本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、エリアワンセグメント放送におけるコンテンツ配信サービスを実現するために、コンテンツデータが含まれたOFDM信号を送信する無線装置に関する。各無線装置は、ワンセグメント放送と同様に、1セグメントのみを使用する。当該エリアワンセグメント放送においては、周波数の利用効率を向上させるために、周波数帯域において連続して配置された複数のセグメントがそれぞれ使用されており、セグメント間にガードバンドが設定されていない。また、各無線装置は、必要に応じてOFDM信号の送信開始/停止を適宜行なう。このような状況において、隣接セグメント間の干渉を低減するために、無線装置は、次の処理を実行する。
無線装置では、スレーブモードとマスタモードとが規定される。無線装置は、OFDM信号の送信を開始する際に、他の無線装置が先行してOFDM信号を送信中のセグメントが存在する場合、スレーブモードの動作を選択し、セグメントが存在しない場合、マスタモードの動作を選択する。スレーブモードで動作する場合、無線装置は、複数のセグメントにおけるOFDM信号検出を定期的に実行することによって、他の無線装置によって使用されているセグメントを検出し、既に使用されているセグメントのひとつをマスタセグメントとして選択し、使用されていないセグメントのひとつを使用すべきセグメント(以下、「使用セグメント」という)として選択する。無線装置は、マスタセグメントにおいて受信したOFDM信号のOFDMシンボルに同期したシンボルタイミングを生成し、生成したシンボルタイミングにてOFDMシンボルを生成する。さらに、無線装置は、生成したOFDMシンボルを使用セグメントにて送信する。
各セグメントにて送信されるOFDM信号は、所定期間をフレームとして構成されており、フレームの開始タイミングから終了タイミングにわたって、スキャッタードパイロット信号およびTMCC信号が配置されている。ここで、フレーム内のスキャッタードパイロット信号のパターンおよびTMCC信号は、セグメントにかかわらず、同一であるとする。前述のごとく、複数のセグメントにおけるフレームが同期していると、同一値のスキャッタードパイロット信号およびTMCC信号が重なり合ってしまうので、振幅のピークが増大してしまう。これに対応するために、無線装置は、シンボルタイミングを同期させながらも、使用されたセグメントに応じてフレームタイミングをずらす。そのため、複数のセグメントにおけるフレームが同期しなくなり、同一値のスキャッタードパイロット信号およびTMCCが重なり合ってしまうことが低減される。
図1(a)−(b)は、本発明の実施例に係るエリアワンセグメント放送システムにおけるセグメントの配置を示す。図1(a)は、本実施例において使用されるセグメントに相当する。図示のごとく、5.7MHz帯域幅の中に13個のセグメントが配置されており、これは地上デジタル放送と同一である。そのため、各セグメントは、約429kHzの帯域を有する。地上デジタル放送では、中央のセグメント0がワンセグメント放送に使用される。エリアワンセグメント放送において、サービスを提供するチャンネルが増えた場合、セグメント0だけを使用していてはチャンネル不足になってしまう。そこでチャンネル数を増やすために、本実施例では、中央のセグメント0以外の12個のセグメントも使用する。この場合、使用される12個の各セグメント間、すなわち各エリアワンセグメント放送を放送する各チャンネル間にはガードバンドが設けられていない状況となる。
図1(b)は、本実施例の比較対象となるセグメントの配置である。ここでは、ひとつおきのセグメントを使用し、その間のセグメントをガードバンドとして使用する。そのため、図1(a)と同一幅の周波数帯域において、7セグメントしか使用できない。しかしながら、ガードバンドを設けることによって、セグメント間の干渉が低減される。そのため、異なったセグメントに対する同期したFFTクロックなどの送信が不要になり、シンボルタイミング同期も不要になる。一方、前述のごとく、本実施例では、図1(a)のごとく、ガードバンドが設けられていないので、これらに対する対策が必要になる。
図2は、エリアワンセグメント放送システムにおける無線装置100の構成を示す。無線装置100は、受信処理部10、送信処理部12を含む。また、受信処理部10は、ワンセグメントチューナ14と総称される第0ワンセグメントチューナ14a、第1ワンセグメントチューナ14b、第12ワンセグメントチューナ14m、ガードインターバル相関処理部16と総称される第0ガードインターバル相関処理部16a、第1ガードインターバル相関処理部16b、第12ガードインターバル相関処理部16m、動作制御部18、スイッチ20、送信キャリア設定部22、FFT部42、TMCCデコーダ部44を含む。また、送信処理部12は、撮像素子24、マイク26、エンコード部28、OFDMフレーム構成部30、シンボルタイミング生成部32、OFDM変調部34、周波数変換部36、局部発振部38、RF部40、フレームタイミング生成部46を含む。
ワンセグメントチューナ14は、アンテナを介して図示しない他の無線装置から送信された信号を受信する。13個のワンセグメントチューナ14のそれぞれは、アンテナで受信した信号を入力する。各ワンセグメントチューナ14は、図1(a)に示されたセグメントに1対1で対応する。つまり、各ワンセグメントチューナ14は、互いに異なったセグメントの信号を受信できるように設定されている。各ワンセグメントチューナ14は、設定されたセグメントの信号を抽出する。各ワンセグメントチューナ14は、抽出した信号をガードインターバル相関処理部16、FFT部42へ出力する。
ガードインターバル相関処理部16は、ワンセグメントチューナ14と同様に13個備えられ、13個のガードインターバル相関処理部16のそれぞれは、ワンセグメントチューナ14と1対1で対応する。各ガードインターバル相関処理部16は、ワンセグメントチューナ14からの信号を入力する。各ガードインターバル相関処理部16は、ワンセグメントチューナ14から入力した信号に対して、ガードインターバルでの相関処理を実行する。受信される信号は、OFDM信号である。このOFDM信号は、OFDMシンボルとよばれる所定単位期間ごとに区切って送信される。各OFDMシンボルの先頭部分には、ガードインターバルが付加され、それにつづいて有効シンボルが配置されている。また、ガードインターバルは、OFDMシンボルの最後の部分を複製することによって作成されている。なお、以降の説明ではOFDM信号を、OFDMシンボル、または単に信号とよぶことがある。
ガードインターバル相関処理部16は、入力した信号を有効シンボルの期間だけ遅延させ、遅延させた信号と入力した信号との相関値を検出する。当該相関値は、ガードインターバルの部分を入力しているときにピークとなる。そのため、相関値を検出することによって、OFDMシンボルの開始タイミングを検出することができる。これは、OFDM信号を受信していることを検出することに相当する。つまり、ガードインターバル相関処理部16は、周波数領域において連続して配置された複数のセグメントのうち、他の無線装置がOFDM信号を送信している帯域を調査する。なお、ガードインターバル相関処理部16は、後述のごとく無線装置100がOFDM信号を送信している場合においても調査を繰り返し実行する。以下では、本機器が送信を開始する時点で他の無線装置によって既に先行して使用されているセグメントを便宜的に「既占有セグメント」という。
図3(a)−(e)は、ガードインターバル相関処理部16における動作概要を説明する。図3(a)は、OFDMシンボルの構成を示す。前述のごとく、OFDMシンボルは、ガードインターバル(GI)と有効シンボルとの組合せによって構成される。ここでは、有効シンボルの後ろの部分を切り出し、これをGIとして有効シンボルの前に付加されている。図3(b)は、受信されるOFDM信号の構成を示す。図示のごとく、図3(a)に示されたOFDMシンボルが繰り返されている。図3(c)は、相関処理を実行すべき区間を示す。図示のごとく、有効シンボル長離れたふたつのウインドウが設定されており、各ウインドウはGI長の相当区間を有する。ここでは、Highレベルの区間がウインドウを示す。ガードインターバル相関処理部16は、ふたつのウインドウに入力された信号同士に対して相関処理を実行する。
図3(d)は、相関処理によって生成された相関値を示す。相関値は、GIの中においてピークになる。図3(e)は、図3(d)の相関値をもとに生成したシンボル区間パルスを示す。シンボル区間パルスは、相関値のピーク近傍のタイミングにおいてLowレベルになり、それ以外の期間においてHighレベルになる波形である。シンボル区間パルスを生成することは、前述のOFDMシンボルの開始タイミングを検出することに相当する。なお、ワンセグメントチューナ14およびガードインターバル相関処理部16にOFDM信号が入力されていない場合、シンボル区間パルスは、Highレベルを維持している。図2に戻る。ガードインターバル相関処理部16は、動作制御部18にシンボル区間パルスを出力する。
動作制御部18は、各ガードインターバル相関処理部16からのシンボル区間パルスを入力する。動作制御部18は、シンボル区間パルスをもとに、所定の処理を実行する。所定の処理とは、(1)既占有セグメントの認識処理、(2)使用セグメントの選択処理、(3)動作モードの設定処理、(4)スレーブモードにおけるマスタセグメントの選択処理である。既占有セグメントの認識処理は、使用されているセグメントの有無の認識と記憶である。使用セグメントの選択処理は、無線装置100が使用すべきセグメント番号の設定である。動作モードの設定処理は、無線装置100の動作モードとして、マスタモードあるいはスレーブモードの設定である。マスタセグメントの選択処理は、スレーブモードで動作する場合のマスタセグメントの設定である。これらの処理によって、所定のセグメント、例えば0番のセグメントをマスタセグメントとし、別のセグメント、例えば2番のセグメントを使用セグメントとし、マスタセグメントでのOFDM信号をマスタとし、使用セグメントでのOFDMシンボル同期送信を行う。一方、マスタセグメントが設定されない場合には、マスタモードとして動作される。
図4は、動作制御部18の構成を示す。動作制御部18は、既占有セグメント記憶部50、セグメント選択部52、動作モード設定部54、マスタセグメント選択部56を含む。
(1)既占有セグメントの認識処理
既占有セグメント記憶部50は、各ガードインターバル相関処理部16からのシンボル区間パルスをもとに既占有セグメントの有無と該当セグメント情報を取得する。つまり、既占有セグメント記憶部50は、各セグメントに対して、シンボル区間パルスのなかにLowレベルの区間が含まれているかを監視することによって、それぞれのセグメントが既占有セグメントであるか否かの情報を取得する。
ここで、既占有セグメント記憶部50は、Lowレベルの区間が含まれている場合、既占有セグメントであると判定し、Lowレベルの区間が含まれていない場合、空きのセグメントであると判定する。既占有セグメント記憶部50は、取得した情報、つまりガードインターバル相関処理部16での調査結果を記憶する。前述のごとく、ガードインターバル相関処理部16は、後述のごとく無線装置100がOFDMシンボルを送信している場合においても調査を繰り返し実行するので、既占有セグメント記憶部50は、取得を繰り返し実行することによって、調査結果を更新して記憶する。更新とは具体的には既占有セグメントにおいてOFDMシンボルの送信が終了した場合、既占有セグメント記憶部50は、そのOFDMシンボルの送信が終了した既占有セグメントに関する情報を削除する処理である。なお、新たにOFDMシンボルの送信を開始したセグメントについては既占有セグメントとはしない。
(2)使用セグメントの選択処理
セグメント選択部52は、信号送信開始時に、既占有セグメント記憶部50での記憶が終了したこと、つまり既占有セグメント初期設定が終了したことを確認する。確認後、セグメント選択部52は、既占有セグメント記憶部50の内容を参照し、他の無線装置100がOFDMシンボルを非送信であるセグメント、つまり使用されていない任意のセグメントとを選択する。選択されたセグメントが、前述の使用セグメントに相当する。また、セグメント選択部52は、信号送信終了時に、それまで選択していた使用セグメントを解放する。次に、信号送信を再開する際に、セグメント選択部52は、使用セグメントを新たに選択する。
(3)動作モードの設定処理
動作モード設定部54は、信号送信開始時に、既占有セグメント記憶部50での記憶が終了したこと、つまり既占有セグメント初期設定が終了したことを確認する。確認後、動作モード設定部54は、既占有セグメント記憶部50の内容を参照し、既占有セグメントが存在する場合、つまり他の無線装置がOFDM信号を送信しているセグメントが存在する場合、スレーブモードを設定する。一方、動作モード設定部54は、既占有セグメントが存在しない場合、マスタモードを設定する。スレーブモードを設定した場合、動作モード設定部54は、信号送信動作中にわたってマスタセグメント選択部56での選択内容を監視し、マスタセグメントが存在しなくなれば、マスタモードへ移行させる。マスタモードを設定した場合、動作モード設定部54は、信号送信終了までマスタモードを維持する。
(4)スレーブモードにおけるマスタセグメントの選択処理
マスタセグメント選択部56は、信号送信開始時に、既占有セグメント記憶部50での記憶が終了したこと、つまり既占有セグメント初期設定が終了したことを確認する。確認後、マスタセグメント選択部56は、動作モード設定部54での設定内容を参照し、動作モードがスレーブモードである場合に、マスタセグメントの初期設定を実行する。動作モードがスレーブモードである場合、既占有セグメント記憶部50には、少なくともひとつの既占有セグメントに関する情報が記憶されている。そのため、マスタセグメント選択部56は、そのうちのひとつの既占有セグメントを任意に選択する。選択した既占有セグメントが、マスタセグメントに相当する。
マスタセグメント選択部56は、信号送信動作中にわたって、既占有セグメント記憶部50の記憶内容を参照することによって、マスタセグメントの信号送信状態を監視する。マスタセグメントが既占有セグメント記憶部50から消失した場合、つまりマスタセグメントでの信号送信が終了した場合、マスタセグメント選択部56は、既占有セグメント記憶部50の記憶内容を参照する。既占有セグメント記憶部50に既占有セグメントに関する情報が含まれていれば、マスタセグメント選択部56は、それまでマスタセグメントとして選択していた既占有セグメントとは異なった既占有セグメントを任意に新たに選択する。なお、マスタセグメントでの信号送信が終了したことは、OFDM信号が非受信になったことに相当する。マスタセグメント選択部56は、新たに選択した既占有セグメントを新たなマスタセグメントに設定して、スレーブ動作を継続させる。
このように新たに設定したマスタセグメントでの信号送信が終了した場合、マスタセグメント選択部56は、これまでと同様の処理を繰り返し実行する。つまり、マスタセグメント選択部56は、既占有セグメント記憶部50に既占有セグメントに関する情報が含まれていれば、それまでマスタセグメントとして選択していた既占有セグメントとは異なった既占有セグメントをマスタセグメントして任意に新たに選択する。一方、既占有セグメント記憶部50に既占有セグメントに関する情報が含まれていなければ、マスタセグメント選択部56は、処理を停止する。このような場合には、動作モード設定部54によって、スレーブモードからマスタモードへの切替がなされるからである。なお、動作モード初期設定がマスタモードである場合、マスタセグメント選択部56は、処理を実行しない。図2に戻る。
スイッチ20は、各ガードインターバル相関処理部16からのシンボル区間パルスを入力するとともに、動作制御部18からの動作モードに関する情報を入力する。また、動作モードがスレーブモードである場合、スイッチ20は、動作制御部18から、マスタセグメントに関する情報も入力する。スイッチ20は、動作モードがスレーブモードである場合、マスタセグメントに関する情報をもとに、マスタセグメントに対応したシンボル区間パルスを選択する。スイッチ20は、選択したシンボル区間パルスをシンボルタイミング生成部32に出力する。一方、スイッチ20は、動作モードがマスタモードである場合、出力を停止する。送信キャリア設定部22は、動作制御部18から使用セグメントに関する情報を入力する。送信キャリア設定部22は、使用セグメントに対する周波数を局部発振部38に設定する。
撮像素子24は、動画像あるいは静止画像(以下、これらを「画像」と総称する)を撮像する。撮像素子24は、撮像した画像のデジタルデータ(以下、これを「画像」という)をエンコード部28に出力する。マイク26は、音声を取得する。マイク26は、取得した音声のデジタルデータ(以下、これを「音声」という)をエンコード部28に出力する。なお、画像および音声は、無線装置100によって配信されるコンテンツデータに相当する。なお、コンテンツデータは、これに限定されるものではなく、他のものであってもよい。例えば、予め記憶された画像や、図示しないネットワークを介して取得された情報がコンテンツとされてもよい。エンコード部28は、撮像素子24から画像を入力するとともに、マイク26から音声も入力する。エンコード部28は、画像および音声に対してエンコードを実行する。なお、エンコードには公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。エンコード部28は、エンコード結果(以下、「データ」という)をOFDMフレーム構成部30に出力する。
シンボルタイミング生成部32は、動作制御部18からの動作モードに関する情報を入力する。動作モードがスレーブモードである場合に、シンボルタイミング生成部32は、スイッチ20からのシンボル区間パルスを入力する。シンボルタイミング生成部32は、入力したシンボル区間パルスをもとに、マスタセグメントで受信したOFDMシンボルに同期したタイミング(以下、「シンボルタイミング」という)を生成する。また、マスタセグメントが切りかわった場合、シンボルタイミング生成部32は、新たに選択したマスタセグメントにおいて受信したOFDMシンボルに同期したシンボルタイミングを生成する。一方、動作モードがマスタモードである場合に、シンボルタイミング生成部32は、基準となるタイミングを使用せずにフリーランで動作することによって、自律的なタイミングを生成する。
前述のごとく、スレーブモードで動作中に、マスタセグメントにおいてOFDMシンボルが非受信になり、かつ既占有セグメント記憶部50に記憶した調査結果において、既占有セグメントが含まれていなければ、シンボルタイミング生成部32は、スレーブモードからマスタモードに動作モードを切りかえる。その結果、シンボルタイミング生成部32は、フリーランで動作するようになる。ここでは、スレーブモードに対応したシンボルタイミング生成部32の構成をさらに詳しく説明する。
図5は、シンボルタイミング生成部32の構成を示す。シンボルタイミング生成部32は、OFDM伝送シンボルカウンタ60、比較器62、EN回路64、ゲート素子66を含む。また、信号として、シンボル区間パルス200、シンボル区間セットパルス202、シンボルタイミング204、A<C信号206、セットパルスディセーブル信号208を含む。ここでは、図6(a)−(f)および図7(a)−(f)を使用しながら、シンボルタイミング生成部32の構成を説明する。図6(a)−(f)は、シンボルタイミング生成部32における動作概要を説明する図である。図6(a)は、マスタセグメントにおいて受信されるOFDM信号の構成を示す。図6(b)は、シンボルタイミング生成部32に入力されるシンボル区間パルス200を示す。図6(a)および(b)は、図3(b)および(e)と同様である。図5に戻る。OFDM伝送シンボルカウンタ60は、シンボル区間パルス200を入力する。
OFDM伝送シンボルカウンタ60は、例えば、10ビットのカウンタであり、1024カウントを実行する。OFDM伝送シンボルカウンタ60は、シンボル区間パルス200によってカウンタの値に「3F7h」をロードする。OFDM伝送シンボルカウンタ60は、カウントデータCを比較器62に出力する。比較器62は、カウントデータCと比較データA「3ECh」とを比較する。比較器62は、比較結果がA<Cであれば、A<C信号206をHighレベルにする。一方、比較器62は、それ以外の場合にA<C信号206をLowレベルにする。比較器62は、A<C信号206をEN回路64に出力する。
EN回路64は、比較器62からA<C信号206を入力するとともに、図示しないOFDMフレーム構成部30からシンボルタイミング204を入力する。シンボルタイミング204は、OFDMフレーム構成部30においてOFDMシンボルを生成する際に使用しているタイミングである。EN回路64は、A<C信号206がHighレベルである場合に、シンボルタイミング204がLowレベルになれば、セットパルスディセーブル信号208をHighレベルに設定する。一方、EN回路64は、A<C信号206がLowレベルである場合に、シンボルタイミング204がLowレベルになれば、セットパルスディセーブル信号208をLowレベルに設定する。セットパルスディセーブル信号208は、シンボル区間セットパルス202をディセーブルするための信号である。EN回路64は、セットパルスディセーブル信号208をゲート素子66に出力する。図6(c)は、セットパルスディセーブル信号208を示す。図5に戻る。
ゲート素子66は、シンボル区間パルス200を入力するとともに、セットパルスディセーブル信号208を入力する。ゲート素子66は、セットパルスディセーブル信号208がHighレベルであれば、シンボル区間セットパルス202をHighレベルに維持する。一方、ゲート素子66は、セットパルスディセーブル信号208がLowレベルであれば、シンボル区間パルス200が次にLowレベルである間にわたって、シンボル区間セットパルス202をLowレベルに設定する。図6(d)は、シンボル区間セットパルス202を示す。図6(e)は、シンボル区間セットパルス202をもとに、図示しないOFDMフレーム構成部30において生成されたシンボルタイミング204を示す。図6(f)は、シンボルタイミング204をもとに、図示しないOFDMフレーム構成部30において生成されたOFDM信号を示す。図5に戻る。なお、OFDMフレーム構成部30は、シンボル区間セットパルス202がLowレベルになったタイミングをOFDMシンボルの先頭タイミングとして、OFDMシンボル間隔でLowレベルになるようなシンボルタイミング204を生成する。
このような処理は、シンボルタイミング生成部32における監視処理といえる。具体的に説明すると、シンボルタイミング生成部32は、シンボルタイミング204とシンボル区間パルス200との誤差が一定の区間内(以下、「シンボル同期区間」という)におさまっているかを監視している。これを説明するために、図7(a)−(d)を使用する。図7(a)−(d)は、シンボルタイミング生成部32における別の動作概要を説明する図である。図7(a)は、シンボル区間パルス200の一部である。
図7(b)は、A<C信号206を示す。A<C信号206がHighレベルである区間は、シンボル同期と判定される区間、つまりGIを超えない内側の区間になっている。この区間内に、シンボルタイミング204のLowレベルが到来すれば、同期が維持されているといえる。その際、セットパルスディセーブル信号208は、Highレベルになるので、シンボル区間セットパルス202がLowレベルにならない。一方、A<C信号206がLowレベルである区間に、シンボルタイミング204のLowレベルが到来すれば、同期が維持されていない。その際、セットパルスディセーブル信号208は、Lowレベルになるので、次に到来するシンボル区間パルス200のLowレベルによって、シンボル区間セットパルス202がLowレベルになる。
図7(c)は、A<C信号206がLowレベルである場合のシンボルタイミング204を示し、図7(d)は、A<C信号206がLowレベルである場合のセットパルスディセーブル信号208を示す。このような比較の結果、タイミングのずれが、GIを超える手前のシンボル同期区間を超えたら、シンボルタイミング204をシンボル区間パルス200でセットしなおすために、シンボル区間セットパルス202が出力される。その際、図6(f)に示されたシンボル区間セットパルス202でセットしなおす手前のOFDMシンボルは、GIの半分以下程度短くなるが、有効シンボル長が確保されているので問題にならない。
また、シンボル区間セットパルス202によって、GI内の粗いタイミングでOFDMシンボルがセットされている。これは、エリアワンセグメント放送が、地上デジタル放送とは異なり、送信電力が低く、遠方から到来する反射波を想定しなくてもよい環境であるからである。例えば、モード3、GI=1/8におけるOFDMシンボルの期間は約1.125msである。この基準がマスタセグメントのタイミングであったと仮定し、かつ無線装置100でのOFDMシンボルの周波数が基準に対して1ppmずれていると仮定すれば、約62.5秒周期でタイミングがセットされる。図2に戻る。
FFT部42は、ワンセグメントチューナ14からの信号を入力する。つまり、FFT部42は、各セグメントの信号を入力する。FFT部42は、各セグメントの信号に対してFFTを実行することによって、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する。FFT部42は、各セグメントの周波数領域の信号をTMCCデコーダ部44に出力する。なお、FFT部42は、信号が送信されていないセグメントに対してはFFTを省略してもよい。
TMCCデコーダ部44は、FFT部42からの信号を入力する。TMCCデコーダ部44は、各セグメントに対してTMCCを捕捉しデコードする。TMCCデコーダ部44は、各セグメントに対するTMCCを認識することによって、セグメントごとのフレームタイミングを取得する。フレームは、複数のOFDMシンボルにて構成されており、連続して繰り返されている。また、フレームタイミングは、フレームの開始タイミングと終了タイミングにて特定される。フレームの期間が固定長である場合、フレームタイミングは、フレームの開始タイミングのみで特定されてもよい。ここでは、説明を明瞭にするために後者であるとする。複数のセグメントから信号が送信されている場合、それらのフレームタイミングは、OFDMシンボル単位で異なっているとする。TMCCデコーダ部44は、各セグメントに対するフレームタイミングをフレームタイミング生成部46に出力する。いずれかひとつのセグメントに対するフレームタイミングが出力されてもよい。
フレームタイミング生成部46は、シンボルタイミング生成部32からシンボルタイミングを取得するとともに、TMCCデコーダ部44からフレームタイミングを取得する。フレームタイミング生成部46は、シンボルタイミング生成部32が生成したシンボルタイミングのOFDMシンボルが複数含まれたフレーム信号のフレームタイミングを生成する。その際、フレームタイミングは、マスタセグメント選択部56が選択したマスタセグメントにおいて受信した信号のフレームタイミングからOFDMシンボルの間隔単位でずれるように生成される。ここでは、複数のセグメントのそれぞれとずれ量との関係が予め定められており、フレームタイミング生成部46は、当該関係から、複数のセグメント内における使用セグメントの位置に応じたずれ量を特定して使用する。
以上の処理をさらに具体的に説明する。フレームタイミング生成部46は、取得したフレームタイミングのセグメント番号から、当該フレームタイミングに対するずれ量、つまり遅延量をOFDMシンボル単位で特定する。ここでは、セグメント番号が遅延量であるとする。例えば、セグメント番号が「0」であれば、遅延量が「0」OFDMシンボルであり、セグメント番号が「1」であれば、遅延量が「1」OFDMシンボルであり、セグメント番号が「2」であれば、遅延量が「2」OFDMシンボルであるように規定されている。フレームタイミング生成部46は、取得したシンボルタイミングを使用して、遅延していないフレームタイミングを生成する。さらに、フレームタイミング生成部46は、使用セグメントのセグメント番号から、使用セグメントに対する遅延量もOFDMシンボル単位で特定する。フレームタイミング生成部46は、遅延していないシンボルタイミングを、特定した遅延量だけ遅延させることによって、フレームタイミングを生成する。フレームタイミング生成部46は、生成したフレームタイミングをOFDMフレーム構成部30に出力する。
図8(a)−(b)は、フレームタイミング生成部46における動作概要を説明する図である。図8(a)は、マスタセグメントでのフレームタイミングとシンボルタイミングを示す。ここでは、マスタセグメントがセグメント番号「0」であるとする。図示のごとく、ひとつのフレームは、複数のOFDMシンボルによって構成されている。図8(b)は、使用セグメントでのフレームタイミングとシンボルタイミングを示す。フレームの期間は、マスタセグメントでのフレームの期間と同一である。一方、フレームの開始タイミングは、マスタセグメントでのフレームの開始タイミングよりも6OFDMシンボル遅延している。
OFDMフレーム構成部30は、シンボルタイミング生成部32からシンボル区間セットパルス202を入力する。前述のごとく、OFDMフレーム構成部30は、シンボル区間セットパルス202をもとにシンボルタイミング204を生成する。また、OFDMフレーム構成部30は、シンボルタイミング204をシンボルタイミング生成部32にフィードバックする。OFDMフレーム構成部30は、フレームタイミング生成部46からフレームタイミングを入力する。OFDMフレーム構成部30は、フレームタイミングとシンボルタイミング204をもとに、複数のOFDMシンボルが含まれたフレームを生成する。
OFDMフレーム構成部30は、エンコード部28からデータを入力する。OFDMフレーム構成部30は、フレームとシンボルタイミング204にしたがってデータを配置させる。これは、シンボルタイミング204にて示されたシンボル単位にデータをまとめることに相当する。なお、フレームに含まれた複数のOFDMシンボルは、フレーム信号と総称される。また、OFDMフレーム構成部30は、データに対して誤り訂正の符号化を実行してもよい。OFDMフレーム構成部30において生成される信号は、周波数領域のフレーム信号に相当する。フレーム信号には、スキャッタードパイロット信号が含まれている。
ここでは、セグメント番号「0」からワンセグメント放送を送信する際のスキャッタードパイロット信号と比較して、フレーム信号内で相対的に同一パターンのスキャッタードパイロット信号が含まれている。つまり、セグメントに関係なく、フレーム信号内で相対的に同一パターンのスキャッタードパイロット信号が含まれている。セグメント番号「0」からワンセグメント放送を送信する際のスキャッタードパイロット信号のパターンは公知の技術であるので、ここでは説明を省略する。OFDMフレーム構成部30は、周波数領域のフレーム信号をOFDM変調部34に出力する。
OFDM変調部34は、OFDMフレーム構成部30からの周波数領域の信号に対して、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)を実行することによって、有効シンボルを生成する。また、OFDM変調部34は、GIを有効シンボルに付加することによって、ベースバンドのOFDMシンボルを生成する。OFDM変調部34は、ベースバンドのOFDMシンボルを周波数変換部36に出力する。局部発振部38は、送信キャリア設定部22によって設定された周波数の局部信号を出力する。周波数は、使用セグメントに対応する。
周波数変換部36は、OFDM変調部34から、ベースバンドのOFDMシンボルを入力し、局部発振部38から、局部信号も入力する。周波数変換部36は、局部信号によってベースバンドのOFDMシンボルを周波数変換することによって、無線周波数のOFDMシンボルを生成する。周波数変換部36は、無線周波数のOFDMシンボルをRF部40に出力する。RF部40は、周波数変換部36からの無線周波数のOFDMシンボルを増幅した後、アンテナから送信する。これらの処理によって、スレーブモードで動作している場合に、他のセグメントでのフレームタイミングに異なったフレームタイミング、マスタセグメントでのシンボルタイミングに同期したシンボルタイミングにしたがって、使用セグメントからOFDMシンボルが送信される。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
本発明の実施例によれば、セグメントごとにフレームタイミングを変えるので、スキャッタードバイロット信号やTMCC信号がフレーム内において相対的に同一であっても、同一のスキャッタードバイロット信号やTMCC信号の値が同一のOFDMシンボルに配置される可能性を低減できる。また、同一のスキャッタードバイロット信号やTMCC信号の値が同一のOFDMシンボルに配置される可能性が低減されるので、信号の大きさが大きくなり続ける可能性を低減できる。また、セグメント番号に応じてずれ量を決定するので、複数のセグメントのフレームタイミングをそれぞれ変えることができる。また、OFDMシンボルは同期されているので、フレームタイミングの差異を維持させることができる。
また、マスタセグメントでのOFDMシンボルが非受信になった場合に、既占有セグメントの情報をもとに、別の既占有セグメントをマスタセグメントとして新たに選択するので、マスタセグメントでのOFDMシンボルが非受信になっても、新たなマスタセグメントを直ちに使用できる。また、新たなマスタセグメントが直ちに使用されるので、それまでのマスタセグメントの使用が終了する場合であっても、同期したタイミングを生成できる。また、同期したタイミングが生成されるので、セグメント間の干渉を低減できる。
また、セグメント間の干渉が低減されるので、ガードバンドを不要にできる。また、ガードバンドが不要にされるので、周波数分割多重がなされている状況下において、OFDM信号を送信する際の周波数利用効率を向上できる。また、OFDM信号を送信する際の周波数利用効率が向上されるので、同一エリア内で多くのエリアワンセグメントの配信サービスを提供できる。また、既占有セグメントの情報において、既占有セグメントが含まれていれば、そのうちのひとつをマスタセグメントとして新たに選択するので、干渉を低減できる。また、既占有セグメントの情報において、既占有セグメントが含まれていなければ、自律的なタイミングを生成し、仮に送信を行っている機器が存在したとしてもそれらの機器は、本機器をマスタとしてスレーブモードで動作するので、干渉を生じさせずに自律的なタイミングを生成できる。
また、複数のデバイスが存在し、それらの任意の1デバイスがマスタとなり共通の通信路を使用して相互通信を行う通信バス(IEEE1394等)と比較した場合、次のような相違点がある。通信バスにおいては、あるマスタデバイスが通信を終了した場合、次にマスタとなるデバイスは、マスタが消失した後に「早い者勝ち」で決定される。一方、本発明の実施例においては、次にマスタになる機器は既に決定しておりマスタ機器の通信が終了した後で、残されたスレーブ機器のうちから早い者勝ちで次のマスタが決定されることはない。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。