JP5589322B2 - 純酸素燃焼ボイラ - Google Patents

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本発明は純酸素燃焼ボイラに関する。
ボイラのような燃焼熱を利用する燃焼炉においては、従来より空気を用いた燃焼方法が一般的に用いられていた。しかし、空気を用いた燃焼の場合には空気中の窒素分による顕熱損失のために熱効率が低くなるという問題があった。
このために、燃焼による熱効率を向上させる一手法として、酸素富化燃焼が考えられている。酸素富化燃焼では空気燃焼に比して相対的に窒素分が減少するために、顕熱損失が低下して熱効率が向上することが分かっている。
また、近年では、純酸素燃焼や排ガス再循環+酸素燃焼が提案されており、この方法によれば、排ガスがすべてCOとなり、CO分離装置を設けることなしにCOを回収することができるため、有効な方法として注目されている。
しかし、上記酸素燃焼においては以下のような問題点がある。
(1)純酸素燃焼を行った場合には、燃焼炉内が高温化されるために、バーナや燃焼炉の焼損が起こる場合がある。又、燃焼温度の上昇によって循環媒体粒子の凝集(アグロメレーション)が発生する問題がある。
(2)排ガス再循環+酸素燃焼は燃焼ガスを増やすことで上記の高温化の問題を解決する一手法であるが、後流の排ガスを燃焼炉に導くためのブロワーが必要となりプロセスの効率低下を招く問題がある。
(3)純酸素燃焼や排ガス再循環+酸素燃焼を行うためには膜分離法や深冷分離法等による酸素製造装置を装備して酸素を製造する必要があるが、いずれの酸素製造装置においても装置コスト・動力コストが掛り、プロセス全体の効率低下、コスト増加を招く問題がある。ただし、近年では技術の進歩によりコストが低減された酸素製造装置が提案されるようになってきており、従って、コスト面での問題が軽減され、CO分離の面からプロセス全体としてのメリットが認められつつある。
従って、上記高温化の問題を解決することができれば、純酸素燃焼法は利用価値の高い有効な方法となり得る。
上記したような酸素燃焼を行う場合における炉内温度の高温化を防止するための先行技術文献としては特許文献1がある。特許文献1では、酸素と燃料のノズルを分離することで局所高温部をなくすようにしている。
特開平08−135912号公報
しかし、前記特許文献1に記載の酸素燃焼による炉内温度均一化方法は、バーナ距離のみで温度分布や着火性などを制御するようにしたものであるため、制御性に劣り、更に、局所高温部を完全に抑制することは困難であるという問題がある。
本発明は、斯かる実情に鑑みてなしたもので、循環流動層ボイラにおいて純酸素燃焼を行うに際し、燃焼炉の燃焼温度が高温になるのを抑制し、且つ安定した運転が行えるようにした純酸素燃焼ボイラを提供しようとするものである。
本発明は、酸素の供給により石炭からなる固体燃料を流動燃焼させて流動媒体を加熱する燃焼炉と、該燃焼炉の上部から取り出した燃焼ガスを導入して流動媒体と排ガスとに分離する分離器と、該分離器からの流動媒体を導入して外部熱交換器により別流体と熱交換することにより抜熱し、別流体との熱交換により冷却した流動媒体を循環流路により再び前記燃焼炉に戻す外部熱交換炉とを備え
前記外部熱交換器で抜熱する容量に応じた固形燃料が燃焼炉に供給され、該固形燃料の供給量に応じた酸素が燃焼炉に供給される純酸素燃焼ボイラであって、
前記外部熱交換器で抜熱する容量に応じた流動媒体の装入量が決定されており、
前記外部熱交換炉により抜熱されて燃焼炉に戻る流動媒体の燃焼炉入口温度は燃焼炉での固体燃料の着火温度である500℃以上に保持され、且つ、前記燃焼炉内部の温度は安全上限温度以下に保持されるように、燃焼炉と外部熱交換炉との間を循環する流動媒体の循環量を空気燃焼の場合よりも増加するように設定して、前記燃焼炉内の固気比を空気燃焼の場合の固気比よりも高くしたことを特徴とする純酸素燃焼ボイラ、に係るものである。
上記純酸素燃焼ボイラにおいて、前記燃焼炉内の固気比が15以上になるように流動媒体の循環量を設定したことは好ましい。
又、上記純酸素燃焼ボイラにおいて、前記燃焼炉内部の安全上限温度1000℃以下とすることができる。
又、上記純酸素燃焼ボイラにおいて、前記分離器が、複数段に備えたサイクロンであることは好ましい。
本発明の純酸素燃焼ボイラによれば、前記燃焼炉内部が安全上限温度以下に保持され、且つ、外部熱交換炉から燃焼炉に戻る流動媒体の温度が燃焼炉での着火温度以上に保持されるように燃焼炉と外部熱交換炉との間を循環する流動媒体の循環量を設定したので、燃焼炉内部が安全上限温度以下に保持されて燃焼炉の安全が図られると共に、燃焼炉に戻る流動媒体の温度が着火温度以上に保持されて燃焼炉での安定燃焼が図られ、よって、純酸素燃焼ボイラの安定した運転が達成できるという優れた効果を奏し得る。
燃焼炉内の固気比が15以上になるように流動媒体の循環量を設定したことにより、燃焼炉での燃焼を確実に行えるようになる。
本発明の純酸素燃焼ボイラの一実施例の概略を示す側面図である。 固気比と燃焼炉入口温度との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
図1は本発明の純酸素燃焼ボイラの一実施例の概略を示す側面図であり、図1中、1は内部にシリカ(SiO)等の流動媒体が装入された燃焼炉であり、該燃焼炉1内下部に備えた散気板2の上部には石炭等からなる固体燃料3が供給されており、一方、前記散気板2の下部には、空気を導入して純酸素を製造する酸素製造装置4からの酸素5が供給されており、酸素5によって前記固体燃料3が流動燃焼することにより流動媒体が加熱されるようになっている。1aは燃焼炉1に備えられた熱回収用の熱交換器(ボイラ)である。燃焼炉1の上部から取り出される燃焼ガス6は分離器7に導入されて流動媒体8と排ガス9とに分離されるようになっている。分離器7で分離された流動媒体8は、外部熱交換炉10(ボイラ)に導入されており、該外部熱交換炉10に備えた外部熱交換器11により流体(水)を加熱するようになっている。外部熱交換炉10で流体を加熱することによって冷却された流動媒体8は、循環流路12を介して再び前記燃焼炉1に戻されるようになっている。
図1の分離器7は、2段のサイクロン7a,7bによって構成した場合を示しており、1段目のサイクロン7aの内圧が上昇されて燃焼ガス6の速度が抑制されることによりサイクロン7a,7bの摩耗が抑えられるようになっている。尚、分離器7は3段以上のサイクロンで構成するようにしてもよい。又、分離器7で流動媒体8が分離された排ガス9は、排熱回収熱交換器13(ボイラ)に導かれて排熱が回収されるようになっている。上記純酸素燃焼ボイラの排熱回収熱交換器13を出た排ガス9は殆どがCOであるため、液化等を行って地中貯留等を行うことができる。
上記純酸素燃焼ボイラにおいて、前記燃焼炉1の内部温度が安全上限温度T1以下に保持され、且つ、外部熱交換炉10から燃焼炉1に戻る流動媒体8の温度T2が燃焼炉1での固体燃料の着火温度以上に保持されるように、燃焼炉1と外部熱交換炉10との間に循環する流動媒体8の循環量を設定する。
ここで、前記燃焼炉1の安全を図るためには燃焼炉内部の温度を1000℃以下に保持することが好ましいため、燃焼炉1の安全上限温度T1は1000℃以下に設定した。ここで、安全上限温度T1を設け、温度がそれ以下になるように運転するのは、循環媒体粒子の凝集(アグロメレーション)の発生を防止するためである。
又、前記外部熱交換炉10から燃焼炉1に戻す流動媒体8の温度は、燃焼炉1内での石炭の着火が達成できる温度に維持することが必要であることから、燃焼炉1に戻す流動媒体8の温度T2は燃焼炉1での石炭(固体燃料)の着火温度である500℃以上を保持するように設定した。
ここで、本発明者らは、燃焼炉1内での固気比[流動媒体の循環量/ガス流量]と、外部熱交換炉10から燃焼炉1に戻る流動媒体8による燃焼炉入口温度(下部温度)との関係、及び石炭の着火温度を示す図2において、従来の空気燃焼の場合Iと、上記本発明の実施例による純酸素燃焼の場合IIとを比較して示した。
従来の空気燃焼による場合Iでの固気比は通常3〜5としているが、固気比が3〜5であっても燃焼炉入口温度が燃焼炉1での固体燃料の着火温度である500℃以上を維持できるために、着火に関して問題が生じることはない。
一方、本発明の実施例による純酸素燃焼の場合においては、流動媒体8の循環量が少ないと、燃焼炉1内での流動媒体8による抜熱が少ないために燃焼炉1の温度が安全上限温度T1以上に上昇してしまい、流動媒体が溶融して固形化するような問題を生じることが懸念されるばかりでなく、燃焼炉1の温度を安全上限温度T1以下にするために、外部熱交換炉10で別流体(水)と熱交換させて多くの仕事を行わせた場合には流動媒体8の燃焼炉入口温度T2が燃焼炉1での固体燃料の着火温度以下に低下してしまい着火できなくなる問題が生じることになる。しかし、図2のIIに示すように、流動媒体8の循環量を増加させて固気比が15以上になるように設定すると、流動媒体8による抜熱によって燃焼炉1内の温度を安全上限温度T1である1000℃以下の例えば950℃に維持することができるようになり、しかも外部熱交換炉10に供給される高温の流動媒体8の量が増加することによって、外部熱交換炉10で所定の仕事を行っても、燃焼炉1に導く流動媒体8の燃焼炉入口温度T2を燃焼炉1での固体燃料の着火温度である500℃以上に保持できるようになる。
上記純酸素燃焼ボイラは、先ず燃焼炉1に供給する石炭からなる固体燃料3の供給量(システム容量)とそれに応じた酸素5の供給量が決定されると共に、流動媒体8の装入量、流動媒体8の粒径等の条件が決定され、このように決定された条件において、前記燃焼炉1内部の安全上限温度T1が1000℃以下であり、前記外部熱交換炉10から燃焼炉1に戻す流動媒体8の温度T2が燃焼炉1での固体燃料の着火温度である500℃以上になるように流動媒体8の循環量を設定する。
上記した流動媒体8の循環量を設定するには、前記燃焼炉1の内部口径Dを設定することが最も有効である。即ち、燃焼炉の内部口径Dを小さく設定すると燃焼炉1内の空塔速度を高められ、これによって流動媒体8の高い循環量が達成されるようになる。また、流動媒体8の循環量を増加するには、燃焼炉1から取り出される燃焼ガス6が流出し易いように燃焼炉1の形状を変更したり、或いは粒径の小さい流動媒体8を用いること等も有効であるため、このような循環量の増加を達成できる方法を組み合わせて用いるようにしてもよい。更に、前記した燃焼炉1内部の安全上限温度T1は、燃焼炉1に備えた熱回収用の熱交換器1a(ボイラ)の負荷(抜熱量)を変更すると微調整することができ、又、前記外部熱交換炉10から燃焼炉1に戻す流動媒体8の温度T2は外部熱交換炉(ボイラ)の負荷(抜熱量)を変更することで微調整することができる。
次に、上記実施例の作動を説明する。
図1に示した純酸素燃焼ボイラにおいては、燃焼炉1内下部の散気板2上に石炭による固体燃料3を供給し、一方、前記散気板2の下部に、酸素製造装置4からの酸素5を供給すると、燃焼炉1内では酸素5により前記固体燃料3が流動燃焼して流動媒体8を加熱する。燃焼炉1の上部から取り出された燃焼ガス6は、分離器7に導かれて流動媒体8と排ガス9とに分離され、分離器7で分離された流動媒体8は、外部熱交換炉10に導入されて該外部熱交換炉10に備えた外部熱交換器11に熱を与えて流体(水)を加熱する。外部熱交換炉10で流体を加熱することにより冷却した流動媒体8は、循環流路12を介して再び前記燃焼炉1に戻される。
このとき、図1の純酸素燃焼ボイラにおいては、燃焼炉1の内部口径Dが所定の空塔速度を維持するように設計されており、この空塔速度によって、前記燃焼炉1内部の温度が安全上限温度T1である1000℃以下で、且つ、前記外部熱交換炉10から燃焼炉1に戻される流動媒体8の温度T2が燃焼炉1での固体燃料の着火温度である500℃以上となるように流動媒体8の循環量が設定されており、更に、燃焼炉1での固気比が15以上になるように設定されている。
従って、前記燃焼炉1内部が安全上限温度T1の1000℃以下に保持されることで燃焼炉1を含む設備の安全が図られ、又、前記外部熱交換炉10から燃焼炉1に戻される流動媒体8の温度T2が燃焼炉1での固体燃料の着火温度である500℃以上に保持されることで燃焼炉1での確実な着火を達成できるようになる。
又、上記したように流動媒体8の循環量が増加することによって、分離器7の摩耗の問題を生じることになるが、2段のサイクロン7a,7bを設けたことにより、1段目のサイクロン7aの内圧が上昇して燃焼ガス6の速度が抑制されることによりサイクロン7a,7bの摩耗を抑えることができる。
上記実施例によれば、前記燃焼炉1内部が安全上限温度T1以下に保持され、且つ、外部熱交換炉10から燃焼炉1に戻る流動媒体8の温度T2が燃焼炉1での固体燃料の着火温度以上に保持されるように燃焼炉1と外部熱交換炉10との間を循環する流動媒体8の循環量を設定するようにしたので、燃焼炉1内部が安全上限温度以下T1に保持されて燃焼炉1の安全が達成できると共に、外部熱交換炉10から燃焼炉1に戻る流動媒体8の温度T2が燃焼炉1での固体燃料の着火温度以上に保持されて燃焼炉1での安定燃焼が達成できるようになり、よって、純酸素燃焼ボイラの安定した運転が図れるようになる。
又、燃焼炉1内の固気比が15以上になるように流動媒体8の循環量を設定したことにより、燃焼炉1での燃焼を確実に行えるようになる。
尚、本発明の純酸素燃焼ボイラは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、石炭以外の燃料を用いる場合にも適用できること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
1 燃焼炉
3 固体燃料
5 酸素
6 燃焼ガス
7 分離器
7a,7b サイクロン
8 流動媒体
9 排ガス
10 外部熱交換炉
12 循環流路
T1 安全上限温度
T2 燃焼炉に戻る流動媒体の温度

Claims (4)

  1. 酸素の供給により石炭からなる固体燃料を流動燃焼させて流動媒体を加熱する燃焼炉と、該燃焼炉の上部から取り出した燃焼ガスを導入して流動媒体と排ガスとに分離する分離器と、該分離器からの流動媒体を導入して外部熱交換器により別流体と熱交換することにより抜熱し、別流体との熱交換により冷却した流動媒体を循環流路により再び前記燃焼炉に戻す外部熱交換炉とを備え
    前記外部熱交換器で抜熱する容量に応じた固形燃料が燃焼炉に供給され、該固形燃料の供給量に応じた酸素が燃焼炉に供給される純酸素燃焼ボイラであって、
    前記外部熱交換器で抜熱する容量に応じた流動媒体の装入量が決定されており、
    前記外部熱交換炉により抜熱されて燃焼炉に戻る流動媒体の燃焼炉入口温度は燃焼炉での固体燃料の着火温度である500℃以上に保持され、且つ、前記燃焼炉内部の温度は安全上限温度以下に保持されるように、燃焼炉と外部熱交換炉との間を循環する流動媒体の循環量を空気燃焼の場合よりも増加するように設定して、前記燃焼炉内の固気比を空気燃焼の場合の固気比よりも高くしたことを特徴とする純酸素燃焼ボイラ。
  2. 前記燃焼炉内の固気比が15以上になるように流動媒体の循環量を設定したことを特徴とする請求項1に記載の純酸素燃焼ボイラ。
  3. 前記燃焼炉内部の安全上限温度1000℃以下としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の純酸素燃焼ボイラ。
  4. 前記分離器は、複数段に備えたサイクロンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の純酸素燃焼ボイラ。
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