以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、Tシャツ等の布帛に印刷を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)100と、プリンタ100で使用されるインクカートリッジ(以下、単にカートリッジという)1について説明する。
図1を参照して、プリンタ100の概略構成について説明する。プリンタ100は、カートリッジ1から供給されたインクを用いて、印刷ヘッド114により印刷媒体である布帛に印刷を行うことが可能な公知のプリンタである。よって、プリンタ100の構成については簡単に説明する。なお、図1の上下方向、左右方向、および左下方向が、夫々、プリンタ100の上下方向、左右方向および正面(前)側、並びにカートリッジ1の上下方向、左右方向および正面(前端部)側である。
図1に示すように、プリンタ100は、矩形箱状の筐体101を有する。筐体101の内部の左右方向略中央下部に、一対のガイドレール102が前後方向に延びている。プラテン支持台103は、ガイドレール102により、ガイドレール102に沿って前後方向に移動可能に支持されている。プラテン支持台103上面の左右方向略中央には、取り換え可能なプラテン104が固定されている。プラテン104は、平面視略五角形の板体であり、その上面に、例えばTシャツなどの布帛を載置するためのものである。詳細は図示しないが、プラテン104が固定されたプラテン支持台103は、プラテン駆動モータやベルト伝達機構を含むプラテン駆動機構により、ガイドレール102に沿って前後方向に移動される。
筐体101の前後方向略中央、且つ、プラテン104の上方には、一対のガイドレール112が左右方向に延びている。キャリッジ113は、ガイドレール112によって、ガイドレール112に沿って左右方向に移動可能に支持されている。キャリッジ113の下部には印刷ヘッド114が固定されている。詳細は図示しないが、印刷ヘッド114を備えたキャリッジ113は、キャリッジ駆動モータやベルト伝達機構を含むキャリッジ駆動機構によって、ガイドレール112に沿って左右方向に移動される。印刷ヘッド114には、チューブ182(図17参照)を介して、筐体101内に設けられたホルダユニット150(図14参照)に装着されたカートリッジ1からインクが供給される。印刷ヘッド114の底面には複数個の微細なノズルが設けられており、圧電素子の駆動によりノズルから下向きにインクの液滴が吐出されることで、プラテン104上に載置された布帛に印刷が行われる。
筐体101前面の右下部には、横長長方形状の開口120が設けられている。開口120の奥側に設置された台座部(図示略)に、図14に示すホルダユニット150が固定されている。カートリッジ1は、開口120を通してホルダユニット150の各ホルダ159に装着される。なお、本実施形態のホルダユニット150には8個のカートリッジ1が装着可能であり、白インクのカートリッジ1が4個と、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの4色のカートリッジ1が1個ずつ装着される。ホルダユニット150の詳細な構成については後述する。
図2〜図11を参照して、プリンタ100で使用されるカートリッジ1の構成について説明する。カートリッジ1は、前後方向を長手方向とする薄型略箱状の樹脂性のケース2(図2〜図3参照)と、ケース2に収容されたインクパック7(図7〜図8参照)とを備えている。以下に、ケース2とインクパック7の構成について、順に説明する。なお、白、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの5色のカートリッジ1は、インクパック7に収容される液体のインクの色と、後述する第一中間脚部303、第二中間脚部304の配置が異なるのみで、他の構成は全て同じである。
まず、図2〜図6を参照して、ケース2全体の概略構成について説明する。図6に示すように、ケース2は、本体部3および蓋部4を含む。本体部3は、ケース2の左側面、底面、上面、背面および前面を夫々形成する薄板状の左壁30、底壁31、上壁32、後壁33、および前壁34を含む。つまり、本体部3は、右側(図6では上側)が開放された箱状である。なお、以下では、底壁31、上壁32、後壁33、および前壁34を総称して周壁31〜34という。図4に示すように、左壁30は、ケース2を左方から側面視した場合、すなわち、左壁30の最大面積部(図4で示された面)に直交する方向から見て五角形状であり、長方形の直角を成す4つの角のうち、ケース2の後端部下側(図4では左下)にある角を含む角部が斜めに切り取られたような形状を有する。つまり、左壁30は、ケース2を側面視した場合、水平方向に延びる2つの平行に対向する長辺、上下方向に延びる2つの平行に対向する短辺、および、短い方の長辺と短い方の短辺とを繋ぐ斜辺とを有する。
図6に示すように、底壁31、上壁32、後壁33、および前壁34は、夫々、左壁30に対して略垂直に、同一方向に同一の長さで延びている。底壁31は、左壁30の下端部、つまり一対の長辺のうち短い方に接続している。上壁32は、左壁30の上端部、つまり長い方の長辺に接続している。後壁33は、背面部331および斜面部332を含む。背面部331は、左壁30の一対の短辺のうち短い方に接続する。斜面部332は、左壁30の斜辺に接続し、底壁31と背面部331とを繋ぐ。前壁34は、左壁30の前端部、つまり長い方の短辺に接続し、底壁31と上壁32とを繋ぐ。前壁34は、左壁30の前端部、つまり一対の短辺のうち長い方に接続している。上壁32と背面部331、上壁32と前壁34、および底壁31と前壁34とは、夫々、直角を成すように接続している。一方、斜面部332と底壁31とが成す角、および斜面部332と背面部331とが成す角は、夫々、鈍角である。
底壁31は、矩形板状の壁である。上壁32は、右前端部の一部が矩形状に切り欠かれた形状の、全体としては矩形板状の壁である。前壁34は、右上端部の一部が矩形状に切り欠かれた形状の、全体としては矩形板状の壁である。背面部331および斜面部332は、夫々、矩形の中央部が左壁30側に突出した形状を有する。背面部331と斜面部332には、夫々、後述する口栓用開口335と第一露出開口336が設けられている。
図6に示すように、左壁30に対向し、ケース2の右側面(図6では上側の面)を形成する蓋部4は、本体部3の左壁30と略同一形状を有する薄板状の部材である。つまり、蓋部4は、ケース2を右方から側面視した場合、すなわち、蓋部4の最大面積部(図6で示された面)に直交する方向から見て五角形状であり、水平方向に長い長方形の直角を成す4つの角のうち、ケース2の後端部下側(図6では左上)にある角を含む角部が斜めに切り取られたような形状を有する。
左壁30と蓋部4が互いに対向するように蓋部4が本体部3に接合されることで、ケース2が形成される。蓋部4を本体部3に接合する方法は特に限定されない。図示はしないが、例えば、本体部3と蓋部4に、夫々、係合フックと係合孔とを設け、係合フックを係合孔に挿入することで、蓋部4を本体部3に接合してもよい。係合フックではなく、係合ピンと係合孔を用いて接合してもよい。本体部3と蓋部4とを溶着により固定しても良い。
以下では、ケース2の後端部(つまり、後壁33)と、左壁30および蓋部4の長手方向(ケース2の前後方向)に直交する方向(つまり、上下方向)にある両端部(つまり、上端部と下端部)とで形成される一対の角部を、夫々、第一角部21、第二角部22というものとする。本実施形態では、ケース2の後端部の上端部において上壁32と背面部331とが形成する角部が第一角部21であり、後端部の下端部において斜面部332と底壁31とが形成する角部が第二角部22である。また、斜面部332と背面部331とが形成する角部を、第三角部23というものとする。図4に示すように、カートリッジ1では、第一角部21および第三角部23は、ケース2の長手方向(前後方向)において同一位置にある。一方、第一角部21および第三角部23と、第二角部22とは、ケース2の長手方向において、互いに異なる位置にある。具体的には、第二角部22は、第一角部21および第三角部23よりも後方にずれた位置にある。
以下に、ケース2の細部について順に説明する。まず、ケース2に設けられた脚部について説明する。図2に示すように、左壁30には、外面(ケース2の左側面)から突出する5つの突出部が設けられている。具体的には、左壁30の長手方向に位置する後端部に、上下方向(上壁32と底壁31の対向方向)に互いに離間した二つの突出部が設けられている。これらの突出部から前方に離間した位置に、上下方向に互いに離間した二つの突出部が設けられている。更に、左壁30の長手方向において後端部の反対側に位置する前端部の近傍に、一つの突出部が設けられている。
左壁30の後端部において、斜面部332と接続する斜辺部に設けられた突出部を、第一後端脚部301という。左壁30の後端部において、背面部331と接続する短い方の短辺部(以下、直線部という)に設けられた突出部を、第二後端脚部302という。第一後端脚部301から前方(図2の右上方向)に離間した位置に設けられた突出部を、第一中間脚部303という。第二後端脚部302から前方に離間した位置に設けられた突出部を、第二中間脚部304という。左壁30の前端部近傍の突出部を、前端脚部305という。なお、以下では、第一後端脚部301、第二後端脚部302、第一中間脚部303、第二中間脚部304、および前端脚部305を総称する場合、単に脚部301〜305という。また、第一後端脚部301、第二後端脚部302、第一中間脚部303、第二中間脚部304、および前端脚部305のうち一部を指す場合、単に脚部301〜303等というものとする。
第一後端脚部301は、後述するインクパック7の口栓72(図7参照)が収納される空間(収納空間)を形成する壁部である。図6に示すように、第一後端脚部301は、左壁30の斜辺部から前方方向に延びる口栓72の大きさより僅かに大きい領域を、本体部3と蓋部4とが接合された場合に蓋部4に対向する内面側から外面側に凹ませることで形成されている。従って、第一後端脚部301は、ケース2の内側からみれば凹部であり、外側からみれば突出部である。第一後端脚部301は、内側からみた凹部の底壁部分の中央部に、矩形状の係合孔307を有する。係合孔307は、後述するインクパック7の口栓72(図7参照)を本体部3に対して位置決めし、固定するための開口部である。つまり、第一後端脚部301は、口栓72の固定部としても機能する。図2に示すように、外側からみた第一後端脚部301の突出面は、左壁30の外面(ケース2の右側面)に対して略平行な平面部316を形成する。
また、第一後端脚部301は、左壁30の下端部(底壁31側の端部)からは離間した位置にある。より詳細には、第一後端脚部301は、カートリッジ1が後述するホルダ159(図16参照)に装着された場合、下レール部171に接触しない位置に設けられる。よって、第一後端脚部301の左壁30の下端部からの離間距離は、下レール部171の左下案内部173の幅よりも大きい。
第二後端脚部302は、ケース2の内部に配置された内部部品、詳細には、後述する可動部材50(図10参照)の一部が移動可能な空間(可動空間)を形成する壁部である。図6に示すように、第二後端脚部302は、左壁30の後端部の直線部から前方方向に延びる所定領域を、左壁30の内面側から外面側に凹ませることで形成されている。なお、本実施形態では、第二後端脚部302を形成するための所定領域は、第一後端脚部301の口栓72の大きさに対応する領域よりもやや小さい。しかしながら、この領域は、可動部材50の可動範囲に応じて定められればよい。第二後端脚部302は、第一後端脚部301と同様、ケース2の内側からみれば凹部であり、外側からみれば突出部である。図2に示すように、外側からみた第二後端脚部302の突出面は、左壁30の外面(ケース2の右側面)に対して略平行な平面部317を形成する。
また、第二後端脚部302は、左壁30の上端部(上壁32側の端部)からは離間した位置にある。より詳細には、第二後端脚部302は、カートリッジ1が後述するホルダ159(図16参照)に装着された場合、上レール部161に接触しない位置に設けられる。よって、第一後端脚部301の左壁30の上端部からの離間距離は、上レール部161の左上案内部163の幅よりも大きい。
図4に示すように、第一中間脚部303および第二中間脚部304は、左壁30の長手方向(左壁30の前後方向、図4の左右方向)において、ほぼ同一位置に設けられている。本実施形態では、第一中間脚部303および第二中間脚部304は、左壁30の前後方向において中央よりかなり後端部(図4の左側の端部)寄りに配置されているが、第一後端脚部301および第二後端脚部302からは前方(図4の右側)へ離間した位置にある。図4等に示すケース2では、第一中間脚部303の上下方向(上壁32と底壁31の対向方向、図4の上下方向)の長さは、第二中間脚部304の上下方向の長さよりも長い。
また、第一中間脚部303および第二中間脚部304は、上下方向に離間しており、第二中間脚部304は、第一中間脚部303よりも上方(上壁32側)に位置する。第一中間脚部303の下端部(底壁31側の端部)は、第一後端脚部301の下端部よりも上方に位置し、第二中間脚部304の上端部(上壁32側の端部)は、第二後端脚部302の上端部よりも下方に位置する。つまり、第一中間脚部303および第二中間脚部304は、夫々、カートリッジ1が後述するホルダ159(図16参照)に装着された場合、下レール部171および上レール部161に接触しない位置に設けられている。
図6に示すように、第一中間脚部303および第二中間脚部304も、左壁30の一部を内面側から外面側に凹ませることで形成されている。つまり、第一後端脚部301および第二後端脚部302と同様、ケース2の内側からみれば凹部であり、外側からみれば突出部である。
第一中間脚部303および第二中間脚部304は、ケース2内のインクパック7に収容されたインクの色を示す色指標部として機能する。具体的には、左壁30において、第一中間脚部303と第二中間脚部304が設けられる範囲は、インクの色に応じて予め定められている。本実施形態では、カートリッジ1は、インクの色が白の場合と、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの有彩色の場合の二種類に分類されており、白の場合と有彩色の場合とで、第一中間脚部303と第二中間脚部304が設けられる範囲が異なっている。
より詳細には、図4に示すように、第二後端脚部302の下端部(第三角部23側の端部)および第三角部23から左壁30の長手方向に沿って前方(図4の右方向)へ延びる帯状の領域を、判別領域Rとする。例えば、インクの色が白の場合は、図4に示す例のように、第一中間脚部303および第二中間脚部304は、判別領域Rに交差しないように配置される。よって、この例では、第二中間脚部304の方が、第一中間脚部303よりも、上下方向の長さが短く形成されている。一方、インクの色が有彩色の場合は、判別領域Rに交差するように、第一中間脚部303および第二中間脚部304のいずれかが配置される。よって、図示はしないが、この場合、例えば、第二中間脚部304を、判別領域Rをまたぐように、図4の例よりも上下方向に長く形成するとともに、第一中間脚部303を短く形成してもよい。
上記の配置条件を言い換えると、判別領域Rにかかる脚部の有無によってインクの色が白か有彩色かが判別できるように、色指標部として機能する脚部が設けられればよい。従って、第一中間脚部303および第二中間脚部304の配置関係は、上記の例に限られない。例えば、インクの色が白であれば、判別領域Rにかからない範囲に、第一中間脚部303のみが設けられてもよい。また、インクの色が有彩色であれば、判別領域Rに交差する範囲に、第一中間脚部303および第二中間脚部304いずれか一方のみが設けられてもよいし、第一中間脚部303および第二中間脚部304の両方が設けられてもよい。
このように色指標部となる脚部を設ける範囲を規定することで、ユーザが、左壁30の判別領域Rにかかる脚部の有無を視認し、ケース2の内部に収容されているインクの色が白なのか有彩色なのかを判別することが可能となる。なお、判別領域Rは、第二後端脚部302の下端部と第三角部23からケース2の右方向に延びる帯状の領域であるから、ユーザは、第二後端脚部302の下端部と第三角部23とを目印として、判別領域Rの位置を容易に認識できる。従って、判別領域Rにかかる脚部があるか否についても、容易に認識することができる。図1に示すプリンタ100では、8個のホルダ159(図16参照)のうち4個が白インク用で、他の4個が有彩色用である。従って、このように色指標部を設けることで、ユーザが、誤って白インクが収容されたカートリッジ1を有彩色用のホルダ159に装着してしまったり、有彩色のインクが収容されたカートリッジ1を白インク用のホルダ159に装着してしまったりする可能性を低減できる。
図4に示すように、前端脚部305は、左壁30の前端部(図4の右側の端部)の近傍、且つ、前端部からは離間した位置に設けられている。図4等に示すケース2では、前端脚部305の上端部と下端部の位置は、夫々、第二中間脚部304の上端部と第一中間脚部303の下端部の位置と同じである。図6に示すように、前端脚部305も、左壁30の一部を内面側から外面側に凹ませることで形成されている。つまり、脚部301〜304と同様、ケース2の内側からみれば凹部であり、外側からみれば突出部である。
また、図2に示すように、脚部303〜305は、夫々、ケース2の外側からみた場合、左壁30の外面(ケース2の右側面)に対して略平行な平面部342、347、352と、平面部352から左壁30の外面に向けてなだらかに傾斜する傾斜部341、346、351を有する。傾斜部341、346、351は、プリンタ100に先に装着される側である左壁30の後端側から、後に装着される側である前端側に向けて、脚部303〜305の突出高さが徐々に大きくなるように形成されている。本実施形態では、脚部301〜305の左壁30の外面からの突出高さは同一である。つまり、脚部301〜305の平面部316、317、342、347、352は、同一平面にある。
カートリッジ1における脚部301〜305の他の作用と効果について説明する。前述したように、脚部301〜305は全て、左壁30の外面からケース2の外側方向へ突出し、その突出高さは同一で、その突出面は同一平面にある。従って、脚部301〜305が突出する左壁30を下、蓋部4を上にした状態で、カートリッジ1が平面上に載置されると、平面部316、317、342、347、352が平面に接し、カートリッジ1は、脚部301〜305により、左壁30全体が平面から離間した状態で安定して支持される。
図4に示すように、左壁30の後端部に設けられた第一後端脚部301および第二後端脚部302は、互いに離間しており、また、夫々、左壁30の下端部および上端部から離間した位置にある。従って、ユーザは、左壁30の後端部の第一後端脚部301と第二後端脚部302の間、左壁30の下端部、または上端部からこれらの脚部周りで平面と左壁30との間に生じた隙間に指を差し入れ、カートリッジを容易に取り上げることができる。また、第一後端脚部301は、斜面部332に対応する左壁30の斜辺部に設けられ、第二後端脚部302は、背面部331に対応する直線部に設けられている。よって、第一後端脚部301と第二後端脚部302とは、左壁30の長手方向において位置がずれており、両者が直線部に設けられる場合に比べ、離間距離がより長くなっている。つまり、第一後端脚部301と第二後端脚部302の間からも指が差し込みやすく構成されている。
また、脚部303〜305も、夫々、左壁30のいずれの端部からも離間した位置にある。従って、ユーザは、これらの脚部の周囲でも、左壁30の下端部、上端部または前端部から、平面と左壁30との間に生じた隙間に指を差し入れ、カートリッジを容易に取り上げることができる。
一方、カートリッジ1が、蓋部4を下、左壁30を上にして平面に載置された場合、ユーザは、脚部301〜305の少なくとも一つを指で掴んだり、指を掛けて移動したりできるので、カートリッジ1の取扱いの自由度が向上する。なお、前述したように、脚部301〜304は、左壁30が平面から離間した状態でカートリッジ1を支持する機能以外の機能も有している。このように、同じ部材で複数の異なる機能を発揮させることで、夫々を別の専用部材として設ける場合に比べ、簡単な構成とすることができる。
ケース2に設けられた各種開口部について説明する。図2に示すように、ケース2の後壁33には、二つの開口部が設けられている。より詳細には、斜面部332の第一後端脚部301に対応する位置に口栓用開口335が設けられ、背面部331の第二後端脚部302に対応する位置に第一露出開口336が設けられている。図6に示すように、口栓用開口335は、斜面部332が蓋部4と接合される側の端部(図6では上端部)から左壁30に向けて延びる凹部として、斜面部332に形成されている。斜面部332に直交する方向からみて、口栓用開口335は、U字状である。口栓用開口335は、左壁30に凹部として設けられた第一後端脚部301の底壁部分までは達しておらず、この底壁部分と斜面部332との接続部と、口栓用開口335の左壁30側の端部との間には、斜面部332の一部が連結壁部337として残されている。詳細は後述するが、口栓用開口335は、ケース2内に収容されたインクパック7(図8参照)からインクを導出するための開口部であり、インクパック7は、口栓72が口栓用開口335に臨むようにケース2内に配置される。
図6に示すように、第一露出開口336は、背面部331が蓋部4と接合される側の端部(図6では上端部)から左壁30に向けて延びる凹部として、背面部331に形成されている。背面部331に直交する方向からみて、第一露出開口336は、矩形状である。第一露出開口336は、左壁30に凹部として設けられた第二後端脚部302の底壁部分に達する。つまり、背面部331の左右方向(図6では上下方向)の幅全体に亘る開口部である。詳細は後述するが、第一露出開口336は、可動部材50(図10参照)の一部である露出部53を露出し、ユーザによる露出部53の位置確認を可能とするための開口部である。
更に、図3に示すように、蓋部4の後端部(図3の右側の端部)の近傍に、蓋部4の長手方向に沿って延びるスリット状の第二露出開口45が設けられている。第二露出開口45からは、可動部材50(図10参照)の一部である腕部52の一部と、ケース2内に収容されたインクパック7(図8参照)のインク袋71の一部が目視可能である。よって、ユーザは、カートリッジ1の蓋部4が上方に向いている場合等には、第二露出開口45を通してインク袋71を目視し、インクの色やインクの残量を確認することができる。また、カートリッジ1の製造時等に、作業者は、腕部52が第二露出開口45から見えるか否かを確認することで、可動部材50の付け忘れを防止することができる。
ケース2に設けられた把手部40について説明する。図3に示すように、ケース2の前端部の右上角部(図3では蓋部4の左上の角部)には、把手部40が設けられている。把手部40は、ケース2の外面よりも内側方向に凹んだ凹部41と、凹部41から突出する突出部42を含む。
本実施形態の凹部41は、ケース2の前端部側にある蓋部4の端部の上部(図3では左上)の角部の扇形の領域を、蓋部4の外面(ケース2の右側面、図3で示されている最大面積の面)からケース2の内側方向、つまり、蓋部4に対向する左壁30に向けて凹ませることで形成されている。よって、凹部41は、蓋部4の外面に直交する方向からみて、凹部の底面を形成する扇形の底部411と、底部411の円弧状の端部から立ち上がる、円弧状に湾曲した壁部である周壁部412から成る。本体部3の前壁34の右上の角部は凹部41に対応して矩形状に切り欠かれた形状に形成されている。上壁32の前端部右側の角部は凹部41に対応して矩形状に切り欠かれた形状に形成されている。よって、凹部41は、ケース2の外面のうち右側面、前面、および上面よりもケース2の内側方向に凹んだ部位となり、右方向、前方向、および上方向の三方向に開口する。
突出部42は、扇型の底部411において、扇の要に相当する位置、つまり、蓋部4の前端部上部の角に設けられている。突出部42は、凹部41の底部411からケース2の外面方向、つまり右方向に突出する。突出部42の底部411からの突出高さは、底部からケース2の右側面(図3で示されている最大面積の面)までの距離以下である。つまり、突出部42は、ケース2の右側面からは突出しない。これにより、複数のカートリッジ1が隙間なく並べられたり積み上げられたりしても、突出部42が隣のカートリッジ1の外面に干渉することがない。本実施形態の突出部42は、中空部を有する円筒状の軸部であり、凹部41と共に蓋部4と一体成形されている。突出部42を形成する円筒状の壁は、底部411につながっている。
このような構成の把手部40は、特に、複数のカートリッジ1が隙間なく、または僅かな隙間を空けて並べられた状態で、ユーザが任意の一つのカートリッジ1を取り出す場合に有用である。凹部41によって、ケース2の前端部の右上の角部において三方向に隙間が確保され、突出部42によって、指等を掛ける部位が提供されるためである。並べられた複数のカートリッジ1を取り出す場合の把手部40の効果については後述する。
図7〜図9を参照して、ケース2に収容されるインクパック7の構成について説明する。図8に示すように、インクパック7は、本体部3の周壁31〜34により囲まれた領域に収容される。インクパック7は、インクを収容するインク袋71と、インク袋71に設けられた口栓72を備えている。本実施形態のインク袋71は、可撓性を有する2枚の長方形状の樹脂性シートを、シートの一面同士が対向した状態で重ね合わせ、4辺に沿った周囲部716を熱溶着(熱シール)することで形成された袋状の容器である。インクは、周囲部716に囲まれた空間であるインク収容部717の内部に収容される。インク収容部717は、シート面、即ち、その最大面積部(図8で示された面)に直交する方向から見て略長方形である。ただし、インク袋71は、ケース2の把手部40(図3参照)に対応する角部のみ、円弧状に切り欠かれた形状とされている。インク収容部717のシート面は、左壁30と蓋部4(図6参照)の内面に沿って伸展している。
なお、インク袋71は、対向配置された可撓性を有する2層のシートを含み、シート間にインクを収容可能な空間が形成された袋状の容器であればよい。よって、例えば、1枚の長方形状のシートを半分に折曲げて2層とし、折曲げ部以外の3辺に沿って2層を接合することでインク袋71を形成してもよい。また、対向する2枚のシートの3辺に沿って2枚を接合し、各シートの残る1辺を別のシートと接合して、底部を有するインク袋71としてもよい。対向する2枚のシートの4辺が、夫々、マチとなる別のシートと接合されたインク袋71であってもよい。更に、シートの接合方法は溶着に限られず、例えば、接着等の他の方法を用いてもよい。
図8に示すように、口栓72は、本体部721と、本体部721の一端側において外周面から互いに反対方向に突出する2つの羽根状の連結部722とを備えている。本体部721は略円筒状であるが、本体部721の連結部722が設けられているのとは反対側の先端部の外形は、矩形ブロック状に形成されている。口栓72は、本体部721(より詳細には、後述する中空部700)の軸線Xがインク袋71の長手方向と略平行になるように、インク袋71に設けられている。また、軸線Xは、軸線Xに直交する方向(インク袋71の短手方向)におけるインク袋71の一端部寄りに位置する。本実施形態では、口栓72は、インク袋71の4つの角部のうち、円弧状の角部の対角に位置する角部の近傍に設けられている。本実施形態では、口栓72は、連結部722を含む本体部721の一端部が、インク袋71を形成する2枚のシートの間に挿入され、周囲部716と一体的に溶着されることで、インク袋71に固定されている。周囲部716と溶着されていない本体部721の他の部分は、インク袋71の長手方向にある一端部からインク袋71の外方へ突出している。
図9に示すように、本体部721は、その内部に円筒状の中空部700を有する。中空部700は、インク袋71のインク収容部717に連通する第一開口701から、インク袋71の外部に開口する第二開口702まで通じている。中空部700の第二開口702側の端部には、円柱状のゴム栓723が挿入されており、第二開口702はゴム栓723で塞がれている。このように、インクは、密閉状態のインク収容部717内に収容されている。なお、口栓72は、中空部700によってインク収容部717と外部とが通じるようにインク袋71に設けられていればよく、その固定方法は溶着に限られない。よって、例えば、口栓72は、インク袋71と一体的に形成されていてもよい。また、図7に示すように、口栓72の矩形ブロック状に形成された部分には、周方向外側に突出する角柱状の係合突起725が設けられている。係合突起725は、口栓72を本体部3(詳細には、左壁30)に対して位置決めし、固定するための部材である。
図7〜図9を参照して、ケース2とインクパック7との配置関係の詳細について説明する。図7に示すように、インクパック7は、口栓72が第一後端脚部301を形成する凹部内に収納されるようにケース2内に配置される。そして、第一後端脚部301に設けられた係合孔307に、口栓72の係合突起725が嵌合されることで、口栓72が本体部3に固定される。なお、本実施形態では、インク袋71の左壁30内面に対向するシート面の一部は、左壁30内面に接着され、インクパック7が本体部3内に確実に固定されている。第一後端脚部301を口栓72の収納空間とすることで、ケース2の幅(右側面から左側面までの距離)をできる限り狭く保ちながら、口栓72が配置される部分のみ、口栓72の径に応じて幅を広げることができる。従って、ケース2全体をできる限り薄型でコンパクトな形状とすることができる。また、インクパック7を、蓋部4ではなく、脚部301〜305が設けられた本体部3に固定することで、図7に示すように、カートリッジ1が、左壁30を下にして平面に載置された際の姿勢が安定する。
また、図8に示すように、インクパック7は、口栓72の軸線Xがケース2の長手方向と略一致するように、ケース2に収容される。図9に示すように、インクパック7は、口栓72の軸線X方向において、ケース2の第二角部22が、口栓72の第二開口702側の先端部724(ゴム栓723の先端部)に対して第一開口701側に位置し、第三角部23が、先端部724に対して第一開口701とは反対側に位置するようにケース2に収容される。つまり、第二角部22と第三角部23を最短で結ぶ線Lは、軸線Xに対して斜めに交差する。底壁31は、第二角部22から口栓72の軸線X方向に延びている。口栓72の下方に位置する底壁31の後端部分(第二角部22の前側部分、図9では右側部分)を、受け面部310という。受け面部310は、口栓72から漏れ出たインクを下方で受けるための面部として機能する。
また、インクパック7は、口栓72の先端部724が、線Lよりもケース2の内側方向に位置するように配置される。先端部724は、斜面部332の内面(図9における右面)に対して軸線X方向において隙間をあけて位置し、斜面部332と先端部724の間(図9における先端部724の下方)を、インクが移動可能となっている。なお、本実施形態では、第二角部22と第三角部23との間には斜面部332が設けられており、斜面部332の外面333は、線L上にある。そして、先端部724は斜面部332の内面よりも内側に位置しているが、先端部724は、線L(外面333)よりもケース2の内側方向に位置していればよい。斜面部332の第二角部22から口栓用開口335まで延びる部分は、受け面部310が受けたインクがケース2の外部に漏れ出るのを防ぐ面部として機能する。
また、本実施形態では、線Lの伸長方向および軸線X方向に直交する方向(以下、第一方向という)は、ケース2の左右方向であり、第一方向および軸線X方向に直交する方向(以下、第二方向という)は、ケース2の上下方向である。図2に示すように、ケース2の左右方向の幅(左側面から右側面までの距離)は、上下方向の幅(底面から上面までの距離、または左壁30および蓋部4の高さ)よりも狭い。更に、インクパック7は、軸線Xが、第二方向において、第二角部22を有する側のケース2の一端部寄りに位置するように、ケース2に収容される。本実施形態では、前述したように、第二方向はケース2の上下方向であるから、上下方向において、第二角部22を有する側のケース2の一端部とは、底壁31側の端部(下端部)である。よって、図8に示すように、軸線Xは、ケース2の上下方向において底壁31側の端部寄りにある。
また、図9に示すように、口栓用開口335は、斜面部332において口栓72の第二開口702を臨む位置に設けられている。つまり、口栓用開口335は、口栓72の軸線X上に位置する。前述したように、第二開口702はゴム栓723で塞がれているので、実際には、口栓用開口335はゴム栓723に臨むことになる。
ケース2内に配置されるインクパック7以外の内部部品である可動部材50について説明する。図10および図11に示すように、可動部材50は、ケース2の後方からみるとL字状の部材であって、軸部51と、腕部52と、露出部53とを含む。腕部52は帯状の板部である。腕部52は、長手方向の一端部に軸部51を有する。軸部51は、底壁31の後端部近傍、且つ、蓋部4側の端部近傍に、ケース2の前後方向に沿って固定されている。腕部52は、その板面が左壁30および蓋部4に対向する向きで上壁32に向けて延び、軸部51によって左右方向(図11の矢印A方向)に回動可能に支持されている。軸部51にはねじりばねが装着されており、腕部52は、左壁30の方向(図11の右方向)へ付勢されている。露出部53は、ケース2の前後方向を長手方向として延び、その板面が腕部52の板面に対して左壁30方向に略垂直となるように、右前端部で腕部52の先端部に接続している。露出部53の後端部側は、腕部52から後方に延びている。図11に示すように、露出部53は、第一露出開口336を通して目視可能な位置にある。
カートリッジ1の使用開始時には、インク袋71のインク収容部717(図8参照)にはインクが満量充填されているため、図7に示すように、インク袋71は膨らんだ状態にある。よって、可動部材50の露出部53の左端部(図11では右側の端部)がインク袋71によって押圧され、腕部52は、ばねの付勢力に抗して、軸部51を中心として、図11に示す左側の位置まで蓋部4の方向に回動する。一方、インクの残量が少なくなると、インク袋71が萎んでいくので、それに伴って、露出部53に対する押圧力は弱まり、腕部52は、ばねの付勢力により左壁30の方向に回動する。そして、インクがなくなると、図11に示す右側の位置に至る。このように、露出部53の位置はインクの残量に応じて変化するが、第一露出開口336に連接して、左壁30には第二後端脚部302を設けることで、露出部53の可動空間が確保されている。ユーザは、第一露出開口336から可動部材50の露出部53の位置を確認することで、インク袋71に収容されているインクの残量を確認することができる。このように、可動部材50は、インク残量指標部材として機能する。
図12〜図13を参照して、図2〜図11に示したカートリッジ1とは異なる形状のカートリッジ10について説明する。カートリッジ10は、ケース2の長手方向(前後方向)の長さを、カートリッジ1よりも短くしたものである。カートリッジ10の長さは、カートリッジ1の長さの約半分である。一方、幅(左右方向の長さ)と高さ(上下方向の長さ)は、カートリッジ1と同一である。よって、内部に収容されるインクの量も、カートリッジ1に比べて半量程度である。
カートリッジ10には、カートリッジ1とは異なり、左壁30の前壁34の近傍には、前端脚部305は設けられていない。これは、カートリッジ1のような長尺のケース2では、その寸法バランス上、脚部301〜304のみでは、左壁30全体が載置面から離間した状態でカートリッジ1全体を支持するのは難しいのに対し、カートリッジ10では、脚部301〜304のみで支持できる可能性が高いからである。上記以外のカートリッジ10の構成は、カートリッジ1の構成と基本的に同じである。プリンタ100(図1参照)には、カートリッジ1および10のいずれも装着が可能である。
図14〜図16を参照して、カートリッジ1、10が装着されるホルダユニット150の詳細について説明する。なお、図14ではプリンタ100の筐体101を二点鎖線で示しているが、図15では、筐体101の図示は省略されている。図14および図15に示すように、ホルダユニット150は、フレーム151と、フレーム151に左右方向に等間隔で固定された8個のホルダ159とを備えている。なお、図15の上下方向、左右方向、および紙面表面側が、夫々、ホルダユニット150、フレーム151およびホルダ159の上下方向、左右方向および正面(前端部)側である。
まず、図14および図15を参照して、フレーム151の構成について説明する。図14に示すように、フレーム151は、金属性の板状部材から形成されており、第一当接部152と、第二当接部154と、載置部155とを含む。第一当接部152および第二当接部154は、ホルダ159に装着されたカートリッジ1の後端部の背面部331および斜面部332(図17、図2参照)が夫々当接する部位である。載置部155は、8個のホルダ159(詳細には、下案内部172)が載置される部位である。
載置部155は、筐体101の開口120(図1参照)から、プリンタ100の後方(奥側)へ向かって水平方向に対して僅かに下方向に傾斜して延びている。第二当接部154は、載置部155の後端から後方へ向かって斜め上方に延びている。第一当接部152は、第二当接部154の後端から上方へ向かって、上下方向に対して僅かに後方に傾斜して延びている。なお、第一当接部152の伸展方向は、載置部155の伸展方向に対しては略垂直である。また、フレーム151には、ホルダ159をフレーム151に固定するネジが螺合される複数のネジ穴と、フレーム151を筐体101内に設けられた台座部(図示略)に固定するネジが螺合される複数のネジ穴とが設けられている。
また、図15に示すように、第二当接部154の下部には、固定される8個のホルダ159に対応して、第二当接部154を貫通する8個の円形の開口部157が等間隔で設けられている。開口部157の位置は、ホルダ159にカートリッジ1、10が装着された場合に、カートリッジ1の斜面部332に設けられた口栓用開口335(図2参照)に対向する位置である。なお、図15では、一番左の開口部157は、装着されたカートリッジ1によって隠されている。開口部157は、カートリッジ1からインクを導出するための接続部180の導出針183を通すための開口である。接続部180については後述する。
図16を参照して、ホルダ159の構成について説明する。ホルダ159は、カートリッジ1を保持し、適切な装着位置に案内する部材である。そこで、ホルダ159は、金属製の板状部材から、カートリッジ1、10に対応した形状に形成されている。図16に示すように、ホルダ159は、右案内部160と、上レール部161と、下レール部171とを含む。
右案内部160は、カートリッジ1、10がホルダ159に装着される場合に、ケース2の右端部(より詳細には、蓋部4の外面)を案内する部位である。右案内部160は、カートリッジ1の蓋部4後部の側面視形状に対応する略五角形状の板部である。つまり、右案内部160は、横長長方形の下側にある角の一つが斜めに切り取られたような形状を有している。よって、右案内部160の後端部は、上方部分が上辺に直交して延びる直線部131、下方部分が傾斜部132とされている。右案内部160は、その板面がプリンタ100の上下方向(図14参照)に延びる。右案内部160の長手方向の長さ(直線部131から後述する右受け部167までの長さ)は、図13に示す短い方のカートリッジ10の第一角部21から把手部40の周壁部412の後端(上壁32との接続部分)までの距離よりやや短い程度である。つまり、カートリッジ10がホルダ159に装着された場合、把手部40を含むカートリッジ10の前端部がホルダ159の前端部から突出する長さとされている。
右案内部160の前端には、右受け部167が接続している。右受け部167は、右案内部160の前端から前方へ向かってやや右方へ延びる部位である。右案内部160の直線部131の上端部には、ネジ穴を有し、右方に突出する第一固定片169が接続している。
上レール部161は、右案内部160の上端部に沿って左側に突出する部位である。上レール部161は、右案内部160の上端部から左方へ略垂直に延びる上案内部162と、上案内部162の左端部から下方へ略垂直に延びる左上案内部163とを含む。上案内部162は、カートリッジ1、10がホルダ159に装着される場合に、ケース2の上端部(より詳細には、上壁32の外面)を案内する部位である。左上案内部163は、カートリッジ1、10がホルダ159に装着される場合に、ケース2の左端部(より詳細には、左壁30の外面)の上端部を案内する部位である。
上案内部162の幅(左右方向の長さ)は、ケース2の幅(左側面から右側面までの距離)とほぼ同一である。左上案内部163の幅(上下方向の長さ)は、上案内部162の幅よりやや短い。なお、左上案内部163は、前後方向中央から後方寄りの一部が途切れており、そこに、上バネ部材168が設けられている。上バネ部材168は、ホルダ159に装着されたカートリッジ1、10を右方に押圧して押える板バネを備えている。
上案内部162の前端には、上受け部164が接続している。上受け部164は、上案内部162の前端から前方へ向かってやや上方に延びる部位である。上案内部162の上面の上受け部164の背後には、ネジ穴を有し、上方に突出する第二固定片166が設けられている。左上案内部163の前端には、左上受け部165が接続している。左上受け部165は、左上案内部163の前端から前方へ向かって一旦やや左方へ延びた後、斜め後方へ屈曲する、ホルダ159上方から見た場合、V字状をなす部位である。
下レール部171は、右案内部160の下端部に沿って左側に突出する部位である。下レール部171は、右案内部160の下端部から左方へ略垂直に延びる下案内部172と、下案内部172の左端部から上方へ略垂直に延びる左下案内部173とを含む。下案内部172は、カートリッジ1、10がホルダ159に装着される場合に、ケース2の下端部(より詳細には、底壁31の外面)を案内する部位である。左下案内部173は、カートリッジ1、10がホルダ159に装着される場合に、ケース2の左端部(より詳細には、左壁30の外面)の下端部を案内する部位である。
下案内部172は、上案内部162に対向して平行に延びている。上案内部162と下案内部172との離間距離は、ケース2の上下方向の高さ(上面から底面までの距離)とほぼ同一である。下案内部172の幅(左右方向の長さ)は、ケース2の幅(左側面から右側面までの長さ)とほぼ同一である。左下案内部173の幅(上下方向の長さ)は、上案内部162の幅よりやや短い。なお、左下案内部173は、前後方向中央から後方寄りの一部が途切れており、そこに、上バネ部材168と同様の下バネ部材178が設けられている。下バネ部材178も、ホルダ159に装着されたカートリッジ1,10を右方に押圧して押える板バネを備えている。
下案内部172の前端部の右端には、ネジ穴を有し、右方に突出する第三固定片176が設けられている。また、下案内部172の、下バネ部材178の後部に対応する位置には、ネジ穴を有し、左方に突出する第四固定片177が設けられている。左下案内部173の前端には、左下受け部174が接続している。左下受け部174は、左下案内部173の前端から前方へ向かって一旦やや左方へ延びた後、斜め後方へ屈曲する、ホルダ159上方から見た場合、V字状をなす部位である。
ホルダ159にカートリッジ1、10が装着される場合、最初にカートリッジ1、10の後端部がホルダ159の前端部から挿入され、右案内部160、上レール部161および下レール部171によって、夫々、ケースの右側面(蓋部4の外面)、上面(上壁32の外面)、および下面(底壁31の外面)が案内されながら、ホルダユニット150の奥側に向けて移動する。つまり、右案内部160の長手方向、および上レール部161、下レール部171の伸展方向が、プリンタ100におけるカートリッジ1、10の装着方向である。
また、上案内部162の装着方向上流側にある前端には上受け部164が接続しているので、ホルダ159の先端部では、上受け部164と下案内部172との上下方向の離間距離は、装着方向の下流側から上流側に向けて広くなる。更に、左上案内部163、左下案内部173の前端には、夫々、左上受け部165、左下受け部174が接続しており、右案内部160には右受け部167が接続している。従って、ホルダ159の先端部では、左上受け部165、左下受け部174と右受け部167との左右方向の離間距離も、装着方向上流側ほど広くなる。このように、ホルダ159の先端部は、全体的に装着方向上流側ほどホルダ159に囲まれる領域(開口)が広がっている。
ホルダ159のフレーム151への固定について説明する。8個のホルダ159は、夫々、下レール部171の下案内部172が載置部155に載置され、上レール部161の後端と右案内部160の直線部131とが第一当接部152に当接し、下レール部171の後端と右案内部160の傾斜部132とが第二当接部154に当接するように、フレーム151の所定位置に等間隔で配置される。前述したホルダ159の第一固定片169、第三固定片176、第四固定片177には、夫々、ネジ穴が設けられている。また、フレーム151の第一当接部152と載置部155には、各固定部に対応する位置にネジ穴が設けられている。各固定部のネジ穴およびフレーム151のネジ穴にネジが順次締結されることで、ホルダ159がフレーム151に固定される。
更に、上案内部162の上方に突出する第二固定片166は、8個のネジ穴を有する固定板158に固定される。具体的には、フレーム151に固定された8個のホルダ159の第二固定片166に後方から当接するように、フレーム151の左右方向の長さと同じ長さを有する固定板158が配置され、各固定部のネジ穴および固定板158のネジ穴にネジが順次締結されることで、ホルダ159が固定板158に固定される。このようにして、8個のホルダ159がフレーム151に固定され、更に固定板158に固定されることで、図14に示すホルダユニットが完成する。ホルダユニット150は、載置部155の前端がプリンタ100の開口120の下端部に沿って配置された状態で、プリンタ100の開口120の奥側に設置された台座部(図示略)に固定される。
図15および図17を参照して、プリンタ100のホルダユニット150奥側に設けられた接続部180について説明する。図17に示すように、接続部180は、円筒状の固定部181と、固定部181に接続されたチューブ182と、インクを導出するための導出針183とを含む。なお、実際には、固定部181はプリンタ100内で固定されているが、固定部分の図示は省略されている。接続部180は、8個のホルダ159に対応して、8個設けられている。図15を参照して前述したように、第二当接部154は、8個の円形の開口部157を有する。固定部181の前端側の一部は、開口部157を通って第二当接部154よりも前方へ突出している。固定部181の前端中央部から、導出針183が突出している。チューブ182の一端は、固定部181の後端側に接続されており、その他端は印刷ヘッド114(図1参照)に接続されている。
図14および図17〜図20を参照して、カートリッジ1のプリンタ100への装着について説明する。なお、図17〜図19では、プリンタ100の図示は省略されている。また、以下の説明ではカートリッジ1を例示するが、カートリッジ10のプリンタ100への装着も同様である。
カートリッジ1をプリンタ100に装着する場合、ユーザは、図14に示すように開口120に臨むホルダ159のいずれかにカートリッジ1を挿入する。このとき、ユーザは、図17に示すように、カートリッジ1の長手方向と、上レール部161、下レール部171の伸展方向(装着方向)とを一致させた状態で、カートリッジ1の底壁31を下側にして、口栓用開口335(図8参照)が設けられた後壁33側から、カートリッジ1を挿入する。
前述したように、後壁33は、上壁32から垂直下方に伸びる背面部331と、背面部331から下方に向けて斜め前方に底壁31まで延びる斜面部332とを含む。よって、上壁32と背面部331が形成する第一角部21よりも、斜面部332と底壁31が形成する第二角部22の方が、カートリッジ1の前端側(図17の右側)、すなわち、装着方向において上流側にある。一方、ホルダ159の右案内部160の先端部(右受け部167)と、上レール部161の先端部(上受け部164、左上受け部165)と、下レール部171の先端部(左下受け部174)とは、装着方向において同一位置にある。従って、ユーザが、カートリッジ1の長手方向と装着方向とが一致した状態で、カートリッジ1を装着方向下流側に向けて移動させると、最初に、第一角部21とその下方に延びる背面部331が、上レール部161の先端部と右案内部160の先端部に到達する。上受け部164、左上受け部165、右受け部167により囲まれる領域(開口)は、装着方向上流側ほど大きくなっているので、第一角部21は、スムーズに挿入される。
ユーザがカートリッジ1を装着方向下流側に更に押し込むと、第一角部21は、上受け部164、左上受け部165、右受け部167を通過し、図17に示すように、上案内部162、左上案内部163の前端に到達する。前述したように、上案内部162の幅は、ケース2の幅とほぼ同一であるから、第一角部21は、上案内部162、左上案内部163の前端に接触して抵抗を受ける。このとき、ユーザは、カートリッジ1がホルダ159に接触し、抵抗を受けているという感触を得る。なお、カートリッジ1の左壁30の外面から左方に突出する第二後端脚部302が背面部331に連接して設けられているが、前述したように、第二後端脚部302の左壁30の上端部からの離間距離は、左上案内部163の幅よりも大きいため、第二後端脚部302は、左上受け部165や左上案内部163とは接触しない。
ユーザがカートリッジ1を更に押し込むと、斜面部332の第二角部22の近傍にある部位が、下レール部171の左下受け部174に進入する。そして、この部位が左下受け部174を通過すると、図18に示すように、第二角部22が下案内部172、左下案内部173の前端に到達する。前述したように、上案内部162と下案内部172との離間距離は、ケース2の上下方向の高さとほぼ同一であるから、第二角部22は、下案内部172、左下案内部173の前端に接触して抵抗を受ける。このとき、ユーザは、カートリッジ1がホルダ159に接触したという二度目の感触を得る。その後、カートリッジ1は、右側面、上面、底面、左側面の上端部および下端部が、夫々、ホルダ159の右案内部160、上案内部162、下案内部172、左上案内部163および左下案内部173に沿って、装着方向下流側(プリンタ100の奥側)にスムーズに案内されていく。
なお、カートリッジ1の左壁30の外面から左方に突出する第一後端脚部301が斜面部332に連接して設けられているが、前述したように、第一後端脚部301の左壁30の下端部からの離間距離は、左下案内部173の幅よりも大きいため、第一後端脚部301は、左下受け部174や左下案内部173とは接触しない。また、第一後端脚部301よりも前方に設けられている第一中間脚部303の下端は、第一後端脚部301の下端よりも上方にあり、第二中間脚部304の上端は、第二後端脚部302の上端よりも下方にある。よって、第一中間脚部303、第二中間脚部304も、左上案内部163、左下案内部173に接触することはない。
カートリッジ1が奥側へ移動するのに伴い、図20に示すように、第二当接部154の開口部157から前方へ突出する導出針183と固定部181の一部は、カートリッジ1の斜面部332に設けられた口栓用開口335からケース2内部に進入する。そして、導出針183がゴム栓723の中心部に刺さることで、接続部180がカートリッジ1に接続される。図19に示すように、カートリッジ1の背面部331が第一当接部152に当接し、斜面部332が第二当接部154に当接すると、カートリッジ1のホルダ159への装着が完了する。このとき、図20に示すように、導出針183はゴム栓723を貫通し、その先端部が中空部700内に配置された状態となる。導出針183の先端部にはインクが流通する孔が設けられており、インク収容部717内のインクは、第一開口701、中空部700内部、導出針183、およびチューブ182を通って、印刷ヘッド114に供給可能となる。
以上に説明したように、本実施形態では、カートリッジ1、10において、プリンタ100の上レール部161、下レール部171に先に装着される側の後端部にある第一角部21、第二角部22は、カートリッジ1、10の長手方向において異なる位置にある。つまり、カートリッジ1、10の後端部は、カートリッジ1の長手方向およびホルダ159への装着方向に対して少なくとも一部が傾斜している。一方、プリンタ100において、上レール部161、下レール部171の先端部は、カートリッジ1、10が装着される場合、上レール部161の先端部(上案内部162および左上案内部163の前端)が第一角部21に接触した後、下レール部171の先端部(下案内部172および左下案内部173の前端)が第二角部22に接触する。つまり、第一角部21および第二角部22は、異なるタイミングで上レール部161、下レール部171の先端部に接触する。
従って、接触によって一度にカートリッジ1、10にかかる負荷が低減される。その後、カートリッジ1、10は、その上端部(上壁32)および下端部(底壁31)が、上レール部161、下レール部171に沿って案内される。このように、プリンタ100は、ホルダ159により、カートリッジ1、10を円滑に装着案内することができる。なお、上レール部161および下レール部171の先端部は、上レール部161の先端部が第一角部21に接触した後、下レール部171の先端部が第二角部22に接触するように配置されている限り、必ずしも装着方向において同一位置になくてもよい。また、上レール部161と下レール部171が、左壁30と蓋部4の上端部と下端部を夫々案内できる限り、ホルダ159の形状は変更可能である。例えば、右案内部160は省略し、上レール部161と下レール部171とがフレームに固定されたホルダユニットが採用されてもよい。
導出針183を有する接続部180は、カートリッジ1のホルダ159への装着方向において、上レール部161、下レール部171の先端部よりも下流側に位置し、カートリッジ1がホルダ159に装着される場合、導出針183は、第一角部21および第二角部22がいずれも上レール部161、下レール部171の先端部に接触した後で、口栓72の中空部700に挿入される。つまり、導出針183が口栓72のゴム栓723に刺され、中空部700に挿入される前に、カートリッジ1は上レール部161、下レール部171の先端部から挿入され、上レール部161、下レール部171によって案内されている状態となる。従って、口栓72は、安定した姿勢で接続部180に到達できるので、口栓72に導出針183が挿入される際、カートリッジ1の姿勢が変動することによって、導出針183が損傷を受ける可能性を低減することができる。
図15を参照して、カートリッジ1、10をプリンタ100から取り外す際の把手部40の作用と効果について説明する。図15に示すホルダユニット150の8個のホルダ159の各々には、前述のような方法で、カートリッジ1または10が装着可能である。よって、例えば、全てのホルダ159にカートリッジ1または10が装着されると、隣接するカートリッジ1、10の間隔は僅かである。特に、カートリッジ1の左壁30には、前端部近傍に、左方に突出する前端脚部305が設けられているので、左側に隣接するカートリッジ1、10がある場合、その蓋部4との間は尚更狭くなる。
カートリッジ1、10をプリンタ100から取り外したい場合、ユーザは、この僅かな隙間に指を差し入れ、カートリッジ1、10を掴んで引き出さねばならない。本実施形態では、カートリッジ1、10には、ケース2の前端部の右上の角部に、凹部41と突出部42からなる把手部40が設けられている。前述したように、凹部41は、ケース2の右方向、前方向、および上方向の三方向に開口するので、これらの三方向において、凹部41がない場合に比べて、ユーザが指を差し込むことができる空間が増大する。また、ユーザは、三方向のうちいずれか一つの方向、または二方向もしくは三方向から指を差し込むことができる。また、凹部41の周壁部412は、底部411の円弧状の端部に沿って設けられた、内側の面が曲面の壁部であるから、曲面に沿って指がガイドされ、凹部41に指を差し込みやすい。
凹部41の底部411は面部であるため、底部411と対向する左壁30の外面とを指で挟むことができ、ケース2を掴みやすい。また、突出部42が、凹部41の底部411から右方向に突出しているので、ユーザは、凹部41に指を差し込んだ上、突出部42に指を掛けたり、突出部42を指で摘んだりすることができる。突出部42は円筒状であり、指が触れる外周面は曲面である。よって、ユーザは、スムーズに指を掛けることができる。また、指が痛くなることもない。このように、複数のカートリッジ1、10が僅かな隙間を空けた状態でホルダユニット150に装着されていても、ユーザは、把手部40利用することで、これらの中から任意のカートリッジ1、10を容易に引き出して取り外すことができる。
なお、本実施形態のように、把手部40がケース2の角部に設けられることで、把手部40がケース2の端部の中央部に設けられるよりも、凹部41に指を差し込みやすくなる。また、把手部40は、ホルダユニット150の奥側で、接続部180に接続される側の端部である後端部とは反対側の前端部に設けられているので、カートリッジ1をホルダユニット150から取り外しやすい。また、図8に示すように、カートリッジ1の後端部には、口栓72が設けられている。口栓72の先端部724周りには、漏れ出たインクが付着することがある。しかし、把手部40を前端側に設けることで、口栓72周りにインクが付着していたとしても、把手部40を操作するユーザの指にインクが付着して汚れる可能性を低減できる。更に、カートリッジ1の後端部には、口栓用開口335および第一露出開口336が設けられている。しかし、把手部40は前端側にあるため、把手部40の操作時に、誤ってこれらの開口部に指を差し込んでしまう可能性を低減できる。
インク袋71中のインクの残量が少なくなった場合のインクの集め方について、カートリッジ1を例として説明する。なお、カートリッジ1よりも短いカートリッジ10(図12参照)についても、インクの集め方やその効果はカートリッジ1と同様である。カートリッジ1の使用開始時には、インク袋71にはインクが満量充填されているため(図7参照)、インク袋71を形成する2層のシートの内面は、間にインクを挟んで互いに離れた状態にある。カートリッジ1が図20に示すようにホルダ159に装着され、印刷が実行されると、布帛上に画像を形成するために、印刷ヘッド114(図1参照)から少しずつインクが吐出される。インクが吐出されると、吐出量とほぼ同量のインクがカートリッジ1から吸引され、補充される。印刷でインクが消費されるのに伴い、インク収容部717に収容されたインクは徐々に減少し、インク袋71は萎んでいく。つまり、可撓性を有する2層のシートの内面は互いに近づいていく。
インクの残量がある程度まで減少すると、インク袋71のあちこちでシートの内面同士が接触するようになる。その結果、インクは、インクの表面張力や重力の関係などにより、シートの内面同士が接触した部分により分断され、インク収容部717(図21参照)内に孤立したインク溜まりが複数存在する状態になる。また、図20に示すように、底壁31が下案内部172に載置された状態では、インク袋71の2層のシートは、その面がほぼ上下方向に沿って延びるように配置される。よって、インクは、重力により、ある程度はシートの内面を伝って下方向に流れ、インク収容部717内で、底壁31側の端部に沿って溜まる。しかし、インクが減って、導出針183の先端部の孔よりもインク面が下降すると、インク収容部717内にまだインクが残っていたとしても、印刷ヘッド114の吸引力は弱いので、残りのインクを吸引することが難しくなる。
本実施形態のカートリッジ1は、後端部を背面部331と斜面部332で構成し、第一角部21〜第三角部23を設けたことにより、このようにインクの吸引が難しくなった場合でも、プリンタ100から取り外し、インク収容部717に残存するインクを、口栓72、より詳細には第一開口701に向けて、効率よく集めることができる。図20〜図22を参照して、この作用効果について説明する。ユーザは、図21に示すように、インク残量が減少し、且つ、インク袋71の底壁31側の端部に沿ってインクがある程度溜まった状態のカートリッジ1の斜面部332を下側にし、第二角部22および第三角部23、つまり、斜面部332の外面333が、略水平な面である支持面9に支持されるようにカートリッジ1を載置する。即ち、インク収容部717の長手方向と略一致する軸線Xの方向が、プリンタ100におけるインク供給時よりも垂直に近い状態となる。なお、支持面9は、机の上面等の平面であってもよいし、平面でなくてもよい。口栓72の第二開口702(図20参照)の側の先端部724は、斜面部332の外面333よりもケース2の内側方向に位置するので、斜面部332が支持面9に接する際、口栓72が支持面9と干渉することがない。
カートリッジ1は、ケース2およびインク袋71の長手方向(口栓72の軸線X)が水平方向に対して傾斜し、口栓72の第二開口702が斜め下方向を向いた状態となる。インク袋71は、底壁31側の端部が水平方向に対して傾斜するとともに、インク収容部717を形成する2層のシートが、底壁31が下案内部172に載置された場合と同様、その面がほぼ上下方向に沿って延びるように配置された状態となる。カートリッジ1の姿勢を変更する際に加えられる力によって、インクの一部はインク収容部717内で移動する。カートリッジ1の姿勢が変更される前の、口栓72の軸線Xが略水平な状態(図20参照)では、インク収容部717内に点在するインクは、シートの内面同士が接触しているために、それ以上移動できない状態であった。このとき、点在するインクに対する重力の作用方向は、口栓72の軸線Xに対して略垂直である。一方、図21に示すように姿勢が変更されると、点在するインクに対する重力の作用方向は、口栓72の軸線Xに対して斜め方向に変化する。
このように姿勢を変更した後、ユーザがしばらくカートリッジ1を傾斜した状態で保持し続けると、インク収容部717内のインクは、前述の姿勢変化に伴うインクの移動と重力により、シートの内面を伝って下方へ移動し始める。前述のように、シートの面がほぼ上下方向に沿って延びているので、インクは円滑に下方へ移動することができる。また、インク収容部717内で底壁31側の端部に沿って溜まっていたインクは、底壁31側の端部が水平方向に対して傾斜した状態とされたために、これに沿って、口栓72が近傍に設けられた角部に向かって流れる。また、複数の孤立したインク溜まりのうちいくつかは、重力によって下降し始める。そして、一部は下降の途中にある他のインク溜まりに合流し、更に大きなインク溜まりとなって下降し、底壁31側の端部に沿って口栓72へ向けて流れていく。
第二角部22は鈍角を成しており、また、口栓72の軸線Xは、ケース2において、第二角部22を形成する底壁31側の端部寄りの位置にあるので、第二角部22および第三角部23を下側にし、斜面部332を略水平にしてカートリッジ1を傾斜させると、口栓72は支持面9により近い位置に配置される。従って、口栓72の第一開口701の近くにインクが集まりやすい。また、軸線Xは、軸線Xに直交する方向におけるインク袋の一端部(底壁31側の端部)寄りの位置にあり、軸線Xを境として、底壁31側の端部側のインク袋71の幅が、反対側のインク袋71の幅よりも狭いので、斜面部332を略水平にしてカートリッジ1を傾斜させると、口栓72の第一開口701の近くにインクが集まりやすい。
更にカートリッジ1が傾斜した状態が継続すると、図22に示すように、インク収容部717内のあちこちにインク溜まりとなって残存していたインクの大部分は、口栓72の第一開口701の周囲に集合する。インク袋71の長手方向において、口栓72が設けられたのとは反対側の前壁34側の端部とその周囲では、シートの内面の大部分が、互いに接触した状態となる。
ユーザは、このようにして第一開口701周辺にインクを集めた状態で、図20に示すように、底壁31を下側にしてカートリッジ1を再びプリンタ100にセットする。図22に示すように、第一開口701の周囲には、図21に示す状態に比べ、多くのインクが集まっている。しかも、インク袋71の前壁34側の端部とその周囲では2枚のシートの内面の大部分が互いに接触しているので、底壁31が下案内部172に載置され、インク袋71の底壁31側の端部が略水平にされても、インクが第一開口701の周囲から底壁31側の端部の方向へ移動することがある程度妨げられる。よって、インク面をゴム栓723に刺された導出針183の先端部の孔よりも上にある状態で維持することができる。従って、残っていたインクを印刷ヘッド114に供給することができる。
なお、前述したように、ケース2において、口栓72が近傍に設けられている第二角部22と対角に位置する角部である、ケース2の前端部の右上の角部(図21の上壁32と前壁34とがなす角部の手前側)には、把手部40(図3参照)が設けられている。従って、ユーザは、把手部40の凹部41に指を差し込み、突出部42を摘む等して、カートリッジ1を傾斜した状態で容易に維持し、インクを口栓72に向けて集めることができる。また、ケース2の左壁30において、口栓72が近傍に設けられている後端部とは反対側の前端部の近傍には、左壁30の外面から突出する前端脚部305(図2参照)が設けられている。従って、ユーザは、前端脚部305を掴んで、カートリッジ1を傾斜した状態で容易に維持し、インクを口栓72に向けて集めることもできる。
以上に説明した実施形態において、ホルダ159が、本発明の「カートリッジ装着部」に相当する。ケース2の本体部3の左壁30および蓋部4が、「一対の壁部」に相当し、ケース2の後端部が「第一端部」に相当し、左壁30および蓋部4の上下方向が「第一方向」に相当する。上レール部161および下レール部171が、「一対のレール部」に相当する。第一後端脚部301が「第一脚部」に相当し、第二後端脚部302が「第二脚部」に相当する。第一中間脚部303、第二中間脚部304は、夫々、「色指標部」に相当する。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。以下に、上記実施形態に加えうる変更の例について説明する。
前述したように、カートリッジ1、10(図2、図12参照)の第一中間脚部303と第二中間脚部304は、インクの色を示す色指標部であり、ユーザがこれを目視することで、ケース2内に収容されたインクの色が白か有彩色か判別可能としている。また、図1に示すプリンタ100は、各ホルダ159とその接続部180に対応するインクの色が、白と有彩色のうちいずれか一方に定められている。そこで、プリンタ100に、ホルダ159に誤った色のインクが収容されたカートリッジ1、10の装着を防止する機能を加えてもよい。図23〜図24を参照して、このような変形例のプリンタ140について説明する。図24の上下方向、左右方向、紙面表面側が、夫々、プリンタ140の上下方向、左右方向、正面側である。
図23〜図24に示すプリンタ140は、図1に示すプリンタ100とは異なり、ホルダユニット150は備えていない。代わりに、プリンタ140は、筐体141内に設けられた複数のカートリッジ通路185を備えている。なお、説明を簡単化するために、カートリッジ通路185は3個のみ図示されているが、実際には、プリンタ140は、8個のカートリッジ通路185を備えている。また、図23〜図24では、カートリッジ1の前端脚部305および把手部40(図2参照)は図示されていない。プリンタ140に設けられた印刷のための構成(図1に示す印刷ヘッド114等)やインク供給のための構成(図20に示す接続部180等)は基本的にプリンタ100と同様であるため、以下での説明は省略または簡略化する。
カートリッジ通路185は、カートリッジ1を、プリンタ140内でインク供給が可能な状態に配置されるように案内する通路である。各カートリッジ通路185の内部には、ホルダ190が嵌めこまれている。ホルダ190は、図16に示すホルダ159の一部の部材が省略されたものに相当する。具体的には、ホルダ190は、右案内部160と、上レール部191と、下レール部192とを備えている。右案内部160は、ホルダ159と同じである。上レール部191は、ホルダ159と同じ上案内部162と上受け部164を含み、下レール部192は、ホルダ159と同じ下案内部172を含む。つまり、ホルダ190は、ホルダ159の左上案内部163と左下案内部173を備えていない以外は、ホルダ159と同じ構成を有する。
図23に示すように、カートリッジ通路185の奥側(図23の上側)の端部には、カートリッジ通路185内を案内されたカートリッジ1の後壁33(より詳細には背面部331と斜面部332)が当接する当接板186が配置されている。つまり、当接板186は、図14に示すフレーム151の第一当接部152と第二当接部154に相当する。当接板186には、導出針183を有する固定部181が固定されている。プリンタ140でも、各カートリッジ通路185とホルダ159に対応するインクの色、つまり、各導出針183が導出すべきインクの色が、白と有彩色のうちいずれか一方に定められている。
カートリッジ通路185内には、前後方向(図23の上下方)における中央部に、カートリッジ通路185の左側面から右方に突出する矩形ブロック状の色識別突起188が設けられている。色識別突起188は、誤った色のカートリッジ1がカートリッジ通路185に装着されるのを防止するための部位である。
図24に示すように、色識別突起188は、各カートリッジ通路185に対応して定められたインクの色(白または有彩色)に応じて、上下方向の位置が異なる。具体的には、白インク用のカートリッジ通路185の場合、真ん中および左側のカートリッジ通路185のように、色識別突起188は、カートリッジ通路185の上下方向中央よりもやや上側に配置される。この位置は、左壁30を左側にしてホルダ159に挿入されたカートリッジ1の判別領域R(図4参照)に対応する。一方、有彩色のカートリッジ通路185の場合、右側のカートリッジ通路185のように、上下方向中央よりもやや右側に配置される。この位置は、左壁30を左側にしてホルダ159に挿入されたカートリッジ1の判別領域R(図4参照)以外の部分に対応し、有彩色用のカートリッジ1では、この位置には第一中間脚部303、第二中間脚部304は配置されない。また、第一後端脚部301と第二後端脚部302はいずれも、カートリッジ1が左壁30を左側にしてホルダ159に挿入された場合、色識別突起188には干渉しない位置にある。
カートリッジ1がホルダ190に装着される際の、ホルダ159とカートリッジ1の接触と、色識別突起188の作用と効果について説明する。まず、カートリッジ1がカートリッジ挿入口121を通して、ホルダ190に挿入される。第一角部21(図17参照)は、上受け部164を通過した後、上レール部191の上案内部162の前端に接触して抵抗を受け、ユーザは、その感触を得る。そして、カートリッジ1がホルダ190に案内されてプリンタ140の奥側に向けて押し込まれると、第二角部22(図17参照)が下レール部192の下案内部172の前端に接触して抵抗を受け、ユーザは、二度目の接触の感触を得る。
カートリッジ1が更に奥側へ押し込まれると、第一後端脚部301と第二後端脚部302は、いずれも色識別突起188には干渉しない位置にあるため、図23の右側のカートリッジ通路185のカートリッジ1のように、色識別突起188を越えていく。カートリッジ1がホルダ190に案内されて更に奥側へ進み、第一中間脚部303および第二中間脚部304が色識別突起188の位置にくると、図24の左側のカートリッジ通路185の例のように、色識別突起188が第一中間脚部303および第二中間脚部304の間にある場合は、そのままカートリッジ1は奥側に移動できる。この場合、図23の左側の例に示すように、カートリッジ1の後端部は接続部180に到達し、口栓用開口335を通って導出針183がインク袋71のゴム栓723(図20参照)に刺さり、インク供給が可能となる。
一方、図24の右側および真ん中のカートリッジ通路185の例のように、色識別突起188が第一中間脚部303または第二中間脚部304と干渉する場合、カートリッジ1はそれ以上奥側に移動することができない。つまり、カートリッジ1の後端部は接続部180に到達できない。このように、色識別突起188は、カートリッジ通路185およびホルダ190に対応するインクの色とは異なるインクが収容されたカートリッジ1の口栓72に、導出針183が刺さってしまうのを確実に防止することができる。
このように、プリンタ140では、第一中間脚部303および第二中間脚部304は、色識別突起188との協働により、誤った色のカートリッジ1がホルダ190に完全に装着され、口栓72が導出針183に到達してしまうのを防止する機能を有する。なお、図23〜図24の例では、カートリッジ1に第一中間脚部303および第二中間脚部304の両方が設けられているが、前述したように、色識別部として機能する脚部は、インクの色に応じて判別領域Rとの関係で配置されていればよいので、必ずしも両方が設けられなくてもよい。
プリンタ140では、ホルダ190は、本発明の「カートリッジ装着部」に相当し、上レール部191および下レール部192は、「一対のレール部」に相当する。色識別突起188は、「突出部」に相当する。
上記実施形態のケース2は、対向配置された一対の壁部である蓋部4と左壁30、および左壁30に連続する周壁31〜34を備えており、ほぼ全体が壁部で覆われた例である。しかしながら、ケース2を構成する壁部の一部は省略されてもよい。例えば、底壁31、上壁32、または前壁34が省略されてもよい。底壁31や上壁32は、ケース2の長手方向全体を覆う必要はなく、一部に開口を有していてもよい。また、周壁31〜34全てを必ずしも本体部3に設ける必要はなく、これらの一部または全てを蓋部4に設けてもよい。
上記実施形態では、長い方のカートリッジ1には、脚部301〜305(図2参照)が設けられた例を挙げたが、脚部301〜305の一部または全部は、省略されてもよい。例えば、カートリッジ1に、左壁30から突出する脚部として、第一後端脚部301と第二後端脚部302のみが設けられてもよい。この場合、カートリッジ1が、左壁30を下、蓋部4を上にして平面に載置された場合、第一後端脚部301および第二後端脚部302が設けられた後端部側の左壁30は平面から離間した状態となり、下方に隙間が生じる。一方、左壁30の前端部は平面に接するので、左壁30は傾斜状態で安定して維持される。第一後端脚部301と第二後端脚部302は離間して配置され、更に、いずれも上端部および下端部からは離間しているので、第一後端脚部301と第二後端脚部302の間やその周りでは、必ず左壁30と平面の間に隙間が生じる。従って、ユーザは、第一後端脚部301と第二後端脚部302の間、または上端部もしくは下端部から隙間に指を差し入れ、カートリッジ1を容易に取り上げることができる。
カートリッジ1が、左壁30を上にして平面に載置された場合、ユーザは、第一後端脚部301および第二後端脚部302の少なくとも一方を指で掴んだり、指を掛けて移動したりできるので、カートリッジ1の取扱いの自由度が向上する。このように、第一後端脚部301と第二後端脚部302のみが設けられた場合でも、ユーザが、平面上に載置された状態から取り上げるのが容易である。
上記実施形態では、脚部301〜305(図2参照)は、左壁30に凹部として一体形成されているが、左壁30に接着等の方法で接続された別の部材であってもよい。
上記実施形態では、図2に示すように、第一後端脚部301は口栓用開口335に対応する位置に設けられ、口栓72(図7参照)の収納空間および固定部を形成している。また、第二後端脚部302は第一露出開口336に対応する位置に設けられ、可動部材50(図11参照)の露出部53の可動空間を形成している。しかしながら、第一後端脚部301、第二後端脚部302は、必ずしもこのような機能を有する必要はなく、これらの開口部や内部に配置される部材とは関係なく設けられてもよい。口栓72はケース2内の別の位置に配置されてもよい。可動部材50は、インク残量指標部材でなくてもよい。ケース2内に可動部材50が設けられていなくてもよい。この場合、斜面部332に第一露出開口336が設けられなくてもよい。
上記実施形態では、色指標部である第一中間脚部303、第二中間脚部304が設けられる範囲は、図4に示す判別領域Rとの関係で定められている。この判別領域Rの位置は、図4の例に限らず、他の位置であってもよい。ただし、ユーザが第一中間脚部303、第二中間脚部304の目視によってインクの色を判別するためには、判別領域Rがどこにあるのかがわかりやすいことが望ましい。従って、判別領域Rは、上記実施形態のように、わかりやすい目印を基準として定められていると好ましい。なお、第一中間脚部303、第二中間脚部304は必ずしも色指標部とされる必要はなく、カートリッジ1を支持する脚部としての機能のみを有していてもよい。
ケース2に設けられている把手部40(図2参照)は、省略されてもよい。把手部40が設けられる場合は、ケース2のいずれかの端部に設けられてもよい。そして、ケース2のいずれかの外面よりも内側方向に凹み、且つ、ケース2の外面に対して少なくとも二方向に開口する凹部41と、凹部41の底部から突出する突出部42を備えていればよい。よって、例えば、前壁34の上下方向の中央部に設けられてもよいし、上壁32の後端部から離間した位置に設けられてもよい。また、凹部41と突出部42は必ずしも蓋部4に形成される必要はなく、一部が蓋部4、他の部分が本体部3に形成されてもよい。また、凹部41や突出部42の形状は、適宜変更可能である。