JP5586022B2 - 周波数雑音測定装置及び測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光ファイバ通信システム等に有用なレーザ光源の周波数雑音の高精度な測定に適する周波数雑音測定装置及び測定方法に関する。
光ファイバ通信システムの大容量化が進展し、光強度のオン・オフ変調と、光の直接検波を利用する波長多重伝送システムでは、光ファイバ1本当たりの伝送容量がおよそ10Tbit/sに達し、光ファイバ自体の損傷や非線形効果に起因する入力パワーの限界に近づいている。この限界を克服するため、デジタルコヒーレント光通信の研究開発が活発化している。デジタルコヒーレント光通信では、光波の振幅や位相を変調して、1シンボルで多値の情報を送信し、受信側ではコヒーレント検波とデジタル信号処理を利用して、帯域当たりの伝送容量を表す指標であるスペクトル利用効率(bit/s/Hz)を格段に増大することが可能である。
このような高度な変復調方式は、無線通信の分野で広く用いられてきたものであるが、多値変調やコヒーレント検波を利用するため、送受信器に用いるレーザ光源のスペクトル純度に対する要求が厳しくなる。例えば、データレート40Gb/sのデジタルコヒーレント伝送において、符号誤り率10−4を得るのに必要なレーザのスペクトル線幅は、8値PSK(Phase Shift Keying)変調では1.6MHz、16値PSK変調では240kHz、16値AM(Quadrature Amplitude Modulation)変調では120kHz、64値QAM変調では1.2kHzであることが示されている。スペクトル線幅は直観的で、伝送システムの性能に直結する有用な尺度であるが、レーザ光源のスペクトル純度を完全に記述するものではない。スペクトル純度を表す尺度として、スペクトル線幅の他に、周波数雑音のパワースペクトル密度とアラン偏差がしばしば用いられる。パワースペクトル密度とアラン偏差はより高度な尺度として位置づけることができ、周波数雑音の統計的な性質を記述できるため、雑音源を特定する場合に極めて有効である。したがって、デジタルコヒーレント伝送用のレーザ光源を正確に評価するためには、パワースペクトル密度、アラン偏差などの統計的尺度に基づく必要がある。
アラン偏差は時間領域の尺度であり、IEEE(Institute of Electric and Electronics Engineers)の周波数安定度に関する小委員会において、1971年に周波数安定度の尺度として定義された。アラン偏差は、周波数雑音に含まれている白色雑音、フリッカー雑音などの様子を明確にすることができるが、周期的な変動成分は明確に現れにくく、雑音源を特定するのに不向きである場合が多い。一方、パワースペクトル密度は周波数領域の尺度であり、周期的変動成分を明確にできる特徴がある。統計学的側面からは、パワースペクトル密度のほうがアラン偏差よりも基本的な量であり、周波数雑音の定義としては上位に位置づけられている。パワースペクトル密度からアラン偏差への変換は可能であるが、逆の変換は特別な場合にのみ可能である。したがって、レーザ光源の周波数雑音を正確に評価するためには、パワースペクトル密度を測定することが望ましい。
光ファイバ通信に用いられる波長1550nm帯のレーザ光は、光周波数がおよそ193THzであり、このような極めて高い周波数の電磁波を、直接電気信号に変換して処理することは困難である。このため、周波数雑音を測定するためには、光周波数変動を電気的に処理可能な周波数帯の信号に変換することが必要である。透過率や反射率が光周波数に依存する分散媒体にレーザ光を入射し、透過光、または反射光の強度変動から周波数雑音を測定することができる。例えば、図9に示すマッハツェンダー型干渉計においては、干渉計の出力光強度は、入射光の周波数に対して正弦波状の変化を示す。出力光強度が入射光の周波数に対してほぼ線形に変化する部分を利用することにより、光周波数変動を光強度変動に変換して、周波数雑音を測定することが可能である。被測定レーザ光源1の出力を光方向性結合器6aにより2分岐し、光遅延媒体11により一方の光に時間τの遅延を与えた後、光方向性結合器6bにより合流して、光検出器3により受光する。光遅延媒体11としては、空間の光路や光ファイバを利用できる。図9に示すように、マッハツェンダー型干渉計における2つの光路の位相差がπ/2になるように設定すれば、光検出器3の出力には、光周波数変動にほぼ比例する電気信号が現れ、スペクトル解析装置12を用いることにより、周波数雑音のパワースペクトル密度を求めることができる。
また、周波数雑音測定装置として、遅延自己ヘテロダイン法とビート信号の周波数揺らぎ分散測定を組み合わせた周波数雑音測定装置が提案されている(特許文献1参照)。遅延自己ヘテロダイン法は、主として光ファイバ通信に用いられるレーザ光源のスペクトル線幅測定法として、広く用いられている(非特許文献1、特許文献2、3参照)。また、周回型(リング型とも呼ぶ)遅延自己へテロダイン法を利用して、周波数雑音測定を行うことが提案されている(非特許文献2参照)。周回型遅延自己へテロダイン法は、長尺の遅延光ファイバを用いることなく、高分解能のスペクトル線幅測定を行う手法として知られている(非特許文献3、4参照)。
特開平4−80629号公報 特開昭63−157023号公報 特開平3−257336号公報
T.Okoshi他、"Novel method for high resolution measurement of laser output spectrum"、Electron.Lett.,vol.16、no.16、pp.630−631(1980) O.Ishida、"Laser frequency fluctuation measurement employing an optical−fiber circulation loop"、IEEE Photon.Technol.Lett.、vol.4、no.11、pp.1304−1306(1992) H.Tsuchida、"Simple technique for improving the resolution of the delayed self−heterodine method"、Opt.Lett.、vol.15、no.11、pp.640−642(1990) J.W.Dawson他、"An improved delayed self−heterodine interferometer for linewidth measurements"、IEEE Photon.Technol.Lett.、vol.4、no.9、pp.1063−1065(1992)
図9に示した従来の周波数雑音測定装置では、次のような問題がある。まず、図9に示した周波数雑音測定装置を用いて測定されるパワースペクトル密度について、数式を用いて説明する。被測定レーザ光源1の出力光の電界を次式により表す。
(数1)式において、Eは電界の振幅、νは中心周波数、ψ(t)は位相変動を表し、振幅は一定とする。周波数変動は次式により位相変動と関係づけられる。
光検出器3により受光されるマッハツェンダー型干渉計の出力光強度は次式で表すことができる。
(数3)式において、2πντは2つの光路の位相差に対応するので、2πντ=π/2として、さらに時間τの間の位相変化が小さい条件の下で、次式が得られる。
(数4)式は、マッハツェンダー型干渉計の出力光強度が、時刻tと時刻t−τにおける位相差に比例することを示している。(数4)式から直流成分を取り除き、光検出器3の出力信号を次式で表すことができる。
(数5)式において、ξは光強度と光検出器3の感度により決まる定数である。(数5)式により表される信号の自己相関関数RPD(τ)は次式で表すことができる。
(数6)式において、Rψ(τ)は位相変動ψ(t)の自己相関関数である。(数6)式をフーリエ変換してパワースペクトル密度を計算すると、次式が得られる。
(数7)式において、Sψ(f)は位相変動ψ(t)のパワースペクトル密度を表す。(数7)式において、フーリエ周波数fと遅延時間τの積が1に比べて十分に小さい場合、cos(2πfτ)を級数展開により近似して、次式が得られる。
(数8)式において、Sν(f)は周波数変動ν(t)のパワースペクトル密度である。(数8)式は、光検出器3の出力信号のパワースペクトル密度SPD(f)が、周波数変動のパワースペクトル密度Sν(f)に比例することを示している。したがって、光検出器3の出力信号をスペクトル解析することにより、周波数雑音のパワースペクトル密度を求めることができる。(数8)式を導出する過程において、積fτが1に比べて十分に小さい条件を課しているので、パワースペクトル密度はフーリエ周波数が1/τよりも十分に小さい範囲においてのみ有効である。遅延時間τを小さくすることにより、広いフーリエ周波数範囲でパワースペクトル密度を測定することができる。しかしながら、測定されるパワースペクトル密度の値は遅延時間の2乗に比例するので、感度が低下する。すなわち、パワースペクトル密度の測定において、周波数帯域と感度の間にトレードオフの関係が存在する。
以上ではマッハツェンダー型干渉計を用いた光周波数・光強度変換の例を説明したが、ファブリペロー干渉計や原子・分子吸収など、透過率や反射率が周波数依存性を有する媒体であれば、同様の周波数雑音測定が可能である。この方法はレーザの周波数雑音測定に広く利用されているが、以下の問題を有している。
第1の問題は振幅雑音の影響である。(数8)式を導出する過程では、被測定レーザ光源1の振幅を一定としたが、現実のレーザ光源は振幅雑音を有しており、これが分散媒体の出力光強度に現れるため、周波数雑音測定の誤差となる可能性がある。振幅雑音の影響を低減するには、分散媒体の光周波数に対する感度を増大することが必要である。マッハツェンダー干渉計の場合は、遅延時間を大きくすることにより感度を増大できる。
第2の問題は分散媒体における光周波数・光強度変換の校正である。(数8)式が示すように、光検出器3の出力信号のパワースペクトル密度は、被測定レーザ光源1の周波数変動のパワースペクトル密度に比例するが、比例係数は光強度と光検出器3の感度と遅延時間に依存するため、周波数雑音測定に先だって校正する必要がある。被測定レーザ光源1の光周波数を掃引して光検出器3の出力信号を観測すれば、比例係数を校正することができるが、被測定レーザ光源1の掃引時の光周波数変化を正確に知る必要がある。分散媒体として用いる干渉計の物理的な長さから比例係数を見積もることも可能であるが、干渉計の光路を光ファイバやガラスなどで構成する場合は、入射光の波長に対する屈折率も考慮する必要があり、手続きが煩雑である。
第3の問題は分散媒体自体の安定性である。マッハツェンダー型干渉計の場合は2つの光路の位相差をπ/2に設定する必要がある。位相差は入射光の中心周波数と遅延時間、すなわち干渉計の物理的長さに依存する。これらのパラメータは外乱等により容易に変化する可能性があるので、測定時間内に安定に保つことは一般的に困難である。このため図9に示すように、光検出器3の出力信号の一部を光遅延媒体11にフィードバックして、位相差がつねにπ/2になるように制御する必要がある。
このような分散媒体を用いた周波数雑音測定法の問題を解決するため、特許文献1は遅延自己ヘテロダイン法とビート信号の周波数揺らぎ分散測定を組み合わせた周波数雑音測定装置を提案している。
図10に特許文献1で提案されている周波数雑音測定装置を示す。中心周波数がνの被測定レーザ光源1の出力を光方向性結合器6aにより2分岐して、一方は光周波数シフタ7に、他方は光ファイバ8に入射する。光周波数シフタ7によりfの周波数シフトを受けた光と、光ファイバ8により時間τの遅延を受けた光を、光方向性結合器6bにより合流した後、光検出器3により受光して、電気信号に変換する。光検出器3の出力信号のうち、周波数fのビート信号成分を周波数揺らぎ分散測定器13に入力して、アラン偏差の測定を行う。特許文献1の周波数雑音測定装置では、被測定レーザ光源1の周波数雑音をビート信号の周波数揺らぎに変換して検出するが、被測定レーザ光源1のアラン偏差と、ビート信号のアラン偏差を対応づける関係が必要になる。
特許文献1の周波数雑音測定装置では、被測定レーザ光源1の周波数雑音を、次式で表されるような白色、フリッカー、ランダムウォークの3種類の雑音の和としてモデル化している。
(数9)式において、S(f)は規格化周波数雑音のパワースペクトル密度を表し、周波数雑音のパワースペクトル密度Sν(f)と次式により関係づけられる。
また、h、h−1、h−2は定数であり、第1、2、3項はそれぞれ白色、フリッカー、ランダムウォーク雑音の大きさを表す。遅延自己ヘテロダイン法により観測されるビート信号のパワースペクトル密度Sμ(f)は、被測定レーザ光源1のパワースペクトル密度Sν(f)と次式により関係づけられる。
また、被測定レーザ光源1のアラン偏差σν(τ)は、パワースペクトル密度から次式を用いて計算することができる。
ここで、τは積分時間を表す。(数9)式により表される雑音モデルに対するアラン偏差は次式で表すことができる。
特許文献1の周波数雑音測定装置では、ビート信号のアラン偏差σμ(τ)を測定するが、σμ(τ)から被測定レーザ光源1のアラン偏差σν(τ)やパワースペクトル密度Sν(f)を求めることは一般的に困難である。しかしながら、被測定レーザ光源1の周波数雑音が、(数9)式の雑音モデルにより表される場合は、ビート信号のアラン偏差σμ(τ)と被測定レーザ光源1のアラン偏差σν(τ)を、解析的な関係で結びつけることができる。
特許文献1の周波数雑音測定装置では、積分時間τが遅延時間τに比べて十分に小さい領域に着目し、この範囲では両者が次式により関係づけられることを利用している。
すなわち、ビート信号の周波数雑音のアラン偏差σμ(τ)を測定し、(数14)式を用いて被測定レーザ光源1のアラン偏差σν(τ)を求め、(数13)式のアラン偏差と比較することにより、雑音モデルにおける定数h、h−1、h−2の値を決定する。
先に述べたように、非特許文献2では、遅延自己ヘテロダイン法の代わりに、周回型(リング型とも呼ぶ)遅延自己へテロダイン法を利用して、同様の周波数雑音測定を行っている。
特許文献1の周波数雑音測定装置では、次のような利点がある。即ち、光周波数雑音をヘテロダインビート信号の周波数揺らぎに変換して検出するため、被測定レーザ光源1の振幅雑音の影響は受けない。また、周波数揺らぎを直接検出するので、変換に関わる比例係数の校正が不要である。さらに、図10において光周波数シフタ7が配置された光路と、光ファイバ8が配置された光路との位相差を調整することなくビート信号を発生できるので、調整やフィードバック制御の機構が不要である。
以上のように、特許文献1の周波数雑音測定装置を用いることにより、被測定レーザ光源の振幅雑音の影響を排除し、変換に関わる比例係数の校正が不要で、光学系の調整と制御を必要としない周波数雑音測定が可能になる。しかしながら、被測定レーザ光源の周波数雑音を特定の3種類の雑音の和としてモデル化しているため、雑音モデルが適用できないレーザ光源の周波数雑音測定は困難である。また、被測定レーザ光源の雑音特性を事前に知っておく必要があるため、分散媒体による光周波数・強度変換を利用する周波数雑音測定法を補助的に用いることも必要になる。(数9)式は経験的に導かれた発振器雑音モデルに基づくものであり、ある条件の下ですべての形式の発振器の周波数雑音を表すことができるとされているものの、すべてのレーザ光源がこのモデルに従う訳ではない。さらに、(数9)式の雑音モデルには、光学系の振動や商用電源から混入する周期的雑音成分が含まれていない。
また、特許文献1の周波数雑音測定装置では、遅延自己ヘテロダイン法により観測されるビート信号のアラン偏差から、被測定レーザ光源のアラン偏差を求める。2つのアラン偏差が簡単な関係式で結びつけることができる積分時間の範囲は、遅延時間に依存するため、アラン偏差を測定できる積分時間の範囲が著しく制限される。例えば、長さ20kmの光ファイバを用いた場合、遅延時間はおよそ100μsであるが、アラン偏差を測定できる積分時間の範囲は50μs以下に制限される。
また、特許文献1の周波数雑音測定装置では、周波数揺らぎ分散測定器によりアラン偏差の測定を行うが、周波数雑音を正確に評価するためには、パワースペクトル密度を測定することが望ましい。これは、パワースペクトル密度のほうがアラン偏差よりも基本的な量であり、周波数雑音の尺度としては上位に位置づけられているためである。パワースペクトル密度が測定できれば、アラン偏差への変換が可能である。また、アラン偏差には周期的な変動成分は明確に現れにくく、雑音源を特定するのには不向きである。
本発明は、レーザ光源の周波数雑音測定における上記の問題を解決しようとするものであり、遅延自己へテロダイン法によるレーザ光の周波数雑音測定において、特定の雑音モデルの仮定を必要とせず、かつ他の手法による補助的な周波数雑音測定を必要とすることなく、周波数雑音のパワースペクトル密度を測定できる装置及び方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記目的を達成するために、以下の特徴を有するものである。
本発明の装置は、遅延自己ヘテロダイン法による周波数雑音測定装置であって、被測定レーザ光を入力するヘテロダイン干渉計と、該ヘテロダイン干渉計の出力光を受光してヘテロダイン検波を行う光検出器と、該光検出器から出力されるビート信号のスペクトル解析を行うベクトル信号解析装置と、前記ビート信号の周波数変動に対するパワースペクトル密度から被測定レーザ光の周波数雑音のパワースペクトル密度を求める信号処理装置とを備えることを特徴とする。前記ベクトル信号解析装置は、前記ビート信号を復調して周波数変動に対するパワースペクトル密度をフーリエ周波数fの関数として測定し、前記信号処理装置は、該パワースペクトル密度に[2(1−cos(2πfτ))]−1(ただし、τはヘテロダイン干渉計における遅延時間)を乗じて、前記被測定レーザ光の周波数雑音のパワースペクトル密度を求めることが望ましい。また、前記信号処理装置は、前記ベクトル信号解析装置の信号処理部に含まれるようにしてもよい。また、前記ヘテロダイン干渉計の遅延時間を変えて、異なるフーリエ周波数域に対するパワースペクトル密度を取得し、複数の該パワースペクトル密度を結合して、前記被測定レーザ光の周波数雑音を測定することができる。また、具体的には、前記ヘテロダイン干渉計として、マッハツェンダー型干渉計を用い、一方の光路に周波数シフトがfの光周波数シフタ、他方の光路に遅延時間がτの光ファイバを備え、該マッハツェンダー型干渉計の出力光を前記光検出器により受光して検出することにより、前記光検出器が周波数fのビート信号を出力する構造とするとよい。あるいは、前記ヘテロダイン干渉計として、リング型干渉計を用い、該リング型干渉計の光路に周波数シフトがfの光周波数シフタと、遅延時間がτの光ファイバを備え、該リング型干渉計の出力光を前記光検出器により受光して検出することにより、前記光検出器が周波数Nf(但しNは正の整数)のビート信号を出力する構造とするとよい。
本発明の方法は、遅延自己ヘテロダイン法による周波数雑音測定方法であって、被測定レーザ光をヘテロダイン干渉計に入力し、該ヘテロダイン干渉計の出力光を光検出器により受光してヘテロダイン検波を行い、該光検出器から出力されるビート信号をスペクトル解析し、該ビート信号の周波数変動に対するパワースペクトル密度から被測定レーザ光の周波数雑音のパワースペクトル密度を求めることを特徴とする。前記スペクトル解析は、前記ビート信号を復調して周波数変動に対するパワースペクトル密度をフーリエ周波数fの関数として測定するものであり、該パワースペクトル密度に[2(1−cos(2πfτ))]−1(ただし、τはヘテロダイン干渉計における遅延時間)を乗じて、被測定レーザ光の周波数雑音のパワースペクトル密度を求めることが望ましい。また、前記ヘテロダイン干渉計の遅延時間を変えて、異なるフーリエ周波数域に対する被測定レーザ光の周波数雑音のパワースペクトル密度を取得し、複数の該パワースペクトル密度を結合して被測定レーザ光の周波数雑音を得ることができる。
本発明の周波数雑音測定装置及び方法では、遅延自己ヘテロダイン法による周波数雑音測定装置において、被測定レーザ光を入力するヘテロダイン干渉計の出力光を受光してヘテロダイン検波を行う光検出器と、該光検出器から出力されるビート信号のスペクトル解析を行うベクトル信号解析装置と、信号処理装置とを設けたことにより、周波数雑音のパワースペクトル密度を正確に測定することができる。
また、本発明では、ヘテロダイン干渉計により生成されるビート信号のパワースペクトル密度を測定するため、特定の雑音モデルを仮定する必要がない。このため、被測定レーザ光源の雑音特性を事前に把握しておく必要がなく、あらゆるレーザ光源に適用可能である。また、パワースペクトル密度は周波数雑音の尺度として最も基本的な量であるため、雑音源の特定を容易に行うことができ、アラン偏差のような他の尺度への変換も可能である。さらに、周波数変動を直接検出するので、被測定レーザ光源の振幅雑音の影響を排除し、変換に関わる比例係数の校正を不要とし、光学系の調整と制御を必要としない周波数雑音測定が可能になる。
本発明では、ヘテロダイン干渉計の遅延時間を変えて、異なるフーリエ周波数域に対するパワースペクトル密度を取得し、複数の該パワースペクトル密度を結合して、前記被測定レーザ光の周波数雑音を測定することにより、フーリエ周波数fがK/τの近傍の値が欠落するのを改善することができ、広いフーリエ周波数に渡る周波数雑音の測定が可能になった。また、ヘテロダイン干渉計としてマッハツェンダー型干渉計を用いると、光増幅器を用いない簡単な構成で測定ができるという効果がある。また、ヘテロダイン干渉計としてリング型干渉計を用いると、光ファイバの長さを変更することにより、1本の光ファイバで複数の遅延時間を実現することが可能であり、長尺の光ファイバを用いることなく遅延時間を増大できるという効果がある。
本発明に係る周波数雑音測定装置を説明する図である。 第1の実施の形態に係る周波数雑音測定装置においてヘテロダイン干渉計として用いるマッハツェンダー型干渉計を説明する図である。 第2の実施の形態に係る周波数雑音測定装置においてヘテロダイン干渉計として用いるリング型干渉計を説明する図である。 第2の実施の形態に係るフーリエ周波数0−15kHzにおけるビート信号のパワースペクトル密度を表す図である。 図4に示したパワースペクトル密度に(数23)式の補正を施した結果を表す図である。 図5に示したパワースペクトル密度のフーリエ周波数が0から1.6kHzの範囲を拡大して表示した図である。 第2の実施の形態に係る異なる遅延時間に対して測定したパワースペクトル密度を結合して表示した図である。 図7に示したパワースペクトル密度から(数12)式を用いて計算したアラン偏差を表す図である。 従来のマッハツェンダー干渉計による周波数・強度変換を利用した周波数雑音測定装置を説明する図である。 従来の特許文献1の周波数雑音測定装置を表す図である。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明では、ヘテロダイン干渉計と、光検出器と、ベクトル信号解析装置とを用いて、遅延自己ヘテロダイン方によりレーザ光の周波数雑音を測定する。図1は、本発明に係る周波数雑音測定装置を説明する図である。図1に示すように、中心周波数がνの被測定レーザ光源1の出力光を、ヘテロダイン干渉計2に入力する。ヘテロダイン干渉計2の出力光を光検出器3により受光してヘテロダイン検波を行い、ビート信号を出力する。光検出器3の出力信号をベクトル信号解析装置4に入力してスペクトル解析を行い、ビート信号の周波数変動に対するパワースペクトル密度を計算し、信号処理装置5を用いて該パワースペクトル密度から被測定レーザ光源1の周波数雑音のパワースペクトル密度を求める。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態を以下図1及び図2を参照して説明する。第1の実施の形態は、図1の周波数雑音測定装置において、ヘテロダイン干渉計2として、マッハツェンダー型干渉計を用いたものである。図2は、マッハツェンダー型干渉計を説明する図である。被測定レーザ光源から入力した光を光方向性結合器6aにより2分岐し、一方は光周波数シフタ7に、他方は光ファイバ8に入射する。光周波数シフタ7によりfの周波数シフトを受けた光と、光ファイバ8により時間τの遅延を受けた光を、光方向性結合器6bにより合流して出力する。
光周波数シフタとしてしばしば用いられる音響光学変調器においては、音響波の進行方向に対する入射光の角度を調整することにより、出力される回折光の周波数シフトを正(アップシフト)、または負(ダウンシフト)のいずれかを選ぶことができる。周波数雑音測定はシフトの方向には依存しないので、ここではアップシフトの場合を説明する。図2に示すように、マッハツェンダー型干渉計の出力光は、周波数がνと、ν+fの2つのスペクトル成分により構成される。図2のマッハツェンダー型干渉計を、図1に示した周波数雑音測定装置に用いた場合は、光検出器3の出力には周波数fのビート信号が現れる。
以下に、マッハツェンダー型干渉計の場合を例として、光検出器3から出力されるビート信号のパワースペクトル密度について、数式を用いて説明する。後に第2の実施形態として述べるリング型干渉計の場合についても、基本的にマッハツェンダー型干渉計の場合と同様である。
被測定レーザ光源1の出力光の電界を前記(数1)式により表す。図2のマッハツェンダー型干渉計から出力される光の電界は次式により表すことができる。
光検出器3から出力される信号は、次式により表すことができる。
ここで、ξは光検出器3の感度により決まる定数である。(数16)式の括弧内の第1項は直流成分、第2項は周波数fのビート信号に対応する。(数16)式よりビート信号の瞬時周波数は、次式のように求められる。
(数17)の式の第1項は定数であり、光周波数シフタ7により与えられた周波数シフトを表し、第2項は被測定レーザ光源1の周波数雑音に起因する。(数17)式から定数fを差し引いた周波数変動成分をμ(t)により表し、(数2)式により表される位相変動と周波数変動の関係を用いれば、次式が得られる。
ここで、ν(t)は被測定レーザ光源1の周波数変動である。(数18)式はビート信号の周波数変動が、時刻tと時刻t−τにおける被測定レーザ光源1の周波数変動の差であることを示している。
周波数雑音のパワースペクトル密度は、周波数変動の自己相関関数をフーリエ変換することにより計算される。被測定レーザ光源1の周波数変動ν(t)に対する自己相関関数Rν(τ)は次式により表される。
周波数雑音のパワースペクトル密度Sν(f)は次式により表される。
(数18)式により表される周波数変動の、自己相関関数Rμ(τ)は、次式により表すことができる。
(数21)式のフーリエ変換により、ビート信号の周波数変動に対するパワースペクトル密度が次式のように求められる。
(数22)式はビート信号のパワースペクトル密度が、被測定レーザ光源1のパワースペクトル密度に、2[1−cos(2πfτ)]を乗じた値になることを示している。したがって、被測定レーザ光源1のパワースペクトル密度は、測定されたビート信号のパワースペクトル密度から、次式を用いて計算することができる。
このように、パワースペクトル密度は簡単な関係式により補正を行うことができるので、解析的な関係式が得られないアラン偏差の場合に比べて有利である。このため、特定の雑音モデルを仮定する必要がなく、事前に雑音特性を把握しておく必要もない。
(数16)式により表される光検出器3の出力信号から、周波数変動のパワースペクトル密度を測定するためには、出力信号を復調して、(数18)式により表されるビート信号の瞬時周波数を求める必要がある。このためベクトル信号解析装置4は、入力信号に対する周波数復調機能と、パワースペクトル密度を計算するスペクトル解析機能を備えていることが要求される。移動体通信用の測定器として広く利用されているベクトル信号解析装置は、入力信号をデジタル信号に変換した後、デジタル信号処理により復調やスペクトル解析を行う機能を備えているものが多く、本発明を実施するために利用できる。また、ビート信号の周波数変動のパワースペクトル密度から、被測定レーザ光源のパワースペクトル密度を求める計算は、(数23)式に基づいて、信号処理装置5を用いて行う。信号処理装置5による処理は、図1では別装置のように模式的に図示したが、ベクトル信号解析装置4の信号処理部において、ソフトウェア処理によって実行することができる。
以上の説明においては、パワースペクトル密度における信号対雑音比の影響を考慮しなかったが、実際にはベクトル信号解析装置自体が雑音を有しており、測定できるパワースペクトル密度の値に下限がある。ベクトル信号解析装置4の雑音を考慮すると、(数22)式は次式のように書き換えることができる。
ここで、N(f)はベクトル信号解析装置4の雑音のパワースペクトル密度を表し、入力信号との相関は無いものとする。(数24)式における第1項の信号と、第2項の雑音は分離できないため、周波数雑音測定の誤差を生じる。(数23)式の場合と同様にして、被測定レーザ光源1の周波数雑音のパワースペクトル密度を計算すると、次式が得られる。
(数25)式の第2項は、ベクトル信号解析装置4の雑音に起因する測定誤差を表す。
(数24)式からわかるように、フーリエ周波数fがK/τ(但しKは負でない整数、即ち0又は正の整数)に等しい場合は、第2項の雑音のみが測定される。また、フーリエ周波数fがK/τの近傍では、(数24)式の第1項が小さくなり、第2項の雑音が相対的に大きくなるため、誤差が増大する。したがって、フーリエ周波数fがK/τの近傍の値は除外する必要がある。除外するフーリエ周波数の範囲は、入力信号の大きさやベクトル信号解析装置4の雑音に依存するため、これらを考慮して決める必要がある。このように、遅延自己ヘテロダイン法によるパワースペクトル密度の測定においては、フーリエ周波数fがK/τの近傍の値が欠落する。特にK=0の場合は直流近傍に対応するため、低周波数領域の測定が困難になる。これらのことから、フーリエ周波数fがK/τの近傍の値を除外する際の「近傍」とは、測定条件により近傍の範囲が変わるので、明確に定義することは難しいが、フーリエ周波数fがK/τの近傍においてパワースペクトル密度が過大評価された値をとる範囲である。
さらに、被測定レーザ光源1の周波数雑音のパワースペクトル密度を求める際に、フーリエ周波数fがK/τの近傍の値が欠落するのを改善するためには、異なる遅延時間に対して測定したパワースペクトル密度を結合し、広いフーリエ周波数範囲に渡るパワースペクトル密度を取得する方法を採用することが望ましい。パワースペクトル密度を取得できないフーリエ周波数の範囲は、遅延時間に依存するので、異なる遅延時間に対する測定を繰り返すことにより、データが欠落する領域を補間できる。また、低周波数領域の測定は、遅延時間を大きくすればよい。遅延時間を変更するためには、図2に示したヘテロダイン干渉計において、光ファイバ7の長さを変更すればよい。
以上のように、広いフーリエ周波数に渡りパワースペクトル密度の測定が可能である。パワースペクトル密度が測定できれば、(数12)式を用いてアラン偏差への変換を行うことができる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態を以下図1および図3〜図8を参照して説明する。第2の実施の形態は、図1の周波数雑音測定装置において、ヘテロダイン干渉計2として、リング型干渉計を用いたものである。図3は、リング型干渉計を説明する図である。リング型の光路に、光方向性結合器6、光周波数シフタ7、光ファイバ8、光増幅器9、光バンドパスフィルタ10を配置し、被測定レーザ光源から入力した光は、光周波数シフタ7によりfの周波数シフトと、光ファイバ8により時間τの遅延を受けながら、リング型の光路内を周回する。また、周回する光の一部を光方向性結合器6から出力する。リング型の光路をN回(但しNは正の整数)だけ周回した光は、入力した光に対して、Nfの周波数シフトと、Nτの遅延を有することになり、図3に示すように、リング型干渉計の出力光は、周波数がνと、ν+Nfの多数スペクトル成分により構成される。なお、光増幅器9は周回する光が受ける損失を補償するため、光バンドパスフィルタ10は光増幅器9から発生する自然放出光雑音を除去するためのものである。必要とする周回数に応じて、光増幅器9と光バンドパスフィルタ10は省略することができる。図3のリング型干渉計を、図1に示した周波数雑音測定装置に用いた場合は、光検出器3の出力には周波数がNfである複数のビート信号が現れる。
第1の実施の形態であるマッハツェンダー型干渉計に比べて、第2の実施の形態であるリング型干渉計は、長尺の光ファイバを用いなくても大きな遅延時間を実現できることが特徴である。また、光ファイバ8の長さを変えることなく、複数の遅延時間に対するビート信号を同時に出力できる。
また、被測定レーザ光源1の周波数雑音のパワースペクトル密度を求める際に、フーリエ周波数fがK/τの近傍の値が欠落するのを改善するために、異なる遅延時間に対して測定したパワースペクトル密度を結合し、広いフーリエ周波数範囲に渡るパワースペクトル密度を取得する方法を採用することを、第1の実施の形態で述べたが、第2の実施の形態でも同様である。遅延時間を変更するためには、図3に示したヘテロダイン干渉計において、光ファイバ8の長さを変更すればよい。リング型干渉計は1本の光ファイバで複数の遅延時間を実現することが可能であり、長尺の光ファイバを用いることなく遅延時間を増大できるので、マッハツェンダー型干渉計に比べて有利である。
次に第2の実施の形態の装置を用いて行った実施例を説明する。なお、ここでは第2の実施の形態の例を示すが、第1の実施の形態についても同様に実施することができる。
被測定レーザ光源1として、波長1552.52nm、出力40mWのエルビウム添加光ファイバレーザを用いた。ヘテロダイン干渉計2はリング型干渉計を使用し、光方向性結合器6、周波数シフトが100MHzの光周波数シフタ7、光ファイバ8、光増幅器9、透過帯域幅0.9nmの光バンドパスフィルタ10により構成した。ヘテロダイン干渉計2の出力光を応答帯域は1−1800MHzの光検出器3に入力し、光検出器3から出力されるビート信号をベクトル信号解析装置4に入力して、信号復調とスペクトラム解析を行った。ベクトル信号解析装置4は、周波数変換器、AD変換器、デジタル信号処理プロセッサにより構成され、信号解析の帯域幅は36MHzである。ベクトル信号解析装置4により測定したビート信号の周波数変動に対するパワースペクトル密度を元に、ソフトウェア処理により被測定レーザ光源1の周波数雑音のパワースペクトル密度を算出した。
図4は、フーリエ周波数0−15kHzにおけるビート信号のパワースペクトル密度を表す図であり、横軸はフーリエ周波数[kHz]、縦軸は単位周波数当たりのパワー[Hz/Hz]を表している。分解能帯域幅は3Hzであり、64回の平均化処理を行った。光ファイバ8の長さは40kmであり、リング型干渉計を4周回した光から生じる周波数400MHzのビート信号を検出した。これは長さ160kmの遅延に相当し、遅延時間はおよそ0.78msである。(数22)式から予想されるように、ビート信号のパワースペクトル密度は、フーリエ周波数に対して周期的に変化している。パワースペクトル密度が極小になる点は、フーリエ周波数がK/τ(但しKは負でない整数)に相当する。隣り合う極小点の間隔は1.275kHzであり、正確な遅延時間は0.7843msと見積もることができる。特許文献1に記載されているアラン偏差の測定においては、遅延時間を正確に見積もることはできないが、本発明ではパワースペクトル密度を測定することにより、遅延時間を高い精度で測定できる。
図5は図4に示したビート信号のパワースペクトル密度に、(数23)式の補正を施した結果を表す図である。即ち、ビート信号のパワースペクトル密度に、[2(1−cos(2πfτ))]−1を乗じた。フーリエ周波数がK/τの近傍では、パワースペクトル密度がスパイク状に変化していることがわかる。(数25)式が示すように、フーリエ周波数がK/τの近傍でベクトル信号解析装置4の雑音が強調されるためである。図5からも明らかなように、フーリエ周波数がK/τの近傍の値は除外する必要がある。
図6は、図5に示したパワースペクトル密度のフーリエ周波数が0から1.6kHzの範囲を拡大して表示した図である。フーリエ周波数1.275kHzにK=1に対応する鋭いピークが現れている。図6の測定例においては、ベクトル信号解析装置4の分解能帯域幅を小さく設定してあるので、フーリエ周波数1.275kHzを中心として、±7Hzの範囲にあるパワースペクトル密度の値を除外すればよい。この範囲の大きさはパワースペクトル密度が変化する周期の1.1%に相当する。また、計算の都合上、フーリエ周波数0に対するパワースペクトル密度の値は除外してあるが、直流近傍ではスパイク状の成分が明確に現れていない。一般的にレーザの周波数雑音は、低周波域ほど大きくなる傾向があるため、直流近傍においてはベクトル信号解析装置4の雑音の影響を受けにくい。
図7は、異なる遅延時間に対して測定したパワースペクトル密度を結合して表示した図である。フーリエ周波数が10Hzから100kHzまでの範囲を測定するため、長さ160km、10km、1kmの3種類の遅延を利用し、いずれの場合もフーリエ周波数がK/τ数近傍の値を除外した。遅延が160kmの場合は、フーリエ周波数が11.1Hzから1.21kHzまで、遅延が10kmの場合は、フーリエ周波数が1.21kHzから19.3kHzまで、遅延が1kmの場合は、フーリエ周波数が19.3kHzから100kHzまでの範囲の値を採用した。異なる遅延時間に対して測定したパワースペクトル密度を結合しても、データが滑らかに接続されていることがわかる。また、測定されたパワースペクトル密度は、(数9)式により表される単純な雑音モデルでは記述できないことは明らかである。フーリエ周波数25Hz、および50Hzに比較的大きな線スペクトルが現れているが、機械的振動や商用電源からの雑音が原因と考えられる。
図8は図7に示したパワースペクトル密度から、(数12)式を用いて計算したアラン偏差を表す図である。横軸は積分時間[s]を表し、縦軸は周波数変動の大きさであるアラン偏差σν(τ)[Hz]に対応している。フーリエ周波数が10Hzから100kHzまでのパワースペクトル密度に対して、積分時間が10μsから16msまでのアラン偏差を計算することができる。図7に示したパワースペクトル密度を測定する際に用いた最大の遅延時間は0.7843msであり、アラン偏差における積分時間の最大値(16ms)はこれを大きく上回っている。本発明においてはパワースペクトル密度を測定し、(数23)式を用いて厳密な補正を行っているため、遅延時間に制限されないアラン偏差の測定が可能である。
図8に示したアラン偏差において、積分時間が3ms付近に現れているくぼみは、図7のパワースペクトル密度に現れているフーリエ周波数300Hzの線スペクトルに対応している。図7と図8を比較すると、アラン偏差には周期的な変動成分が明確に現れていないことがわかる。したがって、雑音源を特定するためには、パワースペクトル密度を測定するほうが有利である。
以上の実施例では、長さ160km、10km、1kmの3種類の光ファイバを使用して、複数の異なる遅延時間に対するパワースペクトル密度の測定を行ったが、この組み合わせに限定されるものではない。また、ヘテロダイン干渉計の遅延時間は、パワースペクトル密度が極小になるフーリエ周波数から正確に見積もることができるので、事前に光ファイバの長さを正確に知る必要はない。
上記実施の形態等で示した例は、発明を理解しやすくするために記載したものであり、この形態に限定されるものではない。
本発明の装置や方法を周波数雑音測定に利用することより、レーザ光源の周波数雑音のパワースペクトル密度を、広いフーリエ周波数範囲に渡って正確に測定することが可能になる。これにより、デジタルコヒーレント光通信システムに用いられるレーザ光源の精密な評価が可能になり、光通信ネットワークの性能向上に有用である。
1 被測定レーザ光源
2 ヘテロダイン干渉計
3 光検出器
4 ベクトル信号解析装置
5 信号処理装置
6 光方向性結合器
7 光周波数シフタ
8 光ファイバ
9 光増幅器
10 光バンドパスフィルタ
11 光遅延媒体
12 スペクトル解析装置
13 周波数揺らぎ分散測定装置

Claims (9)

  1. 遅延自己ヘテロダイン法による周波数雑音測定装置であって、
    被測定レーザ光を入力するヘテロダイン干渉計と、
    該ヘテロダイン干渉計の出力光を受光してヘテロダイン検波を行う光検出器と、
    該光検出器から出力されるビート信号を復調して周波数変動に対するパワースペクトル密度をフーリエ周波数の関数としてスペクトル解析を行うベクトル信号解析装置と、
    前記ビート信号の周波数変動に対するパワースペクトル密度から被測定レーザ光の周波数雑音のパワースペクトル密度を求める信号処理装置と
    を備えることを特徴とする周波数雑音測定装置。
  2. 記信号処理装置は、前記ビート信号の周波数変動に対するパワースペクトル密度に[2(1−cos(2πfτ))]−1(ただし、fは前記フーリエ周波数、τはヘテロダイン干渉計における遅延時間)を乗じて、前記被測定レーザ光の周波数雑音のパワースペクトル密度を求めることを特徴とする請求項1記載の周波数雑音測定装置。
  3. 前記信号処理装置は、前記ベクトル信号解析装置の信号処理部に含まれることを特徴とする請求項1又は2記載の周波数雑音測定装置。
  4. 前記ヘテロダイン干渉計の遅延時間を変えて、異なるフーリエ周波数域に対するパワースペクトル密度を取得し、複数の該パワースペクトル密度を結合して、前記被測定レーザ光の周波数雑音を測定することを特徴とする請求項2又は3記載の周波数雑音測定装置。
  5. 前記ヘテロダイン干渉計は、マッハツェンダー型干渉計であって、一方の光路に周波数シフトがfの光周波数シフタ、他方の光路に遅延時間がτの光ファイバを備え、該マッハツェンダー型干渉計の出力光を前記光検出器により受光して検出することにより、前記光検出器が周波数fのビート信号を出力することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の周波数雑音測定装置。
  6. 前記ヘテロダイン干渉計は、リング型干渉計であって、該リング型干渉計の光路に周波数シフトがfの光周波数シフタと、遅延時間がτの光ファイバを備え、該リング型干渉計の出力光を前記光検出器により受光して検出することにより、前記光検出器が周波数Nf(但しNは正の整数)のビート信号を出力することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の周波数雑音測定装置。
  7. 遅延自己ヘテロダイン法による周波数雑音測定方法であって、
    被測定レーザ光をヘテロダイン干渉計に入力し、該ヘテロダイン干渉計の出力光を光検出器により受光してヘテロダイン検波を行い、該光検出器から出力されるビート信号を復調して周波数変動に対するパワースペクトル密度をフーリエ周波数の関数としてスペクトル解析し、前記ビート信号の周波数変動に対するパワースペクトル密度から被測定レーザ光の周波数雑音のパワースペクトル密度を求めることを特徴とする周波数雑音測定方法。
  8. 前記ビート信号の周波数変動に対するパワースペクトル密度に[2(1−cos(2πfτ))]−1(ただし、fは前記フーリエ周波数、τはヘテロダイン干渉計における遅延時間)を乗じて、被測定レーザ光の周波数雑音のパワースペクトル密度を求めることを特徴とする請求項7記載の周波数雑音測定方法。
  9. 前記ヘテロダイン干渉計の遅延時間を変えて、異なるフーリエ周波数域に対する被測定レーザ光の周波数雑音のパワースペクトル密度を取得し、複数の該パワースペクトル密度を結合して被測定レーザ光の周波数雑音を得ることを特徴とする請求項8記載の周波数雑音測定方法。
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