近年、液晶テレビのバックライトや照明用の光源として、LEDの利用が急速に増加している。LEDは電流駆動デバイスである。それゆえ、LEDを駆動するためには、一定電流を供給し続ける機能をもつ駆動ドライバ(LEDドライバ)、すなわち、定電流回路により構成された電源が必要とされる。そこで、スイッチング素子のオンオフ制御により安定化した電圧を出力するスイッチング電源装置(スイッチング・レギュレータ)の1種である、バックコンバータが用いられている。
上記のようなLED駆動用のバックコンバータの構成および動作について、図4〜7を参照しながら簡単に説明する。図4は、バックコンバータ100の構成を示す回路図である。図5〜7は、図4のバックコンバータ100における動作特性を示す図であり、図5はトランジスタQ1がオンのときの電流経路を示し、図6はトランジスタQ1がオフのときの電流経路を示し、図7は定電流制御時の電流波形を示す。
図4に示すように、バックコンバータ100は、LED群200に電気的に接続されており、定電流を供給してLED群200を駆動する。LED群200は、複数個(ここでは7個)のLEDが直列に接続されて構成されている。
バックコンバータ100は、制御部IC1、トランジスタQ1、チョークコイルL1、ダイオードD1〜D3、コンデンサC1〜C3、抵抗R1〜R7、直流(DC)電圧を発生する電源Vin、並びに、制御部IC1用の電源Vccを備えている。制御部IC1は、トランジスタQ1のオンオフ制御を行うものであり、8ピンのICとして構成されている。トランジスタQ1は、Nチャネル型のFET(Field Effect Transistor)であり、ゲート端子が制御部IC1のGD端子に電気的に接続されている。
トランジスタQ1がオンのときは、図5の矢印に示すように、電源Vinから、LED群200、チョークコイルL1、トランジスタQ1、および抵抗R3を介して、電源Vinに戻る経路で、電流Ionが流れる。このとき、電流Ionは、チョークコイルL1を介して流れるため、チョークコイルL1のインダクタンス値に比例した傾きを持って増加する。図7を参照すると、電流Ionは、図7のAの領域に対応する。
一方、電流Ionは、抵抗R3により電流値に比例した電圧値に変換され、制御部IC1のCS端子に入力されている。制御部IC1は、CS端子の値(電位)を検出しており、その電位が予め定めた閾値(第1閾値)に達すると、トランジスタQ1をオンからオフに切り替える。
また他方では、トランジスタQ1のオン期間中は、制御部IC1のGD端子からトランジスタQ1のゲート端子に供給される電圧が、ダイオードD3を介してコンデンサC3にチャージされている。
トランジスタQ1をオフに切り替えた後も、チョークコイルL1の励磁エネルギーにより、チョークコイルL1に電流を流し続けるような起電圧が生じる。これにより、図6の矢印に示すように、チョークコイルL1から、ダイオードD1、およびLED群200を介して、チョークコイルL1に戻る経路で、電流Ioffが流れる。すなわち、チョークコイルL1に流れる電流Ioffは、ダイオードD1を介して電源Vinのプラス側へ転流する。このとき、電流Ioffは、チョークコイルL1のインダクタンス値に比例した傾きを持って減少する。図7を参照すると、このときの電流Ioffは、図7のBの領域に対応する。
一方、トランジスタQ1がオフに転じた際から、トランジスタQ1のオン期間中にコンデンサC3にチャージされた電荷が、抵抗R7を経由してGND(グランド)に流れるため、コンデンサC3の端の電位が徐々に減衰している。この電位は、制御部IC1のZCD端子でチェックされており、ZCD端子の電位が予め定めた閾値(第2閾値)を下回ると、制御部IC1は、トランジスタQ1をオフからオンに切り替える。
このようなタイミングで、トランジスタQ1をオンからオフ、オフからオンへと切り替えることにより、トランジスタQ1は、オン状態とオフ状態とが連続的に繰り返されることになる。
このときのバックコンバータ100における電流波形を図7に示す。図7に示すギザギザの電流波形において、Aの領域の電流は、トランジスタQ1のオン期間にトランジスタQ1に流れる電流を示し、Bの領域の電流は、トランジスタQ1のオフ期間にダイオードD1に流れる電流を示している。この電流波形は、チョークコイルL1のインダクタンス値に依存した脈流(リップル)を持ち、厳密にはDC電流ではない。けれども、この波形を持つ電流は、コンデンサC1によってリップル電流成分が平滑され、平均電流となり、LED群200に供給される。
以上のバックコンバータ100によれば、上記の平均電流を一定電流としてLED群200に供給することで、LED群200を好適に駆動することが可能となっている。また、バックコンバータ100では、制御部IC1のCS端子に外部から強制的にHighレベルの電位を与えることによって、強制的に発振を停止させることができるため、外部信号によりPWM調光を簡単に実現できるというメリットがある。
しかしながら、上記のバックコンバータ100は、主に、LED群200に対し順方向電圧を大きく、電流を小さくする場合(高電圧・小電流出力)に適用されるものであり、この場合と同一の出力電力で(電源Vinの出力電力が同一)、LED群200に対し順方向電圧を小さく、電流を大きくする場合(低電圧・大電流出力)には向かない、という問題点を有している。
この理由は、低電圧・大電流出力用に対応させる場合、電流値の増大によりチョークコイルL1の発熱を抑えるために銅損を低減しなければならず、銅損を低減するためにはチョークコイルの巻数を低減させる必要があることから、インダクタンス値が結果的に小さくなるためである。チョークコイルの巻数とインダクタンス値との間には2乗の関係があるため、巻数を1/nにすると、インダクタンス値は1/n2で減衰してしまう。
図8に、図7の電流波形を示す構成において、インダクタンス値を減少させた場合の電流波形を示す。図8に示すように、インダクタンス値が小さくなると、制御部IC1が検出する電流波形の波高値(ピーク値)と、出力される平均電流の値との齟齬が大きくなるため、出力電流のレギュレーションが悪くなる。
ここで、インダクタンス値の減少に対応して、出力電流のレギュレーションを改善するためには、発振周波数(トランジスタQ1のゲート端子に供給するパルス電圧を、制御部IC1のGD端子から発振する周波数、すなわちスイッチング周波数)を大きくする方法がある。図9に、図8の電流波形を示す構成において、発振周波数を上げた場合の電流波形を示す。図9に示すように、インダクタンス値が小さくても発振周波数を大きくすれば、電流波形の波高値と平均電流の値との齟齬を減少させることができる。
しかし、発振周波数を大きくすると次の弊害が生じる。つまりは、バックコンバータ100では、トランジスタQ1のオンオフ制御、すなわちデューティを調節して、チョークコイルL1に投入される電力を調節することにより、定電流特性を得ている。但し、トランジスタQ1の最低オン期間は、制御部IC1のIC固有の値で決まっている。一方、発振周波数は可変であるが、大電流出力に対応させるために発振周波数を上昇させると、相対的に最低オンデューティが長くなることになる。したがって、発振周波数を上昇させ最低オンデューティを長くした場合、出力電圧ゼロ付近で、投入電力をそれ以上小さくすることができなくなるため、定電流特性を外れ、最低オンデューティに依存した定電力曲線を描くことになる。
図10に、発振周波数が低い場合(図中のA)および発振周波数が高い場合(図中のB)の電圧−電流出力特性を示す。定電流制御を目的としたバックコンバータ100は、本来なら、出力電圧が0Vまで定電流制御を行うべきである。しかし、最低オンデューティ未満の領域では定電流制御ができなくなることより、実際は、出力電圧がある一定以下になると、図10のAおよびBのように定電流特性を外れ、定電力特性を示す。発振周波数が高い場合は、発振周波数が低い場合に比べて、定電力特性を示す領域が顕著である。定電力特性を示す領域では、出力電圧が減少しゼロに近づくほど、電流値は増大する。
このように、LED駆動ドライバとしてのバックコンバータ100を、低電圧・大電流出力用に対応させる場合、発振周波数の高周波化が必要となるが、その弊害として、出力電圧が低下していくと電流レギュレーションが確保できないという問題が発生する。また、電流値が増大し過電流となることで、LED群200およびバックコンバータ100の破損が生じるという問題もある。
ところで、従来、スイッチング電源装置の大半は、過負荷や出力短絡などの異常事態から電源内の部品が破損することを回避するための保護機能を搭載している。このようなスイッチング電源装置では、過電流の検出を保護動作の起点としている。過電流を検出する手段としては、例えば特許文献1に記載のように、熱感知によりオン状態となる熱動作スイッチがある。熱動作スイッチが、整流平滑用のチョークコイルの電圧に対応した電圧を発生するチョークサブ巻線の発熱を感知することで、過電流を検出している。
また、スイッチング電源装置に似た動作および機能を持つものとして、DC−DCコンバータがある。例えば、特許文献2に記載されたDC−DCコンバータは、上記の保護機能を有しており、整流平滑用のコモンモードチョークコイルの一方の巻線の両端に発生する電圧、詳細にはコモンモードチョークコイルの銅損による電位差を検出することで、過電流を検出している。
このように、過電流を検出する技術というものは従来存在しており、上述のバックコンバータ100においても、上記のような過電流を検出して保護をかける過電流保護回路を適用することで問題の解決を図ることが考えられる。しかしながら、一般的に、過電流保護回路は、出力電流や入力電力を検出して保護をかけるため、保護動作を行った結果、出力電流や入力電力が抑制されることになり、また抑制された結果、保護が解除される場合がある。
例えば、特許文献1では、1度保護が働くと、チョークサブ巻線に流れる電流が減少し熱が下がるため、熱動作スイッチがオフとなり、保護が解除される。また、熱動作スイッチという熱素子を利用しているため、動作ポイントが周囲温度に影響されるという不安要素もある。また、特許文献2においても、コモンモードチョークコイルの銅損による電位差は、出力電流に比例して発生するため、保護動作が行われても、その保護を解除するような動作が行われる。
このため、バックコンバータ100に上記のような過電流保護回路を適用しても、保護動作、保護解除が繰り返されることとなり、実質的に効果を奏し得ない。また、このような動作、解除が繰り返されるモードを回避するためには、1度保護動作が働いた場合、検出条件が変動しても、保護動作を継続する回路(例えば、ラッチ回路)を設ける必要があるが、設置すると、保護動作の解除には電源の再投入の必要が生じるなど、制御や構成が煩雑になるという問題が生じる。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、過電流出力を回避することができるとともに、一度過電流保護が働くと、保護動作に拘らず過電流保護を継続することができるバックコンバータを提供することにある。
本発明のバックコンバータは、上記課題を解決するために、定電流を負荷に出力するバックコンバータであって、スイッチング素子と、上記スイッチング素子がオンのときに電源の直流電圧から負荷の動作電圧を減じた電圧が印加されるチョークコイルを有し、上記定電流として出力する電流の整流および平滑を行う整流平滑部と、上記チョークコイルに流れる電流を検出する電流検出部と、上記スイッチング素子がオンのときに充電され、上記スイッチング素子がオフのときに放電される充放電部と、上記電流検出部の検出値が第1閾値を超えると上記スイッチング素子をオフに切り替え、上記充放電部の電位が第2閾値を下回ると上記スイッチング素子をオンに切り替える制御部と、上記チョークコイルの2次巻線として極性を逆にして設けられた補助巻線と、上記スイッチング素子がオンのときの上記補助巻線の出力電圧に基づいて、上記スイッチング素子のオフデューティを大きくさせる保護部とを備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、負荷の動作電圧が、出力電流が増大する電圧領域にある場合であっても、補助巻線にその動作電圧であることを示す電圧を出現させ、これを保護部が検出して、スイッチング素子のオフデューティを大きくさせることで、出力電流の増大を回避することが可能となる。また、出力電流の増大を回避している過電流保護状態は、チョークコイルの2次巻線である補助巻線の出力電圧に基づいて移行している。ゆえに、この状態になったとしても、保護部の動作により補助巻線の出力電圧が変化することはないので、保護部の動作が解除されることはない。したがって、バックコンバータでは、過電流出力を回避することができるとともに、一度過電流保護が働くと、保護動作に拘らず過電流保護を継続することができる。
また、本発明のバックコンバータでは、上記保護部は、上記スイッチング素子がオンのときの上記補助巻線の出力電圧が第3閾値よりも大きいときに、上記充放電部が充放電する時定数を大きくさせることによって、上記スイッチング素子のオフデューティを大きくさせることが好ましい。
充放電部が充放電する時定数が大きくなると、充放電部の電位が第2閾値を下回るまでの時間が長くなるので、スイッチング素子のオフデューティが大きくなる。それゆえ、上記の構成によれば、簡単な動作で過電流保護を動作させることが可能となる。
または、本発明のバックコンバータでは、上記保護部は、上記スイッチング素子がオンのときの上記補助巻線の出力電圧が第4閾値よりも大きいときに、上記制御部に入力される上記電流検出部の検出値を増加させることによって、上記スイッチング素子のオフデューティを大きくさせる構成とすることもできる。
制御部に入力される電流検出部の検出値が増加すると、電流検出部の検出値が第1閾値を超えやすくなるので、スイッチング素子のオフデューティが大きくなる。それゆえ、上記の構成によれば、簡単な動作で過電流保護を動作させることが可能となる。
また、本発明のバックコンバータでは、上記負荷は、発光素子であることが好ましい。
上記の構成によれば、発光素子は、電流駆動デバイスであるので、バックコンバータを好適に利用することが可能となる。
以上のように、本発明のバックコンバータは、スイッチング素子と、上記スイッチング素子がオンのときに電源の直流電圧から負荷の動作電圧を減じた電圧が印加されるチョークコイルを有し、上記定電流として出力する電流の整流および平滑を行う整流平滑部と、上記チョークコイルに流れる電流を検出する電流検出部と、上記スイッチング素子がオンのときに充電され、上記スイッチング素子がオフのときに放電される充放電部と、上記電流検出部の検出値が第1閾値を超えると上記スイッチング素子をオフに切り替え、上記充放電部の電位が第2閾値を下回ると上記スイッチング素子をオンに切り替える制御部と、上記チョークコイルの2次巻線として極性を逆にして設けられた補助巻線と、上記スイッチング素子がオンのときの上記補助巻線の出力電圧に基づいて、上記スイッチング素子のオフデューティを大きくさせる保護部とを備えている構成である。
それゆえ、過電流出力を回避することができるとともに、一度過電流保護が働くと、保護動作に拘らず過電流保護を継続することができるバックコンバータを提供するという効果を奏する。
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
本実施の形態では、LED(発光素子)を駆動するための駆動ドライバとして用いるバックコンバータについて説明する。なお、本実施の形態で説明するバックコンバータは、図4に示した従来のバックコンバータ100と重複する構成を有しており、説明の便宜上、図4に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
図1は、本実施の形態のバックコンバータ10の一構成例を示す回路図である。図1に示すように、バックコンバータ10は、LED群200(負荷)に電気的に接続されており、定電流を供給してLED群200を駆動する。LED群200は、複数個(ここでは7個)のLEDが直列に接続されて構成されているが、これに限らず、1つでもよいし、複数個が並列または直並列に接続されていてもよい。
バックコンバータ10は、制御部IC1、トランジスタQ1・Q2、チョークコイルL1、ダイオードD1〜D4、コンデンサC1〜C5、抵抗R1〜R9、ツェナーダイオードZD1、補助巻線11、電源Vin、並びに、電源Vccを備えている。つまりは、バックコンバータ10は、図4の従来のバックコンバータ100の構成に加えて、補助巻線11、トランジスタQ2、ツェナーダイオードZD1、抵抗R8・R9、ダイオードD4、並びに、コンデンサC4・C5を備えている。
なお、トランジスタQ2、ツェナーダイオードZD1、コンデンサC4、および抵抗R9により、保護回路12(保護部)が構成されている。チョークコイルL1、出力平滑用のコンデンサであるコンデンサC1、および、転流用のダイオードであるダイオードD1により、LED群200への出力電流の整流および平滑を行う整流平滑回路13(整流平滑部)が構成されている。抵抗R3により、チョークコイルL1に流れる電流を検出する電流検出回路14(電流検出部)が構成されている。コンデンサC3および抵抗R7により、トランジスタQ1がオンのときに充電され、トランジスタQ1がオフのときに放電される充放電回路15(充放電部)が構成されている。充放電回路15は、トランジスタQ1のオフ期間を設定している。ダイオードD4およびコンデンサC5により、補助巻線11からの出力電圧を整流および平滑する整流平滑回路16が構成されている。
制御部IC1は、バックコンバータ10が定電流制御を行うように、トランジスタQ1のオンオフ動作を制御するものである。制御部IC1として、ここでは8ピンのIC(L6562A)を用いているが、これに限るものではない。制御部IC1は、INV端子、COMP端子、MULT端子、CS端子、ZCD端子、GND端子、GD端子、VCC端子を有している。なお、IC(L6562A)は従来周知の製品であり、その内部構成は本発明の重要なポイントではないので、詳細な説明は省略する。
INV端子は、抵抗R4を介して電源Vccに接続されるとともに、抵抗R5を介してグランドに接続されている。COMP端子は、MULT端子と接続されている。CS端子は、抵抗R2を介してトランジスタQ1のソース端子に接続されている。ZCD端子は、保護回路12に接続されるとともに、コンデンサC3の高電位側端子に接続されている。GND端子は、グランドに接続されている。GD端子は、抵抗R1を介してトランジスタQ1のゲート端子に接続されるとともに、ダイオードD3、コンデンサC2、およびコンデンサC3をこの順番に介してグランドに接続されている。VCC端子は、電源Vccに接続されている。
トランジスタQ1は、Nチャネル型のFETである。トランジスタQ1は、ドレイン端子がチョークコイルL1の出力端子に接続され、ソース端子が抵抗R3を介してグランドに接続されている。トランジスタQ1は、制御部IC1のGD端子の電位(HiまたはLowのパルス電圧)に応じて、オン状態またはオフ状態となる。
チョークコイルL1の入力端子は、LED群200(カソード側)に接続されている。コンデンサC1は、一方の端子が電源VinおよびLED群200(アノード側)に接続され、他方の端子がチョークコイルL1の入力端子に接続されている。ダイオードD1は、アノードがチョークコイルL1の出力端子に接続され、カソードが電源Vinに接続されている。なお、ダイオードD1は2個設けているが、これに限らない。
ダイオードD2は、アノードがグランドに接続され、カソードがチョークコイルL1の入力端子に接続されている。抵抗R6は、コンデンサC2と並列に接続されている。抵抗R7は、コンデンサC3と並列に接続されている。
補助巻線11は、チョークコイルL1に追加した別の巻線、すなわちチョークコイルL1の2次巻線として設けられたものであり、チョークコイルL1と同一の鉄芯に、極性を逆にして巻かれている(逆相)。チョークコイルL1と補助巻線11との巻線比は1とするが、これに限るわけではない。補助巻線11は、入力端子が抵抗R8およびダイオードD4をこの順番に介して保護回路12に接続され、出力端子がグランドに接続されている。コンデンサC5は、一方の端子がダイオードD4のカソードに接続され、他方の端子がグランドに接続されている。
保護回路12は、過電流出力を回避するための保護機能を発動させる過電流保護回路である。保護回路12は、トランジスタQ1がオンのときの補助巻線11の出力電圧が、予め定められた閾値(第3閾値)を超えることを動作条件としており、条件を満たすと、トランジスタQ1のオフデューティを大きくさせる。上述のように、保護回路12は、トランジスタQ2、ツェナーダイオードZD1、コンデンサC4、および抵抗R9により構成されている。トランジスタQ2はNPN型のバイポーラトランジスタである。トランジスタQ2は、コレクタ端子がコンデンサC4を介して制御部IC1のZCD端子に接続され、ベース端子がツェナーダイオードZD1のアノードに接続され、エミッタ端子がグランドに接続されている。ツェナーダイオードZD1のカソードは、ダイオードD4に接続されるとともに、抵抗R9を介してグランドに接続されている。
上記構成を有するバックコンバータ10では、トランジスタQ1のオンオフ動作により、上述したように図5および図6の矢印に示す経路で電流が流れる。ここで、注目すべき点は、バックコンバータ10における過電流保護動作である。次いで、これについて詳細に説明する。
(過電流保護動作)
定電流制御の間、チョークコイルL1に電流が流れることにより、電磁誘導によって、補助巻線11に電圧が発生している。このとき、補助巻線の出力端子には、巻線比が1であるので、入力電圧VinからLED群200の順方向電圧Vfを差し引いたパルス電圧(Vin−Vf)が現れる。入力電圧Vinを一定とすると、高電圧・小電流出力対応時は低いパルス電圧が発生し、低電圧・大電流出力対応時は高いパルス電圧が発生する。
このパルス電圧は、ダイオードD4で整流され、コンデンサC5で平滑されることによって、DC電圧に変換される。このDC電圧は、抵抗R9の端(高電位側端子)に印加されている。このとき、
VfZD1+VBE≪VR9
(VfZD1:ツェナーダイオードZD1の順方向電圧、VBE:トランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧、VR9:抵抗R9の高電位側端子の電圧)
を満たすと、トランジスタQ2がオンになり、コンデンサC4がコンデンサC3に並列に接続される。
コンデンサC3は、トランジスタQ1がオフしてから、次にトランジスタQ1がオンするまでの時間を規定しているので、コンデンサC4の並列接続によりコンデンサC3に相当する容量が増大すると、発振周波数が低下することになる。そして、発振周波数が低下することで、発振周波数調整前から相対的に、トランジスタQ1のオフデューティが大きくなり、トランジスタQ1のオンデューティが低下する。これにより、単位時間あたりにチョークコイルL1に投入される電力が小さくなるので、出力電流の増大を抑制することが可能となる。
トランジスタQ2がオンする条件である閾値(「VfZD1+VBE」)は、ツェナーダイオードZD1によって任意に設定することができる。ゆえに、出力電流が増大する電圧領域に合わせて上記の閾値を設定することで、出力電流の増大を回避することが可能となる。これは特に、出力電流の増大が顕著な低電圧・大電流出力対応時に効果的である。
また、出力電流が抑えられた状態に動作モード(トランジスタQ2:オン)が移ったとしても、保護回路12はチョークコイルL1の2次巻線である補助巻線11の出力電圧に基づいて動作する回路であり、補助巻線11の出力電圧(Vin−Vf)の値は変化しない。よって、保護回路12の動作により、保護回路12の動作が解除されることはない。
図2に、バックコンバータ10の電圧−電流出力特性を示す。図2から、ある一定の出力電圧までは定電流制御を行い、その出力電圧以下になると、保護動作を継続したまま、出力電流を抑制していることがわかる。バックコンバータ10では、LED群200に大電流を出力する場合、問題となる出力電圧0V近辺の定電流制御不能な領域で、過電流出力を回避する過電流保護機能を実現している。
(まとめ)
以上のように、バックコンバータ10は、トランジスタQ1がオンのときに電源Vinの直流電圧からLED群200の順方向電圧(動作電圧)を減じた電圧が印加されるチョークコイルL1を有し、LED群200への出力電流の整流および平滑を行う整流平滑回路13と、チョークコイルL1に流れる電流を検出する電流検出回路14と、トランジスタQ1がオンのときに充電され、トランジスタQ1がオフのときに放電される充放電回路15と、電流検出回路14の検出値が閾値(第1閾値)を超えるとトランジスタQ1をオフに切り替え、充放電回路15の電位が閾値(第2閾値)を下回るとトランジスタQ1をオンに切り替える制御部IC1と、チョークコイルL1の2次巻線として極性を逆にして設けられた補助巻線11と、トランジスタQ1がオンのときの補助巻線11の出力電圧に基づいて、トランジスタQ1のオフデューティを大きくさせる保護回路12とを備えている。
それゆえ、LED群200の動作電圧が、出力電流が増大する電圧領域にある場合であっても、補助巻線11にその動作電圧であることを示す電圧を出現させ、これを保護回路12が検出して、トランジスタQ1のオフデューティを大きくさせることで、出力電流の増大を回避することが可能となる。また、出力電流の増大を回避している過電流保護状態は、チョークコイルL1の2次巻線である補助巻線11の出力電圧に基づいて移行している。ゆえに、この状態になったとしても、保護回路12の動作により補助巻線11の出力電圧が変化することはないので、保護回路12の動作が解除されることはない。したがって、過電流出力を回避することができるとともに、一度過電流保護が働くと、保護動作に拘らず過電流保護を継続することができる。
また、バックコンバータ10では、過電流保護を継続することにより、保護回路12が動作、解除を繰り返すモードには入らず、さらに、ラッチ回路を付加した従来の保護回路のように、保護回路12の動作解除に電源の再投入を要さない。
さらに、バックコンバータ10は、LED群200を好適に発光させつつ、LED群200およびバックコンバータ100の破損を防止することができる。また、LED群200の破損などにより出力短絡が発生した場合にも、保護回路12が検出することで、短絡電流の増大を抑制することが可能となる。
また、保護回路12は、トランジスタQ1がオンのときの補助巻線11の出力電圧が閾値(第3閾値)よりも大きいときに、充放電回路15が充放電する時定数を大きくさせることによって、トランジスタQ1のオフデューティを大きくさせている。
充放電回路15が充放電する時定数が大きくなると、充放電回路15の電位が閾値(第2閾値)を下回るまでの時間が長くなるので、トランジスタQ1のオフデューティが大きくなる。それゆえ、上記の保護回路12によれば、簡単な動作で過電流保護を動作させることが可能となる。
また、保護回路12は、トランジスタQ2、ツェナーダイオードZD1、コンデンサC4、および抵抗R9により構成されている。ゆえに、出力電圧がある一定以下になると過電流保護機能を動作させるとともに、保護動作により過電流保護が解除されない回路を、簡易な構成で実現することができる。
なお、バックコンバータ10では、保護回路12を備えたが、特にこれに限定するものではなく、トランジスタQ1がオンのときの補助巻線11の出力電圧に基づいて、トランジスタQ1のオフデューティを大きくさせることができる保護回路を備えていればよい。一例として、次の実施形態で他の具体例を示す。
また、トランジスタQ1に替えて、従来一般的なスイッチング素子を用いてもよい。同様に、トランジスタQ2も、他のスイッチング素子を用いることができる。また、整流平滑回路13、電流検出回路14、充放電回路15、および整流平滑回路16は、略同等の機能を有し、かつ新たな問題を招くことがない範囲であれば、適宜構成を変更してもよい。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
図3は、本実施の形態のバックコンバータ20の一構成例を示す回路図である。バックコンバータ20は、前記実施の形態1のバックコンバータ10と比較して、保護回路の構成が異なっている。つまりは、図3に示すように、バックコンバータ20は、図1のバックコンバータ10の構成のうち保護回路12を除いた構成に加えて、保護回路21を備えている。
保護回路21は、過電流出力を回避するための保護機能を発動させる過電流保護回路である。保護回路21は、トランジスタQ1がオンのときの補助巻線11の出力電圧が、予め定められた閾値(第4閾値)を超えることを動作条件としており、条件を満たすと、トランジスタQ1のオフデューティを大きくさせる。保護回路21は、トランジスタQ3、ツェナーダイオードZD1、抵抗R9、および、抵抗R10により構成されている。トランジスタQ3はPNP型のバイポーラトランジスタである。トランジスタQ3は、エミッタ端子が抵抗R10を介して制御部IC1のCS端子に接続され、ベース端子がツェナーダイオードZD1のアノードに接続され、コレクタ端子がグランドに接続されている。ツェナーダイオードZD1のカソードは、ダイオードD4に接続されるとともに、抵抗R9を介してグランドに接続されている。
(過電流保護動作)
次に、バックコンバータ20における過電流保護動作について説明する。
定電流制御の間、チョークコイルL1に電流が流れることにより、電磁誘導によって、補助巻線11に電圧が発生している。このとき、補助巻線の出力端子には、巻線比が1であるので、入力電圧VinからLED群200の順方向電圧Vfを差し引いたパルス電圧(Vin−Vf)が現れる。
このパルス電圧は、ダイオードD4で整流され、コンデンサC5で平滑されることによって、DC電圧に変換される。このDC電圧は、抵抗R9の端(高電位側端子)に印加されている。
このとき、出力電圧が高い領域では、抵抗R9の端の電位が低いため、トランジスタQ3はオンしており、抵抗R10が制御部IC1のCS端子に接続されている。これにより、抵抗R3で検出された電流は、抵抗R2と、「抵抗R10+(トランジスタQ3のコレクタ−エミッタ間電圧VCE)」とにより分圧され、CS端子に入力される。
一方、出力電圧が低い領域では、補助巻線11の出力電圧は(Vin−Vf)に比例して上昇する。このとき、
VfZD1+VBC≪VR9
(VfZD1:ツェナーダイオードZD1の順方向電圧、VBC:トランジスタQ3のベース−コレクタ間電圧、VR9:抵抗R9の高電位側端子の電圧)
を満たすと、トランジスタQ3がオフになる。
これにより、抵抗R3の端に現れる電位は、抵抗R10で分圧されず、直接CS端子に入力される。よって、制御部IC1では、増加させた電流値で、閾値との比較が行われることにより、分圧時と比較して閾値を超えやすくなる。したがって、トランジスタQ1のオフデューティが大きくなるので、その結果、定電流制御時の電流値が減少され、出力電流の増大を抑制することが可能となる。
トランジスタQ3がオフする条件である閾値(「VfZD1+VBC」)は、ツェナーダイオードZD1によって任意に設定することができる。ゆえに、出力電流が増大する電圧領域に合わせて上記の閾値を設定することで、出力電流の増大を回避することが可能となる。これは特に、出力電流の増大が顕著な低電圧・大電流出力対応時に効果的である。
また、出力電流が抑えられた状態に動作モード(トランジスタQ3:オフ)が移ったとしても、保護回路21はチョークコイルL1の2次巻線である補助巻線11の出力電圧に基づいて動作する回路であり、補助巻線11の出力電圧(Vin−Vf)の値は変化しない。よって、保護回路21の動作により、保護回路21の動作が解除されることはない。バックコンバータ20においても、図2に示したような電圧−電流出力特性を示す。
なお、保護回路21では、トランジスタQ3がオフのとき、トランジスタQ3のエミッタ端子は、抵抗R3に流れるパルス電流に準じてパルス電位となる。しかし、制御部IC1のCS端子に設定された閾値は1V程度であり、また、補助巻線11に誘起される電位は、巻数比により1Vに対して充分高く設定できることから、トランジスタQ3のエミッタ端子の電位の振れは問題とならない。
(まとめ)
以上のように、バックコンバータ20は、トランジスタQ1がオンのときの補助巻線11の出力電圧が閾値(第4閾値)よりも大きいときに、制御部IC1に入力される電流検出回路14の検出値を増加させることによって、トランジスタQ1のオフデューティを大きくさせる保護回路21を備えている。
制御部IC1に入力される電流検出回路14の検出値が増加すると、電流検出回路14の検出値が閾値(第1閾値)を超えやすくなるので、トランジスタQ1のオフデューティが大きくなる。それゆえ、上記の保護回路21によれば、簡単な動作で過電流保護を動作させることが可能となる。
また、保護回路21は、トランジスタQ3、ツェナーダイオードZD1、抵抗R9、および抵抗R10により構成されている。ゆえに、出力電圧がある一定以下になると過電流保護機能を動作させるとともに、保護動作により過電流保護が解除されない回路を、簡易な構成で実現することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。