JP5574470B2 - 極端紫外光源および極端紫外光発生方法 - Google Patents
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Description
このような極端紫外光源に関して、下記の特許文献1、2が知られている。
発光効率を高めるためには、従来では、例えば、レーザーを多重パルス化することで、プラズマ温度や密度を制御していたが、レーザーの多重パルス化の制御が必要となり、最適化等で比較的複雑な制御が必要となる問題があった。
レーザー光を照射するレーザー光源と、
前記レーザー光源からのレーザー光が照射されて励起され、プラズマを生成して極端紫外光を放射するターゲット材であって、第1の元素と、波長200nm以下の領域において前記第1の元素のスペクトル分布のスペクトル強度が最も強いスペクトル成分を含み且つ最も強いスペクトル成分におけるスペクトル分布の波形の半値全幅よりも広い半値全幅のスペクトル分布を有する第2の元素と、を少なくとも含む多元系の前記ターゲット材と、
を備え、
前記ターゲット材は、タングステンカーバイド、銅・タングステン合金、リン青銅、ジュラルミン、ハステロイ(登録商標)C−276およびアドバンスのいずれかにより構成された
ことを特徴とする。
第1の元素と、波長200nm以下の領域において前記第1の元素のスペクトル分布のスペクトル強度が最も強いスペクトル成分を含み且つ最も強いスペクトル成分におけるスペクトル分布の波形の半値全幅よりも広い半値全幅のスペクトル分布を有する第2の元素と、を少なくとも含む多元系の前記ターゲット材に対して、レーザー光を照射して励起し、プラズマを生成して、極端紫外光を放射することを特徴とする極端紫外光発生方法であって、
前記ターゲット材は、タングステンカーバイド、銅・タングステン合金、リン青銅、ジュラルミン、ハステロイ(登録商標)C−276およびアドバンス、
のいずれかにより構成されたことを特徴とする。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、説明に必要な部材以外の図示や説明は省略している。
図1において、実施例1の極端紫外光源1は、内部にプラズマ発生室2aが形成された真空チャンバ2を有する。前記真空チャンバ2内にはターゲットホルダ3を介して固体のターゲット材Tが支持されている。実施例1のターゲット材Tは、第1の元素と、波長200nm以下の領域において前記第1の元素のスペクトル分布のスペクトル強度が最も強いスペクトル成分を含み且つ最も強いスペクトル成分におけるスペクトル分布の波形の半値全幅よりも広い半値全幅のスペクトル分布を有する第2の元素とを少なくとも含む多元系のターゲット材により構成されている。特に、複数の元素を含む多元系合金を好適に使用可能である。
また、真空チャンバ2には、真空ポンプ4が接続されており、真空チャンバ2内のガスが排気される。
ターゲットTにレーザー光6aが照射されると、ターゲット材Tが励起されてプラズマ化し、プラズマからターゲット材Tの元素に応じた波長の極端紫外光11が発生する。なお、実施例1のターゲットホルダ3は回転軸3aを中心に回転可能に支持されており、レーザー光6aの照射中に回転させることで、レーザー光6aが同一の表面に照射されず、ターゲット材Tの新しい面にレーザー光6aが照射される。
発生した極端紫外光11は、光導出口2cを通じて、外部に配置された図示しない被照射物に照射される。
図2は実施例1の極端紫外光源において、極端紫外スペクトルを測定するために構築した実験装置の説明図である。
図2において、実験装置21では、実施例1の極端紫外光源1の光導出口2cに中空の連結部22の一端が接続されており、連結部22の他端には、光検出部23が連結されている。光検出部23の内部には、連結部22を通じて導入される極端紫外光11を絞るスリット24と、スリット24を通過した極端紫外光11を分光する分光器26と、分光器26で分光された光を絞るスリット27とが支持されている。
前記光検出部23の外部には、スリット27を通過した光を可視化するシンチレータ28が支持されており、シンチレータ28からの蛍光は光電子増倍管(PMT:Photomultiplier tube)29で検出される。光電子増倍管29には、バイアス印加用の高圧電源31と、光電子増倍管29からの検出信号が入力されるオシロスコープ32とが接続されている。
また、レーザー光源装置6として、波長1064[nm]でパルス幅10[ns]のパルスを、繰り返し周波数10[Hz]で出力するNd:YAGレーザーを使用した。なお、ダブルパルス照射を行うことも可能であり、この場合は、もう1台のNd:YAGレーザーから532nmの第2高調波をプレパルスとして使用し、2台のNd:YAGレーザーをパルスジェネレータによって、同期させて、メインパルスをプレパルスに対して任意の遅延時間を与えて照射することができる。
光検出部23では、分光器26を波長1[nm]毎に波長掃引し、オシロスコープ32で8回平均して測定を行った。
実験例1では、第1の元素としてのカーボン(C)を20[質量%]、銅(Cu)を6[質量%]含有し、第2の元素としてのタングステン(W)を74[質量%]含むタングステンカーバイド(WC)をターゲット材Tとして使用した。また、比較のために、カーボンのみで構成されたターゲットと、タングステンのみで構成されたターゲットについても実験を行った。
実験例1の結果を図3に示す。
なお、図3では、タングステンカーバイドの実験結果であるスペクトル分布を実線で記載し、カーボンのみのターゲットで実験を行った結果のスペクトル分布を一点鎖線、タングステンのみのターゲットで実験を行った結果のスペクトル分布を破線で示す。
図3からわかるように、波長158nm(強度の最大値を有するピーク:最も強いスペクトル成分)や、波長170nmあたりに比較的鋭いピークを有する第1元素としてのカーボンのスペクトル分布に対して、第2元素としてのタングステンでは、カーボンのスペクトル分布の最大のピークの波長158nmを含む波長145nm〜200nm程度の範囲の波長域においてカーボンの最大スペクトル成分を含み、且つカーボンのスペクトル分布よりもなだらかなピーク、すなわち、ピークの半値全幅が広いスペクトル分布を有することがわかる。
すなわち、図3の実験結果から、スペクトル分布の形状がタングステンと同様であることから、タングステンプラズマからの発光が支配的であると考えられる。また、発光強度は測定波長全域にわたり均一に増加していることがわかる。これは、合金のプラズマ中のカーボンプラズマによってタングステンプラズマの温度がこの波長域の発光に適したプラズマ温度にシフトしたためだと考えられる。
実験例2では、第1の元素としての銅(Cu)を30[質量%]含有し、第2の元素としてのタングステン(W)を70[質量%]含む市販の銅・タングステン合金(Cu30−W70)をターゲット材Tとして使用した。また、比較のために、銅のみで構成されたターゲットと、タングステンのみで構成されたターゲットについても実験を行った。
実験例2の結果を図4に示す。
なお、図4では、銅・タングステン合金の実験結果であるスペクトル分布を実線で記載し、銅のみのターゲットで実験を行った結果のスペクトル分布を一点鎖線、タングステンのみのターゲットで実験を行った結果のスペクトル分布を破線で示す。
図4からわかるように、波長165nm〜175nmあたりに比較的鋭いピークを有する第1元素としての銅のスペクトル分布に対して、第2元素としてのタングステンでは、銅のスペクトル分布のピークの波長を含み且つ銅のスペクトル分布よりもなだらかなピーク、すなわち、ピークの半値全幅広いスペクトル分布を有することがわかる。そして、図4の実線では、銅・タングステン合金をターゲット材として使用した場合に、実験例1と同様に、2つの各原子のスペクトルどうしが足し合わされたものとは異なり、発光強度が増加し、スペクトル分布も広がっている。なお、実験例2では、銅・タングステン合金の発光強度は、タングステン単体の2.0倍であった。実験例1に比べて発光強度の増加の割合が異なるのは、ターゲット材Tに含まれる原子によって、プラズマ温度のシフト量が異なっているためだと考えられる。
(実験例3)
実験例3では、ターゲット材Tとしてリン青銅を使用した。リン青銅は、第1の元素としての錫(Sn)が7.65[質量%]およびリン(P)が0.24[質量%]、鉛(Pb)が0.005[質量%]、以下含有され、第2の元素としての銅(Cu)が残りの割合含有されると共に、不可避の不純物が含まれている。
(実験例4)
実験例4では、ターゲット材Tとして真鍮を使用した。真鍮は、第2の元素としての銅(Cu)が60.67[質量%]含有され、鉄(Fe)が0.003[質量%]、鉛(Pb)が0.002[質量%]含有されると共に、第1の元素としての亜鉛(Zn)が残りの割合含有され、不可避の不純物が含まれている。
図5Bにおいて、実験例3、4では、実験例1、2と同様に、発光強度が増加し、スペクトル形状は、第2の元素と同様に広がった。すなわち、合金プラズマ中のプラズマ温度のシフトが発生し、発光強度が向上したものと考えられる。
特に、実験例1、2と同様に1.6倍以上の強度の向上は、実験例3、4に示すように、銅と同様なスペクトル形状を有する真鍮とリン青銅の場合にも観測された。
よって、ターゲット材Tとして合金を用いることにより、プラズマ状態を変化させ、極端紫外光のスペクトル形状ならびにその強度を制御することができた。
したがって、合金化することで、各元素単体のターゲットでは得られないプラズマ温度を得ることができ、このプラズマ温度のシフトにより、各元素単体の場合に比べて発光強度を増加させることができ、スペクトル形状の連続化が実現できた。そして、実施例1では、レーザー光源6として多重パルスを使用して能動的なプラズマ制御をしなくても、簡便にプラズマ温度を変動させることができる。
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H02)を下記に例示する。
(H01)本発明の極端紫外光源1は、半導体製造分野における極端紫外光を利用する微細加工や表面改質等や、極端紫外光を使用した分析、計測の分野において利用することが可能である。
6a…レーザー光、
6…レーザー光源、
11…極端紫外光、
T…ターゲット材。
Claims (2)
- レーザー光を照射するレーザー光源と、
前記レーザー光源からのレーザー光が照射されて励起され、プラズマを生成して極端紫外光を放射するターゲット材であって、第1の元素と、波長200nm以下の領域において前記第1の元素のスペクトル分布のスペクトル強度が最も強いスペクトル成分を含み且つ最も強いスペクトル成分におけるスペクトル分布の波形の半値全幅よりも広い半値全幅のスペクトル分布を有する第2の元素と、を少なくとも含む多元系の前記ターゲット材と、
を備え、
前記ターゲット材は、タングステンカーバイド、銅・タングステン合金、リン青銅、ジュラルミン、ハステロイ(登録商標)C−276およびアドバンスのいずれかにより構成された
ことを特徴とする極端紫外光源。 - 第1の元素と、波長200nm以下の領域において前記第1の元素のスペクトル分布のスペクトル強度が最も強いスペクトル成分を含み且つ最も強いスペクトル成分におけるスペクトル分布の波形の半値全幅よりも広い半値全幅のスペクトル分布を有する第2の元素と、を少なくとも含む多元系の前記ターゲット材に対して、レーザー光を照射して励起し、プラズマを生成して、極端紫外光を放射することを特徴とする極端紫外光発生方法であって、
前記ターゲット材は、タングステンカーバイド、銅・タングステン合金、リン青銅、ジュラルミン、ハステロイ(登録商標)C−276およびアドバンス、
のいずれかにより構成されたことを特徴とする極端紫外光発生方法。
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