JP5586145B2 - 帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents

帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製造方法に関し、特に回転冷却体に密着させて成形する帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製造方法に関する。
一般に、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)等のポリエステル樹脂組成物をフィルム状に成形する場合、ポリエステル樹脂組成物は溶融されてTダイから押し出される。溶融状態の樹脂組成物は金属製の冷却ロール(キャスティングドラム等)に密着されて冷却され、以降の延伸工程を経てフィルム状に製膜される。Tダイから吐出された溶融樹脂シートに静電気を印加し、未固化の溶融樹脂シートに静電荷を析出させて冷却ロール側に密着させながら急冷する製法(静電印加キャスト法)が広く普及している(例えば、特許文献1等参照)。
PET樹脂等のポリエステル樹脂組成物は耐久性に優れていることから、配線基板への転写や被覆用の保護フィルム、または基板や電子部品等の包装材料としても多く用いられている。このような用途のフィルムには、電子部品の静電気による故障予防の観点から、帯電防止性能が付与されていることが多い。ポリエステル樹脂フィルムに帯電防止性能を付与する方法として、製膜途中や製膜後に帯電防止コート剤を塗布する方法や、練り込み式と称される溶融状態の樹脂組成物中へ導電性の添加剤を加える手法が多く行われている。しかしながら、コート剤の塗布はむらを生じやすい。コート剤の耐候性は劣ることから、フィルムの耐久性を下げるおそれがある。
樹脂組成物に帯電防止目的の添加剤を加える手法における根本的な問題点は、前記の帯電防止性能を付与した溶融樹脂シート自体が導電性となることである。すなわち、Tダイから吐出された溶融樹脂シートに静電気を印加しても金属製冷却ロールとの間で通電して溶融樹脂シート上に静電荷が析出せず、金属製冷却ロールに密着しなくなる。この結果、溶融樹脂シートの金属製冷却ロールへの密着性低下を考慮して金属製冷却ロールの回転数を下げざるをえなくなり、フィルムを製膜する生産効率を押し下げる要因となっていた。
特公昭37−6142号公報
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製造に際し、フィルム自体の帯電防止性能を確保しつつ、静電印加キャスト法を適用しフィルム自体の密着不足を改善して安定した製膜を可能とし、しかも製造効率を向上できる帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製造方法を提供する。
すなわち、請求項1の発明は、第1ポリエステル樹脂組成物と第2ポリエステル樹脂組成物のそれぞれを溶融押出しにより吐出しながら積層して少なくとも2層からなる積層体を形成し、電極からの電圧印加により前記積層体を回転冷却体に密着させてフィルム状に成形するポリエステル樹脂フィルムの製造方法であって、前記積層体において前記回転冷却体と密着する側に前記第1ポリエステル樹脂組成物よりなる非帯電防止層を形成すると共に、前記電極と対向する側に前記第2ポリエステル樹脂組成物よりなり練り込み式の帯電防止剤を含有した帯電防止層を形成し、前記非帯電防止層の表面抵抗率が10 15 Ω/sq.以上、かつ前記帯電防止層の表面抵抗率が10 12 Ω/sq.以下を満たすことによって、前記電極を通じた前記積層体側への印加放電により電荷が前記回転冷却体へ通電することは抑制され、前記積層体の前記回転冷却体側に電荷が析出して静電気による密着力が生じ、前記積層体と前記回転冷却体との間の浮きを防いでエアの巻き込みを改善したことを特徴とする帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製造方法に係る。
請求項の発明は、前記積層体の前記非帯電防止層と前記帯電防止層との間に中間層が形成されている請求項1に記載の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製造方法に係る。
請求項1の発明に係る帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製造方法によると、第1ポリエステル樹脂組成物と第2ポリエステル樹脂組成物のそれぞれを溶融押出しにより吐出しながら積層して少なくとも2層からなる積層体を形成し、電極からの電圧印加により前記積層体を回転冷却体に密着させてフィルム状に成形するポリエステル樹脂フィルムの製造方法であって、前記積層体において前記回転冷却体と密着する側に前記第1ポリエステル樹脂組成物よりなる非帯電防止層を形成すると共に、前記電極と対向する側に前記第2ポリエステル樹脂組成物よりなり練り込み式の帯電防止剤を含有した帯電防止層を形成し、前記非帯電防止層の表面抵抗率が10 15 Ω/sq.以上、かつ前記帯電防止層の表面抵抗率が10 12 Ω/sq.以下を満たすことによって、前記電極を通じた前記積層体側への印加放電により電荷が前記回転冷却体へ通電することは抑制され、前記積層体の前記回転冷却体側に電荷が析出して静電気による密着力が生じ、前記積層体と前記回転冷却体との間の浮きを防いでエアの巻き込みを改善したため、帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製造に際し、フィルム自体の機能を確保しつつ、静電印加キャスト法を適用して安定した製膜を可能にして製造効率を向上することができる。
また、フィルム自体の帯電防止性能を確保しつつ、溶融樹脂の積層体の冷却面側に印加放電に伴った電荷を適度に析出させて当該溶融樹脂の積層体を冷却ロールに良好に密着させることができる。
請求項の発明に係る帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製造方法によると、請求項の発明において、前記積層体の前記非帯電防止層と前記帯電防止層との間に中間層が形成されているため、中間層の種類いかんにより、帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの帯電防止性能を維持しつつ、製造原価の削減等の改良が可能となる。
以下添付の図面に従って本発明を説明する。
図1は第1実施例の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの断面図、図2は第2実施例の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの断面図、図3は本発明に係る帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製膜段階の概要図である。
図1の断面模式図に示すとおり、本発明の製造方法により製造される第1実施例の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルム10は、非帯電防止層11と帯電防止層12の2層積層により製膜されたポリエステル樹脂フィルムである。
帯電防止層12を備えることにより、当該ポリエステル樹脂フィルム自体に帯電防止性能を付与することができる。フィルムにおける帯電防止性能は、背景技術にて説明したように、主に電子部品、電子基板等の静電気の帯電を避ける包装用資材に用いられる。同時に後記するように、非帯電防止層11を備えたことにより、電圧印加時の通電を抑制することができる。
帯電防止性ポリエステル樹脂フィルム10において、非帯電防止層と帯電防止層は、請求項2の発明に規定するように、異なる表面抵抗率(表面固有抵抗率)に形成される。その単位はΩ/sq.またはΩ/□と表される。具体的に非帯電防止層11の表面抵抗率は1013Ω/sq.以上、好ましくは1015Ω/sq.以上である。帯電防止層12の表面抵抗率は1012Ω/sq.以下、好ましくは1010Ω/sq.以下である。表面抵抗率の好適な範囲は、後出の実施例参照のとおり、フィルムの帯電防止機能の発現と冷却面側に印加放電に伴った電荷を適度に析出させて冷却ロールとの密着性を維持するためである。参考として、当該フィルム(後述にTダイから吐出された積層体から形成される。)の非帯電防止層及び帯電防止層と回転冷却体との位置対応を示すべく、図中に後出の回転冷却体53、電極55を示した。
この帯電防止性ポリエステル樹脂フィルム、つまり積層体における各構成層の厚さの割合は、前者(非帯電防止層)と後者(帯電防止層)との層厚さは、前者:10/後者:90、ないし、前者:90/後者:10の割合を満たす範囲内(つまり、1:9ないし9:1)、さらには、前者:99/後者:1の割合まで拡張できる。両層の厚さ割合は、帯電防止樹脂フィルムとして要求される帯電防止性能と、印加時の通電抑制効果の両立が可能であり、併せて使用目的も考慮の上、最適な範囲が選択される。
図2に開示する第2実施例の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルム20は、請求項3の発明に規定するように、非帯電防止層11と帯電防止層12との間に中間層21が形成されて複層積層により製膜されたポリエステル樹脂フィルムである。図示では3層形成のフィルムであるが、4層以上にも形成可能である。非帯電防止層、帯電防止層の間に他の樹脂層が加わることにより、帯電防止性ポリエステル樹脂フィルム自体の機能を確保しながら製造原価の削減も可能となる。また、帯電防止性能、ポリエステル樹脂の相溶性に影響を及ぼさない限りポリエステル樹脂以外の樹脂を用いることもでき、帯電防止層に用いる樹脂量の節約等の新たな機能が付与される。
第2実施例の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムにおいても、中間層を除いた非帯電防止層(前者)と帯電防止層(後者)との層厚さは、前者:10/後者:90、ないし、前者:90/後者:10、さらには前者:99/後者:1の割合を満たす範囲内に規定される。なお、当該第2実施例のフィルム(後述のTダイから吐出された積層体から形成される。)においても、非帯電防止層及び帯電防止層と回転冷却体との位置対応を示すべく、図中に後出の回転冷却体53、電極55を示した。
第1実施例及び第2実施例の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムを構成する各種の樹脂、並びに帯電防止剤等を説明する。当該フィルムの基本材料となるポリエステル樹脂組成物には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリメチレンテレフタレート等のポリエステル系の樹脂種が主に用いられる。これらの樹脂を単独で用いるほか、これらの樹脂の共重合体としてもよく、あるいは適宜の混合物とすることもできる。列記のポリエステル樹脂組成物は、図示の非帯電防止層及び帯電防止層の構成材料樹脂となる。
帯電防止剤としては練り込み式のイオン導電性化合物が代表的である。溶融状態の樹脂中への混練性、分散性が良好であるためである。例えば、スルホン酸や有機リン酸のアルカリ金属塩であり、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等である。さらに、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン等の脂肪族アミン化合物、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド等の脂肪族アミド化合物、多価アルコール等も用いられる。他にイオン性液体も帯電防止剤として使用することができる。イオン性液体は、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサゾール、トリアゾール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール等の含窒素の複素環化合物、アンモニウム塩、有機リン化合物等の置換誘導体が挙げられ、例えば、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルキルアリル基、ヘテロ原子を含む直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルキルアリル基があり、これらにハロゲン元素が含まれていることもある。また、カーボンブラック粉、導電性無機物等も用いられる。
列記の帯電防止剤は前記のポリエステル樹脂組成物中に最適量が添加される。そして、添加後の樹脂の表面抵抗率(表面固有抵抗率)を低下させる。結果として、ポリエステル樹脂に帯電防止機能が発現する。
第2実施例の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムのように、非帯電防止層と帯電防止層との間に形成される中間層には、前記の各種ポリエステル樹脂組成物、並びに各種ポリエステル樹脂組成物の再生原料由来の樹脂種も用いることができる。再生原料由来の樹脂種として、例えば、前出の第1実施例の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムを製造する際の二軸延伸後に耳トリミングして生じたフィルムの屑(製膜時の両端部分の製品とはならない部分)を再生原料化することができる。このような樹脂種とすることにより、原料単価を抑制することができる。なお、帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの用途、所望の帯電防止性能、相溶性等を鑑み、中間層に用いる樹脂種、積層量は適切に選択、配合される。
非帯電防止層、帯電防止層、または中間層に用いられる構成材料樹脂には、防曇剤、アンチブロッキング剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、滑剤、紫外線吸収剤等の各種の添加剤等が、必要により添加される。
続いて、図3を用い本発明の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製造方法を説明する。帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムは、図示の製膜装置50により製造される。図示は、テンター逐次二軸延伸装置等の製膜装置の主要部分である。
本発明のフィルムは少なくとも2層からなる積層体として形成されることから、各層の樹脂組成、配合を各々異ならせている。2層の積層体の場合、第1ポリエステル樹脂組成物及び第2ポリエステル樹脂組成物からなる。また、3層の積層体の場合、第1ポリエステル樹脂組成物、中間層の樹脂組成物、及び第2ポリエステル樹脂組成物からなる。むろん、4層以上とする場合には、さらに中間層の樹脂組成物が追加される。
第1ポリエステル樹脂組成物は前記のポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂組成物である。第2ポリエステル樹脂組成物には同じく前記のポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂組成物が用いられ、これにイオン導電性化合物をはじめとする練り込み式の帯電防止剤が添加される。従って、第2ポリエステル樹脂組成物は帯電防止剤を含むことにより表面抵抗率は低下する。このため第2ポリエステル樹脂組成物は帯電防止層となり得る。
はじめに、樹脂溶融部51において前記の積層体10,20を組成する各層の元となる樹脂(事後フィルム状に形成される各層の樹脂組成物)のそれぞれは、溶融され溶融物となる。その後、Tダイ52より所定量ずつ層状に樹脂組成物が吐出され積層体W(溶融樹脂シート)が生じる。この実施例では、積層体Wはすぐに回転冷却体(キャスティングドラム)53に導入され、急冷されてフィルム状に成形される。回転冷却体は、内部に水等が流通、循環される金属製の鏡面加工されたロールである。積層体W(溶融樹脂シート)は静電印加キャスト法により回転冷却体に密着急冷される。
Tダイから吐出された積層体Wを回転冷却体53側に空気の巻き込みを減らして押し当てる必要があるため、静電印加キャスト法において電極55はおよそ+5〜+12kVの電圧で印加され、電極55を通じて走行中の積層体W側への静電印加が行われる。電極の形状は線状、板状、針状等の公知形状からなり、直流電源装置56が接続される。積層体Wにおいて、回転冷却体53と密着する側には第1ポリエステル樹脂組成物よりなる非帯電防止層が形成される(図3では最初に回転冷却体と接する側である。)。同時に、電極55と対向する側(電極と最短距離にある側)には第2ポリエステル樹脂組成物よりなる帯電防止層が形成される。すなわち、前掲の図1、図2によると、回転冷却体側に非帯電防止層11が位置し、電極側に帯電防止層12が位置することになる。そして、この層の順を維持した状態で積層体(溶融樹脂シート)は回転冷却体に向けてTダイから吐出される。
自明ながら、第2ポリエステル樹脂組成物よりなる帯電防止層の導電性(表面抵抗率)の関係より、電極からの静電印加(印加放電)の静電気は当該帯電防止層を通電しやすい。しかし、帯電防止層の後に第1ポリエステル樹脂組成物よりなる非帯電防止層が配されているため、当該非帯電防止層の存在により帯電防止層を伝わった静電気の通電は減少される。つまり、印加放電による電荷が回転冷却体に通電することは抑制され、積層体Wの回転冷却体側に電荷が析出して静電気による密着力が生じる。この結果、Tダイから連続して吐出される積層体の回転冷却体側への密着不足は改善され、回転冷却体の減速運転が不要となり、生産性向上に大きく寄与できる。
回転冷却体53により、冷却を経た積層体は支持ローラ54を経由して、必要に応じ図示しない縦延伸機に導入されてフィルムの長さ方向に延伸され、さらにテンター内に導入される。テンターにて、フィルムの幅方向に延伸された後、必要に応じて熱固定され、帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムが出来上がる。フィルムの製造は、その巻き取り方向はMD(機械方向)、これと直交する方向は横方向TD(幅方向)の2方向であり、逐次延伸としても同時延伸のいずれでもよい。延伸倍率はTD及びMDの両方とも3倍ないし6倍である。完成したフィルムの厚さは、Tダイから吐出された積層体のときよりも1/9ないし1/18にまで薄くなる。
[帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの試作]
実施例1,2、及び比較例1,2の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの試作に際し、次の3種類の樹脂、樹脂X,Y,Rを用いた。
樹脂X:ポリエステル樹脂組成物としてポリエチレンテレフタレートを選択し、同樹脂に平均粒径0.5μmの球状シリカを0.2重量%含有した。
樹脂Y:樹脂Xに帯電防止剤として日鉱石油株式会社製:製品名「アトレーAS1030」を1.0重量%含有した樹脂を用いた。
樹脂R:実施例1として試作したフィルムをいったん再生ペレット化し、これを溶融した樹脂を用いた。
[帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの試作条件]
前記の樹脂Xと樹脂Yについて、下記表1参照のとおり、キャスティングドラム(回転冷却体)と接する側(回転冷却体側の面)に非帯電防止層に用いた例と帯電防止層に用いた例に作り分けて試作した(実施例1,比較例1)。前記の回転冷却体側の面(キャスティングドラム面)の反対側は印加電極面である。実施例1、比較例1の膜厚は双方とも約150μmであり、非帯電防止層は120μm、帯電防止層は30μm、となった。非帯電防止層:帯電防止層=4:1の厚さ割合である。
また、実施例1及び比較例1の積層構造中に樹脂Rを中間層として含むフィルムも試作した(実施例2,比較例2)。実施例2、比較例2の膜厚は双方とも約150μmであり、非帯電防止層は30μm、中間層は90μm、帯電防止層は30μmとなった。このうち、非帯電防止層:帯電防止層=1:1の厚さ割合である。
多層Tダイ成形装置を用いて実施例、比較例の各樹脂X,Y,Rを積層して押し出し、成形した。Tダイ成形装置の押出機の口金部分に線状の電極を配設し、これとキャスティングドラム(回転冷却体)との間に10kVの電圧を印加した。キャスティングドラムの回転を分速60mに設定し、製膜した(前出の図3の製膜装置を参照)。
[試作フィルムの評価]
Tダイ成形装置の押出機から押し出された積層体(溶融樹脂シート)をキャスティングドラム(回転冷却体)に密着させてフィルム状に成形する際、フィルムに通電が生じ、フィルムが静電気を保てなくなると、フィルムとキャスティングドラムとの間に浮きができる。この浮きによりエアの巻き込みが引き起こされる。そこで、エアの巻き込みの多少をもって、静電印加キャスト性の評価とした。エアの巻き込みが無いフィルムの例については良品と評価した(“○”とした。)。エアの巻き込みが一部に生じたフィルムの例については不良品と評価した(“×”とした。)。
[帯電防止性能の評価]
帯電防止性能の評価は、JIS−K−6911に準拠して表面抵抗率(表面固有抵抗率)を測定した。測定機器に、横河・ヒューレットパッカード株式会社製の同心円電極:商品名「16008A」(内側電極50mm径,外側電極70mm径)、同社製の抗抵率計:商品名「4329A」を用いた。23℃、相対湿度50%RHの雰囲気下、前記の同心円電極に測定対象の試料を設置して100Vの電圧を引加し、前期の抗抵率計により表面抵抗率を測定した。測定対象の試料は、樹脂X,Y,Rのそれぞれ、並びに実施例1,2と比較例1,2のフィルムである。
前出の樹脂X,Y,Rそれぞれの表面抵抗率は、各々の樹脂を単体で逐次二軸延伸してフィルムとしたときの表面抵抗率とした。樹脂X:1015Ω/sq.、樹脂Y:1012Ω/sq.、樹脂R:1013Ω/sq.であった。次に、実施例1,2、比較例1,2のフィルムにおける帯電防止層側の表面抵抗率は1012Ω/sq.以下であったため、いずれの帯電防止性能も“○”と評価した。
Figure 0005586145
[結果、結論]
表1の結果から明らかなように、帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムを得るに当たり不可欠な帯電防止層を備えた場合であっても、キャスティングドラム(回転冷却体)と接する側(キャスティングドラム面)に帯電防止性能を有さない樹脂層を形成したことにより、エアの巻き込みを改善することができた。つまり、印加放電に伴い電荷を適度にフィルム上のキャスティングドラム面側に析出させてフィルムを回転冷却体に密着させることができた。
帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムとしての帯電防止性能(表面抵抗率)を維持しつつ、製膜時における積層体(溶融樹脂シート)をキャスティングドラム(回転冷却体)に良好に密着させるための静電気帯電には、キャスティングドラム面側の樹脂層に非帯電防止層のポリエステル樹脂を配し、印加電極面側の樹脂層に帯電防止層のポリエステル樹脂を配することが有効であることを明らかにした。具体的には両ポリエステル樹脂層において、キャスティングドラム面側の表面抵抗率を印加電極面側よりも大きくすることである。特には、非帯電防止層の表面抵抗率は1013Ω/sq.以上、好ましくは1015Ω/sq.以上であり、帯電防止層の表面抵抗率は1012Ω/sq.以下、好ましくは1010Ω/sq.以下であることが、配線基板への転写や被覆用の保護フィルム、または基板や電子部品等の包装材料として好適である。
帯電防止樹脂フィルムにおいて好適な性能を示したフィルムの非帯電防止層(前者)と帯電防止層(後者)との層厚さの比についてみると、前者:1/後者:1、または前者:1/後者:4である。このことから、前者:1/後者:9、ないし、前者:9/後者:1の割合を満たす範囲内(つまり、1:9ないし9:1)であれば、帯電防止樹脂フィルムとして要求される帯電防止性能と、印加時の通電抑制効果の両立可能と考えられる。
中間層となる樹脂層をさらに形成して3層構造の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムとした場合であっても、フィルム表面の各層における表面抵抗率の範囲を満たす限り、印加放電に伴う静電気を適度に当該フィルムの回転冷却体側の面に析出(もしくは分極)させることができ、フィルムを回転冷却体側に密着させることができる。この結果、同様にフィルムとキャスティングドラムとの間に浮きは解消でき、この浮きに伴うエアの巻き込みは改善できた。
3層構造の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムにおいても同様に、Tダイ成形装置の押出機から押し出された積層体(溶融樹脂シート)に対する印加放電によって回転冷却面へ安定した密着を図ることが確認できた。このため、フィルムとしての帯電防止性能を確保し、かつ、中間層の種類いかんにより、3層構造もしくはそれ以上の複層の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの性能向上、製造原価の削減等の改良が可能となる。
第1実施例の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの断面図である。 第2実施例の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの断面図である。 本発明に係る帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製膜段階の概要図である。
10,20 帯電防止性ポリエステル樹脂フィルム
11 非帯電防止層
12 帯電防止層
21 中間層
50 製膜装置
51 樹脂溶融部
52 Tダイ
53 回転冷却体
55 電極

Claims (2)

  1. 第1ポリエステル樹脂組成物と第2ポリエステル樹脂組成物のそれぞれを溶融押出しにより吐出しながら積層して少なくとも2層からなる積層体(10,20)を形成し、電極(55)からの電圧印加により前記積層体を回転冷却体(53)に密着させてフィルム状に成形するポリエステル樹脂フィルムの製造方法であって、
    前記積層体において前記回転冷却体と密着する側に前記第1ポリエステル樹脂組成物よりなる非帯電防止層(11)を形成すると共に、前記電極と対向する側に前記第2ポリエステル樹脂組成物よりなり練り込み式の帯電防止剤を含有した帯電防止層(12)を形成し、
    前記非帯電防止層の表面抵抗率が10 15 Ω/sq.以上、かつ前記帯電防止層の表面抵抗率が10 12 Ω/sq.以下を満たすことによって、
    前記電極を通じた前記積層体側への印加放電により電荷が前記回転冷却体へ通電することは抑制され、前記積層体の前記回転冷却体側に電荷が析出して静電気による密着力が生じ、前記積層体と前記回転冷却体との間の浮きを防いでエアの巻き込みを改善した
    ことを特徴とする帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製造方法。
  2. 前記積層体の前記非帯電防止層と前記帯電防止層との間に中間層(21)が形成されている請求項1に記載の帯電防止性ポリエステル樹脂フィルムの製造方法。
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