JP5594422B2 - ゴルフクラブヘッドのスイートエリアの算出方法 - Google Patents
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このような観点から、フェース面上におけるアベレージゴルファによる実際の打点分布にスイートエリアを合わせて設定することが提案されている(特許文献1、2参照)。
また、打点位置がフェース面の中心よりも上側、あるいは、下側、あるいは、トウ側、あるいは、ヒール側に位置するスウィングを行うゴルファに対応させてスイートエリアの位置を設定することが提案されている(特許文献3参照)。
一方、本発明者らの知見によれば、ゴルファが実際にゴルフクラブをスウィングすることによりフェース面でボールを打撃する場合、フェース面の速度分布は一様ではなく、フェース面の速度分布はシャフト長さ依存分とゴルフクラブヘッドのローリング(シャフト回りの回転)依存分とによって決定される。
具体的には、フェース面の速度は、フェース面のヒール側上部からトウ側下部に向けて次第に大きくなる。
そのため、スイートエリアがフェース面の速度分布によって大きな影響を受けていることがわかった。
これに対して、上記のスウィングロボットを用いた場合にはこのようなシャフト長さ依存分とローリング依存分の速度成分が再現されないため、フェース面の速度分布は、実際にゴルファがゴルフクラブをスウィングしたときのフェース面の速度分布と大きく異なることになり、したがって、スイートエリアを正確に求めているとは言えない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、実際のスウィングが反映された正確なスイートエリアを得る上で有利なゴルフクラブヘッドのスイートエリアの算出方法を提供することにある。
まず、本発明方法の対象となるゴルフクラブヘッドについて説明する。
図1に示すように、ゴルフクラブヘッド10は、金属製の中空構造ヘッド本体4を備えている。
ヘッド本体4の金属材料は、チタン合金やアルミニウム合金などの高強度の低比重金属が好ましく用いられる。
ヘッド本体4は、ゴルフボールを打撃するフェース面1と、フェース面1に連接するクラウン部2及びソール部3とを備えている。
また、クラウン部2には、フェース面1側でかつヒール5寄りの位置にシャフト6に接続するホーゼル7が設けられている。
また、フェース面1を正面から見てヘッド本体4のヒール5と反対側がトウ8である。
本発明者らは、上記のゴルフクラブヘッド10の有限要素モデルであるゴルフクラブヘッドモデルを用いて有限要素解析を行った。
なお、有限要素解析は、パーソナルコンピュータにインストールされた従来公知のさまざまな有限要素解析プログラムを実行することによって行うことができる。
このような有限要素解析プログラムとして、例えば、ABAQUS(SIMULIA Americas社の登録商標)などを用いることができる。
次に、上記で設定したゴルフクラブヘッドモデルを用いて、フェース面1の速度分布を計算によって求め、フェース面1の速度分布をフェース面1に設定する。
ここで、フェース面1の速度分布とは、プレイヤーがヘッド本体4を有するゴルフクラブでゴルフボールを打撃したときに、打撃直前におけるフェース面1の速度分布を意味するものである。
フェース面1の速度分布は、シャフト6の長さに依存する成分と、ヘッド本体4のローリング(シャフト6の回りの回転)による成分とから主に決定される。
図2に示すように、前者のシャフト6の長さに依存する成分は、シャフト6の中心軸の延長線Lの垂線が、ヘッド本体4のソール部3に接する点Aにおいて最大となる。
また、後者のヘッド本体4のローリングに依存する成分は、シャフト6の中心軸の延長線Lから最も離れた点B(ヘッド本体4のトウ8側端部)において最大となる。
従って、フェース速度は、図3に示すように、フェース面1のヒール5側の上部aからトウ8側の下部gへ向けて次第に大きくなるように分布する。なお、図3においては、速度0.5m/s毎に等高線vを示している。
ここで速度分布の等高線vとは、フェース速度の分布を示すために、フェース面1上において互いに等しいフェース速度の点を結んだ線である。
そこで、本実施の形態では、実際にゴルファがゴルフクラブをスウィングした際のフェース面1の速度分布を測定し、その測定結果を用いてスイートエリアを求めるようにしている。
しかしながら、厳密に言えば、フェース面1の速度分布は、ゴルファの体格(例えば腕の長さ)の違い、ゴルファのスウィングタイプによるスウィング時のローリングの量の違いの影響も受ける。
そして、体格やスウィングタイプはゴルファ一人ひとりで異なるため、フェース面1の速度分布も当然ゴルファごとに異なるものと考えられる。
したがって、ゴルファ一人ひとりについてフェース面1の速度分布を測定し、その測定結果を用いてスイートエリアをゴルファ一人ひとりについて求めることがゴルファごとのスイートエリアをより厳密に求める上では好ましい。
しかしながら、平均的なゴルファに対応したスイートエリアを求めれば足りると考えるならば、多数のゴルファについてフェース面1の速度分布を測定し、その測定結果を平均化した速度分布を用いてスイートエリアを求めるようにすればよい。
なお、スウィングロボットによりゴルフクラブをスウィングさせて、フェース面1の速度分布を測定することも可能である。
ただし、この場合は、単純にスウィングロボットを用いてゴルフクラブをスウィングさせればよいのではなく、スウィングロボットに対してシャフトの長さに関連する成分(ゴルフクラブ長さ、スウィングロボットのゴルフクラブを把持するアーム部の長さとアーム部の回転速度)と、ローリングの量とをどのように設定するかが重要である。
すなわち、フェース面1の速度分布は、前述したように、シャフトの長さとローリングの量とに加え、ゴルファの体格の違いやゴルファのスウィングタイプによるスウィング時のローリングの量の違いの影響を受ける。
したがって、上述の影響を考慮してシャフトの長さに関連する成分(ゴルフクラブ長さ、スウィングロボットのゴルフクラブを把持するアーム部の長さとアーム部の回転速度)とローリングの量を設定する必要がある。
例えば、一般的なゴルファが一般的なゴルフクラブをスウィングした場合を想定して、シャフトの長さに関連する成分(ゴルフクラブ長さ、スウィングロボットのゴルフクラブを把持するアーム部の長さとアーム部の回転速度)とローリングの量を設定することで、スウィングロボットにより一般的なゴルファによるスウィングを再現することができることになる。
あるいは、理想的なスウィングを想定してシャフトの長さに関連する成分(ゴルフクラブ長さ、スウィングロボットのゴルフクラブを把持するアーム部の長さとアーム部の回転速度)とローリングの量を設定することで、スウィングロボットにより理想的なスウィングを再現することができることになる。
すなわち、スウィングロボットを用いた場合は、上述のようにして設定されたシャフトの長さに関連する成分(ゴルフクラブ長さ、スウィングロボットのゴルフクラブを把持するアーム部の長さとアーム部の回転速度)とローリングの量に基づいてゴルフクラブをスウィングさせることにより、ゴルファの体格の違いやゴルファのスウィングタイプによるスウィング時のローリングの量の違いの影響を反映したフェース面1の速度分布を測定することができる。そして、そのようにして測定したフェース面1の速度分布を平均化した速度分布を用いてスイートエリアを求めることができる。
図4は3次元位置方向計測システム20の構成を示す説明図、図5は3次元位置方向計測システム20の構成を示すブロック図である。
図4、図5に示すように、図4に示すように、3次元位置方向計測システム20は、ゴルフクラブ12およびゴルフクラブヘッド10の3次元位置と向き(方向)とを示す時系列データを計測するものである。
3次元位置方向計測システム20は、トランスミッタ22と、3次元磁気センサ24と、コントローラ・データ処理装置26と、パーソナルコンピュータ28とを含んで構成されている。
トランスミッタ22は、X軸およびY軸が水平面上を延在し、Z軸が鉛直方向を向くように設置されている。
トランスミッタ22の中心位置を予め定められた基準位置2202とし、基準位置2202を通るY軸方向を予め定められた基準方向2204とする。
トランスミッタ22は、コントローラ・データ処理装置26から供給される駆動信号により、強さと方向に関する分布が既知である磁場を発生させる。
3次元磁気センサ24は、測定点2402および測定方向2404を有している。
3次元磁気センサ24は、測定点2402の周りの磁気を互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の3軸方向で感知すると共に、基準位置2202に対する測定点2402の3次元位置および基準方向2204に対する測定方向2404の向きに応じて検出信号S1を出力するものである。
測定点2402は3次元磁気センサ24の中心位置であり、測定方向2404は測定点2402を通るY軸方向である。
3次元磁気センサ24は、ゴルフクラブ12のグリップ部1202の端部に固定されている。
3次元磁気センサ24は、Y軸(測定方向2404)をゴルフクラブ12の打撃方向と平行させ、かつ、Z軸をシャフト軸と平行させている。
このような計測システム12として、例えば、LIBERTY(Polhemus社製)を挙げることができる。
駆動回路2602は、トランスミッタ22に所定の3種類の磁場を順次発生させる駆動信号を生成し、該駆動信号をトランスミッタ22に供給するものである。
検出回路2604は、3次元磁気センサ24から供給される第1の検出信号S1を検出するものである。
すなわち、コンピュータ2606は、駆動回路2602および検出回路2604を制御し、検出回路2604から得られた出力電圧よりデータ処理を行って、3次元磁気センサ24の位置と向きを示すデータを生成する。
コンピュータ2606は、トランスミッタ22の位置を基準位置2202とし、お互いに直交する3軸X,Y,Zを基準とする3次元位置座標(x,y,z)の時系列データを演算して出力する。
また、コンピュータ2606は、トランスミッタ22を中心とするY軸方向を基準方向2204とし、この基準方向2204に対する3次元磁気センサ24の向きを表す姿勢角度、すなわちヨー角、ピッチ角およびロール角(以降では、(θy,θp,θr)と表す)の時系列データを演算して出力するものである。
したがって、3次元位置座標(x,y,z)の時系列データが3次元磁気センサ24の位置を示すデータであり、ヨー角θy、ピッチ角θpおよびロール角θrの時系列データが3次元磁気センサ24の向きを示すデータである。
駆動回路2602は、コンピュータ2606の指令信号にしたがって、周波数と位相が常時一定の同一信号を出力し、トランスミッタ22の3軸方向に巻かれた3つのループ状コイルを順次励磁する。
各ループ状コイルは、励磁のたびに各々異なる磁場を発生し、それに基づいて3次元磁気センサ24の3軸方向に巻かれた3つのループ状コイルに各々独立な出力電圧Vを発生させる。
この出力電圧Vは、トランスミッタ22の3つのループ状コイルによって励磁される3つの磁場に応じて、3次元磁気センサ24の3つのループ状コイルに発生する3つの出力電圧Vが得られるため、合計9個(3×3個)の出力電圧Vが得られる。
この形成された磁場によって生じる9つの出力電圧Vを用いることによって、上記基準方位置1202に対する3次元磁気センサ24の3次元位置座標(x,y,z)と上記基準方向2204に対する姿勢角度(θy,θp,θr)の6つの未知数を求めることができる。
コントローラ・データ処理装置26のコンピュータ2606において、検出回路2604から送られてきた9つの出力電圧Vを用いて、3次元位置座標(x,y,z)と姿勢角度(θy,θp,θr)のデータを演算して求める。
パーソナルコンピュータ28は、コントローラ・データ処理装置26から供給されるグリップ部1202のスウィング中の挙動の時系列データに基づいてゴルフクラブヘッド10のフェース面1の速度分布を算出するものである。
具体的には、パーソナルコンピュータ28が所定のプログラムを実行することで以下の処理を行う。
具体的には、グリップ部1202の端部である第1の位置と、該第1の位置からゴルフクラブヘッド10に近接する方向にシャフト6の中心軸に沿ってゴルフクラブ12の長さ分離間した第2の位置との2点のデータの軌跡に基づいて最小二乗法によりシャフト平面を求める。
なお、第1の位置は前記のグリップ部1202のスウィング中の挙動の時系列データに基づいて求められ、第2の位置は既知であるゴルフクラブ12の長さと前記時系列データとに基づいて算出されるものである。
ここでシャフト6の中心軸とフェース面1の各点との距離は、シャフト6の中心軸と直交しフェース面1の点を通る直線に沿った距離である。
このような測定を行うことで得られたフェース面1の速度分布は、シャフト6の長さに依存する成分と、ヘッド本体4のローリング(シャフト6の回りの回転)による成分とを含む正確なものとなる。
図6において、ゴルフクラブヘッド10をライ角どおりにセットした状態でゴルフクラブヘッド10のフェース面1のトウ8側からヒール5側に向かう水平方向を横軸(X方向)とし、鉛直上向きの方向を縦軸(Y方向)とし、フェース面1の中心の座標を(0,0)としている。
したがって、X座標はフェース面1における水平方向打点位置を示し、Y座標はフェース面1における鉛直方向打点位置を示す。
図中、フェース面1の速度Vf(m/sec)はハッチングの種類によって示している。
図6に示すように、フェース面1の速度Vfは、フェース面1のヒール側5上部からトウ側8下部に向けて次第に大きくなっている。
しかしながら、フェース面1の速度分布を求める方法は限定されるものではなく、従来公知のさまざまな方法が採用可能である。
図7はゴルフクラブヘッドのスイートエリアの算出を行うためのコンピュータ30の構成を示すブロック図である。
コンピュータ30は、CPU3002と、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM3004、RAM3006、ハードディスク装置3008、ディスク装置3010、キーボード3012、マウス3014、ディスプレイ3016、プリンタ3018、入出力インターフェース3020などを有している。
ROM3004は制御プログラムなどを格納し、RAM3006はワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置3008は有限要素法によるさまざまな解析を行う有限要素解析プログラム、および、後述する処理を行う専用のプログラムを格納している。
前記の有限要素解析プログラムとして、前述したように有限要素解析を行う従来公知のさまざまな市販の有限要素解析ソフトウェアを用いることができる。
ディスク装置3010はCDやDVDなどの記録媒体に対してデータの記録および/または再生を行うものである。
キーボード3012およびマウス3014は、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ3016はデータを表示出力するものであり、プリンタ3018はデータを印刷出力するものであり、ディスプレイ3016およびプリンタ3018によってデータを出力する。
入出力インターフェース3020は、外部機器との間でデータの授受を行うものである。
まず、スイートエリアを算出する対象となるゴルフクラブ12のゴルフクラブヘッド10のフェース面1の速度分布Dvfがコンピュータ30に設定される(ステップS10:フェース面速度分布設定ステップ)。
すなわち、作業者の入力操作などによって、フェース面1がゴルフボールを打撃する直前におけるフェース面1の速度分布Dvfのデータがコンピュータ30のハードディスク装置3008などに格納される。
設定されるフェース面1の速度分布Dvfは、前述したようにゴルファごとに測定したものを用いてもよいし、あるいは、多数のゴルファによってゴルフクラブ12がスウィングされた状態で実測された速度分布を平均化したものを用いてもよい。
上記データは次の通りである。
1)有限要素モデルからなるゴルフクラブヘッドモデルを設定すると共に、該設定されたゴルフクラブヘッドモデルを有限要素法によって解析するための第1の有限要素解析用データ。
2)有限要素モデルからなるゴルフボールモデルを設定すると共に、該設定されたゴルフボールモデルを有限要素法によって解析するための第2の有限要素解析用データ。
すなわち、剛体ゴルフクラブヘッドモデルMhのデータがコンピュータ30のハードディスク装置3008などに格納される。
なお、本実施の形態では、剛体とは、大きさ、質量、慣性モーメント、重心位置を有しており、かつ、外部からの力によって変形しないものをいう。
次いで、CPU3002は、有限要素解析プログラムを実行することにより、第2の有限要素解析用データに基づいて有限要素モデルで構成されたゴルフボールをボールモデルMbとしてコンピュータ30に設定する(ステップS14:ボールモデル設定ステップ)。
すなわち、ボールモデルMbのデータがコンピュータ30のハードディスク装置3008などに格納される。
具体的には、ヘッド本体4を複数の有限要素Xijkに、ゴルフボールを複数の有限要素Yijk(i、j、kは整数)に、それぞれ分割する。
ここで有限要素とは、有限要素法による解析を行うための要素であって、梁要素、シェル要素及び固体要素などが例示される。
また、計算に必要な物性値としては、ロフト角、重心深さ、バルジ&ロール半径、FP値(フェースプログレッション)や、慣性モーメント、ヘッド質量などが例示される。これら物性値は第1の有限要素解析用データに含まれる。
具体的には、CPU3002は、剛体ゴルフクラブヘッドモデルMhのフェース面1に予め設定された点のそれぞれについて第1のボール初速V1を算出し、これにより剛体ゴルフクラブヘッドモデルMhのフェース面における第1のボール初速V1の速度分布を算出する。
例えば、各点は、X座標についてはフェース面1の中心座標(0mm)を中心として7mm間隔で設け、Y座標についてはフェース面1の中心座標を中心として5mm間隔で設ける。
すなわち、各点のX座標については、−35mm、−28mm、−21mm、−14mm、−7mm、0mm、7mm、17mm、21mm、28mm、35mmの11点となり、各点のY座標については、−20mm、−15mm、−10mm、−5mm、0mm、5mm、10mm、15mm、20mmの9点となり、合計11×9=99個の点が設定される。
図9は第1のボール初速V1を各点について算出した結果、すなわち、フェース面1上における第1のボール初速V1の分布を示す説明図である。
図中、第1のボール初速V1(m/sec)の値はハッチングの種類によって示している。
すなわち、作業者の入力操作などによって、実測反発係数Rrの分布のデータがコンピュータ30のハードディスク装置3008などに格納される。
具体的には、予めゴルフクラブヘッド10のフェース面1に予め設定された点のそれぞれについて実測反発係数Rrが実測されており、フェース面1の各点に関連付けられた実測反発係数Rrが実測反発係数Rrの分布としてコンピュータ30に入力される。
実測反発係数Rrの測定は、USGA(United States Golf Association)によって定められたペンデュラムテストに準拠して測定され、具体的には、従来公知のペンデュラム試験機を用いてなされる。
図10は実測反発係数Rrを各点について算出した結果、すなわち、フェース面1上における実測反発係数Rrの分布を示す説明図である。
図中、実測反発係数Rrの値はハッチングの種類によって示している。
すなわち、CPU3002は、ステップS16で算出された第1のボール初速V1と、ステップS18で設定された実測反発係数Rrと、剛体モデル反発係数Rmとに基づいて、以下の式(1)に基づいてゴルフクラブヘッド10のフェース面1における第2のボール初速V2の分布を求める(ステップS18:第2のボール初速分布算出ステップ)。
V2=V1(Rr/Rm) (1)
式(1)は、第1のボール初速V1と第2のボール初速V2との比が、剛体モデル反発係数Rmと実測反発係数Rrとの比に等しい関係にあることを示す。
剛体モデル反発係数Rmは、以下に例示するように、剛体とみなすに足る剛性を有する実験用ゴルフクラブヘッドを実際に作成し、この実験用ゴルフクラブヘッドのフェース面の反発係数を以下のように実測したものである。
実験用ゴルフクラブヘッドの仕様について説明する。
実験用ゴルフクラブヘッドは、直方体状を呈しており、X方向の寸法が60mm、Y方向の寸法が40mmの矩形状のフェース面を有し、フェース面と直交する方向の厚さは30mmである。
材質は、アルミ合金(A7075)である。
質量は、203(g)である。
実験条件について説明する。
気温24度の環境下において、エアーキャノン試験機を用いて、ボール速度40(m/sec)でゴルフボールを打ち出して実験用ゴルフクラブヘッドのフェース面上の重心点に衝突させ、反発速度とヘッド質量とボール質量とに基づいて反発係数を算出した。なお、重心点とは、実験用ゴルフクラブヘッドの重心位置をフェース面に垂直に投影させた点をいう。
ゴルフボールの試料数Nを5個として実測した場合、反発係数の実測値は以下の通りである。
反発係数の実測値:
0.753
0.762
0.763
0.758
0.762
したがって、反発係数の平均値は0.760であった。
図中、第2のボール初速V2の値はハッチングの種類によって示している。
前記の閾値は、例えば、第2のボール初速V2の最高速度の98%とするなど任意の方法によって定めることができる。
このようにしてゴルフクラブヘッド10のフェース面1におけるスイートエリアSAが得られる。
図12はフェース面1上におけるスイートエリアSAの分布を示す説明図である。
CPU3002は前記専用のプログラムを実行することにより、このようにして得られたスイートエリアSAの分布を、図12に示すような図の形式でディスプレイ3016に表示出力し、あるいは、プリンタ3018を用いて用紙に印刷出力する。
なお、スイートエリアSAの分布をどのような形態で表示するか、あるいは、どのようなデータ形式で出力するかは任意である。
また、速度分布Dvfとして多数のゴルファによってゴルフクラブ12がスウィングされた状態で実測された速度分布を平均化した速度分布を設定した場合には、平均的なゴルファのスウィングを反映したより汎用性の高いスイートエリアSAを得る上で有利となる。
したがって、従来のようにゴルフクラブヘッドのローリングなどが正確に再現されないスウィングロボットを用いてゴルフクラブをスウィングさせてボールを打撃したときのボール初速をフェース面の各点について測定し、その測定結果に基づいてスイートエリアの分布を得る場合に比較して、ゴルファのスウィングが反映された正確なスイートエリアを得る上で有利となる。
したがって、本発明方法に基づいて測定されたスイートエリアに基づいてゴルフクラブヘッドを設計することにより、飛距離の増大を図る上で有利なゴルフクラブヘッドを実現することができる。
Claims (3)
- スウィングされたゴルフクラブのゴルフクラブヘッドのフェース面がゴルフボールを打撃する直前における前記フェース面の速度分布を設定するフェース面速度分布設定ステップと、
前記ゴルフクラブヘッドが剛体で形成されたものとして有限要素モデルで構成された剛体ゴルフクラブヘッドモデルを設定する剛体ゴルフクラブヘッドモデル設定ステップと、
有限要素モデルで構成されたボールモデルを設定するボールモデル設定ステップと、
前記剛体ゴルフクラブヘッドモデルのフェース面で打撃された前記ゴルフボールのボール初速を第1のボール初速V1としたとき、前記フェース面の速度分布と前記剛体ゴルフクラブヘッドモデルと前記ボールモデルとを用いて有限要素法による衝突解析を行うことにより前記剛体ゴルフクラブヘッドモデルのフェース面における前記第1のボール初速V1の速度分布を求める第1のボール初速分布算出ステップと、
前記ゴルフクラブヘッドのフェース面における反発係数の実測値である実測反発係数Rrの分布を設定する反発係数分布設定ステップと、
前記ゴルフクラブヘッドのフェース面で打撃されたゴルフボールのボール初速を第2のボール初速V2とし、前記剛体ゴルフクラブヘッドモデルのフェース面の反発係数を予め定められた剛体モデル反発係数Rmとしたとき、V2=V1(Rr/Rm)なる式に基づいて前記ゴルフクラブヘッドのフェース面における前記第2のボール初速V2の分布を求める第2のボール初速分布算出ステップと、
前記第2のボール初速V2の分布に基づいて、予め定められた閾値以上の値を有する第2のボール初速V2に対応する前記ゴルフクラブヘッドのフェース面の領域をスイートエリアとして決定するスイートエリア決定ステップとを含み、
前記フェース面速度分布設定ステップで設定される前記フェース面の速度分布は、スウィングロボットにより前記ゴルフクラブがスウィングされた状態で測定された速度分布を平均化した速度分布であり、
前記速度分布の測定は、前記ゴルフクラブのグリップ部の挙動を示す時系列データに基づいて求められる第1の位置と、前記第1の位置から前記ゴルフクラブヘッドに近接する方向にシャフトの中心軸に沿って前記ゴルフクラブの長さ分離間した箇所の挙動を示す第2の位置との2点のデータの軌跡に基づいて最小二乗法により求められたシャフト平面に沿った前記ゴルフクラブの回転による前記フェース面の各点の速度と、前記シャフトの中心軸周りの回転による前記フェース面の各点の速度を加算することで得られた前記フェース面の各点における速度を求めることでなされ、
前記スウィングロボットは、前記ゴルフクラブのシャフトの長さに関連する成分と前記ゴルフクラブのローリングの量が設定されることでゴルファによるスウィングを再現するものであり、
前記ゴルフクラブのシャフトの長さに関連する成分は、前記ゴルフクラブ長さ、前記スウィングロボットのゴルフクラブを把持するアーム部の長さ、前記アーム部の回転速度を含む、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッドのスイートエリアの算出方法。 - 前記実測反発係数Rrは、USGAが定めるペンデュラムテストに準拠して前記ゴルフクラブヘッドのフェース面を測定した反発係数の実測値である、
ことを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッドのスイートエリアの算出方法。 - 前記剛体モデル反発係数Rmは、剛体とみなすに足る剛性を有する実験用ゴルフクラブヘッドについて測定した反発係数の実測値である、
ことを特徴とする請求項1または2記載のゴルフクラブヘッドのスイートエリアの算出方法。
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