JP5589524B2 - 芝の生長の予測システムおよび予測方法 - Google Patents

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Description

本発明は、スタジアムの芝の生長の予測システムおよび予測方法に関する。
例えば、サッカー、ラグビーおよびテニス等の競技を行うスタジアムでは、グラウンドに芝生が用いられる。近年ではグラウンドの維持・管理が容易となるため人工芝を敷設する場合が見受けられるが、競技上の必要性や安全性、また使用時の感触などを考慮すると、天然の芝生が優れており、観客を動員する競技用のスタジアムの多くに天然芝が用いられている(例えば特許文献1参照)。
特開平7−127295号公報
しかしながら、天然の芝は激しい運動等によって傷みやすく、また、育成するための管理が難しい。例えば、スタジアムでは観客が観戦するための観客席(スタンドともいう)や屋根が設けられている。このようなスタンドや屋根によってグランドに日陰の生じる部分があると、芝の生長に悪影響を与えてしまう。
また、近年、開閉屋根を備えたスタジアムが建設されている。このようなスタジアムでは屋根の開閉状態によってグランドへの日射量が異なるので、芝の生育について評価するのはさらに困難になる。
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、スタジアムの芝の生育についての評価を簡易に、且つ、短時間で行うことができる予測システムおよび予測方法を提供することにある。
かかる目的を達成するため、本発明の予測システムは、天然の芝が育成されたグラウンドと、前記グラウンドへの光を遮る物体と、を備えたスタジアムにおける芝の生長の予測システムであって、グラウンド面内に定められた複数の格子点における日射量の時系列データと前記物体による光の遮光率の分布データを記憶する記憶部と、前記日射量の時系列データ及び前記遮光率の分布データを用いることによって、前記芝についての光合成シミュレーションおよび生長シミュレーションを格子点毎に行ない、前記芝の生長を面的に予測する予測部と、を有することを特徴とする。
このような予測システムによれば、スタジアムの芝の生育についての評価を簡易に、且つ、短時間で行うことが可能である。
かかる予測システムは、前記物体が前記スタジアムの屋根を含み、さらに、前記屋根が開閉可能に設けられている場合に、特に効果的である。
かかる予測システムであって、前記日射量は、前記屋根の開閉状態と雲量とに基づいて算出されることが望ましい。
このような予測システムによれば、予測の精度を高めることができる。
かかる予測システムであって、前記予測部は、前記遮光率に応じて、前記光合成シミュレーションおよび前記生長シミュレーションの所定パラメータを変更することが望ましい。
このような予測システムによれば、予測の精度をより高めることができる。
また、天然の芝が育成されたグラウンドと、前記グラウンドへの光を遮る物体と、を備えたスタジアムにおける芝の生長の予測方法であって、グラウンド面内に定められた複数の格子点における日射量の時系列データと前記物体による光の遮光率の分布データを記憶する記憶ステップと、前記日射量の時系列データ及び前記遮光率の分布データを用いることによって、前記芝についての光合成シミュレーションおよび生長シミュレーションを格子点毎に行ない、前記芝の生長を面的に予測する予測ステップと、を有することを特徴とする予測方法が明らかとなる。
かかる予測方法であって、前記芝は葉部と根部を有し、前記生長シミュレーションは、
前記芝の前記葉部の存在量と前記根部の存在量とに基づいて、前記光合成シミュレーションを行なうことにより光合成量を算出する光合成量算出ステップと、前記光合成量に応じた光合成産物が前記葉部と前記根部に分配されるときの前記葉部への分配量と前記根部への分配量をそれぞれ算出する分配量算出ステップと、前記光合成産物の前記葉部への分配量に基づいて前記葉部の生長量を算出し、且つ、前記光合成産物の前記根部への分配量に基づいて前記根部の生長量を算出する生長量算出ステップと、前記葉部の生長量に基づいて前記葉部の存在量を変更し、且つ、前記根部の生長量に基づいて前記根部の存在量を変更する存在量変更ステップと、を有し、或る時点の前記存在量変更ステップの演算結果を、前記或る時点以降の他の時点の前記光合成量算出ステップに用いる、ことが望ましい。
このような予測方法によれば、芝の生長の予測の精度を高めることができる。
かかる予測方法であって、前記芝は葉部と根部を有し、前記光合成シミュレーションは、気象データを取得する気象データ取得ステップと、前記芝の形状、葉の特性、及び土壌の特性に関する各データを定める芝草環境設定ステップと、前記葉部を鉛直方向に複数の層に分け、前記気象データ取得ステップ及び前記芝草環境設定ステップの各データに基づいて、各層の光の放射環境を算出する放射環境算出ステップと、各層の葉温及び地面温度が前記放射環境に応じた温度になるときの葉の気孔コンダクタンス、葉面境界層コンダクタンス、顕熱フラックス、潜熱フラックスを層毎に算出する層要素算出ステップと、を有し、各層についての前記放射環境算出ステップの算出結果、及び、前記層要素算出ステップの算出結果に基づいて前記光合成量が算出されることが望ましい。
このような予測方法によれば、芝の光合成の予測の精度を高めることができる。
本発明によれば、スタジアムの芝の生育についての評価を簡易に、且つ、短時間で行うことが可能である。
芝草群落生長モデルの概要についての説明図である。 芝草群落光合成モデルの概要についての説明図である。 短波放射量の伝達についての説明図である。 直達光透過確率についての説明図である。 葉群集中度についての説明図である。 投影面積についての説明図である。 長波放射量の伝達についての説明図である。 日向と日陰に分けた光合成の計算についての説明図である。 エネルギー収支についての説明図である。 蒸発時および凝結時の水蒸気ガスフラックスの説明図である。 遮断蒸発モデルの説明図である。 群落の各層の光合成量とCO2フラックスを除く要素の計算手順を示すフロー図である。 群落の各層の光合成量とCO2フラックスの計算手順を示すフロー図である。 芝草群落生長モデルの計算手順を示すフロー図である。 芝草群落生長モデルの計算結果と実測値との比較を示す図である。 芝草群落生長モデルの計算結果と実測値との比較を示す図である。 本実施形態の予測システムを示すブロック図である。 本実施形態のスタジアムの屋根の開閉状態の説明図である。 雲による日射の散乱、減衰の概念図である。 全天日射量の直達光成分、散乱光成分への分離の考え方の説明図である。 現地観測された日射量を直達成分と散乱成分に分離した例を示す図である。 照度計算モデルで算出された直達日射と、実測された直達日射との比較を示す図である。 補間式による補間の考え方を示す図である。 毎時の天候(雲量)及び屋根の開閉を考慮したピッチ内の遮光率分布を示す図である。 図25A〜図25Dは、生長モデルのパラメタリゼーションに現れる遮光率依存係数の割り当てを示す図である。 本実施形態の予測システムによる処理の流れを示すフロー図である。 図27A、27Bは、本実施形態のシミュレーション結果(日射量分布)を示す図である。 図28A、28Bは、本実施形態のシミュレーション結果(単位面積当たりの葉と根の質量の分布)を示す図である。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
===スタジアムの概要について===
以下の実施形態では、競技など多目的に利用されるスタジアムの一例としてサッカーのスタジアムについて説明する。
本実施形態のスタジアムは、天然の芝が一面に育成されたピッチと、ピッチの周りの観客席(スタンド)と、ピッチ及びスタンドの上部に設けられた屋根を有している。ここで、ピッチとは、サッカーを行うグラウンドのことであり、ゴールラインとタッチラインに囲まれた四角いエリアの中を指す。なお、本実施形態のスタジアムの屋根は後述するように開閉可能になっている。
このようなスタジアムでは、光を遮るスタンドや屋根があるため、ピッチにおいて日向になる部分と日陰になる部分が生じることがある。また、屋根の開閉の状態によっても、ピッチへの日射量が異なってくる。このため、芝の育成について評価を行うのが困難である。
そこで、本実施形態では、ピッチを複数の格子点に分け、各格子点の日射量の時系列データと遮光率の分布データ(後述する)を求め、これらのデータを用いて以下に示す群落光合成モデル及び生長モデルによって、格子点毎に芝の生長の予測を行なっている。このようにして、ピッチの芝の生長を面的に予測している(二次元化処理)。
最初に、群落光合成モデル及び生長モデルについて説明する。
===芝草群落生長モデルの概要について===
図1は、芝草群落生長モデルの概要についての説明図である。
本実施形態の芝草群落生長モデルでは、気象条件の入力により、後述する群落光合成モデルで各層及び土壌の気象要素を計算することによって純光合成量を計算する。そして、純光合成量に応じた光合成産物を葉と根に分配して、葉と根の生長量を算出するとともに、枯死量および葉の刈取量を差し引いて葉と根の現存量(存在量に相当する)を出力する。また、この時の生長量から生長呼吸量を算出し、純光合成量の計算に使用する。葉現存量のデータは、翌日の群落光合成モデルでの計算に使用される。また、根の現存量から根呼吸量を求め、純光合成量の計算に使用する。また、枯死現存量(リター量)から分解呼吸量を求め、枯死現存量の減少を算定するのに使用する。このような繰り返し計算によって芝の生長(又は衰退)の長期予測を行う。
===芝群落光合成モデルについて==
まず、図1に示す生長モデルの中の群落光合成モデルについて説明する。図2は、芝群落光合成モデルの概要についての説明図である。
芝群落光合成モデルは、図2の群落高 hの芝草群落を鉛直方向に厚さdzの複数の層に分ける多層モデルである。この光合成モデルでは、芝草群落の構造、個葉の特性、地面の特性が明らかである芝草群落について、その群落周辺で観測される気象要素(太陽高度,直達・散乱日射量,長波日射量,気温,湿度,風速,大気CO2濃度)を入力することで、群落内の光合成呼吸速度,CO2交換速度,潜熱(あるいはH2O)交換速度,顕熱(あるいは温度)交換速度,及び気象要素の鉛直分布を求めることができる。
表1は、図2に使用されている記号の詳細を示したものである。
なお、本実施形態の光合成モデルは、図2に示すように以下のa)〜f)のサブモデルを有している。
a) 葉面および地面のレイノルズ応力・CO2・H2O・顕熱フラックスモデル
b) 個葉の光合成および気孔コンダクタンスモデル
c) 群落内の放射伝達モデル
d) 葉面および地面のエネルギー収支モデル
e) 個葉の降雨・凝結遮断および蒸散・蒸発モデル
f) 土壌呼吸モデル
===光合成モデルのサブモデルの詳細について===
芝群落光合成モデルで用いるサブモデルの詳細について説明する。
≪a.葉面および地面のレイノルズ応力・CO2・H2O・顕熱フラックスモデル≫
このモデルは、葉周辺における光以外の応力・フラックスについて算定するものである。
高度z+dzとzの間におけるレイノルズ応力,顕熱フラックス,H2Oガスフラックス,CO2ガスフラックスの差はそれぞれ以下の通りとなる。
(1)〜(4)式においてCdは葉面抵抗係数(葉両面),Chは温度に対する葉面交換係数(葉両面),CeはH2Oガスに対する葉面交換係数(葉片面)である。また、uは水平風速 (m s-1),wは鉛直風速 (m s-1),Tは気温 (K),qは比湿 (g kg-1),cは大気中のCO2濃度 (μmol mol -1),Tcは葉温 (K),qSAT (Tc)は葉温における飽和比湿(g kg-1),Aは単位葉面積あたりの純光合成量 (μmol m-2s-1),dfは一層内の葉面積指数 (m2 m-2)である。また、添字sl,shはそれぞれ日向部分,日陰部分を示している。(3)式,(4)式ではともに葉面積を日向・日陰部分に分けており、それぞれの部分に与えられる光合成有効放射量(以下、PARともいう)によって生じる(3)式中のH2Oに対する葉面交換係数の違いを考慮している。本実施形態では気孔開口に主導的な役割を担っているPAR(Zeiger 1983)について日向・日陰部分で区別したが、その他の葉温,風速,気温,比湿とCO2濃度については水平方向で均一とした。なお、日向・日陰の葉面積指数(dfsl,dfsh)と、それぞれの部分に与えられるPAR(SPARsl,SPARsh)の算出方法は後述する。
一層内の葉面積指数は、葉面積密度関数(a(z))(m2 m-3)を用いて次のように表す。
(5)式を上記(1)〜(4)式に代入すると、(1)〜(4)式は、z方向についての微分方程式になる。
(3)式中のH2Oガスに関する交換係数(Ce)は、気孔コンダクタンス(gs)に左右される。また、温度の交換が葉の両側(Jarvis and Mcnaughton 1986)で行われる一方で、主に葉面の片側に気孔を持つ植物が多いことから、H2Oガス交換がもっぱら葉面の片側で行われていること(Leuning et al. 1995)を考慮して、交換係数Ceを次式のように葉面境界層コンダクタンス(gb)(mol m-2 s-1) と気孔コンダクタンス(gs)(mol m-2 s-1) から求めた。
(6)式においてgsはH2Oガスに関する片側の気孔コンダクタンスである。なお、日向・日陰部分のCeは日向・日陰部分のPARを考慮したgsの値によりそれぞれ求められる。
なお、植物群落の地面(z=0)のレイノルズ応力,温度・H2Oフラックスは、高度dzでの風速(u)(m s-1),気温(T)(K),比湿(q)(g kg-1) を用いて次式とした。
(7)〜(9)式において、Cdsはレイノルズ応力,Chsは温度フラックスについてのバルク係数,Tsは地面温度 (K),qSAT(T)はTsでの飽和比湿 (g kg-1),βsoilは地面の蒸発効率である。レイノルズ応力と温度フラックスのバルク係数とが同値であるとして以下の数値に固定した。
地面(地面)のCO2フラックスについては、土壌呼吸速度(Fsoil)(μmol m-2 s-1) を代わりに用いた。
≪b.個葉の光合成モデルおよび気孔コンダクタンスモデル≫
<b-1.光合成モデルについて>
光合成モデルは、光と湿度で決まる気孔開度から二酸化炭素吸収量を算出し、個葉の光合成速度を算出するものである。
各層における個葉の光合成速度は、生化学に基づく光合成モデル (Farquhar et al., 1980)によって決定されている。
(11)、(12)式においてAは純光合成速度 (μmol m-2 s-1),Vcは光合成回路における炭酸同化速度 (μmol m-2 s-1),Rdは暗呼吸速度 (μmol m-2 s-1),p(Γ)は光呼吸量を除いたCO2補償点 (Pa),τはRubiscoの定数,p(Cc)とp(O)はそれぞれ葉緑体におけるCO2分圧 (Pa) とO2分圧 (21,000 Pa) である。電子伝達速度が律速している時の炭酸同化速度(Wj)(μmol m-2 s-1) とRuBPが律速している時の炭酸同化速度(WC)(μmol m-2 s-1) の内の低い方の値を炭酸同化速度(Vc)に使用することとして、次式のようにした。
(13)、(14)式において、Vcmaxは最大炭酸同化速度 (μmol m-2 s-1),KcとKoはそれぞれRubiscoのCO2とO2に対するミカエリス定数,Jは電子伝達速度 (μmol m-2 s-1) である。Jは吸収した光合成有効放射束密度 (PAR) との関係を以下の非直角双曲線の平方根の小さい方の数字で表す(Farquhar and Wong, 1984)。
(15)式においてQは入射するPAR (μmol m-2 s-1),εは葉のPARの吸収率,fはクロロプラストのラメラにおいて光合成に使用されなかった光のロスの比率,Jmaxは最大電子伝達速度,θは曲率を示す。θと1−fの値は、電子伝達速度のライトカーブの測定結果を使用して算定した。εの値は葉の光吸収率の測定結果を使用して算定した(Wullschleger., 1993)。JmaxはVcmaxと以下のような関係にある。
以下のようにアレニウスの式を使用して、パラメータKc,Ko,τ,Rnleafの温度依存度を求めた。
Vcmaxの温度依存度については、以下の簡易式 (Sharpe and DeMichele., 1977) を使用した。
ここで、f(Tl.k)は葉温Tl.k(K)でパラメータに与えられる値,f(298)は標準値で25℃でのパラメータ (Kc25,Ko25,Rdleaf25,τ25, Vcmax25),ΔHaは活性化エネルギー (J mol-1),ΔHdは不活性化エネルギー (J mol-1),ΔSはエントロピーターム (J K-1 mol-1) である。Rd25とVcmax25との関係は以下とする。
クロロプラストにおけるCO2濃度は、細胞間隙のCO2濃度と同じだとする推論のもとで、以下のように計算される。
(20)、(21)式においてCaは大気のCO2濃度 (μmol mol -1),Ciは細胞間隙のCO2濃度 (μmol mol -1),Eは蒸散速度 (mol m-2 s-1),gtcはCO2に対する全コンダクタンス (mol CO2 m-2 s-1) である。gbcはCO2に対する葉面境界層コンダクタンス (mol CO2 m-2 s-1) で、gbc=gbw /1.62/3から求まる。gscはCO2に対する気孔コンダクタンス (mol CO2 m-2 s-1) で、gsc=gsw/1.6から求まる。また、gbwはH2Oに対する葉面境界層コンダクタンス (mol H2O m-2 s-1) であり、gswはH2Oに対する気孔コンダクタンス (mol H2O m-2 s-1) である。
(20)式は気孔の通過における運搬への影響を計算するために、Jarman (1974)とCaemmerer and Farquhar (1981) が発表したものを一つにして使用した。AとCcの両方に合った値は,(11)式で示されている「需要の関数」と(20)式で示されている「供給の関数」の交点で決定される。
<b-2.気孔コンダクタンスモデルについて>
気孔コンダクタンス(gs)はPAR,気温,飽差,葉内水分,大気CO2などに影響を受ける(Jarvis 1976)。このうちPARと飽差に依存する気孔コンダクタンスモデルを使用した。ここでの飽差とは葉温における飽和水蒸気圧と大気水上気圧の差をいう。このモデルでは気孔コンダクタンスを次式として表す。
(22)式においてgswmaxは最大気孔コンダクタンス (mol H2O m-2 s-1),gswminは最小気孔コンダクタンス (mol H2O m-2 s-1),f(Q)とf(D)はPAR (μmol m-2 s-1) と飽差 (hPa) についての関数であり、それぞれ0から1までの値をとる。それぞれの関数は次式で表される(Lohammar et al., 1980)。
(23)、(24)式においてaはQ=0の時の初期勾配,D (hPa) は飽差,D0 (hPa) は飽差に対する反応でgsが半減する時の飽差の値を示す。葉面の片側における葉面境界層コンダクタンスと風速との関係は以下のように示す。
(25)式においてgbwは葉面境界層コンダクタンス (mol H2O m-2 s-1) ,Chは葉の両面からの顕熱の交換係数,uは水平風速 (m s-1),Pは大気圧 (Pa),Rは気体定数 (8.31 J mol-1 K-1),Tは気温 (K)である。
≪c.群落内部の放射伝達モデル≫
放射伝達モデルは、光の各成分(短波、長波、PAR)が葉を通過・反射・透過する確率をもとに、各層に到達する放射量を算定するものである。言い換えると、放射伝達モデルは、各層の放射環境を算出している。
本実施形態の群落光合成モデルでは群落内部の放射伝達において日射量(短波全域)と PARの直達成分,日射量とPARの散乱成分,及び長波放射量とに分けている。以下に示す PARの伝達式は日射量の直達・散乱成分の伝達式と同じである。しかしながら、PARは短波全域である日射量に比べ葉に吸収されやすいので、PARの散乱成分を見積もる場合には PARに対する葉の反射・透過率(地面については地面の反射率)と、日射量に対する葉の反射・透過率(地面については地面の反射率)と区別しなければならない。
<c-1.日射量とPARの直達成分の伝達について>
図3は、短波放射量の伝達についての説明図である。なお、PARの伝達は、短波放射の場合と同様に算出することができる。
群落内部の日射量の直達成分(Sb↓)(W m-2)の伝達式は以下のように表せる。
(26)式においてIbはz+dzからzまでの層を日射量とPARの直達成分が通過する確率,Hは太陽高度(rad) である。PARの直達成分(SPARb↓)(μmol m-2 s-1) における伝達の場合も(26)式で表現できる。
図4は、直達光透過確率についての説明図である。日射の直達成分が一層を通過する確率(I)は次式となる。
(27)式の右辺の第二項は一層内に分布する物体(本モデルでは,葉のみと仮定する)が水平面に作る単位面積当たりの投影面積を意味する。
Ωは葉群集中度の係数であり、本モデルでは図5に示すように0から1の範囲とする。なお、図5は、葉群集中度についての説明図である。
(27)式においてGlayer(H)は一層内の葉面積と太陽の入射角に対して垂直な面に投影される面積との比(以下,群落のG関数と書く)を表す。群落全体のG関数(Glayer(H))は各々の個葉におけるG関数(Gleaf(α,β,H,Φs),α:葉の傾斜角(rad),β:方位角(rad),H:太陽高度(rad),Φ:太陽の方角(rad))の集まりからなる。
図6は、投影面積についての説明図である。αは葉の平均傾斜角であり、βは葉の平均方位角である。群落全体のG関数は、この個葉のG関数と群落内での葉の傾斜角(α),方位角(β)の分布を用いることで表せる。
さらに、葉の方位角が均一に分布すると仮定すれば太陽の方角(Φs)について考慮しなくてすみ、群落全体のG関数は以下の式で表せる。
(28)式においてg(α)は傾斜角の分布密度関数である。個葉のG関数は次式で表せる。
<c-2.日射量とPARの散乱成分の伝達について>
下向きと上向き日射の散乱成分の伝達は、葉による透過や反射による成分を考慮しなければならない。下向き散乱日射量(Sb↓,鉛直下向きを正)(W m-2)は次式で表せる。
一方、上向き散乱日射量(Sd↑,鉛直上向きを正)(W m-2)は次式で表せる。
(30)、(31)式においてτsは葉の日射量についての透過率,ρsは葉の日射量についての反射率,Idは日射量とPARの散乱成分がzからz+dzまで(あるいはその逆)の層を通過する確率である。PARの散乱成分(SPARd↓,SPARd↑)(μmol m-2 s-1) については、PARのそれぞれの成分とPARに対する反射・透過率(τPAR,ρPAR)を(30),(31)式に代入する。日射量やPARの散乱成分はあらゆる方向から一様に入射すると考えられるので、Idは日射量とPARの直達成分が通過する確率(Ib)に基づいて以下のように積分形で表せる。
地面の日射量は以下のように表す。
(33)式において、αSsoilは地面の日射に対する反射率(アルベド)である。地面のPARは(33)式にそれぞれのPARの成分と地面のPARに対する反射率(αPARsoil)を代入する。
<c-3.長波放射の伝達について>
図7は、長波放射量の伝達についての説明図である。長波放射の伝達式は以下のように表すことができる。
(34)、(35)式において、ε0は射出率 (1.0),σはステファン−ボルツマン定数 (5.67*10-8 kg s-3 K-4)である。
地面での上向き長波放射は以下のように表せる。
(36)式において、TSは地面温度である。
<c-4.日向・日陰の葉面積指数について>
図8は、日向と日陰に分けた光合成の計算についての説明図である。左側の図は、PARと光合成速度との関係を示す図であり、右側の図は日向の葉と日陰の葉とによる光合成の概念図である。なお、左側の図において横軸はPARであり、縦軸は光合成蒸散速度である。
図のように、光合成蒸散速度との光(PAR)との関係は非線形である。これは、日向と日陰での光合成の様子が異なるからである。そこで、本実施形態では日向と日陰に分けて、個葉の光合成、気孔コンダクタンス、CO2濃度などを算出するようにしている。
日向の葉面積指数(dfsl)(m2 m-2) は、直達日射の伝達式を利用して以下のように表せる。
(37)式において、hは群落高でSb↓(h,H)は群落上の直達日射量であり、Sb↓(h,H)=0のときはdfsl=0である。日陰の葉面積指数(dfsh)(m2 m-2) は以下のように表せる。
<c-5.日向・日陰の葉面に与えられるPARについて>
z+dzからzまでの層の日陰部分に与えられるPARの総量(SPARsh)(μmol m-2 s-1) は、以下のように表せる(Baldocchi and Hutchison, 1986)。
日向部分のPARの総量(SPARsl)(μmol m-2 s-1) は、SPARshに群落上のPARの直達成分(SPARb(h,H)↓)(μmol m-2 s-1) を考慮することで求まる(Baldocchi and Hutchison, 1986)。
BouguerとBerlageの方程式に従うと、晴天日に群落の表面に到達する直達光と散乱光はそれぞれ以下のように表される。
(42)式において、Sは太陽定数,ATは大気透過率,Hは太陽高度 (rad) である。地球上の太陽光の総量は、散乱光と直達光の合計である。
≪d. 葉面および地面のエネルギー収支モデル≫
エネルギー収支モデルは、葉面への放射量と、葉面からの顕熱・潜熱とのバランスで葉温を算定するものである。
図9は、エネルギー収支についての説明図である。
葉面でのエネルギー収支は、葉面による貯熱と光合成に使われるエネルギーを無視できるとして、以下の式で表せる。
(43)式においてλは水の蒸発潜熱 (J g-1),CPは空気定圧比熱 (J kg-1),ρaは空気の密度 (kg m-3) である。左辺は放射エネルギーの収支を表しており、右辺は吸収した放射エネルギーを
として消費することを表している。
また、地面のエネルギー収支は以下で表せる。
(44)式において、Gは地中伝導熱 (W m-2) である。
≪e. 個葉の降雨・凝結遮断および蒸散・蒸発モデル≫
図10は、蒸発時および凝結時の水蒸気ガスフラックスの説明図である。
葉温Tc (K) における葉の細胞間隙の水蒸気濃度(qSAT (Tc))(g kg-1) が葉面境界層上の水蒸気濃度(q) (g kg-1) より高い場合には、濡れた葉の表面と裏側から蒸発が起こり、乾いた葉の裏側から蒸散が行われる。細胞間隙の水蒸気濃度が葉面境界層上の水蒸気濃度より低い場合には、凝結(結露)が葉面の裏表全体で起こる。このとき、凝結した水は濡れていた部分では排水され、乾いていた部分では貯められる。群落内の2高低差間の水蒸気ガスフラックス(w’q’)の違いは以下のように表せる。
(45)、(46)式において添字のLは葉の裏面,Uは葉の表面,dryは乾燥状態,wetは濡れた状態を示す。葉面境界層抵抗は風速(u)(m s-1) と交換係数(Ch)とで求められる。 CO2ガス交換は葉の裏側の乾いた部分で行われ、以下のように表せる。
また、図11は、遮断蒸発モデルの説明図である。このモデルは、降雨等の水分による気孔の遮断状況を算定するものである。降雨時および凝結時には、葉の表面の乾いた部分に水を供給するが、凝結に関しては葉の裏面の乾いた部分にも水を供給する。降雨や凝結時には、濡れた部分に供給された水は排水される。水の貯蔵(W)(mm LAI-1)は以下のように表せる。
WLとWUは、葉の裏面と表面にそれぞれ貯蔵された水の量を、葉の表面積あたりの量で示したものである (mm LAI-1)。群落中の降水(Pr)は直達光の透過に類似していて、降雨の進入角を垂直と仮定すると、(ΩGlayerπ/2)/(sinπ/2)=Flayerとなる。WLとWUの量は以下の方程式で決めることができる。
ここでEPは葉面積(片面)あたりの蒸発速度もしくは凝結速度 (mm LAI-1 s-1) である。
葉の裏表における濡れた部分の面積はそれぞれ以下のように示される。
(55)、(56)式においてWLMAX,WUMAXは葉の裏面,表面のそれぞれの水貯蔵能力 (mm LAI-1) である。乾燥した葉の葉面積指数は以下のようになる。
≪f. 土壌呼吸モデル≫
土壌呼吸モデルは、地温で決まる根と微生物の呼吸速度を算定するものである。
土壌呼吸は根呼吸,分解呼吸および生長呼吸から以下のように表す。また、根呼吸および分解呼吸の速度は、アレニウスの式を用いて温度依存度を求めた。
(58)〜(60)式においてFsoilは土壌呼吸速度(μmol m-2 s-1),Rrは根呼吸速度(μmol m-2 s-1),Rdecは分解呼吸速度(μmol m-2 s-1),Gresrootは根の生長呼吸速度(μmol m-2 s-1)である。BrおよびBdecはそれぞれ根のバイオマスとネクロマスの単位面積あたりの重量(kg m-2),Rr25およびRdec25はそれぞれ根呼吸速度と分解呼吸速度の25℃での標準値 (μmol kg-1 s-1),ΔHaは活性化エネルギー (J mol-1) である。
===芝群落光合成モデルの計算手順について===
図12及び図13は、本実施形態の芝群落光合成モデルによる光合成量の計算手順を示すフロー図である。なお、図12は、群落の各層の光合成量とCO2フラックスを除く要素の計算手順を示し、図13は、各層の光合成量とCO2フラックスの計算手順を示している。なお、本実施形態では群落高 hが3cmの芝草群落を鉛直方法に12層に分割した。
まず、図12に示すように、芝草群落周辺における気象要素(気象データ)の入力を行う(S101)。ここでは気象要素として、太陽高度(H),短波放射の下向き直達成分(Sb↓),短波放射の下向き散乱成分(Sd↓),PARの下向き直達成分(SPARb↓),PARの下向き散乱成分(SPARd↓),長波放射の下向き成分(L↓),気温(T),湿度(q),風速(u)が取得される。
また、評価対象となる芝草群落の構造、葉の特性、及び土壌の特性を定める(S102)。例えば、群落の構造としては、図2及び表1に示すように葉面積密度関数 a(z) と葉の傾斜角の分布密度関数 g(α) が定められる。葉の特性、土壌の特性についても図2及び表1に示す各データが定められる。
以上のデータから「放射伝達モデル」によって、芝草群落の各層についての日射量とPARの下向き直達・散乱成分と上向き散乱成分,日向・日陰の葉面積指数とそれぞれの部分に与えられるPARを計算するを計算する(S103)。すなわち、各層の放射環境を算出する。
次に、葉面温度、土壌温度、温度、比湿の暫定値(TcOLD,TsOLD, TOLD, qSOLD)を入力(仮入力)し(S104)、その暫定値と「放射伝達モデル」とによって、長波放射量の上向き・下向き成分(L↓,L↑)と各群落層及び土壌層に吸収される放射量を計算する(S105)。
また、葉面に与えられるPARと「光合成および気孔コンダクタンスモデル」によって各群落層の個葉の気孔コンダクタンスと葉面境界層コンダクタンス(gs, gb)を計算する(S106)。
さらに、日向・日陰の葉面積指数とそれぞれの部分に与えられるPAR,気孔コンダクタンスと葉面境界層コンダクタンス,これに「レイノルズ応力・顕熱・H2O・CO2フラックスモデル」と「降雨・凝結遮断および蒸散・蒸発モデル」によって各群落層の乾いた葉と濡れた葉の顕熱・潜熱フラックスを計算する(S107)。
そして、葉面・地面に吸収される放射量および顕熱・潜熱フラックスと「エネルギー収支モデル」で各群落層と土壌層での葉面温度,地面温度(Tc, Ts),顕熱,潜熱を計算する(S108)。
次に、ステップS108で算出された葉面温度及び地面温度と、ステップS104で設定した暫定値との差が所定範囲内(例えば1%未満)であるかを判断する(S109)。 ステップS108の算出結果(Tc, Ts)と、暫定値との差が1%以上の場合は(S109でNO)、暫定値の値をステップS108の算出結果に置き換えて(S110)、ステップS105〜ステップS108の処理を再度実行する。この繰り返しにより、葉面温度及び地面温度は放射環境に応じた値に収束していく。なお、ステップS105〜ステップS110のループは、層要素算出ステップに相当する。
そして、ステップS108の算出結果と、暫定値との差が1%未満になると(S109でYES)、そのときの各データを保存し、図13のフローに進む。
図13のフローでは、各層の光合成量とCO2フラックスの計算を行う。
まず、ステップS103で算出された群落の各層の放射要素、ステップS106で算出された気孔コンダクタンス及び葉面境界層コンダクタンス(gs, gb)、ステップS107で算出された葉の顕熱・潜熱フラックス、及び、ステップS108で算出された葉面温度,地面温度(Tc, Ts)、及び、大気CO2濃度(c)などのデータを取得する(S201)
次に、図2の個葉の特性の4)の光合成モデルのパラメータ、及び、図2の土壌の特性の4)の土壌呼吸モデルのパラメータを定める(S202)。
これらの値に基づいて、「光合成および気孔コンダクタンスモデル」によって群落の各層の個葉の純光合成量(A)を計算する(S203)。
さらに、「レイノルズ応力・顕熱・H2O・CO2フラックスモデル」と「降雨・凝結遮断および蒸散・蒸発モデル」によって、群落の各層の乾いた葉と濡れた葉のCO2フラックスを計算する(S204)。
表2は、本実施形態の群落光合成モデルに用いたパラメータなどの値を示したものである。
===群落光合成モデル以外の要素について==
次に、図1に示す芝草群落生長モデルのうち群落光合成モデル以外の各要素の詳細について説明する。
≪光合成産物の分配について≫
群落光合成モデルから得られる純光合成量(NPP)(kg C m-2 day-1) を地上部(葉部)と地下部(根部)に分配する。まず、純光合成量を1日に生産されるバイオマス量(biomass)(kg m-2 day-1) に変換するために、バイオマス量に対するCの比率(b2C)で求める。

1日に生産されるバイオマス量:NPP / b2c
本実施形態ではb2cを0.42とした。次に、純光合成量が0を超えて生長状態にある場合、バイオマス量の葉への割り振り率をr_agとする。純光合成量が0を下回って衰退状態にある場合、バイオマス量(枯死量)の葉への割り振り率をrn_agとする。また、葉面積指数(LAI:leaf area index)(m2 m-2)がmaxlaiを超えると根に全て割り振られ、minlaiを下回ると葉に全て割り振られる。
なお、寒地芝は冬にNPPが主に地下部のみに割り振られるため、r_agには気温の閾値を設けて季節による区別をする。気温には過去4日の日平均気温を用いる。また、光環境によって値を変える。

生長時の葉への分配:biomass×r_ag (maxlai< LAI< maxlai)
biomass×0 (LAI>maxlai)
biomass×1 (LAI<minlai)
生長時の根への分配:biomass×(1−r_ag) (maxlai< LAI< maxlai)
biomass×1 (LAI>maxlai)
biomass×0 (LAI<minlai)
衰退時の葉への分配:biomass×rn_ag(maxlai< LAI< maxlai)
biomass×0 (LAI>maxlai)
biomass×1 (LAI<minlai)
衰退時の根への分配:biomass×(1−rn_ag) (maxlai< LAI< maxlai)
biomass×1 (LAI>maxlai)
biomass×0 (LAI<minlai)
≪枯死量と刈取量および生長量の計算について≫
葉の枯死量(Δlitter_foliage)(kg m-2 day-1) は、衰退時に葉に分配されるバイオマス(枯死量)に、前日の葉の現存量 (kg m-2) と葉の枯死回転率(l_foliage)で算定した枯死回転分を加えて求める。枯死回転率とは1日に現存量が枯死する割合で、芝の持つバイオマスの全てが入れ替わる期間の逆数となる。葉の枯死回転率は季節によって変動するため、気温の閾値を設けて季節による区別をする。気温には過去4日の日平均気温を用いる。また、本実施形態のような競技場の芝の場合、試合の使用頻度によって枯死回転率を調整することで、試合による芝の傷みの影響を反映させる。
根の枯死量(Δlitter_froot)(kg m-2 day-1)も葉と同様に、衰退時に根に分配されるバイオマス(枯死量)に、前日の根の現存量(MROOT)(kg m-2) と根の枯死回転率(l_froot)で算定した枯死回転分を加えて求める。根の枯死回転率の季節変動および試合の使用頻度の影響についても、葉の枯死回転率と同様に算出する。

葉の枯死量(Δlitter_foliage):衰退時に葉に分配される枯死量+前日の葉現存量× l_foliage
根の枯死量(Δlitter_froot):衰退時に根に分配される枯死量+前日の根現存量× l_froot
1回あたりの刈取量(kg m-2 day-1)は、一定の刈り取り間隔(mowday)(day) を設定し、LAI(leaf area index)(m2 m-2)が上限値(mowlimit)(m2 m-2)を超える部分の一定比(mowratio)を刈り取り量とする。

1回あたりの刈取量:(LAI−mowlimit)×mowratio×LMA(LAI>mowlimit)
0(LAI<mowlimit)
葉の生長量(Δfoliage)(kg m-2 day-1) は、分配されたバイオマスから枯死量と刈取量を差し引いた量で、根の生長量(Δfroot)(kg m-2 day-1) は分配されたバイオマスから枯死量を差し引いた量とする。

葉の生長量(Δfoliage):葉に分配されたbiomass−Δlitter_foliage −1日あたりの刈取量
根の生長量(Δfroot):根に分配されたbiomass−Δlitter_froot
≪現存量及び枯死現存量(以下、リター量ともいう)の計算について≫
LAIの現存量(tlai)(m2 m-2) は、LAIの増加量(ΔLAI)(m2 m-2 day-1)を葉の生長量(Δfoliage)とLMA(leaf mass par area)(kg m-2)の季節変化データ(lmafile)で計算した後、これを前日のLAIの現存量データ(TLAI)(m2 m-2)に加えて計算する。根の現存量(root)(kg m-2)の値は、前日の根の現存量データ(MROOT)(kg m-2)に根の生長量(Δfroot)を加えて計算する。得られた現存量の値は、翌日の群落光合成モデルの計算に使用する。

LAIの増加量(ΔLAI):Δfoliage / lma
LAIの現存量(tlai):TLAI +ΔLAI
根の現存量(root): MROOT +Δfroot
葉のリター量(flitter)(kg m-2) は、前日の葉のリター量(FLITTER)(kg m-2) から当日の土壌微生物の分解呼吸量(Rdec:群落光合成土壌呼吸モデルで前日の葉のリター量から算定)(μmol CO2 m-2 s-1) を差し引き、ここに当日の葉の枯死量(Δlitter_foliage)を加えて計算する。根のリター量(rlitter)(kg m-2) も、前日の根のリター量(RLITTER)(kg m-2) から当日の分解呼吸量を差し引き、ここに根の枯死量(Δlitter_froot)を加えて計算する。この時、分解呼吸量のうちで根のリターに由来する割合を示す係数(r_rdecomp)を使用して計算する。

葉のリター量(flitter):FLITTER +Δlitter_foliage−Rdec×(1−r_rdecomp)
根のリター量(rlitter):RLITTER +Δlitter_froot−Rdec×r_rdecomp
≪生長呼吸量について≫
葉の生長呼吸速度(μmol CO2 m-2 s-1)および根の生長呼吸速度(μmol CO2 m-2 s-1)は、1日あたりの生長と衰退の状況(kg m-2 day-1)を過去何日間の累積で評価するか(cumday)(day) を決めて、生長量1kgあたりの25℃での生長呼吸速度(rg_foliage, rg_root)(μmol CO2 s-1 kg-1) と生長呼吸速度の活性化エネルギー(ΔHa(Gresleaf),ΔHa(Gresroot))から算定する。ここでの累積生長量は、Δfoliageの累積量から算出する。

葉の生長呼吸速度:cumdayの累積生長量 / cumday / 昨日の葉の現存量×rg_foliage
×葉の生長呼吸温度依存式(累積生長量>0)
0(累積生長量<0)
根の生長呼吸速度:cumdayの累積生長量 / cumday / 昨日の根の現存量×rg_froot
×根の生長呼吸温度依存式(累積生長量>0)
0(累積生長量<0)

生長呼吸速度の関係式と気象データから、葉の生長呼吸量(GRESFOLIAGE)(kg C m-2 day-1) と根の生長呼吸量(GRESROOT)(kg C m-2 day-1) を求める。得られた生長呼吸量は、純光合成量の計算に反映する。
===芝草群落生長モデルの計算手順について===
図14は、本実施形態の芝草群落生長モデルの計算手順を示すフロー図である。
なお、生長モデルの入力データは、前述した群落光合成モデルと同じである。また、出力としては、群落光合成モデルの出力データ以外に、各日についての葉の現存量と生長量、根の現存量と生長量、及びリター量(枯死現存量)などが出力される。これらの出力データの一部は、次の日の計算(群落光合成モデル等)に用いられる。
まず、「生長呼吸量について」で説明したように、前日までの葉の生長・衰退状況(葉生長量)から、葉の生長呼吸量(GRESFOLIAGE)を算出する(S301)。また、根の生長・衰退状況(根生長量)から、根の生長呼吸量(GRESROOT)を算出する(S302)。なお、本実施形態では、過去4日間の累積で1日当たりの生長と衰退の状態を評価している。また、前日までのリター量から分解呼吸量を算出し、葉のリターに由来する分解呼吸量と根のリターに由来する分解呼吸量をそれぞれ求める(S303)。
次に、前述した群落光合成モデルによって、前日までの葉現存量および根現存量から群落各層の光合成・呼吸量を求め(S304)、その各層の結果を積算するとともに、葉と根の生長呼吸量を差し引いて光合成純生産量(NPP)を算出する(S305)。
そして、光合成純生産量の値をC換算量からバイオマス換算量に変換し(S306)、「光合成産物の分配について」で説明したように、地上部(葉部)と地下部(根部)へのバイオマス換算量の分配量を計算する(S307)。
さらに、「枯死量と刈取量および生長量の計算について」で説明したように、地上部への分配量(衰退時は枯死量)と、枯死回転率および刈取量から葉の生長量(Δfoliage)と葉の枯死量(Δlitter_foliage)を計算する(S308)。また、地下部への分配量(衰退時は枯死量)と、根の枯死回転率から根の生長量(Δfroot)と根の枯死量(Δlitter_froot)を計算する(S309)。
そして、「現存量およびリター量の計算について」で説明したように、葉と根の現存量とリター量の計算を行う。
まず、葉については、葉面積指数(LAI)の増加量(ΔLAI)を計算し(S310)、前日の葉面積指数(LAI)に増加量(ΔLAI)を加算する(S311)。これにより、当日の葉現存量が算出される。なお、この葉現存量は、翌日の群落光合成モデル(ステップS304)の計算に使用される。
また、前日の葉のリター量(FLITTER)から当日の分解呼吸量を差し引き、ここに当日の葉の枯死量を加えて当日の葉のリター量(flitter)を求める(S312)。
さらに、根については、前日の根現存量(MROOT)に当日の根現存量の増加分を加えて根現存量(root)を算出する(S313)。この根現存量は、翌日の群落光合成モデル(ステップS304)の計算に使用される。
また、前日の根のリター量(RLITTER)から当日の分解呼吸量を差し引き、ここに当日の根の枯死量を加えて当日の根のリター量(rlitter)を求める(S314)。
以上のフローを繰り返し行うことにより、芝の生長・衰退の長期予測が可能になる。
表3は、本実施形態の生長モデルでの予測に使用したパラメータなどの値の一例を示したものである。
===芝草群落生長モデルの計算結果と実測値との比較について===
図15A〜図15D及び図16A〜図16Dは、本実施形態の芝草群落生長モデルの計算結果と実測値との比較を示す図である。各図の横軸は時間(日時)であり、図のように2年間分のデータが示されている。
なお、図15Aは、GPP(光合成総生産量)およびNPP(光合成純生産量)の変動を示す図であり、図15Bは、根呼吸・土壌呼吸・葉呼吸・生長呼吸の変動を示す図である。また、図15Cは、根の現存量の変動を示す図であり、図15Dは葉の現存量の変動を示す図である。
また、図16Aは、LAI(葉面積指数)の変動を示す図であり、図16Bは刈り込み(刈取)の積算値を示す図である。また、図16Cは根の生長量の積算値であり、図16Dは、根及び葉の枯死(未分解)量の変動を示す図である。
図15C、図15D及び図16A〜図16Dにおいて、実線は本実施形態の生長モデルの計算結果を示しており、プロットは実測値を示している。このように、芝草群落の生長に関して、本実施形態の生長モデルを用いることによって、年間を通じてほぼ実測に近い値を予測することが可能である。
===芝群落光合成・生長モデルの二次元化について===
前述した芝群落光合成・生長モデルは、地点毎に1次元モデルを実行し、光合成と呼吸による光合成産物量、葉や根などの乾物重量の時間的な変化を計算する仕様になっている。
本実施形態では、ピッチを複数の格子に分け、鉛直1次元というモデルの基本構造は変更せずに、格子点数分の計算を自動で行うようにした。これにより、ピッチ内の平面分布など、2次元モデルに準じた計算ができる。
図17は、本実施形態の予測システムを示すブロック図である。
本実施形態の予測システムは、入力部101と、記憶部102と、予測部103と、出力部104とを備えている。なお、本実施形態の予測システムは、パーソナルコンピュータ又はサーバ装置などのコンピュータを用いて構成されている。
入力部101は、スタジアムのデータ(例えば、ピッチの形状データ、屋根の開閉データ等)や気象データ、芝や土壌のデータなどの各種のデータを入力するものである。
記憶部102には、入力部101による入力データやパラメータ、及び予測部103の演算結果などが記憶される。
予測部103は、入力部101の入力データや、記憶部102に記憶されたパラメータ及びデータを用いて芝の生長に関する演算(予測)を行う。なお、予測部103は、前述した群落光合成モデル(光合成シミュレーション)や生長モデル(生長シミュレーション)を行う。また、本実施形態の予測部103は、スタジアムのピッチ内の複数の格子点について後述する日射量分布の演算や、遮光率分布の演算を行う。
出力部は、予測部103の演算結果(予測結果)を2次元的(平面的)に出力する。
本実施形態の予測部103は、まず、ピッチ内の各格子点における日射量の分布を求め、その日射量の時系列データと遮光率の分布データを前述した群落光合成・生長モデルに適用したシミュレーションを格子点毎に行う。こうして、ピッチ面内の芝の生長を二次元的に予測する。
≪日射計算の手順≫
光合成・生長モデルでは、気温,湿度,降水量とともに、芝層に入射する日射量の時系列が基本的な入力データのひとつである。本実施形態では、これらは30分毎に与えられる。ここでは、ピッチ内の各点における日射量(入射太陽放射エネルギーフラックス密度:単位W m-2)の30分毎の時系列データの作成方法を示す。
任意の日時のピッチ内の日射量の分布は、そのときの太陽高度,天候,および屋根の開閉の状況で決まる。
図18は、本実施形態のスタジアムの屋根の開閉状態の説明図である。本実施形態のスタジアムの屋根は開閉可能であり、図のように開放状態と閉鎖状態と半開状態の3つの形状(状態)がある。
太陽高度は年月日と時刻によって天文学的に与えられる。建物の影響のない地面における日射は、大気上端に入射した太陽放射が地上に達するまでの途上で大気分子や大気中の混濁物質(エアロゾル),水蒸気・二酸化炭素等の吸収気体,雲粒子による吸収・減衰,気体分子,エアロゾル,雲粒子による散乱を受けたもので、吸収や散乱を受けずに地面に達した直達成分と散乱によって地上に達した散乱成分とからなる。日射量の直達成分と散乱成分との分離は、後述するように雲量の関数として与えられる。
ピッチ内芝面における日射は、直接的に入射する日射量(直達成分と散乱成分の和)に、芝面やスタンドにいったん入射した日射がそれらによって反射し、さらに屋根やスタンドなどで再度反射された成分が加わったものである。
本実施形態の予測部103は、日照分布計算プログラムによって、与えられた直達成分,散乱成分をもつ日射に対して、スタジアムの形状による日陰、スタンドや屋根などによる反射を考慮したピッチ内の日射量分布を計算する。
≪全天日射量の直達成分と散乱成分への分離方法について≫
図19は、雲による日射の散乱、減衰の概念図である。
ピッチにそそぐ日射は、直達日射と散乱日射からなる。日向では日射量の多くの割合は直達日射であるが、日陰はすべて散乱成分である。そのため、スタジアム内の日照を計算するには、直達成分と散乱成分との両方を考える必要がある。直達成分は雲で遮られたり、吸収されたりして、途中で減衰しながら地上に達する。散乱日射は雲や大気中の塵などで散乱を受けて地上に達する成分で、同じ雲量でも雲の配置などによって複雑に変化する。日射量を理論的に散乱成分と直達成分に分けるには、きわめて複雑な放射伝達計算を行う必要がある。そのため、ここでは次の方法で日射量を散乱成分と直達成分に分けた。
図20は、全天日射量の直達光成分、散乱光成分への分離の考え方の説明図である。
<直達成分>
直達成分は、太陽の天文学的位置から決まる大気上端での日射量に対して、清浄な大気の分子散乱・水蒸気の吸収による減衰、雲による遮りを次の形の経験式で与える。
ここで、SDは直達日射量(W m-2)、S0は大気による減衰を受ける前の全日射量である。AH2O,Rはそれぞれ、水蒸気による吸収,大気の分子散乱による日射の減衰である。F(c)は、雲による減衰でcは雲量である。F(c)は、直達日射量と雲量とを同時に観測している観測点(例えば近畿地方では潮岬)のデータを利用して経験式として与えた。経験式では、天候を雲量に応じて表4に示すように4つに分類している。表4は、本実施形態における雲量クラスの分類を示している。
本実施形態では、雲量は雲が空を覆っている割合を0〜1の範囲で表し、雲が全くない快晴時は雲量0、完全な曇天では雲量1とする。天気予報でいう晴れは雲量0.3〜0.7の範囲をいう。なお、雲量の与え方には0から10の範囲とするやり方もある。気象庁のデータは雲なしが0、完全曇天は雲量10としている。しかし、数値計算では0〜1とした方が取り扱いがしやすく、多くの数値モデルでも0〜1の範囲として定義している。
<散乱成分>
散乱成分は、全天日射量(現地観測がある場合は現地観測値、それが利用できない場合は最寄り気象台)から直達日射量を差し引いたものを散乱成分とした。
直達日射量と散乱日射量の分離には前述したように雲量が用いられるが、雲量の観測は3時間もしくは6時間であり日射量の観測間隔1時間(現地観測の場合はそれ以下)より長い。雲の出現状況は短い時間間隔で変化し、それにつれて日射量も変化するので状況によっては日射量の散乱成分が負になることがあり得る。そのときは、正の値を与えるように雲量の調整を行った。これは、気象台での雲量が必ずしも現地の雲の状況を適切に表わしていないことによる。
図21は、現地観測された日射量(W m-2に換算)を直達成分と散乱成分に分離した1例を示す図である。図の□はモデル全天日射量を示している。これは、分離された直達成分と散乱成分との和が観測された全天日射量と等しいか否かを確認するために示している。また、分離に用いた雲量(気象台および補正後)も合わせて示す。図の右の縦軸は雲量を示しているが、ここでは便宜上0〜10の範囲で示している。
≪全天日射量の直達成分と散乱成分への分離のベースになる考え方≫
照度計算では、日射を直達成分と散乱成分(天空日射)に分ける必要がある。全天日射に対する直達日射と散乱日射との割合は、雲量、雲の形状(薄い雲,塊状の雲,層状の雲など)、太陽に対する位置によって複雑に変化し、雲量に対して一意に決めることはできない。例えば、観測者から見て北の空に白く輝く雲があり、太陽を含む南側の空が晴れているときは、北側の雲からの反射光のため、観測者が受ける全天日射は快晴時よりも多くなり得る。雲量は少なくても、太陽が隠れる位置に雲があると日射は著しく低下する。
今回評価対象とするスタジアム近隣の気象官署では、地上気象観測データには、総雲量(0〜10)、水平面全天日射のみが含まれる。そのため、スタジアム近隣とは別に、雲量,全天日射,直達日射の3者が同時に、少なくとも日中の9、12、15時の3時刻観測されている測候所を選び、そこにおけるデータに基づいて、全天日射の直達成分と散乱成分への分割の経験的定式化を行った。次に考え方を示す。
地面に到達する全天日射は、
で与えられる。Q0は天文学的に決まる大気外での太陽光に垂直な面の受ける日射エネルギーフラックス(W m-2),cosZは、太陽の天頂角の余弦,agas,rは、それぞれ大気による太陽放射の吸収率,大気分子による反射率である。(64)式は、快晴時の地表面全天日射を表している。吸収と反射とを差し引いたものが地面に到達する。地上で観測される全天日射量は、直達日射成分D,散乱日射成分Sからなる。
ここでは、DとSのうち、直達日射Dを雲量と関係付け、残りを散乱日射と見なす方法をとる。定式化に必要なデータが取得されている潮岬測候所のデータを用い、水平面直達日射量Dを雲量に関係づける式を(66)式のように3次関数の形で近似した。
ここで、
a1=0.925 (0<CcL<0.3), 0.8 (0.4<CcL<0.7), 1.0 (0.8<CcL<0.95), 1.0 (0.95<CcL<1)
a3=0.05 (0<CcL<0.3), 0.1 (0.4<CcL<0.7), 0.1 (0.8<CcL<0.95), 0.03 (0.95<CcL<1)
rdir=0.8,b=0.8 (但し、0.95<CcL<1では、ba1=0.95となるように与えてある。)
(66)式は、雲の存在によって、快晴時の直達成分(QGL_theordir)が雲量に応じて減少するということを表している。散乱日射は、全天日射から直達成分を差し引いて
となる。理論的に計算される快晴時の全天日射に対する直達と散乱の割合はそれぞれ、
となる。これらの分離方法に従うと、モデルで計算される日射量は、
となり、直達成分と散乱成分とを合わせたものは、気象台の実測に等しくなる。
図22は、照度計算モデルで算出された直達日射と、実測された直達日射との比較を示す図である。横軸は雲量クラスであり、縦軸は日射量である。また、図の実線は6月の日中の時間帯(9,12,15時)における、実測から求められた各雲量クラス別の平均直達日射エネルギーフラックス(W m-2)である。図の点線は、同じ日の太陽の天文学的位置に対して、照度計算モデルで採用している計算式から水平面全天日射を計算し、それに(66)式を適用して直達日射を分離したものである。ばらつきは多少あるが、実測にかなりよく追随している。ずれの原因としては、直達日射量が雲量のみではなく大気の混濁度など他の要因によっても変動すること、雲量は観測時刻における値であるのに対し、観測日射量は観測に先行する1時間の積算値であること、などが考えられる。
≪地点(遮光率等)に依存する量の割り当て≫
表5は、前述した群落光合成・生長モデルにおける表2、表3のパラメータのうち遮光率依存性のあるものをまとめたものである。なお、ある地点の遮光率は、その地点における年間の水平面積算日射量を、屋外平地の年間水平積算日射量で除した比率である。すなわち、光を遮光する物体によって、どれだけ光が減っているかを示すものである。
表5の各値は、遮光率の値の範囲でクラス分類される。それぞれの階級の値は、遮光率において対応する現地観測点での観測値である。現地観測点と異なる地点での値は、遮光率によって直線的に補間して求める。各係数は、遮光率の各クラスの下限値と上限値の中間の遮光率において、表3の値になるとし、その間の値は遮光率についての直線補間の与える値とする。遮光率をr,係数をFとすると、補間式は次のようになる。また、図23は、補間式による補間の考え方を示す図である。なお、図23の横軸は遮光率rであり、縦軸は係数Fである。
図24は、毎時の天候(雲量)及び屋根の開閉を考慮したピッチ内の遮光率分布を示す図である。また図25A〜図25Dは、生長モデルのパラメタリゼーションに現れる遮光率依存係数の割り当てを示す図である。なお、図25Aはr_ag、図25BはVcmax25、図25Cはmowlimit、図25Dは量子収率(1−f)をそれぞれ示している。
また、各図において左が南であり、上が西である。また、各図はピッチを示しており、縦軸・横軸の数字は長さ(m)である。
≪2次元化のデータ処置手順≫
図26は、本実施形態の予測システムによる処理の流れを示すフロー図である。
まず、予測部103は、ピッチ内日射分布計算プログラムによって、例えば1月5日から12月25日までの期間について10日毎(1/5, 1/15, 1/25, etc)に、4つの天候区分(表4の雲量による区分)と図18の3つの屋根形状(開,閉,半開)の組み合わせ(12パターン)のすべてについて、30分毎のピッチ内の日射量分布の時系列を計算する(S401)。したがって、10日毎,30分毎のピッチ内日射量分布が12通り計算されることになる。
ステップS401で計算される日射量時系列は10日毎なので、予測部103は、中間の日のデータ(例えば1/6, 1/7のデータなど)を、これらを挟む2つの10日毎の同時刻の日射量(1/6の場合、1/5日と1/15日のデータ)から日数方向に直線補間によって求める。これによって、年間365日分の30分毎のピッチ内の各点の日射量の時系列が、4つの天候区分と3つの屋根形状の組み合わせの全てについて得られたことになる。すなわち、日射量Sは、月,日,時刻(30分毎),屋根パターン(開,閉,半開),天候(1〜4),ピッチ内の格子点位置 i, j の関数として次のように与えられたことになる。

S=S(mm, dd, time, roof, weather, i,j)

ここに示したように、光合成シミュレーションに先立ってこうした日射量の時系列データセットを予め用意しておく(S402)。
ところで、光合成シミュレーションでは、日々の時刻毎に天候が変化し、屋根の開閉運用に対応した日照条件を時系列的な入力条件として用いることになる。本実施形態では、日々の時刻毎の天候の推移については近隣の気象官署の観測データを用い、屋根の開閉については運用記録を用いる。予測部103は、ある日のある時刻の気象庁観測所の雲量から、その雲量が属する天候区分を決め、屋根の運転記録から屋根の状態を決める。前述した日射量時系列データセットのうち天候区分と屋根の状態に対応する日射分布をその時刻の日射量分布とする。この操作を年間の全ての時刻(30分毎)について行うことにより、実際の天候の変化と屋根の開閉運転に対応したピッチ内の全ての格子点 i, j における日射量の年間時系列データを得る(S403)。この日射量の年間時系列データは記憶部102に記憶される。
次に、予測部103は、ピッチ内の各格子点 i, j における遮光率分布を算出する(S404)。そして、その遮光率分布から、光合成モデルおよび生長モデルにおいて遮光率依存のあるパラメータ(表5参照)の計算を行う(S405)。また、予測部103は、各格子点のLMA時系列を計算する。なお、これらのデータは記憶部102に記憶される。
そして、予測部103は、記憶部102に記憶された格子点別のパラメータ値(遮光率依存)及び格子点別のLMA時系列の計算結果(S406)と、ステップS403で算出された日射量時系列データを用いて前述した生長モデル(及び光合成モデル)の計算を全格子点分実行する(S407)。こうして、予測部103は、芝生長関連諸量(日射量分布、遮光率依存のあるパラメータ分布、葉の乾物重量、根の乾物重量)の2次元分布を求め(S408)、出力部104に出力する。
≪スタジアムにおける芝の生長のシミュレーション結果≫
図27A、27B及び図28A、28Bは、本実施形態のシミュレーション結果を示す図である。この例では、2007年の1月1日に全面一様(LAI: 2.5 m2 m-2, 根: 0.5 kg m-2)でスタートし、その後、月別でシミュレーションを行っている。図27A、27Bは、それぞれ1月と8月の日射量分布(月積算日射量)を示している。また、図28A、28Bは、それぞれ1月と8月の生長シミュレーション結果(単位面積当たりの葉と根の質量の分布)を示している。なお、図28Aおよび図28Bにおいて左側の図は、葉についてのシミュレーション結果であり、右側の図は根についてのシミュレーション結果である。
このように、本実施形態の予測システムでは、光を遮るスタンドや屋根のあるスタジアムにおいて、ピッチの芝の生育についての評価を簡易に、且つ、短時間で行うことが可能である。
なお、本実施形態では芝の生長の予測結果に基づいてスタジアムの芝の管理を行うこととするが、これには限られず、例えば、スタジアムの設計の支援や屋根の開閉の運用、芝の生育不良の原因解明にも本実施形態を用いることが可能である。
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
例えば、本実施形態ではスタジアムに開閉式の屋根が設けられているが、これには限られず、例えば、スタンド上に固定屋根が設けられていてもよい。また、スタンドだけが設けられていても良い。このような場合でも、芝の育成についての評価を簡易に、且つ、短時間で行うことができる。ただし、本実施形態のように開閉屋根のあるスタジアムにおいてピッチの芝の生長を予測する場合に、特に効果的である。
また、本実施形態では、日射量は、屋根の開閉状態と雲量とに基づいて算出されている。これにより、ピッチへの日射量を精度良く求めることができるので、予測の精度を高めることができる。
また、本実施形態では、光合成シミュレーションおよび生長シミュレーションパラメータのうち遮光率依存のあるパラメータ(表5参照)を遮光率に応じて変更している。こうすることにより、予測の精度をより高めることができる。
101 入力部、102 記憶部、
103 予測部、104 出力部

Claims (8)

  1. 天然の芝が育成されたグラウンドと、前記グラウンドへの光を遮る物体と、を備えたスタジアムにおける芝の生長の予測システムであって、
    グラウンド面内に定められた複数の格子点における日射量の時系列データと前記物体による光の遮光率の分布データを記憶する記憶部と、
    前記日射量の時系列データ及び前記遮光率の分布データを用いることによって、前記芝についての光合成シミュレーションおよび生長シミュレーションを格子点毎に行ない、前記芝の生長を面的に予測する予測部と、
    を有することを特徴とする予測システム。
  2. 請求項1に記載の予測システムであって、
    前記物体は、前記スタジアムの屋根を含む
    ことを特徴とする予測システム。
  3. 請求項2に記載の予測システムであって、
    前記屋根は開閉可能に設けられている、
    ことを特徴とする予測システム。
  4. 請求項3に記載の予測システムであって、
    前記日射量は、前記屋根の開閉状態と雲量とに基づいて算出される
    ことを特徴とする予測システム。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れかに記載の予測システムであって、
    前記予測部は、前記遮光率に応じて、前記光合成シミュレーションおよび前記生長シミュレーションの所定パラメータを変更する
    ことを特徴とする予測システム。
  6. 天然の芝が育成されたグラウンドと、前記グラウンドへの光を遮る物体と、を備えたスタジアムにおける芝の生長の予測方法であって、
    グラウンド面内に定められた複数の格子点における日射量の時系列データと前記物体による光の遮光率の分布データを記憶する記憶ステップと、
    前記日射量の時系列データ及び前記遮光率の分布データを用いることによって、前記芝についての光合成シミュレーションおよび生長シミュレーションを格子点毎に行ない、前記芝の生長を面的に予測する予測ステップと、
    を有することを特徴とする予測方法。
  7. 請求項6に記載の予測方法であって、
    前記芝は葉部と根部を有し、
    前記生長シミュレーションは、
    前記芝の前記葉部の存在量と前記根部の存在量とに基づいて、前記光合成シミュレーションを行なうことにより光合成量を算出する光合成量算出ステップと、
    前記光合成量に応じた光合成産物が前記葉部と前記根部に分配されるときの前記葉部への分配量と前記根部への分配量をそれぞれ算出する分配量算出ステップと、
    前記光合成産物の前記葉部への分配量に基づいて前記葉部の生長量を算出し、且つ、前記光合成産物の前記根部への分配量に基づいて前記根部の生長量を算出する生長量算出ステップと、
    前記葉部の生長量に基づいて前記葉部の存在量を変更し、且つ、前記根部の生長量に基づいて前記根部の存在量を変更する存在量変更ステップと、
    を有し、或る時点の前記存在量変更ステップの演算結果を、前記或る時点以降の他の時点の前記光合成量算出ステップに用いる、
    ことを特徴とする予測方法。
  8. 請求項6又は請求項7に記載の予測方法であって、
    前記芝は葉部と根部を有し、
    前記光合成シミュレーションは、
    気象データを取得する気象データ取得ステップと、
    前記芝の形状、葉の特性、及び土壌の特性に関する各データを定める芝草環境設定ステップと、
    前記葉部を鉛直方向に複数の層に分け、前記気象データ取得ステップ及び前記芝草環境設定ステップの各データに基づいて、各層の光の放射環境を算出する放射環境算出ステップと、
    各層の葉温及び地面温度が前記放射環境に応じた温度になるときの葉の気孔コンダクタンス、葉面境界層コンダクタンス、顕熱フラックス、潜熱フラックスを層毎に算出する層要素算出ステップと、
    を有し、各層についての前記放射環境算出ステップの算出結果、及び、前記層要素算出ステップの算出結果に基づいて前記光合成量が算出される、
    ことを特徴とする予測方法。
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