電波ビームを利用し、検知領域内に存在する被検知体の有無や移動状態を検知する電波センサとして、図13に示す特許文献1記載の電波センサは、高周波信号を生成する発振回路1と、高周波信号を電波ビームとして送受信する送受信アンテナ6と、送受信アンテナ6から送信する高周波信号(送信波)と受信する高周波信号(受信波)の周波数の差分を抽出する検波素子7(ダイオード)を備えている。
発振回路1と送受信アンテナ6は伝送線路11を介し接続され、伝送線路11の経路途中にはダイオード7のアノード端子が直接、接続されている。発振回路1にて生成された高周波信号は伝送線路11を介し送受信アンテナ6まで伝搬され、電波ビームとして送信される。そして、検知領域内に存在する被検知体に衝突し反射して戻ってきた高周波信号を送受信アンテナ6にて受信し、送信波と受信波の周波数の差分をダイオード7により抽出し、ダイオード7のカソード端子に接続された出力線路8から検知信号として外部に出力する。
電波センサの検知性能の指標であるS/N比は、電波センサから空間(検知領域)に送信された高周波信号が検知領域内に存在する被検知体に衝突し反射して電波センサに戻ってくる高周波信号の電力量(受信電力:S)と、検知領域内に被検知体が存在しないとき電波センサから出力される検知信号の電圧振幅値(暗ノイズ:N)の大きさから決定する。電波センサから空間に電波ビームとして送受信される高周波信号の電力量は、距離に応じて減衰し周波数が高くなるほど減衰量が増加する。そのため、電波センサから空間に送信される高周波信号の周波数が高くなると、検知領域内に存在する被検知体に衝突し反射して電波センサに戻ってくる高周波信号の受信電力が低下し、S/N比が低下する。
図13に示す電波センサは伝送線路11の経路途中にダイオード7のアノード端子が直接、接続されているため、発振回路1にて生成された高周波信号の電力の一部はダイオード7に入力される。従って、送受信アンテナ6から空間に送信される高周波信号の電力量は必然的に減少する。そこで、発振回路1にて生成する高周波信号の電力量を増加する、アンテナゲインが比較的高いホーンアンテナや複数のアンテナ素子を伝送線路にて相互接続したアレイアンテナを使用し高周波信号を送受信する、といった手段にてアンテナから空間に送信される高周波信号の電力量の低下を補いS/N比の低下を抑制することが容易に考えられる。
しかしながら、近年、住宅設備機器や民生機器の商品側から望まれている環境問題等による電波センサの低消費電力化や小型化(薄型化)といった要望に対し、対応することができない。
従って、本発明の目的は、検知領域内に存在する被検知体の有無や移動状態を精度良く検出する、S/N比に優れた低消費電力、且つ小型の電波センサを提供することにある。
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、高周波信号を生成する発振回路と、誘電体からなる基板と、前記基板の一方の表面または内部の略全面に形成された高周波信号のグランドとして作用する接地電極と、前記基板の他方の表面に形成された、被検知体に衝突し反射して戻ってきた高周波信号を受信するアンテナ電極と、前記アンテナ電極にて受信した高周波信号を検波する検波素子と、前記検波素子にて検波された検知信号を外部に出力する出力線路と、前記検波素子から出力される検知信号の電圧値を調整する電圧調整手段と、を備え、前記検波素子は、何れか一方の端子が前記アンテナ電極の共振周波数を調整する周波数調整線路を介して前記アンテナ電極に接続され、他方の端子が前記接地電極に接続され、前記電圧調整手段は、前記アンテナ電極が励振した時に生じる電界が略最小となる前記アンテナ電極の位置に直接または前記出力線路を介し接続されたことを特徴とする電波センサである。
上記目的を達成するために請求項2記載の発明は、高周波信号を生成する発振回路と、誘電体からなる基板と、前記基板の一方の表面または内部の略全面に形成された高周波信号のグランドとして作用する接地電極と、前記基板の他方の表面に形成された、被検知体に衝突し反射して戻ってきた高周波信号を受信するアンテナ電極と、前記アンテナ電極にて受信した高周波信号を検波する検波素子と、 前記検波素子にて検波された検知信号を外部に出力する出力線路と、前記検波素子から出力される検知信号の電圧値を調整する電圧調整手段と、を備え、前記検波素子は、何れか一方の端子が前記アンテナ電極に直接接続され、他方の端子が前記接地電極に接続され、前記電圧調整手段は、前記アンテナ電極が励振した時に生じる電界が略最小となる前記アンテナ電極の位置に直接または前記出力線路を介し接続されたことを特徴とする電波センサである。
本発明の電波センサは、高周波信号を生成する発振回路と、誘電体からなる基板と、基板の一方の表面または内部の略全面に形成された高周波信号のグランドとして作用する接地電極と、発振回路にて生成された高周波信号を電波ビームとして送信する送信アンテナと、検知領域内に存在する被検知体に衝突し反射して戻ってきた高周波信号を受信する受信アンテナと、受信アンテナに接続され高周波信号を検波する検波素子と、検波素子から出力された検知信号を外部に出力する出力線路と、検波素子から出力される検知信号の電圧値を調整する電圧調整手段を備えている。検波素子は高周波信号(高周波電力)を検波し直流電圧に変換する機能を有し、例えば、ショットキーダイオードである。検波素子はダイオードとなる半導体構造を備えていれば良く、FET(電界効果トランジスタ)のドレイン端子とゲート端子間、またはゲート端子とソース端子間も検波素子として利用できる。電圧調整手段は、検波素子から出力される検知信号の電圧値を調整する機能を有し、例えば、何れか一方の端子が接地された、セラミック基材表面に膜状の抵抗体が形成された抵抗器である。
送信アンテナおよび受信アンテナの形態は、ダイポールアンテナやホーンアンテナ、マイクロストリップアンテナ等、様々な形態が考えられ、送信アンテナと受信アンテナの偏波方向が略同一ならば必ずしも同じアンテナ構造・形状である必要はない。また、送信アンテナと受信アンテナは特許文献1記載の電波センサのように1つのアンテナで高周波信号を送受信することもできる。電波センサの低消費電力化や小型化(薄型化)を考慮すると、一方の表面または内部の略全面に高周波信号のグランドとして作用する接地電極を備えた誘電体からなる基板の他方の表面に、高周波信号を電波ビームとして送受信する薄膜状のアンテナ電極を形成したマイクロストリップアンテナが好ましい。このとき、送信アンテナおよび受信アンテナとなる複数のアンテナ電極を同一基板上に形成し、送信アンテナの電極面と受信アンテナの電極面を並列に配置すれば、送信アンテナおよび受信アンテナの前方の検知領域内に存在する被検知体の有無や移動状態を検知できる。また、送信アンテナとなるアンテナ電極と受信アンテナとなるアンテナ電極を別々の基板上に形成し、送信アンテナの電極面と受信アンテナの電極面が対向するように配置すれば、送信アンテナと受信アンテナに挟まれた空間内に存在する被検知体の有無や移動状態を検知できる。
発振回路と送信アンテナは同一基板上に備えても良いし、別々に備えても良い。発振回路と送信アンテナとを接続する信号伝達手段として基板に形成される伝送線路や導通孔、同軸ケーブルや同軸コネクタを使用し、発振回路と送信アンテナを接続すれば、発振回路にて生成された高周波信号の電力量が殆ど損失なく送信アンテナまで伝搬され、送信アンテナから電波ビームとして送信できる。発振回路は、ガンダイオードやトランジスタを利用し所定の周波数および電力量を有する高周波信号を生成する高周波回路である。電波センサの低消費電力化を考慮するとFET(電界効果トランジスタ)と誘電体共振器を併用し所望の高周波信号を生成することが好ましい。また、定電圧出力回路(例えば、DC/DCコンバータやツェナーダイオード)介し、所定の直流電源電圧を発振回路に入力することで、電波センサに印加される直流電源電圧の変化で発振回路にて生成される高周波信号の周波数や電力量が変動する、発振停止が生じることを未然に防止できる。定電圧出力回路と発振回路は同一基板上に備えても良いし、別々に備えても良い。また、必要に応じて発振回路にて生成された高周波信号を効率良く通過させるとともに発振回路側とアンテナ電極側を直流的に分離(絶縁)するフィルタ回路(例えば、電子部品の高周波用コンデンサや銅箔エッチング法にて基板に直接、形成できるフィルタ線路)を信号伝達手段として備え、発振回路からアンテナ電極まで高周波信号を伝搬させても良い。
本発明の電波センサにおいて、少なくとも検波素子(以下、ダイオード)が接続された受信アンテナは、基板の他方の表面に形成される薄膜状のアンテナ電極(以下、受信電極)であり、接地電極が反射板として作用するマイクロストリップアンテナである。受信電極には直接、または周波数調整線路を介しダイオードのカソード端子またはアノード端子の何れか一方の端子が接続され、ダイオードの他方の端子は接地電極に接続されている。
電波センサから送信される電波ビームの指向性利得を増加させるため、送信アンテナと受信アンテナを近接させ配置すると、送信アンテナから送信された高周波信号の一部が受信アンテナに回り込み、受信アンテナからも高周波信号が送信されることになり、受信アンテナは送信アンテナの役割も果たすことになる。従って、送信アンテナと受信アンテナとの位相差により、送信アンテナから送信された高周波信号と受信アンテナから送信された高周波信号とが統合された電波ビームの指向形態(最大放射強度方向・半値角)が変化することになる。そのため、ダイオードが接続される受信アンテナの共振周波数(位相)を予め制御(調整)した上で、送信アンテナと受信アンテナの素子間スペースを調整しないと、センサから送信される電波ビームの指向性利得や指向形態(最大放射強度方向・半値角)を制御することが困難となる。
本発明の電波センサは、受信電極に直接、または周波数調整線路を介しダイオードのカソード端子またはアノード端子の何れか一方の端子が接続され、ダイオードの他方の端子が接地電極に接続された状態にて、受信電極の共振周波数(位相)が発振回路にて生成される高周波信号の周波数と略同一(同位相)または高め(プラス位相)になるよう、受信電極の形状または周波数調整線路の長さが調整されている。その受信電極の周囲に、共振周波数が発振回路にて生成される高周波信号の周波数と略同一となる送信アンテナ(送信電極)を、所定の素子間スペースを設けて配置すれば、送信電極から送信された高周波信号と受信電極から送信された高周波信号とから統合された電波ビームの指向性利得が向上し、検知領域内に存在する被検知体に衝突し反射して戻ってくる高周波信号の電力量を増加させることができる。
但し、ダイオードにて検波された検知信号を外部に出力する出力線路を、受信電極および周波数調整線路に伝搬する高周波信号の電流値が比較的大きい受信電極や周波数調整線路の位置に接続すると、出力線路が保有するインダクタンス成分や容量成分、出力線路の後段に接続される増幅回路等の影響を大きく受けて受信電極の共振周波数が変化する。その結果、電波ビームの指向形態を制御することが困難になるとともに、受信効率が低下する。
そこで、出力線路は受信電極および周波数調整線路に伝搬する高周波信号の電流値が略最大、すなわち受信電極および周波数調整線路が励振した時に生じる電界が略最小となる受信電極および周波数調整線路の位置に接続することが最も好ましい。例えば、偏波方向が垂直偏波となる正方形状の受信電極や垂直偏波と円偏波が混在する受信電極の場合、受信電極の励振方向と平行する端辺の長さをLとすると、受信電極の励振方向と直交する端辺から0.5×L(受信電極の励振方向と直交する受信電極の中心線上)となる受信電極の内側または端辺の位置に、出力線路を接続すれば良い。また、偏波方向が円偏波となる受信電極の場合、受信電極の略中心部または受信電極の外周辺の位置に、出力線路を接続することが最も好ましい。そうすれば、出力線路および出力線路の後段に接続される電気回路のインダクタンス成分や容量成分の影響を受けず、受信電極の共振周波数は殆ど変化しないため、所定の指向性利得および指向形態にて電波ビームを放射できるとともに受信効率が低下することを防止できる。
受信電極または周波数調整線路に接続される出力線路は、受信電極および周波数調整線路を伝搬する高周波信号の電流値が略最大(電界が略最小)となる受信電極または周波数調整線路の位置に接続する際、高周波信号の周波数が高くなるほど出力線路の接続位置に精度が要求される。従って、出力線路の線路幅は狭いほど良いが、銅箔エッチング法による一般的な基板製造方法を考慮すると0.1〜0.3ミリメートル程度の線路幅が妥当である。また、出力線路の線路長は、直線且つ電気長が送信信号の周波数において半波長よりも長くすることが好ましい。出力線路は、受信電極が配置される基板の同一表面上に配置しても良いし、基板の表裏を貫通する導通孔を介し受信電極と異なる基板表面または内部に配置しても良い。また、必要に応じて二次スプリアス(発振回路にて生成される高周波信号の周波数に対し2倍の周波数成分)を外部に出力することを防止する高周波遮断スタブを出力線路に接続することができる。
直接、または周波数調整線路を介し受信電極に接続されるダイオードは、アノード端子を接地電極に、カソード端子を周波数調整線路に各々接続した場合、出力線路から出力される検知信号の電圧値レベルはプラス電圧側に振れ、アノード端子を周波数調整線路に、カソード端子を接地電極に各々接続した場合、出力線路から出力される検知信号の電圧値レベルはマイナス電圧側に振れる。従って、必要に応じて正電源または負電源の増幅回路(オペアンプ等により構成され、ボルテージフォロワまたは等倍(入力1に対し出力1の比率)以上の信号増幅機能を備えた回路)を出力線路の後段に接続すれば、信号処理が容易になるとともに、電波センサのノイズ耐性が向上し出力線路から外部に出力される検知信号(暗ノイズ)の電圧値変動を抑制できる。また、必要に応じて増幅回路の前段または後段に必要な周波数成分のみを抽出するフィルタ回路を組み込むこともできる。
また、受信電極と周波数調整線路の接続点からダイオードを介し接地電極までの電気長が送信する高周波信号の周波数において4分の1波長(λg/4:λg…基板を伝搬する高周波信号の波長である。また、真空中における高周波信号の電波の波長をλ、基板の比誘電率をεrとすると、λ=εr1/2・λgである。)の奇数倍になるよう周波数調整線路の長さを調整すると、受信電極と周波数調整線路の接続点からダイオードを介し接地電極までの高周波信号が伝搬する伝搬経路が、送信する高周波信号の周波数において共振する高周波回路となる。従って、受信電極にて受信した高周波信号をダイオードにて効率良く検波できるとともに、ダイオードから出力される検知信号の暗ノイズを最小化できるため、比較的高いS/N比が得られる。特に、受信電極と周波数調整線路の接続点からダイオードを介し接地電極までの電気長が送信する高周波信号の周波数においてλg/4と最短になるよう周波数調整線路の長さを設定すれば、周波数調整線路による高周波信号の伝搬損失を最小化できるため、検波効率が最大となり最も高いS/N比が得られる。また、1つのアンテナにて高周波信号を電波ビームとして送受信電極に、受信電極に接続された同様の回路構成(ダイオードや出力線路等)を付加したとき、送受信電極から効率良く高周波信号を電波ビームとして送受信でき、同様の作用効果が得られる。
ダイオードの何れか一方の端子または周波数調整線路が接続される受信電極の位置は、受信電極の形状すなわち偏波方向により異なるが、受信電極に流れる高周波信号の電流値が略最大(電界が略最小)となる位置以外であれば、受信電極の任意の位置にダイオードの何れか一方の端子または周波数調整線路を接続することができる。例えば、偏波方向が垂直偏波となる正方形状の受信電極の場合、受信電極の励振方向と直交する端辺の長さをWとすると、受信電極の励振方向と平行する端辺から0.5×W(受信電極の励振方向と平行する受信電極の中心線上)の位置、且つ受信電極に流れる高周波信号の電流値が略最大(電界が略最小)となる受信電極の略中心部を除く位置に、ダイオードの何れか一方の端子または周波数調整線路を接続することが好ましく、検知領域の偏り(励振方向と平行する側)を抑制できる。ダイオードおよび周波数調整線路は、受信電極が配置される基板の同一表面上に配置しても良いし、受信電極と異なる基板表面または内部に配置し基板の表裏を貫通する導通孔を介し接続しても良い。
一方で、本発明の電波センサは、高周波信号を受信するアンテナ電極(受信電極)に直接、または周波数調整線路を介しダイオードの何れか一方の端子が接続され、他方の端子は接地電極に接続されているため、受信電極にて受信した高周波信号(高周波電力)を殆ど損失なくダイオードにて検波できる。電波センサの検知領域内には送信アンテナ(送信電極)から送信された高周波信号の周波数の2分の1波長(λ/2)間隔にて、電力分布が最小から最大、最大から最小と連続的に変化する領域が生じている。その検知領域内に被検知体が存在または移動することにより、受信電極にて受信する高周波信号の電力量が連続的に変化するため、ダイオードにて検波され出力された検知信号に周波数成分(波)が現れる。このように、ダイオード素子自体の検波特性(ダイオードに入力される高周波電力に対し、ダイオードから出力される直流電圧値)が電波センサの検知性能に大きく影響し、ダイオードに入力される高周波信号の電力量が大きくなると、ダイオードにて検波され出力される検知信号の直流電圧値は高くなる。
1つのアンテナにて高周波信号を電波ビームとして送受信する場合や、高周波信号を送信する送信アンテナと高周波信号を受信する受信アンテナを近接させて配置した場合、検知領域内に被検知体が存在しなくても発振回路にて生成された高周波信号が直接、または間接的にダイオードに入力されるため、ダイオードに入力される高周波信号の電力量が多くなりすぎて、電波センサ(増幅回路)に印加する直流電源電圧以上の直流電圧がダイオードから出力されることになると、検知領域内を被検知体が存在または移動したとき電波センサにて受信する高周波信号の電力量が変化しても、電波センサから出力される検知信号の電圧値レベルは直流電源電圧と同じになり周波数成分が現れなくなる。
本発明の電波センサは、ダイオードから出力される検知信号の電圧値を調整する電圧調整手段として何れか一方の端子が接地電極に接続された抵抗器を備え、抵抗器の他方の端子は受信電極または周波数調整線路に接続されている
電波センサの検知領域内に被検知体が存在しない状態にて、抵抗器の抵抗値を調整しダイオードから出力される検知信号の電圧値を最適化することにより、低消費電力化のため電波センサに印加する直流電源電圧を低下させても、検知領域内において被検知体が存在または移動したとき、電波センサから出力される検知信号に周波数成分(波)が現れ、検知信号の周波数(周期⇒時間)と送信電極から送信された高周波信号の周波数(波長⇒距離)から被検知体の移動状態(移動速度・相対的な移動距離)を容易に認識できる。
抵抗器の他方の端子は、前述した出力線路と同様、受信電極および周波数調整線路を伝搬する高周波信号の電流値が略最大(電界が略最小)となる受信電極または周波数調整線路の位置に接続することが最も好ましい。そのため、高周波信号の周波数が高い場合、抵抗器の他方の端子を直接、受信電極または周波数調整線路に接続するのではなく、0.1〜0.3ミリメートル程度の線路幅を有した接続線路を介し受信電極または周波数調整線路に接続することが好ましい。従って、出力線路は接続線路と兼用できる。抵抗器や接続線路は、受信電極が配置される基板の同一表面上に配置しても良いし、受信電極と異なる基板表面または内部に配置し基板の表裏を貫通する導通孔を介し接続しても良い。
以上、本発明の電波センサについて、高周波信号を送信する送信アンテナ(送信電極)と、高周波信号を受信する受信アンテナ(受信電極)を別々に備えた電波センサを中心に作用効果を記載したが、高周波信号を1つのアンテナにて送受信する送受信アンテナ(送受信電極)に、受信電極に接続した同様の回路構成(ダイオードや出力線路、電圧調整手段等)を付加すれば、同様の作用効果が得られる。
少なくとも高周波信号を受信する受信アンテナを備え、受信アンテナに直接、または周波数調整線路を介し高周波信号を検波する検波素子が接続された電波センサであれば、前述した作用効果が得られる。
また、アンテナ電極を介し発振回路とダイオードを接続することにより、ダイオードの容量や接続位置のバラつきによりダイオードの通過特性やダイオード入力端の反射特性に変化が生じても、アンテナがバッファとなり発振回路にて生成される高周波信号の周波数や電力量の変化を抑制できる。
本発明によれば、検知領域内に存在する被検知体の有無や移動状態を精度良く検出する、S/N比に優れた低消費電力、且つ小型の電波センサを提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明における電波センサについて説明する。
尚、実施例の図面における基板の厚みや配線パターンの寸法は説明の都合上、実際の形状とは異なる。
図1は本発明における電波センサの第1実施形態を示す、回路構成図、である。図2は同、(a)正面図、(b)正面側から見た内部の透視図、(c)正面側から見た背面部の透視図である。
図2に示す電波センサは、内部の略全面に高周波信号のグランドとして作用する接地電極3が形成された基板2の一方の表面に定電圧出力回路21と発振回路1と増幅回路22を備え、他方の表面に高周波信号を送信する薄膜矩形状の送信電極4と、高周波信号を受信する薄膜矩形状の受信電極5と、高周波信号を検波するダイオード7と、ダイオード5にて検波した結果を外部に出力する出力線路8と、ダイオード5から出力される検知信号の電圧値を調整する電圧調整手段9を備えている。
発振回路1にて生成された高周波信号は、基板2の他方の表面に形成された送信電極4の内部であって整合点(高周波信号の周波数においてインピーダンスが50Ωとなる地点)に形成された基板2の表裏を貫通する導通孔13a(接地電極3とは非導通)を介し、送信電極4まで伝搬される。そして、送信電極4から電波ビームとして前方(接地電極3面に対し送信電極4が配置された側)に高周波信号を送信する。このとき、電波センサの指向性利得および小型化を狙い、基板2の同一表面上に送信電極4と受信電極5を近接させ形成しているため、送信電極4から送信された高周波信号の一部が受信電極5に回り込み、受信電極5が励起される。その結果、受信電極5からも高周波信号が送信される。
送信電極4と受信電極5は基板2上における高周波信号の約2分の1波長(λg/2)の長さLを少なくとも一辺にもつ略正方形状の薄膜電極であり、送信電極4と受信電極5はともに垂直偏波の励振構造を有し、接地電極3が反射板として作用するマイクロストリップアンテナである。
送信電極4と受信電極5の形状(L寸法およびW寸法)は同一であり、発振回路にて生成される高周波信号の周波数と同一(例えば、−10dB以下の周波数帯域に共振周波数が存在する)である。受信電極5には周波数調整線路12を介しダイオード7のアノード端子またはカソード端子の何れか一方の端子が接続され、ダイオード7の他方の端子は導通孔13bを介し接地電極3に接続されている。
図3に示すように受信電極5に周波数調整線路12を介しダイオード7が接続された状態にて、受信電極5と周波数調整線路12の接続点からダイオード7を介し接地電極3までの電気長が、送信する高周波信号の周波数において4分の1波長(λg/4)の奇数倍になるよう周波数調整線路12の長さを設定したとき、受信電極5と周波数調整線路12の接続点からダイオード7を介し接地電極3までの高周波信号が伝搬する伝搬経路が、送信する高周波信号の周波数において共振する高周波回路となる。従って、受信電極5にて受信した高周波信号をダイオード7にて効率良く検波できるとともに、ダイオード7から出力される検知信号の暗ノイズを最小化できるため、比較的高いS/N比が得られる。特に、受信電極5と周波数調整線路12の接続点からダイオード7を介し接地電極3までの電気長が、送信する高周波信号の周波数においてλg/4と最短になるよう周波数調整線路12の長さを設定すれば、周波数調整線路12による高周波信号の伝搬損失を最小化できるため、検波効率が最大となりさらに高いS/N比が得られる。
但し、ダイオード7にて検波された検知信号を外部に出力する出力線路8を、受信電極5および周波数調整線路12に伝搬する高周波信号の電流値が比較的大きい受信電極5や周波数調整線路12の位置に接続すると、出力線路8が保有するインダクタンス成分や容量成分、出力線路8の後段に接続される増幅回路22等の影響を大きく受けることになり、受信電極5の共振周波数が変化する。その結果、電波ビームの指向形態を制御することが困難になるとともに、受信効率が低下する。
図2に示す電波センサは、受信電極5が励振した際に受信電極5を伝搬する高周波信号の電流値が略最大(電界が略最小)となる受信電極5の励振方向と平行する端辺の略中央部(受信電極4bの励振方向と直交する端辺から0.5×L(L:励振方向と平行する端辺の長さ)の位置)にダイオード7にて検波した結果を外部に出力する出力線路8が接続され、出力線路8の後段に形成された基板2の表裏を貫通する導通孔13dを介し増幅回路22と接続されている。そのため、受信電極5を伝搬する高周波信号の状態を殆ど変えることがないため、受信電極5の共振周波数に殆ど影響を与えない。従って、所定の指向性利得および指向形態にて電波ビームを放射できるとともに受信効率が低下することを防止できる。
受信電極5の形状が矩形状(垂直偏波)の場合、受信電極5の励振方向と平行する端辺の中央部に出力線路8を接続することが最適であるが、受信電極5の励振方向と平行する端辺の任意の位置(受信電極5の励振方向と直交する端辺との交差部近傍は除く)に出力線路8を接続しても、受信電極5を伝搬する高周波信号の状態は極端に変わることがないため、受信電極5の共振周波数の変化は微少である。従って、所望の指向性利得および指向形態にて電波ビームを放射でき、所望の受信効率が得られるのであれば、出力線路8は受信電極5の励振方向と平行する端辺の任意の位置に接続しても良い。受信電極5が矩形状であれば、銅箔エッチング法により基板2の同一表面上に同時に受信電極5と出力線路8が形成でき、受信電極5の励振方向と平行する端辺の所定の位置に精度良く出力線路8を接続できる。
このように、図2に示す電波センサは、受信電極5に直接、または周波数調整線路12を介しダイオード7のカソード端子またはアノード端子の何れか一方の端子が接続され、他方の端子は接地電極に接続された状態で、共振回路を構成しているため、受信電極5にて受信した高周波信号(高周波電力)を殆ど損失なくダイオード7に入力でき効率良く検波できる。従って、本発明の電波センサの検知性能は、図4−(a)に示すようにダイオード素子自体の検波特性(ダイオードに入力される高周波電力に対し、ダイオードから出力される直流電圧値)が大きく影響し、ダイオードに入力される高周波信号の電力量が大きくなると、ダイオードにて検波され出力される検知信号の直流電圧値は高くなる。
一方で、送信アンテナ4(送信電極)と受信アンテナ5(受信電極)を対向または近接させて配置した場合、検知領域内に被検知体が存在しない状況において、送信アンテナ4から送信された高周波信号が空間を介し受信アンテナ5へ入力され、受信アンテナ5に接続されたダイオード7に入力されるため、ダイオード7に入力される高周波信号の電力量が多くなりすぎて、電波センサ(増幅回路)に印加する直流電源電圧以上の直流電圧値がダイオード7から出力されることになると、検知領域内を被検知体が存在または移動したとき受信アンテナ5にて受信する高周波信号の電力量が変化しても、図4−(b)に示す波形1のように電波センサから出力される検知信号の電圧値レベルは直流電源電圧と同じになり周波数成分が現れなくなる。
図2に示す電波センサは、ダイオード7から出力される検知信号の電圧値を調整するため、受信電極5の励振方向と平行する端辺に接続された出力線路8の経路中に、一方の端子が導通孔13cを介し接地電極3に接続された抵抗器15の他方の端子が接続されている。そのため、受信電極5を伝搬する高周波信号の状態を殆ど変えることがないため、受信電極5の共振周波数に殆ど影響を与えず、ダイオード7から出力される検知信号の電圧値を調整することができる。従って、電波センサの検知領域内に被検知体が存在しない状態にて、抵抗器15の抵抗値を調整しダイオード7から出力される検知信号の電圧値を最適化することにより、低消費電力化のため電波センサに印加する直流電源電圧を低下させても、検知領域内において被検知体が存在または移動したとき、図4−(b)に示す波形2のように、電波センサから出力される検知信号に周波数成分(波)が現れ、検知信号の周波数(周期⇒時間)と送信電極から送信された高周波信号の周波数(波長⇒距離)から被検知体の移動状態(移動速度・相対的な移動距離)を容易に認識できる。
基板2の同一表面上に受信電極5と抵抗器15が配置される場合、相互干渉を防止するため受信電極5の端辺からλg/2以上離れた位置に抵抗器15を配置することが好ましい。
図2に示す電波センサは、送信電極4と受信電極5を近接させ配置しているため、素子間の相互干渉により送信電極4と受信電極5の共振周波数が共に高い側にシフトする。その結果、電波センサから放射される高周波信号の電力量は多少低下するものの指向性利得が増加するため、半値角にて設定される検知領域内において被検知体が存在するまたは動いたとき、被検知体に衝突し反射して戻ってくる高周波信号の電力量を高く得ることができ、受信電極5に接続されたダイオード7により効率良く検波できる。住宅設備機器への電波センサの組込み応用を考えると、比較的狭い空間にて特定方向の被検知体の動きを検知するのに適しており、小便器や大便器に接近する人体や排泄される尿を検知したり、水栓機器に接近する手や温水洗浄便座に接近する人体を検知するのに好適である。
本実施例では、内部の略全面に接地電極3を形成した、いわゆる積層基板2の一方の表面に発振回路3を備え、他方の表面に送信電極4と受信電極5を備えているが、単層基板2の一方の表面の略全面に接地電極3を形成し、他方の表面に発振回路3と送信電極4と受信電極5を備えても良い。
また、受信電極5にダイオード5や出力線路6等が接続された状態にて受信電極5単体での共振周波数が、発振回路1にて生成される高周波信号の周波数と略同一となるよう周波数調整線路12の長さが調整された受信電極5を、送信電極4の周囲に所定の素子間スペースを設け配置しているが、受信電極5にダイオード5や出力線路6等が接続された状態にて受信電極5単体での共振周波数が、発振回路1にて生成される高周波信号の周波数よりも高め(プラス位相)となるように周波数調整線路12の長さが調整された受信電極5を、統合された電波ビームの指向性利得が略最大となる素子間スペースを設け、送信電極4の周囲に配置しても良い。このとき、受信電極5と周波数調整線路12の接続点からダイオード7を介し接地電極2までの電気長はλg/4から外れることになるため、出力線路8を介し外部に出力される検知信号の暗ノイズは若干高めに推移するが、電波センサから放射される高周波信号の電力量および指向性利得を増加させることができ、電波センサの省電力化、小型化を図れる。
また、送信電極4と受信電極5は必ずしも励振方向と平行する送信電極4の端辺と励振方向と平行する受信電極5の端辺とが対向するよう、送信電極4と受信電極5を同一平面状に配置する必要はない。励振方向と直交する送信電極4の端辺と励振方向と直交する受信電極5の端辺とが対向するように配置しても良いし、送信電極4の端辺の一部と受信電極5の端辺の一部とが対向するように配置しても良い。そうすれば、送信電極4から受信電極5への高周波信号の回り込みを抑制でき、受信電極5に接続された出力線路6から出力される検知信号の暗ノイズを低減でき、S/N比が向上する。
また、送信電極4と受信電極5は必ずしも近接させて配置する必要はない。所望の検知性能に応じて同一基板の表面上に、送信電極4の中心点から受信電極5の中心点までの距離を1波長(1λg)以上離して送信電極4と受信電極5を配置すれば、相互干渉の度合いが小さくなるため、統合された電波ビームの指向性利得は低いものの電波センサから放射される高周波信号の電力量は、送信電極4と受信電極5とを近接させ配置した場合に比べて大きくできる。
また、送信電極4と受信電極5は必ずしも同一平面状にある必要はない。所望の検知性能に応じて、送信電極4と受信電極5を別々の基板または同一の基板に配置でき、送信電極4と受信電極5の位置関係は自由に決定することができる。例えば、送信電極4の励振面に対し後方側(電波ビームの放射方向とは反対方向)に受信電極5の励振面を平行に配置すれば、送信電極4から受信電極5への高周波信号の回り込みを抑制でき、受信電極5に接続された出力線路8から出力される検知信号の暗ノイズをさらに低減できる。
また、ダイオード7は必ずしも周波数調整線路12を介し受信電極5に接続される必要はなく、図5−(a)変形例1に示すようにダイオード7のカソード端子またはアノード端子の何れか一方の端子を直接、受信電極5に接続し、他方の端子を図示しない接地電極3に接続れている。そして、ダイオード7の何れか一方の端子が受信電極5に直接、接続され、他方の端子は基板2の表裏を貫通する導通孔13bを介し図示しない接地電極3に接続された状態にて、受信電極4bの共振周波数が所望の周波数となるよう受信電極5のL(励振方向と平行する端辺の長さ)寸法およびW(励振方向と直交する端辺の長さ)寸法が調整されているため、前述した作用効果が得られる。
以下、変形例に示す電波センサは、本発明の主要部である受信電極5側の正面図のみ記載しているが、図2に示す電波センサと回路構成は同様である。
また、受信電極5に接続される出力線路8の接続位置は受信電極5の形状によって異なる。図2に示す電波センサは矩形状の受信電極5を備え垂直偏波の電波ビームを効率良く受信するアンテナであったのに対し、図5−(b)変形例2に示す電波センサは、図中左上と図中右下の角部が切り取られた矩形状の受信電極5を備え円偏波の電波ビームを効率良く受信するアンテナである。図示しない送信電極4は受信電極5と同じ形状である。
垂直偏波方式の受信電極5は何れか一対の対向する電極の端辺に高周波信号の電流が集中するのに対し、円偏波の受信電極5は電極5の外周辺に高周波電流が集中する。そのため、円偏波方式の受信電極5の外周に出力線路6や抵抗器15を接続すると、受信電極5の共振周波数に大きく影響を与え、受信効率が低下する。変形例2に示す電波センサは、受信電極5に伝搬する高周波信号の電流値が略最大(電界が略最小)となる受信電極5の略中央部に、基板2の表裏を貫通する導通孔13hが形成され、導通孔13hを介し受信電極5とは異なる表面に形成された図示しない出力線路8と受信電極5が接続され、図示しない出力線路8には一方の端子が図示しない接地電極3に接続された図示しない抵抗器15の他方の端子が接続されている。従って、受信電極5に伝搬する高周波信号の状態に影響を与えないため、前述した作用効果が得られる。つまり、受信電極5に直流電気的に導通し、受信電極5に伝搬する高周波信号の電流値が略最大(電界が略最小)となる受信電極5の位置に、出力線路8が接続されていれば、受信電極5に伝搬する高周波信号の状態に影響を与えないため、前述した作用効果が得られる。
また、ダイオード7から出力される検知信号の電圧値を調整するため、受信電極5の励振方向と平行する端辺に接続された出力線路8の経路中に、一方の端子が導通孔13cを介し接地電極3に接続された抵抗器15の他方の端子を接続したが、抵抗器15は必ずしも出力線路8に接続される必要はない。例えば、出力線路8が接続された受信電極5の端辺と対向する端辺の略中央部に0.1〜0.3mmの線幅を有する接続線路14を接続し、抵抗器15の他方の端子を接続しても良い。つまり、受信電極5に直流電気的に導通し、受信電極5に伝搬する高周波信号の電流値が略最大(電界が略最小)となる受信電極5の位置に、直接または接続線路14を介し一方の端子が接地電極3に接続された抵抗器8の他方の端子が接続されていれば、ダイオード7から出力される検知信号の電圧値を調整でき、前述した作用効果が得られる。
図6−(a)変形例3に示す電波センサは、受信電極5の整合点(高周波信号の周波数においてインピーダンスが50Ωとなる地点)に、インピーダンスが50Ωの線路幅を有する周波数調整線路12が接続されている。受信電極5と周波数調整線路12の接続点からダイオード7、導通孔13bを介し図示しない接地電極3までの電気長は4分の3波長(λg/2+λg/4)である。そして、受信電極5と周波数調整線路12の接続点から電気長が2分の1波長(λg/2)、すなわち周波数調整線路12に伝搬する高周波信号の電流値が略最大(電界が略最小)となる位置に出力線路8が接続されている。
従って、受信電極5の共振周波数を高周波信号の周波数と同一に設定し、受信電極5にて受信した高周波信号を比較的短い周波数調整線路12を介しダイオード7の何れか一方の端子に入力できるため、受信電極5にて受信した高周波信号を効率良く検波できる。また、受信電極5と周波数調整線路12との接続点からダイオード7、導通孔13bを介し図示しない接地電極3までの高周波信号が伝搬する伝搬経路が共振回路となるが、周波数調整線路12に接続された出力線路8はその共振状態に影響を与えないため、暗ノイズを最小化できる。さらに、ダイオード7から出力される検知信号の電圧値を抵抗器15の抵抗値により調整できるため、検波効率が向上する。
変形例3に示す電波センサは、ダイオード7から出力される検知信号の電圧値を調整するため、周波数調整線路12に接続された出力線路8の経路中に、一方の端子が導通孔13cを介し接地電極3に接続された抵抗器15の他方の端子を接続しているが、抵抗器15は出力線路8に必ずしも接続される必要はない。図6−(b)変形例4に示す電波センサのように、出力線路8は受信電極5の励振方向と平行する端辺の略中央部に接続し、抵抗器15は接続線路14を介し周波数調整線路12に接続しても、前述した作用効果が得られる。
受信電極5と周波数調整線路12の接続点からダイオード7を介し接地電極3までの高周波信号が伝搬する伝搬経路もアンテナとして作用するため、受信電極5と同一平面上に周波数調整線路12が形成されダイオードが接続される場合、多少なりとも高周波信号を受信する指向方向(検知領域)に影響を与える。従って、送信電極4や受信電極5の周囲にこの影響を緩和する指向性制御アンテナ(指向性制御電極)を配置すれば、指向方向を容易に制御できる。指向性制御電極の形状は自由に設定でき、受信電極5と共振周波数が同一となる指向性制御電極を、送信電極4を中心として受信電極5と対称となる位置に配置すれば、指向方向の偏りを抑制できる。
銅箔エッチング法により矩形状の受信電極5と同一平面上に周波数調整線路12を形成する場合、受信電極5の励振状態に影響を与え受信効率の低下を招かないためにも、受信電極5と接続された周波数調整線路12は、受信電極5の励振方向と平行する方向側に向かい周波数調整線路12を引き出して形成することが好ましい。また、矩形状の受信電極5と同一平面上に出力線路8を形成する場合、受信電極5の励振状態に影響を与え受信効率の低下を招かないためにも、受信電極5と接続された出力線路は、受信電極5の励振方向と直交する方向側に向かい出力線路8を引き出して形成することが好ましい。
内部の略全面に接地電極3が形成された基板2の一方の表面に矩形状の受信電極5が、基板2の他方の表面に周波数調整線路12や出力線路8が各々形成される場合は、受信電極5の励振方向とは関係なく回路配線パターンや部品レイアウトに応じて任意の方向側に向かい周波数調整線路12および出力線路8は引き出して形成できる。
図7−(a)変形例5に示す電波センサは、内部または他方の表面の略全面に図示しない接地電極3が形成された誘電体からなる基板2の一方の表面に、複数の送信電極4a、4bと複数の受信電極5a、5bが形成されている。複数の送信電極4a、4bと複数の受信電極5a、5bは、いずれも基板2上において高周波信号の周波数の約2分の1波長(λg/2)に相当する長さLを少なくとも一辺に有する薄膜矩形状のアンテナ電極であり、図示しない接地電極3が反射板として作用するマイクロストリップアンテナである。
複数の送信電極4a、4bは電力分配回路となる伝送線路23aにて相互に接続され、図示しない発振回路1にて生成された高周波信号が導通孔13aを介し複数の送信電極4a、4bまで伝搬される。複数の受信電極5a、5bも電力分配回路となる伝送線路23bにて相互に接続され、受信電極5bには励振方向と直交する端辺の略中央部に周波数調整線路12を介しダイオード7のアノード端子またはカソード端子の何れか一方の端子が接続され、他方の端子は導通孔13bを介し図示しない接地電極3に接続されている。また、受信電極5aには励振方向と平行する端辺の略中央部にダイオード7にて検波した結果を外部に出力する出力線路8が接続されている。出力線路8の後段には図示しない増幅回路が導通孔13dを介し接続される。さらに、出力線路8にはダイオード7から出力される検知信号の電圧値を調整する電圧調整手段9として、一方の端子が導通孔13cを介し図示しない接地電極3に接続された抵抗器15の他方の端子が接続されている。伝送線路23bにて相互に接続された複数の受信電極5a、5bの共振周波数は、受信電極5bに接続された周波数調整線路12の長さを調整することにより所望の周波数に設定することができる。
電波センサのアンテナゲインを向上させるため、複数の送信電極4a、4bと複数の受信電極5a、5bを所定の素子間スペースを設け配置した場合も、被検知体に衝突し反射して戻ってきた高周波信号を効率良く検波でき、出力線路8を介し出力される検知信号の暗ノイズを低減できるため、高いS/N比が得られる。
変形例5に示す電波センサは、受信電極5bに周波数調整線路12を介しダイオード7が接続され、受信電極5aに出力線路8が接続されているが、出力線路8は受信電極5bの励振方向と平行する端辺の略中央部に接続しても良いし、伝送線路23bを伝搬する高周波信号の電流値が略最大(電界が略最小)となる伝送線路23bの位置に出力線路8を接続しても良い。
複数の受信電極5a、5bを相互に接続する伝送線路23bは高周波信号を伝搬するだけでなくアンテナとして作用する。従って、図7−(b)変形例6に示す電波センサのように、伝送線路23bの略中央部に周波数調整線路12を介しダイオード7のアノード端子またはカソード端子の何れか一方の端子を接続し、他方の端子は導通孔13bを介し図示しない接地電極3に接続した場合も、前述した作用効果が得られる。変形例5および変形例6は、図示しない接地電極3と接続されないダイオード7の何れか一方の端子から出力線路8を介し抵抗器15まで直流電気的に導通しているため、出力線路に8に接続された抵抗器15の抵抗値を調整することにより、ダイオード7から出力される検知信号の電圧値を調整できる。
前述した実施例では、基板2表面に送信電極4と受信電極5が同じ数だけ形成されているが、基板2表面に電力分配回路からなる伝送線路23にて相互に接続された複数の送信電極4a、4bを配置し、複数の送信電極4a、4bのうち何れか一方の送信電極の端辺と少なくとも一部が対向する位置に、少なくとも1つの受信電極5を形成しても良い。そのとき、複数の送信電極4a、4bには発振回路1にて生成された高周波信号の電力が分配されて伝搬されるため、受信電極5と隣接した送信電極4から受信電極5へ回り込む高周波信号の電力量を減少させることができる。従って、受信電極5に接続されたダイオード7に入力される高周波信号の電力量を減少させることができ、検知領域内に被検知体が存在しないとき受信電極5に接続された出力線路8から出力される検知信号の暗ノイズを低減できる。
以下、前述した実施例と重複する部分の記載については説明を省略する。
図8は、本発明における電波センサの第2実施形態を示す、(a)回路構成図、(b)正面図である。
図2に示す電波センサは、高周波信号を送信する送信電極4と高周波信号を受信する受信電極5を基板2の表面に形成していたのに対し、図8に示す電波センサは、図示しない発振回路1にて生成された高周波信号を1つのアンテナにて送受信する送受信電極6を基板2の表面に形成し、図示しない発振回路1にて生成された高周波信号は信号伝達手段11を介し送受信電極6に伝搬される。信号伝達手段11はインピーダンス整合が取れた伝送線路と、図示しない発振回路1と送受信電極6を電気的に分離(絶縁)するフィルタ回路と、基板2の表裏を貫通する導通孔13aとから構成され、効率良く高周波信号を伝搬する。発振回路1の回路構成自体により発振回路1から高周波信号が出力される端部と送受信電極6とが直流的に分離されていれば、信号伝達手段11にフィルタ回路を備える必要はない。
送受信電極6は、基板2上において高周波信号の周波数の約2分の1波長(λg/2)に相当する長さLを少なくとも一辺に有する薄膜矩形状のアンテナ電極であり、図示しない接地電極3が反射板として作用するマイクロストリップアンテナである。検波効率を向上させるため、発振回路1と送受信電極6を接続する伝送線路の経路途中にダイオード7を接続するのではなく、送受信電極6の励振方向と直交する端辺の略中央部に周波数調整線路12を介しダイオード7のアノード端子またはカソード端子の何れか一方の端子が接続され、他方の端子は導通孔13bを介し図示しない接地電極3に接続されている。
図13に示す特許文献1記載の電波センサは、信号伝達手段となる伝送線路11の経路途中にダイオード7のアノード端子が直接、接続されているため、発振回路1にて生成された高周波信号の電力の一部はダイオード7に入力される。従って、送受信アンテナ6から空間に送信される高周波信号の電力量は必然的に減少する。図8に示す電波センサは図示しない発信回路1と送受信電極6を接続する信号伝達手段11の経路途中にダイオード7が接続されないため、発振回路1にて生成された高周波信号の電力量が殆ど低下することなく送受信電極6まで伝搬され、電波ビームとして送信できる。そして、検知領域内に存在する被検知体に衝突し戻ってきた高周波信号を効率良く検波できる。特に、送受信電極6と周波数調整線路12の接続点からダイオード7を介し図示しない接地電極3までの電気長がλg/4となるよう周波数調整線路12の長さを調整すれば、ダイオード7にて検波し出力される検知信号の暗ノイズを最小化でき、高いS/N比を得られる。
このとき、ダイオード7にて検波した結果を外部に出力する出力線路8が、送受信電極6の励振方向と平行する端辺の略中央部に接続され、出力線路8の後段には増幅回路22が接続されている。矩形状である送受信電極6の励振方向と平行する端辺の略中央部は、送受信電極6を伝搬する高周波信号の電流値が略最大(電界が略最小)となる位置であるため、送受信電極6に伝搬する高周波信号の状態を変えることがないため、送受信電極6の共振周波数(位相)に影響を与えない。従って、送受信電極から放射される電波ビームの指向性利得や指向形態(最大放射強度方向・半値角)を保持した上で、ダイオード7にて検波した結果を増幅回路まで伝達できる。
図13に示す特許文献1記載の電波センサは、発振回路1と送受信アンテナ6を接続する伝送線路11の経路途中に直接、ダイオード7のアノード端子が接続されることのみが記載されているが、一般的にはダイオード7の後段(カソード端子)に検波用スタブ31とダイオード7にて検波した結果(検知信号)を外部に出力する出力線路8とが接続される。また、ダイオード7は、伝送線路11を伝搬する高周波信号の電流値が最小(節)となる伝送線路11の位置に必ずしも接続できる訳ではないため、出力線路8には高周波信号を外部に出力させないための高周波遮断スタブ32が接続される。それに対し、図8に示す電波センサは、送受信電極6と周波数調整線路12の接続点から図示しない接地電極3までの高周波信号が伝搬する伝搬経路が共振回路となり、さらに送受信電極6の励振方向と平行する端辺の略中央部に出力線路8を接続しているため、出力線路8に高周波遮断スタブを接続しなくても、外部には殆ど高周波信号が出力されないため、従来の電波センサと比べ回路構成がシンプルとなり小型化、低製造コスト化を図れる。
基板2のどちらか一方の表面に増幅回路22を備え、ダイオード7にて検波した結果を増幅回路22を介し外部に出力すれば、信号処理が容易になるとともに、電波センサのノイズ耐性が向上し出力線路8から外部に出力される検知信号(暗ノイズ)の電圧値変動を抑制できる。
また、図8に示す電波センサはダイオード7から出力される検知信号の電圧値を調整する電圧調整手段9として何れか一方の端子が図示しない接地電極3に導通孔13cを介し接続された抵抗器15を備え、抵抗器15の他方の端子は出力線路8を介し送受信電極6に接続されている。従って、検知領域内に被検知体が存在しない状態にて、抵抗器15の抵抗値を調整しダイオード7から出力される検知信号の電圧値を最適化することにより、低消費電力化のため電波センサに印加する直流電源電圧を低下させても、検知領域内において被検知体が存在または移動したとき、電波センサから出力される検知信号に周波数成分(波)が現れ、検知信号の周波数(周期⇒時間)と送受信電極6から送信された高周波信号の周波数(波長⇒距離)から被検知体の移動状態(移動速度・相対的な移動距離)を容易に認識できる。
図9−(a)変形例7に示す電波センサは、基板2の表面に所定の間隔を設け複数の矩形状の送受信電極6a、6bが形成され、電力分配回路となる伝送線路23により相互に接続されている。そして、伝送線路23の中央部に形成された基板2の表裏を貫通する導通孔13aを介し図示しない発振回路にて生成された高周波信号が複数の送受信電極6a、6bまで伝搬される。送受信電極6bの励振方向と直交する端辺の略中央部には周波数調整線路12を介しダイオード7のアノード端子またはカソード端子の何れか一方の端子が接続され、他方の端子は図示しない接地電極3に接続されている。また、送受信電極6bの励振方向と平行する端辺の略中央部には出力線路8が接続され、出力線路8には、何れか一方の端子が図示しない接地電極3に導通孔13cを介し接続された抵抗器15の他方の端子が接続されている。
複数の送受信電極6a、6bは伝送線路23により相互に導通接続されているため、アンテナゲインを向上でき、比較的狭い検知範囲において、複数の送受信電極6a、6bにて受信した高周波信号をダイオード7により効率良く検波することができ、高いS/N比が得られる。また、電力分配回路となる伝送線路23の長さを調整(分岐点から送受信電極6aまでの電気長と分岐点から送受信電極6bまでの電気長を異ならせる)し、送受信電極6aと送受信電極6bに伝搬される高周波信号の位相をずらすことにより、電波ビームの指向性を制御し所望の方向へ電波ビームを放射することが容易にできる。
図9−(b)変形例8に示す電波センサは、図8に示した電波センサに対しさらに指向性制御電極16を備えている。指向性制御電極16は送受信電極6と同一平面上に配置され、指向性制御電極16の形状および送受信電極6との素子間スペースを調整することにより、電波ビームの指向性利得の増加、指向形態(最大放射強度方向・半値角)を任意に制御することができる。図2に示した電波センサは高周波信号の送信領域と受信領域が異なるが、変形例8に示す電波センサは高周波信号の送信領域と受信領域が一致する。
図8および図9に示す電波センサはともに、送受信電極6の形状が矩形状であって、送受信電極6の励振方向と直交する端辺の略中央部に周波数調整線路を接続し、送受信電極6の励振方向と平行する端辺の略中央部に出力線路8を接続しているが、前述した送信電極4と受信電極5を別々に備えた電波センサの受信電極5と同様に扱え、受信電極5に接続した同様の回路構成(ダイオードや出力線路、電圧調整手段等)を送受信電極6にも適用でき、同様の作用効果が得られる。さらに、送受信電極6と直流電気的に導通し、且つ信号伝達手段11となる伝送線路を伝搬する高周波信号の電流値が略最大(電界が略最小)となる伝送線路の経路途中に出力線路8や電圧調整手段9となる抵抗器15を接続すれば、発振回路1にて生成された高周波信号の電力量を殆ど低下させることなく送受信電極6まで伝搬することができる。
図8および図9に示す電波センサは、内部の略全面に接地電極3を形成した、いわゆる積層基板2の一方の表面に図示しない発振回路を備え、他方の表面に送受信電極6を備えているが、単層基板2の一方の表面の略全面に図示しない接地電極3を形成し、他方の表面に図示しない発振回路1と送受信電極6を備えても良い。
図10に示す電波センサは図8に示した電波センサに、さらに図2に示した電波センサの受信電極5側の回路構成を付加している。また、送受信電極6および受信電極5が形成された基板2表面とは異なる表面に図示しない増幅回路が配置されている。
図10に示す電波センサは、内部の略全面に接地電極3が形成された基板2の表面に矩形状の送受信電極6と受信電極5が所定の間隔を設け形成されている。送受信電極6と受信電極5の励振方向と直交する端辺の略中央部には周波数調整線路12a、12bを介しダイオード7a、7bのアノード端子またはカソード端子の何れか一方の端子が各々接続され、ダイオード7a、7bの他方の端子は導通孔13b、13eを介し図示しない接地電極3に各々接続されている。また、送受信電極6と受信電極5の励振方向と平行する端辺の略中央部には出力線路8a、8bが各々接続されている。そして、出力線路8aには基板2の表裏を貫通する導通孔13dとダイオード7aから出力される検知信号の電圧値を調整する、一方の端子が導通孔13cを介し図示しない接地電極3に接続された抵抗器15aの他方の端子が接続され、出力線路8bには基板2の表裏を貫通する導通孔13gとダイオード7bから出力される検知信号の電圧値を調整する、一方の端子が導通孔13fを介し図示しない接地電極3に接続された抵抗器15bの他方の端子が接続されている。ダイオード7aにて検波され出力された検知信号1は導通孔13dを介し図示しない増幅回路に、ダイオード7bにて検波され出力された検知信号2は導通孔13gを介し図示しない増幅回路に伝達され、各々外部に出力される。
図示しない発振回路1にて生成された高周波信号は、導通孔13aを介し送受信電極6に伝搬され電波ビームとして送信される。このとき、前述した通り送信された高周波信号の一部が受信電極5に回り込み、受信電極からも高周波信号が送信されることになる。送受信電極6から送信された高周波信号と受信電極5から送信された高周波信号により統合された電波ビームの指向性利得や指向形態(最大放射強度方向・半値角)は送受信電極6と受信電極5の位相差から決定する。この位相差は、送受信電極6の位相を基準とした受信電極5の位相と、送受信電極6と受信電極5の位置関係から決定される。従って、送受信電極6および受信電極5に各々接続された周波数調整線路12a、12bの長さを調整し、所定の共振周波数(位相)となるよう予め設定された送受信電極6と受信電極5を並べて配置したとき、その素子間スペースを調整すれば、所望の位相差を得ることができる。例えば、送受信電極6と受信電極5を比較的近接させて配置し、図11−(a)に示すように、送受信電極6を伝搬する高周波信号の電流値の位相(波形1)に対し、受信電極5に伝搬する高周波信号の電流値の位相(波形2)が135degree遅れている電波センサに対し、正面方向から被検知体が接近してきた場合、送受信電極6に接続された出力線路8aを介し図示しない増幅回路に伝達される検知信号1の電圧値の位相(波形3)に対し、受信電極5に接続された出力線路8bを介し図示しない増幅回路に伝達される検知信号2の電圧値の位相(波形4)は270degree遅れることになる。
特許文献2記載の電波センサは、検波素子(ダイオード)を2つ備え、発振回路1と送受信アンテナ6を接続する伝送線路11の経路途中に所定の電気長、例えば4分の1波長(λg/4)ずれる位置にダイオードを各々接続し位相差を検出している。従って、電波センサに向かって被検知体が接近(または離遠)する動きであれば、各ダイオードにて検波され出力される2つの検知信号から得られる位相差は、被検知体が接近(または離遠)する位置に関係なく常に同じである。
図10に示す電波センサは、ダイオード7aにて検波され出力される検知信号1とダイオード7bにて検波され出力される検知信号2から得られる位相差が、送受信電極6と受信電極5の位相差の他に素子間スペースも関係する。そのため、電波センサに向かって被検知体が接近(または離遠)する動きであっても、被検知体が接近(または離遠)する位置により位相差は変化する。図10−(b)において送受信電極6の中心点と受信電極5の中心点とを結ぶ直線の中心位置を0cmとし、送受信電極6が形成された方向側をプラス領域、受信電極5が形成された方向側をマイナス領域とすると、図11−(b)に示すように、プラス領域で被検知体が移動すると、検知信号1と検知信号2から得られる位相差は270degreeよりも高い範囲で変化し、マイナス領域で被検知体が移動すると、検知信号1と検知信号2から得られる位相差は270degreeよりも低い範囲で変化する。プラス領域、マイナス領域ともに被検知体が移動する位置が中心位置から離れる(αm<βm)ほど位相差の変化率が増加する。
センサからの距離に対する位相差の変化率を考慮すると、送受信電極6と受信電極5の素子間スペースは狭い方が好ましい。従って、送受信電極6と受信電極5を製造可能な狭い素子間スペースにて配置した上で、送受信電極6および受信電極5に各々接続された周波数調整線路12a、12bの長さを調整し、所望の位相差が得られるようにすれば良い。
図10に示す電波センサは、図8に示した電波センサに対しさらに図2に示した電波センサの受信電極5側の回路構成を付加しているため、検知信号1と検知信号2から得られる位相差の変化から検知領域内を移動する被検知体の位置を検出するとき、前述した作用効果により高いS/N比が得られる。また、低消費電力化や小型化を図れる。図10に示す電波センサは、励振方向と平行する送受信電極6の端辺と、励振方向と平行する受信電極5の端辺とが対向するように送受信電極6と受信電極5を配置しているが、励振方向と直交する送受信電極6の端辺と、励振方向と直交する受信電極5の端辺とが対向するように送受信電極6と受信電極5を配置しても良い。
また、図12に示す変形例9の電波センサは、図10に示した送受信電極6に接続される出力線路8およびその後段の回路を、送受信電極6が形成された基板2表面とは異なる表面に配置している。そして、基板2の表裏を貫通する導通孔13hが、送受信電極6の励振方向と平行する端辺の略中央部近傍となる送受信電極6の内部に形成され、導通孔13hを介し送受信電極6と出力線路8は接続される。さらに、受信電極5と共振周波数(位相)が略同一であって電波ビームの指向形態を制御する指向性制御電極16が、送受信電極6を中心として受信電極5と対称な位置に配置されている。従って、センサから放射される電波ビームの偏りを調整し、基板2表面に対し鉛直方向に向かい電波ビームを放射できる。指向性制御電極5の共振周波数は励振方向と平行する端辺の長さLと励振方向と直交する端辺の長さWを調整することにより所望の共振周波数が得られ、その形状は正方形でも良いし長方形でも良い。
また、指向性制御電極16には受信電極5と同様の回路構成(ダイオードや出力線路等)を付加しセンサから出力される検知信号の数を増やすことができる。送受信電極6に接続された出力線路8aを介し出力される検波結果を検知信号1、受信電極5に接続された出力線路8bを介し出力される検波結果を検知信号2、指向性制御電極16に接続された図示しない出力線路を介し出力される検波結果を検知信号3とすると、同一方向からセンサに被検知体が接近(または離遠)するとき、検知信号1と検知信号2から得られる位相差1と、検知信号1と検知信号3から得られる位相差2が異なるように、受信電極5および指向性制御電極16に各々接続された周波数調整線路の長さを予め設定(受信電極5と指向性制御電極の共振周波数は異なる)すれば、検知領域内を移動する被検知体の位置や移動状態をさらに精度良く検出できる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。