JP5580815B2 - 経粘膜デリバリーシステム - Google Patents

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Description

本発明は、複数−構成された(multi-configured)医薬剤形、より詳細にはヒトまたは動物の身体において速度調節様式で口内、舌下、直腸、膣内または経粘膜デリバリー経路を介して1を超える医薬組成物をデリバリーするのに好適な医薬剤形に関する。
患者に高いレベルのコンプライアンスを生じる容易性、簡便性および投与間に患者に相対的に痛みが少ないことのために、経口ドラッグデリバリーは薬物デリバリーの最も一般的な選択肢のままとなっている1。その結果、現在、大部分の医薬剤形は錠剤、カプセル剤、散剤、粒剤または液剤の形態で投与されている。
その一般性にもかかわらず、慣用的な経口剤形が必ずしも最も有効であるとは限らない。患者によっては、特に老人および小児では、固体の経口剤形を摂取するのが困難である2,3。これは、飲み込むのが痛いまたは困難になる条件に患者が苦しむことからアンギノ恐怖症(anginophobia)(窒息の恐怖)4,5または時として不快な味に起因するまでの範囲の種々の因子の結果となっている場合がある。この問題を駆逐するために、投与から数秒ないし数分以内に患者の口内で溶解し、したがって噛んだり飲み込む必要がない、種々の迅速に溶解するドラッグデリバリーシステムが開発されている6。これらのシステムは高レベルの崩壊剤および/または発泡剤に依拠してそれらの迅速な溶解特性を達成している7。しかしながら、これらの剤形の大部分はいまだ錠剤形で処方化されており、前記した困難さはいまだ問題のままである。
経口ドラッグデリバリーに対するもう1の明らかな制限は、胃腸管(GIT)によって示される厳しい環境の形態で存在し、そこでは、酸加水分解および肝臓の「初回通過」効果8-13により投与した薬物の著しい量が損失する。また、薬物の特定の物理化学的特性により、すべての薬物が経口剤形に取り込め得るものでもない。最も重要なことには、固体経口剤形は、迅速な薬理学的作用が求められるアナフィラキシーのような急性症状の治療には非実用的である。固体経口剤形からの薬物放出は、それが薬物を放出する前にGITにおける分解および/または溶解を最初に受けるために迅速でない14
このことに照らして、ドラッグデリバリーの別の経路が求められている。経粘膜ドラッグデリバリーに、特に関連する警戒なしに非経口剤形を超える利点を誇る口腔に大きな注目が注がれている。このことは、口腔から内頸静脈への血液の直接的なドレナージに寄与し得、したがって「初回通過」効果10,13,15,16を迂回し、結果的にバイオアベイラビリティーの低い薬物のバイオアベイラビリティーを増大させ得る。口腔における比較的低いレベルの酵素活性および比較的安定なpHも、感受性の薬物を投与する手段を提供するように作用する10,17。また、これらのドラッグデリバリーシステムは比較的高い程度の患者のコンプライアンスを有している10
一般的に、剤形を口内に入れると、唾液と接触し、ほぼ迅速に小さい粒子に崩壊し、薬物の遊離を生じる。いまだ口内であるが、薬物は口腔粘膜を通して吸収される場合もある。唾液とのさらなる接触は、薬物充填(drug loaded)懸濁液に溶解する溶解を生じる。崩壊した剤形の残余をその後に飲み込むことは、それが食道に下りて胃に入る前により多くの薬物が吸収されることを生じ、そこでは経口剤形について慣用的な薬物吸収プロセスが起こる。この胃に入る前の吸収は、潜在的に破壊的な胃環境および肝臓代謝が迂回されるため、増大したバイオアベイラビリティーを生じる。しかし、おそらくは、液体と従来の固体経口剤形の両方の利点を結合することが迅速に崩壊する剤形の最大の利点である。それは、液体処方によって提供される飲み込み易さを許容しつつ錠剤またはカプセル剤の簡便性を同時に提供する5,18-20
十分な粘膜組織浸透性を有する経粘膜ドラッグデリバリーシステムを開発する多大な研究が行われている一方で、真の試行は迅速な薬物放出を達成することもできる前記した利点を有するシステムを開発することにある。
研究の関心は、大きな範囲で、その機能および性能に影響する特徴的な細孔および相互接続構造を有するものとして記載することができる多孔性の材料またはデバイスに焦点が当てられている。これらの材料は、制御されたドラッグデリバリー、生体材料工学、生命科学および他の科学的領域において生物組織骨格としての潜在的な適用を見出し得るユニークな特性を有する21。これらの特徴には、その(i)安定かつ多孔性の構造、(ii)大きな表面積、(iii)種々の分布パターンで配置されるフレキシブルな孔径、および(iv)明確な表面特性が含まれる。これらの特性は、再現性および予想可能な様式で薬物分子を吸収/充填し、放出する能力をそれに提供する22
前記に示したように、従来、薬物は経口デリバリーまたは注射のような主な経路の投与を利用して身体にデリバリーされている。症状の迅速な生理学的救済を提供する静脈内経路は、投与の間に高度の痛みを伴い、全身の循環に高濃度の薬物が注射されることにつながり得、これは致命的になる場合もある。経口経路のドラッグデリバリーは、それがより自然であり、より侵襲的でなく、痛みを伴わずに自身で投与できるという幾つかの利点を提供する23。しかしながら、研究は、経口投与後に、膨大な薬物が胃腸分解(胃の酸性条件または酵素の存在による)および/または肝臓代謝(すなわち、初回通過効果)による広範な前−全身的な排除(pre-systemic elimination)に付されることを示しており、腸によって発揮される耐性は低い全身バイオアベイラビリティー、より短い期間の治療活性、および/または不活性もしくは毒性の代謝物の形成を起し得る24-27
静脈内および経口経路と関連した前記の制限の幾つかを回避するために、経粘膜ドラッグデリバリー(すなわち、皮膚、口内、鼻または膣のような種々の簡単に近づき易い身体の腔の吸収性粘膜を介した薬物のデリバリー)が薬物を投与する別の経路として開発されている28-30。投与の経粘膜経路は、緊急の状況下で特に有用となる注射の血漿プロフィールにきわめて似ている血漿プロフィールでの薬物の全身吸収の可能性も提供する。また、粘膜はドラッグデリバリーシステム、特に生体付着性を有するもの、の容易な適用に良好な近づき易さを有する有用な部位にもなり得る。制御された薬物放出特徴を有する経粘膜ドラッグデリバリーシステムの開発でもって、薬物の非−侵襲的な全身の持続したデリバリーのために粘膜を探究し得る31
現在まで、経粘膜ドラッグデリバリーの研究は錠剤、ゲル剤、ハイドロゲル剤、微小マトリクス剤、フィルム剤およびペースト剤のような積極的に多孔性が可能なものでない処方の使用に大きく焦点が当てられてきた32-37。本発明者らが知る限り、粘膜部位を介する持続的な全身ドラッグデリバリーに利用する多孔性が可能なマトリクスの開発および機構評価には制限された開発研究が存在している。多孔性を調節した処方は、薬物充填有効性およびドラッグデリバリーの速度の容易な操作を可能にし得、ならびに、薬物分子の全身デリバリーのための粘膜部位への生体付着および浸透性を高め得るその形態的な融通性の観点から経粘膜投与用の従来の処方よりも優れていると記載することができる38,39。近年、治療剤のデリバリー用のかかる精巧なアプローチに対する要望は増加している40。一般的に存在する多孔性のドラッグデリバリーシステムには:様々な生物医学的な適用のためのインプラント41、スキャフォールド42,43、ハイドロゲル44、セラミクス45-48、薬物担体49、バイオコンポジット50、スポンジ51、マイクロカプセル52、ウエハー53-55、膜56,57およびナノ粒子58が含まれる。
本明細書において以下の用語は以下の意味を有し、明細書および特許請求の範囲はそれに従って解釈すべきである:
医薬剤形と組み合わせて用いる場合の「複数−構成された」とは、剤形が、互いにまたは第3の層に近接する側面および/または軸面で変化する外形の少なくとも2の放出速度を制御する上面および側面を有し、該層が好ましくは円盤状の形であることを意味する。
医薬剤形と組み合わせて用いる場合の「細孔−調節された」とは、剤形が、導入されたか、または医薬剤形のマトリクスまたは複数のマトリクスの結果として形成された細孔の大きさ、および/または範囲および/または分布に基づいて単数または複数の有効医薬化合物の放出速度を調節することができることを意味する。
医薬剤形と組み合わせて用いる場合の「一体式」とは、医薬剤形が、1またはそれを超える有効医薬化合物が均質に分散した単一のポリマーマトリクス層を含むことを意味する。
医薬剤形と組み合わせて用いる場合の「不均質な」とは、剤形が、単数または複数の有効医薬化合物が各層にまたは単一の層のみに均質に分散している複数の層を、好ましくは2の層を含むことを意味する。
本発明の目的は、複数−構成された経粘膜医薬剤形、より詳細には、ヒトまたは動物の身体における口内、舌下、直腸、膣または経粘膜デリバリー経路を介して1またはそれを超える医薬組成物のデリバリーに好適である単数の一体式/不均質な層または複数の層を含む医薬剤形を提供することにあり、それは、限定されるものではないが、医薬組成物の1またはそれを超える層/成分の多孔性が可能なコンポジットマトリクスからの選択されたデリバリープロフィールを提供し、また、複数の構成で該経粘膜医薬剤形を製造する方法を提供することにある。
本発明によれば、加えられた少なくとも1の目的の医薬上有効な化合物を有する少なくとも1の複数−構成された、多孔性、低密度、ハイドロスコピック(hydroscopic)、粘膜付着性、細孔−調節されたコンポジットポリマーマトリクスを含む複数−構成された、経粘膜医薬剤形を提供することにあり、ここに該マトリクスは少なくとも1の粘膜表面刺激と反応して、使用する目的の医薬上有効な化合物の放出を促進する。
また、加えられた少なくとも1の目的の医薬上有効な化合物を有する単一のポリマーマトリクスを有する剤形も提供し、別法として、好ましくは中央コアポリマーマトリクスのまわりに層を成す層化された、1またはそれを超えるポリマーマトリクスを有する剤形、ならびに加えられた少なくとも1の目的の医薬上有効な化合物を有する各ポリマーマトリクスを提供する。
また、好ましい投与部位で、好ましくはポリマーマトリクスからの化合物の浸出によって、ポリマーマトリクスへの体液の流入および、その結果としての目的の医薬上有効な化合物の放出を調節するポリマーマトリクス、ならびに、ポリマーマトリクス中の細孔の大きさ、範囲および分布の変化によって達成されるポリマーマトリクスへの体液の流入の調節も提供する。
さらに、ポリマーと混合して均質な化合物を形成する目的の医薬上有効な化合物、別法として、ポリマーと混合するマイクロ−ペレット(micro-pellet)の形態、別法としてナノ−ペレット(nano-pellet)の形態である目的の医薬上有効な化合物を提供する。いまださらなる別法として、少なくとも1の分離したペレット、好ましくは円盤状ペレット、別法として縦長円筒の形態であるべき目的の医薬上有効な化合物を提供し、ここに該ペレットまたは複数のペレットはポリマーマトリクスに埋め込まれており、別法として、該ペレットまたは複数のペレットは複数の層を成す剤形の層に取り込まれており、該ポリマーマトリクスは公知の刺激に応答して公知の溶解および/または侵食の速度を有し、かつ、剤形から医薬上有効な化合物が放出され、吸収に利用可能となる速度および位置を決定する。
さらに、経口摂取可能である医薬剤形を提供し、それはヒトまたは動物の口腔内にデリバリーする第1の医薬上有効な組成物、および使用において第1の医薬上有効な化合物が加えられたポリマーマトリクスが溶解すれば飲み込まれ、したがって、吸収のためのペレットまたは複数のペレットに含まれる医薬上有効な化合物をヒトまたは動物の身体の他の領域、好ましくは胃腸管にデリバリーされる1またはそれを超えるペレットの形態の少なくとも第2の医薬有効組成物を含む。
さらに、使用において、粘膜表面に付着することによって、別法としてゲルを形成することによって、さらに別法として所定の時間にわたって溶解する拡散バリアを形成することによって、および、いまださらに別法として多形変換を受けることによって、少なくとも1の粘膜表面刺激と反応して医薬上有効な化合物を放出するポリマーマトリクスを提供する。
また、浸透向上剤、崩壊剤、香味剤、可塑剤、細孔形成剤、マトリクス補強剤、安定剤、界面活性剤、潮解材料、結合剤、および水性または非−水性の無機または有機溶媒のような1またはそれを超える補助剤を含む剤形を提供する。
また、少なくとも1の急速放出層および1の長時間または持続放出層を有する複数の層を成す医薬剤形も提供し、ここに各層はその層がどの部分を形成するかに依存して迅速または長時間にわたり放出され、したがって吸収される少なくとも1の目的の有効な有効医薬化合物を含む。
また、一体式または不均質な形態の低密度マトリクスである急速放出層のポリマーマトリクスも提供し、ここに該ポリマーマトリクスは、数学的関連性:ρ=m/V(式中、ρ=密度、m=該医薬剤形の質量、およびV=適当な型中で該医薬剤形によって占められる体積)を用いて計算した場合に約1×103kg/m3ないし約5×103kg/m3の密度を有し、好ましくは適当な型は約14mmの直径、約8mmの高さおよび約30ないし約60mm3の体積を有する。
また、一体式または不均質な形態の高密度マトリクスである持続放出層のポリマーマトリクスを提供し、ここに該ポリマーマトリクスは、数学的関連性:ρ=m/V(式中、ρ=密度、m=該医薬剤形の質量、およびV=適当な型中で該医薬剤形によって占められる体積)を用いて計算した場合に約5×103kg/m3ないし約10×103kg/m3の密度を有し、好ましくは適当な型は約14mmの直径、約8mmの高さおよび約30ないし約60mm3の体積を有するポリマーマトリクスを提供する。
さらに、親水性の膨潤性ポリマー、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、アルギン酸ナトリウム、キトサンおよびペクチンよりなる群から選択される1またはそれを超えるポリマーを提供し、ここに該ポリマーは薬物放出および/またはポリマーの物理化学的および/または物理機械学的な性質を変化させるコポリマーと混合し、該コポリマーはワックス、水溶解(hydrosoluble)剤またはポリエチレングリコールまたはキトサンのような他のポリマー、および/または脂質エステル、グリシン、エステル化グリセリド、マンニトールまたはラクトースよりなる群からの賦形剤である。
また、単一のポリマーによって形成されるまたはポリマーの混合物からのポリマーマトリクスも提供し、混合物用のポリマーの混合物の場合は物理的ポリマー混合物または化学的ポリマー混合物であり、好ましくはポリオキシルグリセリドおよび/またはポリグリコール化トリグリセリドよりなる群から選択される。
さらに、自己乳化特性を有する医薬剤形、ならびに有効医薬組成物または複数の有効医薬組成物の経粘膜可溶化および吸収を高めるための共同乳化剤または浸透向上剤として機能する剤形を提供する。
さらに、使用において、感受性の医薬上有効な化合物に対して低い反応性である、低いヒドロキシル値を有する物質を含む医薬剤形も提供する。
さらに、使用において、医薬上有効な化合物の分散性を改善する乳化剤を取り込んだ物質を含む医薬剤形を提供し、ここに該乳化剤は望ましい親水性−疎水性バランス(HLB)値、好ましくは1ないし14の範囲を有する。
さらに、使用において、低密度マトリクス、別法として細孔−調節されたマトリクス、さらに別法として多孔性のスポンジ状凍結乾燥マトリクスであるポリマーマトリクスを提供し、剤形は少なくとも2のマトリクス層を有し、1の層は使用において迅速に溶解し、または崩壊し、もう1の層は使用において長時間または持続した時間にわたって溶解し、または崩壊し、したがって層に取り込まれた医薬上有効な化合物の時間制御されたデリバリーを許容する。
また、1%(w/v)の濃度で剤形に含まれるHPCであるポリマーを提供し、剤形はさらに膨張賦形剤、好ましくは6%(w/v)の濃度のラクトース、崩壊剤、好ましくは少なくとも2%(w/v)の濃度のデンプングリコール酸ナトリウム、矯味剤、好ましくはそれに添加する医薬上有効な成分の量の少なくとも5倍に等しい濃度のβ−シクロデキストリンまたはβ−シクロデキストリン錯体、および抗−レトロウイルス剤(ARV)である少なくとも1の医薬上有効な組成物、好ましくはジドブジン、および/または抗−ヒスタミン剤、好ましくは塩酸ジフェンヒドラミンを含む。
また、選択した医薬HLB値を有するポリマーマトリクスを形成するポリマーまたはポリマー混合物を提供し、ポリマーまたはポリマー混合物は膨潤性のポリマーまたはポリマー混合物、別法として親水性の膨潤性ポリマーまたはポリマー混合物、さらに別法として、ポリマーまたはポリマー混合物はその物理化学的特性を変化する少なくとも1のコポリマーと混合し、別法としてその物理化学的特性を変化する少なくとも1のコポリマーと混合し、いまださらなる別法として、その物理化学的特性および物理機械学的特性を変化する少なくとも1のコポリマーと混合する。
第2のポリマー、好ましくはポリエチレングリコールを含むポリマーも提供する。
さらに、痛覚脱失剤、鎮静剤、抗−ヒスタミン剤、小児科薬および抗−レトロウイルス薬ならびにそれらの医薬上有効な異性体よりなる群から選択される1またはそれを超える医薬上有効な化合物を含む経皮医薬剤形も提供する。
また、小児または老人患者に投与し得る経皮医薬剤形、ならびに、痛覚脱失剤、好ましくはジクロフェナク、アスピリンおよびパラセタモールならびにそれらの医薬上有効な異性体、鎮静剤、好ましくはジアゼパム、ゾルピルデム(zolpildem)およびゾピクロンならびにそれらの医薬上有効な異性体よりなる群から選択される鎮静剤、抗−ヒスタミン剤、好ましくはロラタジン、クロルフェニラミンまたはジフェンヒドラミンよりなる群から選択される抗−ヒスタミン剤、抗−レトロウイスル薬、好ましくはジドブジン、マルチビタミン、ミネラル、微量元素、植物栄養剤(phytonutrient)およびそのれらの医薬上有効な異性体よりなる群から選択される医薬上有効な化合物も提供する。
また、使用において、治療方式(regimen)として通常投与する医薬上有効な化合物、好ましくはパラセタモールおよびトラマドールの固定用量の組合せをデリバリーするための該経粘膜医薬剤形も提供する。
また、ニスタシッド(nystacid)、ヒオスシン、ジドブジン、アスコルビン酸、ビタミンD、カルシウム、セレン、チョウセンニンジンおよびそれらの医薬上有効な異性体よりなる群から選択される小児薬、マルチビタミン、植物栄養剤、ミネラルまたは微量元素も提供する。
さらに、スポンジ状マトリクスの形態である医薬剤形のポリマーマトリクスも提供し、該マトリクスは少なくとも1×104Pa.sの柔軟性の平均粘度(flexible mean viscosity)を有し、マトリクスの少なくとも1の層は少なくとも40Åの平均細孔径、各々、少なくとも28cm2/gおよび6.5×10-4cm3/gの累積表面積および細孔体積、および少なくとも70%の量的および質的多孔率を有する。
さらに、ヒトまたは動物の身体の治療または予防用途のための、少なくとも1の有効な医薬化合物および/または熱不安定な組成物を充填し得るコンポジット多孔性可能なマトリクスを有する医薬剤形を提供する。
ヒトまたは動物の身体における血漿レベルの大きな変動および有効医薬組成物の投与の頻度を最小限化する医薬剤形の複数の層を成すシステムの少なくとも1の層または単一のマトリクスからの一定の薬物血漿レベルのためのゼロ次動力学の弾力的で、速度調節した全身デリバリーを達成する医薬剤形も提供する。
均質なポリマー混合物の物理的、物理化学的および物理機械学的特性をポリマー性化合物、無機および/または有機溶媒ならびに他の処方添加物によって修飾して少なくとも1または単一のマトリクスからの有効医薬組成物(または複数の有効医薬組成物)の望ましい放出を達成し、その結果、有効医薬組成物の放出をモデュレートすることができる、コンポジット多孔性可能なマトリクス(composite porosity-enabled matrix)を有する医薬剤形も提供する。
さらに、ポリマー性マトリクスが医薬剤形の投与様式に好適な形および大きさに成形可能である、口内、舌下、膣、直腸、皮膚、筋肉内、皮下、皮内、肛門および鼻腔内経路を介して少なくとも1の医薬上有効な組成物を投与する医薬剤形も提供する。
また、剤形の少なくとも1の層または単一マトリクスおよび有効医薬組成物(または複数の有効医薬組成物)が関連のある局所有効医薬組成物のデリバリー用の乾燥した流動可能な散剤として皮膚適用に好適な医薬剤形に処方化された多孔性対応医薬剤形も提供する。
また、少なくとも1のポリマーマトリクス層または単一マトリクスが多孔性であって、有効医薬組成物(または複数の有効医薬組成物)の放出動力学に影響し得、かつ、製造の相間(interphase)、共同粒子、共同溶媒、均質化方法の組成物に依存する可撓性かつ変動する細孔構成、細孔体積の分布および相互接続バリアの性質からなり得る表面構造を有する医薬剤形も提供する。
また、好ましくは、エチルセルロース、ポリ乳酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリアミド、ポリオキシグリセリドおよびキトサンよりなる群から選択される親水性または疎水性、生物学的適合性、生物分解性のポリマー性材料からなるポリマー性マトリクスまたは複数のポリマー性マトリクスも提供し、ここに該材料は使用時に架橋され、したがって、該医薬剤形からの有効医薬組成物の放出の量および時間における調節を提供し、ここに該材料は金属塩またはホーフマイスター系列の塩の群の中からの架橋剤または錯体形成剤で架橋される。
また、使用するポリマーの物理化学的または物理機械学的特性に依存して、少なくとも1:0.75のポリマーに対する架橋剤の比で、好ましくは硫酸亜鉛、塩化バリウムまたは硫酸カルシウムよりなる群からの架橋溶液をポリマー材料に添加する前−凍結乾燥架橋(pre-lyophilized crosslinking)工程から調製されるポリマー材料も提供する。別法として、少なくとも2:1.5のポリマーに対する架橋剤の比で、または別法として使用するポリマーの物理化学的または物理機械学的特性に依存して、好ましくは硫酸亜鉛、塩化バリウムまたは硫酸カルシウムよりなる群からの種々の架橋溶液をポリマー材料に添加する後−凍結乾燥架橋(post-lyophilized crosslinking)工程から調製されるポリマー材料も提供する。さらなる別法として、好ましくは硫酸亜鉛、塩化バリウムおよび硫酸カルシウムよりなる群からの種々の架橋溶液をポリマー材料に添加する前−凍結乾燥および後−凍結乾燥架橋工程の両方から調製されるポリマー材料も提供する。
本発明は、添加された少なくとも1の目的の医薬有効化合物を有する少なくとも1の複数−構成された、多孔性、低密度、ハイドロスコピック、粘膜付着性、細孔−調節された、コンポジットポリマーマトリクスを含む複数−構成された経粘膜医薬剤形を製造する方法にひろがり、該マトリクスは少なくとも1の粘膜表面刺激と反応して前記した目的の医薬上有効な化合物の放出を促進し、その中では、有効医薬組成物(または複数の有効医薬組成物)を充填した多成分共同溶媒をベースとする均質な共同粒子混合物を調製し、凍結乾燥によって使用した共同溶媒を除去して多孔性相互接続構造を形成することを包含する相間、共同粒子、共同溶媒、均質化技術を用いる。
また、剤形の調製の間の外部の熱の適用を不要にする方法も提供し、該医薬剤形の混合物は均質または不均質な脂質であり、剤形の凍結乾燥にはポリマーマトリクスまたは複数のマトリクスからの結合した水分を除去し、したがって、有効医薬組成物の安定性および寿命を高めることが含まれる。
また、調製の間の凍結乾燥時間を変化して剤形の少なくとも1の層または剤形のマトリクス全体の一体性を変化させ、したがって、使用において、マトリクスの操作的に外側の境界からその操作的に内側の境界に向けて予測可能な時間依存様式でポリマー弛緩反応を引き起こすことによって水ベースの酸性、中性または塩基性の媒体または体液に曝した場合に、それからの有効医薬組成物(または複数の有効医薬組成物)の外側への拡散の速度に影響し、その結果、有効医薬組成物(または複数の有効医薬組成物)の外側への拡散を限定することを含む方法も提供する。
また、12ないし48時間凍結乾燥する前に12ないし24時間ポリマー懸濁液を凍結することを含む方法も提供する。
本発明の剤形を部位−特異的な様式で、より詳細には単一の複数−構成された剤形で複数のAPIのデリバリーを取り扱う試みにおいて以下の非限定的な例によって説明する。添付する図面に関しては以下のとおりである。
図1は本発明による複数−構成された剤形の調製に使用した方法の一例である。 図2は206nmにおける模擬唾液(pH6.8)中のフェニトインナトリウムの検量線である(すべての場合においてN=4および0.05未満の標準偏差)。 図3は206nmにおける模擬血漿(pH7.4)中のフェニトインナトリウムの検量線である(すべての場合においてN=3および0.047未満の標準偏差)。 図4は処方間および処方内の重量変動および類似性を各々示す棒グラフである(N=3、SD<1.80)。 図5は本発明に係る医薬剤形の崩壊速度を示す一連のグラフである。 図6は最適化する前の模擬唾液(pH6.8)中の15の処方についての薬物放出プロフィールを図示する(すべての場合においてN=3およびSD<4.56%)。 図7はa)非−架橋処方および前−凍結乾燥架橋処方からの迅速な薬物放出、b)後−凍結乾燥架橋処方からの緩やかな薬物放出、および、c)前−および後−凍結乾燥架橋処方からの遅鈍な放出、からの放出挙動を表す比較薬物放出プロフィールを図で説明する。 図8Aおよび図8Bは得られたレオロジープロフィールおよび典型的なプロフィールを示し、ずり応力、時間および粘度の間の関係を示している。 図9は一定のずり速度での15の処方の均質な混合物によって生成した平均粘度値の範囲を示す棒グラフである(すべての場合においてN=3およびSD<0.002×10-4Pa.s)。 一定のずり速度での15の処方の均質な混合物の変形の程度を示すグラフである(すべての場合においてN=3)。 メソ多孔性性質を示す15の処方の細孔径のグラフである(すべての場合においてN=3)。 15の処方についての細孔の累積体積を示すグラフである(すべての場合においてN=3)。 15の処方についての細孔の累積表面積を示すグラフである(すべての場合においてN=3)。 プローブが処方を完全に通過する際の、各々、セルロース層およびキトサン層の間の別個のテクスチャー差を強調する単一の複数−構成された剤形の応力−距離プロフィールを示す。 プローブが処方を完全に通過する際の、各々、セルロース層およびキトサン層の間の別個のテクスチャー差を強調する単一の複数−構成された剤形の応力−時間プロフィールを示す。 セルロース層と比較した場合のキトサン層によって示されるより大きな程度のマトリクス許容度のグラフ表示である。 生成した複数−構成された医薬剤形の全体堅牢性のグラフ表示である。 生成した種々の複数−構成された医薬剤形からの薬物捕捉効率を示すプロフィールである。 a)ニュートン(N)でのピーク脱着力およびb)15の処方の生体付着の仕事またはエネルギーを示す。 細孔の構造、分布および相互接続の多様性を示す一連の処方の走査型電子顕微鏡写真である。 8時間にブタ口内粘膜を通って受容体コンパートメントに拡散したフェニトインナトリウムの累積量を示すエリアプロットである(すべての場合においてN=3およびSD<1.414%)。 15の処方について480分で計算した累積定常状態フラックス値(cumulative steady state flux value)を示す(すべての場合においてN=3およびSD<1.992x10-4mg cm-2 min-1)。 細孔−調節されたマトリクスについての細孔の累積測定の指標を提供する(すべての場合においてN=3)。 15の処方についての一連の重ね合わせたFTIRスペクトルである。
製作に含まれる方法を開発し、迅速および/または持続した経粘膜ドラッグデリバリー用の多孔性が可能なコンポジット複数−構成された医薬剤形を機械的に評価するために、口内粘膜をモデル経粘膜部位として使用した。種々の経粘膜部位の中の口内経路は、(i)自己投与に対するその優れた利便性、(ii)緊張または損傷後の短い回復時間、(iii)頑強な平滑筋の広がりが存在すること、(iv)豊富な血液の供給、(v)薬物が前−全身代謝過程を回避することを許容する内頸静脈を介した全身循環への直接的なアクセス、したがってそれが高いバイオアベイラビリティーに通じること(Alurら,2001;Sudhakarら,2006)により、迅速および/または保持力のある剤形の投与に最も適している。無痛投与、多用途性および単純性、望む場合にいつでも退薬できる簡便な剤形、および、局所または全身作用用の浸透向上剤、酵素阻害剤、pH調節剤または生体付着性ポリマーを含む能力のような他の利点は、経頬ドラッグデリバリー目的で作製するシステムを有効な薬物療法における有望な選択肢とする(Zhangら,1994;Lee,1988;Alurら,2001;Attiaら,2004;Sudhakarら,2006)。凍結乾燥と結合した相間、共同粒子、共同溶媒、均質化技術を利用して、複数−構成された医薬剤形を形成した。層化および可撓品質を示す種々の多孔性が可能な処方を創薬するこの製造方法の能力は、凍結乾燥して溶媒分子を除去し、単層のまたは複数の層を成す処方を生成する均質および不均質の混合物を生成した溶媒ならびに生物学的適合性、生物学的分解性、非毒性の溶質成分の両方の濃度を変化させることによって達成した。調製および変更の方法の選択は、要求のない方法操作および患者のアフォーダンスを高める最小限化された製造費用を可能にする頑強な処方の創製における単純性および最適な効率に基づく。目的の適用に適する処方の物理化学的および物理機械学的な特性を明らかにして、その処方およびこれが新たに形成された技術であると作用することに対する包括的な情報を提供した。この研究を統計学的に頑強な実験設計アプローチを介して案内し、測定した特徴には処方の質量、イン・ビトロ(in vitro)薬物放出挙動、マトリクス弾力、マトリクス(matric)変形のエネルギー、マトリクスの固さ、薬物充填効率、エクス・ビボ(ex vivo)生体付着能力、混合物のレオロジー査定、表面形状、エクス・ビボ(ex vivo)浸透の誘導および向上、マトリクス多孔性の質的および量的評価、ならびに可能な構造推移の解明が含まれた。
材料および方法
材料
キトサン(食品等級)およびメタノールは、Warren Chem Specialties,Johannesburg,South Africaから得た。ゼラチン、カルバマゼピン、フェニトインナトリウム、ポリビニルアルコール(Mw=72,000g/moL)、ステアリン酸マグネシウムは、Sigma Chemical Company(St.Louis,USA)から購入した。ソルビタンエステル80(span 80)およびエタノール(95%)は、各々、Merck Chemicals(Darmstadt,Germany)およびSaarchem(Johannesburg,Gauteng,South Africa)から調達した。カーボポール974P NFはNoveon,Inc,(Cleveland,Ohio,USA)から獲得した。エチルセルロース(Ethocel(登録商標)10)はProtea Industrial Chemicals(Pty)Ltd(Wadesville,South Africa)から得た。ヒドロキシセルロース(HHX250Pharm)はHercules,Aqualon(Germany)から購入した。ペクチンCU701(〜30-40%の範囲のメトキシ化度の低メトキシペクチン)は、Hersbstreith and Fox KG(Pektin-Fabriken,Neuenburg,Germany)から購入した。滑剤としてのグリシン278(Mw=75.07g/moL)、硫酸亜鉛(Mw=287.54g/moL)(Rochelle Chemicals,Johannesburg,South Africa)、塩化バリウム(Mw=244.28g/moL)(Saarchem,Pty.Ltd,Unilab,Wadeville,South Africa)、硫酸カルシウム(Mw=219,08g/moL)(Saarchem,(Pty)Ltd.Unilab,Wadeville,South Africa)および液体パラフィン(鉱油)は、Rochelle Chemicals(Johannesburg,South Africa)から購入した。模擬唾液の調製のために、リン酸水素二ナトリウム(Mw=141.96g/moL)をRochelle Chemicals(Johannesburg,South Africa)から、塩化ナトリウム(Mw=58.44g/moL)(LabChem(Pty)Ltd.,Edenvale,South Africa)およびリン酸二水素カリウム(Mw=136.09g/moL)をRiedel-de Haen(Seelze,Germany)から購入した。全ての他の試薬は分析等級のものであり、一般に認められたものとして用いた。コンポジットマトリクスの種々の成分の典型的な機能を表1に掲載する。
Figure 0005580815
複数−構成された剤形の調製
キトサンおよびモデル薬物ジフェニルヒドラジン充填セルロースポリマーのストック溶液を2:1の比で均質に合し、予め油を塗った型に移し、24時間冷凍した。ついで、処方を−60℃、2時間に設定した凍結相および25mtorrの圧力にて48時間の乾燥相で凍結乾燥した(図1)。
Box-Behnken実験設計による剤形の調製
Minitab Statistical Software,バージョン14(Minitab Inc.,State College,PA,USA)を用いる2-レベル、3因子のBox-Behnken四重設計を通して案内された相間均質化および凍結乾燥の方法によって種々の独立変数の組合せを用いて15の処方を調製した。3のカテゴリーの独立変数を、統計学的に作製したBox-Behnken設計テンプレートに基づいてP-ECMを製作するのに用い、これらには:
(i)PVA、HEC、CARB、GELおよびDWからなる水ベースの共同粒子分散(ACD)
(ii)ETH、MS、MTH、CHTSおよびEtOHから構成されたエタノールベースの共同粒子分散(ECD)
(iii)ソルビタンエステル80(SD 80)のみ
を含めた。
表2および3は、各々、設計に使用した2レベルの独立変数および3因子、3中心点および15の実験実行用の実験設計テンプレートを示す。因子の下限および上限は、最小限量の成分を用いて安定、強固な薬物充填処方を形成するそれらの能力に基づいて設定した。処方は、相間均質化(interphase homogenization)という方法によって種々の量のACD、ECBおよびSP 80を用いて生成した。溶質、ACDおよびECDは2の極性のプロトン性溶媒、すなわち、各々、水およびエタノール中に別々に分散した。2の分散液を一緒に混合し、特定量のSP 80を用いて溶質および溶媒の表面張力を低下させた。このアプローチを用いて、均質かつ安定な共同粒子混合物の形成を可能にした。全体的に、均質混合物の形成は、研究室スケールのホモジナイザー(Polytron(登録商標)2000、Kinematica AG,Switzerland)、10分間を用いて助けた。ついで、得られた安定な均質混合物を暗所下で30分間寝かせて、溶質−溶媒分子間相互作用が起こることを高めた。各処方について、1.0mLの生成した混合物を特殊化したポリスチレン製型(10mm径×10mm高)にピペットで移して各処方について約20ないし40のマトリクスを得た。これらの型は不活性液体パラフィンを予め軽く塗ってマトリクスが型に粘着しないようにした。型のウェルを共同粒子混合物で満たした後に、それを−72℃で24時間にわたって予め凍結し、その後にそれらを−50℃および0.42mBarに設定した凍結乾燥器(Bench Top 2K,Virtis,New York,USA)に48時間入れることによって凍結乾燥(フリーズドライ)に付した。凍結乾燥の後、生成した処方を活性ケイ酸を含有する乾燥器を含む密閉ガラス容器中でさらに試験するために貯蔵した。モデル薬物の溶解性に依存して、特定量の親水性または疎水性のいずれかの薬物を水性(ACD)またはアルコール性(ECD)コンパートメントに分散した。このステージで使用したモデル薬物はフェニトインナトリウムであった。
Figure 0005580815

注記:ACDについて:0-PVA(650mg)+HEC(350mg)+GEL(400mg)+CARB974(100mg)+DW(30mL),1-PVA(475mg)+HEC(525mg)+GEL(350mg)+CARB974(150mg)+DW(20mL)および2-PVA(300mg)+HEC(700mg)+GEL(300mg)+ CARB974(200mg)+DW(25mL)。
ECDについて:3-CHTS(550mg)+MS(350mg)+MTH(200mg)+ETH 10(400mg)+EtOH(10mL),4-CHTS(425mg)+MS(325mg)+MTH(250mg)+ETH 10(500mg)+EtOH(13mL),5-CHTS(300mg)+MS(300mg)+MTH(300mg)+ETH 10(600mg)+EtOH(15mL)。
Figure 0005580815
架橋した複数−構成した医薬剤形の調製
ペクチンの3%(w/v)溶液を用いて40mg/mLのモデル薬物DPHを溶解した。グリシン(0.6%(w/v))を崩壊保護剤として用いた。この溶液(1mL)を鉱油で滑りやすくした特注の型にピペット操作で入れた。鉱油は最終製品の味覚に影響せず、ミネラルに疎水性を付与するために選択した滑剤である。前−凍結乾燥した架橋システムを調製することには、0.5mLの種々の塩溶液を型中の1mLのペクチンおよびDPH溶液に添加してペクチンの架橋を行うことを含めた。塩溶液は硫酸亜鉛、塩化バリウムまたは硫酸カルシウムのいずれかからなり、個々の4%(w/v)溶液として処方化した。したがって、これらの剤形は1:0.75のポリマーに対する架橋剤の比で処方化した。架橋システムは、暗所下、25℃にて24時間硬化させ、その後、凍結乾燥(Labconco Freeze Dry Systems,Labconco Corporation,Kansas City,Missouri,US)する前に24時間、−70℃のフリーザー(Sanyo Ultra Low Temperature Freezer,Sanyo Electric Co.Ltd,日本モデル)に保存した。ついで、このシステムを凍結乾燥に36時間付した。凍結乾燥後の架橋化したシステムの調製には、2mLのポリマー−DPH溶液を油を塗ったプラスチック製型に添加し、-70℃のフリーザーに24時間保存することを含めた。ついで、得られたシステムを凍結乾燥に24時間付した。凍結乾燥の際に、医薬剤形を0.5mLの種々の塩溶液で架橋し、暗所下、25℃にて1時間硬化させた。ついで、それらをさらなる凍結乾燥に24時間付した。いくつかのものについては、凍結乾燥工程の前後両方で架橋することによって調製し、2:1.5のポリマーに対する架橋剤の比で処方化した。システムからの薬物の全体放出に対する架橋剤のタイプおよび架橋の方法(すなわち、凍結乾燥の前後)の影響を評価するために、種々の処方を生成した。評価した種々の処方を表4に掲載する。
Figure 0005580815
処方の最終質量の測定
15のマトリクスの凍結乾燥後の最終乾燥質量を、研究室スケールのウェイティング・バランス(Mettler Toledo,AB104-S,Microsep Pty Ltd,Switzerland)を用いて測定した。これを行って、処方の最終的な質量を作成するために用いることができるデータを作成した。
処方の崩壊挙動の評価
包括的な文献の検討から適用した迅速崩壊固体経口剤形に特異的な方法を用いて処方の崩壊を行った。平坦な円柱プローブを有するTexture Analyzer(Stable Micro Systems,Surrey,UK)を用いて、デリバリーシステムの崩壊に対して舌が有する影響を最小限にした。個々の処方を予め計量し、前記したプローブに結合した。37℃に加熱した5mLの模擬唾液(pH6.75)を用いた。ついで、結合したマトリクスを有するプローブを所定の応力で60秒間ペトリ皿に降ろした。生成した得られた距離−時間プロフィールを用いて、崩壊の開始、崩壊速度、およびマトリクスを通るプローブの貫通距離を測定した。
処方の薬物放出挙動の評価
各細孔−調節されたマトリクスを密閉した100mL容量のガラス製容器に含めた25mLの模擬唾液(表5;pH6.8)に浸漬した。特定の条件での実験のために、マトリクスの3回反復試料を、振盪インキュベーター(Orbital Shaker Incubator,LM-530,Lasec Scientific Equipment,Johannesburg,South Africa)で37±0.5℃および20rpmで維持した。3mLの濾過した溶解試料を特定の時間間隔(30、60、120、240、360および480分)で8時間にわたって引き抜き、引き抜いた体積を各サンプリング時間に新たな模擬唾液で置き換えることによって維持した条件を低くする。放出した薬物の量はλmax=206nmでの紫外線分光器(Specord 40,Analytik Jena,AG,Germany)によって測定した。すべての実験は3回行った。
Figure 0005580815
マトリクス物理化学的強度の分析
処方のテクスチャー分析は、テクスチャー分析器(Stable Microsystems,Surrey,UK)を用いて行い、歩留まり率、ポリマー破壊(polymeric fracture)および弾性挙動のような応力−弾性パラメータにおける変化を決定した。いずれの形態の水和もマトリクスの崩壊を生じたため、脱水和した試料を調べた。応力−距離または応力−時間プロフィールは、前記したものに必要な計算を行うのに十分である。試験には、マトリクス弾性(MR)、マトリクス歪みのエネルギー(εD)およびマトリクスの堅さ(MF)が含めた。平坦な先端のスチール製プローブ(2mm径)を用いてマトリクス歪みのエネルギーおよびマトリクスの堅さを測定しながら、円筒形スチール製プローブ(50mm径)を装着した較正テクスチャー分析器をマトリクス弾性の測定に用いた。すべての測定について、表6に掲載するテクスチャー設定を全体を通して固定した。データはTexture Exponent Software(バージョン3.2)を介して200ポイント/秒の速度で獲得し、すべての測定は3回行った。
Figure 0005580815
薬物充填の計算および処方の捕捉能力
薬物捕捉効率(DEE)は、処方を模擬唾液100mL中で完全に崩壊させ、ついでそれをUV分光器を介して分析して薬物内容物を決定することによって行った。ついで、式1を用いてDEEを計算した。
Figure 0005580815
式中、DEE=薬物捕捉効率(%)であり、実際のおよび予測される薬物濃度は各々mg/mLである。予測されるおよび実際の薬物濃度は基本的な数学比を用いて計算した。
薬物装填容量(DLC)は式2を用いて計算した。このパラメータは処方の薬物充填容量の表示であった。
Figure 0005580815
式中、%DLC=薬物充填容量であり、Ad=充填した薬物の実際の量であり、Td=充填した薬物の理論上の量である。
各測定について、1の処方を研究室ホモジナイザー(Polytron(登録商標)2000、Kinematica AG,Switzerland)の助けを用いて模擬唾液溶液(pH6.8)に完全に溶解した。ついで、2mLの試料を手動で引き抜き、0.45μm細孔径のCameo Acetateメンブレンフィルター(Milipore Co.,Bedford,MA,USA)を通して濾過した。適当な希釈を行い、ついで、試料を206nm(モデル薬物はフェニトインナトリウム)で紫外線分光器(Specord 40,Analytik Jena,AG)によって分析した。生成した吸収値をフェニトインナトリウム用の補正曲線の一次多項式に適合した(図2)。ついで、この計算の結果を式2に入れて各式の%DLCを生成した。すべての評価は3回行った。
生体付着能力のイン・ビトロ(in vitro)およびエクス・ビボ(ex vivo)評価
生体付着性は、ピーク付着力の測定およびテクスチャー分析器を用いて膜の表面に処方が付着するのに必要な仕事の計算を介して評価した。実験データは、Texture 32 Exponentを用いて分析した。2の表面間の接触を開始する前に、膜を模擬唾液(pH6.75)で湿らせた。0.5N、10秒間の接触力を加えた。ついで、膜を0.1mm/秒の一定速度で処方から上方に移動し、ピーク付着力(N)を測定した。付着の仕事(N.mm)を力/-曲線下の面積から計算した。結果は3回測定値の平均として報告する。
処方のエクス・ビボ(ex vivo)生体付着強度は、円筒形ステンレス鉱製プローブ(10mm径)を装着した補正テクスチャー分析器(TA.XTplus,Stable Micro Systems,Surrey,UK)およびモデル組織としての新に単離したブタ口内粘膜(0.8mm±0.1mm厚さ)を用いて測定した。すべての測定は3回繰り返し試料で行った。処方をテクスチャー分析器ステージ上に載置する間に口内粘膜を円筒プローブに結合した。2の表面を適当に並べて、測定の間にそれらが互いに直接的に接触するようにした。試験の間に使用した設定は:接触力(0.1g)、試験前速度(2mm/秒)、試験速度(0.5mm/秒)、試験後速度(10mm/秒)、加えた応力(102gまたは1N)、戻る距離(8mm)、接触時間(10秒)、トリガー型(自動)およびトリガー力(5gまたは0.049N)である。各測定について、ブタ口内粘膜の表面は、ガラス製ペトリ皿に入れた2mLの模擬唾液(表4)に5分間浸漬することによって最終的に湿らせた。つづいて、組織を処方に向けて下ろしてそれと接触させる。生体付着強度はピーク脱着力(Fdet)および付着の仕事(ωadh)として作成した応力−距離曲線から計算した。ピーク脱着力(N)は組織からマトリクスを脱着させるのに必要な最大の力ととらえる一方、付着の仕事(J)は応力−距離曲線下の面積として計算した。
ブタ口内粘膜を使用したエクス・ビボ(ex vivo)浸透実験
ブタ口内粘膜は、地域屠殺場(Mintko Meat Packers,Krugersdorp,South Africa)からの新たに屠殺した家畜ブタの頬領域から得た。粘膜標本を収集した後、それらは1時間以内に冷蔵運搬ボックスに直ちに運ばれ、本発明者らのイン・ビボ(in vivo)研究室に移した。ブタの口内粘膜はヒトの口内粘膜と同様の非ケラチン化口内粘膜を有するためそれをこの実験用に特異的に選択した。実際、ブタの口腔粘膜はその構造および組成の観点からいずれの他の動物よりもよくヒトの口腔粘膜に似ている(Shojaelら,2001;Sudhakarら,2006)。過剰な結合組織および脂肪組織を粘膜標本から取り除いた(手術用メスおよびハサミを用いて)。実験を通して用いた平均ブタ口内粘膜の厚さは0.8±0.1mmであった。これは、手動ノギス(25×0.01mm能,Germany)を用いて測定した。その後に、切り取った標本は液体窒素中でさっと冷凍し(snap freeze)、-70℃にて2ヶ月間保存した。研究者は、組織標本を冷凍することは(液体窒素を用いてさっと冷凍するかまたは標準的な冷凍器のいずれを用いるにせよ)、かかる実験に使用する場合のそれらの拡散または浸透挙動を変化しなかった(Van der Bijlら,1998;Van EykおよびThompson,1998;Van EykおよびVan der Bijl,2004;Consueloら,2005;Giannolaら,2007)。
組織の調製および浸透実験
各々の実験を行う前に、冷凍した粘膜標本を解凍し、室温(20±0.5℃)の100mLのリン酸緩衝塩類溶液(PBS,pH7.4)中で2時間平衡化した(冷凍した際に損失した弾性を再獲得するための再水和)。PBS溶液は30分毎に新たな溶液と交換した。再水和の後に、収穫した標本から手術用ハサミを用いて粘膜ディスク(15mm径、2.27cm2の面積)を切り取り、加熱循環ウォターバス/加熱システムに連結したフロースルーFranz型拡散セル(Permegear,Amie Systems,USA)に載置した。受容コンパートメントには10mLの模擬血漿、pH7.4(表4)を含ませる一方、供与コンパートメントには2mLの模擬唾液中の薬物充填処方を含ませた。受容コンパートメント内での均質混合はマグネチックスターラーで行った。浸透実験は37±0.5℃にて各処方について3回行った。480分にわたる所定の間隔(30、60、120、240、360、480分)で、2mLの試料体積を各セルの受容コンパートメントから引き抜き、同体積の新たな模擬血漿と交換した。各実験の終わりに、セルを次亜塩素酸ナトリウムおよび70%エタノール溶液で消毒し、ついで乾燥させて次の実験の準備をした。
引き抜いた試料を、UV-可視光分光器(Cecil CE 3021,3000シリーズ,Cecil Instruments,Cambridge,England)を用いて206nmでフェニトインナトリウムについてアッセイした。模擬血漿中のフェニトインナトリウムの補正曲線を図3に示す。
膜を通しての薬物流動値(JS)は式3(Giannolaら,2007)による浸透データの線形回帰分析によって単位面積当たりの定常状態で計算した。
Figure 0005580815
式中、JSは薬物流動(mg cm-2 min-1)であり、Qrはブタ口内粘膜を通って受容体コンパートメントに入ったフェニトインナトリウムの量(mg)であり、Aは拡散に利用できた有効断面積(cm2)であり、tは分単位の暴露時間である。
均質共同粒子混合物の流動学研究
単層システムの試料を5mLの模擬唾液で水和し、37℃にてModulated Advanced Rheometerシステムを用いて分析した。マトリクスを調製するのに用いた非凍結乾燥混合物の粘度(η)および
Figure 0005580815
の観点からの流動特徴ならびに多孔性マトリクス一体性に対するその全体的影響を、Haake Rheowinデータおよびジョブソフトウェア(Haake Mars,Thermo Scientific,Waltham,MA,USA)を備えたModular Advanced Rheometer Systemを用いて調べた。レオメーターのステージは、各処方について1.5mLの試料(混合物)で満たした。ローターC35/1℃チタンセンサー型を使用した。流動測定パラメータを、25℃の操作温度、180秒の分析接触時間、0秒-1ないし5秒-1の範囲の制御した速度および0秒0秒-1ないし500秒-1の一定のずり速度で固定した。平均粘度(η)および
Figure 0005580815
値は、250秒-1の平均した一定のずり速度で計算した。
処方の表面形態特徴
処方の多孔性表面形態の性質および構造を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて可視化および特徴付けした。試料(12mm径×4mm厚さ)を金−パラジウムでスパッタコーティングし、20keVの電圧および1000×の倍率のJSM-840走査型電子顕微鏡(JEOL 840,Tokyo,Japan)下、異なる角度から4回観察した。
マトリクス多孔率の定性評価
密度の上昇は低多孔率を示すように、多孔率と密度との間には反対の関係が存在する(Dourdainら,2006)。マトリクスの多孔率(φ)は体積および重量の測定を用いた処方の真および見かけの密度から計算した。使用した数学的表現を式4に示す。
Figure 0005580815
見かけ(Papparent)およびバルク(ρbulk)の密度は、各々、乾燥および水和したマトリクスの質量および体積測定値を用いて計算した。試料の重量および寸法は、各々、計量バランス(Mettler Toledo,AB104-S,Microsep Pty Ltd,Switzerland)および手動操作ノギス(25×0.01mm能力,Germany)を用いて記録した。また、嵩密度を計算するパラメータは、その時間においてすべての処方が一定の重量増加を達成しており、マトリクス損失がまだ始まっていないため、水和後30分に測定した。すべての測定は3回行った。
マトリクスの量的多孔度分析
多孔度測定は、細孔の型に関する情報を提供する総細孔体積、表面積および平均細孔径のような材料の多孔的性質の種々の定量可能な態様を測定するために使用する分析技術である。これらのパラメータは、ASAP 2020 V3.01ソフトウェア(Micromeritics,ASAP 2020,Norcross,GA,USA)を備えた表面積および多孔率分析器を用いて2回検出した。100mgの乾燥試料重量をすべての15の処方に使用した。多孔度調査は2のフェーズ、すなわち脱気および分析のステージで行った。試料を脱気に付して空気、ガスおよび他の吸着種を試料の表面から除去した。使用した作業設定には、温度勾配率(10℃/分)、標的温度(90℃)、真空排気速度(50mmHg/秒)、非制限真空排気(30mmHg)、真空設定点(500μmHg)、真空排気時間(60分)、加熱保持時間(120℃)、保持時間(900分)、真空排気および加熱保持圧力(100mmHg)および分析時間(400分)を含めた。
調製間の可能な構造変換の解明
赤外線スペクトルは、Opus Version 6.0ソフトウェアを備えたBrucker Optic FTIR分光器(Tensor 27 Spectrometer,Brucker Optics Inc.,Billerica,MA,USA)に記録した。各々の処方について10mgの試料を機器ステージ上の試料ホルダーに載置した。分析用の試料を載置する前に、ブランク走査(バックグラウンド・スペクトル)を採った。試料は4000−400cm-1の範囲の波数、スキャン時間=32スキャンおよび解像度=4cm-1で分析した。
結果およびディスカッション
医薬剤形の層化効果
キトサンはOHおよびNH2基を有しており、水素結合を生じ得、線形の分子は十分な鎖フレキシビリティーを表し、そのコンフォメーションはイオン強度に強く依存している。また、キトサンのカチオン性の性質は、粘膜または負に荷電した粘膜表面21〜22との強力な静電気的相互作用を生じる。HPCおよびキトサンの等濃度のストック溶液(両方とも蒸留水中で混合)を調製した。一定の攪拌下でキトサン:HPCの2:1の比で溶液を合して懸濁液を調製した。この懸濁液を24時間冷凍し、つづいて48時間凍結乾燥した。得られた処方は2の異なる層:薄い色の多孔性の上層、およびより暗い色の粒状の下層、を有するように見えた。この層を成す効果は多くの理由に帰し得る。同じ濃度で製造したにもかかわらず、HPC溶液はキトサンよりもより粘性である。したがって、混合の際にキトサン粒子はHPLC溶液に懸濁していた。冷凍工程の間に、より濃いキトサン粒子は重量の影響下で型の底に沈殿する。キトサンの密度はほぼ1.35−1.40g/cm3であり、一方HPCによって示されるのは0.5g/cm3であった。また、層を成す効果に帰するものは凍結乾燥工程それ自体である。凍結乾燥には昇華による凍結した生成物からの水の除去が含まれる(昇華は、それによって凍結した液体が液体状態を通過することなく気体工程に直接的に向かう工程である)。キトサンおよびHPCの間の層を成す効果に関連するこの工程の間の潜在的に重要な相は各々前−凍結および初期乾燥(primary drying)相である。
前−凍結工程の影響
凍結乾燥は固相から気相への状態における変化のため、生成物は適当に前−凍結しなければならない。水性懸濁液を冷却すると、生成物マトリクスの溶質の濃度に変化が生じる。冷却が進行するにつれ、水は氷に変化するため溶質から分離し、溶質のより濃縮された領域が作り出される。濃縮された材料のこれらのポケットは周囲の水よりも低い凝固点を有する。
初期乾燥の影響
分子はより高い圧力の試料からより低い圧力の領域に移動する。生成物の蒸気圧は凍結生成物マトリクスからコレクターへの水蒸気の昇華を強いる。運動エネルギーは最終的に分子内に分配されず;いくつかの分子はより大きなエネルギーを有し、したがっていずれかの瞬間においてはより速い速度を有する。液体を一定温度の排気した容器に置くと、最も高いエネルギーを有する分枝が液体の表面から引き離されて気体状態に移り、いくつかの分子はその後に液体に戻るかまたは濃縮する。所定の温度で濃縮の速度が蒸発の速度と等しい場合、上記は飽和になり、動的平衡状態が確立される。その場合、液体上方の飽和蒸気の圧力は、平衡蒸気圧として知られている。蒸気圧は分子が逃げ出す傾向の定量的表現として作用する。これらの事実を考慮すると、水蒸気はキトサンからそのより高い蒸気圧に起因してキトサンからより迅速に引っ張られ、さらに下層の形成に影響する可能性がある。水蒸気はより粘稠で密度の低いHPC層からより遅い速度で引っ張られ、システムの上層の形成を生じる。溶解していないキトサンと各々のポリマー溶液との間の密度差の結果として層を成す効果が起こる。疎水性および親水性は層を成す現象で役割を演じ得るであろう。親水性ポリマー溶液は疎水性の溶解しないキトサンから分離するからである。ポリマー溶液の熱力学的な不親和性のため、層を成す現象は相分離にも帰し得る。ギブス自由エネルギーがマイナスの場合、ポリマー溶液の混和性が高まる23。ポリマーの化学は水素結合として不可欠な役割を演じ、イオン−イオン対合は混合エンタルピーに助力し、ポリマー成分は完全に混合して単層化されたマトリクスの形成を生じる凍結乾燥の前に均質な溶液を形成する23。親水性ポリマーは、通常、混和性を高めることが予想されるプロトン供与基およびプロトン受容基の組合せを有している23。これらの処方における水の存在は、ポリマー−水−ポリマー会合の形成を通して混和性を高めることが仮定される。示された予想マトリクス弾性よりも高ければ、マトリクスへの大きな剛性を付与するWDSのキトサン成分に帰することができる。WDSのキトサン成分がより大きな応力に抵抗する能力を示すにもかかわらず、セルロース成分よりもより迅速に崩壊するその能力は凍結乾燥した形態で詰まったその粒体に帰することができる。流体との接触は、これらキトサン粒の膨潤を生じ、流体が浸透するための増大した空間を生じる取り囲む粒体を示し、したがって崩壊を高める。
マトリクスの質量変化
一般的に、処方は、8mmの直径および5mmの厚さを有する白っぽいコンパクトなプラットフォームとして見えた。また、マトリクスは凸形の基部および平坦な表面を提供した。全体ではマトリクスは最低(121.95±0.95mg)から最高(133.75±0.35mg)の範囲の値を有する比較的軽い重量として記載し得る。15のすべての処方についての128.44±3.49mgの平均重量も同様に得た。マトリクス内の細孔の存在は、その密度も減少するためにその軽い重量に帰し得る。15の処方の重量における差(R=0.459)は、各処方の成分の差重量に帰し得る。処方間重量差に関しては、同じ処方から調製したマトリクス間に緊密な関係が存在した(R=0.961)。このことは、この研究に使用したP-ECMを調製する相間、共同粒子、共同溶媒、均質化技術が有効であって、同一の処方バッチ内での不均衡を最小限にする均質な混合物を生成したことを意味している。処方の平均重量を図4に示す。
生成した処方は複数−構成されたポリマー構造を表した。崩壊速度はEl-Ariniらによって概説されている方法に従って評価した。生成した距離−時間プロフィールは3の特徴的な領域を示した:崩壊が始まる前にプローブによって加えられた力に剤形が抵抗する初期領域(IR)、標的の力の探索においてプローブ距離が鋭く増大するにしたがって剤形が崩壊する上行領域(AR)、および崩壊が完了する時を示すプラトー領域(PR)。
1.崩壊の開始−IRの勾配が崩壊プロフィールのARの勾配で妨害される時間軸の投影によって決定する。
2.崩壊速度−崩壊プロフィールに対するARの傾斜
3.浸透距離−剤形へのプローブによって進められた最大距離
全体の形の平均崩壊時間は28.96秒であった。システムの平均崩壊速度は、崩壊の開始がほぼ即時的である0.1457mm/秒とみられた(図5)。このほぼ即時的な崩壊は、マトリクスの非常に多孔性の性質の結果としてである。非常に親水性のポリマーの使用は、マトリクスへの粒体浸透をさらに高める。単層化マトリクスは模擬唾液と接触させても直ちに分散しなかったが、ポリアクリル酸(PAA)の結果と考えられる不透明なゲル様の物質が観察された。ゲルは生体付着性および高い浸透性を処方に付与し、経粘膜との接触時間および表面積を増大することにより改善された薬物吸収を許容し、したがって薬物浸透性を促進する二重の役割を有する。添付する図面は、生成した試料の一部分の全体崩壊速度を表したものである。試料4は平均崩壊速度を表す。
単層化システムの崩壊から得た前記ゲルは、ずり速度が100S-1を超えると鋭く低下する比較的高い初期速度を示した。ずり応力はずり速度および時間が増大するにつれて最初に抑圧されるように見えた。それは口腔粘膜に最終的に付着し、薬物を循環に放出するゲルであるため、このことは重要である。比較的高いずり速度に抵抗するその能力と結合したこのゲルの非常に粘稠な性質は、さらに、口腔中で乱されないままでいて、最終的に一定の薬物放出を許容するその能力をさらに示している。
マトリクスからのイン・ビトロ(in vitro)薬物放出
処方構成物の量における差に起因する共同粒子分散、相間均質化重合、溶質−溶媒相互作用および凍結乾燥の種々の程度と関連し得る多様な放出パターンが15の処方について観察された。図4は15の処方の薬物放出傾向を示している。15の処方によって示された多様な溶解パターンは、平均溶解時間(MDT)という時間−点アプローチによって分析および実証した。MDTの適用は、薬物放出挙動のより正確な見方を提供する。それは全体薬物用量の特異的な画分が放出される個々の時間の合計として決定されるからである(Pillay and Fassihi,1998; Rinakiら,2003; Ansariら,2004)。式5をMDTの循環に利用した。
Figure 0005580815
式中、Mtは時間tiに放出された用量の画分であり、ti=(ti+ti-1)/2、Mは充填用量に対応する。
MDT50%データ点を15の処方について選択した。これはすべての生成したプロフィールに適用できたためである(図6)。MDT50%の数値は表7で述べる。低いMDT50%および高いMDT50%値は各々迅速または塩基した薬物放出を表す。
Figure 0005580815
すべての15の処方はt30分で薬物の突発放出のレベルを誘起し、これはその多孔性構造に帰することができる(図6)。初期の比較的迅速な放出につづいて、単位時間当たりの適度の一定量の薬物が放出されている。観察された傾向は、この薬物デリバリーマトリクスの意図した適用に有利なものである。突発的な放出一定時間にわたる薬物分子の一定の放出によって支持された薬理学的作用を開始するからである。多孔性マトリクスは8時間にわたる制御された放出システムとしての適用の可能性を示した。一般的に、処方は、逆も適用されるが(処方9、15、2)より制御された放出パターンを示した親水性成分よりもエタノールに分散した高レベルの疎水性溶質からなる(処方7、6、12)。また、細孔形成剤、水およびエタノールの量も、最大量の水(25mL)を有するもの(処方8、10、12および13)よりも最高レベルのエタノール(15mL)が迅速な放出速度を示した(処方2、8、9)。この傾向の例外は処方4であり、これはその調製に高レベルのエタノールを使用しているにも関わらずより遅い放出速度(MDT50%=220分)を示し、これは少量の親水性スパン80を含むことに起因し得る(表3)。
種々の架橋した処方が多様な放出挙動を示した:合計薬物の45−92%が1時間後にシステムから放出された(図7a-c)。放出プロフィールの比較では、非架橋型ペクチン処方が親水性薬物の適度な放出に対して比較的低い傾向を示し、薬物の82%が30分後に放出された(図7a)。架橋工程を含めた処方は、薬物のより長時間の放出を示した。前−凍結乾燥した架橋型ペクチン処方と比較した場合、カルシウム架橋は亜鉛またはバリウムよりも薬物の放出にわたり優れた制御を示したが、バリウムは薬物放出にわたって最小の制御しか発揮しなかった(図7a)。後−凍結乾燥した架橋型ペクチンに関しては、カルシウム架橋がここでも亜鉛またはバリウムのいずれかよりも薬物放出にわたって高い制御に影響した(図7b)。このことは、熱力学的に安定な分子間架橋を確立して組み込まれた薬物を有効に捕捉する整然と組織された構造を形成するカルシウムカチオンの高められた傾向に帰する。凍結乾燥工程の前後両方に架橋したペクチン処方は、単一の架橋工程に付した処方と比較して異なる放出プロフィールを与えた(図7c)。ここに、処方マトリクスに対するバリウム−架橋の適用は亜鉛−またはカルシウム−架橋のいずれかよりも大きな程度で薬物の放出を制御したが、カルシウム−架橋は最小の制御しか示さなかった。したがって、処方の凍結乾燥が何時なされたかに依存して、ペクチン分子は変化する結晶形成−沈殿−昇華サイクルに暴露され、したがって空間におけるペクチン分子の配置は異なり、最終的に架橋カチオンが分子間および分子内架橋を確立できる様式に影響した。凍結乾燥した架橋型処方は非−架橋型ペクチン処方のものと比較して放出実験の時間(3時間)にその一体性を維持し、このことは、相互接続したポリマーネットワーク構造を確立および維持する金属カチオンの傾向を示す崩壊の兆候を示した。
均質な共同粒子混合物の流動学的挙動の解明
粘度は外部の力を加えた場合の流動に対する流体均質混合物の抵抗を定量化するパラメータを記載し得るb)。15の処方についての均質な混合物の挙動は非−ニュートン型と記載することができる。なぜなら、その粘度の程度はずり条件(すなわち、ずり速度およびずり応力)に依存するからである。換言すれば、それは加えたずり応力およびずり速度でのこの変化としての単一の一定速度によって記載することができない流体として記載することができる。混合物に参照すると、ずり応力およびずり速度の増大は速度値における減少を生じる。図8Aおよび8Bは均質混合物に対する速度、ずり速度およびずり応力の間の関係を示す典型的なプロフィールを表している。15の処方について一定のずり速度で計算した平均速度値(η)は0.7893×104±0.0007×104Pa.sから8.6580×104±0.002×104Pa.sの範囲の値で異なっていた。マトリクスの表面形態と速度を比較すると、特徴付けが記録された。粘度値は、それがこの一連のデータを解釈する体系的なアプローチであったため、低(<1.05×104Pa.s)、中間(>1.05×104Pa.s<4×104Pa.s)および高(>5×104Pa.s<9×104Pa.s)として分類した。
粘度値の最低の範囲(<1.05×104Pa.s)がスポンジ状/綿毛バリア(相互接続)と結合した不規則な多孔性構造を有することが示された処方1、4、9および13(図6a、d、およびm)について記録された。処方13はこのクラスの他のものと比較して最低の拡がりの綿毛表面形態を有しており、これはそのより高い粘度値に帰し得る。処方6、7、8、10、12および13は中間粘度値(>1.05×104Pa.s<4×104Pa.s)を有し、一般的にそれらは処方8を除いて非対称の寸法および剛直/稠密な相互接続を有する多孔性構造を示した(図6f、g、jおよびl)。処方2、5、3、11、14および15は高い粘度の程度(>5×104Pa.s<9×104Pa.s)を生成し、それらの表面は織物様の低密度の相互接続を有する、大きな体積の分布を有する円形多孔性構造で特徴付けられた。この傾向の例外は、処方14である。異なる粘度値の説明を図9に示す。全体として、粘度が冷凍および凍結溶媒の昇華(固体から気体への変換)の工程に影響を有して、凍結乾燥の間にマトリクス間多孔性構造(細孔の結合構造、相互接続、細孔の幅および細孔体積の分布)を作り出すことが提唱し得る。溶媒の流動特性は均質な混合物中に存在する溶質共同粒子によって妨害される。
Figure 0005580815
は加えた圧縮力のある外部の力に起因する均質な混合物の初期構造における変化として記載することができる。15の処方の均質な混合物は、一定の変形の程度を示した(図10)。この試験の結果は、混合物が外的に働いた力に対して強くかつ安定していることを示唆している。また、これは、マトリクスを調製する工程(均質化および凍結乾燥)の間の成分中の不可逆的な化学的相互作用または変換が存在しないことを示し得る。換言すれば、マトリクスの調製方法は、成分の化学的な基幹構造ならびに処方の全体有効性を高める個々の寄与する特性を不可逆的に変えずそれらの意図する用途に適応する物理的相互作用として記載することができる。
マトリクスの量的ポロシメトリー分析
ポロシメトリー分析は、全体細孔体積、表面積、平均細孔径および細孔相互接続指数を定量化した。この調査は、各処方の生成したSEM写真(図20)ならびに定性多孔率測定(図9)によって示された知見を列挙した。平均細孔径は、6.5×10-4cm3/gおよび9.5×10-3cm3/gの値を有する細孔分布の測定値として累積細孔体積を有する40Åないし100Åの範囲であり、一方で累積表面積は28cm2/gないし800cm2/gにひろがっていた。前記した数に関する測定は、P-ECMの性能が相互接続の一体性および構造ならびに表面積をも示す細孔体積の分布に非常に依存することを立証している。これらのパラメータは各処方について変化し、このことは、物理化学的および物理機械学的品質に大きな衝撃を有することが観察される。図11、12および13は、各々、15の実験設計処方について測定した平均細孔径、累積細孔体積および表面積を示す。細孔径の範囲は、15の処方はそれらの径が20Åないし500Åであるため事実上メソ多孔性であることを示した。
医薬剤形の物理化学的特性を解明するためのテクスチャープロフィール分析
力−距離および力−時間プロフィール上のアンカー1および2(図16および17)は処方のセルロース成分の表示であり、アンカー2および3はキトサン成分を表す。アンカー3および4は全体として処方に対応する。セルロース層の平均マトリクス終了および許容値(各々、0.447N/mm;1.965N.mm)はその高い多孔性性質に起因してキトサン層のもの(各々、0.859N/mm;7.198N.mm)よりも低い。
15の処方について測定した物理化学的パラメーターは、マトリクス弾性(MR)、マトリクス歪みのエネルギー(εD)およびマトリクス硬度(MF)であった(表6)。マトリクス弾性は、外部の圧縮ひずみを加えた後にその元の寸法に回復する能力であるマトリクスの弾性凝集性(elastic cohesiveness)として記載することができる。マトリクス硬度は物体の所定の変形を達成するのに必要な力の測定値であり、一方、歪みのエネルギーは材料内の粘着力および凝集力を克服するために行うジュール単位の仕事(または消失したエネルギー)である。これらのパラメータは、高いマトリクス弾性、硬度および低い歪み値のエネルギーが高いマトリクス強度を示すようなマトリクス一体性および頑丈さの測定値である。この実験の結果については、マトリクス弾性(MR)および硬度(MF)の間に直接的な関係が観察されたが、マトリクス歪みのエネルギー(εD)登坂対の関係が観察された。換言すれば、弾性における増大はマトリクス硬度の増大を生じ、マトリクス歪みのエネルギーの減少を生じた。さらに、高レベルのマトリクス強化剤(ポリビニルアルコール;PVA、ステアリン酸マグネシウム;MSおよびエチルセルロース;ETH)を含有する処方(処方1、2、4、7、12、13)は高いMRおよびMFならびに低いεDを有する一方、低レベルのマトリクス強化剤を有する処方(処方3、5、11、12、14、15)については反対のことが観察された。物理化学的パラメータの数値は、マトリクスが、その中のボイドスペースの存在によって特徴付けられる多孔性構造に起因し得る低い弾性または回復(外部応力からの)傾向および変形に対する抵抗(表8)を有することも示している。
Figure 0005580815
剤形のDEEは72%の平均値を有して55-86%の範囲であった(図18)。
処方の薬物装填容量
有効薬物充填は、53.14±2.19%ないし99.02±0.74%の範囲の値で達成された(表9)。
Figure 0005580815
エクス・ビボ(ex vivo)生物接着試験
モデル生物組織(ブタ口内粘膜)に接着する処方の能力が、脱着のピーク力(Fdet)(0.9636±0.015N〜1.042±0.025N)および接着の仕事またはエネルギー(wadh)(0.0014±0.00005J〜0.0028±0.00008J)(図19)によって明らかになった。処方の調製の間に含めた生物接着性化合物(ゼラチンおよびカーボポール)の量における差異によっては特異的な傾向は観察されなかった。ゼラチンおよびカーボポールはマトリクスの全体接着特徴に影響することにおいて互いに補足していると提唱し得る。このことは、なぜ全ての処方がレベル生物接着能力を示したかを説明している。また、FdetないしWadhに直接的または逆に関連する特定のパターンは存在しなかった。このことは、FdetがWadhの値に特異的に影響しなかったことを意味している。このことは、生物接着の間に消費されたエネルギーまたは脱着の力が生物接着の特性に依存し得るマトリクス、組織および模擬唾液ならびに各マトリクス内に存在する他の共同粒子の間の表面間の静電気的相互作用によって大きく影響されるという事実に帰し得る。
マトリクス表面形態
走査型電子顕微鏡は、比較的似ている幾つかのものも含むマトリクスによって示される細孔構造、分布および相互接続の多様性を示した。その表面多孔性外形はむしろ複雑で、不規則で広範囲であった(図20)。一般的に、観察される細孔構造の種類は円形(図20(b、c、e、h、k、mおよびo)ないし非対称の外形または形状を有するもの(図20a、d、f、g、l、jおよびn)の範囲であった。細孔はマトリクスの表面全体にわたって比較的広範囲にひろがっていた。細孔の境界を画定するバリアまたは仕切りとして記載し得る相互接続はむしろ一様でなく、剛直な(図20f、g、jおよびn)、織物様/糸様(図20b、c、e、h、k、mおよびo)およびスポンジ状(図20a、dおよびi)の構造を示した。
さらに、表面形態とマトリクスの薬物放出特徴との間に関係が観察された。細孔相互接続がその薬物放出性能において顕著な役割を演じることが観察された。織物様、糸様およびスポンジ状の相互接続を有するマトリクス(図20a、b、c、d、e、h、i、k、mおよびoは処方1、2、3、4、5、8、9、11、13および15を表す)は8時間にわたって65%を超える薬物を放出した迅速であるが制御された放出速度を示した(図4)。各々、薬剤放出が8時間にわたって遊離された65%未満であるより遅い場合の処方6、7、10および14を表す図20f、g、jおよびnのような剛直な相互接続を示した処方では逆のことが観察された。その結果、相互接続が多孔性マトリクス内のバリアとして機能し、マトリクス水和、解放、薬物の拡散および浸食を調節する役割を演じるという仮定を行い得る。
マトリクスを調製する際に加えた細孔形成剤の量は、マトリクスの多孔性特徴に対して大きな影響を有することを特記する。また、エタノールは、その体積におけるわずかな増加が細孔構造に目に見える変化(すなわち、高い多孔性)を生じたため、この実験に関しては水よりも強力な細孔形成剤であることが示された。例えば、最高レベルのエタノール(13mLおよび15mL)を含有する処方2、3、5および11は、より小さい細孔の体積を生じる最大体積の水(30mL)を含む処方1、4および15(図6a、dおよびo)と比較した場合により大きな体積の細孔を示した(各々、図6a、b、c、eおよびf)。低レベルのエタノール(10mL)からなる処方7、12および14を用いた場合、細孔分布は小さく、より剛直な相互接続の存在を示した(図8a、g、lおよびn)。また、処方6、8、9、10および13(図6f、h、l、jおよびm)はこの傾向の例外であり、これは凍結乾燥の工程の間のマトリクスからの細孔形成剤の昇華に対する共同粒子成分の影響に起因し得る。
ブタ口内粘膜を通る薬物の浸透
処方の浸透向上能力を調べ、その結果を15の処方についての8時間にわたる累積薬物浸透(%)および薬物フラックス(mg cm-2 min-1)として図21および22に各々示した。薬物フラックス値は、式2を用いて計算した。異なる量の薬物分子(パーセント)が設定した実験時間内に組織を通過するように、全体として処方は多様な浸透向上能力を示した(図21)。
異なるレベルの各浸透向上剤(ソルビタンエステル80、キトサンおよびメタノール)が互いに複雑な共同相互作用の合した影響を有したが、浸透向上に対する影響の比較的密着した一般的なパターンが顕著であった。要約すると、浸透向上剤は中ないし低レベル(処方1、2、3、5、8、9、11、13、14および15)で最も有効であることが観察された一方で、最高レベルの向上剤については逆のことがあてはまった(処方4、7および12)。述べた傾向に対する幾つかの例外には、処方6および10が含まれた。
フラックスは、単位表面積当たりの薬剤浸透の割合として記載し得る。処方は浸透向上剤ならびに各マトリクス内の他の成分の間の複雑な相互作用に起因し得るそのフラックスにおける差異を示した。この実験に関しては、組織を通って受容コンパートメントに浸透した薬物の量と薬物フラックスとの間に非−線形の関係が存在した(図22)。換言すれば、組織を通って浸透する薬物分子の割合(フラックス)は最終的に受容コンパートメント中で検出される薬物の量の決定因子ではなかった。
マトリクス多孔性の定性的測定
この実験の結果は、すべての処方が74.93%ないし86.12%の範囲の値を有する多孔性であることを示した(図23)。細孔はマトリクス内のボイドスペースであるため、この場合における多孔性は空の空間または細孔を満たすマトリクスへの水分子の流入を測定する。その結果、定性的多孔性の数値における増大はより多孔性のマトリクスおよびその逆の指標となるべきである(図23)。処方について得られた変化する多孔性値の影響をさらに評価するために、その薬物放出特徴および表面形態を用いて比較を行った。一般的に、低い多孔性値≦79.90%を有する処方(処方1、6、7、12および14)は、薬物放出の速い速度を示した>80.49%の高い多孔性値を有するもの(処方2、8、9および10)と比較した場合により遅い放出速度を示した(図23)。
この結果の幾つかの例外には、低い多孔性値を有する処方3、11、13および15ならびに高い多孔性値を有する処方4が含まれたが、各々、速いおよび遅い放出速度を示した。挙動におけるこの逆転は、各マトリクスの細孔相互接続の影響の結果とし得る。したがって、細孔構造に加えて、細孔相互の性質も水の流入、水和およびこれらマトリクスの解放に影響し、それは続いて定性的マトリクス多孔性に影響し、多様な様式での薬物放出を前面に押出し得る。
調製の間の構造変換
FTIR実験を行って、マトリクスの調製における化合物と薬物との間の可能な相互作用を検出した。各処方のFTIRスペクトルは、マトリクスの調製用に含まれる各成分の濃度における変動に帰することができる透過率値における差異を示すピークに僅かな変動を有して、互いに同様のパターンを示した(図24)。その結果、処方の調製の間に成分内に変換する不可逆的な化学的相互作用が起こらなかったことを提案し得る。換言すれば、共同粒子混合物は薬物および他の化合物の合計にすぎず、調製の工程の間に各成分がその物理化学的特徴を維持したようである。
結論
製造した複数−構成された医薬剤形は、その可撓性に基づいて経粘膜ドラッグデリバリーシステムデリバリーに好適なものとし、全身吸収するための薬物の迅速な遊離を意味する、迅速および/または持続した薬物放出および比較的完全な崩壊を行い得る。このことに加えて、システムの層を成す効果の新しさは、当該システムを単一の剤形中の1を超える薬物のデリバリーに潜在的に有用なものとする。多孔性マトリクスを利用する迅速なドラッグデリバリーは進歩している分野である。比較的費用的に有利であって製造するのが単純であることに加えて、それは、ドラッグデリバリーの非常に効率的で、多用途で、かつ有効な手段でもある。このことは、経粘膜経路を介して剤形を使用して迅速または持続した、簡単かつ非−侵襲性の薬物療法を患者に提供することができることに大きく起因する。多孔性マトリクス技術を介してドラッグデリバリーを高める新規な方法を調査する医薬産業による要望は膨大な数である。これは、市場における、特に迅速または持続的な作用の開始を要求する、現在使用されている抗レトロウイルス剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、制吐剤、抗炎症剤、止痢薬、マルチビタミン、ミネラル、微量元素、植物栄養剤および鎮静剤の再処方に関して有利な立場を提供し得る。生成した複数−構成された剤形に取り込まれた薬物は、抗−レトロウイルス剤または疝痛薬を要求する小児患者、老人、意識を失った患者および集中治療ユニットに閉じ込められた患者のような、錠剤を飲み込むことおよび/または注射を受けることに問題があることが見出される個人にも有益であろう。
この仕事は、モデルとして口内粘膜を利用する経粘膜ドラッグデリバリーに適用するための、かかる新規な多孔性−対応のコンポジット多層化および/または一体式のマトリクスを開発するのに利用し得る貴重な情報を提供する。物理化学的な強度、薬物装填容量および放出、浸透向上、表面構成、流動性および生体付着能力に対する多孔性(細孔構造、相互接続、細孔幅および細孔体積の分布)および全体的な調製技術の影響を確立した。相間、共同粒子、共同溶媒、均質化および凍結乾燥、細孔−調節されたマトリクスは、これらの方法の有効性を示す混合物の安定性、可撓性および粘弾性に対して不可逆的な歪ませる効果を有していなかった。なぜなら、担体が、処方を構成する個々の化学化合物の寄与する効果を保有したからである。さらに、得られた架橋した凍結乾燥システムは、逐次の経粘膜ドラッグデリバリー用の取り込んだ薬物のコントロールドデリバリーを許容し得た。調べた物理化学的および物理機械学的な性質は、このマトリクスの長時間作用性の経粘膜ドラッグデリバリーシステムデリバリーに適用すべき潜在性を明らかにした。処方で観察された異なる可撓性の特徴は、細孔−対応マトリクスは用途を広くすることができ、それによって適合した発明およびドラッグデリバリーシステムの構築に魅力的なものとなり得ることを意味している。
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Claims (7)

  1. 体液との接触によりゲルを形成する多孔性ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)層;および
    体液との接触によりHPC層よりも迅速に崩壊するキトサンから形成された粒状層を含むことを特徴とする、粘膜表面の医薬上有効な化合物のデリバリー用の二層の経粘膜医薬剤形であって、
    等濃度のキトサンおよびHPCを各々有するキトサン溶液およびHPC溶液を2:1の比で合した懸濁液を冷凍することにより得られる該経粘膜医薬剤形
  2. HPC層のゲルが、拡散性バリアを形成することを特徴とする、請求項1記載の経粘膜医薬剤形。
  3. HPC層および粒状層が、硫酸亜鉛、塩化バリウムおよび硫酸カルシウムよりなる群から選択された架橋剤で架橋されていることを特徴とする、請求項1または2記載の経粘膜医薬剤形。
  4. 粘膜表面の医薬上有効な化合物のデリバリー用の二層の経粘膜医薬剤形の形成方法であって、
    a)ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)溶液、溶解していないキトサンの溶液および医薬上有効な化合物を合して、懸濁液を形成し;
    b)懸濁液を型に入れ;次いで
    c)懸濁液を凍結させ、その工程の間に、2つの別個の層を形成し、ここに、上層は、HPC層であり、下層が粒状のキトサン層である
    工程を含み、
    等濃度のキトサンおよびHPCを各々有するキトサン溶液およびHPC溶液が、2:1の比で混合されることを特徴とする、該形成方法。
  5. 懸濁液が、硫酸亜鉛、塩化バリウムおよび硫酸カルシウムよりなる群から選択された架橋剤を含むことを特徴とする、請求項記載の方法。
  6. HPC溶液が、細孔形成剤を含むことを特徴とする、請求項または記載の方法。
  7. 細孔形成剤が、水またはエタノールであることを特徴とする、請求項記載の方法。
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