JP5568041B2 - 被覆直流電力ケーブル支持構造および被覆直流電力ケーブルの漏れ電流検知方法 - Google Patents
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Description
ところで、前記構造の被覆直流電力ケーブル100の絶縁被覆層111とシース112に亀裂などの損傷部分を生じると、損傷部分から漏電が発生する可能性がある。また、被覆直流電力ケーブル100の敷設作業時に折り曲げや衝撃等を与えた結果、絶縁被覆層111とシース112の一部に傷を付けたまま、あるいは歪みを与えたまま設置完了し、これが原因となって、敷設後、経時的に亀裂や損傷につながる場合も考えられる。
上述のような漏電が発生した場合、その初期段階においては数mA〜数10mA程度と小さい電流が流れる程度であるため、漏電を検知することが極めて難しい問題がある。
ところが、被覆直流電力ケーブル100に雨水や塩水が触れて亀裂114とその周囲に電解質が存在すると仮定すると、被覆直流電力ケーブル100の表面部分やクリート106の表面部分での漏れ抵抗が数10kΩ〜数10Ωに低下することが考えられ、状況によっては、電圧が異常に上昇し、漏電部分周囲で火花が発生することが考えられる。また、被覆直流電力ケーブル100を接地した場所が塩害を受ける可能性の高い地域などである場合、特に塩分を含む雨水に恒常的に触れる可能性が高いため、上述の漏電の問題が顕在化する可能性がある。
なお、交流電力ケーブルの場合、電力ケーブルの被覆層の内側に導電性の遮蔽層を有しているので、漏れ電流が発生しても、遮蔽層に漏れ電流が分流するので、問題にならないが、被覆直流電力ケーブル100の場合、漏れ電流は直接クリート106と設置構造物105に沿って流れるので、上述の如く火花を発生させるおそれがある。
前記特許文献1に記載された漏れ電流の検知システムは、検知部122が漏れ電流を検知するなら確実な検知が可能であるが、図4を基に上述した如く、被覆直流電力ケーブル100やクリート106の乾燥時に漏れ電流が低い場合は電流検知が難しい場合もあると考えられる。
例えば、漏れ電流が数mA〜数10mAのように微弱な場合は、高性能なセンサを適用しなくてはならないが、そのようなセンサを備えた検知システムは、高価な検知装置になるおそれがあり、設備コストの面で問題がある。
また、被覆直流電力ケーブル100の全長のどの位置に漏れ電流が生じるかは不明なので、被覆直流電力ケーブル100の長さ方向に相当数の検知システムを設置しなくてはならないが、高価なセンサに加え、検知部122、発信部125などの電子部品を備えた装置を相当数設置することは、設備コストの面、設置個数の制約の面で問題がある。
本発明の被覆直流電力ケーブル支持構造において、前記pH表示手段が、テープ状の本体部の少なくとも一部にアルカリ性に反応して色変化するpH表示体を備えてなる構成とすることができる。
本発明の被覆直流電力ケーブルの漏れ電流検知方法は、前記pH表示手段を設置する位置を、被覆直流電力ケーブルを支持する支持クリートの一部か、あるいは、該支持クリートを支持する接地構造物の一部とすることができる。
例えば、塩分を含む雨水は、漏れ電流による電気分解により水酸化ナトリウムを生成するので、雨水などの電解質がアルカリ性になり、これをpH検知手段で検知することで、漏れ電流の存在を確認できる。この効果は、特に塩害発生の可能性の高い地域において有効であり、該地域に設置されている被覆直流電力ケーブルの漏れ電流の有無をpH変化を検知することにより確実に検知できる。
pH表示手段としてアルカリ性に反応して色変化するpH表示体を備えた構成とするならば、数mA〜数10mAレベルの漏れ電流であったとしても、塩分を含む雨水の存在時にpH表示体が変色する。ここで、一端色変化したpH表示体の色はその後、雨水が乾燥して無くなった後であっても色を保持するので、pH表示体の色変わりを確認する際に雨水が存在していても、存在していない乾燥状態であっても、支障なく色の確認が出来、漏れ電流の有無の確実な検知ができる。
また、漏れ電流は一端流れ始めると、導体への通電中は常に流れ続け、塩分を含む雨水等の電解質を電気分解してアルカリ性にするとともに、アルカリ性の電解質からpH表示体に時間積でアルカリ分が作用し、pH表示体の色を変化させるため、微弱な漏れ電流であったとしても、時間積で生じたアルカリ分がpH表示体の色を確実に変化させる。このため、漏れ電流値が小さい漏電の初期状態であってもpH表示体の色観察により漏れ電流の検知が確実にできる。
また、pH表示手段として、第1の電極と第2の電極との間に設置されるpH測定器を用いることによっても塩分を含む雨水等の電解質がアルカリ性に変性したことを検知することが可能であり、この現象を検知することにより漏れ電流の発生の有無を検知することができる。
図1は本実施形態の被覆直流電力ケーブル支持構造を示すもので、本実施形態において支持しようとするのは、例えば、直流電気鉄道において適用されている被覆直流電力ケーブル1であり、この例の被覆直流電力ケーブル1は、銅線などの導電性の導体2と、この導体2の周面を覆っている架橋ポリエチレンなどの電気絶縁性の樹脂材料からなる被覆層3と、この被覆層3の周面を覆っている電気絶縁性かつ難燃性のビニルシースなどからなる外被5から構成されている。本実施形態の被覆直流電力ケーブル1は、導体2を被覆層3と外被5により覆っている2重被覆構造とされているので、被覆層3と外被5から被覆部4が構成されている。なお、被覆部4の構成は上述の2層構造に限らず、単層被覆構造、3層以上の複合被覆構造のいずれであっても良い。
支持クリート8を構成する第1半体6と第2半体7はそれらの突き合わせ面の中央に丸溝型の収容溝6a、7aが形成され、第1半体6の上面と第2半体7の下面を突き合わせて一体化することで両者の溝6a、7a間に挿通孔8aが形成され、この挿通孔8aに被覆直流電力ケーブル1が挿通され挟持されている。また、第1半体6と第2半体7はそれらの両端部を上下に貫通してそれらの下方の接地構造物10のネジ穴10aに螺合されたボルト11、12により一体化され、支持クリート8が接地構造物10にボルト止めされている。
このほか、変色域が4.5〜6.8で酸性側で黄色、アルカリ側で紫色を呈するブロモクレゾールパープル、変色域が6.0〜7.6で酸性側で黄色、アルカリ側で青色を呈するブロモチモールブルー、変色域が6.8〜8.4で酸性側で黄色、アルカリ側で赤色を呈するフェノールレッド、変色域が6.8〜8.0で酸性側で赤色、アルカリ側で黄色を呈するニュートラルレッド、変色域が7.3〜8.7で酸性側でやや赤色、アルカリ側で青緑色を呈するナフタノールフタレイン、変色域が7.2〜8.8で酸性側で黄色、アルカリ側で赤紫色を呈するクレゾールレッド、変色域が8.3〜10.0で酸性側で無色、アルカリ側で桃色を呈するフェノールフタレイン、などのいずれかを単独であるいは適宜組み合わせて構成した指示薬を含むpH表示体のいずれかであっても良い。
なお、より具体的には、変色域が1〜12の1刻みであって、酸性側で赤色、アルカリ側で青色を呈する指示薬を複数混合したpH表示体であるストライプpH試験紙(例えば、(株)三商、製品名:PEHANON pH Indicator Papers MN90401)、あるいは、変色域が6.0〜8.1の0.3刻みであって、アルカリ側で青色を呈する指示薬を含むpH表示体であるストライプpH試験紙(例えば、(株)三商、製品名:PEHANON pH Indicator Papers MN90417)などを用いることができる。
上述の漏れ電流が電解質に流れると、電解質中において2H2O+2e→H2+2OH−の反応が起こり、電解質中のNaにおいて、Na++OH−の反応からNaOH(水酸化ナトリウム)が生成し、電解質はアルカリ性に変性する。なお、漏れ電流が存在しない状態で電解質が存在すると、現状の日本における一般的な環境においては、大気中のCO2が溶解してpH6.6〜5.6程度となり、酸性雨が発生した状況ではもう少し酸性側へ移行する可能性があるが、漏れ電流が生じると、上述の関係から塩分を含む雨水などの電解質はアルカリ性となる。
被覆直流電力ケーブル1を支持する支持クリート8は、通常、多数設置されているので、被覆直流電力ケーブル1の検査時などに同時に支持クリート8に貼着されているpH表示体16の色の変化を逐一、作業者が目視で観察するか、観察者等が監視カメラにてpH表示体16の色の変化を観察し、色の変化が生じている場合は漏電発生の可能性があると認識し、該当する位置の被覆直流電力ケーブル1の被覆部4が損傷していないか検査することにより、漏電発生の有無を調べることができる。
また、上述の方法によれば、被覆直流電力ケーブル1の損傷部分が小さく、漏電発生の初期状態であって、発生している漏れ電流が数mA〜数10mAレベルであっても、塩分を含む雨水などの電解質を導体2への通電中に常時電気分解するように作用させてアルカリ性にすることができ、アルカリ性への反応を時間積で生じさせてpH表示体16の変色に有効に利用できるので、微弱な漏れ電流であってもpH表示体16の色変わりを確実に発生させることができ、検出精度を高くすることができる。
本実施形態の構造においては、支持クリート8を構成するための第2半体7の収容溝7aの内面に第1の電極31が配置されるとともに、第2半体7が固定されている設置構造物10の一部あるいは接地構造物10側の第2半体7の端部に第2の電極32が配置され、第1の電極31と第2の電極32に接続するように配線33、34を介しpH測定器30が接続されている。なお、pH測定器30はそれ自身にpH表示部を設けてpH表示ができるように構成されている。また、pH測定器30に送信機35を接続しておき、pH測定器30がアルカリ性を検知した場合、漏れ電流の発生したことを知らせる信号を送信できるように構成しても良い。
pH測定器30であれば、従来技術において使用されていた数mA〜数10mAの微弱電流を形成する高価なセンサよりも遙かに安価に提供できるので、実施が容易であり、かつ、第1の実施形態の構成において得られていた確実な漏れ電流の検知ができる。
本発明者は、電解質の電気分解によって電解質がアルカリ性に変性するか否かを把握するため試験を行った。
樹脂製の容器に5%塩水を満たし、この塩水に図1に示す支持クリート(樹脂製)の下側の第2半体を浸漬し、第2半体の一側端部を貫通した鉄製のボルトに陰極を接続し、第2半体の他側端部に銅板からなる正極を設置し、陰極と陽極間に30V−100mAの直流電圧を2分間印加する通電試験を行った。
2分通電後、変色域が6.0〜8.1の0.3刻みであって、酸性側で黄緑色、アルカリ側で青色を呈する指示薬を含むpH表示体であるストライプpH試験紙((株)三商、製品名:PEHANON pH Indicator Papers MN90417)を含むpH表示体を塩水に浸漬させたところ、陰極側のpH表示体の色が青色に変色した。このことから、支持クリートの周囲の陰極側の電解質(塩水)がアルカリ性に変性したことを確認できた。
この試験結果から、例えば、1500Vもの高電圧を流している直流鉄道用の被覆直流電力ケーブルに亀裂が生じて数mA〜数10mAレベルの漏れ電流が発生し、漏れ電流を生じている箇所に電解質が存在した場合、その電解質のアルカリ性への変性を確実に検知できると想定できるので、本発明の有効性を検証できた。
Claims (7)
- 導体が絶縁性の被覆部で覆われた被覆直流電力ケーブルを被覆部の外側から挟持して該被覆直流電力ケーブルを支持する支持クリートを備え、該支持クリートの一部が接地構造物に取り付けられた被覆直流電力ケーブル支持構造であって、
前記被覆直流電力ケーブルを支持する部分と前記接地構造物との間であって、雨水に触れる位置に、前記被覆直流電力ケーブルの漏れ電流により電気分解された雨水に接して前記設置位置の雨水のpH変化を検知して表示するpH表示手段が設置されたことを特徴とする被覆直流電力ケーブル支持構造。 - 前記pH表示手段が、テープ状の本体部の少なくとも一部にアルカリ性に反応して色変化するpH表示体を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の被覆直流電力ケーブル支持構造。
- 前記pH表示手段を設置する位置が、被覆直流電力ケーブルを支持する支持クリートの一部か、あるいは、該支持クリートを支持する接地構造物の一部であることを特徴とする請求項1または2に記載の被覆直流電力ケーブル支持構造。
- 前記直流電力ケーブルを挟持する支持クリートの支持部分に第1の電極が設置され、前記接地構造物の一部に第2の電極が設置されるとともに、前記第1の電極と第2の電極に接続されたpH測定器が前記pH表示手段とされてなることを特徴とする請求項1に記載の被覆直流電力ケーブル支持構造。
- 導体が絶縁性の被覆部で覆われた被覆直流電力ケーブルを被覆部の外側から支持して該被覆直流電力ケーブルを支持する支持クリートを備え、該支持クリートの一部が接地構造物に取り付けられた被覆直流電力ケーブルの漏れ電流を検知する方法であって、
前記被覆直流電力ケーブルを支持する部分と前記接地構造物との間に、設置位置のpHを検知して表示するpH表示手段を設置し、このpH表示手段の色変わりを認識して漏れ電流の有無を検知することを特徴とする被覆直流電力ケーブルの漏れ電流検知方法。 - 前記pH表示手段として、テープ状の本体部の少なくとも一部にアルカリ性に反応して色変化するpH表示体を備えたものを用いることを特徴とする請求項5に記載の被覆直流電力ケーブルの漏れ電流検知方法。
- 前記pH表示手段を設置する位置を、被覆直流電力ケーブルを支持する支持クリートの一部か、あるいは、該支持クリートを支持する接地構造物の一部とすることを特徴とする請求項5または6に記載の被覆直流電力ケーブルの漏れ電流検知方法。
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