JP5584971B2 - 高分子化合物の製造方法 - Google Patents

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本発明は芳香族ジアミン含有高分子化合物およびその製造方法と、該高分子化合物を含有するポリマー組成物、該高分子化合物を用いた有機電界発光素子、該有機電界発光素子を用いた有機ELディスプレイに関するものである。
有機電界発光素子は、その発光効率の高さが重要な要素の1つであるが、該発光効率に関しては、芳香族ジアミン化合物からなる正孔輸送層と、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体からなる発光層とを設けた有機電界発光素子により大幅に改善された。
前記のような正孔輸送層を、湿式成膜法により形成する方法が報告されている。一般に、有機電界発光素子の正孔輸送材料や電子受容性化合物を含む層を、湿式成膜法にて形成することにより、真空蒸着法により形成する場合と比較して、素子の耐熱性や表面平坦性が高められる等の優れた利点が奏するとされている。
例えば、特許文献1では、ガラス転移温度の高い芳香族ジアミン含有高分子化合物を正孔輸送層として用いた有機電界発光素子を湿式成膜法により形成することが報告されている。しかし、ここで用いられる化合物は、水の溶解度の高い極性溶媒やハロゲン系溶媒でないと溶解しないという問題点があった。
また、有機電界発光素子の駆動電圧が上昇する原因は、陽極と正孔輸送層のコンタクトが不十分であると考えられることから、陽極と正孔輸送層との間に正孔輸送性材料と電子受容性化合物とを含有する正孔注入層を設けることにより、陽極と正孔輸送層のコンタクトを向上させ、駆動電圧を低下させる手段が検討されている。その一例として、特許文献2では、芳香族ジアミン含有高分子化合物を含有する1,2−ジクロロエタン溶液を用いて、湿式成膜法の1種であるスピンコート法により正孔注入層を形成する方法が記載されている。
また、特許文献3では、正孔輸送性材料である1,4−フェニレンジアミン含有高分子化合物と、電子受容性化合物であるトリス(4−ブロモフェニル)アンモニウムヘキサクロロアンチモネート(TBPAH)またはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(PPB)とをシクロヘキサノンまたは安息香酸エチルに溶解した溶液を用いて、スピンコート法により正孔注入・輸送層を形成する方法が記載されている。
上記の様に芳香族ジアミン含有高分子化合物を正孔注入・輸送層に使用すると、耐熱性の向上した素子を提供することができる。しかしながら、正孔注入・輸送層の正孔注入・輸送性、また、湿式成膜法に好適な前記芳香族ジアミン含有高分子化合物の溶媒への溶解性については更なる検討が必要であると考えられていた。
そこで、特許文献4では、芳香族ジアミン含有高分子化合物中に含まれる環状二量体などの特定の低分子量成分を低減させることにより、芳香族ジアミン含有高分子化合物の溶媒への溶解性を改良することが提案されている。しかしながら、素子の駆動寿命として、頻用されている初期輝度比50%となるまでの時間に加え、初期輝度比5%減になるまでの時間が重要視される等、有機電界発光素子への要求は高まっており、従来技術より、より改善された駆動寿命を有する素子、そのための材料の発明が待たれていた。
特開平9−188756号公報 特開2000−36390号公報 特開2003−213002号公報 特開2005−209626号公報
本発明は、有機電界発光素子に用いたときに、十分な駆動寿命、とりわけ発光輝度が初期輝度比95%に低下するまでの時間を長くできる芳香族ジアミン含有高分子化合物を提供することを課題とする。
また、本発明は、有機電界発光素子に用いたときに、当該化合物を含む層を厚膜化しても、有機電界発光素子の特性に対する影響が少ない芳香族ジアミン含有高分子化合物を提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、以下の高分子化合物が上記課題を解決できることがわかり、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、富溶媒よりも疎水性の高い溶媒を貧溶媒として用いる再沈殿法を使用して精製することにより、重量平均分子量が34000〜1000000であり、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を得る高分子化合物の製造方法であって、富溶媒としてエーテル系溶媒を用い、貧溶媒としてアルカン系溶媒を用いることを特徴とする高分子化合物の製造方法、に存する。
Figure 0005584971
〔(式中、Ar1〜Ar5は各々独立して、下記置換基群Zから選ばれる分子量400以下の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または下記置換基群Zから選ばれる分子量400以下の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Xは、下記の連結基群X1の中から選ばれる連結基を表す。)
<連結基群X1
Figure 0005584971
(式中、Ar11〜Ar28は、各々独立して、下記置換基群Zから選ばれる分子量400以下の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または下記置換基群Zから選ばれる分子量400以下の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
[置換基群Z]
アルキル基;アルケニル基;アルキニル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルコキシカルボニル基;ジアルキルアミノ基;ジアリールアミノ基;アリールアルキルアミノ基;アシル基;ハロゲン原子;ハロアルキル基;アルキルチオ基;アリールチオ基;シリル基;シロキシ基;芳香族炭化水素環基;芳香族複素環基:
31およびR32は、各々独立して、水素原子、或いは、分子量400以下の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、または芳香族複素環基を表す。)〕
本発明の高分子化合物は、重量平均分子量が比較的大きく、この高分子化合物を用いた有機電界発光素子は、駆動寿命に優れる。
また、本発明の高分子化合物は、この高分子化合物を含む層を厚膜化しても、有機電界発光素子の特性に対する影響が少ない。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定されない。
[高分子化合物]
本発明の高分子化合物は、重量平均分子量が34000〜1000000であり、下記式(1)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする。
Figure 0005584971
〔(式中、Ar1〜Ar5は各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Xは、下記の連結基群X1の中から選ばれる連結基を表す。
<連結基群X
Figure 0005584971
(式中、Ar11〜Ar28は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。R31およびR32は、各々独立して、水素原子または置換基を表す。)
<式(1)で表される繰り返し単位>
式(1)において、Ar1〜Ar5、および、Ar11〜Ar28には、任意の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基が適用可能であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、任意の置換基を有していてもよい。
Ar1〜Ar5、および、Ar11〜Ar28に適用される芳香族炭化水素基を例示するならば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環などの、6員環の単環または2〜5縮合環由来の基が挙げられる。
また、Ar1〜Ar5、および、Ar11〜Ar28に適用される芳香族複素環基を例示するならば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5または6員環の単環または2〜4縮合環由来の基が挙げられる。
また、Ar3〜Ar5およびAr11〜Ar15、Ar17〜Ar20、Ar22〜Ar25、Ar27、Ar28は1種類または2種類以上の芳香族炭化水素基および/または芳香族複素環基を連結して用いることができる。
31、R32には、水素原子または任意の置換基が適用可能であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。前記、適用可能な置換基を例示するならば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが挙げられ、これらの具体例としては、以下の置換基群Zに例示したものが挙げられる。
Ar1〜Ar5およびAr11〜Ar28における芳香族炭化水素基および芳香族複素環基が有してもよい置換基としては、例えば、下記の置換基群Zの1種または2種以上が挙げられる。
[置換基群Z]
メチル基、エチル基等の好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基;
ビニル基等の好ましくは炭素数2〜11、更に好ましくは炭素数2〜5のアルケニル基;
エチニル基等の好ましくは炭素数2〜11、更に好ましくは炭素数2〜5のアルキニル基;
メトキシ基、エトキシ基等の好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の好ましくは炭素数4〜25、更に好ましくは炭素数5〜14のアリールオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の好ましくは炭素数2〜11、更に好ましくは炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の好ましくは炭素数2〜20、更に好ましくは炭素数2〜12のジアルキルアミノ基;
ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の好ましくは炭素数10〜30、更に好ましくは炭素数12〜22のジアリールアミノ基;
フェニルメチルアミノ基等の好ましくは炭素数6〜25、更に好ましくは炭素数7〜17のアリールアルキルアミノ基;
アセチル基、ベンゾイル基等の好ましくは炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜7のアシル基;
フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
トリフルオロメチル基等の好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜4のハロアルキル基;
メチルチオ基、エチルチオ基等の好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキルチオ基;
フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の好ましくは炭素数4〜25、更に好ましくは炭素数5〜14のアリールチオ基;
トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の好ましくは炭素数2〜33、更に好ましくは炭素数3〜26のシリル基;
トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の好ましくは炭素数2〜33、更に好ましくは炭素数3〜26のシロキシ基;
シアノ基;
フェニル基、ナフチル基等の好ましくは炭素数6〜30、更に好ましくは炭素数6〜18の芳香族炭化水素基;
チエニル基、ピリジル基等の好ましくは炭素数3〜28、更に好ましくは炭素数4〜17の芳香族複素環基:
上記各置換基の分子量としては、400以下、中でも250以下程度が好ましい。
溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、Ar1およびAr2としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の基が好ましく、フェニル基(ベンゼン環由来の基)、ナフチル基(ナフタレン環由来の基)がさらに好ましい。
耐熱性、酸化還元電位を含めた正孔注入・輸送性の点から、Ar3〜Ar5としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環由来の基が好ましく、フェニレン基(ベンゼン環由来の基)、ビフェニレン基(ベンゼン環由来の基)、ナフチレン基(ナフタレン環由来の基)がさらに好ましい。
また、本発明の高分子化合物は、正孔注入・輸送性が非常に高いという理由から、上記式(1)は下記式(1−1)であることが好ましく、下記式(1−2)であることがさらに好ましい。
Figure 0005584971
(式中、R1〜R5は、各々独立して置換基を表す。pおよびqは、各々独立して0〜5の整数を表す。r,sおよびtは各々独立して0〜4の整数を表す。Xは式(1)におけるものと同義である。)
上記式(1−1)において、R1〜R5の具体例は、前述のAr1〜Ar5が有していてもよい置換基の例、すなわち上記置換基群Zに例示されたものが該当する。
Figure 0005584971
〔式中、Yは、下記の連結基群X2の中から選ばれる連結基を表す。
<連結基群X2
Figure 0005584971
(式中、Ar11〜Ar17は、上記のAr11〜Ar17と同義である。また、好ましい例も同様である。)〕
以下に、本発明の高分子化合物の繰り返し単位として好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 0005584971
Figure 0005584971
Figure 0005584971
Figure 0005584971
上記具体例のうち、耐熱性、電荷輸送性の点で、好ましくはP−1〜P−11、P−13〜P−18、P−20、P−21、P−23、P−25、P−26の繰り返し単位であり、更に好ましくは、P−1、P−3、P−4、P−6、P−9、P−10の繰り返し単位であり、より好ましくはP−1〜P−11、P−13〜P−18、P−20、P−21、P−23、P−25、P−26の繰り返し単位であり、更に好ましくは、P−1、P−3、P−4、P−6、P−9、P−10の繰り返し単位であり、最も好ましくはP−1、P−4の繰り返し単位である。
式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物は、必要に応じて、2種以上の前記式(1)で表される繰り返し単位を含有している化合物であってもよい。さらに、本発明の高分子化合物は、性能を損なわない範囲で、他の種々の繰り返し単位を含有していてもよい。
<重量平均分子量>
本発明の高分子化合物は、重量平均分子量が34000〜1000000の範囲であり、有機電界発光素子への使用に好適である。高分子化合物の重量平均分子量がこの範囲よりも小さいと、高分子化合物の駆動寿命向上に十分な効果を示さない。高分子化合物の重量平均分子量がこの範囲よりも大きいと成膜性が低下し、均一な膜が得られにくくなる。
この高分子化合物を含む層を、湿式成膜法により形成する場合には、溶解性および耐熱性の点から、その重量平均分子量は特に100000以下程度のものが好ましい。
ここで、湿式成膜法とは、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法等により、材料が溶解または分散した塗布液を塗布して成膜することをいう。
なお、本発明の高分子化合物の重量平均分子量は、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)によって測定される。
SECの測定条件は次の通りである。
カラムは、TSKgel GMHXL(東ソー社製)×2本または同等以上の分離能を示すもの、すなわち、
粒子径:9mm
カラムサイズ:7.8mm内径×30cm長さ×2本
保証理論段数:14000TP/30cm程度
のものを用い、カラム温度は40℃とする。
移動層はテトラヒドロフラン、クロロホルムのうち充填材への吸着のないものを選択し、流量は1.0ml/分とする。インジェクション濃度は0.1重量%とし、インジェクション量は0.10mlとする。検出器としてはRIを用いる。
分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、分子量分布が決定される。なお、SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなる。
<ガラス転移温度、その他の物性>
本発明の高分子化合物のガラス転移温度は、通常90℃以上であり、有機電界発光素子の耐熱性を含めた駆動安定性の点で好ましくは110℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。
また、本発明の高分子化合物が酸化される電位は、通常+0.2〜+1.2Vvs.SCEであり、電荷輸送性の点で、好ましくは+0.4〜+1.0Vvs.SCEである。
また、本発明の高分子化合物のイオン化ポテンシャルは、通常4.5〜5.5eVであり、電荷輸送性の点で、好ましくは4.8〜5.3eVである。
本発明の高分子化合物は、種々の溶媒に対して高い溶解性を有し、正孔注入・輸送性に優れるため、湿式成膜法でも使用出来る電荷輸送材料として電子写真感光体、有機電界発光素子、光電変換素子、有機太陽電池、有機整流素子等に好適に使用できる。本発明の高分子化合物は、それ自体を電荷輸送材料として使用できるが、本発明の高分子化合物と他の化合物等とを含有させて電荷輸送材料としても使用できる。
また、本発明の高分子化合物は、結晶化し難く、高いガラス転移温度を有し、薄膜形成性に優れるため、本発明の高分子化合物を含有する有機電界発光素子は、耐熱性に優れ、長期間安定に駆動(発光)する有機電界発光素子を提供することが可能である。
<低分子量成分面積比>
前記式(1)で表される繰り返し単位を含有する本発明の高分子化合物の溶媒に対する溶解性を良好なものとするために、本発明の高分子化合物は、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定された分子量分布において、分子量分布全体の積分値に対して下記式(2)で表される化合物(以下「化合物(2)」と称す場合がある。)の分子量に対応するピークの積分値(以下、「低分子量成分面積比」という)が3%以下であることが好ましく、溶解性、成膜性、正孔注入・輸送性の点から、低分子量成分面積比はさらに1.5%以下、特に0.7%以下、とりわけ0.3%以下であることが好ましく、0.001%以上であることが好ましい。低分子量成分面積比が上記上限よりも大きいと、十分な溶媒溶解性を得ることができない。
Figure 0005584971
(式中、Ar1〜Ar5およびXは、式(1)におけるものと同義である。また、好ましい例も同様である。)
化合物(2)は、前記式(1)で表される繰り返し単位を含有する本発明の高分子化合物の製造過程で通常副生する環状二量体である。通常、後述する本発明の高分子化合物の合成反応で高分子化合物を合成した後、精製等によって副生する上記環状二量体等の低分子量成分量を低減する前の低分子量面積比は、4〜7%であり、条件によっては、15%程度までの大きさとなることがある。
なお、化合物(2)の分子量に対応するピークとは、化合物(2)を示すピークだけでなく、化合物(2)と同じ位置に現れる化合物のピークも含めたものを意味する。化合物(2)のピークと同じ位置にピークが現れる化合物としては、例えば、前記式(2)で表される環状二量体の他、該環状二量体が開環した様な鎖状二量体など(異なる2種の式(1)で表される繰り返し単位が連結して(即ち、共重合体)式(2)の構造を取る環状二量体およびその鎖状二量体も含まれる。)が挙げられる。但し、通常は実質的に前記式(2)で表される環状二量体と予想される。
本発明の高分子化合物は、前述の通り、前記式(1)が前記式(1−1)である場合が好ましく、前記式(1−2)である場合がさらに好ましいが、その場合、上記化合物(2)は下記式(2−1)で表される化合物であることが好ましく、さらには下記式(2−2)で表される化合物であることがさらに好ましい。
Figure 0005584971
(式中、R1〜R5、およびX、p、q、r、s、tは、式(1−1)におけるものと同義である。また、好ましい例も同様である。)
Figure 0005584971
(式中、Yは式(1−2)におけるものと同義である。また、好ましい例も同様である。)
低分子量成分面積比の算出のためのSEC測定条件は、前記重量平均分子量の測定方法と同様である。
前記式(1)で表される繰り返し単位を含有する本発明の高分子化合物のSEC測定では、測定開始から18分〜19分程度に化合物(2)の分子量に対応するピークが観測される。化合物(2)の分子量に対応する成分が溶出した後、検出器の示す屈折率が一定となり、移動層に用いる溶媒の屈折率とほぼ等しくなった溶出時間をピークエンドとする。このピークエンドの溶出時間を分子量に換算すると、logM=2.4〜2.8程度となる。
ここで、低分子量成分面積比とは、上記の方法によって決定された分子量分布において、化合物(2)の分子量に対応するピークのピークトップより低分子量側の積分値(面積A)を2倍した値を分子量分布全体の積分値(面積B)で割った値である。
即ち、
低分子量成分面積比=2×(面積A)/(面積B)
で表され、百分率で表すと、
低分子量成分面積比(%)=2×(面積A)/(面積B)×100
となる。
尚、化合物(2)の分子量は、当該高分子化合物に含まれる式(1)で表される繰り返し単位の中から実際に選択される繰り返し単位に応じて算出される。SEC測定による分子量分布曲線においては、その分子量値に対応するピークが観測される。重合条件によって置換基の一部が反応したりして、若干の分子量のシフトが見られることもあるが、その場合でも分子量変動範囲は±50以下程度である。
[高分子化合物の製造方法]
<前記式(1)で表される繰り返し単位を含有する本発明の高分子化合物の合成方法>
本発明の高分子化合物は、例えば、下記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物と下記式(6)で表される二ハロゲン化物を、炭酸カリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下で反応させることによって合成される。
Figure 0005584971
(式(5),(6),(1)中、Ar1〜Ar5、Xは式(1)におけると同義であり、X’はフッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表す。)
一般に、上記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物と上記式(6)で表される二ハロゲン化物を反応させることによって、前記式(1)で表される繰り返し単位が繰り返される構造を有する高分子化合物が生成する。
このようにして、前記式(1)で表される繰り返し単位を含有する本発明の高分子化合物を合成するに当たり、重量平均分子量が34000〜1000000となるような比較的高分子量の高分子化合物を製造するには、温度と反応時間を調整し、SEC測定にて重合反応の進行を追跡しながら、重合反応を実施する。通常、重合温度を高くすればより大きい分子量の高分子化合物が得られるし、また、反応時間を長くすればより大きい分子量の高分子化合物が得られる。
さらに、本発明の高分子化合物を得るために、下記のような精製を行うことが好ましい。
(1) 高分子化合物の粗組成物を、該組成物をある程度溶解する溶媒を用いて懸濁洗浄する方法
(2) 高分子化合物の粗組成物を、その粗組成物を溶解しやすい溶媒すなわち富溶媒に溶解させ、その溶液に該粗組成物を溶解しにくい溶媒すなわち貧溶媒を加えるか、上記粗組成物の溶液を貧溶媒に加える等して生成する沈殿と液相とを、濾過やデカント等の操作によって分別する再沈殿法
(3) 富溶媒と貧溶媒を混合した溶媒で高分子化合物の粗組成物を溶解したのち、富溶媒を蒸留等の操作によって除き、貧溶媒の濃度上昇に伴って生成する沈殿と液相とを分別する再沈殿法
(4) 高分子化合物の粗組成物を高温においては溶解するが低温においては溶解しにくい溶媒を用いて、該粗組成物を然るべく高温で溶解して得られた溶液の温度を下げることによって生成する沈殿と液相とを分別する再沈殿法
上記精製操作における溶媒、富溶媒、貧溶媒は、それぞれ1種類でもよいし複数の溶媒が混合されて用いられてもよい。
即ち、前記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子量成分と、化合物(2)等の低分子量成分とでは、低分子量成分の方が溶媒に対する溶解性は低いにもかかわらず、低分子量成分の方が析出速度は遅いために、再沈殿を行った後、ある一定時間内に液層を分離することによって、低分子量成分を効率よく除くことができる。
中でも再沈殿法は、被精製物、すなわち高分子化合物と不純物などの成分とが共に溶解している溶液を、沈殿剤となる溶媒と混合することによって、高分子化合物を主に析出させ、不純物などの成分が析出する前に液層を取り除く方法である。被精製物を溶解する溶媒(富溶媒)および沈殿剤として用いる溶媒(貧溶媒)としては、任意の溶媒を用いることができるが、被精製物の溶解性、析出する高分子化合物の形状、濾過性等の操作性の点で以下に挙げる溶媒が好ましい。また、特に貧溶媒として富溶媒よりも疎水性の高い溶媒を用いることが好ましい。ここで疎水性が高いとは、極性が低いことを意味し、水に混ざらない有機溶媒と水との間の分配係数で比較される。分配係数が大きいほど疎水性が高い。
富溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、γ−ブトロラクトン、安息香酸メチル等のエステル系溶媒、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、ベンゼン、キシレン、ピリジン等の芳香族系溶媒が好ましく、ハロゲン系溶媒であるクロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、エーテル系溶媒であるテトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルが、少量の溶媒で本発明に係る被精製物を溶解するため操作性の点でより好ましく、テトラヒドロフランがさらに好ましい。
一方、貧溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、ヘキサン、ヘプタン等のアルカン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒が好ましく、アルコール系溶媒であるメタノール、エタノール、ケトン系溶媒であるアセトン、メチルエチルケトン、エステル系溶媒である酢酸エチル、アルカン系溶媒であるヘキサン、ヘプタンが富溶媒よりも疎水性が高く精製の効率が高い点、適度な蒸気圧を有するため操作性の点でより好ましく、アルカン系溶媒であるヘキサン、ヘプタンがさらに好ましい。
すなわち、本発明では、エーテル系溶媒および/またはアルカン系溶媒を用いることが低分子量成分の析出速度および操作性の点で好ましく、更に好ましくは、前記富溶媒として、エーテル系溶媒、前記貧溶媒として、アルカン系溶媒を使用する。
本発明の高分子化合物の製造法においては、再沈殿を行った後、低分子量成分が析出する前に液層(上澄み液)を取り除くことが好ましい。具体的には、被精製物である、少なくとも高分子化合物と低分子量成分とが溶解している溶液と沈殿剤となる貧溶媒とを混合して混合物とした時点から、すなわち、溶液を敷き液に添加し終わった後、60分以内に液層を除去することが好ましく、45分以内に除去することがより好ましく、1分以降、30分以内に除去することがさらに好ましい。
[ポリマー組成物]
本発明のポリマー組成物は、上記本発明の高分子化合物および後述の電子受容性化合物を含有することを特徴とし、好ましくは有機電界発光素子に用いられる。また、本発明のポリマー組成物は、さらに溶媒を含有させ、本発明の高分子化合物や電子受容性化合物などを、溶媒に溶解ないし分散させた組成物として、湿式成膜に用いることが好ましい。
なお、本発明のポリマー組成物には、本発明の高分子化合物の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、前述した本発明の化合物以外の高分子化合物を含有しても良い。また、電子受容性化合物についても同様に1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。また、本発明のポリマー組成物は更に後述の正孔輸送材料の1種または2種以上を含んでいてもよい。
<電子受容性化合物>
本発明のポリマー組成物に用いられる電子受容性化合物とは、酸化力を有し、本発明の高分子化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましい。電子受容性化合物の例としては、例えば、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等の有機基の置換したオニウム塩;塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物;トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる化合物;等が挙げられる。
オニウム塩としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられ、その好適例も同様であるが、特に好ましくは下記式(3)で表される化合物である。
Figure 0005584971
芳香族ホウ素化合物としては、下記式(7)に示したホウ素化合物が挙げられる。式(7)で表されるホウ素化合物は、ルイス酸であることが好ましい。また、ホウ素化合物の電子親和力は、通常4eV以上、好ましくは5eV以上である。
Figure 0005584971
式(7)において、好ましくは、Ar7〜Ar9は、各々独立に、置換基を有することがあるフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等の5または6員環の単環、またはこれらが2〜3個縮合および/または直接結合してなる芳香族炭化水素基;或いは置換基を有することがあるチエニル基、ピリジル基、トリアジル基、ピラジル基、キノキサリル基等の5または6員環の単環、またはこれらが2〜3個縮合および/または直接結合してなる芳香族複素環基を表す。
Ar7〜Ar9の芳香族炭化水素基および芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基等のアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、アセチル基等のアシル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基、シアノ基等が挙げられる。
Ar7〜Ar9の芳香族炭化水素基および芳香族複素環基が有していてもよい置換基は、Ar7〜Ar9の少なくとも1つが、ハメット定数(σmおよび/またはσp)が正の値を示すような置換基となるようなものであることが好ましく、Ar7〜Ar9が、いずれもハメット定数(σmおよび/またはσp)が正の値を示す置換基となるような置換基を有することが特に好ましい。このような、電子吸引性の置換基を有することにより、式(7)で表される化合物の電子受容性が向上する。特に、Ar7〜Ar9はいずれも、ハロゲン原子で置換された芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であることがさらに好ましい。
式(7)で表されるホウ素化合物の好ましい具体例(1〜29)を以下に示すが、これらに限定するものではない。
Figure 0005584971
Figure 0005584971
Figure 0005584971
これらの中でも以下の化合物が好ましい。
Figure 0005584971
ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる化合物の具体例として、以下に示す化合物が挙げられる。
Figure 0005584971
本発明のポリマー組成物に用いられる電子受容性化合物としては、これら各種化合物の中でも、電子受容性、耐熱性、溶解性の点で、前記式(3)で表される化合物が特に好ましい。
本発明のポリマー組成物において、電子受容性化合物の本発明の高分子化合物に対する含有割合は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上である。また、通常100重量%以下、好ましくは40重量%以下である。この範囲よりも電子受容性化合物が多いと成膜性が下がり、少ないと正孔注入性が低くなる傾向がある。
<溶媒>
溶媒としては、本発明の高分子化合物を、通常0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する溶媒であることが好ましい。また、電子受容性化合物を0.005重量%以上溶解することが好ましく、0.05重量%以上溶解することがより好ましく、0.5重量%以上溶解することがさらに好ましい。
溶媒として具体的には、エーテル系溶媒およびエステル系溶媒が挙げられる。より具体的には、エーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒としてもよい。
これらの溶媒の組成物中の濃度は、通常、10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50%重量以上である。なお、溶媒として、前述した溶媒以外にも、必要に応じて、各種の他の溶媒を含んでいてもよい。このような他の溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。また、レベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
電子受容性化合物、および本発明の高分子化合物などの、正孔輸送性材料と電子受容性化合物の混合から生じる正孔注入・輸送性材料のカチオンラジカルを溶解する能力が高いことから、溶媒としてはエーテル系溶媒およびエステル系溶媒とを混合して用いることが好ましい。
なお、カチオンラジカルを失活させる失活物質またはこのような失活物質を発生させる溶媒としては、例えば、エチルアルコール等のアルコール系溶媒;ベンズアルデヒド等のアルデヒド系溶媒;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のα−位に水素原子を有するケトン系溶媒が挙げられる。
また、本発明の高分子化合物などの正孔輸送性材料、電子受容性化合物、それらの混合から生じる正孔輸送性材料のカチオンラジカルを失活させる失活物質またはこのような失活物質を発生させる化合物として、プロトン酸およびハロゲン系溶媒が挙げられる。具体的には、プロトン酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、乳酸等の有機酸が挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、例えば、塩素溶媒、含臭素溶媒、含ヨウ素溶媒等が挙げられる。
本発明のポリマー組成物を用いて、湿式成膜法にて層を形成する場合、本発明のポリマー組成物溶液中に有機酸やハロゲン系溶媒が含まれていると、次のようなことがあり、好ましくない。例えば、有機酸は、正孔注入・輸送性部位と反応し、アンモニウム塩に変質させてしまうため、得られた層の正孔注入・輸送性を低下させる。また、ハロゲン系溶媒が含まれている場合、これらのハロゲン系溶媒には、これに対応する酸が混入している場合が多く、この酸が上記の有機酸と同様に、正孔注入・輸送性部位を変質させるため、やはり得られた層の正孔注入・輸送性を低下させる。また、ハロゲン化物は環境負荷が大きい点でも、混入することは好ましくない。
なお、有機電界発光素子は、多数の有機化合物からなる層を積層して形成するため、各層がいずれも均一な層であることが要求される。湿式成膜法で層形成する場合、層形成用の溶液(組成物)に水分が混入することにより、塗膜に水分が混入して膜の均一性が損なわれるため、溶液中の水分含有量はできるだけ少ない方が好ましい。
具体的には、本発明のポリマー組成物に含まれる水分量は、1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下である。
また、一般に、有機電界発光素子は、陰極等の水分により著しく劣化する材料が多く使用されているため、素子の劣化の観点からも、水分の存在は好ましくない。組成物中の水分量を低減する方法としては、例えば、窒素ガスシール、乾燥剤の使用、溶媒を予め脱水する、水の溶解度が低い溶媒を使用する等が挙げられる。なかでも、水の溶解度が低い溶媒を使用する場合は、塗布工程中に、溶液塗膜が大気中の水分を吸収して白化する現象を防ぐことができるため好ましい。
この様な観点からは、本発明のポリマー組成物は、例えば、25℃における水の溶解度が1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下である溶媒を、組成物中に10重量%以上含有することが好ましい。なお、溶解度条件を満たす溶媒が30重量%以上であればより好ましく、50重量%以上であれば特に好ましい。
<正孔輸送材料>
本発明のポリマー組成物は、さらに正孔輸送材料を含有していてもよい。
正孔輸送材料としては、4.5eV〜5.5eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が電荷輸送性の点で好ましく、例えば、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体またはポルフィリン誘導体、ジアリールアミノ基を有する8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、オリゴチオフェン誘導体等が挙げられる。
例えば、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン等の3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン化合物(特開昭59−194393号公報);4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族アミン(特開平5−234681号公報);トリフェニルベンゼンの誘導体でスターバースト構造を有する芳香族トリアミン(米国特許第4,923,774号);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族ジアミン(米国特許第4,764,625号);α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−p−キシレン(特開平3−269084号公報);分子全体として立体的に非対称なトリフェニルアミン誘導体(特開平4−129271号公報);ピレニル基に芳香族ジアミノ基が複数個置換した化合物(特開平4−175395号公報);エチレン基で3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン(特開平4−264189号公報);スチリル構造を有する芳香族ジアミン(特開平4−290851号公報);チオフェン基で芳香族3級アミンユニットを連結したもの(特開平4−304466号公報);スターバースト型芳香族トリアミン(特開平4−308688号公報);ベンジルフェニル化合物(特開平4−364153号公報);フルオレン基で3級アミンを連結したもの(特開平5−25473号公報);トリアミン化合物(特開平5−239455号公報);ビスジピリジルアミノビフェニル(特開平5−320634号公報);N,N,N−トリフェニルアミン誘導体(特開平6−1972号公報);フェノキサジン構造を有する芳香族ジアミン(特開平7−138562号公報);ジアミノフェニルフェナントリジン誘導体(特開平7−252474号公報);ヒドラゾン化合物(特開平2−311591号公報);シラザン化合物(米国特許第4,950,950号公報);シラナミン誘導体(特開平6−49079号公報);ホスファミン誘導体(特開平6−25659号公報);キナクリドン化合物等が挙げられる。これらの化合物のうち、1種または必要に応じて2種以上を本発明の化合物に混合して用いてもよい。
本発明のポリマー組成物に混合して用いてもよいフタロシアニン誘導体またはポルフィリン誘導体の好ましい具体例としては、例えば、ポルフィリン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリンコバルト(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン銅(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン亜鉛(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリンバナジウム(IV)オキシド、5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィリン29H,31H−フタロシアニン銅(II)フタロシアニン亜鉛(II)フタロシアニンチタンフタロシアニンオキシドマグネシウムフタロシアニン鉛フタロシアニン銅(II)、4,4’,4’’,4’’’−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン等が挙げられる。
本発明のポリマー組成物に混合して用いてもよいジアリールアミノ基を有する8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体とは、中心金属がアルカリ金属、アルカリ土類金属、Sc,Y,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Cd、Al、Ga,In,Si,Ge,Sn,Sm、Eu、Tbのいずれかから選ばれ、配位子である8−ヒドロキシキノリンはジアリールアミノ基を置換基として1つ以上有するが、ジアリールアミノ基以外に任意の置換基を有することがある。
その他、本発明のポリマー組成物に混合して用いてもよい正孔輸送材料として使用するオリゴチオフェン誘導体としては、例えば、α−セキシチオフェン等が挙げられる。
なお、これらの正孔輸送材料の分子量は、通常2000未満、好ましくは1800未満、より好ましくは1200未満、但し、通常500以上、好ましくは700以上である。
本発明のポリマー組成物が正孔輸送材料を含む場合、正孔輸送材料の本発明の高分子化合物に対する含有割合は、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上である。また、通常95重量%以下、好ましくは80重量%以下である。この範囲よりも正孔輸送材料が多いと得られる膜の膜質が脆くなる場合があり、少ないと電圧が上昇したり、膜の平滑性が劣る場合がある。
[有機電界発光素子]
本発明の有機電界発光素子は、本発明の高分子化合物を含有する層、ないしは、本発明のポリマー組成物を用いて形成された層を有することを特徴とする。
以下、本発明の有機電界発光素子の構成について説明する。
本発明の有機電界発光素子は、第1の電極と、本発明の高分子化合物または本発明のポリマー組成物を用いて形成された層と、第2の電極とを、この順に有して成る。本発明に係る有機電界発光素子は、第1の電極と第2の電極との間に層を一層のみ有していてもよく、二層以上有していてもよい。第1の電極と第2の電極との間の層は湿式成膜法で形成されても、真空蒸着法で形成されていてもよい。
第1の電極と第2の電極との間の層の例としては、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、電子阻止層などの層が挙げられる。本発明の高分子化合物または本発明のポリマー組成物を用いて形成された層は、通常、正孔注入層として用いられるが、他の層であってもよい。
本発明の有機電界発光素子は、通常は基板を備え、当該基板上に第1の電極が形成され、その上に上述の各層が積層された積層型の構成を有するものである。ここで、第1の電極、および第2の電極は、何れか一方が陽極であり、他方が陰極である。以下、第1の電極が陽極、第2の電極が陰極である場合について、基板側から積層される順に説明する。
図1は、本発明の有機電界発光素子の構造の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す有機電界発光素子は、基板1の上に、陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、正孔阻止層6、電子輸送層7、電子注入層8および陰極9を、この順に積層して構成される。
(基板)
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板等、汎用材料からなる透明基板を用いることが好ましい。
基板1の材料の例としては、BK7、SF11、LaSFN9、BaK1、F2などの各種ショットガラス、合成フェーズドシリカガラス、光学クラウンガラス、低膨張ボロシリケートガラス、サファイヤガラス、ソーダガラス、無アルカリガラスなどのガラス、TFTが形成されたガラス、高分子材料としては、ポリメチルメタクリレートや架橋アクリレートなどのアクリル樹脂、ピスフェノールAポリカーボネートなどの芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリシクロオレフィンなどの非晶性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレンなどのスチレン樹脂、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などの合成樹脂、等が挙げられる。また、これらのうち2種以上の積層体であってもよい。目的と用途に応じて、これらの基板の上に反射防止フィルム、円偏光フィルム、位相差フィルムなどの光学フィルムを形成、若しくは張り合わせてもよい。
ただし、合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意することが好ましい。基板1のガスバリア性が小さすぎると、基板1を通過した外気により有機電界発光素子が劣化する可能性があるからである。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
(陽極)
基板1上には陽極2が設けられる。陽極2は、発光層5側の層(正孔注入層3または発光層5等)への正孔注入の役割を果たすものである。
陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属;インジウムおよび/またはスズの酸化物等の金属酸化物;ヨウ化銅等のハロゲン化金属;カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。なお、陽極2の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
陽極2の形成方法に制限は無いが、通常、スパッタリング法、蒸着法等により行われる。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、適当なバインダ樹脂溶液にそれらを分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
また、陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、中でも80%以上とすることが好ましく、この場合、陽極2の厚みは、通常5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常1000nm以下、中でも500nm以下が好ましい。一方、陽極2が不透明でよい場合、陽極2の厚みは任意であり、陽極2は基板1と同一でもよい。さらに、上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
また、陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的として、陽極2の表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることが好ましい。
さらに、正孔注入の効率を更に向上させ、かつ、有機層全体の陽極への付着力を改善させる目的で、正孔注入層3と陽極2との間に公知の陽極バッファ層を挿入してもよい。
(正孔注入層)
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層である。正孔注入層3は、本発明の高分子化合物を含有する層であることが好ましく、さらに電子受容性化合物を含有する層であることが好ましい。また、本発明のポリマー組成物を用いて形成された層であることが好ましい。特に、正孔注入層3は、溶媒を含有する本発明のポリマー組成物(以下、「塗布用組成物」という場合がある。)を用いて、湿式成膜法により膜形成される層であることが好ましい。
正孔注入層3の成膜方法は、パターニングが可能な方法であれば、本発明の効果を著しく損なわない限り制限はない。例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、等が挙げられる。これらの成膜方法の中でも、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法が好ましい。有機電界発光素子に用いられる塗布用組成物に特有の液性に合うためである。
成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、10℃以上が好ましく、13℃以上がより好ましく、16℃以上がさらに好ましく、また、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましい。塗布用組成物中に結晶が生じることを抑制するためである。
成膜工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、好ましくは0.05ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上、また、通常80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは1%以下、特に好ましくは100ppm以下である。相対湿度が小さすぎると、湿式成膜法における成膜条件の制御が困難となる可能性がある。また、大きすぎると有機層への水分吸着が影響しやすくなる可能性がある。
成膜工程における酸素の体積濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.05ppm以上、また、好ましくは50%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは1%以下、中でも好ましくは100ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。酸素濃度が低すぎる環境は制御が難しく、また酸素濃度が高すぎると、有機層内部に酸素が拡散することで、素子特性に悪影響を与える可能性がある。
成膜環境下における微粒子の数(すなわち、パーティクル数)は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、ダークスポット低減の観点から、粒径0.5μm以上のパーティクルが、1m3あたり通常10000個以下、好ましくは5000個以下である。特に好ましくは、粒径0.3μm以上のパーティクルが、1m3あたり5000個以下である。下限値に制限はないが、工業的実用性の観点から、通常、粒径0.3μm以上のパーティクルが、1m3あたり100個は存在することが考え得る。パーティクル数が多すぎるとダークスポットを生じる可能性があり、また、上記範囲を下回るほど環境制御が困難になる傾向がある。
なお、微粒子のパーティクル数は、光散乱方式により検出され、例えば、ハンドヘルドパーティクルカウンターKR(リオン株式会社製)で検出できる。
成膜工程において形成される層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上、さらに好ましくは20nm以上、また、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。この範囲であると、高い膜厚精度が得られるためである。
なお、膜厚精度とは発光部(陽極と陰極とに挟まれた有機層部分)の膜厚の、最大値と最小値の比と定義される。また、膜厚精度は、接触式膜厚計または干渉式膜厚計で測定される。
成膜工程の後に乾燥工程を経ることによって、湿式成膜法で成膜された層を乾燥させる。
乾燥工程における乾燥温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、熱処理を行なう場合、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、また、通常300℃以下、好ましくは250℃以下である。温度が高すぎると他の層に悪影響を及ぼす可能性があり、また、低すぎると層中に溶媒が残る可能性がある。なお、乾燥温度とは、例えばホットプレート方式の場合にはプレート温度、ヒーターを用いる方式の場合には有機層近傍の雰囲気温度をいう。
乾燥工程における乾燥時間は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、さらに好ましくは2分以上、また、好ましくは5時間以下、より好ましくは2時間以下、さらに好ましくは1時間以下である。乾燥時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、また、短すぎると層が不均質になる傾向がある。
乾燥工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上、また、好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは20%以下である。相対湿度が高すぎると層中に水分が残存する傾向がある。
乾燥工程の後の層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上、さらに好ましくは20nm以上、また、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは150nm以下である。膜厚が小さすぎると特定有機層に欠陥が発生する可能性がある。また、膜厚が大きすぎると膜厚ムラにより素子特性の影響が大きくなる可能性がある。
(正孔輸送層)
正孔輸送層4を形成する材料としては、本発明のポリマー組成物に混合して用いてもよい正孔輸送材料として例示した化合物と同様なものが挙げられる。また、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン等の高分子材料も用いることができる。なお、正孔輸送層4の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
また、正孔輸送層4は、架橋性基を有するトリアリールアミン誘導体やフルオレン誘導体などを湿式成膜法にて成膜して、熱や光などにより架橋重合させて得られる膜であってもよい。
正孔輸送層4の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10nm以上、好ましくは30nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
(発光層)
正孔輸送層4の上には、通常発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から正孔注入層3や正孔輸送層4を通じて注入された正孔と、陰極9から電子注入層8や正孔阻止層6を通じて注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
有機発光層5は、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する材料(正孔輸送性化合物)、或いは、電子輸送の性質を有する材料(電子輸送性化合物)とを含有する。更に、有機発光層5は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。これらの材料としては、後述のように湿式成膜法で有機発光層5を形成する観点から、何れも低分子系の材料を使用することが好ましい。
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。また、例えば、RGBの素子を作製する際に、R,Gは燐光発光材料を用い、Bは蛍光発光材料を用いるなどしてもよい。
なお、溶媒への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることも、重要である。
青色発光を与える蛍光色素としては、ペリレン、ピレン、アントラセン、クリセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼンおよびそれらの誘導体等が挙げられる。緑色蛍光色素としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体等が挙げられる。黄色蛍光色素としては、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。赤色蛍光色素としては、DCM(4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。燐光性有機金属錯体に含まれる、周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
燐光性有機金属錯体としては、具体的には以下のような化合物が挙げられるが、以下に限定されるものではない。
Figure 0005584971
Figure 0005584971
Figure 0005584971
本発明において、発光材料として用いる化合物の分子量は、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。
なお、発光層5は、上に説明した各種の発光材料のうち、何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併有していてもよい。
低分子系の正孔輸送性化合物の例としては、前述の正孔輸送層の正孔輸送性化合物として例示した各種の化合物の他、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence,1997年,Vol.72-74,pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications,1996年,pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals,1997年,Vol.91,pp.209)等が挙げられる。
低分子系の電子輸送性化合物の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等がある。
発光層5の膜厚は、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
(正孔阻止層)
発光層5の陰極側に正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層6の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト),(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト),(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号パンフレットに記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層6の材料として好ましい。なお、正孔阻止層6の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。従って、上述の材料を上述の正孔注入層3の形成方法として説明した方法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
(電子輸送層)
電子輸送層7は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極9または電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。なお、電子輸送層7の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子輸送層7の形成方法に制限はない。
電子輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
(電子注入層)
電子注入層8は、陰極9から注入された電子を効率良く発光層5へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。その例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられる。
また、電子注入層8の膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましいが、更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
なお、電子注入層8の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子注入層8の形成方法に制限はない。
(陰極)
陰極9は、発光層5側の層(電子注入層8または発光層5など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極9の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。なお、陰極9の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
陰極9の膜厚は、通常、陽極2と同様である。
低仕事関数金属から成る陰極9を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
陰極9と発光層5または電子輸送層7との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters, 1997年, Vol.70, pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices, 1997年,Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest, pp.154等参照)。
また、以上説明した層構成において、有機電界発光素子における陽極2および陰極9と発光層5との間には、その性能を損なわない限り図1に示す層以外の任意の層を有していてもよく、発光層5以外の任意の層を省略してもよい。例えば、電子輸送層7および正孔阻止層6は必要に応じて、適宜設ければよく、1)電子輸送層のみ、2)正孔阻止層のみ、3)正孔阻止層/電子輸送層の積層、4)用いない等の用法がある。また、例えば、図2に示す如く、発光層5と陰極9との間の層を省略することもできる。
また、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば、基板1上に他の構成要素を陰極9、電子注入層8、電子輸送層7、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に設けてもよい。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明の有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V25)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
更には、本発明の有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
[有機ELディスプレイ]
本発明の有機ELディスプレイは、上述のような本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機ELディスプレイの型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機ELディスプレイを形成することができる。
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[高分子化合物の製造]
<実施例1>
(例示の繰り返し単位(P−1)を含有し、重量平均分子量(Mw)=3.8万である高分子化合物、「精組成物1」の合成)
Figure 0005584971
窒素気流下でN,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(1.00重量部)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(0.49重量部)、炭酸カリウム(1.87重量部)、および1−メチル−2−ピロリドン(23.13重量部)を、生成する水を留去しながら145℃で3時間攪拌した。得られた反応混合物を冷却後、中間濾過により不溶物を除いた濾液を、メタノールに添加した。得られた沈殿物を濾過により回収し、60℃で6時間減圧乾燥することによって粗組成物1−1を得た。
粗組成物1−1をテトラヒドロフランに溶解させ、このテトラヒドロフラン溶液にノルマンヘプタンを添加し、20±5℃で30分間撹拌して沈殿を得た。得られた沈殿を、再度同様の再沈殿操作により精製し、粗組成物1−2を得た。
粗組成物1−2をトルエンに溶解させ、このトルエン溶液に2−プロパノールと脱塩水を添加し、50±5℃で30分間撹拌した。静置後、水層を分液除去して有機層を得た。この洗浄操作を更に2度繰り返し、得られた有機層を減圧濃縮した。残渣をテトラヒドロフランで抽出し、この溶液をメタノールに添加して再沈殿の後に濾取し、60℃で8時間減圧乾燥することによって、精組成物1(0.70重量部、収率50%)を得た。
(精組成物1のSEC測定)
得られた高分子化合物(精組成物1)のSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定を下記の条件で行った。
<SEC測定条件>
装置:東ソー社製HLC8020
カラム:東ソー社製TSKgel GMHXL(カラムサイズ30cm×2本)
カラム温度:40℃
移動層:テトラヒドロフラン
流量:1.0ml/分
インジェクション濃度:0.1重量%
インジェクション量:0.10ml
検出器:RI
換算法:ポリスチレン換算
近似式:3次式
得られた高分子化合物(精組成物1)の重量平均分子量(Mw)は38000であった。
<比較例1>
(例示の繰り返し単位(P−1)を含有し、重量平均分子量(Mw)=3.0万、低分子量成分面積比=0.2%である高分子化合物、「精組成物2」の合成)
窒素気流下でN,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(1.00重量部)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(0.49重量部)、炭酸カリウム(1.88重量部)、およびN−メチル−2−ピロリドン(23.4重量部)を148℃で15時間攪拌した。得られた反応混合物を濾過することにより、不溶物を除いた後、濾液をメタノールに添加した。得られた沈殿物を濾過により回収し、水−メタノール混合液およびメタノールで洗浄した後、クロロホルムに溶解させた。このクロロホルム溶液をアセトンに添加し終了後、30分間攪拌した後、得られた沈殿物を濾過により回収した。次に、得られた沈殿物をアセトンで洗浄した後、乾燥することによって得られた固体をもう一度クロロホルムに溶解させた。このクロロホルム溶液をアセトンに添加し終了後、30分間攪拌した後、得られた沈殿物を濾過により回収し、乾燥することによって、粗組成物2−1(1.03重量部、収率74%)を得た。
得られた粗組成物2−1(1.00重量部)をクロロホルムに溶解させ、この溶液をアセトンに添加し終わった後、10分間で液層を除き、得られた沈殿物を回収した。得られた沈殿物をクロロホルム・アセトン混合溶媒で洗浄した後、もう一度、クロロホルムに溶解させ、この溶液をアセトンに添加し終わった後、10分間で液層を除き、得られた沈殿物を回収した。得られた沈殿物をクロロホルム・アセトン混合溶媒で洗浄し、乾燥した後、クロロホルムに溶解させた。このクロロホルム溶液をメタノールに添加し、得られた沈殿物を濾過により回収した後、乾燥することによって、精組成物2(0.53重量部)を得た。
得られた高分子化合物(精組成物2)について、実施例1と同様にSEC分析した。その結果、重量平均分子量(Mw)=30000であった。
[有機電界発光素子の製造]
<実施例2>
図2に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
ガラス基板1の上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(スパッター成膜品;シート抵抗15Ω)を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成したITO基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
正孔注入層3の材料として、実施例1で得られた高分子化合物を下記式(3)で表される電子受容性化合物と共に以下の条件でスピンコートした。
Figure 0005584971
(スピンコート条件)
溶媒:安息香酸エチル
塗布液濃度:2[重量%]
高分子化合物:電子受容性化合物=10:2(重量比)
スピナ回転数:1500[rpm]
スピナ回転時間:30[秒]
乾燥条件:230[℃]で15[分]
上記のスピンコートにより膜厚30nmの均一な薄膜が形成された。
次に、正孔注入層3を成膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。この装置の粗排気を油回転ポンプにより行った後、装置内の真空度が約2.0×10−5Pa以下になるまで油拡散ポンプを用いて排気した。装置内に配置されたセラミックるつぼに入れた、下記に示すアリールアミン化合物(H−1)をるつぼの周囲のタンタル線ヒーターで加熱して蒸着を行った。蒸着時の真空度2.0×10−5Pa、蒸着速度は0.2nm/秒で膜厚45nmの正孔輸送層4を得た。
Figure 0005584971
引続き、発光層(兼電子輸送層)5の材料として下記の構造式(E−1)に示すアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体、Al(CNO)をるつぼを用い、加熱して蒸着を行った。蒸着時の真空度は1.7×10−4Pa、蒸着速度は0.2nm/秒で、膜厚60nmの膜を正孔輸送層4の上に積層して発光層5を形成した。
Figure 0005584971
上記の正孔輸送層4、および発光層(兼電子輸送層)5を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
ここで、発光層(兼電子輸送層)5までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が2.0×10−4Pa以下になるまで排気した。陰極9として、先ず、フッ化リチウム(LiF)をモリブデンボートを用いて、蒸着速度0.01nm/秒、真空度2.2×10−4Paで、0.5nmの膜厚で発光層(兼電子輸送層)5の上に成膜した。次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.4nm/秒、真空度7.4×10−6Paで膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極9を完成させた。以上の2層型陰極9の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。この素子の発光特性を表1に示す。
最大発光輝度は電流密度250mA/cmでの値、駆動電圧は輝度2,500cd/mでの値を各々示す。
素子の発光極大波長は528nm、色度はCIE(x,y)=(0.33,0.54)であった。
また、通電開始時の発光輝度が1,100cd/mとなる電流値で直流定電流による連続通電試験を、室温で実施した。このとき、発光輝度が初期より5%減となったときの通電時間を駆動寿命とした。結果を表1に示す。
<比較例2>
正孔注入層の形成において実施例1で得られた高分子化合物の代わりに、比較例1で得られた高分子化合物を用いる以外は実施例2と同様にして、素子を作製した。正孔注入層の膜厚は30nmであった。
この素子の発光特性および駆動寿命を表1に示す。発光極大波長は528nm、色度はCIE(x,y)=(0.34,0.54)であった。
Figure 0005584971
表1の結果より、同一構造をもつ高分子化合物において、重量平均分子量が高い材料を正孔注入材料として有機電界発光素子に使用した場合の方が、有機電界発光素子の耐久安定性に優れることがわかる。
<実施例3>
正孔注入層3を形成するに際し、下記のスピンコート条件に変更した以外は実施例2と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
(スピンコート条件)
溶媒 :安息香酸エチル
塗布液濃度 :5[重量%]
高分子化合物 :電子受容性化合物=10:2(重量比)
スピナ回転数 :7500[rpm](回転時 キャップカバー付き)
スピナ回転時間:30[秒]
乾燥条件:230[℃]で15[分]
上記のスピンコートにより膜厚35nmの均一な薄膜が形成された。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。この素子の発光特性を表2に示す。
最大発光輝度は電流密度250mA/cmでの値、駆動電圧は輝度2,500cd/mでの値を各々示す。
素子の発光極大波長は528nm、色度はCIE(x,y)=(0.34,0.54)であった。
また、通電開始時の発光輝度が1,150cd/mとなる電流値で直流定電流による連続通電試験を、室温で実施した。このとき、発光輝度が初期より50%減となったときの通電時間を駆動寿命とした。
<比較例3>
正孔注入層3の形成において実施例1で得られた高分子化合物の代わりに、比較例1で得られた高分子化合物を用いる以外は実施例3と同様にして、素子を作製した。
比較例1で得られた高分子化合物を用いて実施例3のスピンコート条件でスピンコートを実施したところ、膜厚28nmの均一な薄膜が形成された。
正孔輸送層4、発光層5、陰極9の形成まで実施例3と同様に行って2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子を得た。この素子の発光特性を表2に示す。
最大発光輝度は電流密度250mA/cmでの値、駆動電圧は輝度2,500cd/mでの値を各々示す。
素子の発光極大波長は530nm、色度はCIE(x,y)=(0.35,0.54)であった。
また、通電開始時の発光輝度が1,150cd/mとなる電流値で直流定電流による連続通電試験を、室温で実施した。このとき、発光輝度が初期より50%減となったときの通電時間を駆動寿命とした。
Figure 0005584971
尚、実施例1で合成された高分子化合物と、比較例1で合成された高分子化合物は、正孔注入材料として有機電界発光素子に使用した場合、膜厚が同じであれば、同程度の駆動電圧を示す。また、通常、膜厚が厚くなると駆動電圧は上昇する。
表2に示されるように、実施例1で合成された高分子化合物を正孔注入材料として用いた実施例3では、比較例1で合成された高分子化合物を正孔注入材料として用いた比較例3に比べて、正孔注入層の膜厚を25%も厚くしたにもかかわらず、駆動電圧の上昇はわずかであり、この結果より、本発明の高分子化合物を正孔注入材料として有機電界発光素子に使用した場合は、膜厚を厚くしても、駆動電圧の上昇が小さく、有機電界発光素子の安定な性能が確保できることがわかる。
本発明の有機電界発光素子の一例を示す模式的断面図である。 本発明の有機電界発光素子の他の例を示す模式的断面図である。
符号の説明
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極

Claims (2)

  1. 富溶媒よりも疎水性の高い溶媒を貧溶媒として用いる再沈殿法を使用して精製することにより、重量平均分子量が34000〜1000000であり、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を得る高分子化合物の製造方法であって、富溶媒としてエーテル系溶媒を用い、貧溶媒としてアルカン系溶媒を用いる、高分子化合物の製造方法。
    Figure 0005584971
    〔(式中、Ar1〜Ar5は各々独立して、下記置換基群Zから選ばれる分子量400以下の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または下記置換基群Zから選ばれる分子量400以下の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Xは、下記の連結基群X1の中から選ばれる連結基を表す。
    <連結基群X1
    Figure 0005584971
    (式中、Ar11〜Ar28は、各々独立して、下記置換基群Zから選ばれる分子量400以下の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または下記置換基群Zから選ばれる分子量400以下の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
    [置換基群Z]
    アルキル基;アルケニル基;アルキニル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルコキシカルボニル基;ジアルキルアミノ基;ジアリールアミノ基;アリールアルキルアミノ基;アシル基;ハロゲン原子;ハロアルキル基;アルキルチオ基;アリールチオ基;シリル基;シロキシ基;芳香族炭化水素環基;芳香族複素環基:
    31およびR32は、各々独立して、水素原子、或いは、分子量400以下の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、または芳香族複素環基を表す。)〕
  2. 上記式(1)が下記式(1−1)で表されることを特徴とする、請求項1に記載の高分子化合物の製造方法。
    Figure 0005584971
    (式中、R1〜R5は、各々独立して、前記置換基群Zから選ばれる分子量400以下の置換基を表す。pおよびqは、各々独立して0〜5の整数を表す。r,sおよびtは各々独立して0〜4の整数を表す。Xは式(1)におけるものと同義である。)
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