JP5580022B2 - 加工方法及び加工装置 - Google Patents

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Description

本発明は、大型部品のNC加工に適した加工方法、及び、該加工方法を使用する加工装置に関するものである。
従来、製造しようとする部品の大きさに合わせて材料を切り出し、その端部をチャックに把持させた上で所定角度回転させ、その角度位置を保持した状態で、回転工具によってNC加工する加工方法が実施されている(例えば、特許文献1参照)。ところが、航空機部品など大型の部品を製造する場合、ワークの断面積は大きなものとなるため、しっかりと把持した上で回転させることは極めて困難である。
加えて、上記のような加工方法では、チャックの把持代(はじしろ)は加工することができないため、その部分の材料は廃棄対象となる。従って、大型のワークを把持することができたとしても、ワークが大型となれば把持代となる部分も大きくなるため、資源としての無駄、及び、経済的な無駄が著しいものとなる。
そこで、本発明者は、ネジやボルト等の小型の部品を製造するために従来から実施されている技術(例えば、特許文献2参照)に着目した。これは、細い長尺のワークを中空のチャックに挿通し、ワークを回転させつつチャックから突出した部分を旋盤加工し、加工済みのワークを切り落とした後、更にワークを先送りして、新たにチャックから突出させた部分で次の部品の加工を行うものである。この技術によれば、チャックの把持代は、ワークの先送りによって次に加工される部分となるため、材料の無駄を低減して部品を製造することができる。
しかしながら、特許文献2に例示される従来技術で加工できるワークは、大きくても直径が数cm程度までのごく小径のバー材に限られる。これに対し、航空機部品など大型の部品を製造するためには断面積の大きな材料が必要であり、重量は長さの三乗に比例して増大するため、長尺であることに加えて断面積が大きいワークの重量はかなり大きなものとなる。そのため、ごく小径のワークを加工する従来の加工装置をそのまま大型化したとしても、断面積の大きな長尺のワークを把持した上で回転させることはできない。
加えて、ネジやボルト等、単純な単一形状の部品を多量に製造する場合とは異なり、航空機や自動車などの大型部品を製造する場合は、複雑な形状で、且つ、形状の相違する多品種の部品を、一つの加工装置で加工できることが要請される。
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、断面積が大きな長尺のワークであっても、材料の無駄を低減して加工できると共に、複雑形状の多品種の部品を加工することが可能な加工方法、及び、該加工方法を使用する加工装置の提供を課題とするものである。
上記の課題を解決するため、本発明にかかる加工方法は、「長尺のワークを、ワーク前端部が突出した状態で把持装置に把持させる把持工程と、ワークが前記把持装置に把持されている状態で、回転工具が取り付けられて前記把持装置の前方に位置する多軸ロボットで、前記ワーク前端部を加工する加工工程と、ワークが前記把持装置に把持されている状態で、加工済みの前記ワーク前端部をワークの未加工部分から切り離す切り離し工程と、前記把持装置の側方からプレートを前進させて、未加工部分から切り離された加工済みの前記ワーク前端部を受け取り、前記ワーク前端部を載置した前記プレートを後退させる工程と、ワークが前記把持装置から解放されている状態で、ワークを長軸方向に前進させ、未加工のワーク前端部を把持装置から突出させるワーク送り工程とを具備し、ワークは、前記把持工程で前記把持装置に把持させた後、前記切り離し工程で切り離されるまで、変位させられることなく一の姿勢に保持される」ものである。
本発明の加工方法では、ワーク前端部が把持装置から突出した状態で、長尺のワークを把持装置に把持させたら、そのままワークが静止している状態で、多軸ロボットを用いて回転工具によりワークを加工する。そして、所定形状への加工が終了したら、加工済みワークを未加工部分から切り離す。その後、把持装置によるワークの把持を解除し、ワークを長軸方向に更に前進させ、未加工のワーク前端部が新たに把持装置から突出した状態で、再び把持装置によってワークを把持する。そして以降は、上記の動作を繰り返すことにより、長尺のワークから連続的に部品を製造することができる。
このように、本発明では、特許文献2に例示する従来の加工方法とは異なり、加工の際にワークを回転させない。また、特許文献1に例示する従来の加工方法とは異なり、回転工具による間欠的な加工の間に、ワークを揺動させたり、反転させたりすることがない。加えて、把持装置がワークを把持する部分を加工の途中で変更する動作、いわゆるワークの“持ち替え”を行うこともない。従って、本発明では、ワークは把持工程で把持されてから加工が終了して切り離されるまで、全く動かされることがないため、断面積が大きく重量の大きなワークであっても、加工の対象とすることができる。
また、本発明の加工方法で把持装置に要請されることは、加工工程に先立ってワークを把持したら、加工が終了して加工済み部分が切り離されるまで、そのままワークを動かすことなく、がっちりと把持することである。一般的に、物を把持する構成として剛性の高い構成を採用すると、自ずと装置の重量が増し、装置自体を回転させたり移動させたりすることが困難となる。これに対し、本発明ではワークを回転させる機構が不要であるため、把持装置は単にワークを把持するためだけのシンプルな構成で足りる。これにより、把持装置に剛性の高い構成を採用することによって、断面積が大きく重量の大きなワークであっても、堅固に把持することが可能となる。加えて、本発明では、回転工具による間欠的な加工の間にワークを反転させたり持ち替えたりすることもないため、ワークの位置を調整する面倒な制御も不要である。
上記のように、本発明では、断面積が大きく重量の大きなワークであって加工することができ、把持装置によるワークの把持代は、ワークの先送りによって次に加工される部分となる。これにより、断面積が大きいワークでは把持代となる部分も大きくなるところ、把持代を廃棄対象となる無駄を排し、長尺のワークの全体を有効に利用して部品を加工することができる。
また、本発明では、加工の初めから終わりまで、ワーク側を変位させることはないが、加工を行う工具側に多軸ロボットを用いている。これにより、回転工具をワークに対して多方向からアプローチさせることができ、複雑な三次元形状の多品種のワークを加工することが可能となる。
次に、本発明にかかる加工装置は、「長尺のワークを把持及び解放すると共に、ワークを把持した状態ではワークを変位させることなく一の姿勢に保持する把持装置と、回転工具の主軸を備えて前記把持装置の前方に位置し、前記把持装置からワーク前端部を突出させた状態で前記把持装置に把持されているワークを、前記主軸に取り付けられた回転工具で加工すると共に、加工済みの前記ワーク前端部をワークの未加工部分から切り離す多軸ロボットと、前記把持装置の側方に位置し、プレートを前進させて、未加工部分から切り離された加工済みの前記ワーク前端部を受け取り、前記ワーク前端部を載置した前記プレートを後退させるワーク受け取り装置と、前記把持装置から解放されている状態のワークを、長軸方向に前進させるワーク送り装置とを具備する」ものである。
上記構成の加工装置によれば、上述の加工方法を使用することができ、上述の優れた作用効果を得ることができる。
本発明の加工装置は、上記構成において、「前記多軸ロボットは、固定フレーム、それぞれ一端が第一自在継手を介して前記固定フレームに連結されていると共に軸方向の長さが可変な三本以上のロッド、及び、前記ロッドのそれぞれの前記他端が第二自在継手を介して連結されている移動フレームを備えるパラレルリンク機構部と、前記移動フレームと前記第二自在継手との連結点の全てを結んで形成される平面に直交する第一軸周りに回転可能に前記移動フレームに支持されていると共に、前記第一軸に直交する第二軸周りに揺動可能に前記移動フレームに支持されている移動体とを備え、回転工具の前記主軸は、前記移動体に支持されている」ものとすることができる。
パラレルリンク機構部では、三本以上のロッドのそれぞれが第一自在継手を介して固定プレートに対して揺動する角度、及び、各ロッドの軸方向の長さを変化させることにより、固定プレートに対する移動プレートの位置及び姿勢を種々に変化させることができる。これにより、移動体を介して移動プレートに支持されている回転工具の主軸を、三次元座標における種々の座標に変位させることができる。
加えて、本発明の多軸ロボットは、パラレルリンク機構部において三軸以上を有することに加えて、移動体が移動プレートに対して第一軸周りの回転及び第二軸周りの揺動という二軸の運動を行うことが可能であるため、全体として五軸以上となる。従って、多軸ロボットを上記構成とすることにより、非常に複雑な形状のワークを加工することが可能となる。また、一般的に、パラレルリンク機構はシリアルリンク機構に比べて、動作部分(本発明では「移動プレート」)の動作速度が速く、動作精度が高いという利点を有している。従って、本発明の加工装置によれば、多軸ロボットにパラレルリンク機構を使用していることにより、高精度の加工を高速で行うことができる。
本発明の加工装置は、上記構成において、「前記把持装置は、ワークを載置する水平な載置面と、鉛直方向に進退し前記載置面に向かう前進によりワークを前記載置面に押圧する押圧体、及び、水平方向に進退し前記載置面に垂直な垂直基準面に向かう前進によりワークを前記垂直基準面に押圧する第二押圧体の少なくとも一方とを備える」ものとすることができる。
航空機部品や自動車部品など大型の部品を製造する場合、これらの部品の一般的な形状を考慮すると、断面が円形の丸棒状のワークよりも、断面が矩形の角材の方が適している。上記構成の把持装置は、このように断面が矩形である長尺のワークの把持に適している。すなわち、水平な載置面を有するため、ワークの一側面が載置面に当接する状態でワークを載置面に載置することにより、ワークを安定的に支持することができる。そして、その状態で押圧体を鉛直方向(載置面に垂直な方向)に前進させ、または/及び、第二押圧体を水平方向(垂直基準面に垂直な方向)に前進させることにより、押圧体でワークを載置面に向かって強く押し付け、または/及び、第二押圧体でワークを垂直基準面に向かって強く押し付けることができる。これにより、押圧体と載置面との間、または/及び、第二押圧体と垂直基準面との間でワークを堅固に把持することができる。
ここで、従来の加工装置の把持装置では、三つまたは四つの爪状の把持部(ジョウ)を、それぞれ等速で内側に向けて移動させることによってワークを把持する構成が多く採用されている。これは、加工のためにワークを回転または揺動させるために、ワークの中心(重心)をワークの回転中心に一致させる(センタリングする)必要があるためである。ところが、このような構成の把持装置では、断面積が大きくかなりの重量を有するワークを堅固に把持することは困難である。加えて、断面が矩形のワークであって断面の縦横の長さが異なるワークを把持する場合などは、複数の爪部を内側へ移動させることにより、ワークをセンタリングしつつバランスよく把持することは、極めて困難である。
これに対し、本発明の加工装置では、ワークを保持した把持装置は回転させることも揺動させることもなく、加工の最初から最後までワークは一の姿勢に保持されるため、ワークをセンタリングする必要がない。そのため、ワークを押圧体と載置面との間、または/及び、水平基準面と第二押圧体との間で把持する上記構成、すなわち、ワークの断面の寸法が異なれば把持装置に対するワークの軸心位置が変動する構成を採用することが可能であり、上述のようにワークを堅固に把持することができる。
以上のように、本発明の効果として、断面積が大きな長尺のワークであっても、材料の無駄を低減して加工できると共に、複雑形状の多品種の部品を加工することが可能な加工方法、及び、該加工方法を使用する加工装置を提供することができる。
本実施形態の加工装置の斜視図である。 図1の加工装置における把持装置の主要部を、多軸ロボット側から見た図である。 図1におけるA範囲の拡大図である。 図1の加工装置における多軸ロボット及びその近傍の構成を示す斜視図である。 図4の部分拡大図である。 図1の加工装置における工具交換装置の主要部の平面図(真上から見た図)である。 図1の加工装置におけるワーク受け取り装置の斜視図である。
以下、本発明の一実施形態である加工方法及び該加工方法を使用した加工装置1について、図1乃至図7に基づいて説明する。
本実施形態の加工装置1は、主に図1に示すように、長尺で断面矩形のワークWを把持及び解放すると共に、ワークWを把持した状態ではワークWを変位させることなく一の姿勢に保持する把持装置20と、回転工具の主軸Rを備え、把持装置20からワーク前端部Eを突出させた状態で把持装置20に把持されているワークWを、主軸Rに取り付けられた回転工具で加工すると共に、加工済みのワーク前端部EをワークWの未加工部分から切り離す多軸ロボット40と、把持装置20から解放されている状態のワークWを、長軸方向に前進させるワーク送り装置30とを具備している。
上記構成において、把持装置20は、主に図2に示すように、ワークWを載置する水平な載置面11と、載置面11に垂直な垂直基準面12と、鉛直方向に進退し載置面11に向かう前進によりワークWを載置面11に押圧する押圧体21と、水平方向に進退し垂直基準面12に向かう前進によりワークWを垂直基準面12に押圧する第二押圧体22とを備えている。
ここで、押圧体21及び第二押圧体22は、それぞれ油圧シリンダ21b,22bのピストンロッドにより駆動される。また、本実施形態では、押圧体21及びこれを駆動する油圧シリンダ21bは一組が設けられていると共に、第二押圧体22及びこれを駆動する油圧シリンダ22bは二組が上下に設けられており、断面長方形のワークWの長辺を鉛直方向に一致させて把持する場合に適した構成となっている。なお、ワークWの寸法によっては、二つの第二押圧体22のうち、下段の第二押圧体22のみを駆動することが可能である。
また、把持装置20に隣接して、ワークWを把持装置20に導入するための導入路13が上面に形成された架台19が設けられており、導入路13は、ワークWを移動させる方向に直交する方向に伸びる軸(図示しない)周りに回転自在な円筒状ローラ13rを多数連設することにより形成されている。ここで、導入路13は、多数連設された円筒状ローラ13rの稜線の集合として得られる仮想的な面であり、水平な載置面11と同一面を形成している。加えて、円筒状ローラ13r及びその回転軸は、断面積の大きな長尺のワークWの荷重に耐え得るべく、高剛性に形成されている。かかる構成により、長尺のワークWのたわみを防止して、載置面11及び導入路13上にワークWを安定的に載置することができる。
ワーク送り装置30は、ワークWの後端を押すことによりワークWを把持装置20側に送る構成であり、主に図3に示すように、導入路13に沿って移動可能に設けられている。より詳細には、ワーク送り装置30は、導入路13に交差するように伸びてワークWの後端に当接可能なワーク押し部材31と、ワーク押し部材31を導入路13に沿って進退させるワーク押し部材駆動機構35とから構成されている。本実施形態では、ワーク押し部材駆動機構35は、導入路13の片側に直線状に形成されたラック(図示しない)と、ラックと噛み合うピニオン(図示しない)と、ピニオンを正逆方向に回転駆動するモータ36と、ピニオンと一体的に運動する伝動部材37とを具備しており、伝動部材37がワーク押し部材31に連結されている。
かかる構成により、モータ36の駆動によりピニオンは正方向または逆方向に回転し、ラックと噛み合いながら導入路13に沿って把持装置20に近付くように、または、把持装置20から遠ざかるように移動する。そして、このようなピニオンの移動に伴い、ワーク押し部材31が伝動部材37を介して、導入路13に沿って把持装置20に近付くように、または、把持装置20から遠ざかるように移動する。
なお、本実施形態のワーク押し部材31には、ワークWの後端でワークWを左右から挟持可能な一対の挟持部材32が取り付けられており、一対の挟持部材32はそれぞれ油圧シリンダ32bによって駆動されるピストンロッドの進退に伴い、導入路13に直交する方向に形成されているレール33に沿って離隔接近する構成とされている。かかる構成により、油圧シリンダ32bの駆動によって一対の挟持部材32を互いに接近させ、ワークWの後端をしっかりと挟持させた状態でモータ36を回転させれば、ワーク押し部材3131によって確実かつ安定的にワークWを移動させることができる。
次に、多軸ロボット40について説明する。本実施形態の多軸ロボット40は、主に図4及び図5に示すように、固定フレーム50、それぞれの一端が第一自在継手51を介して固定フレーム50に連結されていると共に軸方向の長さが可変な三本のロッド53(図4及び図5では、三本のロッド53のうち二本が図示されている)、及び、それぞれのロッド53の他端が第二自在継手52を介して連結されている移動フレーム54を備えるパラレルリンク機構部41と、移動フレーム54に支持された移動体42とを具備している。
より具体的には、固定フレーム50は枠体58を介して設置面に支持されており、各ロッド53は、第一自在継手51を貫通するように、第一自在継手51を介して固定フレーム50に支持されている。そして、各ロッド53にはボールネジ部(図示しない)が形成されており、第一自在継手51の内周面にはボールネジ部と螺合するナット部(図示しない)が、回転自在に取り付けられている。かかる構成により、モータ(図示しない)の駆動によってナット部を正逆回転させると、これに伴いロッド53の長さが伸張または短縮する。そして、NCデータに基づいてコンピュータから多軸ロボット40に対して信号を送出し、各ロッド53における第一自在継手51を介した固定プレートに対する揺動角度、及び、ロッド53の長さを制御することよって、移動フレーム54の三次元座標を種々に設定することができる。
なお、本実施形態では、三本のロッド53は固定フレーム50に対して同一円周上に等角度間隔(120度間隔)で連結されている。また、三本のロッド53の中心位置には、パラレルリンク機構部41の剛性を高める中央ロッド56が取り付けられている。この中央ロッド56は、一端が自在継手57を介して固定フレーム50に連結され、他端が移動フレーム54に連結されていると共に、軸方向の長さが可変な構成であるが、ロッド53とは異なり能動的に長さの調整が行われることはない。すなわち、中央ロッド56は、移動フレーム54の運動に従動しつつ、移動フレーム54及び移動フレーム54に取り付けられた移動体42を支持する。
そして、移動体42は、移動フレーム54と第二自在継手52との連結点の全てを結んで形成される仮想の三角形平面Sに直交する第一軸P周りに回転可能に移動フレーム54に支持されていると共に、第一軸Pに直交する第二軸Q周りに揺動可能に移動フレーム54に支持されている。更に、移動体42には、回転工具の主軸Rが支持されている。すなわち、主軸R周りの回転によりワークWを加工する回転工具Tは、ロッド53の揺動及び長さの制御によって位置決めされる移動フレーム54に伴って三次元の移動をすると共に、第一軸P周りの360度の回転、及び第二軸Qり周りの揺動が可能な構成である。かかる構成により、多軸ロボット40によれば、ワークWに対して種々の方向から回転工具Tをアプローチさせ、ワークWを複雑な形状に加工することが可能となる。
なお、多軸ロボット40では、主軸R近傍からクーラント液を噴出する構成とされており、切削屑やクーラント液の飛散を防止するために、多軸ロボット40の動作空間はケーシング59で被覆されている(図1参照)。
本実施形態の加工装置1は上記構成に加え、図4及び図6に示すように、主軸Rに取り付けられる工具を交換するために、多数種類の工具を収納する工具ボックス69と、工具交換装置60とを具備している。より具体的には、工具ボックス69内には、それぞれ工具を収容可能な収納用工具ホルダーh1が多数列設されている。そして、工具交換装置60は、工具ボックス69から多軸ロボット40の動作空間の下方まで延びるレール61と、レール61と係合する溝部が底面に形成された工具ホルダー支持体62と、工具ホルダー支持体62のレール61に沿った往復動を駆動するホルダー支持体駆動装置(図示しない)と、工具ボックス69内で動作する工具交換用多関節ロボット65を備えている。そして、工具ホルダー支持体62には、交換用の工具を保持可能な交換用工具ホルダーh2が二つ支持されている。なお、本実施形態では、ホルダー支持体駆動装置としてエアシリンダを使用している。
上記構成により、工具の交換は次のように行われる。すなわち、工具交換用多関節ロボット65は、コンピュータ制御によって動作し、レール61の工具ボックス69側の端部に工具ホルダー支持体62が位置している状態で、収納用工具ホルダーh1と交換用工具ホルダーh2との間で工具の移し替えを行う。その際、次の加工で使用される工具T2は、二つある交換用工具ホルダーh2の一方に、主軸Rへの取付部分が上を向くようにセットされる。他方の交換用工具ホルダーh2には工具はセットされず、空の状態におかれる。そして、多軸ロボット40によるワークWの加工に連動したタイミングで、工具ホルダー支持体62はホルダー支持体駆動装置の駆動によりレール上を移動し、多軸ロボット40の動作空間側のレール61の端部に位置する。この状態で、多軸ロボット40は主軸Rに取り付けられている工具Tを、空の交換用工具ホルダーh2に挿入して外し、更に他方の交換用工具ホルダーh2にセットされている工具T2を、新たに主軸Rに取り付け、その後の加工を行う。使用済みの工具を交換用工具ホルダーh2に収容した工具ホルダー支持体62は、再びレール61上を移動して、レール61の工具ボックス69側の端部まで戻る。
更に、本実施形態の加工装置1は上記構成に加え、図1及び図7に示すように、加工済みのワークWが多軸ロボット40によって切り離された際に、これを受け取り、ケーシング59外へ搬出するワーク受け取り装置70を具備している。より具体的には、ワーク受け取り装置70は、ケーシング59の外側に設けられており(図1参照)、エアシリンダ71bの駆動により進退するワーク受け用プレート71と、ワーク受け用プレート71の進退方向と直交する方向にエアシリンダ72bの駆動により進退するワーク排出用プレート72を主に具備している。
次に、上記構成の加工装置1を使用して行う本実施形態の加工方法について説明する。加工方法は、長尺のワークWを、ワーク前端部Eが突出した状態で把持装置20に把持させる把持工程と、ワークWが把持装置20に把持されている状態で、回転工具が取り付けられた多軸ロボット40でワーク前端部Eを加工する加工工程と、ワークWが把持装置20に把持されている状態で、加工済みのワーク前端部EをワークWの未加工部分から切り離す切り離し工程と、ワークWが把持装置20から解放されている状態で、ワークWを長軸方向に前進させ、未加工のワーク前端部Eを把持装置20から突出させるワーク送り工程とを具備し、ワークWは、把持工程で把持装置20に把持させた後、切り離し工程で切り離されるまで、変位させられることなく一の姿勢に保持されるものである。
より詳細に説明すると、まず、ワークWの加工に先立ち、把持装置20において押圧体21及び第二押圧体22が後退している状態で、ワーク送り装置30でワークWの後端を押し、ワークWを把持装置20側に移動させる。このとき、導入路13は連設された円筒状ローラ13rによって形成されているため、断面積が大きく長尺であるために重量の大きなワークWであっても、スムーズに移動させることができる。そして、ワーク前端部Eが把持装置20から多軸ロボット40側に突出した状態で、押圧体21及び第二押圧体22をそれぞれ前進させ、ワークWを把持する(把持工程)。
この状態で、多軸ロボット40によってワーク前端部Eの加工を行う(加工工程)。この工程においては、上述のように、回転工具の交換を適宜行うことにより、多様な形状の多品種の部品を加工することができる。また、加工に際しては、ワークWは全く変位させず、把持工程で把持されたままの姿勢が保持される。
ワークWの加工がほぼ終了し、加工済みのワークWが未加工部分と僅かな接合部分(ミクロジョイント)のみでつながった状態となると、ケーシング59に設けられた図示しない窓が開放され、ワーク受け取り装置70のワーク受け用プレート71がエアシリンダ71bの駆動により前進し、ワーク前端部Eの下方に位置する(図1参照)。この状態で、多軸ロボット40によってミクロジョイントが切断され、加工済みのワークWはワーク受け用プレート71上に載置される(切り離し工程)。
加工済みのワークWを載置したワーク受け用プレート71は、エアシリンダ71bの駆動により後退して元の位置に戻る。その後、ワーク排出用プレート72が、エアシリンダ72bの駆動により前進する。これにより、ワークWはワーク排出用プレート72によって押され、ワーク受け用プレート71上から搬出コンベア等の図示しない搬出装置側に移動する。なお、図1及び図7では、ワーク受け用プレート71及びワーク排出用プレート72が、共に前進している状態を図示している。
その後、押圧体21及び第二押圧体22が後退させられ、把持装置20におけるワークWの把持が解除される。この状態で、ワーク送り装置30によって更にワークWの後端を押すと、先の加工の際に把持代であった未加工部分を、次に加工されるワーク前端部Eとして把持装置20から突出させることができる(ワーク送り工程)。このとき、ワーク送り装置30によってワークWを送る態様としては、ワーク送り装置30が直接ワークWの後端に当接してワークWを押す態様の他、ワークWの後端に当接させた他の部材を介してワーク送り装置30がワークWを押す態様であっても良い。例えば、加工済み部分を順次切り離すことによって長尺のワークWが短くなった場合など、次に加工されるワークW、或いは、ワーク押し用の棒材(プッシャ)を介して、ワーク送り装置30によって加工中のワークWを押すことができる。
そして、未加工のワーク前端部Eが把持装置20から突出した状態で、押圧体21及び第二押圧体22を前進させ、把持装置20によってワークWを把持する(把持工程)。以降は上記の動作を繰り返すことにより、継続的にワークWの加工を行うことができる。
上記のように、本実施形態の加工装置1及び加工方法によれば、把持装置20による把持代を無駄にすることなく、長尺のワークWから複数の部品を連続的に製造することができる。
また、把持装置20として、ワークWの把持に当たりワークWをセンタリングさせることなく、水平な載置面11とこれに直交する垂直基準面12にワークWを押し付けて把持する構成を採用したため、断面が矩形であって且つ断面積が大きく長尺でかなりの重量を有するワークWであっても、堅固に把持することができる。なお、本実施形態の把持装置20は、断面が矩形のワークWの把持に適しているが、断面がほぼ矩形のワークWであれば、角部が欠けたワークWや、角部が丸みを帯びているワークWであっても、問題なく堅固に把持することができる。
更に、本実施形態では、加工の初めから終わりまでワークW側を変位させないが、加工を行う工具側に多軸ロボット40を用いており、多軸ロボット40は回転工具の主軸Rを除き、パラレルリンク機構部41の三軸に加えて二つの回転軸P,Gを有している。これにより、回転工具をワークWに対して多方向からアプローチさせることができ、複雑な三次元形状のワークWを加工することができる。更に、本実施形態では、多種類の工具を交換可能な工具交換装置60を備えていることにより、より多様な形状を有する多品種のワークWの加工をすることができる。
更に、本実施形態の加工装置1は、把持装置20、多軸ロボット40、ワーク送り装置30に加え、工具交換装置60、及び、ワーク受け取り装置70を具備しており、未加工のワークWの把持装置20への導入から加工済みワークWの排出までを自動化させることができるため、極めて効率良くワークWの加工を行うことができる。
なお、本実施形態の加工装置1は、長さが定尺(144インチ)の金属角材を一方向にのみカットしたワークWの加工に好適に使用することができ、ワークWの断面は、例えば、長辺3cm〜60cm、短辺2cm〜30cmに設定することができる。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
例えば、上記では、パラレルリンク機構部が三軸である場合を例示したが、三軸以上とすることもできる。
また、上記では、ワーク送り装置における送り機構がラックとピニオン機構である場合を例示したが、これに限定されず、例えば、ボールネジ部及びこれと螺合するナット部の何れかを正逆モータで回転させる構成とすることができる。加えて、ワーク送り装置は、上記のようにワークの後端を押す構成に限定されず、例えば、導入路自体が移動するコンベア式の送り装置とすることができる。
1 加工装置
11 載置面
12 垂直基準面
20 把持装置
21 押圧体
22 第二押圧体
30 ワーク送り装置
40 多軸ロボット
41 パラレルリンク機構部
42 移動体
50 固定フレーム
51 第一自在継手
52 第二自在継手
53 ロッド
54 移動フレーム
W ワーク
E ワーク前端部
P 第一軸
Q 第二軸
R 主軸
特許第3803519号公報 特開昭63−272405号公報

Claims (4)

  1. 長尺のワークを、ワーク前端部が突出した状態で把持装置に把持させる把持工程と、
    ワークが前記把持装置に把持されている状態で、回転工具が取り付けられて前記把持装置の前方に位置する多軸ロボットで、前記ワーク前端部を加工する加工工程と、
    ワークが前記把持装置に把持されている状態で、加工済みの前記ワーク前端部をワークの未加工部分から切り離す切り離し工程と、
    前記把持装置の側方からプレートを前進させて、未加工部分から切り離された加工済みの前記ワーク前端部を受け取り、前記ワーク前端部を載置した前記プレートを後退させる工程と、
    ワークが前記把持装置から解放されている状態で、ワークを長軸方向に前進させ、未加工のワーク前端部を把持装置から突出させるワーク送り工程とを具備し、
    ワークは、前記把持工程で前記把持装置に把持させた後、前記切り離し工程で切り離されるまで、変位させられることなく一の姿勢に保持される
    ことを特徴とする加工方法。
  2. 長尺のワークを把持及び解放すると共に、ワークを把持した状態ではワークを変位させることなく一の姿勢に保持する把持装置と、
    回転工具の主軸を備えて前記把持装置の前方に位置し、前記把持装置からワーク前端部を突出させた状態で前記把持装置に把持されているワークを、前記主軸に取り付けられた回転工具で加工すると共に、加工済みの前記ワーク前端部をワークの未加工部分から切り離す多軸ロボットと、
    前記把持装置の側方に位置し、プレートを前進させて、未加工部分から切り離された加工済みの前記ワーク前端部を受け取り、前記ワーク前端部を載置した前記プレートを後退させるワーク受け取り装置と、
    前記把持装置から解放されている状態のワークを、長軸方向に前進させるワーク送り装置と
    を具備することを特徴とする加工装置。
  3. 前記多軸ロボットは、
    固定フレーム、それぞれ一端が第一自在継手を介して前記固定フレームに連結されていると共に軸方向の長さが可変な三本以上のロッド、及び、前記ロッドのそれぞれの前記他端が第二自在継手を介して連結されている移動フレームを備えるパラレルリンク機構部と、
    前記移動フレームと前記第二自在継手との連結点の全てを結んで形成される平面に直交する第一軸周りに回転可能に前記移動フレームに支持されていると共に、前記第一軸に直交する第二軸周りに揺動可能に前記移動フレームに支持されている移動体とを備え、
    回転工具の前記主軸は、前記移動体に支持されている
    ことを特徴とする請求項2に記載の加工装置。
  4. 前記把持装置は、
    ワークを載置する水平な載置面と、
    鉛直方向に進退し前記載置面に向かう前進によりワークを前記載置面に押圧する押圧体、及び、水平方向に進退し前記載置面に垂直な垂直基準面に向かう前進によりワークを前記垂直基準面に押圧する第二押圧体の少なくとも一方と
    を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の加工装置。
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