<第1実施形態>
以下、本発明のレーザ焦点合わせ方法を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
図1に、ニッケル水素(NiMH)電池セルの集電板を溶接するために使用されるレーザ溶接装置1を斜視図により示す。図2に、ワークとしての電池セル2を斜視図により示す。図2に示すように、電池セル2は、互いに対向配置された一対の集電板11,12と、それら集電板11,12の間に積層配置された複数枚の極板13とを備える。各極板13は、各集電板11,12に対してレーザにより溶接されている。この場合、溶接箇所14は、各集電板11,12のそれぞれに4箇所存在する。
図1に示すように、レーザ溶接装置1は、機枠21と、機枠21に支持されたレーザヘッド22と、機枠21にてレーザヘッド22の下方に配置された治具台23とを備える。機枠21は、背板24と、背板24の両側に配置された一対の側板25,26と、両側板25,26の間にて、高さ方向に水平に2段に配置された下板27及び中板28とを含む。レーザヘッド22は、背板24の上部に位置微調節可能に固定される。中板28は、レーザヘッド22の下方に配置され、レーザヘッド22から発射されるレーザの通過を許容する孔28aを有する。底板27の上には、治具台23が設けられる。治具台23の上には、治具29が設置される。治具29の上には、測定用の樹脂プレート30が設置される。
図2に示す電子セル2において、溶接位置にズレが生じると、端部の極板13の未着不良につながるおそれがある。この溶接位置のズレ量の許容値は、ワーク(集電板11,12と極板13の相対位置)のズレ量、治具29のズレ量、レーザのズレ量に割り振ることができる。ここで、レーザのズレ量は、レーザヘッド22からワークまでの間の設置距離(焦点距離)に大きく左右される。この発明は、上記した重要な焦点距離を正確かつ簡易的に求めることのできるレーザの焦点合わせ方法に関する。
次に、レーザの焦点合わせ方法について詳しく説明する。図3に、この方法の手順をフローチャートにより示す。
図3(1)に示す第1の工程では、レーザ溶接装置1に治具29と樹脂プレート30を設置する。すなわち、図4,5に斜視図により示すように、治具台23の上に治具29を設置し、その上にワークである樹脂プレート30を設置する。
このとき、樹脂プレート30の基準面30a,30bを利用して、レーザ照射時のための樹脂プレート30の位置決めを行う。すなわち、図6に斜視図により示すように、樹脂プレート30は、平面視で長方形状をなし、所定の厚みを有する直方体形状をなす。この樹脂プレート30の4つの外周面のうち、隣り合う2つの外周面が基準面30a,30bとなっている。これら基準面30a,30b以外の外周面には、矢印が付されて基準面30a,30bを判別できるようになっている。
図4,5に示すように、治具29は、精度確認プレート31と、その上に載置された照射確認プレート32とから構成される。照射確認プレート32の上面外周縁には、隣り合う2辺に沿って、それぞれ複数の位置決めピン33が配列される。図5に示すように、照射確認プレート32の上に樹脂プレート30を載せたときに、位置決めピン33が樹脂プレート30の基準面30a,30bと接することで、樹脂プレート30を照射確認プレート32の上で正確に位置決めできるようになっている。
次に、図3(2)に示す第2の工程では、樹脂プレート30にレーザを照射する。すなわち、図7に斜視図により示すように、レーザヘッド22を動作させ、低出力(約300W)により、樹脂プレート30にレーザLAを照射して、9箇所のドット打ちを行う。
ここで、レーザヘッド22には、レーザ発振器(図示略)で増幅したレーザが光りファイバを通って入射するようになっている。入射したレーザは、ミラー(一般にガルバノミラーと称する。)に反射してレンズを通してワークである樹脂プレート30に達するようになっている。そして、ミラーを可動させることにより、レーザを走査し、レーザの照射位置を狙った位置にコントロールできるようになっている。
図8に、樹脂プレート30上における9箇所のドット打ちの点(ドット点)Pの配置を平面図により示す。各ドット点Pは、樹脂プレート30の2つの基準面30a,30bの交差角を原点Oとして配置される。ここで、各ドット点PへのレーザLAの照射は、レーザヘッド22の中でレーザLAの発射位置を水平方向へ変位させることにより行われる。
ここで、樹脂プレート30を黒色にすることにより、レーザのドット跡が白く焼けることとなり、測定時にドット点Pの境目が分かりやすくなる。このため、ドット点Pの寸法測定がし易くなり、より正確な測定を行うことができるようになる。プレートの材質に樹脂を用いるのは、ドット点Pの形状が真円に近くなるためであり、ドット点Pの位置を正確に測定できるためである。これに対し、プレートの材質に金属を用いた場合、表面の状態により、均等に溶けなくなり、ドット点Pの形状が楕円となることがあり、正確な中心位置を出せなくなることがある。
ここで、レーザ溶接装置1におけるレーザヘッド22の位置が、高さ方向(Z方向)にずれていた場合は、図9に実線で示す正規のドット点Pに対し、同図に2点鎖線で示すように、非正規のドット点Pa,Pbの配置となる。ここで、一方の非正規のドット点Paは、樹脂プレート30がレーザヘッド22の焦点距離より離れている場合を示し、他方の非正規のドット点Pbは、樹脂プレート30がレーザヘッド22の焦点距離より近い場合を示す。また、レーザヘッド22の座標軸の回転がずれていた場合は、図10に実線で示す正規のドット点Pに対し、同図に2点鎖線で示すように、非正規のドット点Pcが所定角度θだけ回転することとなる。
上記のようにレーザLAを樹脂プレート30に照射してドット打ちすることは、次のようなメリットがある。すなわち、従来は、ガイド光(目視可能な赤外線)を用いて、溶接対象物とのズレ量を目視により測定することがあった。このため、ガイド光の光軸幅の影響と目視による測定誤差により、精度良くズレ量を測定することが難しかった。これに対し、本実施形態では、樹脂プレート30を用いることで、レーザ照射時と測定時の基準をそろえることができ、測定に電子顕微鏡を用いることができる。このため、精密な測定が可能となり、より正確な位置ズレ量を知ることができる。更に、樹脂プレート30から、Z方向のズレ量、XY方向のズレ量及び座標軸の回転角度のズレ量という、補正に必要な情報の全てを取得することが可能となる。このため、高精度の溶接位置を必要とする部品については、その溶接品質の確保に貢献することができる。
次に、図3(3)に示す第3の工程では、治具29から樹脂プレート30を取り外す。
次に、図3(4)に示す第4の工程では、第1嵩上げブロック34と樹脂プレート30を設置する。すなわち、図11に斜視図により示すように、治具29に第1嵩上げブロック34を設置し、その上に新たな樹脂プレート30を設置する。ここで、第1嵩上げブロック34は、精度確認プレート31と照射確認プレート32との間に設置することとなる。この実施形態で、第1嵩上げブロック34は、図5に示す状態から、樹脂プレート30を、例えば「100(mm)」持ち上げることができるように設定される。
次に、図3(5)に示す第5の工程では、樹脂プレート30にレーザを照射する。すなわち、図12に斜視図により示すように、レーザヘッド22を動作させ、低出力(約300W)により、樹脂プレート30にレーザLAを照射して、9箇所のドット打ちを行う。
次に、図3(6)に示す第6の工程では、治具29から第1嵩上げブロック34と樹脂プレート30を取り外す。
次に、図3(7)に示す第7の工程では、第2嵩上げブロック35と樹脂プレート30を設置する。すなわち、図13に斜視図により示すように、治具29に第2嵩上げブロック35を設置し、その上に新たな樹脂プレート30を設置する。ここで、第2嵩上げブロック34は、精度確認プレート31と照射確認プレート32との間に設置することとなる。この実施形態で、第2嵩上げブロック35は、図5に示す状態から、樹脂プレート30を、例えば「200(mm)」持ち上げることができるように設定される。
次に、図3(8)に示す第8の工程では、樹脂プレート30にレーザを照射する。すなわち、図14に斜視図により示すように、レーザヘッド22を動作させ、低出力(約300W)により、樹脂プレート30にレーザLAを照射して、9箇所のドット打ちを行う。
その後、図3(9)に示す第9の工程では、樹脂プレート30を基準面30a,30bから測定する。すなわち、図8に示すように、樹脂プレート30上に形成されたドット点Pの基準面30a,30bからの距離D1,D2をそれぞれ測定する。このとき、第2の工程、第5の工程及び第8の工程で、Z方向の高さを変えてレーザを照射した異なる3枚の樹脂プレート30のそれぞれにつき、上記の測定を行う。
上記した第1〜第8の工程では、図15に示すように、レーザヘッド22との距離が3段階に異なる3つの樹脂プレート30A,30B,30Cの照射上面に、同様にレーザをドット打ちにより照射している。これにより、図16(a)〜(c)に示すように、3枚の樹脂プレート30A〜30Cのそれぞれについて9個のドット点Pが打たれている。第9の工程では、これらドット点Pにつき、X座標、Y座標、Z座標の位置をそれぞれ測定するのである。
例えば、図16(a)に示すように、一番下に位置する(レーザヘッド22からの距離が一番遠い)樹脂プレート30Aにつき、ドット点P(0−1),P(0−2),P(0−3),P(0−4)・・・に関するレーザ照射位置情報を測定する。これにより、例えば、P(0−1)=(x01,y01,0)、P(0−2)=(x02,y02,0)、P(0−3)=(x03,y03,0)、P(0−4)=(x04,y04,0)・・・の情報が得られる。
同様に、図16(b)に示すように、下から二番目に位置する(レーザヘッド22からの距離が中間となる)樹脂プレート30Bにつき、ドット点P(1−1),P(1−2),P(1−3),P(1−4)・・・につきレーザ照射位置情報を測定する。これにより、例えば、P(1−1)=(x11,y11,h)、P(1−2)=(x12,y12,h)、P(1−3)=(x13,y13,h)、P(1−4)=(x14,y14,h)・・・の情報が得られる。
同様に、図16(c)に示すように、一番上に位置する(レーザヘッド22からの距離が一番近い)樹脂プレート30Cにつき、ドット点P(2−1),P(2−2),P(2−3),P(2−4)・・・につきレーザ照射位置情報を測定する。これにより、例えば、P(2−1)=(x21,y21,2h)、P(2−2)=(x22,y22,2h)、P(2−3)=(x23,y23,2h)、P(2−4)=(x24,y24,2h)・・・の情報が得られる。
そして、図3(10)に示す第10の工程では、レーザ焦点のズレ量を算出する。すなわち、上記測定結果から、レーザ焦点のズレ量(原点補正量(X方向,Y方向)、回転角度及びZ方向ズレ)を算出する。この場合、図17にグラフに示すように、Z方向のズレ量を直線近似することにより、Z方向の補正量を推測することができる。これにより、後述するように、レーザの焦点補正を正確に行うことができる。
そして、図3(11)に示す第11の工程では、必要に応じて、レーザヘッド22の位置修正を行う。すなわち、レーザ焦点のズレ量が大きい場合は、レーザヘッド22の位置を後述する位置調整機構41(図19等参照)により修正する。ズレ量が小さい場合は、レーザプログラムのソフト上で修正する。
ここで、レーザヘッド22の位置調整機構41について説明する。図18に、レーザ溶接装置1を平面図により示す。図19に、レーザ溶接装置1の一部を背面図により示す。図18,19に示すように、レーザ溶接装置1は、その背板24に、レーザヘッド22のための位置調整機構41を備える。位置調整機構41は、レーザヘッド22を取り付けるための取付プレート42と、その取付プレート42を上下方向へ案内するための左右一対のリニアガイド43と、取付プレート42を背板24に固定するための左右一対の固定ブロック44及び下側一対の固定ブロック45とを備える。両リニアガイド43は、背板24に固定される。各固定ブロック44,45は、ボルト46により背板24に固定される。ここで、図20に示すように、下側の固定ブロック45には、シム47が着脱可能に設けられる。従って、各固定ブロック44,45のボルト46を緩め、シム47の量を適宜増減することにより、取付プレート42をリニアガイド43に沿って微少に上下動可能となっている。これにより、レーザヘッド22の上下位置を微調整するようになっている。
上記したように、この実施形態におけるレーザ照射位置情報取得方法は、定位置に固定したレーザヘッド22からレーザを発射して樹脂プレート30の同一表面に複数点照射することにより、XY方向におけるレーザ照射位置情報を得ることと、樹脂プレート30の高さを2回変えてレーザヘッド22からレーザを発射して樹脂プレート30の同一表面に複数点照射することにより、XY方向におけるレーザ照射位置情報を得ると共に、高さの異なるZ方向におけるレーザ照射位置情報を得るようにしている。従って、レーザヘッド22を移動させる移動機構を設けることなく、樹脂プレート30とレーザヘッド22との間の距離、すなわちレーザの焦点距離に係るレーザ照射位置情報が得られる。このため、レーザヘッド22を移動させることなくXY方向とZ方向の正確なレーザ照射位置情報を取得することができる。
また、この実施形態におけるレーザの焦点合わせ方法は、上記レーザ照射位置情報取得方法により得られたZ方向におけるレーザ照射位置情報に基づき、レーザヘッド22のZ方向における位置を微調整することにより、レーザの焦点合わせをするようにしている。従って、Z方向の焦点ズレがある場合には、そのズレが補正される。このため、レーザの焦点を容易にかつ高精度に合わせることができる。
上記したように、この実施形態では、樹脂プレート30をセットする治具29に対し、所定の高さを有する第1及び第2の嵩上げブロック34,35を使用することにより、樹脂プレート30の高さ方向(Z方向)の位置を3段階に変えるようにしている。これにより、樹脂プレート30とレーザヘッド22との間の距離、すなわちレーザの焦点距離を3段階に変えるようにしている。
ここで、従来は、樹脂プレートとレーザヘッドとの間の距離(レーザ焦点距離)を変えるために、一般には、レーザヘッドを移動機構により上下移動させていた。このため、移動機構を備えることで、レーザヘッドの取付部の剛性が著しく低下する懸念があった。この剛性の低下は、加工時の振動発生やレーザヘッドの故障などに影響するおそれがあった。このため、高精密機械であるレーザヘッドを移動機構により上下動させてレーザ焦点距離を可変にすることは望ましくない。これに対し、本実施形態では、樹脂プレート30とレーザヘッド22との間の距離(レーザ焦点距離)を変えるために、レーザヘッド22を上下移動させる移動機構を設ける必要がなく、レーザヘッド22を固定化することができる。
この実施形態では、樹脂プレート30の高さを変えることにより、すなわちレーザヘッド22と樹脂プレート30との間の距離(レーザ焦点距離)を変えることにより、位置及びレーザ焦点距離のズレ量を正確に測定できる治具29及び嵩上げブロック34,35を用いたレーザの焦点合わせ方法を提案している。
ここで、特許文献1に記載の従来技術では、走査される光軸は、スキャナヘッドのレンズの特質上、レーザヘッドから発射されるレーザは、ワーク照射面に対して真直角でなく斜めからの光路となる。特許文献1に記載の従来技術において、ワーク面の上に照射位置補正ユニットを載せて使用し、「Z1=H」としている。しかし、実際の光は、ユニット分のセンサの受光面でセンシングするため、センサ取付高さのバラツキにより斜めからの光路による位置誤差を含む測定となり、正確性に劣る。すなわち、図21と図22を比較して示すように、レーザヘッド81から発射されるレーザにつき、同じ光路Laでセンサ82の高さh1,h2が異なる場合、ワーク照射上面F1における光路Laの光軸Lbからの距離b1,b2は同じでも、センサ受光面F2上の光路Laの光軸Lbからの距離a1,a2は異なる。すなわち、距離a1,a2の測定が誤差を含むこととなる。つまり、従来技術では、図23に示すように、レーザヘッド81から発射されるレーザは、ワーク照射上面F1より上のセンサ受光面F2にて光路Laの位置が測定される。ここで、上記と同様に、9箇所のドット打ちを行うことにより、センサ受光面F2上にて、図24に示すようなドット点Pを得ることができる。これに対し、この実施形態では、ワーク照射上面F1を樹脂プレート30の上面に一致させているので、測定バラツキは少なく、光路Laによる影響を最小にすることが可能である。
また、特許文献1に記載の従来技術では、レーザヘッドの高さを変えて測定する記載はない。このため、Z方向の焦点位置のズレ量の算出は難しいと考えられる。取得できるデータとして、高さ方向のデータの情報量は少なく、高さ成分(Z方向成分)の誤差予測が不可能である。これに対し、本実施形態では、2つの嵩上げブロック34,35を使用して樹脂プレート30の高さを3段階に変えることにより、Z方向の情報を得ることができる。メリットとして、樹脂プレート30の高さを3段階に変えることにより、Z方向の焦点レンズがある場合には、図17に示すように、Z方向の補正量の推測をすることができ、補正を正確にすることができる。このため、レーザヘッド22を移動させることなくXY方向とZ方向の正確なレーザ照射位置情報を取得することができる。
また、上記した補正量に基づきレーザヘッド22のZ方向における位置を微調整することにより、レーザの焦点合わせをするようにしている。この焦点合わせ方法は、レザーを走査するミラー(一般にガルバノミラーと称する。)を備えたレーザヘッド22において、レーザの焦点合わせを行うことは、溶接品質を条件出しし、かつ維持する上で重要な要素である。この実施形態では、ニッケル水素(NiMH)電池で採用した事例をもとに、従来方法に比べて精度良くXYZ座標のズレ量を算出することができるレーザの焦点合わせ方法を提案している。
この方法の特徴の一つとして、焦点合わせの精度アップを狙いに樹脂プレート30の位置決め基準と、ドット点Pの測定基準とを共通化するようにしている。これにより、高精度の溶接位置(±0.1レベル)を必要とする部品の溶接品質の確保に貢献できる。
この方法の二つ目の特徴として、レーザヘッド22を機枠21に固定したまま、レーザ照射対象である樹脂プレート30の高さを3段階に変える治具29及び嵩上げブロック34,35を用いることにより、レーザの照射距離を容易に変える方法を提案している。これにより、高精密機械であるレーザヘッド22を固定化することができ、レーザヘッド22の移動機構を省略することができ、レーザ溶接装置1の簡易化を図ることができ、装置1の故障も軽減することができる。
<第2実施形態>
次に、レーザ溶接装置のレーザ出力管理方法について具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態のレーザ溶接装置も、第1実施形態と同様、図2に示す電池セル2をレーザ溶接するようになっている。ここで、溶接品質の管理項目として、レーザの出力、径及び走査位置等がある。これらの項目が条件を満たしていないと、溶接の未着不良につながる。この実施形態では、最も重要な加工ポイントでのレーザ出力を管理する方法を提案している。
図25に、レーザ溶接装置1を斜視図により示す。図26,27に、レーザ溶接装置1を正面図により示す。このレーザ溶接装置1は、レーザヘッド22からのレーザ出力を計測するためのパワーメータ36を備える。パワーメータ36は、レーザヘッド22より下側にて、機枠21の側板26に対して設けられる。パワーメータ36は、側板26に対し、ガイドバー37により移動可能に支持される。また、側板26には、パワーメータ36を移動させるためのリニアアクチュエータ38が設けられる。そして、リニアアクチュエータ38を駆動させることにより、パワーメータ36を、図25,26に示す退避位置から、図28に示すように、レーザヘッド22の真下である測定位置まで移動させることができるようになっている。
この実施形態では、図25に示すように、パワーメータ36を制御するために、アンプ51、データ収集用パソコン52及び制御盤53を備える。パワーメータ36は、アンプ51に接続され、アンプ51はパソコン52に接続され、パソコン52は制御盤53に接続される。
この実施形態では、レーザ溶接装置1につき、予め設定したサイクル回数Sに達すると、自動的にパワーメータ36を用いて定期的に出力を測定し、その結果をパソコン52に保管するようになっている。そして、出力変化量から、レーザヘッド22のレンズの汚れを監視し、サイクル回数Sを変えることにより、最適な運用で溶接不良が発するする前に生産を止めるようになっている。
この実施形態で、パワーメータ36の基本の動作サイクル(例えば「250回」)は、下記のようになる。すなわち、「(1)溶接250回」→「(2)パワーメータ前進」→「(3)レーザ出力測定」→「(4)パワーメータ後退」→「(1)溶接250回」→・・・。図27に示すように、パワーメータ36を測定位置まで前進させることにより、レーザヘッド22の真下にパワーメータ36を移動させることができる。また、図25,26に示すように、パワーメータ36を後退させることにより、レーザヘッド22の真下からレーザの光路を避ける位置までパワーメータ36を移動させることができる。
図28,29に、パソコン52のCPUが実行する制御プログラムの内容をフローチャートにより示す。
先ず、図28のフローチャートに従って説明する。ステップ201で、電源が投入されると、ステップ202で、CPUはシステムチェックを行う。すなわち、設備の関係、レーザヘッド22の関係及びパソコン52につきそれぞれチェックを行う。そして、ステップ203で、CPUは、システムがOKか否かを判断する。この判断結果が否定である場合、CPUは、ステップ204で、システム異常処理を実行する。すなわち、システム異常に対処するための処理(システム停止、異常報知等)を実行する。一方、この判断結果が肯定である場合、CPUは、処理をステップ205へ移行する。
そして、ステップ205で、CPUは、レーザ溶接装置1の運転準備(動作の初期化等)を行う。その後、ステップ206で、CPUは、レーザ溶接装置1の運転を開始する。
その後、ステップ207で、CPUは、「レーザ切りモード」又は「手動モード」が1時間以上経過したか否かを判断する。ここで、「レーザ切りモード」は、レーザが所定時間切られることを意味し、「手動モード」は、レーザが手動で操作されることを意味する。この判断結果が肯定となる場合、CPUは、ステップ208で、レーザ出力を測定するために、パワーメータ測定サイクルを実行する。この処理内容の詳細については、後述する。また、ステップ209で、CPUは、これまでカウントしていた溶接回数Nをリセットし、処理をステップ210へ移行する。一方、ステップ207の判断結果が否定となる場合、CPUは、そのままステップ210へ移行する。
ステップ209又はステップ207から移行してステップ210で、CPUは、溶接回数Nを加算し、ステップ211で、その溶接回数Nが所定のサイクル回数Sと等しいか否かを判断する。この判断結果が肯定となる場合、CPUは、ステップ208の処理へ戻る。一方、この判断結果が否定となる場合、CPUは、処理をステップ212へ移行する。
そして、CPUは、ステップ212で、レーザ溶接装置1にワークをセットし、ステップ213で、レーザ溶接を実行し、ステップ214で、ワークを排出する。ワークのセット及び排出は、所定のロボットをCPUが制御することにより行われる。
ここで、図28のステップ208の処理内容を、図29のフローチャートを参照して詳しく説明する。
先ず、ステップ208−1で、CPUは、パワーメータを前進させる。すなわち、図27に示すように、リニアアクチュエータ38を動作させることにより、パワーメータ36をレーザヘッド22の真下の測定位置へ移動させる。
ステップ208−2で、CPUは、パワーメータ36による測定準備の確認を行う。すなわち、レーザヘッド22が正常に動作可能か否か、パワーメータ36がレーザの測定に対応できる状態にあるか否かなどを確認する。
ステップ208−3で、CPUは、図30に正面図により示すように、レーザヘッド22を動作させてレーザLAをワークWへ向けて照射する。
ステップ208−4で、CPUは、パワーメータ36を後退させる。すなわち、図26に示すように、リニアアクチュエータ38を動作させることにより、パワーメータ36をレーザヘッド22の真下から退避位置へ退避させる。
ステップ208−5で、CPUは、パワーメータ36による今回の測定結果M及び時間tのデータをパソコン52のメモリに記録する。
その後、ステップ208−6で、CPUは、測定結果Mが±3%以内か否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、CPUは、処理をステップ208−11へ移行する。一方、この判断結果が肯定となる場合、CPUは、処理をステップ208−7へ移行する。
ステップ208−7で、CPUは、今回の測定結果Mが前回の測定結果Moより小さいか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、CPUは、ステップ208−8で、前回のサイクル回数Soに「10」を加算することで今回のサイクル回数Sとし、次のサイクルへ移行する。一方、ステップ208−7の判断結果が肯定となる場合、CPUは、処理をステップ208−9へ移行する。
ステップ208−9で、CPUは、前回の測定結果Moから今回の測定結果Mを減算した結果が、所定の設定値αの「1.5(%)」以上になるか否かを判断する。この判断結果が肯定となる場合、CPUは、ステップ208−10で、前回のサイクル回数Soから「25」を減算することで今回のサイクル回数Sとし、次のサイクルへ移行する。一方、ステップ208−9の判断結果が否定となる場合、CPUは、処理をステップ208−11へ移行する。
ステップ208−6又はステップ208−9から移行してステップ208−11で、CPUは、レーザ溶接装置1を停止し、清掃アラームを動作させる。すなわち、レーザの測定結果から、レーザヘッド22に清掃の必要性があると判断した場合、CPUは、レーザ溶接装置1を停止させ、清掃の必要性を報知する処理を実行するのである。この報知を受けて、作業者がレーザヘッド22をメンテナンスした後、清掃完了をCPUに知らせると、ステップ208−12で、CPUは、サイクル回数Sを「250」にリセットし、次のサイクルへ移行する。
一般に、レーザヘッドは、溶接時のヒューム付着等によりレンズ面が汚れ、出力低下を引き起こすため、出力を一定に保つためにレンズ面の定期的な清掃が必要となる。その清掃タイミングは、一定の溶接回数毎に行うことにより、管理するのも一案である。しかし、汚れる周期は一概に一定とはなりにくいので、早め早めの清掃となり、生産を止めることとなり、生産効率が悪くなる。
そこで、この実施形態では、レーザ出力を定期的にパワーメータ36により測定し、その出力の変化傾向を観察するようにしている。これにより、前回の出力値に対する増減により溶接回数Nのサイクル回数Sを変化させることにより、清掃タイミングを最適化させることができる。更に、レーザの出力を測定した時間も記録するので、製品に品質不具合があったときに、有効なトレサビデータとしても活用することができる。
また、この実施形態では、レーザ溶接装置1を一定時間以上止めた状態からのコールドスタート時には、初回目はパワーメータ36により出力を測定し、経路の暖機を行い、通常状態の出力値に戻す機能をもったレーザの管理システムを提案することができる。すなわち、図31に、コールド状態(止まった状態)から一定時間間隔で、レーザ出力を測定した結果をグラフにより示す。このグラフから分かるように、初回のみレーザ出力は低く、その状態でワークを溶接した場合、未着による可能性がある。これに対し、2回目以降のレーザ出力は一定で、品質上は問題がない。このままでは、毎回、初回のワークを廃棄することとなり、不良率が高くなる。
そこで、この実施形態では、コールドスタート時にパワーメータ36によりレーザ出力を測定することにより、出力測定と捨て打ちを同時に行うことができる。これにより、ワークへの照射を避けることができ、溶接不良の発生を抑えることができる。更に、パワーメータ36を用いてレーザの捨て打ちを行うので、別途に捨て打ちを行う必要がなく、その分だけレーザ溶接装置1を簡略化することができる。また、パワーメータ36自体は、メータ内を水冷することでレーザの高出力にも破損することがない。
また、この実施形態では、レーザを所定回数照射したタイミングでレーザの出力を測定し、その変化量から次回の測定までの照射回数を増減させている。それにより、保護ガラスの清掃タイミングを初期は長く、終期は短くすることができ、効率良く清掃することが可能となる。ここで、照射回数は固定値ではなく、出力測定値により可変としている。加えて、コールドスタート時、すなわち、一定時間レーザを使用しなかった場合に、出力値の確認と光路の暖機を目的に初回目に出力測定を行うこととしている。
特許文献1に記載の従来技術では、溶接距離を測定するレーザセンサの出力を一定に管理する方法を提示している。これに対し、本実施形態では、溶接用レーザの溶接出力を一定に管理する方法を提示しており、従来技術とは基本的に用途が異なる。また、特許文献1には、出力測定のタイミング(溶接回数)は初期の設定で決め、測定結果で回数を変えるという記載がない。ここで、図32には、従来技術につき、溶接回数に対するレーザの出力(パワー)の測定値との関係をグラフにより示す。図33には、本実施形態につき、溶接回数に対するレーザの出力(パワー)の測定値との関係をグラフにより示す。従来技術では、測定タイミングのための溶接回数を一定値である「250回」毎にレーザ出力を測定している。これに対し、本実施形態では、レーザ出力(パワー)の測定値に応じて測定タイミングのための溶接回数を変化させている。このため、図32と図33を比較して分かるように、従来技術では、レーザの測定回数が「13回」となるのに対し、本実施形態では、測定回数を「11回」に減らせることが分かる。
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜に変更して実施することもできる。
例えば、前記第1実施形態では、2つの嵩上げブロック34,35を使用して測定を行ったが、1つ又は3つの嵩上げブロックを使用して測定を行ってもよい。