以下に、本願の開示する水位監視装置、水位監視方法及び水位監視プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例は開示の技術を限定するものではない。そして、各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
[システム構成]
まず、本実施例に係る防災システムのシステム構成について説明する。図1は、実施例1に係る防災システムのシステム構成を示す図である。図1に示す防災システム1には、水位監視装置10と、カメラ30A〜30Cと、河川情報管理装置50と、利用者端末70とが収容される。なお、図1の例では、水位監視装置10が同じ河川の流域に点在して設けられたカメラ30A〜30Cによって河川の観測地点が撮像された観測画像を用いて、観測地点における河川の水位を監視する場合を想定する。
これら水位監視装置10と、カメラ30A〜30Cと、河川情報管理装置50と、利用者端末70との間は、ネットワーク3を介して通信可能に接続される。なお、ネットワーク3の一態様としては、インターネット(Internet)、LAN(Local Area Network)やVPN(Virtual Private Network)などの通信網が採用される。
図1の例では、1つの水位監視装置10、3つのカメラ、1つの河川情報管理装置、1つの利用者端末70、をそれぞれ図示したが、開示のシステムは図示の構成に限定されない。すなわち、防災システム1は、少なくとも1組のカメラ及び水位監視装置が収容されていればよく、任意の数の水位監視装置、カメラ、河川情報管理装置及び利用者端末を収容できる。なお、以下では、カメラ30A〜カメラ30Cの各装置を区別なく説明する場合には、「カメラ30」と表現する場合がある。
カメラ30は、画像を撮像する撮像装置である。かかるカメラ30の一例としては、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などを用いた撮像装置が挙げられる。
さらに、カメラ30は、ネットワークカメラとして機能し、河川の観測地点を撮像した観測画像をネットワーク3を介して水位監視装置10へ送信する。ここで、河川の観測地点を撮像するにあたって必ずしも新たにカメラを設置する必要はない。例えば、カメラ30には、河川の管理を目的として既に設置されているCCTV(Closed-circuit Television)カメラを流用することもできる。このように多数の河川で広域かつ高密度に設置されているCCTVカメラを用いれば、カメラの設置に関するイニシャルコストを低減できる。なお、本実施例では、局地的な豪雨による増水を検知する観点から、観測地点が河川の中心線上に1km間隔で設定される場合を想定して説明を行う。
河川情報管理装置50は、河川に関する総合的な情報、例えば雨量、流量、取水量、水質などを収集して管理する装置である。例えば、河川情報管理装置50は、図示しないレーダやテレメータによって計測された雨量を取得する。そして、河川情報管理装置50は、レーダ及びテレメータのうち河川の流域に設けられたレーダ及びテレメータによって計測された雨量から、河川の流域に含まれる降雨地域の平均雨量を算出した上で水位監視装置10へ通知する。
利用者端末70は、各種の利用者によって使用される情報処理装置である。かかる利用者端末70の一態様としては、防災システム1の監視設備として供される監視モニタ、防災システム1の関係者によって使用される情報処理装置などが挙げられる。他の一態様としては、メディアの放送設備として供されるサーバ装置が挙げられる。更なる一態様としては、ネットワーク3にアクセスするエンドユーザによって使用される情報処理装置が挙げられる。なお、上記の情報処理装置は、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)を始めとする固定端末に限定されず、携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)やPDA(Personal Digital Assistant)等の移動体端末も採用できる。
水位監視装置10は、河川の水位を監視する装置である。一例としては、水位監視装置10は、河川情報管理装置50から河川の流域に含まれる降雨地域の平均雨量を受け付けると、降雨地域内に存在する観測地点を特定する。そして、水位監視装置10は、降雨地域内に存在する観測地点を撮像可能なカメラ30を選択し、河川の観測地点をカメラ30に撮像させる。その上で、水位監視装置10は、カメラ30によって撮像された観測画像から検出した観測地点の水位が所定の増水基準を満たしたか否かを判定する。このとき、水位監視装置10は、観測地点の水位が増水基準を満たすと判定した場合に、増水している観測地点を利用者端末70へ報知する。
ここで、本実施例に係る水位監視装置10は、河川の流域を撮像可能に設けられたカメラ30から、河川の流域のうち観測対象とする観測地点を含んで撮像された観測画像を取得する。そして、本実施例に係る水位監視装置10は、観測画像からエッジ検出によって得られる互いの向きが類似する複数のラインのうち、観測画像のフレーム間で形状が変化せず、かつ観測画像上で最上位に位置する第1のラインを検出する。また、本実施例に係る水位監視装置10は、観測画像からエッジ検出によって得られる互いの向きが類似する複数のラインのうち、観測画像のフレーム間で形状が変化する第2のラインを検出する。その上で、本実施例に係る水位監視装置10は、先に検出した第1のライン及び第2のラインに基づいて、観測地点の水位を監視する。
このように、本実施例に係る水位監視装置10は、河川の観測画像から検出される略平行なライン群のうち最上位に位置し形状が時間変化しない第1のラインを検出することによって観測画像内に写る堤防ラインを推定できる。さらに、本実施例に係る水位監視装置10は、河川の観測画像から検出される略平行なライン群のうち形状が時間変化する第2のラインを検出することによって観測画像内に写る水面ラインを推定できる。これによって、本実施例に係る水位監視装置10では、観測画像から検出された堤防ライン及び水面ラインを用いて観測地点の水位を監視できる。
それゆえ、本実施例に係る水位監視装置10は、事前に計測した三次元空間情報もしくは参照用画像と観測画像とを比較せずとも、観測画像を使用するだけで観測地点の水位を監視できる。したがって、本実施例に係る水位監視装置10によれば、事前準備なしに水位を監視できる。さらに、本実施例に係る水位監視装置10では、事前に計測した三次元空間情報もしくは参照用画像を使用しないので、観測地点における河川の環境が変化したとしても三次元空間情報や参照用画像を改めて登録し直す必要もない。
[水位監視装置の構成]
続いて、本実施例に係る水位監視装置の構成について説明する。図2は、実施例1に係る水位監視装置の構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、水位監視装置10は、通信I/F(Interface)部11と、記憶部12と、制御部13とを有する。なお、水位監視装置10は、図2に示した機能部以外にも既知のコンピュータが有する各種の機能部、例えば各種の入力デバイス、音声出力デバイスや表示デバイスなどの機能を有するものとする。
このうち、通信I/F部11は、他の装置、例えばカメラ30、河川情報管理装置50や利用者端末70との間で通信制御を行うインタフェースである。一例としては、通信I/F部11は、カメラ30の制御コマンドをカメラ30に送信したり、カメラ30から観測画像を受信したりする。他の一例としては、通信I/F部11は、河川情報管理装置50から河川の流域に含まれる降雨地域の平均雨量を受信したりする。更なる一例としては、通信I/F部11は、増水している観測地点に関する電子地図、観測画像や電子メールなどを送信したりする。かかる通信I/F部11の一態様としては、LANカードなどのネットワークインタフェースカード(NIC:Network Interface Card)やモデムを採用できる。
記憶部12は、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子、ハードディスク(hard disk)、光ディスクなどの記憶装置である。なお、記憶部12は、上記の種類の記憶装置に限定されるものではなく、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)であってもよい。
記憶部12は、制御部13で実行されるOS(Operating System)や観測画像から観測地点の水位を監視する水位監視プログラムなどの各種プログラムを記憶する。さらに、記憶部12は、制御部13で実行されるプログラムの実行に必要なデータを記憶する。一例として、記憶部12は、観測画像メタデータ12aと、カメラメタデータ12bと、電子地図データ12cと、河川ラインデータ12dと、危険地点データ12eとを記憶する。
このうち、観測画像メタデータ12aは、観測画像を管理するためのメタデータである。かかる観測画像メタデータ12aの一態様としては、地点番号、水系、河川、kp(キロポスト)、カメラID(identification)、取込日時及びファイル名などが対応付けられたデータを採用できる。なお、観測画像メタデータ12aは、カメラ30によって河川の観測地点が撮像された観測画像が記憶部12に格納された場合に後述の取得部14によって登録される。
ここで言う「地点番号」とは、観測地点を識別する番号を指す。また、「水系」とは、一つの川の流れを中心とし、それにつながる支流を含めた流水を指す。また、「河川」とは、支流および本流などの流水を指す。また、「kp」とは、河口または合流点からの距離を標示する距離標示を指す。また、「カメラID」は、カメラ30を識別する識別子を指す。また、「取込日時」とは、カメラ30から観測画像が取り込まれた日時を指し、例えば、「mm/dd/hh/mm/ss」で表記される。また、「ファイル名」は、観測画像のファイル名を指し、例えば、後述の取得部14によって地点番号及び取込日時から生成される。
図3は、観測画像メタデータ12aの一例を示す図である。図3は、地点番号「000001」の観測地点が撮像された観測画像のメタデータを示す。図3の例では、水系「××」と河川「○○」とが異なるので、地点番号「000001」の観測地点が支流であることを示す。さらに、図3の例では、本流からの合流点から0キロポストにあるので、支流と本流の合流点であることを示す。さらに、図3の例では、カメラ30から取得された観測画像が「9月21日 10時00分00秒」から1秒おきに取り込まれたことを示す。なお、ここでは、観測画像のファイル名をメタデータとして記憶する場合を例示したが、観測画像そのものをバイナリ形式で記憶することとしてもかまわない。
カメラメタデータ12bは、カメラ30を管理するためのメタデータである。かかるカメラメタデータ12bの一態様としては、カメラID、緯度、経度、マルチキャストアドレス、ポート番号、水系、河川、岸別、使用可能な制御コマンド及び基準撮像位置などが対応付けられたデータを採用できる。ここで言う「制御コマンド」とは、カメラ30を制御するコマンドを指し、一例としては、パンやチルトなどのカメラの姿勢制御、ズーム機能による倍率制御、バッテリ制御が挙げられる。また、「基準撮像位置」とは、カメラ30の姿勢制御がなされていないニュートラルな状態でカメラ30が撮像する撮像範囲の中でも中心位置または重心位置を指す。なお、カメラメタデータ12bは、カメラ30が新たに設置されたり、あるいは取り外されたりした場合にそのカメラ30のメタデータが追加または削除される。
図4は、カメラメタデータ12bの一例を示す図である。図4の例では、カメラID「00001」のカメラが河川「○○」の右岸、すなわち緯度「35.49.20」、経度「139.54.29」の地点に設置されていることを示す。このカメラID「00001」のカメラには、マルチキャストアドレス「239.196.73.150」及びポート番号「6037」のネットワークアドレスが付与されている。さらに、カメラID「00001」のカメラは、制御コマンドのうちコマンドA〜Fを使用可能であり、カメラの姿勢が制御されていない状態で緯度「35.50.00」、経度「139.55.00」、高さ「15.05(m)」の地点を撮像する。
また、図4の例では、カメラID「00002」のカメラが河川「○○」の右岸、すなわち緯度「35.49.17」、経度「139.54.30」の地点に設置されていることを示す。このカメラID「00002」のカメラには、マルチキャストアドレス「239.196.73.151」及びポート番号「6038」のネットワークアドレスが付与されている。さらに、カメラID「00002」のカメラは、制御コマンドのうちコマンドA〜Gを使用可能であり、カメラの姿勢が制御されていない状態で緯度「35.20.00」、経度「139.55.00」、高さ「5.30(m)」の地点を撮像する。
また、図4の例では、カメラID「XXXXX」のカメラが河川「○○」の左岸、すなわち緯度「35.31.39」、経度「139.14.08」の地点に設置されていることを示す。このカメラID「XXXXX」のカメラには、マルチキャストアドレス「239.196.152.41」及びポート番号「8001」のネットワークアドレスが付与されている。さらに、カメラID「XXXXX」のカメラは、制御コマンドのうちコマンドA〜Zを使用可能であり、カメラの姿勢が制御されていない状態で緯度「35.35.00」、経度「139.16.00」、高さ「11.20(m)」の地点を撮像する。
電子地図データ12cは、水位監視装置10が監視対象とする河川の流域を含む地図のデータである。かかる電子地図データ12cの一態様としては、ラスタ形式またはベクタ形式によって表現された河川の地図画像に河川の中心線および観測地点の位置情報が対応付けられたデータを採用できる。なお、電子地図データ12cは、河川の流域の地図が更新された場合に、図示しない外部装置から新たな電子地図データをダウンロードすることもできる。
河川ラインデータ12dは、観測画像から検出される河川の各種ラインに関するデータである。一例として、河川ラインデータ12dは、河川の水位を監視するために、観測画像から検出された堤防ライン及び水面ラインに関する情報が後述の検出部16によって登録される。ここで言う「堤防ライン」は、後述の第1の検出部16bによって観測画像から堤防と推定して検出されるラインである。この堤防ラインは、あくまでも堤防として推定されるラインであり、実際には堤防でなく川岸であってもかまわない。また、「水面ライン」は、後述の第2の検出部16cによって観測画像から水面と推定して検出されるラインである。他の一例として、河川ラインデータ12dは、観測地点が増水しているか否かを判定するために、後述の監視部17によって参照される。
かかる河川ラインデータ12dの一態様としては、地点番号、水系、河川、kp、カメラID、検出日時、水面高及び堤防高が対応付けられたデータを採用できる。ここで言う「検出日時」とは、後述の検出部16によって堤防ライン及び水面ラインが検出された日時を指す。また、「水面高」は、観測画像内における河川の中心線から水面ラインまでの距離を指す。また、「堤防高」は、観測画像内における河川の中心線から堤防ラインまでの距離を指す。
図5は、河川ラインデータ12dの一例を示す図である。図5の例では、カメラID「00001」のカメラに撮像させる観測地点が河川の合流点から0キロポストの地点番号「000001」、1キロポストの地点番号「000002」、2キロポストの地点番号「000003」の順に10分間隔で変更されたことを示す。このうち、図5に示す地点番号「000001」の観測地点では、堤防高「15.0(m)」に対し、水面高が「5.0(m)」「5.1(m)」「5.2(m)」と1分間で0.1mずつ変化していることを表す。また、図5に示す地点番号「000002」の観測地点では、堤防高「15.2(m)」に対し、水面高が「5.1(m)」「5.2(m)」「5.3(m)」と1分間で0.1mずつ変化していることを表す。さらに、図5に示す地点番号「000003」の観測地点では、堤防高「15.3(m)」に対し、水面高が「5.3(m)」「5.4(m)」「5.5(m)」と1分間で0.1mずつ変化していることを表す。
また、図5の例では、カメラID「00002」のカメラに撮像させる観測地点が河川「○○」の合流点から3キロポストの地点番号「000004」、4キロポストの地点番号「000005」の順に10分間隔で変更されたことを示す。このうち、図5に示す地点番号「000004」の観測地点では、堤防高「10.3(m)」に対し、水面高が「5.2(m)」「5.3(m)」「5.4(m)」と1分間で0.1mずつ変化していることを表す。
危険地点データ12eは、河川の観測地点のうち増水のおそれがある危険地点に関するデータである。一例として、危険地点データ12eは、報知の対象とする観測地点を抽出するために、観測画像から検出された水位が所定の増水基準を満たすと判定された観測地点が危険地点として後述の監視部17によって登録される。他の一例として、危険地点データ12eは、危険地点を報知するために、後述の報知制御部18によって参照される。
かかる危険地点データ12eの一態様としては、地点番号、水系、河川、kp、カメラID、マルチキャストアドレス、ポート番号、判定日時、緯度及び経度が対応付けられたデータを採用できる。ここで言う「判定日時」とは、後述の監視部17によって観測地点が危険地点と判定された日時を指す。なお、上記のカメラID、マルチキャストアドレス、ポート番号、判定日時、緯度及び経度のカラムには、危険地点を撮像したカメラ30のメタデータが登録される。
図6は、危険地点データ12eの一例を示す図である。図6の例では、河川「○○」が本流に合流する地点から0キロポスト、1キロポスト、2キロポスト、3キロポスト及び4キロポストの地点番号「000001」〜「000005」の観測地点が危険地点としてリストアップされていることを示す。また、地点番号「000001」〜「000005」の観測地点のうち地点番号「000001」〜「000003」の観測地点がカメラID「00001」のカメラによって撮像された観測地点であることを示す。さらに、地点番号「000004」〜「000005」の観測地点がカメラID「00002」のカメラによって撮像された観測地点であることを示す。
制御部13は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部13は、図2に示すように、取得部14と、カメラ制御部15と、検出部16と、監視部17と、報知制御部18とを有する。
取得部14は、カメラ30から河川の観測地点を含んで撮像された観測画像を取得する処理部である。これを説明すると、取得部14は、後述のカメラ制御部15によってカメラ30の水平回転及び/又は仰角とカメラ30の倍率との調整がなされて撮像された観測画像を取得する。このとき、取得部14は、カメラ30によって送信される観測画像がMPEG等の動画の圧縮方式により圧縮されている場合には、カメラ30から受信した動画を所定の間隔、例えば1フレーム/秒ごとにJPEG等の静止画の圧縮方式にトランスコードする。そして、取得部14は、トランスコードした静止画の観測画像を記憶部12へ格納するとともに、カメラ30から観測画像を取り込んだ取込日時及びカメラIDからファイル名を生成する。その上で、取得部14は、観測画像のヘッダに含まれる情報、例えば地点番号、水系、河川、kp及びカメラIDとともに取込日時及びファイル名を観測画像メタデータ12aとして記憶部12に登録する。なお、上記の「MPEG」は、「Moving Picture Experts Group」の略称であり、また、上記の「JPEG」は、「Joint Photographic Experts Group」の略称である。
なお、ここでは、カメラ30によって送信された観測画像の動画を静止画に変換する場合を例示したが、観測画像を動画のまま記憶部12へ取り込むこととしてもよい。また、ここでは、カメラ30から受信した動画を1フレーム/秒ごとに静止画に変換して記憶部12へ取り込む場合を例示したが、記憶部12へ取り込むレートは任意に変更することができる。
カメラ制御部15は、カメラ30を制御する処理部である。これを説明すると、カメラ制御部15は、河川情報管理装置50から河川の流域に含まれる降雨地域の平均雨量が通知された場合に、記憶部12に記憶された電子地図データ12cを参照して、降雨地域内に存在する観測地点を抽出する。このとき、カメラ制御部15は、降雨地域内に存在する観測地点のうち平均雨量が所定値以上である降雨地域に含まれる観測地点に条件を絞って抽出することもできる。続いて、カメラ制御部15は、カメラメタデータ12bに定義されたカメラ30の緯度及び経度と先に抽出した観測地点の緯度及び経度とを用いて、カメラ30から観測地点までの距離をカメラ30ごとに算出する。そして、カメラ制御部15は、カメラ30のうち観測地点までの距離が最も近いカメラ30を観測地点の撮像に使用するカメラとして選択する。
続いて、カメラ制御部15は、観測地点の撮像に使用するカメラとして選択したカメラ30に撮像させる撮像ポイントの緯度及び経度を抽出する。一例としては、カメラ制御部15は、電子地図データ12cを参照して、カメラ30の設置位置から観測地点の位置へ延長して得られる延長線が河川の両岸のうちカメラ30が設置されている川岸とは逆岸と交わる点の緯度及び経度を撮像ポイントとして抽出する。
その後、カメラ制御部15は、カメラメタデータ12bに定義されているカメラ30の基準撮像位置、観測ポイントの位置及び先に抽出した撮像ポイントの相対値に基づいて撮像パラメータを決定する。ここで言う「撮像パラメータ」とは、カメラ30の水平回転及び仰角の補正量やカメラ30の倍率などの撮像に関するパラメータを指す。一例としては、カメラ制御部15は、カメラ30の基準撮像位置と撮像ポイントの位置とのズレ量から、カメラ30の水平回転及び仰角の補正量を算出する。他の一例としては、カメラ制御部15は、カメラ30の撮像範囲に観測地点が含まれるように、カメラ30の倍率を決定する。
そして、カメラ制御部15は、先に決定した撮像パラメータにしたがってカメラ30の制御コマンドを生成した上でその制御コマンドをカメラ30へ送信することより、カメラ30のパン、チルト及び/又はズームを制御する。このように、カメラ30のパン及びチルトを制御することにより、カメラ30の水平回転及び仰角が補正される。さらに、カメラ30のズームを制御することにより、カメラの倍率が調整される。その後、カメラ30によって観測地点が撮像された観測画像が取得部14によって取得されることになる。
図7は、模式化された電子地図の一例を示す図である。図7の例では、河川の中心線を一点鎖線により図示する。また、図7の例では、観測地点20A〜観測地点20Cを黒丸により図示するとともに、撮像ポイント22を白丸により図示する。さらに、図7の例では、カメラ30Bの撮像範囲23を点線により図示する。なお、図7の例では、観測地点20A〜観測地点20Cのうち観測地点20Bが観測対象として抽出された場合を想定する。
図7に示す例では、カメラ30Aと観測地点20Bの距離、カメラ30Bと観測地点20Bの距離、カメラ30Cと観測地点20Bの距離がカメラ制御部15によって算出される。このようにして算出された各々のカメラ30と観測地点20Bの距離のうち、カメラ30B及び観測地点20Bの距離が最も短い。よって、カメラ制御部15によってカメラ30Bが観測地点20Bの撮像に使用するカメラとして選択される。続いて、カメラ30Bの設置位置から観測地点20Bの位置へ延長して得られる延長線が河川の両岸のうちカメラ30Bが設置されている川岸とは逆岸と交わる点の緯度及び経度がカメラ制御部15によって撮像ポイント22として抽出される。その後、カメラ30Bの基準撮像位置と撮像ポイント22の位置とのズレ量から、カメラ30の水平回転及び仰角の補正量がカメラ制御部15によって算出される。さらに、カメラ30Bの撮像範囲23に観測地点22が含まれるように、カメラ制御部15によってカメラ30の倍率が決定される。このようにしてカメラ30の水平回転及び仰角の補正量やカメラ30の倍率などの撮像パラメータが決定される。
検出部16は、記憶部12に記憶された観測画像から、堤防ライン及び水面ラインを検出する処理部である。この検出部16は、図2に示すように、エッジ処理部16aと、第1の検出部16bと、第2の検出部16cとをさらに有する。
このうち、エッジ処理部16aは、記憶部12に記憶された観測画像からエッジ検出されたエッジのうち所定の範囲内にある類似方向のエッジを連結したラインを含むライン画像を生成する処理部である。一例としては、エッジ処理部16aは、観測画像メタデータ12aを参照して、取得部14によって記憶部12に取り込まれた観測画像を取込日時順に読み出し、それぞれ読み出した観測画像のエッジを検出した上で、以下の処理を実行する。
ここで、以下では、1秒おきに取り込まれた観測画像を1分間単位で読み出して後述の第1の検出部16b及び第2の検出部16cに堤防ライン及び水面ラインを検出させ、ラインの検出を10分間、すなわち10回にわたって繰り返し検出させる場合を想定する。このとき、観測画像を1分間で読み出す観測画像のフレーム及びそのフレーム数は、水位監視装置10の管理者が任意に設定できる。また、観測画像を読み出す時間単位およびラインの検出の繰り返し回数についても、水位監視装置10の管理者が任意に設定できる。
これを説明すると、エッジ処理部16aは、GIS(Geographical Information System)機能を用いて、記憶部12に電子地図データ12cとして記憶された河川の中心線をエッジが検出された観測画像に重ね合わせる。このように、観測画像に河川の中心線を重ね合わせるのは、堤防ライン及び水面ラインと類似する方向を持つと推定される河川の中心線を基準にして堤防ライン及び水面ラインの候補となるラインを抽出するためである。
その後、エッジ処理部16aは、観測画像から検出されたエッジのうち、河川の中心線と類似する方向を持つエッジであり、かつ長さが所定の画素数以上であるエッジを抽出する。このようにしてエッジを抽出する際には、あまりに河川の中心線とかけ離れたエッジを含めると堤防ライン及び水面ラインとは無関係のエッジを多く含んで抽出することになる。このため、河川の中心線と略平行なエッジ、例えば河川の中心線との向きのズレが±5°以内であるエッジに限って抽出することが好ましい。さらに、河川の中心線と類似する方向を持つエッジであったとてしても、堤防ライン及び水面ラインとは無関係な建造物や車両などのエッジを含んでしまう場合もある。よって、建造物や車両のエッジと推定される長さ、例えば10画素以上であるエッジに限定して抽出することが好ましい。
さらに、エッジ処理部16aは、先に抽出したエッジの延長線上における所定の画素数以内に存在し、かつ抽出したエッジと類似する方向を持つエッジを抽出する。その上で、エッジ処理部16aは、先に抽出したエッジ及びそのエッジを基準にさらに抽出したエッジを連結することにより、堤防ラインや水面ラインの候補となり得るラインを形成させる。その後、エッジ処理部16aは、互いのエッジの連結によりラインを形成させた観測画像を後述の第1の検出部16b及び第2の検出部16cに出力する。以下では、観測画像に検出されたエッジを連結してラインを形成させた画像のことを「ライン画像」と呼ぶ場合がある。
このようにして、エッジ処理部16aは、取込日時順に読み出された各々の観測画像のエッジ検出を行った上で一定の条件を満たすエッジ同士を連結することにより、ライン画像をフレームごとに生成する。
第1の検出部16bは、観測地点に対応する電子地図データ12cを基準に設定された河川の中心線の向きと類似し、ライン画像のフレーム間で形状が変化せず、かつライン画像上で最上位に位置するラインを堤防ラインとして検出する処理部である。
一例としては、第1の検出部16bは、エッジ処理部16aによって生成されたライン画像から、河川の中心線の向きと類似するラインを抽出する。例えば、第1の検出部16bは、ライン画像に含まれるラインの中でも河川の中心線とのズレが±5°以内であるラインを抽出する。その上で、第1の検出部16bは、先に抽出したラインのうちライン画像の最上に位置するラインの形状がライン画像のフレーム間で変化するか否かを判定する。そして、第1の検出部16bは、ライン画像の最上に位置するラインがライン画像のフレーム間で形状が変化しなかった場合に、ライン画像の最上に位置するラインを堤防ラインとして検出する。
このように、河川の中心線の向きと類似するラインを検出対象とするのは、堤防が河川に沿って構築されることから堤防によって形成される外郭のラインが河川の中心線に類似する方向を持つと推定できるからである。さらに、ライン画像のフレーム間で形状が変化するラインを検出対象とするとするのは、水面などの動体を除外して堤防ラインを検出するためである。さらに、ライン画像上で最上位に位置するラインを検出対象とするのは、洪水等によって水面ラインが堤防ラインを超えない限りは堤防ラインがライン画像上で最上に位置すると推定できるからである。
第2の検出部16cは、観測地点に対応する電子地図データ12cを基準に設定された河川の中心線の向きと類似し、かつライン画像のフレーム間で形状が変化するラインを水面ラインとして検出する処理部である。
一例としては、第2の検出部16cは、エッジ処理部16aによって生成されたライン画像から、河川の中心線の向きと類似するラインを抽出する。例えば、第2の検出部16cは、ライン画像に含まれるラインのうち、河川の中心線とのズレが±5°以内であり、かつ直線ではないラインを抽出する。その上で、第1の検出部16bは、先に抽出したラインのうちライン画像のフレーム間で形状が変化するラインが存在するか否かを判定する。このとき、第1の検出部16bは、ライン画像のフレーム間で形状が変化するラインが存在する場合に、そのラインを水面ラインとして検出する。
ここで、河川の中心線の向きと類似するラインの中でも直線でないラインを検出対象とするのは、豪雨等によって増水する場合には水面のゆらぎも大きくなり、水面が直線とはならないからである。このとき、直線でないラインを検出対象とすると、水面のゆらぎが穏やかな渇水時には水面ラインが検出されないことも想定される。しかしながら、渇水時には河川の流域に人が近づいても危険が少ないため、増水時の水面ラインが検出できれば渇水時の水面ラインが検出できなくとも問題はない。さらに、ライン画像のフレーム間で形状が変化するラインを検出対象とするとするのは、水面とは異なり動体ではない堤防や建築物などを除外して水面ラインを検出するためである。
このように、第1の検出部16b及び第2の検出部16cによって堤防ライン及び水面ラインが検出されると、検出部16は、ライン画像上における堤防ラインの高さから河川の中心線の高さを減算することにより、堤防高Waを算出する。さらに、検出部16は、ライン画像上における水面ラインの高さから河川の中心線の高さを減算することにより、水面高Wbを算出する。その上で、検出部16は、堤防ライン及び水面ラインの検出に使用した観測画像のうち最初のフレームの地点番号、水系、河川、kp、カメラIDに先に算出した堤防高Wa、水面高Wb及びその検出日時を対応付けた河川ラインデータを記憶部12へ登録する。このように所定の時間単位、本例では1分ごとに検出された堤防高Wa及び水面高Wbの河川ラインデータが10回にわたって記憶部12へ登録されることになる。
なお、堤防高Wa及び水面高Wbを算出するにあたっては、任意の座標系を用いることができる。一例としては、検出部16は、ライン画像の最下位の水平ラインの高さをゼロとし、堤防ライン、水面ライン及び河川の中心線を形成する画素のうち最も高い画素のゼロ点からの高さを堤防ラインの高さ、水面ラインの高さ及び河川の中心線の高さとして計算できる。このとき、水位の監視をよりセーフティに行うために、堤防ライン及び河川の中心線については、各々のラインを形成する画素のうち最も低い画素のゼロ点からの高さを堤防ラインの高さ及び河川の中心線の高さとすることとしてもよい。
図8は、ライン画像の一例を示す図である。図8の例では、ライン画像40内にライン41A〜ライン41Fの6つのラインがエッジ処理部16aによって検出された場合を例示している。このうち、一点鎖線で図示したライン41Fは、電子地図データ12cを用いて重ね合わせが行われた河川の中心線である。また、二点鎖線で図示したライン41Eは、他のライン画像との間で形状の変化が検出されたラインであることとする。この場合には、河川の中心線41Fに類似する方向を持つライン41A〜ライン41Eのうち、ライン画像40の最上に位置し、かつライン画像のフレーム間で形状の変化が検出されなかったライン41Aが堤防ラインとして第1の検出部16bによって検出される。また、ライン41A〜ライン41Eのうち、直線ではなく、かつライン画像のフレーム間で形状が変化するライン41Eが水面ラインとして第2の検出部16cによって検出される。その後、堤防ラインの高さ、水面ラインの高さ及び河川の中心線の高さから堤防高Wa及び水面高Wbが検出部16によって算出される。
監視部17は、検出部16によって検出された堤防ライン及び水面ラインに基づいて、観測地点の水位を監視する処理部である。一例としては、監視部17は、堤防ラインと水面ラインとの相対距離が所定の閾値未満であるか否か、もしくは堤防ラインと水面ラインとの相対距離の時間変化が所定の閾値以上であるか否かを判定することによって観測地点の水位を監視する。
これを説明すると、監視部17は、記憶部12に河川ラインデータ12dとして記憶された堤防高Wa及び水面高Wbを用いて、水面から堤防までの距離である水位Dと、その水位の増分ΔLとを算出する。一例としては、監視部17は、河川ラインデータ12dとして登録されている堤防高Waから水面高Wbを減算することにより時間単位ごとの水位を算出する。このようにして算出された時間単位ごとの水位のうち最新の水位が判定対象の水位Dとして使用される。さらに、監視部17は、最新の水位から最も古い水位を減算することにより、水位の増分ΔLを算出する。
その後、監視部17は、水位Dが所定の閾値DTH以下であるか否かを判定する。このとき、監視部17は、水位Dが閾値DTH以下である場合に、水位の増分ΔLが所定の閾値ΔLTH以上であるか否かをさらに判定する。ここで、水位Dが閾値DTH以下であり、かつ水位の増分ΔLが閾値ΔLTH以上である場合には、観測地点で水面ラインが堤防ラインにせまっており、さらに、水面が急激に上昇しているので、当該観測地点に増水のおそれありと推定できる。この場合には、監視部17は、今回に水位の監視の対象とした観測地点と隣接する観測地点を対象に、水位の監視を改めて実行する。その後、監視部17は、隣接する観測地点でも増水のおそれありと判定した場合には、増水のおそれありと判定した各々の観測地点に関する情報を危険地点データ12eとして記憶部12へ登録する。なお、危険地点データ12eの一例としては、危険地点の地点番号、水系、河川、kpや危険地点を撮像したカメラ30のカメラID、マルチキャストアドレス、ポート番号、緯度、経度の他、危険地点と判定された判定時刻などが登録される。
なお、ここでは、水位Dが閾値DTH以下であり、かつ水位の増分ΔLが閾値ΔLTH以上である場合に増水のおそれありと判断する場合を例示したが、いずれかの一方の条件を満たした場合に増水のおそれありと判断することもできる。
報知制御部18は、危険地点を利用者端末70に報知するように制御する処理部である。これを説明すると、報知制御部18は、監視部17によって危険地点データ12dが記憶部12へ登録された場合に、記憶部12から危険地点データ12dを読み出して下記の報知を利用者端末70に実行する。一例としては、報知制御部18は、記憶部12に記憶された電子地図データ12cを用いて、電子地図上に危険地点をマッピングしたコンテンツデータをウェブ上に公開したり、配信したりすることにより、コンテンツデータを利用者端末70に提供する。他の一例としては、報知制御部18は、複数の危険地点に関する観測画像をつなげ合わせた映像をウェブ上に公開したり、配信したりすることにより、ブラウザ等でスクロール操作により閲覧可能な映像を利用者端末70に提供する。更なる一例としては、報知制御部18は、各々の危険地点の緯度、経度および住所が記述された電子メールを利用者端末70に送信する。
[処理の流れ]
次に、本実施例に係る水位監視装置の処理の流れについて説明する。ここでは、水位監視装置10が実行する(1)全体処理、(2)カメラ制御処理、(3)ライン検出処理、(4)報知制御処理の順に説明する。
(1)全体処理
図9は、実施例1に係る水位監視装置の全体処理の手順を示すフローチャートである。この全体処理は、河川情報管理装置50から河川の流域に含まれる降雨地域の平均雨量が通知された場合に処理が起動する。
図9に示すように、カメラ制御部15は、記憶部12に記憶された電子地図データ12cを参照して、降雨地域内に存在する観測地点を抽出する(ステップS101)。そして、カメラ制御部15は、カメラ30を撮像ポイントに向けて観測地点を撮像させ、取得部14に観測画像を取得させる「カメラ制御処理」を実行する(ステップS102)。
続いて、検出部16は、取得部14によって取得された観測画像を用いて堤防ライン及び水面ラインを検出する「ライン検出処理」を実行する(ステップS103)。その後、監視部17は、検出部16によって検出された堤防ライン及び水面ラインから算出された堤防高Wa及び水面高Wbを用いて、水面から堤防までの距離である水位Dと、その水位の増分ΔLとを算出する(ステップS104)。
その後、監視部17は、水位Dが所定の閾値DTH以下であるか否かを判定する(ステップS105)。このとき、水位Dが閾値DTH以下である場合(ステップS105肯定)には、監視部17は、水位の増分ΔLが所定の閾値ΔLTH以上であるか否かをさらに判定する(ステップS106)。
そして、水位の増分ΔLが閾値ΔLTH以上である場合(ステップS106肯定)には、監視部17は、複数の観測地点で増水のおそれありと判定したか否かを判定する(ステップS107)。このとき、今回始めて観測地点に増水のおそれありと判定した場合(ステップS107否定)には、監視部17は、今回に水位の監視の対象とした観測地点と隣接する観測地点を抽出する(ステップS108)。その後、ステップS101〜S106までの水位の監視に関する処理が改めて実行される。
ここで、複数の観測地点で増水のおそれありと判定した場合(ステップS107肯定)には、監視部17は、増水のおそれありと判定した各々の観測地点に関する情報を危険地点データ12eとして記憶部12へ登録する(ステップS109)。その後、報知制御部18は、危険地点を利用者端末70に報知する「報知制御処理」を実行し(ステップS110)、処理を終了する。
なお、水位Dが閾値DTHよりも大きいか、あるいは水位の増分ΔLが閾値ΔLTH未満である場合(ステップS105否定またはS106否定)には、増水のおそれがないので、そのまま処理を終了する。
(2)カメラ制御処理
図10は、実施例1に係るカメラ制御処理の手順を示すフローチャートである。このカメラ制御処理は、図9に示したステップS102に対する処理であり、水位を監視する対象の観測地点が抽出された場合に処理が起動する。
図10に示すように、カメラ制御部15は、カメラメタデータ12bに定義されたカメラ30の緯度及び経度と先に抽出した観測地点の緯度及び経度とを用いて、カメラ30から観測地点までの距離をカメラ30ごとに算出する(ステップS301)。そして、カメラ制御部15は、カメラ30のうち観測地点までの距離が最も近いカメラ30を観測地点の撮像に使用するカメラとして選択する(ステップS302)。
続いて、カメラ制御部15は、観測地点の撮像に使用するカメラとして選択したカメラ30に撮像させる撮像ポイントの緯度及び経度を抽出する(ステップS303)。その後、カメラ制御部15は、カメラメタデータ12bに定義されているカメラ30の基準撮像位置、観測ポイントの位置及び先に抽出した撮像ポイントの相対値に基づいて撮像パラメータを決定する(ステップS304)。
そして、カメラ制御部15は、先に決定した撮像パラメータにしたがってカメラ30の制御コマンドを生成した上でその制御コマンドをカメラ30へ送信することより、カメラ30のパン、チルト及び/又はズームを制御する(ステップS305)。
その後、取得部14は、カメラ制御部15によってカメラ30の水平回転及び/又は仰角とカメラ30の倍率との調整がなされて撮像された観測画像を取得し(ステップS306)、取得した観測画像を記憶部12へ格納して処理を終了する。
(3)ライン検出処理
図11は、実施例1に係るライン検出処理の手順を示すフローチャートである。このライン検出処理は、図9に示したステップS103に対応する処理であり、取得部14によって観測画像が記憶部12へ取り込まれた場合に処理を起動する。
図11に示すように、エッジ処理部16aは、観測画像メタデータ12aを参照して、取得部14によって記憶部12に取り込まれた観測画像を読み出し、読み出した観測画像のエッジを検出する(ステップS501)。
そして、エッジ処理部16aは、GIS機能を用いて、記憶部12に電子地図データ12cとして記憶された河川の中心線をエッジが検出された観測画像に重ね合わせる(ステップS502)。続いて、エッジ処理部16aは、観測画像内のエッジを連結してライン画像を生成する(ステップS503)。
その後、第1の検出部16bは、観測地点に対応する電子地図データ12cを基準に設定された河川の中心線の向きと類似し、ライン画像のフレーム間で形状が変化せず、かつライン画像上で最上位に位置する堤防ラインを検出する(ステップS504)。
さらに、第2の検出部16cは、観測地点に対応する電子地図データ12cを基準に設定された河川の中心線の向きと類似し、かつライン画像のフレーム間で形状が変化する水面ラインを検出する(ステップS505)。
その後、検出部16は、ライン画像上における堤防ラインの高さから河川の中心線の高さを減算することにより堤防高Waを算出するとともに、水面ラインの高さから河川の中心線の高さを減算することにより水面高Wbを算出する(ステップS506)。
そして、検出部16は、堤防ライン及び水面ラインの検出に使用した観測画像のうち最初のフレームの地点番号、水系、河川、kp、カメラIDに堤防高Wa、水面高Wb及び検出日時を対応付けた河川ラインデータを記憶部12へ登録する(ステップS507)。
なお、図11におけるステップS504及びS505の処理は、必ずしも図示の順序で実行させる必要はない。すなわち、各々の処理の順序を入れ換えて実行することもできれば、各々の処理を並列して実行することもできる。
(4)報知制御処理
図12は、実施例1に係る報知制御処理の手順を示すフローチャートである。この報知制御処理は、複数の観測地点で増水のおそれありと判定されて危険地点データ12eが記憶部12へ登録された場合に処理が起動する。
図12に示すように、報知制御部18は、記憶部12から危険地点データ12dを読み出す(ステップS701)。そして、報知制御部18は、電子地図データ12cを用いて、電子地図上に危険地点をマッピングしたコンテンツデータをウェブ上に公開したり、配信したりすることにより、コンテンツデータを利用者端末70に提供する(ステップS702)。
続いて、報知制御部18は、複数の危険地点に関する観測画像をつなげ合わせた映像をウェブ上に公開したり、配信したりすることにより、ブラウザ等でスクロール操作により閲覧可能な映像を利用者端末70に提供する(ステップS703)。
その後、報知制御部18は、各々の危険地点の緯度、経度および住所が記述された電子メールを利用者端末70に送信し(ステップS704)、処理を終了する。
なお、図12におけるステップS702及びS704の処理は、必ずしも図示の順序で実行させる必要はない。すなわち、各々の処理の順序を入れ換えて実行することもできれば、各々の処理を並列して実行することもできる。
[実施例1の効果]
上述してきたように、本実施例に係る水位監視装置10は、河川の観測画像から検出される略平行なライン群のうち最上位に位置し形状が時間変化しない第1のラインを検出することによって観測画像内に写る堤防ラインを推定する。さらに、本実施例に係る水位監視装置10は、河川の観測画像から検出される略平行なライン群のうち形状が時間変化する第2のラインを検出することによって観測画像内に写る水面ラインを推定する。
それゆえ、本実施例に係る水位監視装置10は、事前に計測した三次元空間情報もしくは参照用画像と観測画像とを比較せずとも、観測画像を使用するだけで観測地点の水位を監視できる。したがって、本実施例に係る水位監視装置10によれば、事前準備なしに水位を監視できる。さらに、本実施例に係る水位監視装置10では、事前に計測した三次元空間情報もしくは参照用画像を使用しないので、観測地点における河川の環境が変化したとしても三次元空間情報や参照用画像を改めて登録し直す必要もない。
ここで、本実施例に係る水位監視装置10がカメラ30によって観測地点が任意の方向から撮像された観測画像を用いて水位を監視できる。図13〜図15は、実施例1に係る水位監視装置10の効果を説明するための図である。図13の例では、河川が流れる方向とカメラ30が撮像する方向とが略垂直である場合におけるラインの検出例を示す。図14及び図15の例では、カメラ30が撮像する方向を河川が流れる方向に近づけた場合におけるラインの検出例を示す。
図13に示す例では、観測画像60Aからエッジを検出することによりエッジ画像61Aがエッジ処理部16aによって生成される。このとき、電子地図における河川の中心線をエッジ画像61Aに重ね合わせることにより、河川の中心線62Aが得られる。そして、河川の中心線62Aを基準にしてエッジ同士を連結することによりライン画像64Aがエッジ処理部16aによって生成される。ここで、ライン画像64Aに含まれるライン63Aa〜63Adの4つのラインのうちライン63Adは、他のライン画像との間で形状の変化が検出されたラインであることとする。この場合、河川の中心線62Aに類似する方向を持つライン63Aa〜63Adのうち、ライン画像64Aの最上に位置し、かつライン画像のフレーム間で形状の変化が検出されなかったライン63Aaが堤防ラインとして第1の検出部16bによって検出される。また、ライン63Aa〜63Adのうち、ライン画像のフレーム間で形状が変化するライン63Adが水面ラインとして第2の検出部16cによって検出される。
図14に示す例では、観測画像60Bからエッジを検出することによりエッジ画像61Bがエッジ処理部16aによって生成される。このとき、電子地図における河川の中心線をエッジ画像61Bに重ね合わせることにより、河川の中心線62Bが得られる。そして、河川の中心線62Bを基準にしてエッジ同士を連結することによりライン画像64Bがエッジ処理部16aによって生成される。ここで、ライン画像64Bに含まれるライン63Ba〜63Bcの3つのラインのうちライン63Bcは、他のライン画像との間で形状の変化が検出されたラインであることとする。この場合、河川の中心線62Bに類似する方向を持つライン63Ba〜63Bcのうち、ライン画像64Bの最上に位置し、かつライン画像のフレーム間で形状の変化が検出されなかったライン63Baが堤防ラインとして第1の検出部16bによって検出される。また、ライン63Ba〜63Bcのうち、ライン画像のフレーム間で形状が変化するライン63Bcが水面ラインとして第2の検出部16cによって検出される。
図15に示す例では、観測画像60Cからエッジを検出することによりエッジ画像61Cがエッジ処理部16aによって生成される。このとき、電子地図における河川の中心線をエッジ画像61Cに重ね合わせることにより、河川の中心線62Cが得られる。そして、河川の中心線62Cを基準にしてエッジ同士を連結することによりライン画像64Cがエッジ処理部16aによって生成される。ここで、ライン画像64Cに含まれるライン63Ca〜63Cfの6つのラインのうちライン63Cfは、他のライン画像との間で形状の変化が検出されたラインであることとする。この場合、河川の中心線62Cに類似する方向を持つライン63Ca〜63Cfのうち、ライン画像64Cの最上に位置し、かつライン画像のフレーム間で形状の変化が検出されなかったライン63Caが堤防ラインとして第1の検出部16bによって検出される。また、ライン63Ca〜63Cfのうち、ライン画像のフレーム間で形状が変化するライン63Cfが水面ラインとして第2の検出部16cによって検出される。
このように、本実施例に係る水位監視装置10では、河川が流れる方向とカメラ30が撮像する方向とが略垂直である場合でも、カメラ30が撮像する方向を河川が流れる方向に近づけた場合でも、堤防ライン及び水面ラインを適切に検出できる。
また、本実施例に係る水位監視装置10は、観測画像からエッジ検出されたエッジのうち所定の範囲内にある類似方向のエッジを連結したラインを含むライン画像を生成する。その上で、本実施例に係る水位監視装置10は、ライン画像から堤防ライン及び水面ラインを検出する。このため、本実施例に係る水位監視装置10では、観測画像から検出されたエッジのうち堤防または水面を形成するエッジが一部欠けていたとしても、堤防ライン及び水面ラインを検出することが可能になる。
さらに、本実施例に係る水位監視装置10は、観測地点に対応する地図情報を基準に設定された河川の中心線の向きと類似し、ライン画像のフレーム間で形状が変化せず、かつライン画像上で最上位に位置するラインを堤防ラインとして検出する。また、本実施例に係る水位監視装置10は、河川の中心線の向きと類似し、かつライン画像のフレーム間で形状が変化するラインを水面ラインとして検出する。このため、本実施例に係る水位監視装置10では、堤防ライン及び水面ラインと類似する方向を持つ可能性が高い河川の中心線を基準に堤防ライン及び水面ラインできる。それゆえ、本実施例に係る水位監視装置10では、ライン画像において互いの向きが類似する複数のラインの中でも、堤防ライン及び水面ラインを適切に検出できる。
また、本実施例に係る水位監視装置10は、堤防ラインと水面ラインとの相対距離が所定の閾値未満であるか否か、もしくは堤防ラインと水面ラインとの相対距離の時間変化が所定の閾値以上であるか否かを判定することによって観測地点の水位を監視する。このため、本実施例に係る水位監視装置10では、観測地点で水面ラインが堤防ラインにせまっているか否か、あるいは水面が急激に上昇しているか否かを監視できる。よって、本実施例に係る水位監視装置10では、観測地点の増水を正確に監視できる。
さらに、本実施例に係る水位監視装置10は、堤防ライン及び水面ラインの相対距離が閾値未満であるか、もしくは相対距離の時間変化が閾値以上であると判定された場合に、当該観測地点を報知するように制御する。このため、本実施例に係る水位監視装置10では、増水のおそれがある観測地点を危険地点として周知することが可能になる。
また、本実施例に係る水位監視装置10は、堤防ライン及び水面ラインの相対距離が閾値未満であるか、もしくは相対距離の時間変化が閾値以上であると複数の観測地点を対象に判定された場合に、報知を実行する。このため、本実施例に係る水位監視装置10では、1つの観測地点で増水が発生した場合には隣接する観測地点でも増水が発生するという河川の増水傾向に適合した場合に限って観測地点を危険地点と報知できる。よって、本実施例に係る水位監視装置10では、1つの観測地点が誤判定により増水のおそれありと判定した場合に報知するのを防止でき、誤報を発するのを防止できる。