適した条件の場合、このように冷媒充てん及び異物回収運転をしながら均液制御することによって、一方の熱源側ユニットのみで圧縮機の吐出温度が過昇すること(つまり圧縮機の保護制御に入ること)を防止でき、安定な運転を維持しながら短時間での異物回収運転を実施することができる。
なお、本実施の形態1では、第2絞り装置106(206)の開度の調整量について特に言及しなかったが、例えば第2絞り装置106(206)の開度を一定量ずつ変更してもよいし、第2絞り装置106(206)の開度の調整量を|TdSH1−TdSH2|の関数としてもよい。第2絞り装置106(206)の開度の調整量を|TdSH1−TdSH2|の関数とすることにより、冷媒量の偏りに応じた均液制御を行うことができる。
また、本実施の形態1では圧縮機101(201)の吐出過熱度に基づいて第2絞り装置106(206)の開度を制御したが、圧縮機101(201)の吸入過熱度に基づいて第2絞り装置106(206)の開度を制御してもよい。図2に示すように、圧縮機101(201)の吐出過熱度及び吸入過熱度は、相関関係が成立するからである。
また、本実施の形態1では、第2絞り装置106(206)の開度を制御する場合に双方の開度を制御したが、少なくともどちらか一方の開度を制御すればよい。つまり、冷媒保持量の多い熱源側ユニットの第2絞り装置の開度が冷媒保持量の少ない熱源側ユニットの第2絞り装置の開度よりも相対的に小さくなるように、第2絞り装置106及び第2絞り装置206のうちの少なくとも一方の開度を制御すればよい。
(冷媒充てん及び異物回収運転をしながら冷房運転する際の均液制御)
次に、冷媒充てん及び異物回収運転をしながら冷房運転する際の均液制御について説明する。
冷媒充てん及び異物回収運転をしながら冷房運転する際、冷媒は、図1に示す実線矢印のように流れる。
圧縮機101(201)から吐出された高温高圧のガス冷媒は、気液分離器102(202)及び四方切り替え弁104(204)を通って熱源側熱交換器105(205)に流入する。熱源側熱交換器105(205)に流入した高温高圧のガス冷媒は、周囲空気と熱交換して凝縮し、低温高圧の液冷媒(又は二相冷媒)となる。この低温高圧の液冷媒(又は二相冷媒)は、冷媒−冷媒熱交換器109(209)へ流入し、配管133(233)を流れる冷媒(負荷側ユニット300から流出した冷媒)によって冷却される。そして、過冷却度を確保して確実に液冷媒となったこの冷媒は、逆止弁117(217)、絞り装置106(206)及び液配管402を経由して、負荷側ユニット300へ流入する。
負荷側ユニット300へ流入した低温高圧の液冷媒は、負荷側絞り装置302で減圧されて低温低圧の二相冷媒となり、負荷側熱交換器301に流入する。このとき、負荷側絞り装置302は通常の冷房運転における開度よりも開き気味にしており、負荷側熱交換器301の出口側乾き度が1未満(つまり二相)となるように制御している。これにより、液冷媒によってガス配管401中に付着した異物は液冷媒によって剥ぎ取ることができる。また、ガス配管401中に浮遊した異物は、ガス冷媒によって、高速で異物回収器113(213)まで押し流すことができる。したがって、ガス配管401中の異物の回収効率が向上する。
負荷側熱交換器301に流入した低温低圧の二相冷媒は、周囲空気(例えば室内空気)と熱交換した後、ガス配管401を通って熱源側ユニット100(200)へ流入する。熱源側ユニット100(200)へ流入したガス冷媒(又は二相冷媒)は、冷媒−冷媒熱交換器109(209)において配管132(232)を流れる冷媒(熱源側熱交換器105(205)から流出した低温高圧の液冷媒)によって加熱される。なお、冷媒−冷媒熱交換器109(209)の高圧出口と低圧入り口は、バイパス配管131(231)及び絞り装置107(207)を介して接続バイパスされている。絞り装置107(207)の開度によって高圧の液冷媒を低圧側配管(配管133(233))に供給し、アキュムレーター111(211)入り口の乾き度が過大とならないように制御している。
過熱度を確保して確実にガス化したこの冷媒は、四方切り替え弁104(204)を通ってアキュムレーター111(211)に流入する。アキュムレーター111(211)に流入した低温低圧のガス冷媒は、ガス冷媒と既設の配管から回収した異物とに分離される。そして、ガス冷媒のみが圧縮機101(201)へ吸入され、異物はアキュムレーター111(211)の下部へ溜まる。このとき、アキュムレーター111(211)と異物回収器113(213)とを導通するように流路切り替え弁112(212)の流路が設定されているので、異物を異物回収器113(213)へ移動・回収することができる。圧縮機101(201)に吸入されたガス冷媒は、昇圧された後に再び吐出される。
なお、冷媒充てん及び異物回収運転をしながらの暖房運転では、充てん用ポート119(219)に冷媒充てん用ボンベが接続されている。開閉弁118(218)及び絞り装置107(207)を開くことで、充てん用ポート119(219)は低圧側に開放され、冷媒充てん用ボンベ内の冷媒が冷媒回路内へ充てんされる。
熱源側ユニット内の冷媒保持量と圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度との間には、上述のように図2のような相関関係がある。つまり、熱源側ユニット内の冷媒量が少ないと、圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度が大きくなる。換言すると、熱源側ユニット内の冷媒量が多くなると、圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度が小さくなる。
そこで、本実施の形態1に係る空気調和装置500においては、制御装置1(2)は、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1及び圧縮機201の吐出過熱度TdSH2を求め、これら吐出過熱度に基づいて第1絞り装置107(207)の開度を制御することにより、熱源側ユニット100と熱源側ユニット200との均液を図っている。
具体的には、制御装置1は、上述の式(1)を用いて、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1を求める。また、制御装置2は、上述の式(2)を用いて、圧縮機201の吐出過熱度TdSH2を求める。
空気調和装置500が必要とする冷媒量に対して充分な量の冷媒が入った冷媒充てん用ボンベが冷媒充てん用ポート119と冷媒充てん用ポート219へ接続されている場合、熱源側ユニット100と熱源側ユニット200とに均等に冷媒が分配され、理想的にはTdSH1=TdSH2の関係が成り立つ。これに対し、一方の冷媒充てん用ボンベ内の冷媒量が少ない場合や、どちらかの熱源側ユニットに冷媒充てん用ボンベが接続されていない場合、熱源側ユニットに供給される冷媒量に差が生じる。つまり、熱源側ユニット100内の冷媒保持量と熱源側ユニット200内の冷媒保持量との間に差が生じる。このような場合、熱源側ユニット内の冷媒保持量に応じて、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1と圧縮機201の吐出過熱度TdSH2との間に差が生じる。例えば、熱源側ユニット100内の冷媒保持量よりも熱源側ユニット200内の冷媒保持量の方が少なくなった場合、TdSH1<TdSH2となる。
本実施の形態1に係る空気調和装置500においては、|TdSH1−TdSH2|が設定値αを超えた場合、吐出過熱度の小さい圧縮機が搭載されている熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を減少させ、吐出過熱度の大きい圧縮機が搭載されている熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を増加させる。第1絞り装置107(207)は、高圧の液冷媒を低圧側の配管133(233)にバイパスするバイパス配管131(231)に設けられている。このため、第1絞り装置107(207)の開度を大きくするほど、熱源側ユニット100(200)の系外へ流出する冷媒量が減少する。反対に、第1絞り装置107(207)の開度を小さくするほど、熱源側ユニット100(200)の系外へ流出する冷媒量が増加する。したがって、冷媒保持量が多い方の熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を減少させることによって、冷媒保持量が多い方の熱源側ユニットから流出する冷媒量を増大させ、冷媒保持量が少ない方の熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を増加させることによって、冷媒保持量が少ない方の熱源側ユニット内から流出する冷媒量を抑制し、熱源側ユニット間の冷媒量の偏りを是正することができる。
つまり、冷媒充てん及び異物回収運転をしながら冷房運転する際の均液制御は、通常の冷房運転時の均液制御(図4)と同様な制御となっている。
このように、冷媒保持量が過剰な熱源側ユニットは第2絞り装置の開度を減少させ、冷媒保持量が不足している熱源側ユニットは第2絞り装置の開度を増加させることにより、均液制御が発散することなく、冷媒回路内に適正な冷媒量を充てんできる。また、各熱源側ユニット間の冷媒の偏りを精度良く是正することができる(均液制御することができる)。また、周囲の空気条件が冷房モードに適した条件の場合、このように冷媒充てん及び異物回収運転をしながら均液制御することによって、一方の熱源側ユニットのみで圧縮機の吐出温度が過昇すること(つまり圧縮機の保護制御に入ること)を防止でき、安定な運転を維持しながら短時間での異物回収運転を実施することができる。
なお、本実施の形態1では、第1絞り装置107(207)の開度の調整量について特に言及しなかったが、例えば第1絞り装置107(207)の開度を一定量ずつ変更してもよいし、第1絞り装置107(207)の開度の調整量を|TdSH1−TdSH2|の関数としてもよい。第1絞り装置107(207)の開度の調整量を|TdSH1−TdSH2|の関数とすることにより、冷媒量の偏りに応じた均液制御を行うことができる。
また、本実施の形態1では圧縮機101(201)の吐出過熱度に基づいて第1絞り装置107(207)の開度を制御したが、圧縮機101(201)の吸入過熱度に基づいて第1絞り装置107(207)の開度を制御してもよい。図2に示すように、圧縮機101(201)の吐出過熱度及び吸入過熱度は、相関関係が成立するからである。
また、本実施の形態1では、|TdSH1−TdSH2|に基づいて第1絞り装置107(207)の開度を制御する場合に双方の開度を制御したが、少なくともどちらか一方の開度を制御すればよい。つまり、冷媒保持量の多い熱源側ユニットの第1絞り装置の開度が冷媒保持量の少ない熱源側ユニットの第1絞り装置の開度よりも相対的に小さくなるように、第1絞り装置107及び第1絞り装置207のうちの少なくとも一方の開度を制御すればよい。
最後に、通常の空調運転時及び冷媒充てん時(異物回収運転時)における第1絞り装置107(207)及び第2絞り装置106(206)の制御動作についてまとめたものを、図5に示す。
図5は、本発明の実施の形態1に係る空気調和装置における各運転時の第1絞り装置及び第2絞り装置の制御動作を示す説明図である。
通常の冷房運転時、第1絞り装置107(207)は均液制御(偏液是正制御)に用いられ、第2絞り装置106(206)は開状態となっている。冷媒充てん時(異物回収運転時)における冷房運転時、第1絞り装置107(207)は均液制御(偏液是正制御)に用いられ、第2絞り装置106(206)は開状態となっている。なお、開閉弁118(218)を開くことにより、第1絞り装置107(207)は冷媒充てんにも用いられる。通常の暖房運転時、第1絞り装置107(207)は閉状態となっており、第2絞り装置106(206)は均液制御(偏液是正制御)に用いられる。冷媒充てん時(異物回収運転時)における暖房運転時、第1絞り装置107(207)は冷媒充てんのために開状態となっており、第2絞り装置106(206)は均液制御(偏液是正制御)に用いられる。なお、冷媒を充てんする際、開閉弁118(218)も開かれる。
実施の形態2.
実施の形態1に示した空気調和装置の冷媒回路はあくまでも一例である。バイパス配管131(231)は負荷側ユニット300をバイパスするように設けられていればよく、例えば以下のように空気調和装置の冷媒回路を構成してもよい。なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
図6は、本発明の実施の形態2に係る空気調和装置の冷媒回路を示す冷媒回路図である。
本実施の形態2に係る空気調和装置501は、冷媒−冷媒熱交換器109(209)が配管130(230)に設けられている。また、バイパス配管131(231)の一方の端部が、四方切替え弁104(204)とアキュムレーター111(211)との間の配管に接続されている。そして、バイパス配管131(231)の途中が、配管130(230)に設けられた冷媒−冷媒熱交換器109(209)と接続されている。つまり、本実施の形態2に係る空気調和装置501の冷媒−冷媒熱交換器109(209)は、バイパス配管131(231)を流れる冷媒と配管130(230)を流れる冷媒とが熱交換する構成となっている。また、アキュムレーター111(211)に流入する冷媒の圧力を検知する低圧センサー124(224)は、バイパス配管131(231)に設けられている。このため、本実施の形態2に係る空気調和装置501は、実施の形態1に係る空気調和装置500に設けられていた分岐配管132(232)、配管134(234)、逆止弁116(216)、逆止弁117(217)及び開閉弁110(210)が設けられていない構成となっている。
また、本実施の形態2に係る空気調和装置501は、流路切り替え弁112(212)、異物回収器113(213)及び逆止弁114(214)が設けられていない構成となっている。このため、本実施の形態2に係る空気調和装置501では、配管内から回収された異物はアキュムレーター111(211)の下部に貯留することとなる。なお、アキュムレーター111(211)内に貯留された異物を別途回収したい場合、実施の形態1に係る空気調和装置500のように、流路切り替え弁112(212)、異物回収器113(213)及び逆止弁114(214)を設ければよい。
空気調和装置501の上記以外の構成は、実施の形態に係る空気調和装置500と同様である。
<均液制御>
このように構成された空気調和装置501の均液制御について説明する。空気調和装置501においても、通常の空調運転時における均液制御と冷媒充てん時における均液制御(異物回収運転も含む)とは、基本的に同様の制御となる。このため、以下では、通常の空調運転時における均液制御について説明する。なお、冷媒充てん時の均液制御の場合、第1絞り装置107(207)の開度調整及び開閉弁118(218)の開閉を適宜行い、冷媒回路内に冷媒を充てんすればよい。また、異物回収運転の際は、ガス配管401を通る冷媒を適宜二相冷媒にしてもよい。
(通常の暖房運転時における均液制御)
通常の暖房運転時、冷媒は、図6に示す破線矢印のように流れる。
圧縮機101(201)から吐出された高温高圧のガス冷媒は、気液分離器102(202)、四方切り替え弁104(204)及びガス配管401を順次経由して、負荷側ユニット300に流入する。負荷側ユニット300に流入した高温高圧のガス冷媒は、負荷側熱交換器301において周囲空気(例えば室内空気)と熱交換し、低温高圧の液冷媒となる。この低温高圧の液冷媒は、絞り装置302によって減圧され、低温低圧の二相冷媒となり、液配管402を通って熱源側ユニット100(200)へ流入する。
熱源側ユニット100(200)へ流入した低温低圧の二相冷媒は、絞り装置106(206)及び冷媒−冷媒熱交換器109(209)を経由して熱源側熱交換器105(205)へ流入する。熱源側熱交換器105(205)へ流入した低温低圧の二相冷媒は、周囲空気と熱交換することによってガス化し、四方切り替え弁104(204)及びアキュムレーター111(211)を経由して再び圧縮機101(201)へ吸入される。
本実施の形態2に係る空気調和装置501のように複数の熱源側ユニットを備えた空気調和装置は、種々の要因によって各熱源側ユニット間に冷媒の偏りが生じる場合がある。そして、この冷媒の偏りと圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度との間には、実施の形態1の図2で示したように、相関関係がある。つまり、熱源側ユニット内の冷媒量が少なくなると、圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度が大きくなる。換言すると、熱源側ユニット内の冷媒量が多くなると、圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度が小さくなる。
そこで、本実施の形態2に係る空気調和装置501においては、制御装置1(2)は、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1及び圧縮機201の吐出過熱度TdSH2を求め、これら吐出過熱度に基づいて第2絞り装置106(206)の開度を制御することにより、熱源側ユニット100と熱源側ユニット200との均液を図っている。
具体的には、制御装置1は、上述の式(1)を用いて、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1を求める。また、制御装置2は、上述の式(2)を用いて、圧縮機201の吐出過熱度TdSH2を求める。
熱源側ユニット100と熱源側ユニット200とに均等に冷媒が分配されている場合、理想的にはTdSH1=TdSH2の関係が成り立つ。一方、熱源側ユニット100内の冷媒保持量と熱源側ユニット200内の冷媒保持量との間に差が生じた場合、熱源側ユニット内の冷媒保持量に応じて、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1と圧縮機201の吐出過熱度TdSH2との間に差が生じる。例えば、熱源側ユニット100内の冷媒保持量よりも熱源側ユニット200内の冷媒保持量の方が少なくなった場合、TdSH1<TdSH2となる。
本実施の形態2に係る空気調和装置501においては、|TdSH1−TdSH2|が設定値αを超えた場合、吐出過熱度の小さい圧縮機が搭載されている熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を減少させ、吐出過熱度の大きい圧縮機が搭載されている熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を増加させる。第2絞り装置106(206)は、それぞれ液配管402の二相冷媒を熱源側ユニット100(200)へ供給する際の入り口となっている。このため、第2絞り装置106(206)の開度が大きいほど熱源側ユニット100(200)への冷媒供給量は増加し、第2絞り装置106(206)の開度が小さいほど熱源側ユニット100(200)への供給量は低下する。したがって、冷媒保持量が多い方の熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を減少させることによって、冷媒保持量が多い方の熱源側ユニット内に流入する冷媒量を抑制し、冷媒保持量が少ない方の熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を増加させることによって、冷媒保持量が少ない方の熱源側ユニット内に流入する冷媒量を増加させ、両熱源側ユニット間の均液を図っている。
つまり、本実施の形態2に係る空気調和装置501の均液制御は、実施の形態1に係る空気調和装置500と同様に、図3に示したフローによって行われる。
このように、冷媒保持量が過剰な熱源側ユニットは第2絞り装置の開度を減少させ、冷媒保持量が不足している熱源側ユニットは第2絞り装置の開度を増加させることにより、通常の暖房運転時において、各熱源側ユニット間の冷媒の偏りを精度良く是正することができる(均液制御することができる)。
なお、本実施の形態2では、第2絞り装置106(206)の開度の調整量について特に言及しなかったが、例えば第2絞り装置106(206)の開度を一定量ずつ変更してもよいし、第2絞り装置106(206)の開度の調整量を|TdSH1−TdSH2|の関数としてもよい。第2絞り装置106(206)の開度の調整量を|TdSH1−TdSH2|の関数とすることにより、冷媒量の偏りに応じた均液制御を行うことができる。
また、本実施の形態2では、|TdSH1−TdSH2|に基づいて第2絞り装置106(206)の開度を制御したが、TdSH1及びTdSH2の各値に基づいて第2絞り装置106及び第2絞り装置206の開度を制御してもよい。つまり、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1が一定の範囲となるように制御装置1は第2絞り装置106の開度を制御し、圧縮機201の吐出過熱度TdSH2が一定の範囲となるように制御装置2は第2絞り装置206の開度を制御してもよい。このように第2絞り装置106(206)の開度を制御しても、各熱源側ユニット間の冷媒の偏りを精度良く是正することができる(均液制御することができる)。
また、本実施の形態2では圧縮機101(201)の吐出過熱度に基づいて第2絞り装置106(206)の開度を制御したが、圧縮機101(201)の吸入過熱度に基づいて第2絞り装置106(206)の開度を制御してもよい。図2に示すように、圧縮機101(201)の吐出過熱度及び吸入過熱度は、相関関係が成立するからである。
また、本実施の形態2では、|TdSH1−TdSH2|に基づいて第2絞り装置106(206)の開度を制御する場合に双方の開度を制御したが、少なくともどちらか一方の開度を制御すればよい。つまり、冷媒保持量の多い熱源側ユニットの第2絞り装置の開度が冷媒保持量の少ない熱源側ユニットの第2絞り装置の開度よりも相対的に小さくなるように、第2絞り装置106及び第2絞り装置206のうちの少なくとも一方の開度を制御すればよい。
(通常の冷房運転時における均液制御)
通常の冷房運転時、冷媒は、図6に示す実線矢印のように流れる。
圧縮機101(201)から吐出された高温高圧のガス冷媒は、気液分離器102(202)及び四方切り替え弁104(204)を通って熱源側熱交換器105(205)に流入する。熱源側熱交換器105(205)に流入した高温高圧のガス冷媒は、周囲空気と熱交換して凝縮し、低温高圧の液冷媒(又は二相冷媒)となる。この低温高圧の液冷媒(又は二相冷媒)は、冷媒−冷媒熱交換器109(209)へ流入し、バイパス配管131(231)を流れる冷媒によって冷却される。
冷媒−冷媒熱交換器109(209)において過冷却度を確保し、確実に液冷媒となったこの冷媒の一部は、バイパス配管131(231)に流入して第1絞り装置107(207)で減圧された後、冷媒−冷媒熱交換器109(209)へ流入する。そして、この冷媒は、配管130(230)を流れる冷媒によって加熱された後、アキュムレーター111(211)へ流入する。
一方、冷媒−冷媒熱交換器109(209)において過冷却度を確保し、確実に液冷媒となった冷媒の残りの一部は、絞り装置106(206)及び液配管402を経由して、負荷側ユニット300へ流入する。
負荷側ユニット300へ流入した低温高圧の液冷媒は、負荷側絞り装置302で減圧されて低温低圧の二相冷媒となり、負荷側熱交換器301に流入する。負荷側熱交換器301に流入した低温低圧の二相冷媒は、周囲空気(例えば室内空気)と熱交換してガス化し、ガス配管401を通って熱源側ユニット100(200)へ流入する。熱源側ユニット100(200)へ流入したガス冷媒は、四方切り替え弁104(204)、アキュムレーター111(211)を経由して再び圧縮機101(201)へ吸入される。
本実施の形態2に係る空気調和装置501のように複数の熱源側ユニットを備えた空気調和装置は、種々の要因によって各熱源側ユニット間に冷媒の偏りが生じる場合がある。そして、この冷媒の偏りと圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度との間には、暖房運転時と同様に、図2に示すような相関関係がある。つまり、熱源側ユニット内の冷媒量が少なくなると、圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度が大きくなる。換言すると、熱源側ユニット内の冷媒量が多くなると、圧縮機の吸入過熱度及び吐出過熱度が小さくなる。
そこで、本実施の形態2に係る空気調和装置501においては、制御装置1(2)は、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1及び圧縮機201の吐出過熱度TdSH2を求め、これら吐出過熱度に基づいて第1絞り装置107(207)の開度を制御することにより、熱源側ユニット100と熱源側ユニット200との均液を図っている。
具体的には、制御装置1は、上述の式(1)を用いて、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1を求める。また、制御装置2は、上述の式(2)を用いて、圧縮機201の吐出過熱度TdSH2を求める。
熱源側ユニット100と熱源側ユニット200とに均等に冷媒が分配されている場合、理想的にはTdSH1=TdSH2の関係が成り立つ。一方、熱源側ユニット100内の冷媒保持量と熱源側ユニット200内の冷媒保持量との間に差が生じた場合、熱源側ユニット内の冷媒保持量に応じて、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1と圧縮機201の吐出過熱度TdSH2との間に差が生じる。例えば、熱源側ユニット100内の冷媒保持量よりも熱源側ユニット200内の冷媒保持量の方が少なくなった場合、TdSH1<TdSH2となる。
本実施の形態2に係る空気調和装置501においては、|TdSH1−TdSH2|が設定値αを超えた場合、吐出過熱度の小さい圧縮機が搭載されている熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を減少させ、吐出過熱度の大きい圧縮機が搭載されている熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を増加させる。第1絞り装置107(207)は、高圧の液冷媒が負荷側ユニット300をバイパスするバイパス配管131(231)に設けられている。このため、第1絞り装置107(207)の開度を大きくするほど、熱源側ユニット100(200)の系外へ流出する冷媒量が減少する。反対に、第1絞り装置107(207)の開度を小さくするほど、熱源側ユニット100(200)の系外へ流出する冷媒量が増加する。したがって、冷媒保持量が多い方の熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を減少させることによって、冷媒保持量が多い方の熱源側ユニットから流出する冷媒量を増大させ、冷媒保持量が少ない方の熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を増加させることによって、冷媒保持量が少ない方の熱源側ユニット内から流出する冷媒量を抑制し、熱源側ユニット間の冷媒量の偏りを是正することができる。
つまり、本実施の形態2に係る空気調和装置501の均液制御は、実施の形態1に係る空気調和装置500と同様に、図4に示したフローによって行われる。
このように、冷媒保持量が過剰な熱源側ユニットは第2絞り装置の開度を減少させ、冷媒保持量が不足している熱源側ユニットは第2絞り装置の開度を増加させることにより、通常の冷房運転時において、各熱源側ユニット間の冷媒の偏りを精度良く是正することができる(均液制御することができる)。
なお、本実施の形態2では、第1絞り装置107(207)の開度の調整量について特に言及しなかったが、例えば第1絞り装置107(207)の開度を一定量ずつ変更してもよいし、第1絞り装置107(207)の開度の調整量を|TdSH1−TdSH2|の関数としてもよい。第1絞り装置107(207)の開度の調整量を|TdSH1−TdSH2|の関数とすることにより、冷媒量の偏りに応じた均液制御を行うことができる。
また、本実施の形態2では、|TdSH1−TdSH2|に基づいて第1絞り装置107(207)の開度を制御したが、TdSH1及びTdSH2の各値に基づいて第1絞り装置107及び第1絞り装置207の開度を制御してもよい。つまり、圧縮機101の吐出過熱度TdSH1が一定の範囲となるように制御装置1は第1絞り装置107の開度を制御し、圧縮機201の吐出過熱度TdSH2が一定の範囲となるように制御装置2は第1絞り装置207の開度を制御してもよい。このように第1絞り装置107(207)の開度を制御しても、各熱源側ユニット間の冷媒の偏りを精度良く是正することができる(均液制御することができる)。
また、本実施の形態2では圧縮機101(201)の吐出過熱度に基づいて第1絞り装置107(207)の開度を制御したが、圧縮機101(201)の吸入過熱度に基づいて第1絞り装置107(207)の開度を制御してもよい。図2に示すように、圧縮機101(201)の吐出過熱度及び吸入過熱度は、相関関係が成立するからである。
また、本実施の形態2では、|TdSH1−TdSH2|に基づいて第1絞り装置107(207)の開度を制御する場合に双方の開度を制御したが、少なくともどちらか一方の開度を制御すればよい。つまり、冷媒保持量の多い熱源側ユニットの第1絞り装置の開度が冷媒保持量の少ない熱源側ユニットの第1絞り装置の開度よりも相対的に小さくなるように、第1絞り装置107及び第1絞り装置207のうちの少なくとも一方の開度を制御すればよい。
実施の形態3.
実施の形態1及び実施の形態2では2つの熱源側ユニットを備えた空気調和装置について説明したが、3つ以上の熱源側ユニットを備えた空気調和装置において本発明を実施しても勿論よい。なお、本実施の形態3において、特に記述しない項目については実施の形態1又は実施の形態2と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
図7は、本発明の実施の形態3に係る空気調和装置の暖房運転時における均液制御の一例を示すフロー図である。
この図7は、例えば実施の形態1で示した空気調和装置500や実施の形態2で示した空気調和装置501に、3台以上(n台)の熱源側ユニットを設けた場合の均液制御の一例を示すものである。
暖房運転が開始されると(ステップS21)、制御装置は、次式(3)により、高圧センサーn23で検知された吐出圧力から飽和温度Tcnを計算し、吐出温度センサーn21によって検知される吐出温度Tdnからこの飽和温度Tcnを減算することにより、各熱源側ユニットに設けられた圧縮機n01の吐出過熱度TdSHnを求める。
TdSHn=Tdn−Tcn…(3)
そして、制御装置は、次式(4)により、n台の圧縮機の吐出過熱度の平均値TdSHaを求める。
TdSHa=(ΣTdSHn)/n…(4)
そして、制御装置は、|TdSHn−TdSHHa|が設定値αよりも大きいか否かを判定する(ステップS22)。つまり、ステップS22では、{(各圧縮機の吐出過熱度)と(各圧縮機の吐出過熱度の平均値)との差の絶対値}が設定値αよりも大きいか否かを判定する。|TdSHn−TdSHHa|が設定値αよりも大きい場合はステップS23に進み、|TdSHn−TdSHHa|が設定値α以下の場合はステップS22を繰り返す。
ステップS23では、制御装置は、圧縮機n01の吐出過熱度TdSHnがn台の圧縮機の吐出過熱度の平均値TdSHaよりも小さいかを判定する。TdSHnがTdSHaよりも小さい場合、この圧縮機n01が搭載された熱源側ユニットn00の第2絞り装置n06の開度を絞る(ステップS24)。つまり、他の熱源側ユニットよりも冷媒保持量が多い熱源側ユニットn00の第2絞り装置n06の開度を絞る。一方、TdSHnがTdSHaよりも大きい場合、この圧縮機n01が搭載された熱源側ユニットn00の第2絞り装置n06の開度を開く(ステップS25)。つまり、他の熱源側ユニットよりも冷媒保持量が少ない熱源側ユニットn00の第2絞り装置n06の開度を開く。
このように、冷媒保持量が過剰な熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を相対的に小さくし、冷媒保持量が不足している熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を相対的に大きくすることにより、3台以上の熱源側ユニットが設けられている場合においても、暖房運転時において各熱源側ユニット間の冷媒の偏りを精度良く是正することができる(均液制御することができる)。
また、各熱源側ユニットの冷媒保持量に基づいて、冷媒保持量の多い熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を相対的に小さくしているので(換言すると、冷媒保持量の少ない熱源側ユニットの第2絞り装置の開度を相対的に大きくしているので)、冷媒充てん時の均液制御において制御が発散することなく均液制御を行うことができる。また、周囲の空気条件が暖房モードに適した条件の場合、このように均液制御することによって、一方の熱源側ユニットのみで圧縮機の吐出温度が過昇すること(つまり圧縮機の保護制御に入ること)を防止でき、安定な運転を維持しながら短時間での異物回収運転を実施することができる。
なお、本実施の形態3では、第2絞り装置n06の開度の調整量について特に言及しなかったが、例えば第2絞り装置n06の開度を一定量ずつ変更してもよいし、第2絞り装置n06の開度の調整量を|TdSHn−TdSHHa|の関数としてもよい。第2絞り装置n06の開度の調整量を|TdSHn−TdSHHa|の関数とすることにより、冷媒量の偏りに応じた均液制御を行うことができる。
また、本実施の形態3では圧縮機n01の吐出過熱度に基づいて第2絞り装置n06の開度を制御したが、圧縮機n01の吸入過熱度に基づいて第2絞り装置n06の開度を制御してもよい。図2に示すように、圧縮機n01の吐出過熱度及び吸入過熱度は、相関関係が成立するからである。
図8は、本発明の実施の形態3に係る空気調和装置の冷房運転時における均液制御の一例を示すフロー図である。
この図8は、例えば実施の形態1で示した空気調和装置500や実施の形態2で示した空気調和装置501に、3台以上(n台)の熱源側ユニットを設けた場合の均液制御の一例を示すものである。
冷房運転が開始されると(ステップS31)、制御装置は、式(3)により、各熱源側ユニットに設けられた圧縮機n01の吐出過熱度TdSHnを求める。そして、制御装置は、式(4)により、n台の圧縮機の吐出過熱度の平均値TdSHaを求める。そして、制御装置は、|TdSHn−TdSHHa|が設定値αよりも大きいか否かを判定する(ステップS32)。つまり、ステップS32では、{(各圧縮機の吐出過熱度)と(各圧縮機の吐出過熱度の平均値)との差の絶対値}が設定値αよりも大きいか否かを判定する。|TdSHn−TdSHHa|が設定値αよりも大きい場合はステップS33に進み、|TdSHn−TdSHHa|が設定値α以下の場合はステップS32を繰り返す。
ステップS33では、制御装置は、圧縮機n01の吐出過熱度TdSHnがn台の圧縮機の吐出過熱度の平均値TdSHaよりも小さいかを判定する。TdSHnがTdSHaよりも小さい場合、この圧縮機n01が搭載された熱源側ユニットn00の第1絞り装置n07の開度を絞る(ステップS34)。つまり、他の熱源側ユニットよりも冷媒保持量が多い熱源側ユニットn00の第1絞り装置n07の開度を絞る。一方、TdSHnがTdSHaよりも大きい場合、この圧縮機n01が搭載された熱源側ユニットn00の第1絞り装置n07の開度を開く(ステップS35)。つまり、他の熱源側ユニットよりも冷媒保持量が少ない熱源側ユニットn00の第1絞り装置n07の開度を開く。
このように、冷媒保持量が過剰な熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を相対的に小さくし、冷媒保持量が不足している熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を相対的に大きくすることにより、3台以上の熱源側ユニットが設けられている場合においても、冷房運転時において各熱源側ユニット間の冷媒の偏りを精度良く是正することができる(均液制御することができる)。
また、各熱源側ユニットの冷媒保持量に基づいて、冷媒保持量の多い熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を相対的に小さくしているので(換言すると、冷媒保持量の少ない熱源側ユニットの第1絞り装置の開度を相対的に大きくしているので)、冷媒充てん時の均液制御において制御が発散することなく均液制御を行うことができる。また、周囲の空気条件が冷房モードに適した条件の場合、このように均液制御することによって、一方の熱源側ユニットのみで圧縮機の吐出温度が過昇すること(つまり圧縮機の保護制御に入ること)を防止でき、安定な運転を維持しながら短時間での異物回収運転を実施することができる。
なお、本実施の形態3では、第1絞り装置n07の開度の調整量について特に言及しなかったが、例えば第1絞り装置n07の開度を一定量ずつ変更してもよいし、第1絞り装置n07の開度の調整量を|TdSHn−TdSHHa|の関数としてもよい。第1絞り装置n07の開度の調整量を|TdSHn−TdSHHa|の関数とすることにより、冷媒量の偏りに応じた均液制御を行うことができる。
また、本実施の形態3では圧縮機n01の吐出過熱度に基づいて第1絞り装置n07の開度を制御したが、圧縮機n01の吸入過熱度に基づいて第1絞り装置n07の開度を制御してもよい。図2に示すように、圧縮機n01の吐出過熱度及び吸入過熱度は、相関関係が成立するからである。