図1は光半導体素子の一例の説明図である。図1には、光半導体素子が備える回折格子とその周辺部の断面の一例を模式的に図示している。
この図1の例では、下部の半導体層(第1半導体層)10に、凹部11と凸部12が交互に配設された回折格子13が形成されている。回折格子13の凹部11と凸部12は、この回折格子13を備える光半導体素子の形態に基づいて設定される一定の周期で配設される。また、凹部11の深さ(凸部12の高さ)についても、この回折格子13を備える光半導体素子の形態に基づいて設定される。
第1半導体層10上には、その回折格子13を埋め込んで被覆する、上部の半導体層(第2半導体層)20が形成されている。第2半導体層20は、第1半導体層10の下側に活性層(図示せず)が配設されるような場合には、例えば、クラッド層としての役割を果たす。また、第2半導体層20は、その上側に活性層(図示せず)が配設されるような場合には、例えば、その活性層との間のスペーサ層としての役割を果たす。
第1半導体層10は、例えば、ノンドープ或いは所定の導電型とされる。第2半導体層20は、例えば、所定の導電型とされる。第1半導体層10及び第2半導体層20を共に導電型とする場合は、例えば、それらは同じ導電型とされる。第1半導体層10及び第2半導体層20を所定の導電型とするためには、所定の導電型を示す不純物(ドーパント)が各半導体層内に導入(ドーピング)される。
尚、第1半導体層10及び第2半導体層20には、種々の半導体材料が適用可能である。例えば、ガリウムヒ素(GaAs)基板を用いて形成される半導体レーザでは、回折格子13を形成する第1半導体層10にGaAsを用い、その回折格子13を被覆する第2半導体層20にインジウムガリウムリン(InGaP)を用いることができる。
第2半導体層20は、ドーパント濃度について所定の関係を有する複数の領域を含んでいる。図1には一例として、それぞれ所定のドーパント濃度を有する、第1領域21、第2領域22及び第3領域23の、3種類の領域を図示している。
第1領域21は、所定のドーパント濃度で形成され、回折格子13の凹部11の内面を被覆するように、凹部11内の底部及び側部に形成されている。第2領域22は、第1領域21のドーパント濃度よりも低いドーパント濃度で形成され、回折格子13の凹部11内の中央部で、第1領域21の上に、形成されている。第3領域23は、第2領域22のドーパント濃度よりも高いドーパント濃度で形成され、凹部11内の第1領域21及び第2領域22、並びに凸部12の上面を被覆するように、形成されている。
即ち、第2半導体層20は、凹部11の底面及び側面、並びに凸部12の上面が、比較的高いドーパント濃度の第1領域21及び第3領域23で被覆され、凹部11内の中央部には、比較的低いドーパント濃度の第2領域22が形成された構成を有している。
第2半導体層20を、このような構成とすることにより、回折格子13を備えた光半導体素子の特性劣化が抑えられるようになる。以下、この点について説明する。
そこでまず、回折格子の形成とその埋め込みの流れの一例について述べる。
図2は回折格子の形成及び埋め込み工程の一例の説明図である。図2(A)は回折格子形成工程の一例の要部断面模式図、図2(B)は回折格子形成後の状態の一例の要部断面模式図、図2(C)は埋め込み工程の一例の要部断面模式図である。
図2(A)に示すような回折格子13aの形成では、まず下部の第1半導体層10aを形成した後、エッチング技術を用いて、所定の周期で交互に配設された凹部11aと凸部12aを形成する。例えば、ここでは図示を省略するが、第1半導体層10aの形成後、その表面に酸化シリコン(SiO2)等で回折格子形成用のマスクを形成し、第1半導体層10aのエッチングを行う。これにより、回折格子形成用のマスクに形成されていた回折格子パターンが第1半導体層10aに転写され、第1半導体層10aに凹部11a及び凸部12aが形成される。尚、エッチング後、マスクは除去する。
回折格子13aの形成後は、その埋め込みを行う。ところが、この埋め込みを行う前に、回折格子13aの表面には、大気中に存在する元素が吸着する場合がある。例えば、回折格子13aの表面に、大気中のシロキサンのシリコン(Si)原子が吸着する場合がある。Si原子はn型ドーパントになり得る元素であるため、そのようなSi原子の吸着により、回折格子13aの表面には、図2(B)に示すようなn型転換層30aが形成されることがある。その場合、第2半導体層20aは、このようなn型転換層30aが形成された回折格子13aを被覆するように、形成されることになる。
ここで、第2半導体層20aとして、ある濃度で亜鉛(Zn)等のp型ドーパントをドーピングしたp型半導体層を形成する場合を想定する。この場合、p型ドーパント濃度によっては、図2(C)に示すように、回折格子13aと第2半導体層20aとの界面領域に、n型転換層30aが残ることがある。
回折格子13aが形成される第1半導体層10aを、例えば、ノンドープの半導体層で形成している場合には、上記のようなn型転換層30aにより、p型の第2半導体層20aとの間に不要なpn領域が形成されてしまうことになる。
また、第1半導体層10aを、例えば、p型の半導体層で形成している場合には、次のような現象が起こる。即ち、p型の第1半導体層10aの下方、或いはp型の第2半導体層20aの上方に、n型層(n型クラッド層等)が形成されることで、n型転換層30aを含むpnpn構造が形成されてしまう。その結果、この光半導体素子の電圧特性として、サイリスタ特性が発現してしまうようになる。
第2半導体層20aの形成後に、このようなn型転換層30aを生じさせないためには、第2半導体層20aのp型ドーパントを、より高濃度にし、n型転換層30aを補償することが考えられる。
図3は回折格子の埋め込み工程の別例の説明図である。
この図3には、回折格子13aを形成した第1半導体層10aを、上記のようなn型転換層を十分に補償できる、一定量以上のZn等のp型ドーパントを、全体的に含む第2半導体層20bで被覆した場合を例示している。このような高濃度の第2半導体層20bを形成することにより、上記のようなn型転換層を補償する。
ところが、このような第2半導体層20bを形成する場合には、その第2半導体層20b内(例えば図3の点線で囲んだ部分)に光の吸収領域が生じ、光半導体素子の内部損失を増加させてしまう場合がある。また、第2半導体層20bからのp型ドーパントの拡散(例えば図3の点線矢印)を招いてしまう場合もある。例えば、p型ドーパントとして用いることのできるZnは、比較的拡散距離が大きい。p型ドーパントが活性層にまで拡散したときには、欠陥等を誘発する原因になり易い。
これに対し、図1に示した第2半導体層20では、凹部11の底面及び側面、並びに凸部12の上面を、比較的高いドーパント濃度の第1領域21及び第3領域23で被覆し、凹部11内の中央部に、比較的低いドーパント濃度の第2領域22を形成する。
凹部11の底面及び側面、並びに凸部12の上面を、比較的高いドーパント濃度の第1領域21及び第3領域23で被覆することで、回折格子13の表面に形成され得るn型転換層を補償することが可能になる。更に、凹部11内の中央部に、比較的低いドーパント濃度の第2領域22を形成することで、第2半導体層20内に光の吸収領域が形成されること、及び第2半導体層20からp型ドーパントが活性層等に拡散することを、共に効果的に抑制することが可能になる。
このような第2半導体層20を形成することにより、回折格子13の表面に形成され得るn型転換層を補償すると共に、光半導体素子の光吸収損失及びp型ドーパント拡散を抑制し、光半導体素子の特性劣化を回避することが可能になる。
以下では、上記のような構成を有する光半導体素子について、より具体的に説明する。
まず、第1実施例について説明する。
図4は光半導体素子の一例の要部斜視模式図、図5は光半導体素子の一例の要部断面模式図である。尚、図5は図4の点線Xに沿った断面を模式的に示した図である。
図4及び図5に示す光半導体素子100は、n型GaAs基板110上に形成されたn型アルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)下部クラッド層120、及びそのn型AlGaAs下部クラッド層120上に形成された活性層130を有している。活性層130には、例えば、量子ドット構造を採用することができる。
活性層130上には、凹部141と凸部142が交互に配列された回折格子143を形成した、ノンドープのi型GaAs層140が形成されている。i型GaAs層140上には、その回折格子143を被覆するp型InGaP上部クラッド層150が形成されている。p型InGaP上部クラッド層150は、それぞれ所定濃度のp型ドーパントを含む、第1領域151、第2領域152及び第3領域153を有している。
ここで、第1領域151は、凹部141の底面及び側面を被覆するように形成されており、所定のp型ドーパント濃度を有している。第2領域152は、凹部141内の中央部に形成されており、第1領域151のp型ドーパント濃度よりも低いp型ドーパント濃度を有している。第3領域153は、凹部141内に形成されている第1領域151上及び第2領域152上、並びに凸部142の上面を被覆するように形成されており、第2領域152のp型ドーパント濃度よりも高いp型ドーパント濃度を有している。
即ち、凹部141の底面及び側面、並びに凸部142の上面は、比較的高いp型ドーパント濃度の第1領域151及び第3領域153で被覆され、凹部11内の中央部には、比較的低いドーパント濃度の第2領域152が形成されている。
p型InGaP上部クラッド層150上には、p型GaAsコンタクト層160が形成されている。p型GaAsコンタクト層160及びp型InGaP上部クラッド層150は、メサ構造101となっている。メサ構造101の両脇には、保護膜となる誘電体層171を介して、ベンゾシクロブテン(Benzo Cyclo Butene;BCB)等の低誘電率材料を用いた埋め込み層172が形成されている。
p型GaAsコンタクト層160上には、金(Au)層/Zn層/Au層の積層構造等を用いたp側電極180が形成され、n型GaAs基板110の下には、金ゲルマニウム(AuGe)層/Au層の積層構造等を用いたn側電極190が形成されている。
ここで、このような構成を有する光半導体素子100の形成方法の一例について説明する。
図6は半導体層形成工程の一例の要部断面模式図である。
ここでは(100)面を主面とするn型GaAs基板110を用いる。その(100)面上に、まず、n型AlGaAs下部クラッド層120を形成する。次いで、形成したn型AlGaAs下部クラッド層120上に、活性層130を形成する。活性層130は、例えば、量子ドット層とバリア層を10周期分含んだ量子ドット構造とすることができる。次いで、形成した活性層130上に、i型GaAs層140を形成する。これらの各半導体層は、例えば、分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy)法、或いは有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;MOCVD)法を用いた、エピタキシャル結晶成長により形成する。
図7は回折格子形成工程の一例の要部断面模式図である。
n型AlGaAs下部クラッド層120、活性層130及びi型GaAs層140の形成後は、i型GaAs層140に回折格子143を形成する。
回折格子143の形成では、まず、i型GaAs層140上に、プラズマCVD法等を用いて、SiO2や窒化シリコン(SiN)等の誘電体膜を形成する。更に、その誘電体膜上にレジストを塗布し、干渉露光法や電子線露光法等を用いて、回折格子形成用のレジストパターンを形成する。そして、そのレジストパターンをマスクにしてエッチングを行い、そのレジストに形成されている回折格子形成用のパターンを誘電体膜に転写する。例えば、誘電体膜をSiO2膜で形成している場合には、バッファードフッ酸(BHF)等を用いたウェットエッチングや、テトラフロロカーボン(CF4)等を用いた反応性イオンエッチングにより、レジストの回折格子形成用パターンを誘電体膜に転写する。このようにして、図7に示したような、回折格子形成用パターンが転写された誘電体マスク145を得る。
誘電体マスク145の形成後は、それをマスクにしてエッチングを行い、誘電体マスク145に形成されている回折格子形成用パターンをi型GaAs層140に転写する。i型GaAs層140のエッチングは、例えば、アンモニア系エッチャントやリン酸系エッチャントを用いたウェットエッチングにより行うことができる。また、i型GaAs層140のエッチングは、例えば、誘導結合型(Inductively Coupled Plasma;ICP)エッチング法等のドライエッチングにより行うこともできる。その場合、エッチャントには、テトラクロロシラン(SiCl4)や塩素(Cl2)等の塩素系ガスが用いられる。
このようにして、i型GaAs層140に、図7に示したような凹部141及び凸部142、即ち回折格子143を形成する。回折格子143の形成後は、誘電体マスク145を除去する。
i型GaAs層140に形成する回折格子143の周期は、例えば、1.3μm通信波長帯の場合、次式(1)の関係を用いて、200nm程度に設定することができる。
Λ=λ/(neq×2sinθ)・・・(1)
式(1)において、Λは回折格子の周期、λは光の真空での波長、neqは等価屈折率である。
所定周期の回折格子143が得られるように、上記のレジストパターン及び誘電体マスク145が形成される。
また、回折格子143の深さ(凹部141の深さ(凸部142の高さ))は、所定の結合係数に対して、光閉じ込め率の大きさを指標に活性層130との距離のバランスによって決定される。結合係数は、例えば、50cm-1程度とし、回折格子143の深さと活性層130までの距離により調整される。光半導体素子100において、回折格子143の深さは、例えば、10nm〜50nmに設定され、回折格子143と活性層130の距離は、例えば、100nm程度に設定される。
所定深さの回折格子143が得られるように、上記のi型GaAs層140のエッチング条件(エッチング方法、エッチャント、エッチング時間等)が選択される。
回折格子143の形成後は、回折格子143を被覆する(埋め込む)p型InGaP上部クラッド層150を形成する。この第1実施例では、例えば、次の図8〜図10に示すような方法で、p型InGaP上部クラッド層150を形成する。
図8及び図9は第1実施例に係る上部クラッド層形成工程の要部断面模式図である。また、図10は第1実施例に係る上部クラッド層形成条件の説明図である。
尚、図8(A)は第1実施例に係る上部クラッド層形成工程の第1段階の要部断面模式図、図8(B)は第1実施例に係る上部クラッド層形成工程の第2段階の要部断面模式図である。また、図9(A)は第1実施例に係る上部クラッド層形成工程の第2段階終了後の要部断面模式図、図9(B)は第1実施例に係る上部クラッド層形成工程の第3段階の要部断面模式図である。
回折格子143をp型InGaP上部クラッド層150で被覆する際には、まず、p型ドーパント供給量が比較的多い条件を用いて、図8(A)に示すように、第1のp型InGaP層155を形成する。次いで、p型ドーパント供給量が比較的少ない条件を用いて、図8(B)に示すように、第2のp型InGaP層156を形成し、凹部141内を埋める。第1のp型InGaP層155及び第2のp型InGaP層156のp型ドーパントには、例えば、Znを用いる。また、第1のp型InGaP層155及び第2のp型InGaP層156の形成は、例えば、MOCVD法等を用いたエピタキシャル結晶成長により行う。
図8(A),(B)に示すような手順で第1のp型InGaP層155及び第2のp型InGaP層156を形成する際における、p型ドーパント供給量の一例を、図10に示す。
例えば、第1のp型InGaP層155の形成には、p型ドーパント濃度が2×1018cm-3のp型InGaP層を形成するようなp型ドーパント供給条件を用いる。第2のp型InGaP層156の形成には、p型ドーパント濃度が5×1017cm-3のp型InGaP層を形成するようなp型ドーパント供給条件を用いる。
ところで、i型GaAs層140の回折格子143上にInGaP層を成長する場合、InGaP層は、凸部142の上面に比べ、凹部141の底面、更にその側面から、選択的に成長していく。例えば、InGaP層の成長時に凸部142の上面に付着する半導体材料は、マストランスポートにより、凹部141内へと移動する。また、InGaP層の成長過程では、主に、(311)A面という、(100)面とは異なる結晶面が出現して、InGaP層の成長が進行していく傾向がある。また、この(311)A面は、凹部141の底面及び底面近傍の側面から底面にかけて成長する際、或いは側面から成長する際に、p型ドーパントを比較的取り込み易い。
そのため、第1のp型InGaP層155の形成時には、図8(A)に示したように、凹部141内の、底面近傍の側面から底面にかけて、InGaPの(311)A面が出現し、その(311)A面に沿って、InGaP層が成長していく。その際、p型ドーパントは、供給量が比較的多い条件で供給され、(311)A面にはp型ドーパントが取り込まれ易く、従って、凹部141の底部には、比較的高濃度のp型ドーパントが導入された第1のp型InGaP層155が形成される。
そして、続く第2のp型InGaP層156は、図8(B)に示したように、凹部141内の、先に形成された第1のp型InGaP層155上に、供給量が比較的少ない条件で供給されるp型ドーパントを取り込みながら、(311)A面に沿って成長していく。その際、供給されるp型ドーパントは、凹部141の側面から出現してくる(311)A面に比較的取り込まれ易い。その結果、凹部141内に形成される第2のp型InGaP層156のうち、凹部141内の側部に形成される部分(図8(B)に示したY部)は、それより内側に形成される部分に比べて、より高濃度のp型ドーパントが存在する領域になる。
即ち、p型ドーパント濃度に着目すると、第1のp型InGaP層155及び第2のp型InGaP層156の形成後、凹部141内には、図9(A)に示したように、その底部及び側部に比較的高濃度のp型ドーパントを含む第1領域151が形成されるようになる。そして、その凹部141の中央部には、比較的低濃度のp型ドーパントを含む第2領域152が形成されるようになる。
その後は、図9(B)に示したように、そのような凹部141内の第1領域151上及び第2領域152上、並びに凸部142の上面に、比較的高濃度のp型ドーパントを供給する条件を用いて、第3領域153となる第3のp型InGaP層157を形成する。例えば、厚さ1μm程度の第3のp型InGaP層157を形成する。第3のp型InGaP層157のp型ドーパントには、例えば、Znを用いる。また、第3のp型InGaP層157の形成は、例えば、MOCVD法等を用いたエピタキシャル結晶成長により行う。第3のp型InGaP層157は、凸部142の上面から上方には、(100)面に沿って成長が進行していく。
このような第3のp型InGaP層157を形成する際におけるp型ドーパント供給条件の一例を、図10に示す。尚、ここでは一例として、第3のp型InGaP層157形成時のp型ドーパント供給量を、第1のp型InGaP層155形成時のp型ドーパント供給量と同じにしている場合を示している。
このように、回折格子143の形成後、第1のp型InGaP層155、第2のp型InGaP層156及び第3のp型InGaP層157を、それぞれ所定のp型ドーパント供給条件を用いて、順に成長していく。それにより、図9(B)に示したような、回折格子143を被覆するp型InGaP上部クラッド層150が得られる。その時には、凹部141の底面及び側面、並びに凸部142の上面が、比較的高いp型ドーパント濃度の第1領域151及び第3領域153で被覆され、凹部141内の中央部に、比較的低いp型ドーパント濃度の第2領域152が形成された構造が得られる。
前述のように、回折格子143の形成後には、その凹部141及び凸部142の表面に、大気中のシロキサンのSi原子が吸着する場合がある。Si原子の吸着量は、およそ1018cm-3のオーダに達し、回折格子143の表面には、Si原子が偏析したn型転換層が形成され得る。
このようなn型転換層が存在する回折格子143上に、p型InGaP層を成長すると、p型InGaP層にn型転換層を補償できる程度のp型ドーパントがなければ、回折格子143との間に不要なpn領域が形成されてしまう。
尚、ここでは回折格子143をi型GaAs層140に形成する場合を例示して説明しているが、回折格子143を形成する層にはp型GaAsを用いることもできる。その場合には、上記のようなn型転換層の存在により、その光半導体素子内にpnpn構造ができ、サイリスタ特性を示してしまうようになる。
一方、例えば、n型転換層のSi濃度が、1018cm-3程度であった場合に、p型InGaP層を、終始、そのp型ドーパント濃度がn型転換層のSi濃度と同じく1018cm-3程度となるようなp型ドーパント供給条件で成長する場合を想定する。この場合、InGaP層の成長過程では、p型ドーパントが取り込まれ易い(311)A面が出現するため、形成されるp型InGaP層内にp型ドーパント濃度が1019cm-3程度に達する領域が生じる。即ち、n型転換層の補償に必要な濃度以上のp型ドーパントを含んだ領域を有するp型InGaP層が形成される。
このようなp型InGaP層は、フリーキャリア吸収に起因する光の内部損失の増加を招き、光半導体素子の特性を劣化させる一因となり得る。また、このようなp型InGaP層は、活性層130等へのp型ドーパントの拡散を招き、光半導体素子の特性を劣化させる一因となり得る。
このようなフリーキャリア吸収に起因する光の内部損失の増加やp型ドーパントの拡散を回避するために、p型InGaP層を、そのp型ドーパント濃度を下げるようなp型ドーパント供給条件で形成すれば、上記のようなn型転換層が残ってしまうことになる。或いは、p型ドーパントが取り込まれ易い(311)A面にInGaP層が成長するような領域ではn型転換層が補償されるが、(100)面にInGaP層が成長されるような別の領域ではn型転換層が補償されずに残ってしまうといったことも起こり得る。
これに対し、ここでは上記のように、凹部141の底面及び側面、並びに凸部142の上面を比較的高いp型ドーパント濃度の第1領域151及び第3領域153で被覆し、凹部141内の中央部に、比較的低いp型ドーパント濃度の第2領域152を形成する。これにより、回折格子143の表面に存在し得るn型転換層を、比較的高濃度のp型ドーパントを含む第1領域151及び第3領域153で補償することができる。更に、凹部141の中央部に、比較的低濃度のp型ドーパントを含む第2領域152を形成することで、伝播する光の吸収損失、及びp型ドーパントの活性層130等への拡散を抑制することができる。その結果、光半導体素子100の特性劣化を効果的に抑制することが可能になる。
尚、上記の説明では、第1領域151、第2領域152及び第3領域153を含むp型InGaP上部クラッド層150を形成するために、図10に示したようなp型ドーパント供給条件を用いる場合について例示した。即ち、第1のp型InGaP層155形成時及び第3のp型InGaP層157形成時のp型ドーパント供給量を同じにし、第2のp型InGaP層156形成時には、それらよりも少ないp型ドーパント供給量とした。このほか、次の図11に示すようなp型ドーパント供給条件を用いて、p型InGaP上部クラッド層150を形成することも可能である。
図11は第1実施例に係る上部クラッド層形成条件の別例の説明図である。
図11には、p型InGaP上部クラッド層150を形成する際の条件のうち、回折格子143の凸部142から上方に形成される、第3のp型InGaP層157形成時におけるp型ドーパント供給条件を変更した、3つの例を示している。
第3のp型InGaP層157は、例えば、図11に一点鎖線aで示したように、第1のp型InGaP層155形成時のp型ドーパント供給量よりも多い供給量条件で、形成することもできる。
また、第3のp型InGaP層157は、例えば、図11に鎖線bで示したような供給条件で形成することもできる。即ち、第3のp型InGaP層157は、第1のp型InGaP層155形成時のp型ドーパント供給量よりは少なく、第2のp型InGaP層156形成時のp型ドーパント供給量よりは多い供給量条件で、形成することができる。
或いはまた、第3のp型InGaP層157は、例えば、図11に点線cで示したように、その形成後期の段階で、形成初期の段階よりもp型ドーパント供給量を低下させた供給量条件で、形成することもできる。例えば、第3のp型InGaP層157の形成初期段階では第1のp型InGaP層155形成時と同じ供給量条件を用い、形成後期段階では第2のp型InGaP層156形成時と同じ供給量条件を用いる。
尚、p型InGaP上部クラッド層150を形成する際には、p型ドーパント供給量について、種々の条件を用いることが可能である。p型ドーパント供給量の設定にあたっては、形成後のp型InGaP上部クラッド層150に、それがクラッド層として機能する量のp型ドーパントが含まれることを考慮する。更に、形成後のp型InGaP上部クラッド層150によって回折格子143の表面に存在し得るn型転換層が補償可能であること、形成後のp型InGaP上部クラッド層150の光吸収及びp型ドーパント拡散が抑制されることを考慮する。
第1のp型InGaP層155形成時には、例えば、その形成後の当該層の底部に、凹部141の底面に存在し得るn型転換層が補償可能な量で、クラッド層の一部となる量のp型ドーパントが導入されるように、その供給量が設定される。
また、第2のp型InGaP層156形成時には、例えば、その形成後の当該層の側部に、凹部141の側面に存在し得るn型転換層が補償可能な量で、クラッド層の一部となる量のp型ドーパントが導入されるように、その供給量が設定される。尚、そのような条件でp型ドーパントを供給して第2のp型InGaP層156を形成する結果、形成後の当該層の中央部は、その側部よりも低濃度のp型ドーパントが導入された状態となる。
また、第3のp型InGaP層157形成時には、例えば、その形成後の当該層の底部に、凸部142の上面に存在し得るn型転換層が補償可能な量で、クラッド層の一部となる量のp型ドーパントが導入されるように、その供給量が設定される。
以上、p型InGaP上部クラッド層150の形成について述べたが、その形成後は、p型GaAsコンタクト層160、誘電体層171、埋め込み層172、p側電極180及びn側電極190の形成を行う。
図12はコンタクト層形成工程の一例の要部断面模式図である。
所定厚さのp型InGaP上部クラッド層150の形成後は、その上にp型GaAsコンタクト層160を形成する。p型GaAsコンタクト層160は、所定のp型ドーパントを用い、MOCVD法等を用いて形成することができる。p型GaAsコンタクト層160の厚さは、例えば、300nmとすることができる。
図13は埋め込み層及び電極形成工程の一例の要部断面模式図である。
p型GaAsコンタクト層160の形成後は、p型GaAsコンタクト層160及びp型InGaP上部クラッド層150のエッチングを行い、メサ構造101を形成する。メサ構造101は、p型GaAsコンタクト層160上に、所定パターンのSiO2やSiN等の誘電体膜或いはレジストを形成し、それをマスクにしてエッチングを行うことにより、形成することができる。エッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよい。
メサ構造101の形成後は、プラズマCVD法等を用いて、SiO2やSiN等の誘電体層171を形成した後、スピンコート法を用いて、BCB等の低誘電率材料を塗布し、高温キュアを行って、埋め込み層172を形成する。
次いで、導波路上の埋め込み層172をエッチングする。このエッチングには、例えば、反応性イオンエッチング法を用いることができ、その場合、エッチャントには、酸素(O2)等を用いることができる。
その後、メサ導波路構造の頭出し(p型GaAsコンタクト層160の表出)を行い、Au層/Zn層/Au層を蒸着して、p側電極180を形成する。また、n型GaAs基板110の裏面側には、AuGe層/Au層を蒸着して、n側電極190を形成する。
以上の工程により、光半導体素子100を得ることができる。
次に、第2実施例について説明する。
図14は光半導体素子の別例の要部断面模式図である。
図14に示す光半導体素子200は、回折格子143を形成するi型GaAs層の中間部、即ち下部i型GaAs層140aと上部i型GaAs層140bの間に、InGaPエッチングストップ層210が形成された構造を有している。回折格子143は、このInGaPエッチングストップ層210上の上部i型GaAs層140bに形成され、凹部141の底面がInGaPエッチングストップ層210になる。
回折格子143を形成する際には、まず、上記第1実施例と同様に、n型GaAs基板110の(100)面上に、n型AlGaAs下部クラッド層120、活性層130を形成する。次いで、下部i型GaAs層140aを形成した後、InGaPエッチングストップ層210を形成し、更に上部i型GaAs層140bを形成する。その後、誘電体マスクを用い、上部i型GaAs層140bをInGaPエッチングストップ層210が露出するまでエッチングし、回折格子143を形成する。尚、InGaPエッチングストップ層210の形成は、例えば、MOCVD法等を用いたエピタキシャル結晶成長により行う。
InGaPエッチングストップ層210により、形成される回折格子143の深さは、上部i型GaAs層140bの厚さに規定される。尚、この第2実施例における回折格子143の深さ(上部i型GaAs層140bの厚さ)は、上記第1実施例と同様に、例えば、10nm〜50nmに設定される。また、上記第1実施例と同様に、回折格子143の周期は、例えば、200nm程度に設定され、回折格子143と活性層130の距離は、例えば、100nm程度に設定される。
InGaPエッチングストップ層210の厚さは、例えば、5nm〜10nm程度に設定することができる。InGaPエッチングストップ層210が、例えば5nmより薄い場合には、エッチングストップ層として機能しなくなる可能性がある。また、InGaPエッチングストップ層210が、例えば10nmより厚い場合には、キャリアの通過が阻止されてしまう可能性がある。
回折格子143の形成後は、例えば、上記第1実施例と同様にして、上部i型GaAs層140bの上に、p型InGaP上部クラッド層150を形成する。その後は、例えば、上記第1実施例と同様にして、p型GaAsコンタクト層160、誘電体層171、埋め込み層172、p側電極180及びn側電極190の形成を行う。これにより、図14に示したような光半導体素子200を得ることができる。
このような光半導体素子200では、InGaPエッチングストップ層210により、回折格子143を精度良く形成することができる。その回折格子143に上記のようなp型InGaP上部クラッド層150を形成することで、回折格子143の表面に存在し得るn型転換層を補償し、且つ、光の吸収損失及びp型ドーパントの拡散を抑制することができる。
次に、第3実施例について説明する。
この第3実施例では、p型InGaP上部クラッド層の形成方法の別例について説明する。
図15及び図16は第3実施例に係る上部クラッド層形成工程の要部断面模式図である。また、図17は第3実施例に係る上部クラッド層形成条件の説明図である。
尚、図15は第3実施例に係る上部クラッド層形成工程の第1段階の要部断面模式図である。また、図16(A)は第3実施例に係る上部クラッド層形成工程の第1段階終了後の要部断面模式図、図16(B)は第3実施例に係る上部クラッド層形成工程の第2段階の要部断面模式図である。
ここでは、まず、図17に示すようなp型ドーパント供給量が比較的少ない条件(実線d)を用いて、図15に示すように、回折格子143の凹部141を埋めるように、第1のp型InGaP層155aを形成する。第1のp型InGaP層155aのp型ドーパントには、例えば、Znを用いる。また、第1のp型InGaP層155aの形成は、例えば、MOCVD法等を用いたエピタキシャル結晶成長により行う。
第1のp型InGaP層155は、凹部141内に、供給量が比較的少ない条件で供給されるp型ドーパントを取り込みながら、成長していく。その際、凹部141内には、図15に示したように、InGaPの(311)A面が出現し、(311)A面に沿ってInGaP層が成長していく。p型ドーパントは、凹部141内の底部及び側部に出現する(311)A面に比較的取り込まれ易い。その結果、凹部141内に形成される第1のInGaP層155aのうち、凹部141内の底部及び側部に形成される部分(図15に示したZ部)は、それより内側に形成される部分に比べて、より高濃度のp型ドーパントが存在する領域になる。
即ち、p型ドーパント濃度に着目すると、第1のp型InGaP層155aの形成後、凹部141内には、図16(A)に示すように、その底部及び側部に比較的高濃度のp型ドーパントを含む第1領域151が形成されるようになる。そして、その凹部141の中央部には、比較的低濃度のp型ドーパントを含む第2領域152が形成されるようになる。
このような第1領域151及び第2領域152(第1のp型InGaP層155a)で凹部141を埋めた後、引き続き図17に示したようなp型ドーパント供給量が比較的多い条件(実線d)を用いて、p型InGaP層を形成する。これにより、図16(B)に示したように、凹部141内の第1領域151上及び第2領域152上、並びに凸部142の上面に、第3領域153となる第2のp型InGaP層156aが形成される。第2のp型InGaP層156aのp型ドーパントには、例えば、Znを用いる。また、第2のp型InGaP層156aの形成は、例えば、MOCVD法等を用いたエピタキシャル結晶成長により行う。
このように、回折格子143の形成後、第1のp型InGaP層155a及び第2のp型InGaP層156aを、それぞれ所定のp型ドーパント供給条件を用いて、順に成長していく。それにより、図16(B)に示したような、回折格子143を被覆するp型InGaP上部クラッド層150が得られる。その時には、凹部141の底面及び側面、並びに凸部142の上面が、比較的高いp型ドーパント濃度の第1領域151及び第3領域153で被覆され、凹部141内の中央部に、比較的低いp型ドーパント濃度の第2領域152が形成された構造が得られる。
尚、回折格子143の形成工程までは、例えば、上記第1実施例と同様に行う。また、上記のような構造を有するp型InGaP上部クラッド層150の形成後は、例えば、上記第1実施例と同様に、p型GaAsコンタクト層160、誘電体層171、埋め込み層172、p側電極180及びn側電極190の形成を行う。その結果、上記第1実施例と同様に、図4及び図5に示すような構成を有する光半導体素子100が得られるようになる。
この第3実施例のような方法を用いてp型InGaP上部クラッド層150を形成した場合にも、回折格子143の表面に存在し得るn型転換層を補償すると共に、伝播する光の吸収損失、及びp型ドーパントの活性層130等への拡散を抑制することができる。
尚、この第3実施例においても、第3領域153となる第2のp型InGaP層156aの形成時には、例えば、図17に点線eで示したように、その形成後期の段階で、形成初期の段階よりもp型ドーパント供給量を低下させた条件を用いることもできる。
尚、p型InGaP上部クラッド層150を形成する際には、p型ドーパント供給量について、種々の条件を用いることが可能である。
第1のp型InGaP層155a形成時には、例えば、その形成後の当該層の底部及び側部に、凹部141の底面及び側面に存在し得るn型転換層が補償可能な量で、クラッド層の一部となる量のp型ドーパントが導入されるように、その供給量が設定される。尚、そのような条件でp型ドーパントを供給して第1のp型InGaP層155aを形成する結果、形成後の当該層の中央部は、その側部よりも低濃度のp型ドーパントが導入された状態となる。
また、第2のp型InGaP層156a形成時には、例えば、その形成後の当該層の底部に、凸部142の上面に存在し得るn型転換層が補償可能な量で、クラッド層の一部となる量のp型ドーパントが導入されるように、その供給量が設定される。
次に、第4実施例について説明する。
上記第2実施例で述べた、InGaPエッチングストップ層210を設けた光半導体素子200において、その回折格子143を被覆するp型InGaP上部クラッド層150を、上記第3実施例で述べたような方法を用いて形成してもよい。
その場合は、まず、上記第2実施例と同様に、n型GaAs基板110の(100)面上に、n型AlGaAs下部クラッド層120、活性層130、下部i型GaAs層140a、InGaPエッチングストップ層210、及び上部i型GaAs層140bを形成する。その後、誘電体マスクを用いて上部i型GaAs層140bをInGaPエッチングストップ層210が露出するまでエッチングし、回折格子143を形成する。
そして、回折格子143の形成後、上記第3実施例と同様に、まず、p型ドーパント供給量が比較的少ない条件を用いて、凹部141を埋める第1のp型InGaP層155aを形成する。次いで、p型ドーパント供給量が比較的多い条件を用いて、凸部142より上方に第2のp型InGaP層156aを形成する。これにより、凹部141の底面及び側面、並びに凸部142の上面が、比較的高いp型ドーパント濃度の第1領域151及び第3領域153で被覆され、凹部141内の中央部に、比較的低いp型ドーパント濃度の第2領域152が形成された構造が得られる。
p型InGaP上部クラッド層150の後は、例えば、上記第1実施例と同様にして、p型GaAsコンタクト層160、誘電体層171、埋め込み層172、p側電極180及びn側電極190の形成を行う。これにより、上記第2実施例と同様に、図14に示したような光半導体素子200を得ることができる。
この第4実施例においても、高精度の回折格子143の形成、n型転換層の補償、光の吸収損失の抑制、及びp型ドーパント拡散の抑制を図ることができる。
以上、第1〜第4実施例に係る光半導体素子について説明したが、光半導体素子の構成は、上記の例に限定されるものではない。
例えば、以上の説明では、最終的に得られるp型InGaP上部クラッド層150について、第1領域151及び第3領域153に比べて第2領域152のp型ドーパント濃度が低くなる場合を例示した。このほか、第1領域151、第2領域152及び第3領域153のp型ドーパントの濃度分布について、上記の例とは異なる濃度分布を有するp型InGaP上部クラッド層150も形成され得る。
即ち、まず凹部141内の第1領域151と第2領域152のp型ドーパント濃度については、InGaP層がp型ドーパントを取り込み易い(311)A面に沿って成長する場合、第1領域151に比べて第2領域152のp型ドーパント濃度の方が低くなる。
一方、第2領域152と第3領域153のp型ドーパント濃度については、p型ドーパントの供給条件によっては、第2領域152のp型ドーパント濃度が第3領域153のp型ドーパント濃度よりも低くならない場合もある。例えば、凸部142上の第3領域153となるp型InGaP層は、凹部141内に成長するp型InGaP層とは異なる機構で成長し得る。p型ドーパント供給量によっては、凹部141内のInGaP層成長がp型ドーパントを取り込み易い(311)A面に沿って進行する結果、凸部142上の第3領域153のp型ドーパント濃度が第2領域152のそれと同じか又は低くなることも起こり得る。
但し、このようなp型ドーパント濃度分布であっても、p型ドーパントの供給条件を適切に設定しておくことで、n型転換層を補償し、且つ、光の吸収損失及びp型ドーパントの拡散を抑制することは可能である。最終的に得られる第1領域151と第3領域153にn型転換層が補償可能なp型ドーパントが含まれていれば、凹部141内には第1領域151と共に少なくともそれよりは低いp型ドーパント濃度の第2領域152があるため、上記効果を得ることは可能である。
また、以上の説明では、主に、p型InGaP上部クラッド層150を、第1領域151、第2領域152及び第3領域153の3種類の領域で形成する場合を例示したが、領域の種類はこれに限定されるものではない。
例えば、前述のように、凸部142より上方の部分(第3のp型InGaP層157に相当する部分)には、p型ドーパント濃度の異なる領域を複数形成することが可能である(図11の点線cで示した条件を用いた場合等)。また、凹部141内には、第1領域151及び第2領域152の2種類の領域に限らず、所定のp型ドーパント濃度を有する、3種類以上の領域を形成してもよい。その場合は、例えば、凹部141内の底部及び側部から、その内側の中央部に向かって、p型ドーパント濃度が低下していくように、3種類以上の領域を形成する。
凹部141内と凸部142上のいずれでも、所定のp型ドーパント濃度を有する複数領域を形成する場合は、各領域間のp型ドーパント濃度を階段状に変化させる(InGaP層形成時のp型ドーパント供給量を階段状に変化させる)ようにすることができる。このほか、各領域間のp型ドーパント濃度を連続的に変化させる(InGaP層形成時のp型ドーパント供給量を連続的に変化させる)ようにすることもできる。
また、以上の説明では、活性層を量子ドット構造とする場合を例示したが、活性層は、量子井戸構造、量子細線構造、バルク構造としてもよい。
また、以上の説明では、メサ構造を埋め込む層にBCBを用いる場合を例示したが、他に、ポリイミド系有機化合物、エポキシ系有機化合物、アクリル系有機化合物を用いたり、当該層部分を空気層としたりしてもよい。
また、以上の説明では、GaAs基板上にGaAs系化合物半導体層を積層した構造を例示したが、上記の手法は、その他の基板や半導体材料を用いた光半導体素子の、その回折格子を埋め込む層の形成に、同様に適用可能である。例えば、インジウムリン(InP)基板にインジウムガリウムヒ素リン(InGaAsP)系化合物半導体層やアルミニウムガリウムインジウムヒ素(AlGaInAs)系化合物半導体層を積層する構造に対しても、同様に上記の手法を適用することが可能である。
また、以上の説明では、活性層の上方に回折格子を設ける光半導体素子を例示したが、上記の手法は、回折格子を活性層の下方に設ける光半導体素子の、その回折格子を埋め込む層(スペーサ層等)の形成に、同様に適用可能である。
図18は別形態の光半導体素子の要部断面模式図である。
図18に示す光半導体素子400は、基板410上に、バッファ層420、回折格子層430、スペーサ層440、活性層450、クラッド層460及びコンタクト層470が積層された構造を有している。ここで、基板410には、化合物半導体基板が用いられる。また、バッファ層420、回折格子層430、スペーサ層440、活性層450、クラッド層460及びコンタクト層470は、いずれも化合物半導体材料を用いて形成される。コンタクト層470上及び基板410の裏面には、それぞれ所定の電極480,490が形成されている。
光半導体素子400では、活性層450の下方に、回折格子433を含む回折格子層430が設けられている。この回折格子433を被覆するスペーサ層440の形成時に、上記のような手法を用いる。例えば、回折格子433の凹部431の内面、及び凸部432の上面を、比較的高いドーパント濃度の第1領域511及び第3領域513で被覆し、凹部431の中央部に、比較的ドーパント濃度の低い第2領域512を設ける。それにより、回折格子433の表面に、スペーサ層440にドーピングするドーパントと反対導電型の元素が吸着しているような場合にも、それを補償してスペーサ層440を形成することが可能になる。
また、上記の手法は、DFBレーザやDRレーザ、或いはDFBレーザを変調器素子と組み合わせた変調器集積型レーザ等、内部に回折格子及びそれを被覆する層を含む種々の光半導体素子に適用可能である。尚、適当な半導体材料を用いて形成されるDFBレーザやDRレーザ等の半導体レーザは、非冷却で単一モードのレーザ発振を行うことができ、光通信における高速化、大容量化に寄与し得る。
また、上記のような手法を用いて形成される光半導体素子は、他の素子と組み合わせることにより、光モジュールや光伝送装置等の光装置とすることが可能である。一例として、光半導体素子を用いた光モジュールを図19に示す。
図19に示す光モジュール300は、リードピン301を有するパッケージ302に搭載された半導体レーザ303を有している。ここでは一例として、非冷却で、単一モードでレーザ発振する半導体レーザ303を用いている。半導体レーザ303の後方には、受光素子304が設置されている。各リードピン301は、半導体レーザ303又は受光素子304に、接続されている。半導体レーザ303に接続されたリードピン301は、DFBレーザの駆動電源に接続され、受光素子304に接続されたリードピン301は、半導体レーザ303の出力モニタ装置に接続される。半導体レーザ303及び受光素子304は、レンズ305が設けられたキャップ306で覆われており、半導体レーザ303から出射されたレーザ光は、レンズ305で集光され、その先に設けられる光ファイバに入射される。
尚、ここでは、半導体レーザを用いた光半導体モジュールを例示したが、種々の光半導体素子を他の素子と組み合わせ、それぞれの用途に応じた形態の光モジュール、更にはそのような光モジュールを用いた装置を形成することが可能である。
尚、以上の説明では、回折格子を含む光半導体素子を例に、回折格子が形成された半導体層を別の半導体層で被覆する場合の構成とその形成方法を中心にして述べた。このほか、上記のような手法は、回折格子として機能する凹凸に限らず、凹凸を有する種々の半導体層を別の半導体層で被覆する場合であって、当該凹凸表面に付着する不純物に起因して生じる不具合を抑制するような場合等にも、適用可能である。
以上説明した実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 凹部及び凸部が形成された第1半導体層と、
前記第1半導体層上方に形成され、前記凹部及び前記凸部を被覆する、不純物を含んだ第2半導体層と、
を含み、
前記第2半導体層は、
前記凹部内に形成された、第1濃度の前記不純物を含む第1領域と、
前記凹部内で、前記第1領域上方に形成された、前記第1濃度よりも低い第2濃度の前記不純物を含む第2領域と、
前記凸部上方に形成された、前記不純物を含む第3領域と、
を含むことを特徴とする光半導体素子。
(付記2) 前記第1領域は、前記凹部内の底部及び側部に形成され、前記第2領域は、前記凹部内の中央部に形成されることを特徴とする付記1に記載の光半導体素子。
(付記3) 前記凹部内面と前記第1領域との間、及び前記凸部上面と前記第3領域との間に、前記第2半導体層に含まれる前記不純物と反対導電型の不純物が含まれることを特徴とする付記1又は2に記載の光半導体素子。
(付記4) 前記反対導電型の不純物は、シリコンであることを特徴とする付記3に記載の光半導体素子。
(付記5) 前記第3領域は、前記第2濃度よりも高い第3濃度の前記不純物を含むことを特徴とする付記1乃至4のいずれかに記載の光半導体素子。
(付記6) 前記第1半導体層の下方に形成された活性層を更に含むことを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の光半導体素子。
(付記7) 前記第2半導体層の上方に形成された活性層を更に含むことを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の光半導体素子。
(付記8) 前記凹部の底は、前記第1半導体層と異なる材質の第3半導体層であることを特徴とする付記1乃至7のいずれかに記載の光半導体素子。
(付記9) 第1半導体層を形成する工程と、
前記第1半導体層に、凹部及び凸部を形成する工程と、
前記第1半導体層上方に、前記凹部及び前記凸部を被覆する、不純物を含む第2半導体層を形成する工程と、
を含み、
前記第2半導体層を形成する工程は、
前記凹部内に、前記不純物を第1供給量で供給して第1層を形成する工程と、
前記凸部上方に、前記不純物を前記第1供給量よりも多い第2供給量で供給して第2層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする光半導体素子の製造方法。
(付記10) 前記第2半導体層を形成する工程は、前記第1層を形成する工程前に、前記凹部内に、前記不純物を前記第1供給量よりも多い第3供給量で供給して第3層を形成する工程を更に含むことを特徴とする付記9に記載の光半導体素子の製造方法。
(付記11) 前記第1半導体層を形成する工程は、前記第1半導体層の中間部に、第3半導体層を形成する工程を含み、
前記凹部及び前記凸部を形成する工程は、前記第3半導体層上の前記第1半導体層を貫通する前記凹部を形成する工程を含むことを特徴とする付記9又は10に記載の光半導体素子の製造方法。
(付記12) 凹部及び凸部が形成された第1半導体層と、
前記第1半導体層上方に形成され、前記凹部及び前記凸部を被覆する、不純物を含んだ第2半導体層と、
を含み、
前記第2半導体層が、
前記凹部内に形成された、第1濃度の前記不純物を含む第1領域と、
前記凹部内で、前記第1領域上方に形成された、前記第1濃度よりも低い第2濃度の前記不純物を含む第2領域と、
前記凸部上方に形成された、前記不純物を含む第3領域と、
を含む光半導体素子を備えたことを特徴とする光装置。