JP5574299B2 - パイ接合squid、及び超伝導接合構造の製造方法 - Google Patents

パイ接合squid、及び超伝導接合構造の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、パイ接合SQUID、及び超伝導接合構造の製造方法に関するものである。
SQUID(Superconducting Quantum Interference Device:超伝導量子干渉素子)は、1個以上のジョセフソン接合(超伝導接合)を持つ超伝導体のループとして構成された素子である。
従来のSQUIDとしては、印加電流がゼロのとき接合部における超伝導位相差がゼロである「ゼロ接合SQUID」が一般的である。ゼロ接合SQUIDには、通常のスピン一重項のs波超伝導体が用いられ、磁気センサ、脳磁計、地震計などに既に広く実用化されている。
一方、接合部における超伝導位相差がゼロではなくπになる「パイ接合SQUID」は、ゼロ接合SQUIDと同様に、超高感度の磁気センサなどとして有用であるだけでなく、正または負の半磁束量子または半整数磁束量子を閉じこめる性質を用いた量子ビット(QUBIT)としての応用が特に期待されている。
このようなパイ接合SQUIDの原理については、非特許文献1に記載されている。
パイ接合SQUIDの方式としては、これまでに二種類実証されており、一つは、非特許文献2に記載されたものであり、もう一つは、非特許文献3に記載されたものである。
前者のパイ接合SQUIDは、YBa2Cu37-δなどの高温超伝導体とニオブ(Nb)などの通常超伝導体とを接合して構成されている。
後者のパイ接合SQUIDは、ニオブ(Nb)などの通常超伝導体と強磁性金属薄膜とを接合して構成されている。
V.B. Geshkenbein, A.I. Larkin and A. Barone, Vortices with half magnetic flux quanta in "heavy-fermion" superconductors, Physical Review B, VOLUME 36, NUMBER 1, 1 JULY 1987, pp.235-238. J.R. KIRTLEY, C.C. TSUEI, A.ARIANDO, C.J.M. VERWIJS, S.HARKEMA AND H.HILGENKAMP, Angle-resolved phase-sensitive determination of the in-plane gap symmetry in YBa2Cu3O7-δ, [online], 5 February 2006, <www.nature.com/naturephysics>. (Nature Physics, VOLUME 2, MARCH 2006, pp.190-194.) A. Bauer, J. Bentner, M. Aprili, M.L. Della Rocca, M. Reinwald, W. Wegscheider, and C. Strunk, Spontaneous Supercurrent Induced by Ferromagnetic π Junctions, Physical Review Letters, VOLUME 92, NUMBER 21, 26 MAY 2004, pp.217001-1-4.
従来のパイ接合SQUIDの二方式は、いずれもスピン一重項超伝導体を用いるものであり、スピン三重項超伝導体を用いるものは実証されていない。
また、従来のパイ接合SQUIDの二方式では、いずれも、薄膜層同士の接合が必要であり、その構造上、製作には高度な技術が必要である。
本発明は、スピン三重項超伝導体が内因する性質を利用して、スピン三重項超伝導体とスピン一重項超伝導体とを用いた新方式のパイ接合SQUIDを提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、構造が比較的強固であるとともに製作が比較的容易であるパイ接合SQUIDを提供することである。
さらに、本発明は、超伝導接合構造の新たな製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、超伝導接合を有する超伝導ループによって構成されたSQUIDであって、前記超伝導接合が、[スピン一重項超伝導体/スピン三重項超伝導体/スピン一重項超伝導体]のパイ接合であることを特徴とするパイ接合SQUIDである。
スピン三重項超伝導体の単結晶を用いた基板と、当該基板の表面に形成されたスピン一重項超伝導体のループ層と、を有し、前記ループ層は、前記基板に対して実質的に接合されていないループ本体領域と、前記基板に対して接合するための第1接合用領域及び第2接合用領域とを備え、前記第1接合用領域及び第2接合用領域それぞれが前記基板と接合することで、[スピン一重項超伝導体/スピン三重項超伝導体/スピン一重項超伝導体]のパイ接合を有する超伝導ループが形成されているのが好ましい。
前記基板は、スピン三重項超伝導体と常伝導体との共晶によって形成され、スピン一重項超伝導体とスピン三重項超伝導体との接合に、前記基板が有する前記常伝導体の導電性を利用するのが好ましい。
前記スピン三重項超伝導体は、Sr2RuO4であるのが好ましい。
前記基板を、スピン三重項超伝導体と常伝導体との共晶によって形成する場合、当該共晶は、Sr2RuO4とRuとの共晶であるのが好ましい。
前記基板は、Sr2RuO4とRuとの共晶によって形成され、前記ループ層は、Sr2RuO4の結晶構造に含まれるRuO2面に対して平行な基板表面に形成されているものとすることができる。
前記ループ層は、Sr2RuO4結晶、又は、Sr2RuO4の結晶構造に含まれるRuO2面に対して垂直な基板表面に形成されているものとすることができる。
前記ループ層は、前記基板表面上に、スピン一重項超伝導体となる物質を蒸着によって形成した蒸着膜であるのが好ましい。
前記基板には、ループ層のループ内側位置における磁束の透過が特定の位置で起こるように、当該基板において透過を容易にするための磁束透過部が設けられているのが好ましい。磁束透過部としては、半磁束量子に対応する磁束が容易に検出できるように微小面積の非超伝導体の領域を設けることが望ましい。
前記基板は、スピン三重項超伝導体からなる複数の基板分割片を接着材料によって接着してなり、前記磁束透過部は、前記基板における前記接着材料の部分であるのが好ましい。また、前記基板は、スピン三重項超伝導体からなる基板本体を、磁束が容易に透過する材料に埋め込んで形成され、前記磁束透過部は、前記基板において磁束が容易に透過する前記材料の部分であるのが好ましい。あるいは、前記磁束透過部は、前記基板に形成された孔としてもよい。
本発明に係る超伝導接合構造の製造方法は、スピン三重項超伝導体となる物質の結晶バルクを加工して、基板を形成する基板形成工程と、前記基板表面にスピン一重項超伝導体となる物質からなる層を形成するスピン一重項超伝導体層形成工程と、を含む。
他の観点からみた超伝導接合構造の製造方法は、スピン三重項超伝導体になる物質と常伝導体との共晶の表面に析出した常伝導体のうち、接合用の常伝導体を選択する選択工程と、選択した接合用の常伝導体の少なくとも一部をスピン一重項超伝導体となる物質で覆う層を形成するスピン一重項超伝導体層形成工程と、を含む。
前記選択工程では、互いに離間する対の接合用常伝導体を選択し、前記スピン一重項超伝導体層形成工程において形成される前記層は、選択した対の接合用常伝導体の対間隙において離間しているとともに、選択した対の接合用常伝導体それぞれをスピン一重項超伝導体となる物質で覆うものであるのが好ましい。
あるいは、前記選択工程で接合用常伝導体を選択し、前記スピン一重項超伝導体層形成工程において形成される前記層は、選択した接合用常伝導体上において離間しているとともに、選択した当該接合用常伝導体の一部をスピン一重項超伝導体となる物質で覆うものであってもよい。
前記共晶の表面に析出した常伝導体のうち、選択した接合用常伝導体以外の常伝導体を絶縁膜で覆う絶縁膜形成工程と、を更に含み、前記スピン一重項超伝導体膜形成工程において形成される前記層は、選択した接合用常伝導体と、前記絶縁膜の少なくとも一部とを、前記スピン一重項超伝導体となる物質で覆うものであるのが好ましい。
前記絶縁膜形成工程では、選択した接合用常伝導体の位置に開口部が形成された絶縁膜を、前記共晶の表面に形成するのが好ましい。
前記スピン一重項超伝導体層形成工程では、前記スピン三重項超伝導体と前記スピン一重項超伝導体とによって、[スピン一重項超伝導体/スピン三重項超伝導体/スピン一重項超伝導体]のパイ接合を有する超伝導ループが形成されるように、前記層を形成することで、パイ接合SQUIDが得られる。
パイ接合超伝導量子干渉素子に係る本発明によれば、スピン三重項超伝導体とスピン一重項超伝導体とを用いた新方式のパイ接合を有するパイ接合超伝導量子干渉素子が得られる。
また、スピン三重項超伝導体の単結晶を用いた基板の表面に、スピン一重項超伝導体のループ層を形成した場合、比較的強固な構造で、製作が比較的容易となる。
超伝導接合構造の製造方法に係る本発明によれば、スピン三重項超伝導体とスピン一重項超伝導体との接合構造が得られる。
また、スピン三重項超伝導体になる物質と常伝導体との共晶の表面に析出した析出常伝導体を、スピン三重項超伝導体とスピン一重項超伝導体との接合に利用して接合箇所での導電性を確保した場合、スピン三重項超伝導体表面の導電性が悪くても、両者の確実な接合が得られる。
(a)は実施形態に係るパイ接合構造を示す断面図であり、(b1)〜(b4)は、当該パイ接合構造の製造工程を示す工程図である。 層状ルテニウム酸化物(Sr2RuO4)の結晶構造を示す図である。 Sr2RuO4−Ru共晶系の表面の光学顕微鏡写真である。 実施形態に係るパイ接合構造の臨界電流Ic−温度T特性を示す図である。 実施形態に係るパイ接合構造の位相差を示す図である。 パイ接合SQUIDの概略図である。 第1例に係るパイ接合SQUIDの製法における前処理工程を示す図である。 第1例に係るパイ接合SQUIDの製法における選択工程を示す図である。 第1例に係るパイ接合SQUIDの製法における絶縁膜形成工程を示す図である。 第1例に係るパイ接合SQUIDの製法にけるPb膜形成工程を示す図である。 第1例に係るパイ接合SQUIDの製法におけるPb膜加工工程を示す図である。 第2例に係るパイ接合SQUIDの製法における絶縁膜形成工程を示す図である。 第2例に係るパイ接合SQUIDの製法におけるPb膜形成工程を示す図である。 第2例に係るパイ接合SQUIDの製法におけるPb膜加工工程を示す図である。 (a)は接合構造の他の例を示す断面図であり、(b)は当該他の例の斜視図である。 第3例に係るパイ接合SQUIDの製法における選択工程を示す図である。 第3例に係るパイ接合SQUIDの製法においてPb膜が形成された状態を示す図である。 変形例に係るパイ接合SQUIDの構造を示す図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[1.超伝導パイ接合構造]
[1.1 接合構造体の概要]
図1(a)は、実施形態に係る超伝導パイ接合構造1を示している。この接合構造1は、スピン三重項超伝導体となる物質によって形成された基板2の表面2aに、真空熱蒸着法などによりスピン一重項超伝導体となる物質の層(厚膜:蒸着膜)3a,3bを形成し、当該層3a,3bを集束イオンビーム法(FIB)によって所望の形状に微細加工して得たものである。このため、この接合構造1は、製作が容易であって、しかも比較的強固な基板2上に膜3a,3bを形成しているため全体として強固な構造となっている。
[1.2 スピン一重項超伝導体とスピン三重項超伝導体]
スピン一重項とは、2個の電子によって形成されるクーパー対の合成スピンがS=0であるものをいい、スピン三重項とは、クーパー対の合成スピンがS=1であるものをいう。これまでに知られているほとんどの超伝導体は、スピン一重項超伝導体である。
ここで、電子はフェミル粒子であるため、状態ベクトル(軌道部分とスピン部分の積で表される)全体としては、反対称となる。
スピン一重項超伝導体では、スピン部分が反対称であるため、軌道部分の波動関数は対称となり、波動関数の空間対称性(偶パリティ)という性質を有している。
一方、スピン三重項超伝導体では、スピン部分が対称となるため、軌道部分の波動関数は反対称となる。つまり、スピン三重項超伝導体では、内因的に、波動関数の空間反対称性(奇パリティ)という性質を有している。
スピン三重項超伝導体としては、ストロンチウムとルテニウムの酸化物であるSr2RuO4(「ルテニウム酸化物」)がある。なお、Sr2RuO4は、p波超伝導体である。このSr2RuO4が、超伝導体であることは、本発明者の前野らによって発見された。
以下では、スピン三重項超伝導体としてSr2RuO4を採用し、スピン一重項超伝導体としてPbを採用した場合について説明する。Sr2RuO4の転移温度Tcは約1.5Kであり、Pbの転移温度は、約7.2Kである。つまり、Tc(Sr2RuO4)<Tc(Pb)である。
なお、スピン三重項超伝導体である他の物質としては、現在のところ、UPt3やLi2Pt3Bが有力視されている。また、スピン一重項超伝導体としては、数多くのものが存在するため、特に、Pbに限定されるものではなく、例えば、Nbを採用してもよい。
[1.3 Sr2RuO4基板]
本実施形態では、スピン三重項超伝導体からなる基板2として、Sr2RuO4の単結晶を用いた。スピン三重項超伝導体は、結晶の乱れを嫌うため、スピン三重項超伝導体は単結晶とするのが好適である。Sr2RuO4の純良単結晶の育成は、例えば、フローティング・ゾーン法によって行うことができる。
本実施形態においては、スピン三重項超伝導体によって基板2を構成したため、(スピン三重項超伝導体以外の物質によって形成された)基板上に、スピン三重項超伝導体の膜(層)を形成するという工程を行う必要がない。
スピン三重項超伝導体の単結晶バルクを育成するのに比べ、スピン三重項超伝導体の単結晶の膜を形成するのは困難である。このため、接合用のスピン三重項超伝導体の形成のために、薄膜形成技術を利用しようとすると、製作が困難になる。
これに対し、本実施形態では、スピン三重項超伝導体を基板2として利用するものであるため、フローティング・ゾーン法などによって育成したスピン三重項超伝導体の結晶バルクを、切削加工等によって、基板2としての所望形状(例えば、板状)に加工すれば良い。したがって、製作が比較的容易である。
[1.3.1 Sr2RuO4の結晶構造]
スピン三重項超伝導体となるSr2RuO4(層状ルテニウム酸化物)の結晶構造は、図2に示すように、層状ペロブスカイト構造であり、RuO2面10が積層している。
以下では、図2の結晶構造において、RuO2面10に平行であって互いに直交する2方向を、それぞれ、a方向及びb方向と呼び、RuO2面10に平行な面を「ab面」と呼ぶこととする。また、ab面10に垂直な方向をc方向と呼び、b方向に垂直な面をac面と呼び、a方向に垂直な面をbc面と呼ぶこととする。
層状構造を反映して前記ab面方向には導電性が良い。しかしながら結晶表面での原子配列を反映して、結晶表面への接触抵抗の点からは、前記ab面(RuO2面に平行な面)は、導電性が比較的悪く、前記ac面及び前記bc面は、導電性が比較的良好である。
[1.3.2 Sr2RuO4−Ru共晶系]
また、本実施形態では、基板2の材料として、Sr2RuO4とRuとの共晶(Sr2RuO4−Ru共晶系)を用いる。Sr2RuO4−Ru共晶系は、Sr2RuO4の結晶バルク育成のために、高温で溶融した液体のSr2RuO4を冷却する際に、常伝導体(常伝導金属)であるRuが析出し、単結晶Sr2RuO4に規則的に薄片状のRuが埋め込まれた状態となったものである。
図3は、Sr2RuO4−Ru共晶系の表面の光学顕微鏡写真であり、白色線状の明るい領域がRuを示し、灰色の暗い領域がSr2RuO4である。
[1.4 [スピン一重項超伝導体/スピン三重項超伝導体/スピン一重項超伝導体]の接合(近接接合)]
図1(a)のパイ接合構造では、基板2表面上に形成された層3a,3bは、互いに離間する第1領域3a及び第2領域3bを有している。これにより、[第1領域3a/基板2/第2領域3b]の接合が、[スピン一重項超伝導体/スピン三重項超伝導体/スピン一重項超伝導体]の接合となっている。
さて、Sr2RuO4のバルクを基板2に加工する際に、前記bc面や前記ac面は、結晶表面で比較的導電性が良いため、前記bc面又は前記ac面が、基板2において層3a,3bなどが形成される形成面2aとなるように加工すると、PbとSr2RuO4との接合が確実に得られて有利である。
一方、前記ab面が、基板2において層3a,3bなどが形成される形成面2aとなるように加工するのが、基板2の加工容易性上、有利である。しかし、前記ab面は結晶の表面では導電性が悪いため、ab面表面からなる形成面2a上に層3a,3bを形成すると、両者の確実な接合を得ることは困難である。
そこで、本実施形態では、図1(a)に示すように、Sr2RuO4−Ru共晶系の表面に析出したRu(常伝導体)4a,4bを、PbとSr2RuO4との接合に利用する。
Sr2RuO4−Ru共晶系の表面に析出した多数のRuのうち、選択した一対の離間したRuを、層3a,3bとの接合用とし、このRuを介して、PbとSr2RuO4とが確実に接合されている。
このように、図1(a)では、Ru(常伝導体)を含む共晶系を利用することにより、[Pb/Ru−Sr2RuO4−Ru/Pb]の接合構造となっており、換言すると、[スピン一重項超伝導体/常伝導体−スピン三重項超伝導体−常伝導体/スピン一重項超伝導体]の接合構造となっている。
[1.5 [Pb/Ru−Sr2RuO4−Ru/Pb]接合構造の製法]
図1(a)に示す接合構造を製作するには、まず、図1(b1)に示すように、基板2となるSr2RuO4−Ru共晶系の表面2aに析出したRuのうち、一対の離間したRu4a,4bを、第1及び第2接合用常伝導体として選択する(選択工程)。Ru4a,4bの対間隔は、10μm程度又はそれ以下が好ましい。
続いて、図1(b2)に示すように、Sr2RuO4−Ru共晶系の表面2aに対し、選択したRu4a,4bを判別するための目印、又は後のPb除去工程におけるPb除去範囲を示すための目印、となる凹部6,6を形成する(目印形成工程)。凹部6の形成は、集束イオンビーム法(FIB)によって行う。これらの凹部6,6の位置は、選択したRu4a,4bを判別できる位置又は後のPb除去工程におけるPb除去範囲を示すことができる位置であれば特に限定されないが、図1(b2)に示すような位置が好ましい。
さらに、図1(b3)に示すように、Sr2RuO4−Ru共晶系の表面2aに、選択したRu4a,4bを覆うPb厚膜を蒸着法によって形成する(Pb(スピン一重項超伝導体)膜形成工程)。このPb厚膜の厚さは、1μm程度又はそれ以下が好ましい。
そして、図1(b4)に示すように、凹部6,6を目印として、所定範囲のPb膜を、FIBによって除去する(Pb(スピン一重項超伝導体)除去工程)。
この除去工程では、前記凹部6,6を目印として、Pb膜を、第1接合用常伝導体(第1Ru)4a側の第1領域3aと、第2接合用常伝導体(第2Ru)4b側の第2領域3bとに区分けするための離間部7が、第1接合用常伝導体4aと第2接合用常伝導体4bとの間の位置(対間隙)に形成される。また、Pb膜のうち、その他の不要な領域も除去される。離間部7の幅(第1領域3aと第2領域3bとのギャップ)は、数μm程度(例えば2μm程度)又はそれ以下が好ましく、更には、0.5μm程度又はそれ以下が好ましい。
[2.Pb/Sr2RuO4/Pb接合構造の特性]
上述のようにして得られた接合構造において、図1(b4)に示すように、Pb膜からなる層の第1領域3a及び第2領域3bそれぞれに電流を測定するための電極と、電圧を測定するための電極とを取り付けて測定を行った結果を、図4に示す。
図4は、Pb/Sr2RuO4/Pb接合の臨界電流Ic−温度T特性を示している。図4のIc−T特性に示すように、Sr2RuO4の転移温度Tcより高い範囲で、温度Tを低下させていくと、臨界電流Icは増大していくが、温度TがSr2RuO4の転移温度Tcになって、Sr2RuO4が超伝導転移すると、臨界電流Icが一旦低下する。さらに温度Tを低下させると、臨界電流Icは再び上昇する。
Sr2RuO4の転移温度Tc付近で臨界電流Icが抑制されるのは、Pbからの近接効果によって誘起されたスピン一重項超伝導(s波超伝導)と、Sr2RuO4結晶のスピン三重項超伝導(p波超伝導)との競合のためと考えられる(C. Honerkamp and M. Sigrist, "The Competition between the 0- and π-Phase Shift in the Pb-Sr2RuO4-Pb Junction", Progress of Theoretical Physics, Vol. 100, No. 1, pp. 53-61, July 1998 参照)。
図4に示すような特異なIcの温度依存性Ic(T)は、Sr2RuO4がスピン三重項超伝導体(奇パリティ)であることを示している。仮に、Sr2RuO4がPbと同じスピン一重項超伝導体(偶パリティ)であるとすると、Sr2RuO4の転移温度Tcの前後の範囲において温度Tが低下すると、臨界電流Icは漸次増加するはずだからである。
さらに、図4に示すIcの温度依存性Ic(T)は、図5に示すように、Pb/Sr2RuO4/Pb接合が、温度T<Tc(Sr2RuO4)=1.5Kにおいて、超伝導位相差がゼロであるゼロ接合(図5(b)(d)参照)から、超伝導位相差がπであるパイ接合の混じった中間位相状態(図5(b)(c)参照)にスイッチングしたことを意味する。
つまり、Pb/Sr2RuO4/Pb接合は、Sr2RuO4の転移温度Tcより十分低い温度範囲において、超伝導パイ接合となっている。
[3.パイ接合SQUID]
図6は、上述の超伝導パイ接合(Pb/Sr2RuO4/Pb接合)1を有する超伝導ループ(SQUID)11を示している。この超伝導ループ11は、ギャップを有するループ本体をスピン一重項超伝導体(Pb)にて形成し、ループ本体のギャップに、スピン三重項超伝導体(Sr2RuO4)を設けた接合部1を有している。この接合部1は、パイ接合であるから、この超伝導ループ11は、パイ接合SQUIDとなっている。なお、前記超伝導ループにおいて、スピン一重項超伝導体とスピン三重項超伝導体とには、それぞれ、2本ずつの電極13,14が接続される。
この超伝導ループ(パイ接合SQUID)11では、ループ内部中空部が、磁束透過用の磁束透過部12となっている。パイ接合SQUID11では、磁束透過部12において、プラスまたはマイナスの半磁束量子φ0/2が、自発的に発生する(半磁束量子の閉じ込め)。この超伝導ループ11は、そのインダクタンスをLとすると、L・Ic>φ0/2となるように形成されている。
このように、本実施形態では、スピン三重項超伝導体の特質を利用し、スピン一重項超伝導体と組み合わせることで、新奇な原理によるパイ接合SQUIDが構成されている。このパイ接合SQUIDは、精密磁化測定装置、脳磁計、地震計、量子ビット(SQUID量子ビット)などに用いることができる。
[3.1 パイ接合SQUIDの製法の第1例]
図7〜図11は、前述のパイ接合SQUIDの製法の第1例を示している。この製法は、前述の[Pb/Ru−Sr2RuO4−Ru/Pb]接合構造の製法を応用したものであり、パイ接合SQUIDの製法に関して特に説明しない点については、先に説明した[Pb/Ru−Sr2RuO4−Ru/Pb]接合構造の製法についての説明事項が援用される。
図7は、基板2形成のための前処理工程を示している。まず、フローティング・ゾーン法などによって育成したSr2RuO4−Ru共晶系の結晶バルクを、切削加工等によって、基板2としての所望形状(例えば、板状体20)に加工する(図7(a))。そして、この板状体20を、所定の切断線に沿って、切断し、複数(2つ)の基板分割片21,21を得る(図7(b))。
さらに、基板分割片21,21の切断面21aに銀ペーストやアルミナ接着剤などの接着材料22を塗布し、熱処理を行って、両基板分割片21,21を接着して、基板2を構成する。超伝導体自体は磁束が透過しにくいが、超伝導体ではない接着材料の部分は、磁束が容易に透過する。これにより、基板2を超伝導体で形成しつつも、接着材料22の部分において磁束が透過する基板2が得られる。なお、接着材料22の部分が、平坦になるように、接着した後、基板2の表面を研磨するのが好ましい。
次に、図8に示すように、基板2の表面(ab面)2aに析出した多数のRu4の中から、一対の接合用のRu(接合用常伝導体)4a,4bを選択する(選択工程)。なお、図8に示す選択工程は、図7に示す前処理工程より先に行っても良い。
続いて、図9に示すように、基板2の表面2aに、Al23などの絶縁材料からなる絶縁膜5を形成する(絶縁膜形成工程)。絶縁膜5は、基板2の表面2aの所定範囲(全範囲であってもよい)に形成され、選択した接合用のRu4a,4bを露出させるための開口部5aを有している。この絶縁膜5は、所定のマスクパターンを用いた露光装置(Lithography)によって形成される。
絶縁膜5が形成された範囲においては、選択した接合用のRu4a,4b以外のRu4が絶縁膜5によって覆われており、この絶縁膜5が形成された範囲において、当該絶縁膜5の上に形成されるスピン一重項超伝導体が基板2と接合するのを阻止している。
なお、絶縁膜5が形成される範囲は、接着材料部分22も覆う範囲として設定されている。
さらに、図10に示すように、絶縁膜5上に、スピン一重項超伝導体となる物質であるPb(又はNb)の蒸着厚膜3が形成される。このPb膜3は、絶縁膜5の開口部5a内にも形成されるため、選択された接合用のRu4a,4b上に、直接、Pb膜3が形成されることになる。なお、Pb膜3が形成される範囲は、接着材料部分22と重なるように設定される。
最後に、図11に示すように、FIBによって、Pb膜3(及び絶縁膜5)の一部を除去することにより、Pb膜3を所定の形状に加工する。
図11の加工工程では、Pb膜3を、外側のループ部(ループ層)31と内側部32とに区分けするとともに、ループ部(ループ層)31中に、その一部が欠如したギャップ(離間部)33を形成するための溝35を、FIBによって形成することで行われる。
ギャップ(離間部)33は、選択した一対のRu4a,4bの間の位置において、ループ部31を、その径内外方向に切断するように形成されたものである。
なお、基板2に凹部6を形成しておき、その凹部6を目印にPb膜の加工をおこなってもよい。また、Pb膜の内側部32を残す必要はなく、内側部32に相当する範囲のPb膜3を除去してもよい。
以上により、ループ部(ループ層)31は、絶縁膜5の上に形成されているために基板2に対して実質的に接合されていないループ本体領域31cと、前記開口部5a内の位置において基板2に対して接合している接合用領域31a,31bと、を備えることになる。
また、接合用領域31a,31bは、ギャップ(離間部)33の存在により、接合用の第1のRu4aに接合する第1接合用領域31aと、接合用の第2のRu4bに接合する第2接合領域31bとに区分けされる。
このようにして得られた[第1接合用領域31a/基板2/第2接合用領域31b]の接合は、前述の超伝導パイ接合構造と同様に、[スピン一重項超伝導体(Pb)/スピン三重項超伝導体(Sr2RuO4)/スピン一重項超伝導体(Pb)]のパイ接合となっている。ループ本体領域31cのギャップ部33に、このパイ接合が形成されることで、超伝導ループ11からなるパイ接合SQUIDが構成される。
また、FIBによって形成される溝35は、接着材料22上に位置するように形成される。したがって、接着材料22の位置が磁束透過部12となり、パイSQUIDにおいて自発的に発生する半磁束量子φ0/2が、ループ層3の内側において基板2を透過することができる。
また、図6の電極13,14に対応して、図11に示すように、基板2の側面に電極13,13、ループ本体領域31cに電極14,14が接続される。基板2の側面は、導電性の良い前記ac面又は前記bc面となるため、Ruを利用する必要がなく、電極13,13の接続が容易である。
[3.2 パイ接合SQUIDの製法の第2例]
図12〜図14は、パイ接合SQUIDの製法の第2例を示している。第2例に係る製法においても、第1例に係る製法と同様に、前処理工程(図7参照)及び選択工程(図8参照)が行われる。
そして、図12に示すように絶縁膜形成工程が行われた後、図13に示すようにPb膜の形成工程が行われる。なお、図12及び図13に示す工程は、第1例に係る図9及び図10に示す工程と実質的に同一のものであり、相違するのは形成される膜3,5の形状だけである。
Pb膜を形成した後、図14に示すように、FIBによって、Pb膜3(及び絶縁膜5)の一部を除去することにより、Pb膜3を所定の形状に加工する加工工程が行われる。
図14の加工工程では、Pb膜3を、外側部30及び内側部32と、外側部30及び内側部32の間にあるループ部(ループ層)31とに区分けするとともに、ループ部(ループ層)31中に、その一部が欠如したギャップ(離間部)33を形成するための溝35を、FIBによって形成することで行われる。
第2例に係る加工工程(図14)では、第1例に係る加工工程(図11)とは異なり、Pb膜3に外側部30が形成される。
第2例に係る加工工程のように加工を行うことで、一つのPb膜内に複数のループ部31を形成することが可能であり、したがって、一つの基板2上に複数のパイ接合SQUIDを形成することができる。
第2例に係る加工工程によって形成されたループ部(ループ層)31も、第1例に係る加工工程によって形成されたループ部(ループ層)31と同様のものであり、パイ接合を有する超伝導ループ11からなるパイ接合SQUIDが構成される。
[3.3 パイ接合SQUIDの製法の第3例]
図15は、Sr2RuO4−Ru共晶の表面に析出したRu(常伝導体)4a,4bを、PbとSr2RuO4との接合に利用する接合構造の他の例を示している。図15に示す接合構造も、[スピン一重項超伝導体/スピン三重項超伝導体/スピン一重項超伝導体]の接合となっている。
図1に示す接合構造では、前述のように、基板2表面上に形成された層(Pb)3a,3bにおいて互いに離間する第1領域3a及び第2領域3bは、それぞれ、異なるRu(常伝導体)4a,4bを介して、Sr2RuO4と接合されている。
これに対し、図15に示す接合構造では、第1領域3a及び第2領域3bは、いずれも個別のRu(常伝導体)4cを介して、Sr2RuO4と接合されている。つまり、図15に示す接合用常伝導体(Ru)4cは、互いに離間した第1領域3a及び第2領域3bを架け渡すように配置されている。なお、第1領域3aと第2領域3bとのギャップは、数μm程度(例えば2μm程度)又はそれ以下が好ましく、更には、0.5μm程度又はそれ以下が好ましい。
図15に示すように共通の接合用常伝導体(Ru)4cを介して第1領域3aと第2領域3bをSr2RuO4と接合した場合でも、図1の接合構造における接合特性(図4参照)と同様の振る舞いを示すことが実験的に確認された。
つまり、[Pb/Sr2RuO4/Pb]接合の接合特性は、Pb−Pb(第1領域3a−第2領域3b)間のRuの配置によらず、同様の振る舞いを生じることができる。
図16及び図17は、図15に示す接合構造を利用するパイ接合SQUIDの製法(第3例)を示している。第3例に係る製法においても、前処理工程、選択工程、絶縁膜形成工程、及び、スピン一重項超伝導体膜形成工程(Pb膜の形成工程及びPb膜の加工工程)が行われる。
第3例に係る製法における前処理工程は、第1例に係る製法における前処理工程と実質的に同じである。
第3例に係る製法における選択工程では、基板2の表面(ab面)2aに析出した多数のRu4の中から、1以上の接合用のRu(接合用常伝導体)4cが選択される。なお、以下では、1個のパイ接合SQUIDについて接合用Ruを1個だけ選択した場合について説明するが、1個のパイ接合SQUIDについて接合用Ruを複数選択してもよい。
また、同一の基板2上に、複数のパイ接合SQUIDを形成する場合には、複数のパイ接合SQUIDそれぞれに用いられる接合用Ruを個別に選択すればよい。
第3例に係る製法における絶縁膜形成工程は、第1例に係る製法における同工程とほぼ同様である。ここでは、絶縁膜5に形成される開口部5aは、選択された単一のRu4cを露出させるためのものとなる。
続いて行われるPb膜形成工程も第1例と同様である。Pb膜形成工程の後に行われるPb膜加工工程では、Pb膜3を、外側のループ部(ループ層)31と内側部32とに区分けするとともに、ループ部(ループ層)31中に、その一部が欠如したギャップ(離間部)33を形成するための溝35を、FIBによって形成することで行われる。
第3例では、図16に示すように、ギャップ(離間部)33は、選択したRu4cの長手方向ほぼ中央位置を横断するように形成される。なお、図16では、理解の容易のため、絶縁膜5の図示を省略している。
ループ部31は、ギャップ(離間部)33の存在により、接合用Ru4cの長手方向一端側に接合する第1接合領域31aと、当該接合用Ru4cの長手方向他端に接合する第2接合領域31bとに区分けされる。つまり、接合用Ru4cは、第1接合領域31aと第2接合領域31bとを架け渡すように位置している。
[4.変形例]
上記において開示した事項は、例示であって、本発明を限定するものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、Sr2RuO4における前記bc面や前記ac面を、Pb膜との接合に用いても良い。前記bc面や前記ac面は、結晶表面の導電性が比較的良いため、前記bc面や前記ac面をPb膜との接合に用いた場合には、析出Ruを接合に利用する必要がなくなり、製造が容易となる。
図7において、磁束透過部12を形成するために、板状体20を切断した後、接着する例を示したが、板状体20を切断せずにアルミナ硬化剤などの磁束が容易に透過する材料に埋め込んで固めた後、表面研磨した物を、基板2として用いてもよい。つまり、前処理工程2において、基板の切断・接着を行うのに代えて、板状体20の周囲に磁束が容易に透過する材料40を形成し、その材料40の部分を磁束透過部12としてもよい。
具体的には、まず、ペースト状のアルミナ硬化剤を、図示しないモールドに流し込むとともに、アルミナ硬化剤中に、Sr2RuO4−Ru共晶からなる板状体20を埋め込む。そして、アルミナ硬化剤を加熱によって硬化させる。これにより、図18(a)に示すように、Sr2RuO4−Ru共晶からなる板状体(基板本体)20の周囲に、アルミナ硬化剤からなる外側部材40が一体的に形成された基板2を得る。
なお、板状体20は、その表面(ab面)20aが、外側部材40の表面40aと面一となり、その側面の一つ20b(bc面又はac面)が、外側部材40の側面40bと面一となるように配置される。
基板2のうち、少なくとも、板状体表面20a及び外側部材表面40aからなる面、及び板状体側面20b及び外側部材側面40bからなる面には、研磨が施される。
そして、図18(b)に示すように、基板2の表面20a,40aに、開口部5aを有する絶縁膜5を形成する。この絶縁膜5は、Sr2RuO4−Ru共晶からなる板状体20表面20aのほぼ全体と、外側部材表面40aの一部とを覆うように形成される。ただし、一対の接合用のRu4a,4bは、開口部5aによって露出する。
さらに、図18(b)に示すように、絶縁膜5上に、スピン一重項超伝導体となる物質であるPb(又はNb)の蒸着厚膜が形成され、FIBによって、Pb膜からなるループ部(ループ層)31を形成する。
このループ部31のループ内側領域の一部が、外側部材40上に位置する。この外側部材40上に位置するループ内側領域では、基板2の厚さ方向にみて超伝導体が存在せず、磁束透過部12となる。
また、図6の電極13,14に対応して、板状体20の側面20bに電極13,13が接続され、ループ部31のループ本体領域31cに電極14,14が接続される。
また、磁束透過部12の他の例としては、Sr2RuO4−Ru共晶からなる基板2を貫通する孔を形成し、その孔の部分を磁束透過部12としたものでもよい。つまり、前処理工程2において、基板の切断・接着を行うのに代えて、基板2において磁束透過部12としたい位置に孔を形成すればよい。
1 超伝導パイ接合構造
2 基板(スピン三重項超伝導体)
4a 第1接合用常伝導体(析出常伝導体)
4b 第2接合用常伝導体(析出常伝導体)
4c 接合用常伝導体(析出常伝導体)
5 絶縁膜
5a 開口部
11 超伝導ループ
12 磁束透過部
20 板状体(基板本体)
21 基板分割片
22 接着材料
31 ループ部(ループ層)
31a 第1接合用領域
31b 第2接合用領域
40 外側部材(磁束が容易に透過する材料)

Claims (18)

  1. スピン三重項超伝導体の単結晶を用いた基板と、
    当該基板の表面に形成されたスピン一重項超伝導体のループ層と、
    を有し、
    前記ループ層は、前記基板に対して実質的に接合されていないループ本体領域と、前記基板に対して接合するための第1接合用領域及び第2接合用領域と、を備え、
    前記第1接合用領域及び第2接合用領域それぞれが前記基板と接合することで、[スピン一重項超伝導体/スピン三重項超伝導体/スピン一重項超伝導体]のパイ接合を有する超伝導ループが形成されている
    パイ接合SQUID。
  2. 前記基板は、スピン三重項超伝導体と常伝導体との共晶によって形成され、
    スピン一重項超伝導体とスピン三重項超伝導体との接合に、前記基板が有する前記常伝導体の導電性を利用した
    請求項記載のパイ接合SQUID。
  3. 前記スピン三重項超伝導体は、SrRuOである請求項記載のパイ接合SQUID。
  4. 前記共晶は、SrRuOとRuとの共晶である請求項記載のパイ接合SQUID。
  5. 前記ループ層は、SrRuOの結晶構造に含まれるRuO面に対して平行な基板表面に形成されている請求項記載のパイ接合SQUID。
  6. 前記基板は、SrRuO結晶、又は、SrRuOとRuとの共晶、によって形成され、
    前記ループ層は、SrRuOの結晶構造に含まれるRuO面に対して垂直な基板表面に形成されている請求項記載のパイ接合SQUID。
  7. 前記ループ層は、前記基板表面上に、スピン一重項超伝導体となる物質を蒸着によって形成した蒸着膜である請求項記載のパイ接合SQUID。
  8. 前記基板には、ループ層のループ内側位置における磁束の透過を、当該基板において容易にするための磁束透過部が設けられている請求項記載のパイ接合SQUID。
  9. 前記基板は、スピン三重項超伝導体からなる複数の基板分割片を接着材料によって接着してなり、
    前記磁束透過部は、前記基板における前記接着材料の部分である請求項記載のパイ接合SQUID。
  10. 前記基板は、スピン三重項超伝導体からなる基板本体を、磁束が容易に透過する材料に埋め込んで形成され、
    前記磁束透過部は、前記基板において磁束が容易に透過する前記材料の部分である請求項記載のパイ接合SQUID。
  11. 前記磁束透過部は、前記基板に形成された孔である請求項記載のパイ接合SQUID。
  12. 超伝導接合構造の製造方法であって、
    スピン三重項超伝導体となる物質の結晶バルクを加工して、基板を形成する基板形成工程と、
    前記基板表面にスピン一重項超伝導体となる物質からなる層を形成するスピン一重項超伝導体層形成工程と、
    を含む超伝導接合構造の製造方法。
  13. 超伝導接合構造の製造方法であって、
    スピン三重項超伝導体になる物質と常伝導体との共晶の表面に析出した常伝導体のうち、接合用の常伝導体を選択する選択工程と、
    選択した接合用の常伝導体の少なくとも一部をスピン一重項超伝導体となる物質で覆う層を形成するスピン一重項超伝導体層形成工程と、
    を含む超伝導接合構造の製造方法。
  14. 前記選択工程では、互いに離間する対の接合用常伝導体を選択し、
    前記スピン一重項超伝導体層形成工程において形成される前記層は、選択した対の接合用常伝導体の対間隙において離間しているとともに、選択した対の接合用常伝導体それぞれをスピン一重項超伝導体となる物質で覆うものである
    請求項13記載の超伝導接合構造の製造方法。
  15. 前記スピン一重項超伝導体層形成工程において形成される前記層は、選択した接合用常伝導体上において離間しているとともに、選択した当該接合用常伝導体の一部をスピン一重項超伝導体となる物質で覆うものである
    請求項13記載の超伝導接合構造の製造方法。
  16. 前記共晶の表面に析出した常伝導体のうち、選択した接合用常伝導体以外の常伝導体を絶縁膜で覆う絶縁膜形成工程と、を更に含み、
    前記スピン一重項超伝導体膜形成工程において形成される前記層は、選択した接合用常伝導体と、前記絶縁膜の少なくとも一部とを、前記スピン一重項超伝導体となる物質で覆うものである
    請求項13〜15のいずれか1項に記載の超伝導接合構造の製造方法。
  17. 前記絶縁膜形成工程では、選択した接合用常伝導体の位置に開口部が形成された絶縁膜を、前記共晶の表面に形成する
    請求項16記載の超伝導接合構造の製造方法。
  18. 前記スピン一重項超伝導体層形成工程では、前記スピン三重項超伝導体と前記スピン一重項超伝導体とによって、[スピン一重項超伝導体/スピン三重項超伝導体/スピン一重項超伝導体]のパイ接合を有する超伝導ループが形成されるように、前記層を形成する
    請求項12〜17のいずれか1項に記載の超伝導接合構造の製造方法。
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