JP5602933B1 - 加硫接着積層体、およびそれに用いるゴム組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】フッ素系ゴムとエピクロルヒドリン系ゴムとが強固に加硫接着した積層体を提供する。
【解決手段】(a)酸化マグネシウム、(b)チオウレア系加硫剤、(c)1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、及びそれらの塩より選択される少なくとも一種の化合物、(d)有機ホスホニウム塩類、有機アンモニウム塩類より選択される少なくとも一種の化合物、(e)無水マレイン酸変性ポリブタジエン、の(a)−(e)を少なくとも含有するエピクロルヒドリン系ゴム層と、
フッ素系ゴム層とが、加硫接着されているゴム積層体であって、
前記(b)チオウレア系加硫剤、(e)無水マレイン酸変性ポリブタジエンの含有量が、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して、それぞれ0.5〜2.0重量部、0.3〜1.5重量部であることを特徴とするゴム積層体。
【選択図】図1

Description

本発明は、エピクロルヒドリン系ゴム層とフッ素系ゴム層との加硫接着積層体、およびそれに用いるエピクロルヒドリン系ゴム組成物に関する。
フッ素系ゴムは、耐熱性・耐油性・耐オゾン性・耐薬品性等に優れているため、燃料用ホースなどの材料として着目されているが、高価である。そのため、耐油性を保持し、且つ可撓性を保持するためにフッ素系ゴムとエピクロルヒドリン系ゴムとを積層構造としてフッ素系ゴムの使用量を削減し、フッ素系ゴム側を油系媒体に接触する側に配置したものが用いられている。
しかし、フッ素は表面エネルギーが小さく他のポリマーと接着しにくい材料であるから、エピクロルヒドリン系ゴムに接着性を向上させるための添加剤を配合する必要がある。このような添加剤としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7塩(特許文献1,2)、数平均分子量1000以上のポリエーテル化合物(特許文献3)、分子内にアミジン骨格を有する強塩基性化合物とエポキシ樹脂との組み合わせ(特許文献4)、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7塩等、酸化マグネシウム、シリカ、エポキシ樹脂の組み合わせ(特許文献5)が提案されている。このような添加剤を配合したエピクロルヒドリン系ゴムは、フッ素系ゴムとの直接加硫接着が可能となるが、スコーチタイムが短くなり、混練、貯蔵、および成形時に焼けが生じやすく、作業性が低下してしまう。すなわち、ゴム組成物において、接着性と作業性とは、両立させることが困難な性質である。
特許文献6では、接着性を向上させるために、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等、エポキシ樹脂、水担持物質を添加し、さらに、スコーチ防止剤であるN−シクロヘキシルチオフタルイミド及び/またはジブチルジチオカルバミン酸ニッケルを配合することを提案している。しかし、エポキシ樹脂が強塩基である1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等を硬化促進剤として重合開始してしまうため、たとえスコーチ防止剤を配合していても、満足するスコーチタイムは達成できていない。
他方、フッ素系部材の表面を処理して接着性を向上させる方法も種々試みられており、プラズマ処理したフッ素樹脂層表面と、エピクロルヒドリン系ゴムとを加硫接着する方法も提案されている。(特許文献7)
また、特許文献8には、スコーチを起こしにくい添加剤を用いて、NBR等の合成ゴムと、フッ素ゴムとの加硫接着を可能にしている。この添加物をエピクロルヒドリン系ゴムに用いてフッ素系ゴムと加硫接着することは可能であるが、接着力と作業性の高いレベルでの両立ができていない。
特開平10−88076号公報 特開2011−5719号公報 特開2012−51348号公報 特開2012−81682号公報 特開2012−61644号公報 特開2013−43400号公報 特開2006−272739号公報 特開2011−201074号公報
本発明は、エピクロルヒドリン系ゴム層とフッ素系ゴム層とが強固に加硫接着する加硫接着積層体、及び、接着性と作業性とを両立させたエピクロルヒドリン系ゴム組成物を提供する。
上記課題を解決するための、本発明の主な構成は以下のとおりである。
1.(a)酸化マグネシウム、(b)チオウレア系加硫剤、(c)1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下DBUと略す。)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5(以下DBNと略す。)、及びそれらの塩より選択される少なくとも一種の化合物、(d)有機ホスホニウム塩類、有機アンモニウム塩類より選択される少なくとも一種の化合物、(e)無水マレイン酸変性ポリブタジエン、の(a)−(e)を少なくとも含有するエピクロルヒドリン系ゴム層と、
フッ素系ゴム層とが、加硫接着されているゴム積層体であって、
前記エピクロルヒドリン系ゴム層が含有する前記(b)チオウレア系加硫剤の含有量が、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.5〜2.0重量部であり、
前記エピクロルヒドリン系ゴム層が含有する前記(e)無水マレイン酸変性ポリブタジエンの含有量が、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.3〜1.5重量部であるゴム積層体。
2.前記フッ系素ゴム層がポリオール加硫剤を含有するフッ素系ゴムである1.に記載のゴム積層体。
3.1.または2.に記載のゴム積層体からなるフレキシブルホース。
4.(a)酸化マグネシウム、(b)チオウレア系加硫剤、(c)1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、及びそれらの塩より選択される少なくとも一種の化合物、(d)有機ホスホニウム塩類、有機アンモニウム塩類より選択される少なくとも一種の化合物、(e)無水マレイン酸変性ポリブタジエン、の(a)−(e)を少なくとも含有するエピクロルヒドリン系ゴム組成物であって、
前記(b)チオウレア系加硫剤の含有量が、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.5〜2.0重量部であり、
前記(e)無水マレイン酸変性ポリブタジエンの含有量が、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.3〜1.5重量部であるエピクロルヒドリン系ゴム組成物。
本発明により、エピクロルヒドリン系ゴム層とフッ素系ゴム層とが強固に加硫接着してなる積層体が得られた。このような積層体の用途としてはフッ素系ゴムの性質を十分に活用した燃料用ホース等が挙げられる。また、該積層体に使用したエピクロルヒドリン系ゴム組成物は接着力に優れ、フッ素系ゴム等の各種ゴム組成物と強固に加硫接着することができる。また、スコーチタイムが長く取扱性に優れ、混練、貯蔵、および成形時に焼けが起こりにくく製造コストの面でも非常に有利である。
内側にフッ素系ゴムを用い、外側にエピクロルヒドリン系ゴムを用いた二層構造のホース。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、(a)酸化マグネシウム、(b)チオウレア系加硫剤、(c)DBU、DBN、及びそれらの塩より選択される少なくとも一種の化合物、(d)有機ホスホニウム塩類、有機アンモニウム塩類より選択される少なくとも一種の化合物、(e)無水マレイン酸変性ポリブタジエン、の(a)−(e)を少なくとも含有するエピクロルヒドリン系ゴム層と、フッ素系ゴム層とが、加硫接着した積層体であって、前記エピクロルヒドリン系ゴム層が含有する前記(b)チオウレア系加硫剤の含有量が、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.5〜2.0重量部であり、前記エピクロルヒドリン系ゴム層が含有する前記(e)無水マレイン酸変性ポリブタジエンの含有量が、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.3〜1.5重量部である積層体、およびそれに用いるエピクロルヒドリン系ゴム組成物である。
[フッ素系ゴム]
本発明で使用するフッ素系ゴムは、特に限定されるものではなく、フッ素含有モノマーの共重合体又はフッ素含有モノマーと炭化水素モノマーとの共重合体でよい。
フッ素含有モノマーとしては、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニル等のフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン等のフルオロプロピレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)等が挙げられる。フッ素モノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
炭化水素モノマーとしては、エチレン、プロピレン等のオレフィン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル、酢酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル等のアクリル酸エステル等が挙げられる。炭化水素モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明において、フッ素系ゴムとしては、上記フッ素モノマーと炭化水素モノマーに加えて、加硫部位となるその他のモノマーを少量共重合した共重合体を用いてもよい。その他のモノマーとしては、2−ヨードペルフルオロプロペン、4−ヨードフルオロブテン−1等のヨウ素原子を含有するモノマー、ブロモトリフルオロエチレン、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1等の臭素原子を含有するモノマーが挙げられる。
本発明におけるフッ素系ゴムの具体例としては、好ましくはフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体等が挙げられる。フッ素系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
フッ素系ゴムの加硫剤としては、ポリアミン加硫剤、パーオキサイド加硫剤と、ポリオール加硫剤とがあるが、ポリオール加硫剤が好ましい。ポリアミン加硫剤を含有するフッ素系ゴムは接着性に優れるが、ムーニー粘度が高く押出成形には適さない。パーオキサイド加硫剤を含有するフッ素系ゴムは接着性に優れるが、高価である。本発明の添加剤を含有するエピクロルヒドリン系ゴムは接着性に優れており、ポリオール加硫剤を含有するフッ素系ゴムとも強固に加硫接着することができる。
本発明のフッ素系ゴムには、通常添加される公知の配合剤、例えば、充填剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、安定剤、および加工助剤などを適宜添加することができる。
[エピクロルヒドリン系ゴム]
本発明で使用するエピクロルヒドリン系ゴムとしては、例えば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、及び、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。より好ましくは、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体より選択される少なくとも1種の重合体である。エピクロルヒドリン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[(a)酸化マグネシウム]
酸化マグネシウムは、受酸剤として働き、接着性がより高くなる。本発明の積層体は、エピクロルヒドリン系ゴムが酸化マグネシウムを含有することを必須とすることで、優れた接着性を発揮する。
[(b)チオウレア系加硫剤]
チオウレア系加硫剤とは、2−イミダゾリンチオン、1,3−ジエチルチオウレア、1,3−ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、N,N’−ジフェニルチオウレア、1,3−ジオルトトリルチオウレア、ジラウリルチオウレア、テトラメチルチオウレアが用いられる。チオウレア系加硫剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
チオウレア系加硫剤の含有量は、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して、0.5〜2.0重量部が好ましく、1.0〜2.0重量部がより好ましい。含有量が0.5重量部未満の場合、フッ素系ゴムとの接着性が弱くなり、2.0重量部を超えると、スコーチタイムが短くなってしまう。
[(c)DBU、DBN、及びそれらの塩より選択される少なくとも一種の化合物]
使用するDBUの塩、DBNの塩としては、エピクロルヒドリン系ゴムの接着力を向上させるものであるならば特に限定されるものではない。具体的には、DBUの塩としては、DBU−炭酸塩、DBU−ステアリン酸塩、DBU−安息香酸塩、DBU−フェノール樹脂塩、DBU−トルエンスルホン酸塩等、DBNの塩としてはDBN−炭酸塩、DBN−ステアリン酸塩、DBN−安息香酸塩、DBN−フェノール樹脂塩、DBN−トルエンスルホン酸塩等が挙げられる。
これらの中で好ましいのは、DBU−フェノール樹脂塩である。
[(d)有機ホスホニウム塩類、有機アンモニウム塩類より選択される少なくとも一種の化合物]
使用する有機ホスホニウム塩類、有機アンモニウム塩類としては、エピクロルヒドリン系ゴムの接着力を向上させるものであるならば特に限定されるものではない。具体的には、有機ホスホニウム塩類としては、テトラブチルホスホニウム塩、テトラオクチルホスホニウム塩、メチルトリオクチルホスホニウム塩、ブチルトリオクチルホスホニウム塩、フェニルトリブチルホスホニウム塩、ベンジルトリブチルホスホニウム塩、ベンジルトリシクロヘキシルホスホニウム塩、ベンジルトリオクチルホスホニウム塩、ブチルトリフェニルホスホニウム塩、オクチルトリフェニルホスホニウム塩、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩等が挙げられる。有機アンモニウム塩類としては、トリメチルオクチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
これらの中で好ましいものは、テトラブチルホスホニウム塩である。
[(e)無水マレイン酸変性ポリブタジエン]
無水マレイン酸変性ポリブタジエンは、溶融させた無水マレイン酸と液状ポリブタジエンの直接反応により、ゴム中に酸を導入したものであり、本発明においては内添接着成分として用いられる。
無水マレイン酸変性ポリブタジエンは、DBU、DBU塩、DBN、DBN塩、有機ホスホニウム塩、有機アンモニウム塩と比較して、スコーチタイムを短くする副作用が小さい接着性付与剤である。
無水マレイン酸変性ポリブタジエンの含有量は、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して、0.3〜1.5重量部が好ましく、より好ましくは0.3〜1.0重量部、さらに好ましくは0.3〜0.7重量部である。0.3重量部以下では十分な接着性が得られず、1.5重量部以上ではスコーチタイムが短くなり取り扱い性が低下する。
本発明において、エピクロルヒドリン系ゴム組成物には上記5種類の配合剤のすべてが不可欠である。特に、無水マレイン酸変性ポリブタジエンを含有させることで、他の配合剤の含有量を増やすことなく、接着力に優れるとともに、混練、貯蔵、および成形時に焼けが起こりにくいエピクロルヒドリン系ゴム組成物を得ることができる。
エピクロルヒドリン系ゴム組成物には、上記以外にも、通常含有される公知の配合剤、例えば、カーボンブラック、充填剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、安定剤、および加工助剤などを適宜含有させることができる。
本発明において、加硫前のエピクロルヒドリン系ゴム組成物は、作業性の点から、スコーチタイム t5(L型ローター,125℃)が、10分以上であることが好ましく、12分以上であることがより好ましい。本発明のエピクロルヒドリン系ゴム組成物は、接着性に優れているため、フッ素系ゴムだけでなく、その他のゴムと強固に加硫接着することができる。
[加硫接着積層体の製造方法]
本発明の加硫接着積層体を製造する方法としては、公知の方法を制限することなく利用することができる。例えば、フッ素系ゴムからなる層とエピクロルヒドリン系ゴムからなる層を共押出し、次いで加硫する方法や、一方のゴムからなる層を形成し、次いで他方のゴムで被覆層を形成した後に加硫する方法、一方のゴムの層を加硫した後に他方のゴムの層を積層させて、次いで他方の層を加硫する方法等が挙げられる。
本発明の加硫接着積層体がホースである場合には、上記の方法に加えてマンドレルに未加硫の積層体を被覆し、これを加硫する方法も採用できる。
[加硫接着積層体の用途]
本発明の加硫接着積層体は、燃料用ホース、アルコールや油脂等を輸送するためのホース、油滴を含有するような空気等を搬送するためのホース、鉱物油やLPガス、天然ガス等の炭化水素含有液体又は気体を搬送するためのホース等の各種フレキシブルホース、あるいはこれらの流体を保管するための容器、さらには、これらの流体と接する工業用ベルト、緩衝材、パッキン、オイルシール、防振材、シート、ブーツ等の機械部品、設備部品、建築部品、装置の部品等各種用途に使用できる。
本発明の加硫接着積層体からなるフレキシブルホースとしては、例えば、図1に示すように、フッ素系ゴムを内層1、エピクロルヒドリン系ゴムを外層2とする二層構造のホースとすることができる。燃料、アルコール、LPガス等の親油性化合物を含む搬送物と接するホース内面には、フッ素系ゴム層を形成し、ホース外面側の層にはエピクロルヒドリン系ゴムからなる層を形成する。同じく、フレキシブルホース以外の積層体においても、燃料、アルコール、LPガス等と接する面にはフッ素系ゴム層を形成する。
また、二層構造の積層体に限定されるものではなく、エピクロルヒドリン系ゴム層とフッ素系ゴム層とが直接加硫接着している構造体であれば、他の層を有していてもよい。具体的には、フッ素系ゴム層/エピクロルヒドリン系ゴム層/フッ素系ゴム層からなる積層体や、フッ素系ゴム層/エピクロルヒドリン系ゴム層/繊維補強層/外被層からなる積層体も本発明の範囲内である。
次に、本発明を実施例に基づいて、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表1に示す量で各成分を配合し、ニーダーを用いて混練りし、フッ素系ゴム組成物を得た。このフッ素系ゴム組成物から、8インチロールを用いて厚さ2mmのフッ素系ゴムシートを作成した。
フッ素系ゴム:ダイエルG558(ダイキン工業株式会社製:ポリオール加硫系)
カーボンブラック:シーストS(東海カーボン株式会社製)
水酸化カルシウム:CALDIC#2000(近江化学工業株式会社製)
酸化マグネシウム:MgO#150(協和化学工業株式会社製)
表2、3に示す量で各成分を配合し、ニーダーを用いて混練りし、エピクロルヒドリン系ゴム組成物を得た。このエピクロルヒドリン系ゴム組成物から、8インチロールを用いて厚さ2mmのエピクロルヒドリン系ゴムシートを作成した。
エピクロルヒドリン系ゴム:エピクロマーC(ダイソー株式会社製)
カーボンブラック:旭#60G(旭カーボン株式会社製)
炭酸カルシウム:スーパーS(丸尾カルシウム株式会社製)
可塑剤:アジピン酸ビス[2−(2−ブトキシエトキシ)エチル]
受酸剤:DHT−4A(協和化学工業株式会社製)
加硫調整剤:ノクセラーCZ−G(大内新興化学工業株式会社製)
酸化マグネシウム:キョーワマグ150(協和化学工業株式会社製)
チオウレア系加硫剤:トリメチルチオウレア
DBU−フェノール樹脂塩:P−152(ダイソー株式会社製)
有機ホスホニウム塩:Dynamar FX−5166(スリーエム社製)
無水マレイン酸変性ポリブタジエン:Ricobond 1753HS(CRAY VALLEY社製)
表4に示す量で、上記特許文献8(特開2011−201074号公報)で使用した5種類の配合剤を含有する、比較例であるエピクロルヒドリン系ゴム組成物を得た。このエピクロルヒドリン系ゴム組成物から8インチロールを用いて厚さ2mmのエピクロルヒドリン系ゴムシートを作成した。
有機過酸化物:パーブチルP(日油株式会社製)
シリカ:ハイシル233(PPG industries社製)
有機ホスホニウム塩:ゼオネットPB(日本化学工業株式会社製)
無水マレイン酸変性ポリブタジエン:Ricobond 1756(CRAY VALLEY社製)
上記により得た厚さ2mmの未加硫のフッ素系ゴムシートと厚さ2mmの未加硫のエピクロルヒドリン系ゴムシートとを前処理として100℃×5分間プレスし、これを160℃×30分間蒸気加硫することによってエピクロルヒドリン系ゴム層とフッ素系ゴム層との加硫接着積層体からなる試験片を作成した。
[物性評価]
実施例、および比較例であるエピクロルヒドリン系ゴム組成物、および加硫接着積層体の物性を測定した。各測定結果を下記表5に示す。
(スコーチ性評価)
混練りした未加硫の各エピクロルヒドリン系ゴム組成物について、JIS K6300−1記載の方法に準じて、スコーチタイム t5(L型ローター,125℃)を測定した。
(作業性評価)
未加硫のエピクロルヒドリン系ゴムシートと未加硫のフッ素系ゴムシートとをプレスして加硫接着させた後に、積層体のプレスからの取り出しやすさを下記の基準に基づいて作業性を評価した。
○:プレスと積層体が密着しておらず、ゴムシートを容易に取り出せる。
△:プレスと積層体が密着しているが、ゴムシートは取り出せる。
×:プレスと積層体が密着してしまい、ゴムシートが取り出せない。
(接着性評価)
加硫接着積層体から、25mm幅×100mm長の試験片を切り出した。この試験片を引張試験機に取り付け、エピクロルヒドリン系ゴム層とフッ素系ゴム層との界面における剥離状態から、下記の基準に基づいて接着性を評価した。■離試験は、引張試験機(株式会社 島津製作所製:オートグラフ)を用い、室温で毎分25mmの速さで引っ張って行った。
○:全面的にゴム凝集破壊したもの
△:部分的に界面剥離したもの
×:全面的に界面剥離したもの
「まとめ」
実施例1〜6で得られた本発明の加硫接着積層体は、剥離試験を行うと全面的にゴム凝集破壊を起こし、両層間の接着性に優れていた。また、実施例1〜6で用いた本発明の未加硫のエピクロルヒドリン系ゴム組成物は、10分以上の実用的なスコーチタイムを有し、プレスとも密着せずに作業性に優れていた。
比較例1〜5で用いた、本発明の必須配合剤のうち1種類の配合剤を抜いたエピクロルヒドリン系ゴム組成物は、スコーチタイムは長く、作業性も良好であった。しかし、このエピクロルヒドリン系ゴム組成物は加硫反応が進行しにくいため、十分な接着力を有する加硫接着積層体は得られず、剥離試験を行うと、界面での剥離が見られた。
比較例6、7で用いたエピクロルヒドリン系ゴム組成物は、本発明の必須配合剤を全て含有するが、その含有量が本発明で定める量よりも多い。そのため、両層間の接着性に優れた加硫接着積層体が得られた。しかし、このエピクロルヒドリン系ゴム組成物は、加硫反応が進行しやすいため、スコーチタイムが短く、プレスにも密着してしまい作業性に劣っていた。
また、従来の配合剤を大量に含有する比較例8で用いたエピクロルヒドリン系組成物は作業性に劣り、従来の配合剤を少量含有する比較例9で用いたエピクロルヒドリン系組成物は接着性に劣っていた。比較例8の配合剤含有量と、比較例9の配合剤含有量との間に、作業性と取り扱い性とのバランスの取れた配合剤含有量が存在する可能性もある。しかし、その特定量の配合剤を含有する組成物、およびこの組成物から得られた加硫接着積層体の物性は、比較例8の物性と比較例9の物性との間に存在するはずであり、本発明である実施例1〜6の物性と比較すると見劣りすることが予想される。
1.フッ素系ゴムからなる内層
2.エピクロルヒドリン系ゴムからなる外層

Claims (4)

  1. (a)酸化マグネシウム、(b)チオウレア系加硫剤、(c)1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、及びそれらの塩より選択される少なくとも一種の化合物、(d)有機ホスホニウム塩類、有機アンモニウム塩類より選択される少なくとも一種の化合物、(e)無水マレイン酸変性ポリブタジエン、の(a)−(e)を少なくとも含有するエピクロルヒドリン系ゴム層と、
    フッ素系ゴム層とが、加硫接着されているゴム積層体であって、
    前記エピクロルヒドリン系ゴム層が含有する前記(b)チオウレア系加硫剤の含有量が、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.5〜2.0重量部であり、
    前記エピクロルヒドリン系ゴム層が含有する前記(e)無水マレイン酸変性ポリブタジエンの含有量が、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.3〜1.5重量部であることを特徴とするゴム積層体。
  2. 前記フッ系素ゴム層がポリオール加硫剤を含有するフッ素系ゴムであることを特徴とする請求項1に記載のゴム積層体。
  3. 請求項1または2に記載のゴム積層体からなることを特徴とするフレキシブルホース。
  4. (a)酸化マグネシウム、(b)チオウレア系加硫剤、(c)1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、及びそれらの塩より選択される少なくとも一種の化合物、(d)有機ホスホニウム塩類、有機アンモニウム塩類より選択される少なくとも一種の化合物、(e)無水マレイン酸変性ポリブタジエン、の(a)−(e)を少なくとも含有するエピクロルヒドリン系ゴム組成物であって、
    前記(b)チオウレア系加硫剤の含有量が、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.5〜2.0重量部であり、
    前記(e)無水マレイン酸変性ポリブタジエンの含有量が、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.3〜1.5重量部であることを特徴とするエピクロルヒドリン系ゴム組成物。
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