本発明にかかるコイルアンテナとIC(Integrated Circuit)を用いた金属面用のRFIDタグや非接触式ICカードの多重影像方式の具体例を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明のコイルアンテナ(無線送受信機器)を用いたRFIDタグであるユニバーサルスマートタグ(非接触情報記録媒体)の一例を示す図である。図1(a)は金属板と磁性体の幅がほぼ同じ場合のユニバーサルスマートタグの断面図、図1(b)は金属板が磁性体の幅よりも大きい場合のユニバーサルスマートタグの断面図である。図1(c)は図1(a)を上から見た図、また図1(d)は図1(b)を上から見た図であるが、いずれも金属面21a及び金属板11aは図示していない。
図1において、薄い磁性体板6(磁芯)に絶縁被覆されたコイル2が巻かれており、この上下を挟むようにして、厚みt1の金属板11a(導電板)と厚みt2の金属板11b(導電板)が当てられている。すなわち、磁性体板6の磁束の方向と平行に、かつ、互いに対向するように、金属板11a、11bは配置される。なお、金属板は金属膜(導電膜)でもよい。また、金属板の幅はxである。2は、磁性体板6(幅x6,厚みT)に巻かれた太さ2ρのコイルであり、この値は小さいので磁性体板6の幅x6と幅xは殆んど同じ幅となっている。更に、金属面21aと金属面21bが、この金属板11aと金属板11bを当てられたRFIDタグ本体(厚み4ρ+T)を上下に挟むように設置される。なお、金属面21a、21bは金属体である場合もある。RFIDタグ本体の左右には絶縁された空間Sができる。一般には空気かプラスチック、紙、磁性体などで絶縁された空間である。
ここで、金属板11a、金属板11bは、RFIDタグに金属が近づいてきたときのコイル2を構成する電線間の浮遊容量やコイル2と近づいてきた金属面間との浮遊容量の増加や変化を抑えるための目的の金属板でもある。更には、磁界Hが上下四方に広がらないように金属板や金属面に挟まれた左右空間Sに集中できるようにする目的の金属板である。金属板は固いものでも可撓性のものでもどちらでもよい。目的により選択できる。
図1(a)の場合は金属板11a、11bの幅が比較的小さいので、下方一枚のみの金属板(金属板11aがなく、金属板11bのみの場合)の効果よりははるかによいが、充分ではない。すなわち、浮遊容量の変化の抑止、磁界の広がりの抑止には一定の効果があるものの、図1(c)に示すように磁束が空間Sに抑えられている部分は上下の金属面21a、21bによる所が大きいので、RFIDタグ本体が金属面21a、21bに挟まれたときはインダクタンスやキャパシタンスの変化を受け、共振周波数はまだ変わる。また金属板11a、11bによる多重影像効果は、金属板11a、11bの金属面の大きさが小さすぎて完全ではない。RFIDタグ本体の厚み(4ρ+T)は0.5〜1.5mm程度で磁性体板6の厚み(T)は0.1〜2mm、コイルの太さ2ρは0.08〜0.1mm、金属板11a、11bの厚さ(t1またはt2)は0.1mm以下で極めて薄く作ることもできる。RFIDタグが備えるIC(ICチップ) 3と共振をとるため、コイル2は20数ターン巻きでインダクタンスを調整している。金属膜を上下に当てるためコイルの巻数を増やす必要がある。
図1(b)の場合は、図を見てわかるとおり、金属板11a、11bの幅(x)が充分に大きいので、更に金属面21a、21bが上下に現れたとしても、コイル2を構成する電線間の浮遊容量や、磁束の分布や磁束密度の変化は殆んどなくすることができる。かつ上下の金属板11a、11bの間に磁界をとじ込めているので、更に上下に他のRFIDタグを近づけたとしても相互の結合を弱めることができる。これが金属板11a、11bによる遮蔽効果であり、本願発明のもう一つの利点となる。なお、図1(c)は図1(a)(金属板11a、11bの幅がRFIDタグ本体の幅とほぼ同程度の場合)の上面図であり、コイル2に電流Iが流れ磁界H(点線矢印は磁力線の向きを示す)が発生しているようすを示し、図中OWはRFIDタグ前方の開口部を示す。また、図1(d)のOWも同様である。
図1(b)の場合は図1(a)の場合と比べると横面図(図1(b))、上面図(図1(d))ともに磁束が金属板11a、11bの範囲にほぼ入っていることが分かる。空間Sの両端が開放され、絶縁され(図1(b)のOPが開放部(絶縁部)を示す)、かつ有限の幅であり、上下に金属で磁束が圧縮されているので、脇の方へ磁束は多少広がることになる。
図1(d)を見てわかるとおり、金属板11a、11bの幅が大きければ大きい程、RFIDタグの側方(図1(b)で金属板11a、11bがコイル2に接していない面の方、図面の左右)の磁界が金属板11a、11bよりはみ出す量は小さくなってくるので安定する。しかし前方(図1(c)で磁界Hが向く方向、なおIC 3が配置されている方は後方)の強い磁界のみでなく、側方の磁界も拾いたい場合もあるので、磁性体やコイルの大きさや金属板11a、11bの大きさや、金属面にRFIDタグを取付ける位置をセンサ(リーダライタのセンサ)との関係で適当に選ぶことができる。磁性体板6の厚み(T)は0.1〜2mmでコイル2の巻線の太さ(ρ)は0.08〜0.1mm、また、金属板11a、11bとして0.1mm以下のラミネート金属箔を用いることで0.1mm以下にすることができ、全体のRFIDタグの厚みは0.3〜2mm程度の厚みで構成でき、0.8mmの非接触式ICカード厚に構成もできる。金属材料は、アルミ、鉄、銅、銀、金等金属の性質を持つ損失の少ないものであればよい。
本実施例ではコイル2の巻数が20数ターンでIC 3との共振がとれており、前方に強い磁界を作っている。側方の空間Sは一般にプラスチック、紙等の絶縁体で充填するが、磁性体を一部に用い磁界の広がりを抑えることで、金属板11a、11bの幅や長さを小さくすることもできる。
図2は金属面が上下にある場合と上下いずれか一方の面のみにある場合の影響を本発明の多重影像(マルチミラー)方式の場合と、従来の一面のみの影像を利用した場合について比較説明する図である。
図2(a)は磁性体板6の上下に金属板11a、11bを備える場合で、金属面21a、21bが上下に存在する場合を示す図である。すなわち、図1(b)のように、RFIDタグの上下に周囲の金属面21a、21bが存在し、更に本発明の多重影像(マルチミラー)方式のための上下の金属板11a、11bが備えられ、周囲の金属面21a、21bの影響を受けないようにしている場合を示す。コイル2の巻数は、約24巻程度であり、磁性体板6の厚み(T)は0.1mm〜2mm、幅(x6)1.5mm〜40mm、長さ5mm〜40mm程度のものを用いており、金属板11a、11bの厚み(t1、t2)は0.1mm以下、幅2〜60mm、長さも磁性体板6の長さに合わせて5〜60mm程度のものを使用している。Sは絶縁された空間である。
図2(b)は磁性体板6の上下に金属板11a、11bを備える場合で、金属面21bのみが存在する場合を示す図である。すなわち、下方のみに金属面21bが存在している場合を示す図であり、この場合でも上下の金属板11a、11bによる本発明の多重影像方式の効果によって感度は上昇し、かつ下方の金属面21bの影響が、上下の金属板11a、11bによって遮蔽され、殆んど影響を受けないことを示す。
図2(a)、図2(b)ともに図1に示すごとく、RFIDタグや非接触式ICカード厚を0.5〜1mm前後に構成することができる。更に厚く構成するのは全く問題ない。
図2(c)は従来の一枚の金属板11bによる場合を示す図で、金属板11bのみの構成で、上下に金属面21a、21bが存在する場合を示す図である。この場合、上下に存在する金属面21a、21bにより、特に上部の金属面21aからは、インダクタンスも容量も大きく影響を受ける。また側方のコイルも浮遊容量が増し、全体として特性が大きく劣化する。
図2(d)は従来の一枚の金属板11bの対応で、一面の金属面21bに対する考慮のみの場合であり、金属板11bがRFIDタグの幅しかない場合を示す図である。この場合は、上部に金属面がなくともインダクタンスや浮遊容量が変化し、せっかく、金属板11bをつけたとしても、金属面21bがあるときとないときでは共振特性が1MHz近くずれ、特性が劣化する。なお、この場合、金属板11bを当てることによりインダクタンスは減じ、IC 3と共振をとるためコイル2の巻数は10ターン以上となっている。
次に、この理由をもう少し詳しく説明する。
図3はRFIDタグのコイル2が見えるように描いた透過斜視図である。金属板11a、11bが上下にあり、その外側に金属面21a、21bがRFIDタグを囲むように両側(金属板11a、11bの上下)から挟んでいる状態である。金属板11a、11bと金属面21a、21bとは接触していても離れていてもよい。
金属板11aと金属面21a(または金属板11bと金属面21b)が離れているときの金属間の容量をCPMとする。金属板11aと金属面21a(または金属板11bと金属面21b)が接触しているときは、容量CPMは無限大∞となり、短絡する状態となる。即ち、金属板11aと金属面21a(または金属板11bと金属板21b)とのポテンシャルは同一となる。
上下の金属面21a、21bは絶縁されているので、この間の容量をCvとし、この間の電位差をVとする。もし、上下の金属板11a、11bが金属面21a、21bと接触していない場合は、コイル2の起電力等により電位差が生じ、金属面21a、21b間の電位差Vと異なる値となる。
コイル2の中に挿入される磁性体板6は図が複雑になり、コイル2が見えなくなるので省いて描いているが、実際の場合には強い磁束密度を得るために磁性体を用いている。また磁性体板6がない場合でも、多重影像効果は発生するが、磁性体板6を省いた場合はその分、磁束密度は弱くなる。RFIDタグのIC 3とコイル2の両端は接続され(例えば、図1(c)参照)、IC 3の容量20pF前後と多重影像効果によるコイル2のインダクタンスと共振させるように巻数を加減する。チップコンデンサを加えて共振周波数を調整してもよい。一方、13.56MHzより高いUHF等の周波数帯の場合は、比透磁率の高いものは得難くなり、損失が多くなるので、透磁率が高く損失が低い磁性体を選ぶか磁性体を省く場合もある。
実際には20数ターンのコイルを巻くことにより、6μH近くのインダクタンスが得られ、使用周波数の13.56MHzに近い共振周波数を得ている。
コイル2と金属板11bとの間の容量をCsとし、コイル2と金属面21bとの間の容量をCgとする。なお、図示していないが、コイル2と金属板11aの間にも浮遊容量Csが、また、コイル2と金属面21aの間にも浮遊容量Cgが、それぞれ存在する。コイル2を構成する電線2−1と電線2−2間、電線2−2と電線2−3間等の浮遊容量をCwとする。コイル2の長手方向に金属板11a、11bがあるので、コイル2と金属板11a、11bとの浮遊容量Csは比較的大きくなる。また、金属板11a、11bの幅が大きくなる程、コイル2の側部との結合もあり、増加する。
一方、コイル2の側部と金属面21a、21bとの浮遊容量Cgは、側部のコイル2の長さが短いのと、金属板11a、11bの長さが長くなるにつれ浮遊容量は減じ、結合は弱くなり、従って外部の影響を受け難くなる。
本発明の技術の一つは、金属板11a、11bにより如何にこの浮遊容量Cgを減じ、安定した共振特性や遮蔽特性、インダクタンス特性を得るかという観点にもある。
コイル2を構成する電線2−1、2−2、2−3等の間の浮遊容量Cwは、コイル2と金属板11a、11bとの浮遊容量Csが大きくなるにつれ、金属板11a、11bを介しての浮遊容量Csによる変位電流が増え、金属板11a、11bがない場合に比べてインダクタンスは減少する。いいかえると、全体としては金属板11a、11bを通して浮遊容量はかなり増える。
上記の説明のように金属板11a、11bがあることにより磁束が隙間に集中し、磁束密度が増えるだけでなく、共振周波数をずらす要因となる不安定な浮遊容量の発生をRFIDタグ内に封じ込める機能がある。これにより、次に説明する磁界の分布が金属板間に集中し大きく異なるための、他のRFIDタグ等に結合することによる悪い影響を取り除くことができる。多重影像方式の場合、コイル2の断面積長さ、磁性体板6の比透磁率μrや物理的長さ、大きさ等によって異なるが、コイル2の巻数は13.56MHzで20〜30ターンとなり、チップの容量22pF程度に合わせて約6μHとなり、比較的巻数が増える。
図3(b)は比較のために示すもので、従来の金属板11bが一枚しかない場合で、上部には金属板がないため金属面21aが近づくとコイル2と金属面21aの浮遊容量Cgが著しく増え、RFIDタグの共振周波数が大きくずれる。
また、金属板11bの幅が小さいため、下方の金属面21bとコイル2が結合し易く、浮遊容量Cgが大きくなるため、金属面21bの影響は免れない。
図4は磁性体板6に相当する上下に薄い平板磁性体や角形磁性体に、コイル2を巻いた場合の磁界の様子を示すものである。なお、簡単のため、コイル2は一部不図示としている。図4に示すように、電流Iにより磁界は主に上下に広がって(図中、Hd、Hu)、コイル2の幅に沿った上下の空間に分布するような状況となり、縦のコイル2の長さが短いので、左右には僅かな磁界しか存在しない(図中、Hs)。この場合のコイル2の巻数もコイル2の長さや断面積、磁性体板6の透磁率や長さ等によって異なるが、コイル2の巻数は13.56MHzでは数ターンで、インダクタンスは約6μH、IC 3の容量は20〜22pFであるのでよく共振する。
コイル2による磁界は上下に広く分布するので、これを重ねると、当然電磁結合が大きく、一般のRFIDタグが結合するように重ねた場合、干渉が発生しこのままでは使用できない。
しかし、一般のRFIDタグと異なり、コイル2の軸方向(図中破線矢印)の結合ではないので、側方の結合は軸方向の結合より半分程度(磁界の強さで1/2、2個のコイルの場合1/4)となる。それでもこのままでは相互干渉が発生するためRFIDタグのデータを読み取り機で読み取る場合に読みづらくなり、かつ書き込みを行うときは個々に読み取り機のセンサを対応させてもRFIDタグに書き込むことができない。また、コイルの断面が小さく、磁界を集中していないので感度が低い。
これが従来の技術と本発明の多重影像方式(マルチミラーエフェクト)によるユニバーサルスマートタグと一般のRFIDタグや非接触式ICカードの違いであり、以下、詳しく説明する。
図5には金属板11a、11bの大きさや形を工夫することにより、外部の金属面21a、21bの影響を如何に防ぐかを説明する。図5は全て本発明のRFIDタグであるユニバーサルスマートタグやセンサを手前(前方)から見た断面図である。
図5(a)は金属板と金属面の間に一定の間隔を持たせて配置した場合を示す図である。すなわち、図5(a)には金属板11a、11bと金属面21a、21bの間に一定の間隔を持たせ、金属板11a、11bと金属面21a、21bが非常に近づいた場合、この間の浮遊容量CPMが非常に大きくなり、接触した場合にはCPM=∞、即ち、短絡となることから、プラスチックのような絶縁体Insか誘電体を設けるか、磁性体を介することにより、金属面21a、21bからの影響をより少なくする場合の例を示している。磁性体をあまり厚くすると、磁界が逃げ易くなるので、遮蔽効果は多少減ずる。
図5(b)は図1(a)の場合を説明するもので、金属板11a、11bの幅が狭く、金属面21a、21bとの間隔が狭いので、金属面21a、21bとコイル2との浮遊容量Cgが結構存在することを示す。金属板11a、11bと金属面21a、21b内の浮遊容量CPMは両金属が接触しているので、CPM=∞となり、短絡し、金属板11a、11bは金属面21a、21bの一部となっている。
上下金属の間には電位差(V)があり、この間が磁界の通り路である。これが一番シンプルな構成である。
図5(c)はコイル2を挟んで上下に金属板11a、11bがあり、下方のみに金属面21bがある場合で、多重影像効果は上下の金属板11a、11bによりかなり得られるが、図1の説明の通り金属板11a、11bの幅が大きくない(磁性体板6と同程度である)ので、多少金属面21bからの結合による影響を受け、コイル2との間で浮遊容量Cgの発生がある。
上の金属板11aと下の金属板11bと金属面21bとの浮遊容量CPgも発生するが、図2(d)や図3(b)のようにコイル2直接ではないので影響は少ない。これが上部の金属板11aを設けた効果である。
金属板11bと金属面21bとの間の浮遊容量CPMは図5(a)の場合と同じように、絶縁体Insや磁性体を介しているので小さく、影響を少なくすることができる。もちろん絶縁体Insや磁性体を省いて直接金属面21a、21bに接触させて用いてもよい。
つぎに図5(d)には上下の金属板11a、11bを図示のように折り曲げ、更に側面の上下の隙間を小さくし、浮遊容量を縮小し磁界の漏洩を図った場合を示す。
上下の金属面21a、21bの間隔をl1とすると、折り曲げられた上下の金属板11a、11bの間隔がl2となるので、金属面21aと金属板11a、金属面21bと金属板11bがそれぞれ上と下で接触しているので、上下の電位差Vは同じであるが、電界強度Eはl2の隙間の方がl1/l2倍高くなる。
上下の金属面21a、21bによるコイル2への影響は、折り曲げられた金属板11a、11bによりかなり軽減される。このように図5(d)は浮遊容量Cg等を軽減させる他の実施例を示している。図より浮遊容量Cgは殆んどないことが理解できる。
図5(e)には上下の金属板11a、11bが対称でない場合を示す。金属面21b側の金属板11bはトイのように折り曲げられており、RFIDタグをほぼ3方(下面、左右の側面)で囲んでいる。下方の金属面21bのみの場合であれば、コイル2と金属面21bとの結合は弱く、浮遊容量Cgは小さくすることができる。
更に少し隙間l2を設けて上下の金属板11a、11bが接触しないように構成することにより、逆相の誘導電流を発生させることなく、コイル2と金属面21a、21bとの浮遊容量を著しく減ずることができる。
このように、磁性体板6の上下に設けた金属板11a、11bにより周囲や金属面に対するコイルの結合を抑制することができる。
図5(f)はコイル2を囲む上下の金属板11a、11bの一方を接続し(図中、右側面)、他方(図中、左側面)を絶縁開放している場合で、隙間に電圧が現れて磁界が漏洩するのを一方の隙間のみにした場合を示す。
図6は図5に示した例を含む他のバリエーションの実施例である。図6(a)は、金属板11a、11bの幅が磁性体板6より大きい場合を示す図である。図6(b),図6(c),図6(d)は図5(d)とほぼ同じ動作原理で多少金属板11a、11bの隙間の端部の構造が異なっている。図6(c),図6(d)は隙間端部の長さが長いので容量Cvも大きくなり、コイル電流と外部との結合も小さくなる。
図6(e)は図5(e)と同じ構造である。図6(f)は図6(e)の上部の金属板11aの遮蔽を更に徹底したものであり、下方金属面(21b)と上方金属面(21a)共に影響を受け難い。図6(g)、図6(h)は、図5(f)とほぼ同じ動作をする。
図6(i)はコイル2の上部が開放されているので、上方に金属板11aが直接置かれる場合には隙間がふさがれるので適切ではない。この場合には絶縁体や磁性体シートInsを挟む必要がある。これにより端部の電位と磁界の磁路を確保できる。
図7は多重影像効果の説明図である。図7(a)は、図1(a)の場合のように金属板11a、11bが小さい場合に外部の大きな金属面21a、21bにより上下に挟まれた場合を示す。この場合には金属板11a、11bのイメージ効果はもちろんあるが、外部の金属面21a、21bによるイメージ効果の方が大きい。金属板11a、11bがもともとあることにより先に述べたように金属板11a、11bが全くない時とは比べものにならない程金属面21a、21bによる影響を受けることはなく、従って特性の変化も少ない。金属板11a、11bが大きい場合はもちろんそれだけでほぼ完全に多重影像効果が発生する。なお、金属板21a、21bによるイメージ効果をマルチイメージ(multi image)として図示し、符号に「i」の添え字を用いて記す。また、Iはコイルに流れる電流の値を示す。実際に金属板11a、11bの厚みは0.1mm以下でほとんどないに等しい。従って21a、21b面と同じと考えてよい。
図1(b)のように金属板11a、11bの大きな場合の実施例では、充分に金属板11a、11bの中で影像効果(イメージエフェクト)があり、かつ外部の金属面21a、21bによる影響が遮蔽されているので殆んど変化がない。上部金属板11aと金属面21aにより上部に第一イメージを(符号6i−1、2i−1等)、下部金属板11bと金属面21bにより下部に第一イメージを作り(符号6i−2、2i−2等)、感度を上昇させることができる。
図7(b)は図6(b)の場合の多重イメージを示している。図6(b)に示す例では、上下部の金属板のみでなく、RFIDタグを囲むように脇の方にも金属板の一部が桶のように上下からかぶっているので、上下部のみでなく、側方にもこの金属によるイメージが現れる。
磁性体板6やRFIDタグ自体の厚みが薄い場合には、実際金属板11a、11bの側面部分の面積は小さいので、この場合には側方のイメージ効果もそれ程大きくならない。まして、上下の側板には隙間があるので完全なイメージを左右に発生させられない。
図7(c)は図6(g)の場合の多重イメージであり、上下の金属板11a、11bが一方の側方で接続されており、他方の側方で開放されている場合で、一個の隙間のみしか存在していない場合のイメージ効果を示す図である。中心に存在するものは実像で上、下、左、右、並びに斜め対角線上に存在するタグは影像(イメージ)によるものである。
このように、図7(a)は金属板11a、11bや金属面21a、21bによるイメージを加えると、3個即ち3倍、更に多重イメージ(図7(b)、図7(c))の発生を考慮すると多数のイメージが上、下に現れる。図7(b)、図7(c)はイメージを加えると9個即ち9倍となり、更に無限に多重のイメージの発生を考えることができる。一般には損失があり、かつ遠方になるに従ってイメージの効果は小さくなる。
図8は従来の一般のRFIDタグや非接触式ICカード、金属対応タグと本発明の多重影像方式(マルチイメージシステム)との違いを分かり易く示した図である。
図8(a)は一般のRFIDタグが近くに重なっている場合で、外部からの磁界とそれぞれのRFIDタグの中のコイル電流により発生する磁界がそれぞれ影響を及ぼす。RFIDタグが互いに近づけば近づく程相互インダクタンスMが大きくなり、単純に自己インダクタンスLのみで共振していたRFIDタグの共振周波数は大きくずれ、この結果コイル2の電流が殆んど流れなくなり、IC 3からの信号も得られなくなり、従って読み取り機のセンサとの通信を行えなくなる。
図8(b)は非接触式ICカード2枚が重なっている場合で、異なる組織が提供する非接触式ICカード(例えばスイカ(登録商標)とPASMO(登録商標)(パスモ)など)の場合、一方の非接触式ICカード(例えばパスモ)のコイルの一部を変えることにより、完全な結合が行われないようにすることと、一部のコイルが重なっていないので、外部磁界を受け易くするようにしている。このような場合に、更に多数の非接触式ICカードが重なると、特に中の非接触式ICカードが遮蔽されて読み取り機のセンサによってデータが読まれなくなる。
図8(c)は従来の角形RFIDタグで金属板11b1枚を添えただけなので、あまり遮蔽効果や分離効果はなく、RFIDタグ間の結合は隣のコイル間の浮遊容量や磁気結合によって大きく変化する。
もし、図8(c)のように金属板11bが中間に入っているが逆さになった場合には中間板はなくなる。上のRFIDタグの金属板11bが上側になる向きでRFIDタグが逆さに置かれた場合には、更に両RFIDタグの結合は大きくなり金属板11bがない場合と同等になるので、金属板11bの向きに注意しなければならず、総ての条件で金属板11bが役に立つわけではない。
図8(d)は図8(c)の場合においても本発明の一つである幅の広い金属板11b(または11a)を挿入する場合を示す図である。このようにすることにより、遮蔽効果と分離効果、イメージ効果を発揮することができる。しかし先にも述べたように、単に金属板11b(11a)を加えただけでは共振特性が大きくずれて使用不可能となる。これは1枚の金属板11bの効果によるものではなく、複数の金属板による影響を考慮して共振周波数を定め、更に金属板によりそれぞれのRFIDタグを分離し、イメージ効果を挙げるために添えられた遮蔽金属板11a(または11b)によって奏される効果である。
図8(e)は最初から本発明の多重影像方式によるRFIDタグ(以下、これをユニバーサルスマートタグという)を重ねた場合を示すもので金属板11a、11bはユニバーサルスマートタグに最初から取付けられている。従って重なる部分は2枚の金属板(上のユニバーサルスマートタグの金属板11bと下のユニバーサルスマートタグの金属板11a)がくっつくようになる。開口部磁界による上下の結合は、図示はしているがごくわずかで無視できる値となる。
ユニバーサルスマートタグはどのような場合にも特性をそこなわないように構成されており、直接金属体や金属面に取付けられることもあるので、図8(d)のように特別な場合として後に金属板を挿入することとは効果が同じになっても、使用条件や環境、目的によって異なることは理解できよう。
図9は本発明の薄形のユニバーサルスマートタグが可撓性(フレキシブル)になるための磁性体(磁性体板6)について説明する図である。
図9(a)はプラスチックやゴムRの中に磁性体粉末(磁性体粉末体)Fを混ぜて、可撓性のある、例えば0.1〜0.3mm厚のシートを構成したもので、一般的には大きなシートから切り出したり抜き型で抜いたりして成形するか、最初からこの大きさで成形するかでどのような方式をとってもよい。
図9(b)磁性体のグリーンシート合わせ、例えば0.1〜0.3mm厚にした後、焼結(焼成)し、これに薄い(例えば0.1mm以下)プラスチックシートPを貼り付け、磁性体を細かく切った(複数の切込みを入れた)割ったりしたもので、フェライトのように硬く、割れ易い特性をプラスチックシートPで回避する技術を使用する。
図9(a)、図9(b)等による技術を使用すると、図9(c)、図9(d)のようにx軸、y軸、両軸に対して可撓性(フレキシブル)なコア材ができ、後にRFIDタグや非接触型ICカードに成形した場合でも可撓性のある薄いRFIDタグや非接触型ICカードを完成することができる。
図9(e)は丸いものでも巻きつけられるようにして使用できるようにした例を示す。これは、例えば金属や木、プラスチック、動物等に巻きつけて使用する場合に用いる(後述する図11(f)参照)。
図9(f)は、高透磁率を持つ薄い金属テープ6Sを磁界の方向に並べ、薄いプラスチックシートPFで絶縁しながら積層にした場合を示す。金属テープ6Sの表面を絶縁膜でコーティングしたり、酸化膜による絶縁を行ったりして渦電流や誘導電流が流れないように金属磁芯を絶縁する。磁界は磁芯に沿って流れる。積層であるので曲げにも強い。特に高周波で損失が増えてフェライトコアが用いられなくなる周波数帯で、本発明の磁流形アンテナやセンサを用いるときは、図9(f)の方法によると解決できる場合がある。すなわち、感度のよい磁流アンテナが実現できる。
図10(a)は図9のような可撓性(フレキシブル)なコアである磁性体板6にコイル2を巻き(例えば、約20数巻)、この端部の接続線Wを介してIC 3に接続しているタグ本体の核の部分を示す。このままの状態ではインダクタンスは非常に大きい。金属板や金属面がそえられていない場合は、数巻で6μH程度は得られ、ICの容量と容易に共振をとることができるので、このことからインダクタンスは、非常に大きくなることは容易に想像がつく。図10(b)は磁性体板6の断面積(x×Δz;ここでΔzは磁性体板6の厚み)を大きくし、磁束が増えるように横幅xを図10(a)より大きくとっている。
磁路の長さyはほぼ同じくしているが、多少の長さの違いがあってもあまり影響しない。yは長い方が磁気モーメントは大きくなり外の磁界は強くなる方向である。
図のように単に可撓性のある磁性体コアである磁性体板6にコイル2を巻いただけの影像効果を用いない場合は、幅xを倍にすれば磁束は倍になるだけである。本発明の優れた特徴は図7にも示すように二面以上に金属板11a、11bを備え、金属面21a、21bを切り離し短絡電流を抑えることにより誘導電流(逆相電流)を完全に抑止し、かつ磁界の通り路や帰路を確保していることである。この点に注意しながら影像効果を利用し、単体で存在するよりも影像(イメージ)による多数のタグのみかけ上の磁界も加わり、隙間に大きな磁界強度が存在するように合成しているところにある。物理的には上下にイメージが存在することにより、上下の磁界は側方のみに凝縮されていることが分かる。
実際には金属板11a、11bや金属面21a、21bにより上下に広がる筈の磁界を集中させ、閉じ込めるようになるので、磁束が金属板11a、11bや金属面21a、21bに挟まれた空間に集中し、磁束密度が非常に大きくなる。
図11の例でも分かる通り、金属板11a、11bに挟まれた空間にはプラスチックや紙、誘電体等の絶縁体を置いたり、場合によっては磁性体を配置してもよい。
図10(b)のように横幅の広いxの長さを持ち、高さ△zの磁性体板6の断面Saはx×△zであるが、これが大きい程磁束が増えることは前にも述べた通りである。
コイル2(太さ2ρ=0.08〜0.1mm)を20数ターンし、磁路y方向に沿って巻いている。コイル2の端部は巻線の一部を利用して接続線Wとし、基板やフィルムキャリヤーやパッケージに装着されたIC 3に接続されている。
図10(c)は更に特別な多重影像方式のユニバーサルスマートタグのコア部分の構造を示す。
図10(a)、図10(b)やこれまで述べてきている金属板11a、11bに挟まれるコイル2とコアである磁性体板6部分がほぼ一層であったものが、図10(c)の場合は三層あるいは多層のコアとしている例を示している。
このような構造を取ることによって金属板11a、11bや金属面21a、21bに挟まれた上下の面の間に空間は存在しないため、逆相磁界が発生せず、同相磁界の存在により、多重影像効果により同相成分の追加のみになっていたが、図10(c)の場合には逆相成分が発生しないように帰路の磁路も追加することによって狭い範囲でも外部との結合ができる磁界を提供している。このようなタグは、多重影像効果による同相磁束密度の増加により、タグが重なった場合の他のタグとの分離(Separation)と干渉の発生の阻止のための遮蔽効果の目的に用いた方がよい。上下に帰路があるために狭い空間における読み取り機のセンサとの結合には役に立つ。
図10(d)は本発明のユニバーサルスマートタグを実施するに当ってもう一つの実施例を示す。
これまでの例は0.08〜0.1mm程度のエナメル線(ネオマール線、フォーマル線)等の絶縁細線を用いた例を示してきたが、図10(d)には薄いプラスチックや紙シートに細線をエッチングや、コーティングや印刷あるいは塗布することにより導線部を作り、あらかじめピッチの進みを考慮して折り曲げ、両端を融着や接着させることによりコイル2を形成させる方法を示している。一般の紙やプラスチックシートに平面的にコイル2をエッチングあるいは印刷し、コイルの端部はスルーホールを介する等して他の絶縁面によりコイルをクロスしても短絡しないように帰線を設け、IC 3用の端子を設けフリップチップ方式や融着による方法等で導通を行っている。基板の帰線は絶縁した方がよい。しかし、ここではフィルムを磁性体板6に沿って巻き込むようにしてコイル2を構成し、巻き終わりのコイル部の線が他のコイルの線と短絡しないように同一面あるいは反対の面を介して帰線を設け、両端子22a,22bによりIC 3と融着導通させる方式を用いている。この方法によると従来の平面上コイルによるインレットにIC 3を載せる場合と殆んど同じ工程でIC 3を載せることができ、量産に適している。
図10(e)は図10(d)が折り曲げられ、タグが形成される例を示す。図7等に示される金属板11a、11bの構造も他の面や更に添加される金属フィルム面も構成したままこのような構造に作り上げることにより、製造方法を簡略化できる。
図11は金属板11a、11bの大きさにより中に入るコアから生ずる磁界を金属板11a、11bの外にどの位漏洩させるようにするかを示す説明図である。
先に述べたように静電結合も磁気結合もある程度抑え、タグ間の干渉をなくし、金属面21a、21bから影響もなくし、かつ通信感度を上昇させるのが金属板11a、11bの目的である。もし、金属面が充分大きく、これに用いることがあらかじめ分かっているときは、金属板11a、11bを省き、金属面を金属板11a、11bの代わりとすることができる。
しかし、金属板11a、11bが小さすぎると効果は少なくなるし、逆に大きすぎて金属板に挟まれた空間のみに封じ込めると磁界が出てこないので、これも目的ではない。ある程度、金属板の外に磁界を出し、外部アンテナとの通信が行われるようにする。
従って、図11に示すように磁界を外部に漏洩させ通信を行わせるためには4〜5ケース(場合)の使用条件を考える必要がある。
図11(a)は金属板11a、11bが比較的小さく側方や後方に磁界が外部に漏洩している場合である。
金属板11a、11bは金属を蒸着したプラスチックフィルムや金属箔をラミネートしたプラスチックフィルム等を使用している。前方向の磁界は充分強いので、この方向の磁界を用いていれば充分にタグとして役に立つ。後方の磁界も比較的金属板11a、11bの外に漏洩しているのでこれも利用できる。側方の磁界も比較的金属板11a、11b外部に漏洩しているので、タグを横にして側方の磁界と結合して通信を行うこともできる。このようにして用いる場合も比較的多い。金属板11a、11bの側方の幅x’はコイル2とコアの幅xと比較すると1〜2倍程のところで使われることが多い。前述のようにどういう目的に使用するかにより適当なサイズにするとよい。放射用アンテナとして用いる場合には、この側方の放射電磁界を用いることになる。
つぎに図11(b)に示すように、磁界の軸方向yに後方に金属板11a、11bを長く構成しているので(y’)、磁界は殆んど後方には現れない。金属板11a、11bの前方と側方のみに磁界は現れるので、通信に使用できるのはこの磁界のみになる。
図11(c)は金属板11a、11bの横幅x’を広げて側方の磁界が殆んど漏洩しなくしている場合である。金属板11a、11bは先にも述べたように金属蒸着金属箔、金属フィルム、金属印刷や塗布等をプラスチックフィルムにラミネート、あるいは接着したものを用いている。
金属板11a、11bの隙間が狭くなるにつれ、磁界は上下からつぶされるようになるので幅x’の方向に広がる傾向になる。またコイル2に流れる電流Iが大きくなればなる程、磁界は強くなるので漏洩磁界の強さも上昇する。磁性体板6の透磁率も大きくなれば、当然、磁束も上昇する。従ってどの位のサイズにすればよいかは、使用条件や環境によっても異なる。側板や側面の大きさが大きくても問題にならない場合には、大きくした方が安全であるが、コストが上がるという反面もある。
従ってx’の大きさはxと比較すると3〜4倍程度であればよいと思われる。金属板11a、11bの間隙l1を一定に保つ方法としてはプラスチックや紙を充填したり、外側の金属板とプラスチックにコアの窪みをつけ、これに両側からはめ込んだりしてタグに成形する方法によってもよい。
図11(d)はコイル2とコアである磁性体板6やIC 3を比較的大きな金属板11a、11bの中に封じ込めた場合で、あまり大き過ぎると磁界が外部に出てこなくなる。しかし、金属板11a、11bに金属の切れ目(スリット)Slを入れることにより、磁界は多少この切れ目(スリット)Slを通じて外部に現れることができる。図11(d)では、金属板11aに、おおよそIC 3のあたりまでのスリットSlを入れた場合を示す(実線部)。このスリットSlは、図面の破線で示す部分まで、すなわち、金属板11aの他方の端まで入れてもよい。その場合、金属板が3分割されたことになる。このような場合には、多重影像効果を持ちながら上部金属板側にもかなりの磁界を発生させることができる。
金属板11a、11bを小さくし、小型化のタグを構成しながら磁界の側部や後方へ漏洩を小さくし前方のみの磁界を利用する方法を図11(e)に示す。金属板11a、11bに挟まれた空間の2方、あるいは3方を磁性体6aで囲むようにし、磁界の漏洩を抑えるようにする方法である。この方法は小型化には役立つがコストが上がることにもなるし、周囲の磁性体6aの効果が大きすぎると磁界が広がらなくなるという問題も発生する。
図11(f)は図9(f)に示す可撓性の磁性体を用いて、金属やプラスチック、木材、動物等に巻きつけ取付け易くした場合の例である。例えば図に示すように、金属板11a、11bも可撓性を有し、金属板11bを金属板11aより長く構成し、金属板11bに設けられた差込口12に差込部13を差し込むことで対象に取付けるような構成とする。巻きつけ方の一例でどのような巻きつけ方とめ方をしてもよい。図はタグとして描いているがセンサのみとしても同じで、物体に巻きつけて使用すると周囲に磁界が現れるので、どの方向でも通信ができる特徴がある。
また、タグの取付け方としては、例えば次のような方法がある。
1.タグにあらかじめ“のり”を付け、シリコン紙の上に載せはがれ易くしており、取付け時にシリコン紙からはずして機物に取付けられるようにする。
2.タグに両面テープを貼り付けて機物に取付けられるようにする。
3.タグに磁石を貼り付け、鉄器に取付ける。
なお、図11(a)〜図11(e)まではコイル2の図示を省略している。
図12は従来の金属対応タグを本発明の多重影像効果(マルチミラー(イメージ)エフェクト)を用い改善する場合を示す。これまでは本発明の実施をユニバーサルスマートタグをするため可撓性の磁性体板6を用いてきたが、従来の試作されているように金属を片側に当てたハード(固い)磁性体を用いたりしてもよい。
図12(a)は従来の金属対応タグを本発明の多重影像効果を用い改善する場合を示す斜視図である。ポリイミドの薄形フレキシブル基板の一面FPCBにはIC 3を載せるための端子Tと配線Wおよびコイル2の一辺をエッチングし、他の面は金属面1を残す。なお、金属面1’が金属板11aに、金属面1が金属板11bになることになる。そして、コイル2の他端の帰線の部分のみ金属面1から絶縁し(図12(c)のW)、またコイル2を作るための縦のスルーホールのため、この部分のみ金属を円形に取り除いておく(図12(e)の金属板11aの穴)。上下2面のみでなく三層とし、中間の金属面に帰線を作る場合にはスルーホールの部分のみ考慮すればよい。なお、2’は後にコイルが作られる部分(一部のみ図示)、4はコンデンサである。
上面のコイル2も同様にポリイミド基板で作り、グリーンシートを焼いた磁性体や、型で成形した粉末磁性体を焼いた磁性体コアあるいは先の可撓性(フレキシブル)磁性体コアを中に挟み、上下のスルーホールにピン(Pin)を立て、上下の線を導通させコイル2を形成させる。
図12(b)はこのようにして成形完成したタグを横からみた場合を示す。下部の基板はフレキシブル基板FPCBであり、実施例としてはポリイミドの基板を用いている。最下位は銅箔面の金属面1で次の層はポリイミドの絶縁層PIよりなる。その次の層がコイル2の一辺をつくるための金属箔層MEと、IC 3を載せるための接続線と端子を成形する金属線層MEである。この中間に帰線となる導電線層を設けてもよいし、最下位の金属面1である銅箔面の一部を絶縁して導線Wを作っても良い(図12(c))。この導線はエッチングとPinの導通を完了後、塗料などで絶縁等の表面処理をしておく必要がある。
IC 3を搭載した後はポッティングあるいは成形あるいはカバー等により均一の面や仕上がりとなるためプラスチックP0等で固めた方がよい。
図12(d)はIC 3の突起が表面に出ても差し支えない場合を示す。この場合上下ともに可撓性基板FPCB(ポリイミドの基板等)で磁性体板6を挟み込んだアンテナ部を作り、上部の一部にIC 3を載せるための導線と端子部を成作する。中部のコイルを成形する面とはポリイミドの絶縁層のスルーホールを介して導通を行う。上下の線を接続し、コイル2を形成させるのはスルーホールに立てるピンPinを介して行う。製造方法は図12(a),図12(b),図12(c)ともに類似している。
図12(e)は図12(a)の場合の上面の基板FPCBを残して描いている。図12(a)は金属面やFPCB面を描くと下面のコイル面が見えなくなるため省いているが、図12(e)では中のコイル面の方を省いて描いている。このように上の金属箔による金属板11a、11b面の一部にスルーホールのための金属が円形に抜けている部分が描かれている。
図13(a)はGSM(登録商標)方式(Global System for Mobile communications)等に用いられるSIM(Subscriber Identification Module)にセンサを応用した場合の例を示す図であり、金属板11a、11bでセンサのコイル2と中心の磁性体板6を挟んで磁界を集中させるとともに外部の金属面21a、21bの影響を取り除いている。図13(a)のSIMを携帯電話MPの中で用いる場合もあるだろうし、図のように外部から直接スリット57を介して挿入する場合もある。携帯電話にはシャシー、電池等の金属面が存在するのが普通であり、このような場合でも本発明の技術を有効に用いることができる。
図13(b)、図13(c)はUSBカードやSDカードに対応するようにSIMの応用をした場合を示し、携帯電話やPCに対応して用いることができる。図13(b)のSIM50は、携帯電話用のICが搭載され、例えば、シングルワイヤプロトコル(SWP)等でNFC(Near Field Communication)チップと接続され、整合器を介して本発明のセンサが取付けられている。また最初からIC 3を接触、非接触両機能を有するデュアルICを用い、本発明のセンサコイルに非接触端子を接続して用いることができる。前記のように外挿によりSIMカードを直接携帯電話やPCに直接挿入しNFC通信を行うことができる。SDカード型ホルダを介して、PC等に接続することもできる。また、SDカードやUSBスティック型の通信カードに同様に応用することもできる。
たとえば、図13(a)では、SIM 50を直接、或いはSDカード型アダプタ(SD card)51に挿入して、PCのカード用スリット(PC slit)52に挿入する構成である。ここで、7はSIMの端子であり、9はポリイミドやフィルムキャリア等のフレキシブル基板であり、53はNFCチップ(NFC chip)である。また、図13(b)では、SIM 50をUSBスティック型のアダプタ54(USB 54)に挿入して、PCのUSBポートに挿入する構成である。図13(c)はミニSDカード(mini SD card)56にセンサを応用した場合で(アンテナ部:磁性体板6とコイル2)、携帯電話やPCに応用でき、NFC(Near Field Communication)通信の実現ができる。なお、55はミニSDカード56の接触端子であり、図示していないが図面の下側にある。
図13(d)、図13(e)、図13(f)には、SIM内蔵のデュアルチップの機能やNFCチップを用いる構成によりSIMに非接触通信機能が備わり、このセンサコイルから発生する磁界を利用して携帯電話本体に取付けられたアンテナANTに信号を伝える3つの実施例を示している。SIMの取付け方に種々の方法があるので、ここではSIMとの結合方法の3例を述べる。
図13(d)には、SIMが上からはめ込まれる場合の例を示す。SIMの先端に取付けられたセンサコイル2により発生する磁界を携帯電話の中の送受信コイルCCで受信し、この先に接続されている携帯電話のアンテナANTに信号を伝え、外部に信号を伝送する方式である。
SIMのセンサコイル2との電磁結合をよくするため、磁界の帰路を確保するE形の磁性体66を用い、この中心磁路に結合用コイルCCが巻かれている。このコイルとANTコイルとを一体にしてもよいが、この場合にはコンデンサ44をこのコイルCCの一部に接続し、f=13.56MHzに共振するようにしておかなければならない。また、途中に外部に強い信号を送るためのブースタ回路を挿入してもよい。
図13(e)は、SIMがスリット等に沿って差し込まれる場合を示す。図13(e)(イ)は斜視図を、図13(e)(ロ)はセンサコイル2と結合コイルCCの断面図を示す(分かり易さのため、アンテナANTについては斜視図としている)。
SIMに取付けられたセンサコイル2を囲むように携帯電話側に結合コイルCCが取付けられている。このコイルCCと携帯電話のアンテナANTは連続して接続されている。
先の図13(d)の場合と同じように全体のコイル自体に共振電流が流れるようにコンデンサ44が接続されている。SIMの金属板11a、11bは磁性体の幅とほぼ同じであるので、側方にほとんどの磁界が現れているので、この磁界とは外部の筒形となっているコイルCCとはよく結合する。外部コイルの外側、特に上下に金属面が存在することが多いので、磁性体または絶縁体の層INSを結合コイルCCの外側に配設した方がよい。
図13(f)は、デュアルICチップを用い、SIM端子の第7、第8端子いわゆるRFU(Reserved for Future Use)端子にICの非接触信号部を接続し、この端子より、接触片を介して携帯電話のアンテナANTと接続させる場合を示す。
次に、本発明のユニバーサルスマートタグ(UST)(非接触情報記憶媒体)と、その情報の読み書きを行う本願発明をセンサに応用したリーダ/ライタ装置(情報読取書込装置)、読み取った情報を処理するパーソナルコンピュータ(PC)(情報処理装置)からなる管理システムについて、種々の例を用いて説明する。
図14(a)は垂直磁界を出すセンサ(sensor)コイル141(コイル部分を破線で図示)にマッチッング部(Mt)142を経てリーダ/ライタ部(R/W)143が接続され、このリーダ/ライタ部(R/W)143によって読みとられた情報がパーソナルコンピュータ(PC)144に表示、記録される場合の応用例を示している。本願発明のユニバーサルスマートタグ(UST)140の情報は、図示するようにして読み取ることができる。
図14(b)は、例えば金属面を有するPC等の管理用として、PC本体に本発明のユニバーサルスマートタグ(UST)140が取付けられた場合を示す。図14(c)はファイルや本の中、特に表紙の裏に本発明のユニバーサルスマートタグ(UST)140が取付けられた場合を示す。図14(d)はCDやDVDのケースに本発明のユニバーサルスマートタグ(UST)140が取付けられた場合を示す。図のような金属、紙、プラスチック、何でも本発明のユニバーサルスマートタグ(UST)140を使用することができる。すなわち、図14(b)〜図14(d)のように、ユニバーサルスマートタグ(UST)140が重なっている場合でも、図14(a)に示す読み取り機のセンサ141で、ユニバーサルスマートタグ(UST)140の情報を読み取ることができる。
図15は更に別の実施例を示す。図15のセンサは水平磁界を出すセンサ(Sensor)151で、PCや機器、器具、工具等の金属面に貼られたユニバーサルスマートタグ(UST)140がPCの筐体である金属面とセンサの間に挟まれた状態でもユニバーサルスマートタグ(UST)140を読み取り、PC等の金属面を有する物を識別や管理できることも示している。なお、153はリーダライタ部(R/W)、154はリーダライタ部(R/W)153で読まれた情報を処理するパーソナルコンピュータ(PC)である。
図16は本発明のユニバーサルスマートタグ(UST)の特徴を利用して、薄いユニバーサルスマートタグと同じように構成した薄いセンサ(図中、センサの板の下にセンサ側のコイルがある)161により、ユニバーサルスマートタグ(UST)160とセンサ161をつき合わせ、ユニバーサルスマートタグ(UST)160の一部をセンサ161の金属部162で覆うようにして磁界が漏洩しないようにし、他のユニバーサルスマートタグUSTやセンサとの分離を完全にするようにした例を示す。このような構造にすると、それぞれのユニバーサルスマートタグUSTとセンサは分離しているので、それぞれのユニバーサルスマートタグUSTに書き込みもできるし、どこの場所、どこのセンサに何のユニバーサルスマートタグが存在するかも判別することができる。
また、タグの取付け方のその他の応用例としては、折りたためるPC(例えばノート型PC)を折りたたんだ隙間にユニバーサルスマートタグを貼り付けるような場合が考えられる。また、携帯電話の折りたたみの隙間にユニバーサルタグを貼り付けるような場合が考えられる。このような場合は、この隙間から磁界を取出す。
以上のように、金属面があったり、RFIDタグが近接していたりして感度が劣化する環境においても、本発明の多重影像方式を利用した薄いタグやモジュールやカードやセンサは、多重影像方式による感度上昇の技術により、タグやモジュールやカードが保持する情報を読み取ることが可能となり、薄い本やファイル、金属面プラスチック等、あらゆる物の管理や整理が可能となる。
なお、本実施例では、平板(すなわち断面が四角形)の磁性体と2枚の金属板を用いて説明した。しかし、磁心としての磁性体は平板に限られず、例えば三角形状等の多角形や円筒形状等であってもよい。また、本実施例では、磁性体を挟んで対向する2枚の金属板を例として挙げたが、金属板は磁性体に沿って配置される複数枚のものであってよい。例えば、磁心の断面が三角形状であれば、三角錐の面に沿った3枚の金属板が考えられる。また、複数の金属板を考えるときに、そのうちの一部が連続していてもよい(例えば、2枚の金属板を考えるときの図6(h)参照)。複数の金属板の「一部」が不連続としたのは、少なくとも1箇所は閉路による逆相電流が発生しないように切っておくことが必要だからである。